【文献】
L BAI, et al.,Universal Method for Separating Spin Pumping from Spin Rectification Voltage of Ferromagnetic Resonance,PHYSICAL REVIEW LETTERS,2013年11月22日,p.217602-1〜217602-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態の例を説明する。なお、以下の説明は本発明の実施形態の一部を例示するものであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、形態が本発明の技術的思想を有するものである限り、本発明の範囲に含まれる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0020】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る発振器100を示す図である。実施形態1の発振器100は、発振部101と、発振部101に並列に接続された第1の電気回路103とを有する。
【0021】
発振器100に直流電流を流すと、発振部101は直流電流Iによって発振する。第1の電気回路103には、発振部101の発振出力による電流、または直流電流に発振出力による電流が重畳された電流が流れる。その電流によって第1の電気回路103は、発振部101の発振と等しい周波数成分を有する振動磁場Hを発生する。第1の電気回路103は、振動磁場Hが発振部101にフィードバックされるように配置する。矢印Hは、発振部101にフィードバックされる、第1の電気回路103で発生した振動磁場を示す。ここで振動磁場とは、交番磁場のように向きが180度変化しながら振動する磁場や、大きさが振動する磁場成分が静磁場成分に重畳された磁場や、または回転磁場のように方向が回転する磁場など、静磁場でない磁場を示す。
【0022】
発振部101には発振部101の発振周波数と等しい周波数成分を有する振動磁場Hがフィードバックされるので、発振器の出力安定性が向上する。
【0023】
フィードバックの振動磁場Hと発振の位相を揃えるために、発振部101と第1の電気回路103は、周波数で決まる波長以下の距離に配置することが望ましい。
【0024】
発振部101には、直流電流Iの印加のみによって発振する発振部と、さらに閾値以上の磁場も印加することによって発振する発振部があげられる。ここで閾値磁場とは、発振部101に直流電流が供給されている場合に、発振部101が発振するために最低限必要な磁場の大きさである。
【0025】
電流のみで発振しない発振部のうち、閾値磁場がゼロより大きい発振部を発振させるためには、直流電流Iとともにゼロより大きい磁場を発振部101に印加する必要がある。直流電流Iのみで発振しない発振部101を用いた場合には、地磁気以上の磁場を印加する。ちなみに、ここでの地磁気とは、発振器に作用する地球磁気を示し、例えば、地表における地球磁気は、目安として37A/mである。
【0026】
閾値以上の磁場を印加する磁場印加手段は磁石に限られず、例えば、配線を流れる電流が発生する磁場、またはコイルや電磁石を用いることができる。
【0027】
発振部101は、特に限定されないが、例えば磁気抵抗効果素子を用いることができる。
図2には磁気抵抗効果素子の構成例を示す。磁気抵抗効果素子105は磁性層であるピン層106aと、磁性層であるフリー層106bと、その間に配置されたスペーサ層107とを有する。ここでのピン層106aの磁化方向は固定されており、矢印109aはピン層106aの磁化の固定方向を示す。フリー層106bの磁化方向は、電流を印加する前の状態では、有効磁場の方向を向いており、矢印109bは有効磁場の方向を示す。有効磁場は、フリー層106b内で生じる異方性磁場、交換磁場、外部磁場、反磁場の和である。
図2では、ピン層106aの磁化の方向と、フリー層106bの有効磁場の方向が、互いに反対方向を向いているが、互いの方向はこれに限らない。
【0028】
磁気抵抗効果素子105は特に限定されないが、例えばGMR素子、TMR素子、またはスペーサ層107の絶縁層中に電流狭窄パスが存在する磁気抵抗効果素子などを用いることができる。
【0029】
磁気抵抗効果素子105にGMR素子を用いる場合、スペーサ層107は、例えば、銅など非磁性金属を用いることができる。GMR素子のフリー層106bおよびピン層106aの材料は、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金にボロンを混入した合金を用いることができる。ピン層106aの磁化を固定するには、イリジウム、鉄、白金、マンガンなどの合金による反強磁性層との交換結合や、磁性金属多層膜(例えばコバルト鉄−ルテニウム−コバルト鉄の多層膜)による反強磁性結合を用いることができる。そして各層の厚さは0.1〜50nm程度が好ましい。GMR素子は、スペーサ層107が金属からなるため、他の磁気抵抗効果素子に比較して抵抗値が低い。このため、磁気抵抗効果素子105を低インピーダンスの回路に接続する際に、インピーダンス整合の観点で好ましい。
【0030】
磁気抵抗効果素子105にTMR素子を用いる場合、スペーサ層107は、例えば、アルミナや酸化マグネシウム(MgO)の絶縁層を用いることができる。TMR素子のフリー層106bおよびピン層106aの材料は、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金としてボロンを混入した合金を用いることができる。ピン層106aの磁化を固定するには、イリジウム、鉄、白金、マンガンなどの合金による反強磁性層との交換結合や、磁性金属多層膜(例えばコバルト鉄−ルテニウム−コバルト鉄の多層膜)による反強磁性結合を用いることができる。そして各層の厚さは0.1〜50nm程度が好ましい。TMR素子はスペーサ層107が絶縁層からなるため、他の磁気抵抗効果素子に比較して抵抗値が高い。このため、磁気抵抗効果素子105を高インピーダンスの回路に接続する際に、インピーダンス整合の観点で好ましい。
【0031】
さらに磁気抵抗効果素子105に、スペーサ層107の絶縁層中に電流狭窄パスを有する磁気抵抗効果素子を用いる場合、そのスペーサ層107の絶縁層はAl
2O
3等からなる。スペーサ層107の電流狭窄パスは、例えば銅などの非磁性金属や、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金にボロンを混入した磁性金属を用いることができる。この磁気抵抗効果素子105の磁化自由層および磁化固定層には、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金にボロンを混入した合金を用いることができる。ピン層106aの磁化を固定するには、イリジウム、鉄、白金、マンガンなどの合金による反強磁性層との交換結合や、磁性金属多層膜(例えばコバルト鉄−ルテニウム−コバルト鉄の多層膜)による反強磁性結合を用いることができる。そして、各層の厚さは0.1〜50nm程度が好ましい。この磁気抵抗効果素子105は、電流狭窄パスを有し、その電流狭窄パスによって電流密度を上げられる。このため、素子への投入電流を他の磁気抵抗効果素子に比較して小さくすることができる。この磁気抵抗効果素子105を発振部101に使用することによって、消費電力を抑えた回路とすることができる。
【0032】
本実施形態に係る磁気抵抗効果素子105の自励発振について説明する。ここで自励発振とは、振動的でない直流電流により電気的振動が誘起される現象である。磁気抵抗効果素子105に直流電流Iを流すと、伝導電子108が直流電流Iとその逆方向、すなわちピン層106aからスペーサ層107を介してフリー層106bに流れる。矢印109aの方向に磁化したピン層106aにおいて、伝導電子108のスピンは矢印109aの方向に偏極する。矢印109cは伝導電子108のスピンの方向を表す。スピン偏極した電子108はスペーサ層107を介してフリー層106bに流れこむことで、フリー層106bの磁化と角運動量の受け渡しを行う。これによって、フリー層106bの磁化の方向を、有効磁場の方向を示す矢印109bの方向から傾かせようとする作用が働く。一方で、フリー層106bの磁化の方向を、有効磁場の方向を示す矢印109bの方向に安定させようとするダンピングの作用がはたらく。したがって、これら2つの作用がつりあって、フリー層の磁化方向は有効磁場の方向の周りを歳差運動する。この歳差運動を、フリー層の磁化方向を示す矢印109dの、有効磁場の方向を示す矢印109bのまわりの運動として表わし、一点鎖線109eによって矢印109dの歳差運動の軌跡を示す。フリー層の磁化方向がピン層の磁化方向に対して高周波で変化するため、フリー層の磁化方向とピン層の磁化方向の相対角度に依存して抵抗が変化する磁気抵抗効果によって、抵抗値も高周波で変化する。直流電流Iに対して抵抗値が高周波で変化するので、およそ100MHzから1THzの高周波数で振動する電圧が発生する。有効磁場の方向は、ピン層106aの磁化方向に対して反対方向である180度の角度を有するだけでなく、同じ方向である0度や、45度、90度、または135度のような角度を有することができる。
【0033】
印加磁場と発振周波数は、おおよそ比例関係にある。したがって、高周波の発振を生じさせるためには、外部磁場は大きい方が望ましい。
【0034】
発振部101が上記のような磁気抵抗効果素子の場合は、発振の起源である磁化の周期運動に、その周期運動の周波数に等しい周波数成分を有する振動磁場Hがフィードバックされる。したがって、磁化の周期運動が安定化し、発振の出力安定性が効果的に改善される。
【0035】
図3は実施形態1に係る発振器100を使用するための周辺回路の一例を示す図である。周辺回路100aは、直流電流源102と、インダクタL1とを有する。インダクタL1は発振器100が発振した高周波出力の直流電流源102への流入を防ぐことができる。
【0036】
直流電流源102から直流電流を発振器100に供給すると、発振器100は高周波を出力する。第1の電気回路103が外部へ電力を放射する機能、たとえばアンテナを有する場合、第1の電気回路103は直流電流源102から供給された電力の一部を外部へ放射する。
【0037】
図4は実施形態1に係る発振器100を使用するための周辺回路のもう1つの例を示す図である。周辺回路100bは、直流電流源102と、負荷402と、インダクタL2と、キャパシタC2とからなる。インダクタL2は発振器100が発振した高周波出力の直流電流源102への流入を防ぎ、キャパシタC2は直流電流の負荷402への流入を防ぐことができる。
【0038】
直流電流源102から直流電流を発振器100に供給すると、発振器100は高周波を出力する。発振器100で出力された高周波出力は、インダクタL2に比較してインピーダンスが小さいキャパシタC2を通過し、負荷402で消費される。
【0039】
以後の実施形態の説明においては、周辺回路は省略する。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1に比較して、発振部に振動磁場をより効果的にフィードバックできる発振器を説明する。
【0041】
実施形態2は、第1の電気回路103が振動磁場を発生しやすくするために、第1の電気回路103に磁場印加部であるループ部を構成し、ループ部の片側に容量を形成した実施例である。容量はコンデンサーのようなチップ部品、または導体パターンで作製した容量、または浮遊容量などの、直流的に絶縁された構造を用いることができる。
【0042】
図5は、実施形態2の発振器を示す回路図である。実施形態2の発振器130は、発振部101と、発振部101に並列に接続された第1の電気回路103とを有する。第1の電気回路103はループ部を表現するインダクタ131と、容量を表現するキャパシタ132とを有する。第1の電気回路103は実際には抵抗成分も有するが、ここでは省略する。
【0043】
インダクタ131で表現されたループ部は、発振部101の発振出力により振動磁場Hを発生し、振動磁場Hを効率的に発振部101にフィードバックする。したがって、発振部101の出力安定性が改善される。
【0044】
第1の電気回路103は、インダクタ131とキャパシタ132で構成されるため、共振周波数Frを有する。一方で発振部101は周波数frで発振する。発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとが等しい場合は、発振部101の発振周波数frで第1の電気回路103が共振するため、第1の電気回路103が発生した周波数Fr=frの振動磁場を発振部101に、より効率的にフィードバックできる。一方で、フィードバックの振動磁場が強すぎる場合は、フリー層106bの磁化が反転してしまうことで発振が停止してしまう。このような場合は、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとを異なる構成として、フィードバックの振動磁場強度を弱くすることが好ましい。ここで、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとが等しいとは、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとの差が、発振部の発振周波数frの10%以下であることを意味する。また、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとが異なるとは、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとの差が、発振部の発振周波数frの10%を超えていることを意味する。
【0045】
さらに、実施形態2におけるループ部は、発振した電力を電磁場として放出するアンテナとしても使用することができる。したがって、発振器から電磁場を外部へ放出させる場合、あらたにアンテナを設ける必要がなくなり、発振器全体の小型化が可能になる。ここでアンテナとは、波長より十分大きい距離へ電磁波を伝送させるためのアンテナだけでなく、波長と同程度、または波長より小さい距離へ電磁場を伝送させるアンテナや共振器も含む。
【0046】
(実施形態3)
実施形態2で、第1の電気回路103にループ部を形成することを説明したが、実施形態3として、ループ部の配置について説明する。
【0047】
図6は、実施形態3の発振器を示す図である。実施形態3の発振器140は、発振部101と、発振部101に電流を供給する信号線のシグナルラインである141と、グランドラインである142と、ループ部143で構成される。ループ部143とグランドライン142の間には、図示しない浮遊容量が存在する。ループ部143はシグナルライン141から延在するように形成されている。ここでは一例として、ループ部143の開口面はシグナルライン141の面と同一平面にある構成を示す。
【0048】
実施形態3を等価回路で表現すると、ループ部143は
図5のインダクタ131に対応し、浮遊容量は
図5のキャパシタ132と対応し、実施形態3の等価回路は
図5に示した回路130と同一になる。
【0049】
発振部101の極近傍にループ部143を形成できるため、ループ部143が発生した振動磁場を発振部101に効率的にフィードバックできる。したがって、発振部101の出力安定性が改善される。実施形態3の構成は、ループ部143が発振部101の位置に発生させる磁場Hの方向と、発振部101を流れる電流の向きがほぼ同じになることで効率的に発振する発振部を使用する場合により好ましい。
【0050】
ループ部143は1巻きで図を描いているが、2巻き以上のループ部も用いることができる。また、2巻き以上のループ部の場合、同一平面上にループ部を形成してもよいし、同一平面ではないヘリカル形状にループを形成してもよい。
【0051】
(実施形態4)
実施形態3で、第1の電気回路103にループ部143を形成し、ループ部143が発生した振動磁場を発振部101に効率的にフィードバックできることを説明したが、ループ部143の開口面の方向は
図6に示した構成に限らない。実施形態4では、実施形態3に対してループ部の開口面の方向を変えた発振器の実施形態を示す。
【0052】
図7は、ループ部開口面の方向を変化させた実施形態4の発振器の模式図を示す。実施形態4の発振器150は、発振部101と、発振部101に電流を供給する信号線のシグナルラインである141と、グランドラインである142と、ループ部151で構成される。ループ部151とグランドライン142の間には、図示しない浮遊容量が存在する。ループ部151は、シグナルライン141が存在する面に対して垂直に、シグナルライン141から延在するように形成されている。
【0053】
実施形態4を等価回路で表現すると、ループ部151は
図5のインダクタ131に対応し、浮遊容量は
図5のキャパシタ132に対応し、実施形態4の等価回路は
図5に示した130と同一になる。
【0054】
実施形態4の発振器150は、発振部101の極近傍にループ部151を形成できるため、効率的にループ部151が発生した振動磁場を発振部101にフィードバックできる。したがって、発振部101の出力安定性が改善される。実施形態4の構成は、ループ部143が発振部101の位置に発生させる磁場Hの方向と、発振部101を流れる電流の向きがほぼ垂直になることで効率的に発振する発振部を使用する場合により好ましい。
【0055】
ループ部151は1巻きで図を描いているが、2巻き以上のループ部でもよい。また、2巻き以上のループ部の場合、同一平面上にループ部を形成してもよいし、同一平面ではないヘリカル形状にループを形成してもよい。
【0056】
実施形態3と4とにおいて、ループ部151の開口面はシグナルライン141の面と垂直または平行の関係にある構成を示したが、開口面とシグナルライン141の面との角度関係はこれに限ったものではない。
【0057】
(実施形態5)
実施形態3と実施形態4とでは、発振部101をループ部の外側に配置した。実施形態5では、発振部101をループ部の内側に配置する。
【0058】
図8は、発振部をループ部の内側に配置した実施形態5を示す。発振器160は、発振部101と、発振部101に電流を供給する信号線のシグナルラインである141と、グランドラインである142と、ループ部161で構成される。ループ部161とグランドライン142の間には、図示しない浮遊容量が存在する。ループ部161は発振部101を内側に囲む構成で、シグナルライン141が延在するように形成されている。
【0059】
実施形態5を等価回路で表現すると、ループ部161は
図5のインダクタ131に対応し、浮遊容量は
図5のキャパシタ132と対応し、実施形態5の等価回路は
図5に示した回路130と同一になる。
【0060】
ループ部161は1巻き(ループ)で図を描いているが、2巻き以上のループ部でもよい。また、2巻き以上のループ部の場合、同一平面上にループ部を形成してもよいし、同一平面ではないヘリカル形状にループを形成してもよい。
【0061】
ループ部161は、発振部101が発生した出力により効率的に振動磁場Hを発生する。さらに、発振部101を振動磁場Hの強度が大きいループ部中央付近に配置しているため、発振部101へのフィードバックはより強くなる。したがって、実施形態5は発振部101の出力安定性をより向上できる。
【0062】
(実施形態6)
実施形態2から実施形態5では、ループ部の片側に浮遊容量を形成する実施形態を説明した。実施形態6では、ループ部の片側に浮遊容量が形成されておらず、直流的に接続されている形態を説明する。
【0063】
図9は、発振部と直流的並列にループ部を形成した、実施形態6を示す回路図である。発振器300は発振部101と、発振部101と直流的に並列に接続されたループ部とを有する。ループ部をインダクタ301と、抵抗302とで表現する。
【0064】
ループ部は、発振部101が発生した出力により振動磁場Hを発生し、振動磁場Hを発振部101に効率的にフィードバックするため、発振部101の出力安定性が改善される。
【0065】
さらに実施形態6は、発振部101を過電流から保護することも可能になる。発振器300に電流を供給すると、以下の数式(1)にしたがって、発振部101には電流I
oscが流れ、インダクタ301には電流I
Loopが流れる。
I
Loop/I
osc=R
osc/R
Loop ・・・(1)
ここで、抵抗302の抵抗値をR
Loop、発振部101の抵抗値をR
oscとした。実施形態6は、この分流効果により発振部101に大電流が流れることを防ぐため、発振部101を過電流から保護できる。
【0066】
(実施形態7)
実施形態1から実施形態6では、発振部が発生する出力を回路に直接入力し、回路が発生する振動磁場を、発振部にフィードバックする形態を説明した。実施形態7では、発振の出力安定性をより向上させるために、電流増幅部を利用する。
【0067】
図10は、第1の電気回路に電流増幅部を利用する実施形態7を示す図である。実施形態7の発振器200は、直列接続した電流増幅部201とループ部を、発振部101に並列接続して構成される。ループ部はインダクタ131と、キャパシタ132とで表現される。電流増幅部201は入力端と出力端とを有し、入力端から入力された電流を増幅して出力端に出力する。発振部101は電流増幅部201の入力端に接続され、ループ部は電流増幅部201の出力端に直列に接続されている。
【0068】
発振部101は発生した出力を電流増幅部201に入力し、電流増幅部201はループ部に増幅された振動電流を供給する。ループ部は増幅された振動電流により大きくなった振動磁場を発振部101にフィードバックするため、発振器200は発振の出力安定性をより向上できる。
【0069】
ループ部には実施形態6で説明したような、キャパシタ132が抵抗302と置き換えられた形態も用いることができる。
【0070】
上記の発振器の実施形態において、磁場印加部としてループ部を用いる形態を説明したが、磁場印加部はループ部に限らない。たとえば磁場印加部は、ループを完全に形成するまでには至らない半周巻きの形状や、直線状や曲線状などの他形状で構成してもよい。
【0071】
(実施形態8)
図11は、実施形態8に係る整流器120を示す図である。整流器120は、第1の電気回路103と整流部である磁気抵抗効果素子とを有する。実施形態8は、実施形態1の発振部101を磁気抵抗効果素子105を用いた整流部と置き換えた場合に対応する。
【0072】
整流器120に外部から交流電流を供給すると、交流電流は磁気抵抗効果素子105と第1の電気回路103とに供給される。第1の電気回路103は振動磁場Hを磁気抵抗効果素子105に印加する。矢印Hは、磁気抵抗効果素子105に印加される、第1の電気回路103で発生した振動磁場を示す。磁気抵抗効果素子105は交流電流を供給されると、後述するスピントルクFMR(Ferromagnetic Resonance)効果によって、交流電流を直流に変換する。すなわち実施形態8は整流器となる。
【0073】
ここでスピントルクFMR効果について説明する。
図2における磁気抵抗効果素子105に、各層の面直方向に交流電流を印加する場合を考える。交流の半周期で電子108がピン層106aからフリー層106bへ注入される場合は、フリー層106bとピン層106aの磁化が平行になるようにフリー層106bの磁化方向が回転し、磁気抵抗効果素子105の抵抗値が下がる。逆にフリー層106bからピン層106aへ電子108が注入される半周期では、フリー層106bとピン層106aの磁化方向は互いに反平行になるようにフリー層の磁化方向が回転し、抵抗値が上がる。交流電流により、この抵抗変化の現象が交互に起きて、振動電圧とともに直流電圧成分が発生する。すなわち交流を直流に変換する整流作用を示す。これをスピントルクFMR効果とよぶ。スピントルクFMR効果が発生する周波数、つまり整流周波数は印加磁場によるため、所望の周波数でスピントルクFMR効果を発生させるのに十分な磁場を印加する必要がある。
【0074】
整流器120に外部から交流電流を供給すると、磁気抵抗効果素子105は交流電流により、その周波数に等しい磁化の周期運動を起源としてスピントルクFMR効果を示す。さらに第1の電気回路103は、その周期運動の周波数に等しい周波数成分を有する振動磁場を磁化に印加する。したがって、磁化の周期運動が安定化し、スピントルクFMR効果の出力安定性が効果的に改善される。
【0075】
整流器120に外部から交流電流を供給する手段として、直接第1の電気回路103に電力を供給してもよい。第1の電気回路103に外部から交流電力を供給する手段は、交流電流源を第1の電気回路103に接続するだけに限らない。第1の電気回路103がアンテナのような構成であれば、電磁波により第1の電気回路103に外部から交流電力を供給することができる。第1の電気回路103は外部から交流電力を供給されると、電力の一部を磁気抵抗効果素子105に供給するとともに、第1の電気回路103は振動磁場Hを磁気抵抗効果素子105に印加するので、整流器120は安定した整流作用を示す。
【0076】
図12は実施形態8に係る整流器120を使用するための周辺回路の一例を示す図である。周辺回路400は、負荷121と、インダクタL3とからなる。インダクタL3は交流の負荷121への流入を防ぐことができる。
【0077】
実施形態8の第1の電気回路103は外部から交流電力を供給されると、磁気抵抗効果素子105に振動磁場Hを印加するとともに、一部の交流電力を磁気抵抗効果素子105に供給する。磁気抵抗効果素子105は交流を直流に整流し、整流された直流電圧は負荷121で検出される。
【0078】
図13は実施形態8に係る整流器120を使用するための周辺回路の他の例を示す図である。周辺回路1200は、交流電流源1201と、負荷1202と、インダクタL4と、キャパシタC4とからなる。インダクタL4は交流電流の負荷1202への流入を防ぎ、キャパシタC4はスピントルクFMR効果により発生した直流の交流電流源1201への流入を防ぐことができる。
【0079】
交流電流源1201からの交流電流I
ACは、インピーダンスが小さいキャパシタC4を通過するが、インピーダンスが大きいインダクタL4はほとんど通過しない。そのため、交流電流I
ACは効率良く整流器120に供給される。整流器120は交流電流を直流に変換し、直流出力は負荷1202で検出される。
【0080】
以後の実施形態の説明において、周辺回路は省略する。
【0081】
(実施形態9)
実施形態9では、実施形態2から7において発振部101を磁気抵抗効果素子105を用いた整流部と置き換えた場合を例示する。この場合、外部から交流電流を各実施形態に印加すると、ループ部は振動磁場Hを磁気抵抗効果素子105に印加してスピントルクFMR効果を安定化し、磁気抵抗効果素子105は交流電流を直流に整流する。つまり、各実施形態は整流器となる。磁気抵抗効果素子105は同じ周波数の交流電流と振動磁場とが印加されたことで、より安定した整流作用を示す。
【0082】
実施形態2から7において発振部101を磁気抵抗効果素子105を用いた整流部と置き換えた整流器に、外部から交流電力を供給する手段として、直接ループ部に電力を供給してもよい。たとえば、ループ部に外部から交流電力を供給する手段は、交流電流源をループ部に接続すればよい。あるいは、ループ部がアンテナのような構成であれば、電磁波によりループ部に外部から交流電力を供給することができる。ループ部は外部から交流電力を供給されると、電力の一部を磁気抵抗効果素子105に供給するとともに、ループ部は振動磁場Hを磁気抵抗効果素子105に印加するので、整流器は安定した整流作用を示す。
【0083】
(実施形態10)
実施形態10では、電流増幅部を利用した整流器を例示する。
【0084】
図14は、電流増幅部を利用した整流器の実施形態10を示す図である。実施形態10の整流器200bは、直列に接続した電流増幅部201とループ部を、磁気抵抗効果素子105に並列接続して構成にされる。ループ部はインダクタ131と、キャパシタ132とで表現される。インダクタ131は電流増幅部201の入力端に直列に接続され、磁気抵抗効果素子105は電流増幅部201の出力端に接続されている。
【0085】
ループ部は外部からの電磁波を受信すると、交流電流を電流増幅部201に供給する。磁気抵抗効果素子105は、増幅された交流電流が供給されるとともに、ループ部により交流電流と同じ周波数の振動磁場が印加されるので、より安定した整流作用を示す。つまり実施形態10はより安定した整流器となる。
【0086】
ループ部には実施形態6で説明したような、キャパシタ132が抵抗302と置き換えられた形態も用いることができる。
【0087】
実施形態9と10で説明した整流器におけるループ部を、外部からの電磁場を受けて磁気抵抗効果素子205へ電力を供給するアンテナとしても使用することができる。したがって、整流器に外部から電磁場を供給する場合、あらたにアンテナを設ける必要がなくなり、整流器の小型化が可能になる。ここでアンテナとは、波長より十分大きい距離から到来する電磁波を受信するためのアンテナだけでなく、波長と同程度、または波長より小さい距離からの電磁場を受信するアンテナや共振器も意味する。
【0088】
上記の整流器の実施形態においても、磁場印加部はループ部に限らない。たとえば磁場印加部は、ループを完全に形成するまでには至らない半周巻きの形状や、直線状などの他形状で構成してもよい。
【0089】
(実施形態11)
実施形態11では、外部からの信号電力を実施形態8から10の整流器に印加する。その場合、第1の電気回路またはループ部は信号電力による電流と振動磁場Hを磁気抵抗効果素子105に印加するので、磁気抵抗効果素子105はスピントルクFMR効果により信号電流を整流する。つまり実施形態11は、同じ周波数の信号電流と振動磁場とを印加されたことで、安定した受信作用を示す受信器となる。
【0090】
(実施形態12)
実施形態12では、発振部の出力を無線伝送するために、発振器と直流的に絶縁した電気回路に、発振部の出力を電磁気的な結合で伝送する手段を設ける。電磁気的な結合には、電磁誘導による誘導結合、容量による結合、電磁気的な共鳴による結合、電磁波による結合などがあげられる。実施形態12では、誘導結合を用いた実施形態を説明する。
【0091】
図15は、実施形態12に係る送信装置1000の回路図である。送信装置1000は、第1の回路901と第2の電気回路902とを有する。第1の回路901は、実施形態6の発振器300と回路1305とを有する。発振器300のループ部を第1のインダクタ301と抵抗302で表現する。第2の電気回路902は、導体1303と回路1306とを有する。回路1306は、送信装置1000の外部へ信号を送信するアンテナを、図示しないが備えている。導体1303はループ部を有し、それを第2のインダクタ301bと抵抗302bとで表現する。発振器300と第2の電気回路902は直流的に絶縁されている。第1のインダクタ301と第2のインダクタ301bとは直流的には絶縁されているが、誘導結合している。
【0092】
発振器300が発振すると第1のインダクタ301には時間変動する電流が流れ、誘導結合により第2のインダクタ301bを介して、回路1306に回路1305による信号が伝送される。
【0093】
誘導結合の部分においてインピーダンス整合を考慮すれば、誘導結合部において反射が低減されるため、信号伝送がより効率的に行われる。第1の回路901のインピーダンスをZ1、第2の電気回路902のインピーダンスをZ2とする。この2つの回路のインピーダンスを整合させるために、第1のインダクタ301と第2のインダクタ301bの巻き数を調節する。本手法はトランスによるインピーダンス整合の手法として知られている。下の数式(2)を満たすように第1のインダクタ301の巻き数N1と、第2のインダクタ301bの巻き数N2を決定すれば、第1の回路901と第2の電気回路902のインピーダンスが整合する。
(N1/N2)
2=Z1/Z2・・・(2)
【0094】
発振部101に印加する磁場はインダクタの巻き数による。インピーダンス整合のために第1のインダクタ301の巻き数N1が調整されると、発振部101に印加する磁場が変更されるので、第2のインダクタ301bの巻き数N2が調整されるのが望ましい。
【0095】
ループ部は、発振部101の出力により振動磁場Hを発生し、振動磁場Hを発振部101に効率的にフィードバックするため、発振部101の出力安定性を改善した発振装置を与える。
【0096】
第1のインダクタ301と第2のインダクタ301bは、たとえばループ部の軸部分に鉄芯やその他の磁石を配置した構成や、トロイダルコアに第1のインダクタ301と第2のインダクタ301bを設けた構成であっても良い。これらの構成は、誘導結合を強めたい場合に好ましい形態である。
【0097】
実施形態12では、発振器として実施形態6の発振器300を用いた例で説明したが、発振器は特に限定されず、例えば、他の実施形態における発振器を用いることができる。
【0098】
(実施形態13)
実施形態13では、実施形態12における発振部101を磁気抵抗効果素子105を用いた整流部とする。インダクタ301bに交流電流を流すことで、誘導結合した第1のインダクタ301は磁場を磁気抵抗効果素子105に印加するとともに、交流電流を磁気抵抗効果素子105に印加する。この場合、磁気抵抗効果素子105はスピントルクFMR効果により、交流電流を直流に整流させる素子として機能し、さらに同じ周波数の交流電流と振動磁場とが印加されたことで、より安定した整流作用を示す。したがって、この場合は整流装置となる。
【0099】
実施形態12では発振器300を用いて説明したが、他の実施形態の発振器において発振部101を磁気抵抗効果素子105とした整流部を用いて、整流装置を構成することができる。つまり、実施形態8から10で説明した整流器を用いて、整流装置を構成することができる。電磁気的な結合手段は、例えば、電磁誘導による誘導結合、容量による結合、電磁気的な共鳴による結合、電磁波による結合などを用いることができる。第1の電気回路103またはループ部は振動磁場Hを磁気抵抗効果素子105に印加し、磁気抵抗効果素子105はスピントルクFMR効果により交流を整流する。その場合の実施形態は、同じ周波数の信号電流と磁場とが印加されたことで、より安定した整流作用を示す整流装置となる。
【0100】
(実施形態14)
実施形態14では、実施形態13で説明した整流装置において、インダクタ301bに信号電流を流して、電磁的な結合により発生する磁場と電流とを、磁気抵抗効果素子105に印加する。この場合、磁気抵抗効果素子105はスピントルクFMR効果により信号電流を直流に整流して受信するので、実施形態14は受信装置となる。ここで電磁気的な結合とは、電磁誘導による誘導結合、容量による結合、電磁気的な共鳴による結合、電磁波による結合などを意味するが、これに限ったものではない。さらに磁気抵抗効果素子105は、同じ周波数成分を有する電流と振動磁場とが印加されたことで、より安定した受信作用を示す。
【0101】
(実施形態15)
実施形態15では、発振部101に磁場を印加する導体を、通信用のアンテナとして利用する。
【0102】
図16は実施形態15に係る送受信装置を示す図である。実施形態15の送受信装置1100は、実施形態1の発振器100と受信器1500とからなる。発振器100は、発振部101と、発振部101に並列に接続された第1の電気回路103からなる。受信器1500は第1の電気回路103が発生した電磁場を受ける手段を有する電気回路1102と、電気回路1102が受けた電磁場を受信信号に変換する変換部1103とからなる。発振部101と変換部1103の両方または一方に磁気抵抗効果素子105を用いることができる。
【0103】
第1の電気回路103と回路1102間の伝送は、例えば2つのループ部を対向させる電磁誘導法や、インダクタンスと容量とで共振周波数が決まるLC共鳴による電磁共鳴法、パターン導体の線路長により共振周波数が決まる電磁共鳴法、導体間の容量により結合させる等の手法が挙げられる。
【0104】
送受信装置1100の動作を説明する。ここでの説明においては、通信符号化方式にNRZ(Non−Return−to−Zero)を用いる。NRZは信号が「1」の時に電圧はゼロでなく、信号が「0」の時に電圧をゼロとする符号化方式である。但し、本発明で用いることができる符号化方式はこれに限ったものではない。
【0105】
信号値が「1」の時は、発振器100に「1」の時間間隔だけ電流を流す。その電流により発振部101は発振し、第1の電気回路103は振動磁場を発振部101にフィードバックする。発振部101は安定して発振し、第1の電気回路103から電磁場EMを回路1102に伝送する。回路1102で受信された電磁場EMは、変換部1103において受信信号に変換され、信号値「1」が伝達される。
【0106】
信号値が「0」の時は、発振器100に電流を流さないので、電磁場は受信器1500に伝送されない。つまり、信号値「0」が伝送される。
【0107】
変換部1103に磁気抵抗効果素子105を用いることができる。信号値「1」の時間間隔で発振部101が発振した高周波出力が、第1の電気回路103と回路1102を介して磁気抵抗効果素子105に入力されると、磁気抵抗効果素子105はスピントルクFMR効果により、高周波出力を直流出力に変換する。つまり、高周波出力となって伝送された信号値「1」を復調する。
【0108】
変換部1103に磁気抵抗効果素子105を用い、回路1102に第1の電気回路103を用いることができる。この場合は、第1の電気回路103の磁場が磁気抵抗効果素子105に印加されるので、受信器1500は安定した受信器となる。このように発振器に実施形態1の発振器100を用い、受信器に実施形態11の受信器を用いることができる。あるいは、他の実施形態による発振器と実施形態11の受信器を用いて、発振器と受信器を同じ構成とすることも、異なる構成とすることもできる。
【0109】
発振部101と磁気抵抗効果素子105とを、第1の電気回路103と回路1102が発生する振動磁場をフィードバックできるように配置することで、より送受信の安定化を実現できる。
【0110】
本実施形態では、発振部101に磁場をフィードバックするために設けた第1の電気回路103を、無線伝送用のアンテナとしても利用する。したがって、新たに無線伝送用のアンテナを設ける必要がなくなり、送受信装置の小型化が実現できる。ここでアンテナとは、波長より十分に大きい距離間での通信に用いるアンテナだけでなく、波長と同程度、または波長より小さい距離間の通信に用いるアンテナや共振器、その他の無線伝送部も含む。
【0111】
また、信号値が「0」の時は発振器100に電流が流れないため、通信に不要な電磁場が発生しない。つまり本実施形態は、省電力化、低ノイズ化の効果も期待できる。
【0112】
(実施形態16)
実施形態16では、実施形態15(
図16)の発振器100にかえて実施形態2の発振器130を用い、さらに、実施形態15の回路1102には送信側の発振器130と同じ構成を用いる。その場合は
図17に示すように、実施形態15の回路103はインダクタ131とキャパシタ132とで表現され、実施形態15の回路1102はインダクタ301bとキャパシタ303bとで表現される。発振部101と変換部1103に磁気抵抗効果素子105を用いれば、発振器と受信器を同じ構成とした送受信装置になる。この送受信装置では、磁場を印加する導体部を無線伝送に使用するアンテナとしても利用する。
【0113】
発振部101と磁気抵抗効果素子105とを、インダクタ131とインダクタ301bが発生する振動磁場をフィードバックできるように配置することで、より送受信の安定化を実現できる。
【0114】
第1の電気回路は、インダクタ131とキャパシタ132で構成されるため、共振周波数Frを有する。一方で発振部101は周波数frで発振する。発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとが等しい場合は、発振部101の発振周波数frで第1の電気回路が共振するため、第1の電気回路が発生した周波数Fr=frの振動磁場を発振部101に、より効率的にフィードバックできる。一方で、フィードバックの振動磁場が強すぎる場合は、フリー層106bの磁化が反転してしまうことで発振が停止してしまう。このような場合は、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとを異なる構成として、フィードバックの振動磁場強度を弱くすることが好ましい。ここで、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとが等しいとは、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとの差が、発振部の発振周波数frの10%以下であることを意味する。また、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとが異なるとは、発振部の発振周波数frと第1の電気回路の共振周波数Frとの差が、発振部の発振周波数frの10%を超えていることを意味する。
【0115】
(実施形態17)
実施形態17では、実施形態15(
図16)の発振器100に換えて実施形態6の発振器300を用い、さらに、実施形態15の回路1102には送信側の発振器300と同じ構成を用いる。その場合は
図18に示すように、実施形態15の回路103はインダクタ301と抵抗302とで表現され、実施形態15の回路1102はインダクタ301bと抵抗302bとで表現される。発振部101と変換部1103に磁気抵抗効果素子105を用いれば、発振器と受信器を同じ構成とした送受信装置になる。この送受信装置では、磁場を印加する導体部を無線伝送に使用するアンテナとしても利用する。
【0116】
発振部101と磁気抵抗効果素子105とを、インダクタ301とインダクタ301bが発生する振動磁場をフィードバックできるように配置することで、より送受信の安定化を実現できる。
【0117】
実施形態17は、分流効果により発振部101に大電流が流れることを防ぐため、発振部101を過電流から保護できる。大電流から素子を保護したい場合に、より好ましい形態である。
【0118】
実施形態16と17では、発振器にそれぞれ実施形態3と6の発振器を使用する場合を説明したが、他の実施形態の発振器を用いることもできる。受信器においても、実施形態11で説明した他の受信器を使用することができる。それら実施形態では、磁場をフィードバックする第1の回路103またはループ部を無線伝送用のアンテナとしても利用する。したがって、新たに無線伝送用のアンテナを設ける必要がなくなるため、送受信装置の小型化が可能になる。
【0119】
以上で説明した本発明の実施形態において、発振部101または磁気抵抗効果素子105の部分は、発振部101または磁気抵抗効果素子105の複数個を直列接続または並列接続、あるいはそれら接続の組合せとした構成を用いても良い。
【0120】
実施形態15から17は無線給電に応用することができる。入力を常に信号値が「1」の状態とすれば、無線電力供給が可能になる。