【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、あらたな放射性廃棄物を発生させることなく、しかも安全かつ短時間にオーバーパックを緩衝材から取り出すことが可能な人工バリア構造及びオーバーパックの回収方法を提供することを目的とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る人工バリア構造は請求項1に記載したように、放射性廃棄物が封入されたオーバーパックを緩衝材に埋設した人工バリア構造において、
底部とその周縁から立設された周壁部とで構成され該周壁部の上縁が開口を形成する有底円筒状の縁切り体を、該周壁部が前記オーバーパックの周面から離間した状態で該オーバーパックを取り囲むように前記緩衝材に埋設し、前記底部をその厚さ方向に沿った引張荷重伝達が遮断されるように構成するとともに、前記周壁部をその厚さ方向に直交する方向に沿ったせん断荷重伝達が遮断されるように構成したものである。
【0016】
また、本発明に係る人工バリア構造は請求項2に記載したように、放射性廃棄物が封入されたオーバーパックを緩衝材に埋設した人工バリア構造において、
底部とその周縁から立設された周壁部と該周壁部の上縁から延びる頂部とで構成された中空円柱状の縁切り体を、該周壁部が前記オーバーパックの周面から離間した状態で該オーバーパックを取り囲むように前記緩衝材に埋設し、前記底部及び前記頂部をそれらの厚さ方向に沿った引張荷重伝達がそれぞれ遮断されるように構成するとともに、前記周壁部をその厚さ方向に直交する方向に沿ったせん断荷重伝達が遮断されるように構成したものである。
【0017】
また、本発明に係る人工バリア構造は、前記縁切り体を砂で構成したものである。
【0018】
また、本発明に係るオーバーパックの回収方法は請求項4に記載したように、請求項1記載の人工バリア構造から前記オーバーパックを回収する方法であって、前記緩衝材にその表面と前記周壁部の上縁との間にわたってほぼ鉛直方向に延びる環状の切削溝を形成することにより、前記緩衝材を前記切削溝の高さ範囲において前記周壁部に囲まれた領域の直上に位置する内側領域とそれを取り囲む外側領域とに分断し、
前記内側領域の緩衝材を、前記周壁部に囲まれた領域の緩衝材及び前記オーバーパックとともに引き上げるものである。
【0019】
また、本発明に係るオーバーパックの回収方法は請求項5に記載したように、請求項2記載の人工バリア構造から前記オーバーパックを回収する方法であって、前記緩衝材にその表面と前記周壁部及び前記頂部の環状取合い部との間にわたってほぼ鉛直方向に延びる環状の切削溝を形成することにより、前記緩衝材を前記切削溝の高さ範囲において前記頂部の直上に位置する内側領域とそれを取り囲む外側領域とに分断し、
前記内側領域の緩衝材を引き上げるとともに前記頂部を撤去し、
前記周壁部に囲まれた領域の緩衝材を前記オーバーパックとともに引き上げるものである。
【0020】
また、本発明に係るオーバーパックの回収方法は、前記引上げ工程の前に、前記切削溝が前記底部の周縁近傍まで延びるように前記周壁部を切削したものである。
【0021】
また、本発明に係るオーバーパックの回収方法は、前記縁切り体を砂で構成したものである。
【0022】
[第1の発明]
第1の発明に係る人工バリア構造においては、放射性廃棄物が封入されたオーバーパックを緩衝材に埋設するにあたり、有底円筒状の縁切り体を、その周壁部がオーバーパックの周面から離間した状態で該オーバーパックを取り囲むように緩衝材に埋設してあるとともに、縁切り体の底部については、その厚さ方向に沿った引張荷重伝達が、周壁部については、その厚さ方向に直交する方向に沿ったせん断荷重伝達がそれぞれ遮断されるように構成してある。
【0023】
このようにすると、周壁部に囲まれた領域の緩衝材に鉛直上方の荷重が作用したとき、その荷重が縁切り体の底部の直下に引張力として伝達することはないし、同じく周壁部の側方にせん断力として伝達することもない。
【0024】
つまり、上述した鉛直上方の荷重に対し、縁切り体の下方や側方で反力が生じないため、周壁部に囲まれた領域の緩衝材及びオーバーパックを、その直上の緩衝材とともに、あるいは該緩衝材が除去された状態で容易に引き上げることが可能となり、かくしてオーバーパックの下面や周面に大きな引張力やせん断付着力が緩衝材から作用することなく、オーバーパックを回収することができる。
【0025】
[第2の発明]
第1の発明に係る人工バリア構造からオーバーパックを回収するにあたり、周壁部に囲まれた領域の直上に位置する緩衝材をどのように除去するかは任意であって、例えば粒状のドライアイスをブラスト材として緩衝材に吹き付けることで、上述の緩衝材を粉砕除去することが可能であるが、第2の発明においては、緩衝材にその表面と周壁部の上縁との間にわたってほぼ鉛直方向に延びる環状の切削溝を形成することにより、上述の緩衝材を切削溝の高さ範囲において周壁部に囲まれた領域の直上に位置する内側領域とそれを取り囲む外側領域とに分断し、次いで、内側領域の緩衝材を、周壁部に囲まれた領域の緩衝材及びオーバーパックとともに引き上げる。
【0026】
このようにすれば、切削溝を形成するためのわずかな範囲を切削するだけで、周壁部に囲まれた領域の直上に拡がる緩衝材をブロックとして除去可能となり、かくしてオーバーパックをさらに短い時間で回収することが可能となる。
【0027】
[第3の発明]
また、第3の発明に係る人工バリア構造においては、放射性廃棄物が封入されたオーバーパックを緩衝材に埋設するにあたり、中空円柱状の縁切り体を、その周壁部がオーバーパックの周面から離間した状態で該オーバーパックを取り囲むように緩衝材に埋設してあるとともに、縁切り体の底部及び頂部については、その厚さ方向に沿った引張荷重伝達が、周壁部については、その厚さ方向に直交する方向に沿ったせん断荷重伝達がそれぞれ遮断されるように構成してある。
【0028】
このようにすると、周壁部に囲まれた領域の直上に位置する緩衝材に鉛直上方の荷重が作用したとき、その荷重が縁切り体の頂部直下に引張力として伝達することはないし該頂部直下で反力が発生することもなく、よって周壁部に囲まれた領域の直上に位置する緩衝材を、それらを取り囲む緩衝材と分断されている状態であれば、容易に引き上げることができる。
【0029】
また、周壁部に囲まれた領域の緩衝材に鉛直上方の荷重が作用したとき、その荷重が縁切り体の底部の直下に引張力として伝達することはないし、同じく周壁部の側方にせん断力として伝達することもないため、縁切り体の底部直下や周壁部の側方で反力が発生することもなく、よって周壁部に囲まれた領域の緩衝材及びオーバーパックを、容易に引き上げることができる。
【0030】
したがって、オーバーパックの下面や周面に大きな引張力やせん断付着力が緩衝材から作用することなく、オーバーパックを回収することが可能となる。
【0031】
[第4の発明]
第4の発明においては、第3の発明に係る人工バリア構造からオーバーパックを回収するにあたり、まず、緩衝材に環状の切削溝を形成する。
【0032】
環状の切削溝は、緩衝材の表面と縁切り体を構成する周壁部及び頂部の環状取合い部との間にほぼ鉛直方向に延びるように形成する。
【0033】
このようにすると、緩衝材は、切削溝の高さ範囲において頂部の直上に位置する内側領域とそれを取り囲む外側領域とに分断されるので、次に、内側領域の緩衝材を引き上げ、次いで頂部を撤去した後、周壁部に囲まれた領域の緩衝材をオーバーパックと一緒に引き上げる。
【0034】
このようにすれば、上述した頂部の縁切り作用とも相俟って、切削溝を形成するためのわずかな範囲を切削するだけで、周壁部に囲まれた領域の直上に位置する緩衝材をブロックとして除去可能となり、かくしてオーバーパックをさらに短時間で回収することが可能となる。
【0035】
[第2の発明及び第4の発明共通]
第2の発明及び第4の発明においては、過大な膨潤圧が緩衝材から周壁部に作用することにより、該周壁部が上述のせん断荷重伝達を十分に遮断できず、その結果、迅速な引上げが難しくなる場合が想定されるが、周壁部は、縁切り体の一部として構成してあるため、緩衝材に比べれば脆弱な部位となっている。
【0036】
そのため、上述の場合においては、各引上げ工程の前に、切削溝が底部の周縁近傍まで延びるように周壁部を切削すればよい。
【0037】
このようにすれば、緩衝材に過大な膨潤圧が発生した場合であっても、周壁部に囲まれた領域の直上に位置する緩衝材をブロックとして除去可能となり、かくしてオーバーパックを短時間で回収することが可能となる。
【0038】
[各発明共通]
縁切り体は、底部や頂部であれば、厚さ方向に沿った引張荷重伝達が遮断されるように、周壁部であれば、厚さ方向に直交する方向に沿ったせん断荷重伝達が遮断されるように構成できる限り、どのような材料で構成するかは任意であるが、砂で構成する場合が典型例となる。