特許第6323670号(P6323670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6323670
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】脱臭フィルター用濾材
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20180507BHJP
   B03C 3/28 20060101ALI20180507BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20180507BHJP
   B03C 3/017 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   B01D39/16 E
   B01D39/16 A
   B03C3/28
   A61L9/16 D
   B03C3/017 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-115615(P2014-115615)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-13284(P2015-13284A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-120617(P2013-120617)
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日高 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】後藤 禎仁
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−117024(JP,A)
【文献】 特開2012−125714(JP,A)
【文献】 特開2008−043885(JP,A)
【文献】 特開2008−104557(JP,A)
【文献】 特開2007−301434(JP,A)
【文献】 実開平05−063608(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/14−18
A61L 9/16
B03C 3/017
B03C 3/28
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層間に吸着剤と接着剤とからなる吸着層を挟みこんだ積層構造体からなる濾材であって、基材層の少なくとも一層が熱融着系長繊維からなる不織布と混繊不織布とをニードルパンチにて積層一体化し摩擦帯電を行った積層シートであり、前記吸着層と前記積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布とが隣接するように積層され、熱融着されており、
前記熱融着系長繊維からなる不織布は、芯鞘構造の複合熱融着系長繊維からなる、脱臭フィルター用濾材。
【請求項2】
求項1に記載の脱臭フィルター用濾材からなるフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着性と剛性に優れた脱臭フィルター用濾材に関するものであって、低圧力損失、高粉塵保持量を有する脱臭フィルター用濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空調用、エアコン用、自動車用フィルター等の分野において、濾材の高性能化、低コストの要求が高まってきており、除塵性能と脱臭性能を両立するフィルター用濾材の検討が多くなされている。一般に脱臭性能を付与するには、粒子状あるいは繊維状の吸着剤と接着剤を用いてシート化する方法が多く採用されており、例えば基材間に粒状吸着剤と粒状接着剤の混合物を散布し、これを加熱接着してなる吸着濾材が開発されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、かかる吸着濾材は接着強度が弱いため、吸着剤の脱落や剛性の低下という問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するには、接着剤の混合比率を高める方法が挙げられるが、吸着剤表面への被膜による脱臭性能の低下や、圧力損失の増加を引き起こす。特許文献2には、ニードルパンチ不織布層と吸着層が隣接しており、かかるニードルパンチ不織布の毛羽が吸着層に入り込み、アンカー効果によって接着強度を高めているが、さらなる高性能化の要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−5058号公報
【特許文献2】特開2007−301434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は接着性と剛性を高めながらも脱臭性能を十分に発揮でき、圧力損失や粉塵保持量に優れた脱臭フィルター用濾材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを
見出し、本発明に到達した。本発明は以下のとおりである。
(1)基材層間に吸着剤と接着剤からなる吸着層を挟みこんだ積層構造体からなる濾材であって、基材層の少なくとも一層が熱融着系長繊維からなる不織布と混繊不織布を積層一体化し摩擦帯電を行った積層シートであり、吸着層と前記積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布とが隣接するように積層され、熱融着されている脱臭フィルター用濾材。
(2)前記熱融着系長繊維からなる不織布が、芯鞘構造の複合熱融着系長繊維からなる不織布である(1)に記載の脱臭フィルター用濾材。
【発明の効果】
【0007】
本発明は接着性と剛性に優れた脱臭フィルター用濾材に関するものであって、低圧力損失、高粉塵保持量を有する脱臭フィルター用濾材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は基材層間に吸着剤と接着剤からなる吸着層を挟みこんだ積層構造体からなる濾材であって、基材層の少なくとも一層が熱融着系繊維からなる長繊維不織布と混繊不織布をニードルパンチで積層一体化し摩擦帯電を行った積層シートであり、吸着層と前記積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布とが隣接するように積層された濾材であり、熱融着系長繊維からなる不織布を構成する熱融着系長繊維の低融点成分と吸着層が熱融着により強固に接着していることを特徴とする。
【0009】
熱融着系短繊維からなる不織布では、熱融着系短繊維の低融点成分と吸着剤は接着するものの、短繊維が厚み方向にも動きやすいため、吸着剤の自由度が大きく、濾材として十分な剛性が得られない。それに対し、熱融着系長繊維からなる不織布であれば、繊維は厚み方向へ動きづらいため、熱融着系長繊維からなる不織布に接着した吸着剤の自由度が小さく、濾材として高い剛性が得られる。
【0010】
本発明の熱融着系長繊維からなる不織布は、芯鞘構造の複合長繊維を構成繊維とし、芯部の素材は高融点であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等であり、鞘部の素材は低融点であるポリエチレン、ポリプロピレン、低融点ポリエステル等であることが好ましい。
熱融着系長繊維が芯鞘構造であれば鞘部分が熱融着により減少しても、芯成分が残っているため熱融着系長繊維からなる不織布の平面性は損なわれず、繊維が厚み方向に動くことはないため、濾材として高い剛性を維持することができる。
【0011】
本発明の熱融着系長繊維からなる不織布の目付は5〜40g/mが好ましく、10〜30g/mがより好ましい。目付が5g/m未満では吸着層と熱融着する面積が小さく、十分な接着強度が得られない。一方、40g/mを超えると、繊維本数の増加に伴い圧力損失が高くなるばかりか、繊維間の粉塵保持空間が減少し、粉塵保持量が低下する。
【0012】
本発明の熱融着系長繊維からなる不織布を構成する熱融着系長繊維の繊維径は3〜100μmが好ましく、5〜80μmがより好ましく、10〜60μmがさらに好ましい。かかる範囲であれば、柔軟性を保持しつつ、吸着層とエレクトレットニードルパンチ不織布をつなぎ止め、接着強度の向上と高剛性化の役割を十分に果たすことができるからである。
【0013】
本発明の脱臭フィルター用濾材において、摩擦帯電される混繊不織布の使用は必須である。濾材の高性能化の要求が高まっており、脱臭性能と微細塵除去性能の両方の特性を併せ持つ必要があるからである。
本発明の混繊不織布は、ポリオレフィン系繊維およびポリエステル系繊維から構成され摩擦帯電される濾材が好ましい。素材は特に限定されず、ポリオレフィン系繊維には、ポリエチレン、ポリプロピレン等を、ポリエステル系繊維には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル等を用いることができる。
【0014】
本発明の混繊不織布を構成するポリオレフィン系繊維とポリエステル系繊維の繊維径は、3〜30μmが好ましい。かかる範囲であれば低圧力損失であり、微細塵を十分に除去できるためである。ポリオレフィン系繊維とポリエステル系繊維の混合割合は質量比率で30:70〜70:30が好ましい。かかる範囲であれば有効に荷電することが出来るためである。
【0015】
本発明の混繊不織布を構成する繊維の断面形状は特に限定されず、円形、三角形、矩形、異形など何れでも良いが、好ましくは円形断面の繊維である。例えば矩形断面繊維であると、繊維同士の接触面積が増大し、有効繊維表面積の減少を引き起こすからである。繊維断面形状は直線部を有さない形状であれば、真円に限らず楕円形などでも良い。またその繊維長は、混繊不織布のシート化手段にもよるが、10〜100mmが好ましく、30〜80mmがより好ましい。かかる範囲であれば、該繊維のカーディングにおいて、より均一なウェブを作製することができるからである。
【0016】
本発明の混繊不織布の目付は10〜100g/m2が好ましく、10〜50g/m2がより好ましい。10g/m2未満であると十分に微細塵を除去することが出来ない。また100g/m2を超えてしまうと、圧力損失が増大してしまうため、フィルターを使用する上で好ましくない。
【0017】
熱融着系長繊維からなる不織布と混繊不織布との積層方法は、ニードルパンチにより積層する。ニードルパンチにより積層一体化すると、混繊不織布の構成繊維が熱融着系長繊維からなる不織布と厚み方向に強く交絡し、突き抜けた繊維が吸着層と接着し、二次的に接着強度を高めることが出来るからである。
【0018】
本発明における吸着剤は、粉末状、粒状、破砕状、造粒状、ビーズ状が挙げられるが、幅広く種々のガスを吸着できる活性炭系が好ましい。例えば、ヤシガラ系、木質系、石炭系、ピッチ系等の活性炭が好適である。表面観察によって見られる内部への導入孔いわゆるマクロ孔数は多い方がよい。活性炭と熱可塑性粉末樹脂から混合粉粒体をつくった際に、熱可塑性粉末樹脂が活性炭表面を被覆しても、熱プレス加工時に細孔内部からのガス脱着により、吸着可能な細孔を開放することができる。また、活性炭表面はある程度粗い方が溶融した樹脂の流動性も悪くなり、吸着性能低下を抑えることができる。
【0019】
本発明の吸着剤の粒径範囲は、通気性、吸着材の脱落、シート加工性等を考慮して、JIS標準ふるい(JIS Z8801)による値で60〜1000μmが好ましく、100〜900μmがより好ましい。粒径範囲が60μm未満では、一定の高吸着容量を得るのに圧力損失が大きくなりすぎ、またシート充填密度が高くなるために粉塵負荷時の圧力損失の上昇が早くなり、粉塵保持量が低下する。1000μmを超える場合には、シートからの脱落が生じ易くなり、またワンパスでの初期吸着性能が極端に低くなり、さらにはプリーツ形状及び波状等の空気浄化用フィルターユニットとしたときの折り曲げ、及び波状加工時の加工性が悪くなる。なお、上記の粒状粉粒状吸着剤は、通常の分級機を使用して所定の粒度調整をすることにより、得ることが可能である。
【0020】
本発明の濾材の基材層間に挟み込まれる吸着剤の量は、10〜450g/mが好ましく、50〜350g/mがより好ましい。かかる範囲であれば、圧力損失の大幅な上昇を抑えつつ、十分な脱臭性能を得ることができる。
【0021】
本発明の脱臭フィルター用濾材に用いられる吸着剤は、極性物質やアルデヒド類の吸着性能を向上することを目的として、薬品処理を施して用いてもよい。ガス薬品処理に用いられる薬品としては、アルデヒド系ガスやNOx等の窒素化合物、SOx等の硫黄化合物、酢酸等の酸性の極性物質に対しては、例えばエタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、P−アニシジン、スルファニル酸等のアミン系薬剤や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、5.5−ジメチルヒダントイン、ベンゾグアナミン、2.2−イミノジエタノール、2.2.2−ニトロトリエタノール、エタノールアミン塩酸塩、2−アミノエタノール、2.2−イミノジエタノール塩酸塩、P−アミノ安息香酸、スルファニル酸ナトリウム、L−アルギニン、メチルアミン塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩、ヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸ヒドロキシルアミン、過マンガン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が好適に用いられ、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン等の塩基性の極性物質に対しては、例えば、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸等が好適に用いられる。これらの薬品処理した吸着剤は、薬品処理していない吸着剤と混合して使用しても良い。なお、薬品処理は、例えば、吸着剤に薬品を担持させたり、添着することにより行う。また、吸着剤に直接薬品を処理する以外に、シート面表面付近に通常のコーティング法等で添着加工する方法やシート全体に含浸添着することも可能である。この際、アルギン酸ソーダやポリエチレンオキサイド等の増粘剤を混入した薬品水溶液をつくり、これを担持、添着を実施する方法もできる。この方法では水への溶解度が低い薬品を担持、添着し、さらに薬品の脱落を抑制するのにも有効である。
【0022】
本発明に使用する接着剤は、熱可塑性粉末樹脂であることが好ましい。粉末樹脂であれば吸着剤および熱融着系長繊維からなる不織布と混繊不織布とを積層一体化した積層シートの毛羽や低融点部分に均一に分散することができる。熱可塑性粉末樹脂の種類としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂等が挙げられる。
【0023】
本発明の接着剤に使用する熱可塑性粉末樹脂の大きさは平均粒子径で1〜40μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。さらに好ましくは1〜40μmの範囲に95重量%以上が含まれることである。かかる範囲の平均粒子径であれば、熱可塑性樹脂が、粉粒状吸着剤の表面細孔を塞ぐことを低減できる一方、吸着剤との混合時にファンデルワールス力や静電気力による粉粒状吸着剤への予備接着が有効になされ、均一に分散することができ、吸着剤層と基材層の部分的剥離を効果的に防止することができるからである。
【0024】
本発明の接着剤に使用する熱可塑性粉末樹脂の形状は特に規定はないが、球状、破砕状等があげられる。当然ながら、2種以上の熱可塑性粉末樹脂を併用もできる。さらには、薬品担持した粉粒状吸着剤あるいは薬品担持した基材不織布を使用した場合でもこの処方であれば、粉粒状吸着剤表面に熱可塑性粉末樹脂がドライ状態の混合時から仮接着した状態になるため仮に該薬品が相異なる性質のものであっても後のシート化工程でも互いに干渉することを避けることができるので充分な効果が発揮される。
【0025】
本発明の脱臭フィルター用濾材に含まれる熱可塑性粉末樹脂は粉粒状吸着剤に対して1〜40重量%使用するのが好ましく、3〜30重量%使用するのがより好ましい。かかる範囲内であれば、基材層との接着力、圧力損失、脱臭性能に優れる脱臭フィルター用濾材が得られるからである。
【0026】
本発明の脱臭フィルター用濾材は、抗菌剤、抗かび剤、抗ウイルス剤、難燃剤等の付随的機能を有する成分等を含めて構成してもよい。これらの成分は繊維類や不織布中に練り込んでも、後加工で添着、及び担持して付与してもよい。例えば、難燃剤を含めて構成することにより、FMVSS.302で規定されている遅燃性の基準やUL難燃規格に合致した脱臭フィルター用濾材を製造することが可能である。
【0027】
本発明の脱臭フィルター用濾材を最終的に熱プレスしシート製造するには、よく使用されるロール間熱プレス法、あるいは上下ともフラットな熱ベルトコンベヤー間にはさみこむフラットベッドラミネート法等があげられる。より均一な厚み、接着状態をつくりだすには後者の方がより好ましい。また、本特許で記載する基材層用積層シートと上記製法の特徴の組み合わせにより、粉粒状吸着剤同志の過度の結着を抑制することができると同時に、基材層用積層シートとの実用上充分な接着強力を得ることができる。
【0028】
本発明の脱臭フィルター用濾材の製法について説明する。まずは、吸着剤と接着剤を所定の重量秤量し、攪拌機に入れ、約10分間回転速度30rpmで攪拌する。次にこの混合粉末を前記積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側に散布し、さらにその上から基材層を重ね合わせ、熱プレス処理を行なう。熱プレスの際のシート表面温度は熱可塑性樹脂の融点の3〜30℃、好ましくは5〜20℃高いのが好ましい。
【0029】
本発明の脱臭フィルター用濾材の厚みは0.1〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.0mmがより好ましい。厚みが0.1mm未満であれば粉塵捕集空間が小さいため、粉塵負荷時の圧力損失の上昇が早く、目詰まりが発生する。また3.0mmを超えるとシート全体の厚みが厚すぎるため、プリーツ状ユニットとした場合に構造抵抗が大きくなり、結果としてユニット全体での圧力損失が高くなり過ぎ実用上問題がある。
【0030】
本発明の脱臭フィルター用濾材の目付は、30〜500g/mであることが好ましい。目付が30g/m未満であれば濾材の剛性が弱いため、通風負荷時にユニットが変形し、圧力損失が増大する。500g/mを超えるとシート厚みが厚くなるためプリーツ状ユニットとした場合の構造抵抗が大きくなり実用上問題となる。
【0031】
本発明の脱臭フィルター用濾材を使用したプリーツ状フィルタユニットの厚みは、10〜400mmが好ましい。カーエアコンに内蔵装着をはじめとする車載用途や家庭用空気清浄機であれば、通常の内部スペースの関係から、10〜60mm程度、ビル空調用途へよく設置される大型のフィルターユニットであれば40〜400mm程度が収納スペースから考えると好ましい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。実施例中に示した特性は以下の方法で測定した。
【0033】
(圧力損失)
濾材をダクト内に設置し、空気濾過速度が31cm/秒になるよう大気を通気させ、濾材の上流、下流の静圧差を差圧計にて読み取り、圧力損失(Pa)を測定した。
【0034】
(0.3μm粒子捕集効率)
濾材をダクト内に設置し、空気濾過速度が16cm/秒になるよう大気を通気させ、濾材の上流、下流の0.3〜0.5μm粒子の個数濃度をパーティクルカウンターにて計測し、次式にて粒子捕集効率を算出した。
粒子捕集効率(%)=[1−(下流側濃度/上流側濃度)]×100
【0035】
(接着強度)
上流側、下流側の基材層間の平均剥離強度を測定。試験片のサイズは巾50mm、長さ200mmとして、引張強度100mm/分として実施。
【0036】
(剛性)
JIS L−1096 A法(ガーレ法)に準拠し、MD方向の剛軟度を測定した。
【0037】
(トルエン除去効率)
濾材をダクト内に設置し、空気濾過速度が16cm/秒になるよう大気を通気させ、濾材の上流側の濃度が80ppmになるようにトルエンガスを注入する。測定開始から1分後の上下流側濃度を炭化水素計にて測定し、次式にてトルエンガスの初期除去効率を算出した。
トルエン除去効率(%)=[1−(下流側濃度/上流側濃度)]×100
【0038】
(圧力損失)
フィルターをダクト内に設置し、空気濾過速度が31cm/秒になるよう大気を通気させ、フィルターの上流、下流の静圧差を差圧計にて読み取り、圧力損失(Pa)を測定した。
【0039】
(ASHRAE粉塵保持量)
フィルターをダクト内に設置し、空気濾過速度が31cm/秒になるように大気を通気させ、フィルター上流側からASHRAE粉塵を1.0g/mの濃度にて負荷し、圧力損失が200Paになるまで粉塵を負荷した。この時の試験時間中に投入した粉塵保持量を計測し、粉塵保持量(g/個)とした。
【0040】
〔実施例1〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/mのポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.1の混合粉末を目付220g/mになるように散布し、さらに上から基材層として目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0041】
〔実施例2〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/mのポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.05の混合粉末を目付210g/mになるように散布し、さらに上から基材層として目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0042】
〔実施例3〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付15g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/mのポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.05の混合粉末を目付315g/mになるように散布し、さらに上から基材層として目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0043】
〔実施例4〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付45g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付20g/mのポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.05の混合粉末を目付315g/mになるように散布し、さらに上から基材層として目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0044】
〔実施例5〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付45g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/mのポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.05の混合粉末を目付315g/mになるように散布し、さらに上から目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0045】
〔実施例6〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/mのポリエステルとポリエチレンで構成されるサイドバイサイド型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.1の混合粉末を目付220g/mになるように散布し、さらに上から目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0046】
〔実施例7〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付35g/mのポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.1の混合粉末を目付220g/mになるように散布し、さらに上から目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0047】
〔実施例8〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/mのポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)で構成される芯鞘型複合熱融着系長繊維(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.1の混合粉末を目付440g/mになるように散布し、さらに上から目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0048】
〔比較例1〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートをニードルパンチにて繊維同士を摩擦させ、エレクトレット処理を行なった。
得られたエレクトレット不織布へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.1の混合粉末を目付220g/mになるように散布し、さらに上から基材層として目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0049】
〔比較例2〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートをニードルパンチにて繊維同士を摩擦させ、エレクトレット処理を行なった。
得られたエレクトレット不織布へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.2の混合粉末を目付240g/mになるように散布し、さらに上から基材層として目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0050】
〔比較例3〕
ポリプロピレン繊維(2.2dtex、51mm)と、ポリエステル繊維(1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、目付12g/mの低融点ポリエステル(繊維径30μm)からなる不織布を、ニードルパンチにより積層一体化し、さらに摩擦帯電を行い、エレクトレット積層シートを得た。
得られたエレクトレット積層シートの熱融着系長繊維からなる不織布側へ、平均粒径550μmのヤシガラ活性炭および熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209の重量比1:0.1の混合粉末を目付220g/mになるように散布し、さらに上から目付77g/mのサーマルボンド不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行なった。
この濾材をプリーツ機にて山高さ28mm、ピッチ6mmのプリーツ状に加工し、外形200mm×200mmのフィルターを作製した。
得られた濾材及びフィルターの各種測定結果を表1に記載した。
【0051】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は圧力損失や粉塵保持量に優れた脱臭フィルター用濾材であるため、長時間使用可能である。本発明の産業上の有用性は高い。