特許第6323785号(P6323785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6323785
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】網目研削砥石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/12 20060101AFI20180514BHJP
   B24D 5/00 20060101ALI20180514BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20180514BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   B24D5/12 Z
   B24D5/00 P
   B24D3/00 320B
   B24D3/00 320A
   B24D3/00 340
   B24D3/06 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-203045(P2016-203045)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-51746(P2018-51746A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年2月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509153364
【氏名又は名称】伊藤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】松原 守
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】子安 玲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光希
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸男
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−021849(JP,U)
【文献】 実開平02−104969(JP,U)
【文献】 実開昭64−004564(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3160335(JP,U)
【文献】 特開昭63−283866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D3/00−99/00
B24B27/06
B28D1/00−7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目シートを円板状に成型した網目円板の砥石円板は、一層の網目円板体であり、上記網目円板体の外周面は、平面となし、上記網目円板体の外周面にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒を固着させた網目研削砥石の製造方法であって、
網目シートを円板状に切断成型した網目円板を一層の網目円板体とする成形工程と、上記網目円板体の外周面を平面と成す外周面加工工程と、電気絶縁質の治具となる一対の円形基板は上記網目円板体の外周径よりもやや小径と成すとともに中心孔に挿通した電気絶縁質の締結具で両側から把持する装着工程と、上記網目円板体において一対の円形基板の外周縁から露出した外周径面に砥粒を固着させる砥粒固着工程と、上記締結具を一対の円形基板から離脱して円板積層体の外周に砥粒を固着形成した網目研削砥石を摘出する離脱工程と、研削液をセンタースルーで網目研削砥石に供給する工具ホルダに取付ける装着工程と、からなることを特徴とする網目研削砥石の製造方法。
【請求項2】
網目シートを円板状に成型した網目円板の砥石円板は、多層に積層された円板積層体であり、上記円板積層体の外周面は、平面,凸面,凹面,段差面等の任意面形状の一つとなし、上記円板積層体の外周面にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒を固着させたことを特徴とする網目研削砥石の製造方法であって、
網目シートを円板状に切断成型した網目円板を多層に積層した円板積層体とする積層工程と、上記円板積層体の外周面を平面,凸面,凹面,段差面等の任意面形状の一つと成す外周面加工工程と、電気絶縁質の治具となる一対の円形基板は上記円板積層体の外周径よりもやや小径と成すとともに中心孔に挿通した電気絶縁質の締結具で両側から把持する装着工程と、上記円板積層体において一対の円形基板の外周縁から露出した外周径面に砥粒を固着させる砥粒固着工程と、上記締結具を一対の円形基板から離脱して円板積層体の外周に砥粒を固着形成した網目研削砥石を摘出する離脱工程と、研削液をセンタースルーで網目研削砥石に供給する工具ホルダに取付ける装着工程と、からなることを特徴とする網目研削砥石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網目シートを加工して得られた網目円板を利用したマルチな研削面に対応可能な網目研削砥石とこの製造方法に関し、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の網目シートを円形に裁断後、該円形シートを一層の網目円板又は多層に重ねた積層円板とし、この積層円板の外周面の断面形状を薄板砥石、広幅砥石(フラット)、R断面(円弧面)、段差断面(フォームド)他の断面形状の研削を可能に外周面縁に砥粒を固着させた網目研削砥石とこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金網体や繊維布や不織布他の網目シートを円板に形状し、この外周面に電着他の公知の固着手段により各種砥粒を固着させた研削砥石が提供されている。一枚構成の研削砥石による薄板切断用から、複数枚を積層して幅広な研削砥石としてワークの平面研削を行うフラット砥石。更に、金網体や繊維布や不織布他のシートをカップ状体とし、この先端円周に固着させた砥粒により板材の穴明け研削砥石として提供されている。上記各砥石は、金網体や繊維布や不織布他のシートを基体(骨組体)としているから、金網体や繊維布を構成する網目穴を介し、クーラント液(冷却液)を砥石内に介して砥粒まで供給できるメリットがある。
【0003】
以下、上記金網体や繊維布や不織布他のシート体による研削砥石が多数提供されているが、その一つの公知例を説明する。
研削工具において、砥粒の保持力を高め、耐用寿命を増大し、且つ切削屑の排除を良好にし、高精度の加工を高速度に行えるよう改良したものがある。より具体的には、炭素、ガラス、セラミックス、熱硬化性樹脂、金属等の繊維を、織、編、もしくは不織により多層に多孔質に形成したチューブ1に、多孔質の穴の中から表面にかけて砥粒2を固着する。固着は電気メッキ、無電解メッキとか、PVD、CVDの気相メッキ、レーザー溶着による。この砥粒2を固着したチューブ1より成る研削部材をシャンク3に固定して取付け、シャンク3には中心軸に冷却液の供給孔3aとチューブ1の嵌合部分に開口3bが形成され、多孔質チューブの穴1aから冷却液の噴出ができるようにして成るものでがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平5−208371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開平5−208371号公報における研削工具は、炭素、ガラス、セラミックス、熱硬化性樹脂、金属等の繊維を、織、編、もしくは不織により多層に多孔質に形成したチューブ1に、多孔質の穴の中から表面にかけて砥粒2を固着する。これにより、砥粒2を固着したチューブ1より成る研削部材をシャンク3に固定して取付け、シャンク3には中心軸に冷却液の供給孔3aとチューブ1の嵌合部分に開口3bが形成され、多孔質チューブの穴1aから冷却液の噴出ができる。然し乍ら、砥石外周面は多孔質の穴の中から表面にかけて砥粒2が固着されているから狭い隙間の穴となり、短期間の間に穴の目詰まりを起こしてしまい、初期の冷却液の噴出が維持できなくなると言う、問題点が指摘される。
【0007】
また、ねじ棒(先端を砥石の台金の様に外径を太くした棒状体)の先端に、ナイロン樹脂を嵌め込みこのナイロン樹脂の外周に多孔質の砥粒を焼結固着させたステック状砥石が提供されている。このような砥石のねじ棒の中心孔から冷却液を供給しても、短期間の間に穴の目詰まりを起こしてしまい、初期の冷却液の噴出が維持できなくなると言う、問題点が指摘される。
【0008】
本願発明者は、上記の如く多孔質の環状砥石等々が持つ問題点に鑑みてなされた。即ち、網目シート又は網目円板は、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の網目シートを台金に一層又は多層に巻付けて成型するか、網目円板を複数枚積層して成型された砥石円板に対して、上記砥石外周に砥粒を固着したフラット研削砥石であり、且つこの製造方法に係り、特に、冷却液の噴出が安定して長期間維持できるように、砥粒を外周周辺に合理的手段により形成して固着する砥粒固着した網目研削砥石とこの製造方法を研究開発した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の網目研削砥石の製造方法は、網目シートを円板状に成型した網目円板の砥石円板は、一層の網目円板体であり、上記網目円板体の外周面は、平面となし、上記網目円板体の外周面にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒を固着させた網目研削砥石の製造方法であって、
網目シートを円板状に切断成型した網目円板を一層の網目円板体とする成形工程と、上記網目円板体の外周面を平面と成す外周面加工工程と、電気絶縁質の治具となる一対の円形基板は上記網目円板体の外周径よりもやや小径と成すとともに中心孔に挿通した電気絶縁質の締結具で両側から把持する装着工程と、上記網目円板体において一対の円形基板の外周縁から露出した外周径面に砥粒を固着させる砥粒固着工程と、上記締結具を一対の円形基板から離脱して円板積層体の外周に砥粒を固着形成した網目研削砥石を摘出する離脱工程と、研削液をセンタースルーで網目研削砥石に供給する工具ホルダに取付ける装着工程と、からなることを特徴とする網目研削砥石の製造方法。
【0013】
請求項2記載の網目研削砥石の製造方法は、網目シートを円板状に成型した網目円板の砥石円板は、多層に積層された円板積層体であり、上記円板積層体の外周面は、平面,凸面,凹面,段差面等の任意面形状の一つとなし、上記円板積層体の外周面にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒を固着させたことを特徴とする網目研削砥石の製造方法であって、
網目シートを円板状に切断成型した網目円板を多層に積層した円板積層体とする積層工程と、上記円板積層体の外周面を平面,凸面,凹面,段差面等の任意面形状の一つと成す外周面加工工程と、電気絶縁質の治具となる一対の円形基板は上記円板積層体の外周径よりもやや小径と成すとともに中心孔に挿通した電気絶縁質の締結具で両側から把持する装着工程と、上記円板積層体において一対の円形基板の外周縁から露出した外周径面に砥粒を固着させる砥粒固着工程と、上記締結具を一対の円形基板から離脱して円板積層体の外周に砥粒を固着形成した網目研削砥石を摘出する離脱工程と、研削液をセンタースルーで網目研削砥石に供給する工具ホルダに取付ける装着工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の網目研削砥石の製造方法によると、一枚の網目シートを円板状に成型した網目研削砥石の製造方法であるから、砥石の製造時間が短縮されるとともに低廉化が可能の他、網目シートの加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。更に、薄板の切断用や薄板の曲線切断用の網目研削砥石(丸鋸)としても多様に使用される。
【0017】
上記請求項2の網目研削砥石の製造方法によると、網目シートを円板状に成型して網目円板とし、これを多層に積層された円板積層体による方法であるから、円板積層体の外周面にのみ確実且つ正確に砥粒を固着させられる。これにより、砥石の製造時間が短縮されるとともに低廉化が可能の他、網目シートから円板積層体への加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。また、多層に積層された円板積層体による網目研削砥石であるから、平面,凸面,凹面,段差面等の任意面形状の研削面の研削が可能に多様に使用される。
【0018】
更に、上記網目研削砥石は、網目シートを円板状に成型された網目円板は、一層又は多層に積層された円板積層体であるから、網目円板を一層とすれば、ダイシングソーのように板の切断用砥石となり、また、少な目の多層とした円板積層体とすれば、左右に撓む丸鋸として薄板の曲線切断も可能である。更に、厚い多層の円板積層体とすれば、平面研削砥石において砥石外周面を各種形状に適用可能な多様性(マルチ研削砥石に適用可能)が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】 本発明の第1と2実施の形態を示し、各網目研削砥石とこの製造手順図である。
図2】 本発明の第3実施の形態を示し、1枚構成の網目研削砥石とこの製造工程図である。
図3】 本発明の第4実施の形態を示し、多数枚構成の網目研削砥石とこの製造工程図である。
図4】 本発明の電着法(電解法)の作用断面図である。
図5】 本発明の各網目研削砥石の研削液噴射の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図5により、本発明の網目研削砥石とこの製造方法を順次に説明する。
【実施例】
【0021】
先ず、図1において、本発明の各網目研削砥石10〜40の構成と製作手順を説明する第1実施形態の網目研削砥石10は、網目シート1を円板状に成型した網目円板(砥石円板)2、即ち、一層の網目円板体2である。上記網目円板体の外周面2Aは、外周径を均一に切削加工するために加工面fがフラットな刃具Fにより切削加工して薄板平面となしている。この処理後に、上記網目円板体2の外周面2Aにダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒4等を電着又は溶着(総称して固着と言う)される。この処理後に、上記網目研削砥石10は、工具ホルダH1に取付けられて使用される。通常は、薄板切断として使用する時は、網目研削砥石10は撓みのない平板とし、薄板の湾曲切断する時は、工具ホルダH1で網目研削砥石10を湾曲させて取付け、薄板の湾曲切断として使用される。
【0022】
次に、第2実施形態の網目研削砥石20,21においては、網目シート1を円板状に成型した網目円板(砥石円板)2とし、これを、多層に積層させた円板積層体20Aとし、上記円板積層体の外周面20Bは、外周径を均一平面に切削加工する為の加工面fをフラットにした刃具Fにより切削加工される。尚、傾斜面(テーパー面)21Bに切削加工するためには、加工面fを傾斜面(テーパー面)にした刃具F1により切削加工される。この処理後に、上記円板積層体の外周面20B,21Bにダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒4等を電着又は溶着(総称して固着と言う)させたものである。上記網目研削砥石20,21は、工具ホルダH1に取付けられて使用される。
【0023】
次に、網目研削砥石30,31の実施形態においては、網目シート1を円板状に成型した網目円板(砥石円板)2、これを、多層に積層された円板積層体30Aであり、上記円板積層体の外周面30Bは、外周径を凸面に切削加工するために加工面fを凹面にした刃具Fにより切削加工される。尚、外周面30Bを片側凸面(半球面)31Bに切削加工するためには、加工面fを片側凹面31Bにした刃具Fにより切削加工される。この処理後に、外周面30B,31Bは、ダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒4等を電着又は溶着(総称して固着と言う)させたものである。上記網目研削砥石30,31は、工具ホルダH1に取付けられて使用される。
【0024】
次に、網目研削砥石40,41の実施形態においては、網目シート1を円板状に成型した網目円板(砥石円板)2、これを、多層に積層された円板積層体40Aであり、上記円板積層体の外周面40Bは、外周径を段差平面に切削加工するために加工面fを段差面にした刃具Fにより切削加工される。尚、外周面41Bを凹凸面(鋸刃状面)41Bに切削加工するためには、加工面fが凹凸面(鋸刃状面)41Bの刃具Fで加工される。上記外周面40B,41Bは、ダイヤ,CBN電着砥粒又はWA,GC砥粒4等を電着又は溶着(総称して固着と言う)させたものである。上記網目研削砥石40,41は、工具ホルダH1に取付けられて使用される。
【0025】
尚、網目シート又は網目円板は、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の何れか又は混合から成る繊維を織った網又は不織の網目のシートであることを特徴とする網目研削砥石である。更に、上記網目円板体2の各外周面20B,21B,30B,31B,40B,41Bにダイヤ,CBN電着砥粒4を電着するには、一層又は多層に積層された円板積層体20A,30A,40Aに対して、この外径よりもやや小径とした電気絶縁質のフランジ5,6により両端面を把持した状態で、電着法(電解法又は科学メッキ法、詳細は後記する)により、フランジ5,6の外周面から突出した上記網目円板体2の各外周面20B,21B,30B,31B,40B,41Bの外周縁のみに砥粒4を電着させる。
【0026】
また、上記第2実施形態のとなる研削砥石10〜41において、網目シート2又は網目円板2A他は、繊維で織られたものでは、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の何れか又は混合から成る繊維を織った網又は不織の網目のシートとなる繊維糸Yである。そして、導電繊維の網には、超砥粒を電着し固定する。絶縁体繊維の網は、超砥粒を溶着,蒸着し固定する。電着ユニットとなる治具50(図2図3に後記する)は、網目シート2又は網目円板2A以外を絶縁体(プラスチック、陶器、磁器)にしているからマスクが不必要になる。
【0027】
更に、網目円板体の外周面2A,20B〜41Bは、刃具F(F1)により外周径を各種形状に切削加工されるが、刃具Fにより切削加工される時に、図1の拡大図に見るように網目円板2の繊維糸群Yの先端は、砥石回転方向Nの後方に向けられた配置としている。これにより、砥粒4の固着量が増大するとともに剥離も抑制され、長期間にわたり研削能率・研削量が確保される。
【0028】
上記網目研削砥石10〜40によると、従来の網目砥石と比べて、必要にして最少限の網目シートと必要にして最少限に砥石外周面にのみ砥粒を絶縁体の治具を介して固着したから、低コスト化が図られるとともに、砥石内の研削液は、網目外周面の領域から外部へ浸透しやすく、外部加工点に円滑に長期間に渡り安定して供給され、研削焼けを大幅に防止出来る。更に、1枚構成ならば薄板の切断用や薄板の曲線切断用の網目研削砥石としてまた、多層に積層された円板積層体による網目研削砥石ならば、平面,凸面,凹面,段差面,テーパー面,鋸歯状等の任意面形状の研削面の研削が可能になり多様に使用される。
【0029】
また、網目シートは、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の何れか又は混合から成る繊維を織った網又は不織の網目のシートを構成する繊維糸としたから、砥石の素材の制限がなく、砥石の製造コストの低廉化が可能の他、網目シート加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与できる。
【0030】
次に、図2で、第3実施形態となる上記網目研削砥石10の製造方法を説明する。
先ず、1枚の網目円板(砥石円板)2からなる網目研削砥石10の外周面2Aに砥粒4を電着する為の治具50は、図2に示すように電気絶縁質の絶縁体(プラスチック、陶器、磁器)からなる。具体的には、網目研削砥石10を両側から把持するゴム又は厚紙の一対の絶縁円形シート51と、この両外側から網目研削砥石10を把持する電気絶縁体のフランジ52,53からなる。上記一対のフランジ52,53に把持された網目円板(砥石円板)2の外周面2Aは、外部に僅かに突出しており、ここに砥粒4が電着される。上記網目研削砥10の外側に金属製のフランジ54,55により把持すべく、工具ホルダH0のアーバーH1を各フランジ他の中心孔hを通して座金56とボルト57で締結される。
【0031】
以下、第3実施の形態となる網目研削砥石の製造方法を図2(a)(b)(c)により説明する。網目シート1を円板状に切断成型した網目円板2を一層の網目円板体2とする成形工程(a)で、図2(a)に図示、上記網目円板体2の外周面2Aを刃具Fの加工面fで平面と成す外周面加工工程(b)で、図2(b)に図示、電気絶縁質の治具50となる一対の円形基板(フランジ)52,53は上記網目円板体2の外周径よりもやや小径と成すとともに中心孔hに挿通した電気絶縁質の締結ボルトとナットで両側から把持する装着工程(c)で、図2(a)に図示、上記網目円板体において一対の円形基板(フランジ)52,53の外周縁から露出した外周径面2Aに砥粒4を電着させる砥粒固着工程(d)図4に図示、上記締結ボルトとナットを一対の円形基板(フランジ)52,53から離脱して円板積層体2の外周2Aに砥粒4を固着形成した網目研削砥石10を摘出する離脱工程(e)と、研削液Cをセンタースルーで網目研削砥石10に供給する工具ホルダH1に取付ける装着工程(H0)を、図2(a)(b)に図示する。尚、砥粒4の電着法(電解法又は科学メッキ法)は、図4に見るように、電気分解容器60に治具50と砥粒4と電解液Eを入れて電流iを流して電気分解(電解)し、外部に露出した外周面2Aのみに砥粒4を電着形成する。
【0032】
続いて、図3に基づき、第4実施の形態となる網目研削砥石20〜40の製造方法を説明する。上記図1において、本発明の各網目研削砥石10〜40の構成と製作手順でも説明したように、網目研削砥石20の外周面20Bは外周径を均一平面となし,網目研削砥石21は傾斜面(テーパー面)21Bとし、網目研削砥石30の外周面30Bは凸面とし、網目研削砥石31の外周面31Bは片側凸面(半球面)とし、網目研削砥石40の外周面40Bは段差面とし、網目研削砥石41の外周面41Bは凹凸面(鋸刃状面)としている。
【0033】
そして、図3には、その製造手順として、先ず網目シート1を円板状に切断成型した網目円板(砥石円板)2を多層に積層した円板積層体とし、各砥石20〜40となる上記網目円板(砥石円板)2をフランジ52,53で締め固定する積層工程(1)と、網目円板(砥石円板)2の外周面と側面を任意形状に研削して成形、即ち、上記円板積層体の外周面を平面,凸面,凹面,段差面等の任意面形状の一つと成す外周面加工工程(2)と、上記各網目研削砥石20〜40の左右両側面を絶縁体で形成された治具50で把持するとともに、各網目研削砥石20〜40の外周縁が治具のフランジ52,53から少量突出させるとともに中心孔に挿通した電気絶縁質の締結具(図示なし)で両側から把持する装着工程(3)と、上記円板積層体において一対のフランジの外周縁から露出した外周径面に砥粒を電着させる砥粒電着工程(4)と、上記治具50のフランジ52、53を分離して網目研削砥石20〜40を摘出する離脱工程(5)と、この工程後に治具から外された各網目研削砥石20〜40を工具ホルダH1に組み付ける組立工程(6)と、からなる。
【0034】
本発明の第4と第5実施の形態となる各網目研削砥石10〜40とこの製造方法によると、以下の作用と効果を呈する。
上記請求項1〜3記載の網目研削砥石において、網目シートを円板状に成型して網目円板とし、これを一層又は多層に積層された円板積層体による製造方法としたから、円板積層体の任意形状の外周面にのみ確実且つ正確に砥粒を電着又は溶着(総称して固着と言う)させられる。これにより、砥石の製造時間が短縮されるとともに低廉化が可能の他、網目シートから円板積層体への加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。更に、多層に積層された円板積層体による網目研削砥石であるから、平面,凸面,凹面,段差面,テーパー面,鋸歯状等の任意面形状の研削面の研削が可能に多様に使用される。
【0035】
更に、網目研削砥石10〜40とこの製造方法によると、砥石の製造時間が短縮されるとともに低廉化が可能の他、網目シートの加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。更に、図5で図示するように、工具ホルダH1に取付けられた網目研削砥石10〜40は、工具ホルダの尾端から供給される冷却液Cを網目研削砥石10〜40の外周面における砥粒4のかな隙間からの噴出効率を高める。これによる切粉の排出効率は、従来の砥石と比較して飛躍的に向上するメリットが得られる。
【0036】
更に、研削砥石10〜40の効果を追記すれば、▲1▼砥石の回転中心から砥石の外周加工点に研削液が供給され、研削焼けを大幅に抑制する。▲2▼ノイズレスにより、内径研削、R凹部の研削、細溝研削に対して、研削液が確実に供給できる。▲3▼砥石の気泡に研削液が詰まらないから砥石の切れ味(研削効率)の長寿命化が実現できる。また、上記治具により、マスクが不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、上記網目研削砥石10〜40とこの製造方法に限定されず、曲線切断の丸鋸やシリコンウエハーを切断するダイシングソー及び穴開け用のカップ砥石等の実施形態にも適用される。
【符号の説明】
【0038】
1 網目シート
2 網目円板(砥石円板)
2A 外周面
4 砥粒
C 研削液(クーラント液)
f 加工面
F(F1) 刃具
H0 工具ホルダ
h 中心孔
Y 繊維糸
10 網目研削砥石
20,21 網目研削砥石
20A 円板積層体
20B,21B 外周面
21B 傾斜面(テーパー面)
30,31 網目研削砥石
30A 円板積層体
30B 外周面
31B 片側凸面(半球面)
40,41 網目研削砥石
40A 円板積層体
40B 外周面
41 凹凸面
50 治具
52,53 フランジ
60 電気分解容器
図1
図2
図3
図4
図5