(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、ラックピニオン式舵取り装置は、ギアケース、該ギアケースに軸支されるピニオン、該ピニオンに噛合するラック歯が形成されたラックバー、前記ギアケース内において該ラックバーを摺動可能に支持するラックガイド、および該ラックガイドを前記ラックバーに押付けるように付勢するコイルバネなどにより構成される。
前記ラックガイドは、従来から、Fe系焼結金属または合成樹脂より形成されている。
ここで、Fe系焼結金属からなるラックガイドは、ラックバーより受ける衝撃荷重に対して十分な機械的強度を有するものの、摺動摩擦抵抗が大きいために、舵取り装置全体としての効率が低下し、操作性悪化の要因となる可能性があった。
一方、合成樹脂からなるラックガイドは、摺動摩擦抵抗が小さいために、舵取り装置全体としての効率の向上化を図ることができるものの、ラックバーより受ける衝撃荷重に対しての機械的強度が劣るために、舵取り装置全体としての耐久性に影響を与える可能性があった。
【0003】
そこで、これらの問題点を解決するための手段として、例えば「特許文献1」において、Fe系焼結金属やアルミニウム合金などの金属部材によって形成されるラックガイド本体と、表面に合成樹脂層が被覆され、前記ラックガイド本体に固着される摺動板片と、などにより構成されるラックガイドに関する技術が開示されている。
より具体的には、前記ラックガイドは、中央に孔部を有したラックガイド本体と、同じく中央に突起部を有した摺動板片とにより構成され、ラックガイド本体の孔部に対して摺動板片の突起部が圧入嵌合されることにより、摺動板片がラックガイド本体に固着されるようになっている。
【0004】
このような構成からなる、前記「特許文献1」におけるラックガイドにおいて、例えば、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢が、所定の姿勢と比べて僅かに傾いていた場合、ラックガイド本体の孔部に摺動板片の突起部を圧入嵌合することは、実質的には可能である。
よって、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢が、常に所定の姿勢かどうか疑問であり、ラックガイドに対してラックバーが片当りし、ラックガイド(特に、摺動板片)の損耗を促す要因となる可能性があった。
【0005】
また、前記「特許文献1」におけるラックガイドにおいて、摺動板片の突起部は、主にプレス絞り加工によって形成されることから、摺動板片における前記突起部の突出方向側(ラックガイド本体側)との対向側の平面、即ち、ラックバーを支持する際に当該ラックバーと直接接触する摺動支持面の中央には、前記突起部に対応する凹部が形成される。
よって、前記摺動支持面の受圧面積は、前記凹部の断面積分だけ減少することとなり、ラックガイドによってラックバーを支持する際の前記摺動支持面に加えられる応力が増加し、ラックガイド(特に、摺動板片)の損耗を促す要因となっていた。
【0006】
さらに、前記「特許文献1」におけるラックガイドにおいて、このようなプレス絞り加工によって摺動板片の突起部を形成する場合、製造工程が複雑となり、製造コストの増加を招く要因となっていた。
【0007】
そこで、このような問題点を解決するための手段として、例えば「特許文献2」において、ラックバーの移動方向両側の端部に舌片状の規制部を形成し、これらの規制部を介してラックガイド本体に固定されることを特徴とする摺動板片を備えたラックガイドが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記「特許文献2」におけるラックガイドによれば、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢が所定の姿勢である場合に限り、ラックガイド本体に摺動板片を装着することが可能であるため、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢を、常に所定の姿勢に維持することができる。よって、ラックガイドに対するラックバーの片当りの防止を図ることができ、ラックガイド(特に、摺動板片)の損耗を促すようなこともない。
また、前記「特許文献2」におけるラックガイドによれば、プレス絞り加工による突起部を摺動板片の中央に形成したり、また該突起部に即した孔部をラックガイド本体に形成したりする必要もない。よって、前述したような、摺動板片における摺動支持面の中央に、前記突起部に対応する凹部が形成されることもないため、前記摺動支持面の受圧面積が前記凹部の断面積分だけ減少することによって、ラックバーを支持する際の前記摺動支持面に加えられる応力が増加し、ラックガイド(特に、摺動板片)の損耗を促すようなこともない。
【0010】
しかしながら、前記「特許文献2」におけるラックガイドにおいては、摺動板片の規制部、および該規制部と対応するラックガイド本体の係合溝部の形状が複雑であり、且つ高度な製作精度を必要とするため、製造工程が複雑となり、さらに製造コストの増加を招く要因となっていた。
【0011】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、ギアケースに軸支されたピニオンとラック歯を介して噛合するラックバーを、軸心方向に移動可能に支持するラックガイドおよび当該ラックガイドを備えるラックピニオン式舵取り装置であって、ラックガイドの損耗の防止を図り、ラックバーを円滑に支持することが可能なラックガイドおよび当該ラックガイドを備えるラックピニオン式舵取り装置を、製造コストの増加を伴うことなく提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、本発明の請求項1におけるラックガイドは、ギアケースに軸支されたピニオンとラック歯を介して噛合するラックバーを、軸心方向に移動可能に支持するラックガイドであって、前記ラックバーにおける前記ラック歯が形成される側と反対側の凸面に対して、摺動可能に接触する凹面形状に形成された摺動板片と、該摺動板片に即した形状からなる装着面が一端部に形成されたラックガイド本体と、を備え、前記摺動板片において、前記ラックバーの移動方向
および前記ラックガイド本体の軸心方向に対する直交方向の両側端部には
、一対の舌片部が
各々形成され、
前記一対の舌片部は、前記ラックバーの移動方向に離間して各々配置されるとともに、前記両側端部から前記摺動板片の凹面形状における径方向の外側に向かって突出するようにして形成され、前記ラックガイド本
体において、
前記装着面における前記ラックバーの移動方向
および前記ラックガイド本体の軸心方向に対する直交方向の両側端部には
、前記ラックガイド本体の軸心方向に向かって突出する凸起部が
前記ラックバーの移動方向の中央部に形成され、前記摺動板片が、前記装着面を介して前記ラックガイド本体に装着された状態において、
前記一対の舌片部によって前記凸起部を挟持することにより、前記舌片部および前記凸起部は互いに嵌合しあうことを特徴とする。
【0014】
このように、本発明のラックガイドにおいては、摺動板片の両側端部に各々形成された舌片部と、ラックガイド本体の装着面の両側端部に各々形成された凸起部とが互いに嵌合しあうことにより、摺動板片がラックガイド本体に堅固に固着される構成を有することから、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢が所定の姿勢である場合に限り、ラックガイド本体に摺動板片を装着することが可能であり、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢を、常に所定の姿勢に維持することができる。
よって、ラックガイドに対するラックバーの片当りの防止を図ることができ、ラックガイド(より具体的には、摺動板片)の損耗を促すようなこともない。
また、本発明のラックガイドにおいては、従来のラックガイドのような、プレス絞り加工による突起部を摺動板片の中央に形成したり、また該突起部に即した孔部をラックガイド本体に形成したりする必要もないことから、前述したような、摺動板片における摺動支持面の中央に、前記突起部に対応する凹部が形成されることもなく、前記摺動支持面の受圧面積が前記凹部の断面積分だけ減少することによって、ラックバーを支持する際の前記摺動支持面に加えられる応力が増加し、ラックガイド(より具体的には、摺動板片)の損耗を促すようなこともない。
また、本発明のラックガイドにおいては、摺動板片に突起部を形成する際の、複雑な製造工程を有するプレス絞り加工を行う必要もなく、単純なプレス打ち抜き加工によって摺動板片を形成することが可能であることから、ラックガイド全体として製造コストの削減を図ることができる。
さらに、本発明のラックガイドによれば、摺動板片の両側端部に設けられた一対の舌片部、およびラックガイド本体の装着面における両側端部に設けられた凸起部からなる単純な構成によって、互いに嵌合しあうことができる。
【0015】
また、本発明の請求項2におけるラックガイドは、
ギアケースに軸支されたピニオンとラック歯を介して噛合するラックバーを、軸心方向に移動可能に支持するラックガイドであって、前記ラックバーにおける前記ラック歯が形成される側と反対側の凸面に対して、摺動可能に接触する凹面形状に形成された摺動板片と、該摺動板片に即した形状からなる装着面が一端部に形成されたラックガイド本体と、を備え、前記摺動板片
において、前記ラックバーの移動方向および前記ラックガイド本体の軸心方向に対する直交方向の両側端部に
は舌片部
が形成され、
前記舌片部は、前記ラックバーの移動方向の中央部に配置されるとともに、前記両側端部から前記摺動板片の凹面形状における径方向の外側に向かって突出するようにして形成され、前記ラックガイド本体
において、前記装着面における前記ラックバーの移動方向および前記ラックガイド本体の軸心方向に対する直交方向の両側端部には、
前記ラックガイド本体の軸心方向に向かって突出する一対の凸起部が
前記ラックバーの移動方向に離間して各々形成され、
前記摺動板片が、前記装着面を介して前記ラックガイド本体に装着された状態において、前記一対の
凸起部によって前記
舌片部を挟持することにより、前記舌片部および前記凸起部は互いに嵌合しあうことを特徴とする。
【0016】
このように、本発明のラックガイドにおいては、摺動板片の両側端部に各々形成された舌片部と、ラックガイド本体の装着面の両側端部に各々形成された凸起部とが互いに嵌合しあうことにより、摺動板片がラックガイド本体に堅固に固着される構成を有することから、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢が所定の姿勢である場合に限り、ラックガイド本体に摺動板片を装着することが可能であり、ラックガイド本体に対する摺動板片の装着姿勢を、常に所定の姿勢に維持することができる。
よって、ラックガイドに対するラックバーの片当りの防止を図ることができ、ラックガイド(より具体的には、摺動板片)の損耗を促すようなこともない。
また、本発明のラックガイドにおいては、従来のラックガイドのような、プレス絞り加工による突起部を摺動板片の中央に形成したり、また該突起部に即した孔部をラックガイド本体に形成したりする必要もないことから、前述したような、摺動板片における摺動支持面の中央に、前記突起部に対応する凹部が形成されることもなく、前記摺動支持面の受圧面積が前記凹部の断面積分だけ減少することによって、ラックバーを支持する際の前記摺動支持面に加えられる応力が増加し、ラックガイド(より具体的には、摺動板片)の損耗を促すようなこともない。
また、本発明のラックガイドにおいては、摺動板片に突起部を形成する際の、複雑な製造工程を有するプレス絞り加工を行う必要もなく、単純なプレス打ち抜き加工によって摺動板片を形成することが可能であることから、ラックガイド全体として製造コストの削減を図ることができる。
さらに、本発明のラックガイドによれば、摺動板片の両側端部に設けられ
た舌片部、およびラックガイド本体の装着面における両側端部に設けられた
一対の凸起部からなる単純な構成によって、互いに嵌合しあうことができる。
【0019】
一方、本発明の請求項
3におけるラックピニオン式舵取り装置は、請求項1
または請求項2に記載のラックガイドを備えてなることを特徴とする。
【0020】
このように、本発明のラックピニオン式舵取り装置は、前述した本発明のラックガイドを備えることにより、装置全体として、製造コストの増加を伴うことなくラックガイドの損耗の防止を図り、ラックバーを円滑に支持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0022】
即ち、本発明におけるラックガイドおよび当該ラックガイドを備えるラックピニオン式舵取り装置によれば、製造コストの増加を伴うことなく、ラックガイドの損耗の防止を図り、ラックバーを円滑に支持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[ラックピニオン式舵取り装置1]
先ず、本発明を具現化するラックガイド6を備えるラックピニオン式舵取り装置1(以下、単に「舵取り装置1」と記載する)の全体構成について、
図1を用いて説明する。
なお、以下の説明においては便宜上、
図1の上下方向を舵取り装置1の上下方向と規定して記述する。
また、
図1においては、矢印Aの方向を舵取り装置1の前方と規定して記述する。
【0026】
本実施形態における舵取り装置1は、例えば、図示せぬステアリングホイールによって回転されるピニオン2の回転動作を、ラックバー3の直進動作に変換するための装置である。
舵取り装置1にはギアケース4が備えられ、該ギアケース4の内部に、ピニオン2の一端部が、例えば前方(
図1中の矢印Aの方向)に向かって挿入される。
【0027】
ここで、ピニオン2の一端部には、ピニオン歯2aが形成される。
そして、ギアケース4の内部において、ピニオン2の一端部は、ピニオン歯2aを間に挟んで配置される一対の軸受5・5を介して軸支される。
【0028】
なお、ピニオン2の他端部は、ギアケース4の外部において軸心方向に延出し、ステアリングホイール(図示せず)と連結される。
【0029】
ギアケース4の内部には、ピニオン2と噛合されるラックバー3が配置される。
ラックバー3の軸心方向中央部の外周面には、ラック歯3aが形成されており、該ラック歯3aに対する背面(ラック歯3aが形成される側と反対側の面)は、所定の曲率半径からなる断面視円弧形状の凸面3bとなっている。
【0030】
そして、ラックバー3は、ピニオン歯2aの下方において、ピニオン2と平面視直交方向(例えば、本実施形態においては、左右方向)に延出して配置され、ラック歯3aを介してピニオン歯2aと噛合される。
【0031】
なお、ラックバー3の両端部は、ギアケース4の内部より外部に向かって突出されるとともに、ラックバー3は、図示せぬ軸受部材を介して、軸心方向(左右方向)に摺動可能に支持される。
【0032】
ギアケース4の下面には、円筒状に延出する中空形状のハウジング部4aが一体的に形成される。
前記ハウジング部4aは、ピニオン2との間にラックバー3を挟むような位置に形成されており、その内周部(内周面によって囲まれた空間部)には、ラックバー3を摺動可能に支持するラックガイド6が、ハウジング部4aの延出方向(本実施形態においては、上下方向)に摺動可能に配設される。
【0033】
そして、ラックガイド6は、ハウジング部4aの下端を閉塞する蓋部材7との間に配設される、弾性部材としての圧縮コイルバネ8によって、ラックバー3側に付勢される。
【0034】
以上のような構成からなる舵取り装置1において、ステアリングホイール(図示せず)を介して、ピニオン2が軸心を中心にして回転されると、ピニオン2に加えられた回転駆動力は、ピニオン歯2a、ラック歯3aと順に伝達され、ラックバー3の軸心方向への推進力へと変換される。
【0035】
[ラックガイド6]
次に、ラックガイド6の構成について、
図1、
図2、および
図4を用いて詳述する。
なお、以下の説明においては便宜上、
図2(b)の上下方向をラックガイド6の上下方向と規定し、また
図4の上下方向を従来のラックピニオン式舵取り装置101の上下方向と規定して記述する。
また、
図2(a)(b)および
図4においては、矢印Aの方向を、ラックガイド6または従来のラックピニオン式舵取り装置101の前方と規定して記述する。
【0036】
ラックガイド6は、
図1に示すように、ピニオン2と噛合された状態にあるラックバー3を、ピニオン2側に押圧しつつ該ラックバー3の軸心方向に摺動可能に支持するためのものである。
ラックガイド6は、ラックバー3の凸面3bと当接される摺動板片61、および摺動板片61が装着されるラックガイド本体62などにより構成される。
【0037】
摺動板片61は、ラックバー3の凸面3bと略同じ断面視円弧状の凹面形状からなる主体部61a、および主体部61aにおけるラックバー3の移動方向(本実施形態においては、左右方向)に対する直交方向(本実施形態においては、前後方向)の両側端部にそれぞれ設けられる一対の舌片部61b・61bなどにより構成される。
具体的には、
図2(a)に示すように、摺動板片61の前後両側の各端部において、一対の舌片部61b・61bは、ラックバー3の移動方向(左右方向)に離間し、且つ前方または後方に向かって水平状に突出して形成される。
【0038】
一方、
図2(b)に示すように、ラックガイド本体62は、例えば、Fe系焼結金属やアルミニウム合金などからなる円柱状の金属部材により構成され、その一端部(本実施形態においては、上端部)には、摺動板片61の主体部61aに即した断面視円弧状の凹面形状からなる装着面62aが形成されるとともに、その他端部(本実施形態においては、下端部)には、圧縮コイルバネ8(
図1を参照)を保持可能な円筒状中空部62bが形成される。
また、
図2(a)に示すように、ラックガイド本体62の上端部において、装着面62aにおけるラックバー3の移動方向(左右方向)に対する直交方向(前後方向)の両側端部には、凸起部62cが各々当該移動方向(左右方向)の中央部に形成される。
【0039】
なお、各凸起部62cにおける左右方向の幅寸法(
図2(a)中における寸法Wa)は、前述した一対の舌片部61b・61bにおける離間寸法(
図2(a)中における寸法Wb)と、略同程度となるように設定されている(Wa=Wb)。
【0040】
そして、ラックガイド本体62の上端部において、摺動板片61は、一対の舌片部61b・61bによって、各凸起部62cを嵌合しつつ、装着面62aを介してラックガイド本体62に装着される。
換言すると、摺動板片61が、装着面62aを介してラックガイド本体62に装着された状態において、舌片部61bおよび凸起部62cは互いに嵌合しあう。
これにより、摺動板片61は、ラックガイド本体62の上端部において堅固に保持される。
【0041】
このような構成からなるラックガイド6は、
図1に示すように、ギアケース4の内部において、摺動板片61の主体部61aの凹面側をラックバー3側に向けつつ、ハウジング部4aと同軸上に配設される。また、蓋部材7によって一端部を固定された圧縮コイルバネ8の他端部は、ラックガイド本体62の円筒状中空部62bを介して保持される。
【0042】
こうして、ラックガイド6は、摺動板片61の主体部61aを介してラックバー3の凸面3bと接触しつつ、ラックガイド本体62の外周面62dを介して、ハウジング部4aの内周部を軸心方向(本実施形態においては、上下方向)に摺動可能に配設される。つまり、ラックガイド6は、ハウジング部4aの内周部において、ラックバー3に対する近接離反方向に、外周面62dを介して摺動可能に配設される。
この際、ラックガイド6は、圧縮コイルバネ8によって、常に、ラックバー3側に向かって付勢される。
【0043】
以上のように、本実施形態のラックガイド6においては、摺動板片61の前後方向の両側端部に各々形成された、一対の舌片部61b・61bによって、ラックガイド本体62(より具体的には、装着面62a)の前後方向の両側端部に各々形成された凸起部62c(
図2を参照)が嵌合されることにより、摺動板片61がラックガイド本体62に堅固に固着される構成となっている。
よって、ラックガイド本体62に対する摺動板片61の装着姿勢が所定の姿勢である場合に限り、ラックガイド本体62に摺動板片61を装着することが可能であり、ラックガイド本体62に対する摺動板片61の装着姿勢を、常に所定の姿勢に維持することができる。
従って、ラックガイド6に対するラックバー3の片当りの防止を図ることができ、ラックガイド6における摺動板片61の損耗を促すようなこともない。
【0044】
また、本実施形態のラックガイド6においては、
図4に示すように、従来のラックピニオン式舵取り装置101に備えられるラックガイド106のような、プレス絞り加工による突起部161aを摺動板片161の中央に形成したり、また当該突起部161aに即した孔部162aをラックガイド本体162に形成したりする必要もない。
従って、従来のラックガイド106のように、摺動板片161の凹面側の中央に、前記突起部161aに対応する凹部161bが形成されることにより、摺動板片161の受圧面積が前記凹部161bの断面積分だけ減少し、ラックバー103を支持する際の摺動板片161に加えられる応力が増加するようなこともないため、本実施形態においては、ラックガイド6(特に、摺動板片61)の損耗を促すようなこともない。
【0045】
さらに、本実施形態のラックガイド6においては、従来のラックガイド106のように、摺動板片161に突起部161aを形成するための複雑な製造工程を有するプレス絞り加工を行う必要もなく、単純なプレス打ち抜き加工によって摺動板片61を形成することが可能であることから、ラックガイド6全体として製造コストの削減を図ることができる。
【0046】
なお、
図1において、ラックガイド6の配置位置については、本実施形態に限定されることなく、摺動板片61を介して、ラックバー3を、ピニオン2側に押圧しつつ支持可能である限り、当該ラックバー3の軸心方向に沿った何れに設けることとしてもよい。
【0047】
[ラックガイド206(別実施形態)]
次に、本発明にかかる別実施形態のラックガイド206の構成について、
図3および
図4を用いて詳述する。
なお、以下の説明においては便宜上、
図3(b)の上下方向をラックガイド206の上下方向と規定して記述する。
また、
図3(a)(b)においては、矢印Aの方向を、ラックガイド206の前方と規定して記述する。
【0048】
別実施形態におけるラックガイド206は、前述したラックガイド6と略同等な構成を有する一方、摺動板片261の舌片部261b、およびラックガイド本体262の凸起部262cの構成において、ラックガイド6と相違する。
よって、以下の説明においては、主にラックガイド6との相違点について記載し、ラックガイド6と同等な構成についての記載は省略する。
【0049】
ラックガイド206は、ラックバー203の凸面203bと当接される摺動板片261、および摺動板片261が装着されるラックガイド本体262などにより構成される。
【0050】
摺動板片261は、ラックバー203の凸面203bと略同じ断面視円弧状の凹面形状からなる主体部261a、および主体部261aにおけるラックバー203の移動方向(左右方向)に対する直交方向(前後方向)の両側端部において、当該移動方向(左右方向)の中央部に設けられる舌片部261bなどにより構成される。
具体的には、
図3(a)に示すように、摺動板片261の前後両側の各端部において、舌片部261bは、前方または後方に向かって水平状に突出して形成される。
【0051】
一方、
図3(b)に示すように、ラックガイド本体262は、例えば、Fe系焼結金属やアルミニウム合金などからなる円柱状の金属部材により構成され、その一端部(上端部)には、摺動板片261の主体部261aに即した断面視円弧状の凹面形状からなる装着面262aが形成される。
また、
図3(a)に示すように、ラックガイド本体262の上端部において、装着面262aにおけるラックバー203の移動方向(左右方向)に対する直交方向(前後方向)の両側端部には、一対の凸起部262c・262cが、ラックバー3の移動方向(左右方向)に離間して各々形成される。
【0052】
なお、一対の凸起部262c・262cにおける離間寸法(
図3(a)中における寸法Wc)は、前述した舌片部261bの幅寸法(
図3(a)中における寸法Wd)と、略同程度となるように設定されている(Wc=Wd)。
【0053】
そして、ラックガイド本体262の上端部において、摺動板片261は、一対の凸起部262c・262cによって、各舌片部261bを嵌合しつつ、装着面262aを介してラックガイド本体262に装着される。
換言すると、摺動板片261が、装着面262aを介してラックガイド本体262に装着された状態において、舌片部261bおよび凸起部262cは互いに嵌合しあう。
これにより、摺動板片261は、ラックガイド本体262の上端部において堅固に保持される。
【0054】
以上のように、別実施形態のラックガイド206においては、ラックガイド本体262(より具体的には、装着面262a)の前後方向の両側端部に各々形成された、一対の凸起部262c・262cによって、摺動板片261の前後方向の両側端部に各々形成された舌片部261bが嵌合されることにより、摺動板片261がラックガイド本体262に堅固に固着される構成となっている。
よって、ラックガイド本体262に対する摺動板片261の装着姿勢が所定の姿勢である場合に限り、ラックガイド本体262に摺動板片261を装着することが可能であり、ラックガイド本体262に対する摺動板片261の装着姿勢を、常に所定の姿勢に維持することができる。
従って、ラックガイド206に対するラックバー203の片当りの防止を図ることができ、ラックガイド206における摺動板片261の損耗を促すようなこともない。
【0055】
また、別実施形態のラックガイド206においては、
図4に示すように、従来のラックピニオン式舵取り装置101に備えられるラックガイド106のような、プレス絞り加工による突起部161aを摺動板片161の中央に形成したり、また当該突起部161aに即した孔部162aをラックガイド本体162に形成したりする必要もない。
従って、従来のラックガイド106のように、摺動板片161の凹面側の中央に、前記突起部161aに対応する凹部161bが形成されることにより、摺動板片161の受圧面積が前記凹部161bの断面積分だけ減少し、ラックバー103を支持する際の摺動板片161に加えられる応力が増加するようなこともないため、本実施形態においては、ラックガイド206(特に、摺動板片261)の損耗を促すようなこともない。
【0056】
さらに、別実施形態のラックガイド206においては、従来のラックガイド106のように、摺動板片161に突起部161aを形成するための複雑な製造工程を有するプレス絞り加工を行う必要もなく、単純なプレス打ち抜き加工によって摺動板片261を形成することが可能であることから、ラックガイド206全体として製造コストの削減を図ることができる。