(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴム分としてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴム、導電剤としての、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンのカリウム塩、酸化チタン、ならびに前記ゴム分を架橋させるための架橋成分を含み、かつ前記エピクロルヒドリンゴムの配合割合が、前記ゴム分の総量中の15質量%以上、80質量%以下であるとともに、前記酸化チタンの配合割合が、前記ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上、50質量部以下である半導電性ゴム組成物からなり、外周面に酸化膜を備える半導電性ローラ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ゴム分としてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴム、導電剤としての、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンのカリウム塩、酸化チタン、ならびに前記ゴム分を架橋させるための架橋成分を含み、かつ前記エピクロルヒドリンゴムの配合割合が、前記ゴム分の総量中の15質量%以上、80質量%以下であるとともに、前記酸化チタンの配合割合が、前記ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上、50質量部以下である半導電性ゴム組成物からなり、外周面に酸化膜を備える半導電性ローラである。
【0016】
本発明によれば、ゴム分として上記所定の割合でエピクロルヒドリンゴムを含む半導電性ゴム組成物に、さらに導電剤として陰イオンのカリウム塩(以下「カリウム塩」と略記する場合がある。)を配合することにより、現状よりローラ抵抗値をさらに低くしてプロセススピードの向上や画質の高精細化が可能となる。
なお本発明において、エピクロルヒドリンゴムの配合割合がゴム分の総量中の15質量%以上に限定されるのは、この範囲よりエピクロルヒドリンゴムが少ない場合には、カリウム塩を配合しているにも拘らず、特に帯電を繰り返した際にローラ抵抗値が大きく上昇して、帯電ローラとしての良好な半導電性を維持できなくなるためである。
【0017】
またエピクロルヒドリンゴムの配合割合がゴム分の総量中の80質量%以下に限定されるのは、この範囲よりエピクロルヒドリンゴムが多い場合には、相対的に酸化膜のもとになるジエン系ゴムが少なくなって、半導電性ローラの外周面に保護膜として十分に機能しうる酸化膜を形成できず、感光体の汚染や外周面への外添剤等の付着および蓄積を生じやすくなるためである。
【0018】
これに対し、エピクロルヒドリンゴムの配合割合をゴム分の総量中の15質量%以上、80質量%以下の範囲とすることにより、半導電性ローラの良好な半導電性を維持しながら、その外周面に、保護膜として十分に機能しうる酸化膜を形成できる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴム分の総量中の50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以下であるのが好ましい。
【0019】
また本発明において導電剤がカリウム塩に限定されるのは、当該カリウム塩は、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンのリチウム塩等とは違って高い吸湿性や潮解性を有さないため、特に高温、高湿環境下で潮解して半導電性ローラの外周面にブルームしたりしにくく、感光体の汚染を生じにくいためである。
またカリウム塩は吸湿による計量中の質量変化や潮解等を生じないため、比較的容易に正確な量を図ることができる上、半導電性ゴム組成物のバッチごとの吸湿量のばらつきを生じにくくできるなど、取り扱い性に優れるという利点もある。
【0020】
また本発明によれば、さらに前述した所定の割合で酸化チタンを配合することにより、半導電性ローラにゴムとしての特性が強く発現されるのを適度に抑制して、外周面の摩擦および粘着性を低減できる。
そのため酸化チタンが周知のように光触媒として機能して、特に紫外線照射による酸化膜の形成を補助するため、上記外周面に、上記紫外線照射によってより強固で外添剤等の付着を良好に防止できる酸化膜を効率よく形成できることと相まって、帯電を繰り返しても外添剤等の付着および蓄積による画像不良を生じにくくできる。
【0021】
なお本発明において、酸化チタンの配合割合がゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上に限定されるのは、この範囲より酸化チタンが少ない場合には上述した効果が得られず、特に帯電ローラとして使用して帯電を繰り返した際に外添剤等の付着および蓄積を生じやすくなるためである。
一方、酸化チタンの配合割合がゴム分の総量100質量部あたり50質量部以下に限定されるのは、この範囲より酸化チタンが多い場合には半導電性ローラの圧縮永久ひずみが大きくなって、例えば半導電性ローラを帯電ローラとして使用して画像形成装置の停止時に感光体に圧接され続けた箇所が、当該半導電性ローラを回転させる等して圧接を解除しても元の状態まで復元されないいわゆるヘタリを生じやすくなるためである。
【0022】
これに対し、酸化チタンの配合割合をゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上、50質量部以下の範囲とすることにより、半導電性ローラの圧縮永久ひずみを小さくしてヘタリが生じるのを抑制しながら、帯電を繰り返しても外添剤等の付着および蓄積による画像不良を生じにくくできる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、酸化チタンの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。
【0023】
ちなみに帯電ローラに酸化チタンを使用することは、例えば特許文献2等にも既に記載されている。
しかし特許文献2に記載のものは、酸化チタンの光触媒効果によって、帯電時に感光体の表面近傍で発生する放電生成物を分解し、除去することを目的とするものに過ぎない。
特許文献2には酸化チタンを充填剤として機能させて半導電性ローラにゴムとしての特性が強く発現されるのを抑制し、それによって外周面の摩擦および粘着性を低減することや、紫外線照射による酸化膜形成を補助すること等については一切記載されていない。
【0024】
また特許文献2では、上記の効果を得るために帯電ローラの外周面を酸化チタンの薄膜で被覆するか、外周面の近傍にのみ酸化チタンを含有させることが記載されているが、かかる構成では、特に酸化チタンを充填剤として機能させて半導電性ローラにゴムとしての特性が強く発現されるのを抑制し、それによって外周面の摩擦および粘着性を低減する効果は得られない。
【0025】
また帯電ローラの外周面に酸化膜を形成することは特許文献2の効果を得る妨げとなるため、特許文献2の記載は酸化膜形成を示唆するものでもない。
上記本発明によれば、特に帯電ローラとして使用した際に感光体の表面を均一に帯電でき、かつ帯電を繰り返しても外添剤等の付着および蓄積による画像不良を生じにくい上、感光体の汚染を生じにくく、しかも現状よりローラ抵抗値を低くしてプロセススピードの向上や画質の高精細化が可能な半導電性ローラを提供できる。
【0026】
《半導電性ゴム組成物》
〈ゴム分〉
ゴム分としては、上述したようにエピクロルヒドリンゴムとジエン系ゴムを併用する。
(エピクロルヒドリンゴム)
上記のうちエピクロルヒドリンゴムとしては、繰り返し単位としてエピクロルヒドリンを含み、イオン導電性を有する種々の重合体が使用可能である。
【0027】
かかるエピクロルヒドリンゴムとしては、例えばエピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0028】
中でもエチレンオキサイドを含む共重合体、特にECOおよび/またはGECOが好ましい。
上記両共重合体におけるエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは半導電性ローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。しかしエチレンオキサイド含量がこの範囲未満ではかかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0029】
一方、エチレンオキサイド含量が上記の範囲を超える場合にはエチレンオキサイドの結晶化が起こり、分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆にローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また架橋後の半導電性ローラが硬くなりすぎたり、架橋前の半導電性ゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇して加工性が低下したりするおそれもある。
ECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
【0030】
またGECOにおけるアリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に5モル%以下であるのが好ましい。
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかしアリルグリシジルエーテル含量がこの範囲未満ではかかる働きが得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0031】
一方、アリルグリシジルエーテルはGECOの架橋時に架橋点として機能するため、アリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲を超える場合にはGECOの架橋密度が高くなりすぎることによって分子鎖のセグメント運動が妨げられて、却ってローラ抵抗値が上昇する傾向がある。
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
【0032】
なおGECOとしては、先に説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではこのいずれのGECOも使用可能である。
エピクロルヒドリンゴムとしては、特にGECOが好ましい。GECOは、アリルグリシジルエーテルに起因し上記架橋点として機能する二重結合を主鎖中に有するため、主鎖間での架橋によって半導電性ローラの圧縮永久ひずみを小さくできる。
【0033】
そのため、例えば半導電性ローラを帯電ローラとして使用した際にヘタリを生じにくくして、当該ヘタリによって形成画像に画像ムラ等の画像不良が生じるのを抑制できるという利点がある。
(ジエン系ゴム)
ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0034】
中でもNBRを単独で用いるか、あるいはCRとNBRを併用するのが好ましく、特に後者の併用系が好ましい。
すなわちゴム分としては、エピクロルヒドリンゴム、CRおよびNBRの3種を併用するのが好ましい。なお3種のゴムとしては各々、グレードの異なるものなどを2種以上併用してもよい。
【0035】
かかる併用系においてCRは、分子中に塩素原子を多く含むことから、ジエン系ゴムとしての機能に加えて、本発明の半導電性ローラを特に帯電ローラとして使用した際に、その帯電特性を向上させるためにも機能する。
またNBRは、ジエン系ゴムとしての機能、すなわち紫外線等の照射によって酸化されて、半導電性ローラの外周面に、保護膜としての優れた特性を有する酸化膜を形成する機能に優れている。
【0036】
またCR、NBRはともに極性ゴムであるため、半導電性ローラのローラ抵抗値を微調整するためにも機能する。
CRは、クロロプレンを乳化重合させて合成されるもので、その際に用いる分子量調整剤の種類によって硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプとに分類される。
このうち硫黄変性タイプのCRは、クロロプレンと、分子量調整剤としての硫黄とを共重合したポリマを、チウラムジスルフィド等で可塑化して所定の粘度に調整することで合成される。
【0037】
また非硫黄変性タイプのCRは、例えばメルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ等に分類される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用すること以外は、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
【0038】
またキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用すること以外は、やはり硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
またCRは、その結晶化速度に基づいて、当該結晶化速度が遅いタイプ、中庸であるタイプ、および速いタイプに分類される。
本発明においてはいずれのタイプのCRを用いてもよいが、中でも非硫黄変性タイプで、かつ結晶化速度が遅いタイプのCRが好ましい。
【0039】
またCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合体を用いてもよい。かかる他の共重合成分としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等の1種または2種以上が挙げられる。
【0040】
NBRとしては、アクリロニトリル含量が24%以下である低ニトリルNBR、25〜30%である中ニトリルNBR、31〜35%である中高ニトリルNBR、36〜42%である高ニトリルNBR、43%以上である極高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
(ゴム分の配合割合)
ゴム分のうちエピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴム分の総量中の15質量%以上、80質量%以下に限定され、中でも50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以下であるのが好ましい。この理由は先に説明したとおりである。
【0041】
またゴム分として上記エピクロルヒドリンゴム、CRおよびNBRの3種を併用する系ではCRの配合割合は、ゴム分の総量中の10質量%以上であるのが好ましく、40質量%以下、特に30質量%以下であるのが好ましい。
CRの配合割合がこの範囲未満では、当該CRを配合することによる前述した効果、すなわち帯電ローラとして使用した際に帯電特性を向上する効果や、ローラ抵抗値を微調整する効果が十分に得られないおそれがある。
【0042】
一方、CRの配合割合が上記の範囲を超える場合には相対的にエピクロルヒドリンゴムが少なくなるため、半導電性ローラに特に帯電ローラとしての良好な半導電性を付与できなくなるおそれがある。
NBRの配合割合は、エピクロルヒドリンゴムおよびCRの残量とする。すなわちエピクロルヒドリンゴムおよびCRの配合割合をそれぞれ所定値に設定した際にゴム分の総量が100質量%となるように、NBRの配合割合を設定すればよい。
【0043】
〈カリウム塩〉
カリウム塩を構成する、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、例えばフルオロアルキルスルホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0044】
このうちフルオロアルキルスルホン酸イオンとしては、例えばCF
3SO
3−、C
4F
9SO
3−等の1種または2種以上が挙げられる。
またビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオンとしては、例えば(CF
3SO
2)
2N
−、(C
2F
5SO
2)
2N
−、(C
4F
9SO
2)(CF
3SO
2)N
−、(FSO
2C
6F
4)(CF
3SO
2)N
−、(C
8F
17SO
2)(CF
3SO
2)N
−、(CF
3CH
2OSO
2)
2N
−、(CF
3CF
2CH
2OSO
2)
2N
−、(HCF
2CF
2CH
2OSO
2)
2N
−、[(CF
3)
2CHOSO
2]
2N
−等の1種または2種以上が挙げられる。
【0045】
さらにトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンとしては、例えば(CF
3SO
2)
3C
−、(CF
3CH
2OSO
2)
3C
−等の1種または2種以上が挙げられる。
カリウム塩としては、半導電性ゴム組成物のイオン導電性を向上して半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる効果の点で(CF
3SO
2)
2NK〔カリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕等のビス(フルオロスルホニル)イミドカリウムが好ましい。
【0046】
カリウム塩の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、6質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
カリウム塩の配合割合がこの範囲より少ない場合には、当該カリウム塩を配合することによる、上述した半導電性ローラのローラ抵抗値をさらに低くしてプロセススピードの向上や画質の高精細化を可能とする効果が十分に得られなおそれがある。
【0047】
一方、カリウム塩の配合割合が上記の範囲より多い場合には、過剰のカリウム塩が半導電性ローラの外周面にブルームして感光体の汚染を生じるおそれがある。
これに対し、カリウム塩の配合割合を上記の範囲とすることにより、上記ブルームが生じるのを抑制しながら、半導電性ローラのローラ抵抗値をできるだけ低くしてプロセススピードの向上や画質の高精細化が可能となる。
【0048】
〈酸化チタン〉
酸化チタンとしては、充填剤として機能しうる種々の酸化チタンが使用可能である。
すなわち製造方法による分類では、例えば硫酸法、塩素法等によって得られる酸化チタンが使用可能である。また、チタンアルコキシド、チタンハライド、もしくはチタンアセチルアセトネート等の揮発性チタン化合物の低温酸化(熱分解、加水分解等)によって得られる酸化チタンを使用することもできる。
【0049】
また結晶型による分類では、例えばアナターゼ型、ルチル型、これらの混晶型、およびアモルファスの種々の酸化チタンがいずれも使用可能である。
中でも、前述した紫外線照射による酸化膜形成を補助する効果の点で光触媒作用の強いアナターゼ型の酸化チタンが好ましい。
酸化チタンの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上、50質量部以下に限定され、中でも10質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。この理由は先に説明したとおりである。
【0050】
〈架橋成分〉
架橋成分としては、主にエピクロルヒドリンゴムを架橋させるためのチオウレア系架橋剤、ジエン系ゴムやエピクロルヒドリンゴムのうちGECO等を架橋させるための硫黄系架橋剤、および両架橋剤用の促進剤を併用するのが好ましい。
(チオウレア系架橋剤および促進剤)
チオウレア系架橋剤としては、分子中にチオウレア基を有し、主としてエピクロルヒドリンゴムの架橋剤として機能しうる種々の化合物が使用可能である。
【0051】
チオウレア系架橋剤としては、例えばテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア(別名:2−メルカプトイミダゾリン)、式(1):
(C
nH
2n+1NH)
2C=S (1)
〔式中、nは1〜10の整数を示す。〕で表されるチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。特にエチレンチオウレアが好ましい。
【0052】
チオウレア系架橋剤の配合割合は、エピクロルヒドリンゴムを良好に架橋させて、半導電性ローラにゴムとしての特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久歪みが小さくヘタリを生じにくい特性等を付与することを考慮すると、基材ゴムの総量100重量部あたり0.3重量部以上であるのが好ましく、1重量部以下であるのが好ましい。
またチオウレア系架橋剤用の促進剤としては、例えば1,3−ジフェニルグアニジン(D)、1,3−ジ−o−トリルグアニジン(DT)、1−o−トリルビグアニド(BG)等のグアニジン系促進剤などの1種または2種以上が挙げられる。
【0053】
促進剤の配合割合は、エピクロルヒドリンゴムの架橋を促進する効果を十分に発現させることを考慮すると、ベースポリマの総量100重量部あたり0.3重量部以上であるのが好ましく、1重量部以下であるのが好ましい。
(硫黄系架橋剤および促進剤)
硫黄系架橋剤としては硫黄、および含硫黄系架橋剤からなる群より選ばれた少なくとも1種が用いられる。
【0054】
このうち含硫黄系架橋剤としては、分子中に硫黄を含み、ジエン系ゴムやGECOの架橋剤として機能しうる種々の有機化合物が使用可能である。含硫黄系架橋剤としては、例えば4,4′−ジチオジモルホリン(R)等が挙げられる。
ただし硫黄系架橋剤としては特に硫黄が好ましい。
硫黄の配合割合は、ジエン系ゴムを良好に架橋させて、半導電性ローラにゴムとしての特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久歪みが小さくヘタリを生じにくい特性等を付与することを考慮すると、ベースポリマの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
【0055】
また架橋剤として含硫黄系架橋剤を使用する場合、その配合割合は、分子中に含まれる硫黄の、ベースポリマの総量100重量部あたりの質量部が上記の範囲となるように調整するのが好ましい。
硫黄系架橋剤用の促進剤としては、例えばチアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等の、分子中に硫黄を含む含硫黄系促進剤の1種または2種以上が挙げられる。
【0056】
このうちチアゾール系促進剤とチウラム系促進剤とを併用するのが好ましい。
チアゾール系促進剤としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(MZ)、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩(HM、M60−OT)、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール(64)、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(DS、MDB)等の1種または2種以上が挙げられる。特にジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)が好ましい。
【0057】
またチウラム系促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT、TMT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等の1種または2種以上が挙げられる。特にテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)が好ましい。
【0058】
上記2種の含硫黄系促進剤の併用系においては、ジエン系ゴムの架橋を促進する効果を十分に発現させることを考慮すると、チアゾール系促進剤の配合割合は、ベースポリマの総量100重量部あたり1重量部以上、2重量部以下であるのが好ましい。同様にチウラム系促進剤の配合割合は、ベースポリマの総量100重量部あたり0.3重量部以上、0.9重量部以下であるのが好ましい。
【0059】
〈その他〉
半導電性ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば促進助剤、受酸剤、可塑剤、加工助剤、劣化防止剤、酸化チタン以外の他の充填剤、スコーチ防止剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0060】
これらの添加剤は、特に半導電性ローラの抵抗値と、外添剤等が外周面に付着および蓄積するのを抑制する効果等とのバランスに注意して種類と配合割合を設定すればよい。
促進助剤としては、亜鉛華等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
促進助剤の配合割合は、個別に、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
【0061】
受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムやCRから発生する塩素系ガスが半導電性ゴム層内に残留したり、それによって架橋阻害や感光体の汚染等を生じたりするのを防止するために機能する。
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0062】
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.5質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、6質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤や、極性ワックス等の各種ワックス等が挙げられる。また加工助剤としてはステアリン酸等の脂肪酸などが挙げられる。
【0063】
可塑剤および/または加工助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以下であるのが好ましい。例えば画像形成装置への装着時や運転時に感光体の汚染を生じたりするのを防止するためである。かかる目的に鑑みると、可塑剤のうち極性ワックスを使用するのが好ましい。
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
【0064】
このうち酸化防止剤は、半導電性ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
【0065】
他の充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
充填剤を配合することにより、半導電性ゴム層の機械的強度等を向上できる。
充填剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、25質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
【0066】
また充填剤として導電性カーボンブラック等の導電性充填剤を配合して、半導電性ゴム層に電子導電性を付与してもよい。
導電性カーボンブラックとしてはHAFが好ましい。HAFは半導電性ゴム組成物中に均一に分散できるため、半導電性ゴム層にできるだけ均一な電子導電性を付与できる。
導電性カーボンブラックの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1質量部以上、特に3質量部以上であるのが好ましく、8質量部以下、特に6質量部以下であるのが好ましい。
【0067】
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
【0068】
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、あるいはジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0069】
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) (a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) (a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの、複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0070】
また(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの、各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0071】
以上で説明した各成分を含む半導電性ゴム組成物は従来同様に調製できる。まずゴム分を所定の割合で配合して素練りし、次いでイオン塩と、架橋成分以外の各種添加剤とを加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することで半導電性ゴム組成物が得られる。混練には、例えばインターミックス、バンバリミキサ、ニーダ、押出機等の密閉式の混練機や、或はオープンロール等を用いることができる。
【0072】
《半導電性ローラ》
図1は本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、上記半導電性ゴム組成物により非多孔質で単層構造の筒状に形成されるとともに、中心の通孔2にシャフト3が挿通されて固定されたものである。
【0073】
シャフト3は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって形成されている。
上記シャフト3は、例えば導電性を有する接着剤を介して半導電性ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、あるいは通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入することで、半導電性ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されて一体に回転される。
【0074】
半導電性ローラ1の外周面4には、図中に拡大して示すように酸化膜5が設けられている。
これにより、前述した所定の組成を有する半導電性ゴム組成物を用いて形成することと相まって、半導電性ローラ1を、特に帯電ローラとして使用した際に感光体の表面を均一に帯電でき、かつ帯電を繰り返しても外添剤等の付着および蓄積による画像不良を生じにくい上、感光体の汚染を生じにくくでき、しかも現状よりローラ抵抗値を低くしてプロセススピードの向上や画質の高精細化が可能なものとすることができる。
【0075】
また酸化膜5は、例えば酸化性雰囲気中で紫外線等を照射するだけで簡単に形成できるため、半導電性ローラ1の生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを抑制することもできる。
上記半導電性ローラ1を製造するには、まず先に調製した半導電性ゴム組成物を、押出機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして加硫缶内で加熱してゴム分を架橋させる。
【0076】
次いで架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨する。
研磨方法としては、例えば乾式トラバース研削等の種々の研磨方法が採用可能である。
そして上記外周面4にさらに、例えば酸化性雰囲気中で紫外線等を照射して酸化膜5を形成すると半導電性ローラ1が製造される。
【0077】
シャフト3は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔2に挿通して固定できる。
ただしカット後、まず通孔2にシャフト3を挿通した状態で二次架橋、および研磨をするのが好ましい。これにより二次架橋時の膨張収縮による筒状体→半導電性ローラ1の反りや変形を防止できる。また、シャフト3を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面4のフレを抑制できる。
【0078】
シャフト3は、先に説明したように導電性を有する接着剤、特に熱硬化性接着剤を介して二次架橋前の筒状体の通孔2に挿通したのち二次架橋させるか、あるいは通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入すればよい。
前者の場合はオーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト3が筒状体→半導電性ローラ1に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
【0079】
また後者の場合は圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
また半導電性ローラ1は、上記半導電性ゴム組成物を、当該半導電性ローラ1の立体形状に対応する金型を用いたプレス成形によって、筒状にプレス成形するとともに架橋させたのち、その外周面4にさらに、例えば酸化性雰囲気中で紫外線等を照射して酸化膜5を形成して製造することもできる。
【0080】
シャフト3は、例えば導電性を有する熱硬化性接着剤を外周に塗布した状態で、上記プレス成形用の金型の所定の位置にセットしてプレス成形することにより、半導電性ゴム組成物の成形および架橋と同時に、半導電性ローラ1と電気的に接合するとともに機械的に固定できる。
またシャフト3は先の例と同様に、筒状にプレス成形した半導電性ローラ1の通孔2にあとから挿通して、例えば導電性を有する接着剤を介して半導電性ローラ1と電気的に接合するとともに機械的に固定してもよいし、通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入することで、半導電性ローラ1と電気的に接合するとともに機械的に固定してもよい。
【0081】
半導電性ローラ1は、例えば外周面4側の外層とシャフト3側の内層の2層構造に形成してもよい。また半導電性ローラ1は多孔質構造としてもよい。
ただし、その構造を簡略化してできるだけ生産性良く低コストで製造するとともに、それ自体の耐久性や圧縮永久ひずみ特性等を向上することを考慮すると、半導電性ローラ1は非多孔質でかつ単層構造に形成するのが好ましい。
【0082】
なお、ここでいう単層構造とはゴムからなる層の数が単層であることを指し、酸化処理によって形成される酸化膜5は層数に含まないこととする。
上記半導電性ローラ1を帯電ローラとして使用する場合、前述したようにプロセススピードの向上や画質の高精細化を図ることを考慮すると、そのローラ抵抗値は10
5.5Ω以下であるのが好ましい。ローラ抵抗値は、外周面4に酸化膜5を形成した状態での測定値である。
【0083】
《ローラ抵抗値の測定方法》
図2は、半導電性ローラ1のローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
図1、
図2を参照して、本発明では半導電性ローラ1のローラ抵抗値を温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、印加電圧200Vの条件で、下記の方法によって測定した値でもって表すこととする。
【0084】
すなわち一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム6を用意し、かかるアルミニウムドラム6の外周面7に、上方からローラ抵抗値を測定する半導電性ローラ1の、酸化膜5を形成した外周面4を接触させる。
また半導電性ローラ1のシャフト3とアルミニウムドラム6との間に直流電源8、および抵抗9を直列に接続して計測回路10を構成する。直流電源8は(−)側をシャフト3、(+)側を抵抗9と接続する。抵抗9の抵抗値rは100Ωとする。
【0085】
次いでシャフト3の両端部にそれぞれ450gの荷重Fをかけて半導電性ローラ1をアルミニウムドラム6に圧接させた状態で、当該アルミニウムドラム6を回転(回転数:40rpm)させながら、両者間に直流電源8から直流200Vの印加電圧Eを印加した際に抵抗9にかかる検出電圧Vを計測する。
検出電圧Vと印加電圧E(=200V)とから、半導電性ローラ1のローラ抵抗値Rは、基本的に式(i′):
R=r×E/(V−r) (i′)
によって求められる。ただし式(i′)中の分母中の−rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(i):
R=r×E/V (i)
によって求めた値でもって半導電性ローラ1のローラ抵抗値とすることとする。測定の条件は、先に説明したように温度23℃、相対湿度55%である。
【0086】
また半導電性ローラ1は、その用途等に応じて任意の硬さ、圧縮永久ひずみを有するように調整できる。かかる硬さ、圧縮永久ひずみ、並びにローラ抵抗値等を調整するためには、例えばエピクロルヒドリンゴム、CRおよびNBRの質量比を先に説明した範囲で調整したり、架橋成分の種類と量を調整したり、カーボンブラック、充填剤、イオン塩その他の成分を配合するか否かやその種類、量等を調整したりすればよい。
【0087】
本発明の半導電性ローラ1は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等の電子写真法を利用した画像形成装置において帯電ローラとして好適に使用できるほか、例えば現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等として用いることもできる。
【実施例】
【0088】
〈実施例1〉
(半導電性ゴム組成物の調製)
下記の各ゴム分を配合した。
(A) GECO〔ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)−301L、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕60質量部
(B) CR〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕20質量部
(C) NBR〔JSR(株)製のJSR(登録商標)N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:20%〕20質量部
上記(A)〜(C)のゴム分計100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながらまずカリウム塩としてのカリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〔三菱マテリアル電子化成(株)製のEF−N112〕2質量部、アナターゼ型の酸化チタン〔チタン工業(株)製のKA−20〕20質量部、受酸剤としてのハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕5質量部、および架橋助剤としての酸化亜鉛2種〔三井金属鉱業(株)製〕5質量部を配合して混練した。
【0089】
次いで混練を続けながら、下記の架橋成分を配合してさらに混練して半導電性ゴム組成物を調製した。GECOの配合割合は、ゴム分の総量中の60質量%であった。
【0090】
【表1】
【0091】
表1中の各成分は下記のとおり。なお表中の質量部は、ゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
チオウレア系架橋剤:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔グアニジン系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DT〕
粉末硫黄:架橋剤〔鶴見化学工業(株)製〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔チアゾール系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔チウラム系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーTS〕
(半導電性ローラの製造)
調製した半導電性ゴム組成物をφ60の押出成形機に供給して外径φ10mm、内径φ5mmの筒状に押出成形し、架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×30分間架橋させた。
【0092】
次いで架橋させた筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤(ポリアミド系)を塗布した外径φ6mmのシャフトに装着し直してオーブン中で150℃×60分間加熱して当該シャフトに接着させたのち両端をカットし、広幅研磨機を用いて外径がφ8.5mmになるまで外周面を乾式研磨した。
そして研磨後の外周面をアルコール拭きしたのち、UV光源から外周面までの距離を50mmとしてUV処理装置にセットし、30rpmで回転させながら紫外線を5分間照射することで酸化膜を形成して半導電性ローラを製造した。
【0093】
〈実施例2〉
酸化チタンとしてルチル型の酸化チタン〔チタン工業(株)製のKR−380〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈比較例1〉
酸化チタンを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0094】
〈実施例3、4、比較例2、3〉
アナターゼ型の酸化チタンの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり4質量部(比較例2)、5質量部(実施例3)、50質量部(実施例4)および60質量部(比較例3)としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0095】
〈実施例5〉
ゴム分のうちGECOの量を15質量部、CRの量を40質量部、NBRの量を45質量部としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈実施例6〉
ゴム分のうちGECOの量を80質量部、CRの量を10質量部、NBRの量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0096】
〈比較例4〉
ゴム分のうちGECOの量を10質量部、CRの量を45質量部、NBRの量を45質量部としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈比較例5〉
ゴム分のうちGECOの量を85質量部、CRの量を5質量部、NBRの量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0097】
〈比較例6〉
カリウム塩に代えて、リチウム塩であるリチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〔三菱マテリアル電子化成(株)製のEF−N115〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈ローラ抵抗値測定〉
実施例、比較例で製造した半導電性ローラのローラ抵抗値を、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下で、先に説明した測定方法によって測定した。なお表2、表3では、ローラ抵抗値をlogR値で表している。
【0098】
〈実機試験〉
感光体と、当該感光体の表面に常時接触させて配設された帯電ローラとを備え、レーザープリンタ〔日本ヒューレット・パッカード(株)製のHP Color LaserJet 3800〕の本体に着脱自在とされたトナーカートリッジの純正の帯電ローラに代えて、実施例、比較例で製造した半導電性ローラを帯電ローラとして組み込んだ。
【0099】
そして温度23℃、相対湿度55%の常温、常湿環境下で、上記トナーカートリッジを上記レーザープリンタに装填した直後にハーフトーン画像、ベタ画像を印刷し、目視にて観察して下記の基準で初期の濃度ムラの有無を評価した。
○:濃度ムラは全く見られなかった。良好。
△:微かな濃度ムラが見られたが実用レベル。
【0100】
×:濃度ムラが見られた。不良。
また、別に用意した同じトナーカートリッジを上記レーザープリンタに装填し、温度10℃、相対湿度20%の低温、低湿環境下で2000枚/日の通紙を7日間実施した後にハーフトーン画像、ベタ画像を印刷し、目視にて観察して下記の基準で通紙後の濃度ムラの有無を評価した。
【0101】
○:濃度ムラは全く見られなかった。良好。
△:微かな濃度ムラが見られたが実用レベル。
×:濃度ムラが見られた。不良。
さらに、別に用意した同じトナーカートリッジを温度50℃、相対湿度90%の高温、高湿環境下で14日間静置したのち上記レーザープリンタに装填してハーフトーン画像、ベタ画像を連続印刷し、目視にて観察して下記の基準で感光体の汚染の有無、もしくは半導電性ローラのヘタリの有無を評価した。
【0102】
○:1枚目から、感光体の汚染、または半導電性ローラのヘタリによる画像不良は全く見られなかった。良好。
△:感光体の表面のうち静置時に半導電性ローラが接触していた位置に、最初の数枚は筋状の画像不良が見られたが、その後解消された。画像不良は、吸収した水分による汚染、もしくは弱いヘタリが原因と考えられた。
【0103】
×:上記位置に1枚目から筋状の画像不良が見られ、それが連続20枚以上の連続印刷をしても解消されなかった。画像不良は、半導電性ローラの外周面にブリードまたはブルームした成分による汚染、または強いヘタリが原因と考えられた。不良。
以上の結果を表2、表3に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表2、表3の各実施例、比較例の結果より、エピクロルヒドリンゴムの配合割合がゴム分の総量中の15〜80質量%で、かつ酸化チタンの配合割合が上記ゴム分の総量100質量部あたり5〜50質量部であるとともに、導電剤としてカリウム塩を含む半導電性ゴム組成物によって形成し、外周面に酸化膜を設けることで、特に帯電ローラとして使用した際に感光体の表面を均一に帯電でき、かつ帯電を繰り返しても外添剤等の付着および蓄積による画像不良を生じにくい上、感光体の汚染を生じにくく、しかも現状よりローラ抵抗値を低くしてプロセススピードの向上や画質の高精細化が可能な半導電性ローラを提供できることが判った。
【0107】
また実施例1〜6の結果より、上記の効果をさらに向上することを考慮すると、エピクロルヒドリンゴムの配合割合はゴム分の総量中の50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以下であるのが好ましいことが判った。
また実施例1〜6の結果より、上記の効果をさらに向上することを考慮すると、酸化チタンとしてはルチル型のものよりもアナターゼ型のものを用いるのが好ましいこと、その配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましいことが判った。