特許第6323983号(P6323983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6323983
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20180507BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   E05D15/06 117
   E06B5/16
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-81643(P2013-81643)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-202049(P2014-202049A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】廣島 光彰
(72)【発明者】
【氏名】小縣 剛士
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−240368(JP,A)
【文献】 特許第3559901(JP,B2)
【文献】 特開平10−192431(JP,A)
【文献】 特許第3054642(JP,B2)
【文献】 特許第4951155(JP,B1)
【文献】 特開2002−070441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00−15/58
E06B 5/00− 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路用開口部を開閉する開閉体と、前記通路用開口部の上方側の不動部位に横幅方向へ連続するように固定されたガイドレールと、前記ガイドレールに掛合して前記横幅方向へ移動するとともに下方側に前記開閉体を吊持した移動支持部とを備え、前記移動支持部の前記横幅方向への移動により前記開閉体を開閉動作するようにした開閉装置において、
前記ガイドレールの下方側に、前記ガイドレールよりも幅広に形成されるとともに前記横幅方向へ連続する受部を設け、該受部によって落下物を受けるようにし、
前記開閉体を、前記通路用開口部を横幅方向へ開閉する引戸とし、この引戸の上端部に、前記受部を設け、
開放した際の前記開閉体を収納する戸袋部を備え、前記受部の一端部を前記戸袋部側に突出させるとともに、その突出部分を前記戸袋部の横幅方向の全長よりも短くしたことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記受部は、開閉体厚さ方向の両端部を前記開閉体の表裏面から突出しており、この突出する両端側には、それぞれ、上方へ突出する上向き突片部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記通路用開口部の上方側に、前記通路用開口部の横幅方向へわたって内部が中空状の上側横枠を設けるとともに、この上側横枠内に、前記ガイドレール及び前記移動支持部を備え、
前記上側横枠内の下端面には、前記開閉体の上端部側を挿入する開口部が設けられ、
前記受部は、開閉体厚さ方向において両端側の前記上向き突片部の間隔が前記開口部の間隔よりも大きく、前記開口部を上方側から覆っていることを特徴とする請求項2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記両端側の前記上向き突片部が、開閉体厚さ方向において前記移動支持部の両側に位置することを特徴とする請求項2又は3記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動支持部によって吊持された開閉体を移動支持部の移動により開閉動作させる開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば、特許文献1に記載されるもののように、通路用開口部(s)を囲む枠体(10)と、該枠体の上枠部(13)内に横幅方向へわたって装着されたガイドレール(70)と、該ガイドレール上を転動する吊車(21)と、該吊車によって吊持された引戸(開閉体20)と、前記上枠部内で前記吊車を移動させるリニアモータ部(30)とを具備したものがある。
【0003】
ところで、上記従来技術のような引戸装置では、枠体(10)と引戸(開閉体20)の間には、引戸の屋内側と屋外側とを連通する隙間が形成される。より詳細に説明すれば、例えば、枠体(10)の上枠部(13)は中空状に形成され、この上枠部(13)と引戸(開閉体20)の上端側部分の間には、特許文献1の図2に示されるように、隙間が形成される。このため、万が一、火災が生じた場合には、前記隙間を通じて、炎が上枠部(13)内へ侵入し、上枠部(13)内のガイドレール(70)や、吊車(21)、その他の物を、溶融させたり脱落させたりするおそれがある。そして、このようにして生じた落下物は、床面や下枠面等に落ちて飛び散り、他の物を引火させる火種となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−90040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、火災時等の熱により溶融や脱落等した物が、床面や下枠等に落ちるのを防ぐことができる開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための一手段は、以下の構成を具備している。
通路用開口部を開閉する開閉体と、前記通路用開口部の上方側の不動部位に横幅方向へ連続するように固定されたガイドレールと、前記ガイドレールに掛合して前記横幅方向へ移動するとともに下方側に前記開閉体を吊持した移動支持部とを備え、前記移動支持部の前記横幅方向への移動により前記開閉体を開閉動作するようにした開閉装置において、前記ガイドレールの下方側に、前記ガイドレールよりも幅広に形成されるとともに前記横幅方向へ連続する受部を設け、該受部によって落下物を受けるようにし、前記開閉体を、前記通路用開口部を横幅方向へ開閉する引戸とし、この引戸の上端部に、前記受部を設け、開放した際の前記開閉体を収納する戸袋部を備え、前記受部の一端部を前記戸袋部側に突出させるとともに、その突出部分を前記戸袋部の横幅方向の全長よりも短くしたことを特徴とする開閉装置。

【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、火災時等の熱でガイドレールやガイドレール付近のものが溶融して落下した場合に、その際の落下物を受部によって受けることができ、ひいては、該落下物が床面等に落ちて飛び散り火種となるようなことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る開閉装置を室内側から視た正面図である。
図2図1における(II)-(II)線に沿う断面図である。
図3図1における(III)-(III)線に沿う断面図である。
図4図1における(IV)-(IV)線に沿う断面図である。
図5】同開閉装置について、駆動装置を有する部分の縦断面図である。
図6図1における(VI)-(VI)線に沿う断面図である。
図7図1における(VII)-(VII)線に沿う断面図である。
図8】引戸の要部を切欠して内部を示す構造図である。
図9】引戸を上方から視た図である。
図10】引戸を下方から視た図である。
図11】引戸の要部横断面図である。
図12】戸袋側のパネルの一例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図13】上端側の迂回路の一例を示す縦断面図である。
図14】戸尻側の迂回路の一例を示す横断面図である。
図15】引戸の下端側を示す要部拡大縦断面図である。
図16】本発明に係る開閉装置の他例を示す横断面図である。
図17】上端側防炎補助部材の他例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態の第一の特徴は、通路用開口部を開閉する開閉体と、前記通路用開口部の上方側の不動部位に横幅方向へ連続するように固定されたガイドレールと、前記ガイドレールに掛合して前記横幅方向へ移動するとともに下方側に前記開閉体を吊持した移動支持部とを備え、前記移動支持部の前記横幅方向への移動により前記開閉体を開閉動作するようにした開閉装置において、前記ガイドレールの下方側に、前記ガイドレールよりも幅広に形成されるとともに前記横幅方向へ連続する受部を設け、該受部によって落下物を受けるようにした。
この構成によれば、火災時等の熱でガイドレールやガイドレール付近のものが溶融して落下しても、その際の落下物を受部によって受けることができ、ひいては、該落下物が床面等に落ちて火種となるようなことを防ぐことができる。
【0010】
第二の特徴としては、前記開閉体を、前記通路用開口部を横幅方向へ開閉する引戸とし、この引戸の上端部に、前記受部を設けた。
この構成によれば、火災時等の落下物を引戸上端の受部によって受けることができる。
【0011】
第三の特徴としては、前記受部は、前記移動支持部を下方側から覆うように設けられている。
この構成によれば、移動支持部の構成物が溶融したり脱落して落下した場合には、この落下物が床面に落ちるのを受部によって効果的に防ぐことができる。
【0012】
第四の特徴としては、前記受部における開閉体厚さ方向の一端側と他端側に上方向きの突片部を設けた。
この構成によれば、受部上に落ちた落下物が、該受部上からこぼれ落ちるのを突片部によって防ぐことができる。
【0013】
第五の特徴としては、前記受部における前記横幅方向の少なくとも一端側に、上方向きの突片部を設けた。
この構成によれば、受部上に落ちた落下物が、該受部における横幅方向の一端側からこぼれ落ちるのを突片部によって防ぐことができる。
【0014】
第六の特徴としては、開放した際の前記開閉体を収納する戸袋部を備え、前記受部の一端部を前記戸袋部側に突出させるとともに、その突出部分を前記戸袋部の横幅方向の全長よりも短くした。
この構成によれば、受部上に落ちた落下物が、該受部における横幅方向の一端側からこぼれ落ちる場合に、この落下物を、開閉体の戸尻から離して戸袋側に落下させることができる。ひいては、落下物が通路用開口部側に落下して飛び散り火種となるのを防ぐことができる。
【0015】
第七の特徴としては、前記通路用開口部の上方側に、前記通路用開口部の横幅方向へわたって内部が中空状の上側横枠を設けるとともに、この上側横枠内に、前記ガイドレール及び前記移動支持部を備え、前記上側横枠内の下端面には、前記開閉体の上端部側を挿入する開口部が設けられ、前記受部は、前記開口部を上方側から覆うようにして、前記開閉体の上端部に固定されている。
この構成によれば、前記開口部の内縁と前記開閉体面との間の隙間から、前記上側横枠内に火炎が侵入するのを受部によって防ぐことができる上、高熱によって上側横枠内のものが溶融や脱落等した場合であっても、この溶融や脱落等による落下物が前記開口部を通過するのを受部によって阻むことができる。
【0016】
次に、上記特徴を有する本実施の形態の好ましい具体例を、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の開閉装置は、病院や、ビル、住宅、倉庫、工場、車両の荷台等の構築・構造物における開口部分に配設され、開閉体をガイドレールに吊り下げて略水平方向へ略直線的に移動させる、上吊方式の引戸装置に適用した一例として説明する。
【0017】
開閉装置1(引戸装置)は、内側に正面視矩形状の通路用開口部Aを有する枠体10と、通路用開口部Aを横幅方向への移動により開閉する引戸20(開閉体)とを具備する(図1参照)。
この開閉装置1は、枠体10内(詳細には上側横枠11内)のガイドレール11cの下方側に、ガイドレール11cよりも幅広の(図示例によれば開閉体厚さ方向(図2の左右方向)の幅が広い)受部11gと、該受部11gよりも下側に位置する上端側防炎補助部材22(受部)を備え、これら二重の受部11g,22によって、火災時に溶融や脱落等した落下物を受けるようにしている。
【0018】
枠体10は、引戸20(開閉体)の開閉経路の上方側に位置する上側横枠11と、通路用開口部Aの閉鎖方向側(図1によれば左端側)に位置する戸先側縦枠12と、引戸20の開閉範囲の中央寄りに位置する中央側縦枠13と、全開時の引戸20の戸尻に対向するように位置する戸尻側縦枠14とを具備する。
この枠体10は、図1に示す一例によれば、その枠内の左側部分に通路用開口部Aを配置し、同枠内の右側部分に、引戸20を収納するための戸袋部Bを配置し、構築構造物等の開口部内縁に嵌め合せられるとともに、戸袋部Bを前記構築構造物等の壁内に埋め込んでいる。
【0019】
上側横枠11は、通路用開口部Aの上方に位置する開口側部位11aと、戸袋部Bの上方に位置する戸袋側部位11bとからなり、開閉体開閉方向(図1によれば左右方向)へ連続する略中空箱状に形成される。これら開口側部位11aと戸袋側部位11bは、開閉体横幅方向へわたる一体の部材としてもよいし、別体の部材を接合してなるものであってもよい。そして、上側横枠11の下端部には、引戸20の上端部が隙間を有する状態で挿入される。
【0020】
上側横枠11の開口側部位11aは、図2に示すように、縦断面略逆L字状の基部11a1と該基部に対し着脱可能なカバー部11a2とを具備してなる。
【0021】
また、上側横枠11の戸袋側部位11bは、図3に示すように、縦断面略逆L字状の基部11b1と該基部に対し着脱不能に装着された防火板11b2とを具備してなる。
防火板11b2は、その上端側にフック状の掛止部11b21(図3及び図12(b)参照)を有し、この掛止部11b21を戸袋部B内側へ凹ませて、基部11b1に引っ掛け溶接固定している(図3参照)。
また、戸袋部B内の底部には、縦断面凹状の底部材11qが戸幅方向へ連続して設けられる。この底部材11qは、耐火性の金属板からなり、火災時に落下した溶融物等が建物等の床面に接触して引火等の原因になるのを防ぐ。
【0022】
上側横枠11内の基部11a1,11b1の壁面には、ガイドレール11cを長手方向にわたって固定するための面を、その下側の面よりも突出させてなる凸部11a12が設けられる。この凸部11a12は、上側横枠11の略全長にわたって連続するように形成され、その下面には、溶接やネジ止め、リベット止め等によって受部11gが固定される。詳細には、図2に示すように、凸部11a12の下面と、ガイドレール11c下面とが略面一に設けられ、これら下面及びガイドレール11c下面に接触するように受部11gが固定される。
【0023】
ガイドレール11cは、上側横枠11内の横幅方向の略全長にわたる断面略L字状の部材であり、例えば、アルミニウム合金等によって形成されている(図2及び図3参照)。
【0024】
受部11gは、引戸開閉方向へわたってガイドレール11cを下方側から覆い受ける縦断面略L字状の部材である。この受部11gの材質は、耐熱性及び耐腐食性の良好な材料であればよく、例えば、亜鉛メッキ鋼板等とされる。
【0025】
より詳細に説明すれば、受部11gは、引戸20の横幅寸法よりも若干長く形成され、通路用開口部Aの横幅方向へ連続するとともにその開放方向の端部側に、戸袋部B内に突出する突出部分11g11(図1参照)を有する。この突出部分11g11は、引戸20が全開した際に戸袋部B内で戸尻側縦枠14に近接するようにすればよいが、他例としては、引戸20が全開した際に戸尻側縦枠14内の横向き穴(図示せず)に挿入し逃がされるようにしてもよい。
また、この受部11gは、図2に示すように、ガイドレール11c及び吊車24を、該吊車24の軸方向において下方側から覆うように上側横枠11の内面から開閉体厚さ方向へ突出しており、その突端側に、上方向きの突片部11g1を有する。この突片部11g1は、受部11gの前記突端側を上方に曲げてなり、開閉体横幅方向へわたって受部11gと一体に構成され、吊車24や支持ブラケット23との干渉や当接を避けるために、吊車24と支持ブラケット23の間に入り込むように位置する。
そして、この受部11gは、火災時の高熱により、ガイドレール11c、吊車24、制動装置11d、駆動装置11e(図5参照)等が溶融した場合に、その溶融物を下方から受け、該溶融物が床面等に落下して飛び散るのを防ぐ。
【0026】
その他、上側横枠11内には、全閉時(又は全開時)の衝撃を緩和する制動装置11d(図2参照)、引戸20を閉鎖方向へ付勢する駆動装置11e(図5参照)、全開時の引戸20を受ける戸当たり部材11f(図3参照)等が設けられる。
【0027】
また、上側横枠11の逆L字状の基部11a1は、図2に示すように、その下端側が、枠体側突片部11a11を有する断面凹状に形成され、同様に、カバー部11a2も、その下端側が、枠体側突片部11a21を有する断面凹状に形成される。これら断面凹状の部分は、火災時の溶融物等の落下物を受ける受部としても機能する。
枠体側突片部11a11,11a21の各々は、上側横枠11の開口側部位11a(図1参照)の下端面において、引戸20を挿入する開口部の縁(図2参照)を、引戸20面に近接した位置で上方へ折り曲げることで形成され、引戸20の横幅方向へ連続している。
【0028】
また、戸先側縦枠12は、通路用開口部Aの引戸閉鎖方向側の端部に位置する部材であり、上側横枠11から床面にわたる上下方向へ連続している(図1参照)。この戸先側縦枠12における引戸20に対向する面には、引戸20の戸先を嵌脱する凹部12aが上下方向へわたって形成される(図4参照)。
なお、図4中、符号12bは、火災時に戸先側縦枠12が熱変形するのを防ぐ板状の補強材であり、上下方向に間隔を置いて複数溶接されている。
【0029】
中央側縦枠13は、開閉体開放方向側にて通路用開口部Aの内縁を形成する部材であり、上側横枠11の下端から床面にわたる上下方向へ連続するとともに、開放動作した際の引戸20を挿入する開口部を有する(図4参照)。
そして、中央側縦枠13における前記開口部内側には、図4に示すように、引戸20を挟んで戸厚方向の両側に位置するように、枠体側突片部13a,13aが設けられる。
これら枠体側突片部13a,13aの各々は、中央側縦枠13の前記開口部の内縁から引戸20面側へ突出するとともに、引戸20面に沿って戸尻方向へ折れ曲った横断面略L字状に形成され(図4参照)、通路用開口部Aの上下方向の略全長にわたり連続している。
【0030】
また、戸尻側縦枠14は、戸袋部Bの引戸開放方向側の端部を構成する部材であり(図1参照)、上側横枠11から床面にわたる上下方向へ連続している。この戸尻側縦枠14には、全開時の引戸20の戸尻側端部を受けて、その衝撃を緩和する緩衝材15(例えばゴム等の弾性体)が固定されている(図4参照)。
【0031】
中央側縦枠13と戸尻側縦枠14の間の空間は、開放した際の引戸20を収納する戸袋部Bであり、この戸袋部Bの戸厚方向の両端面は、図3に示すように、耐火性の防火板11b2,11b3,11b4(例えば、鉄板等)により構成される。
なお、図3及び図4中、符号11pは、防火板11b2,11b3,11b4を、基部11b1やその他のパネル材等に溶接する溶接部である。この溶接部11pは、外壁材x内面との干渉を避けるように、防火板11b2,11b3,11b4を部分的に戸袋部B内側へ凹ませた部分に設けられる。
【0032】
引戸20(開閉体)は、正面視略矩形状の引戸本体21(開閉体本体)と、該引戸本体21の上端面に固定された上端側防炎補助部材22(受部)(図2参照)と、防炎補助部材22から上方へ突出する移動支持部20a(支持ブラケット23及び吊車24)(図2参照)と、引戸本体21の戸尻側の端面に固定された戸尻側防炎補助部材25(図4参照)とを具備する。そして、この引戸20は、移動支持部20aによりガイドレール11cに吊るされるとともに、下端側が床面のガイドローラ26(図2参照)に嵌め合せられて、横幅方向へ直進運動する。
【0033】
引戸本体21は、通路用開口部Aを略覆う矩形板状に構成され、その上端側部分を、上側横枠11に挿入している。この引戸本体21は、ある程度の厚みを有する中空状に構成され、その内部には、当該開閉装置1の使用目的に応じた材料(例えば、断熱材や防音材、耐火部材、補強材等)からなる芯材21a(図2参照)が設けられる。
【0034】
上端側防炎補助部材22(受部)は、開閉体横幅方向(図1によれば左右方向)にわたって、引戸本体21の上端面に固定された略矩形板状の部材であり(図8及び図9参照)、開閉体厚さ方向(図2によれば左右方向)の両端部を、引戸本体21の表裏面から突出している(図2参照)。そして、この突端側には、下方へ突出して後述する迂回路s1を構成する引戸側突片部22aと、上方へ突出する上向き突片部22bとを有する。開閉体厚さ方向の両側の上向き突片部22b,22b間は、火災時の溶融物等の落下物を受ける受部として機能する(図2及び図13参照)。
また、上端側防炎補助部材22の戸尻側には、引戸20の戸尻側端部から戸袋部B内側へ突出して(図8参照)、火災時の溶融物が戸袋部B内で戸尻近傍に落下するのを防ぐ戸尻側突出部22cが設けられる。
上端側防炎補助部材22の材質は、耐熱性及び耐腐食性の良好な材料であればよく、例えば、亜鉛メッキ鋼板等とされる。
【0035】
受部11gの突出部分11g11、及び上端側防炎補助部材22(受部)の戸尻側突出部22cの長さは、火災時の溶融物等の落下物が通路用開口部Aから離れて戸袋部B内に落下するように、引戸20の全閉状態において戸尻よりも戸袋部B内側へ突出するとともに、戸袋部Bの横幅方向の全長よりも短い適宜長さに設定すればよい。
特に好ましくは、図1に示すように、上側に位置する受部11gの突出部分11g11を、その下側の戸尻側突出部22cよりも戸袋部B内側へ突出するように形成する。この構成によれば、全閉状態において、火災時の溶融物等の落下物が突出部分11g11に落下し、さらに突出部分11g11からこぼれ落ちたとしても、その落下物を、戸尻側突出部22c上に留まらせることなく、比較的被引火物の少ない戸袋部B内の奥側へ落下させることができる。
なお、他例としては、受部11gの突出部分11g11と、戸尻側突出部22cとのうち、その一方または双方を、戸尻から突出させない構成とすることも可能である。
【0036】
また、受部11gの突出部分11g11の戸先側の端部は、移動支持部20aの下方側を覆うように、ガイドレール11cの戸先側の端部と略同じ位置とすればよく、図1の一例によれば、戸先側縦枠12の位置よりも若干戸尻側に位置する。なお、他例としては、受部11gの突出部分11g11の戸先側の端部を戸先側縦枠12の位置まで延ばすことも可能である。
【0037】
また、上端側防炎補助部材22(受部)の戸先側の端部は、錠前装置28との干渉等を避けるために、引戸20の戸先部分よりも若干戸尻寄りに位置する(図1参照)。なお、他例として、錠前装置28との干渉を避ける構造を有する場合等には、上端側防炎補助部材22(受部)の戸先側の端部を、引戸20の戸先と同位置又は略同位置にすることも可能である。
【0038】
引戸側突片部22aは、図13に示すように、上端側防炎補助部材22の開閉体厚さ方向の突端側を、枠体側突片部11a21よりも引戸20面から離隔するとともに、引戸面に沿うように下方へ曲げることで形成される。
この引戸側突片部22aは、引戸20における横幅方向の略全長にわたって連続している。
【0039】
また、上側横枠11側の上向き突片部22bは、図13に示すように、上端側防炎補助部材22の戸厚方向の突端側を、引戸20面から離隔した位置で、引戸側突片部22aとは逆に上方へ突出させてなり、上端側防炎補助部材22(受部)における開閉体横幅方向の略全長にわたって連続している。
この上向き突片部22bは、ガイドレール11c、吊車24及び支持ブラケット23等を、開閉体厚さ方向の略全長に連続して覆うことで、例えば、火災時にガイドレール11c(アルミニウム合金)や吊車24(合成樹脂材材料)が溶融して落下した場合に、これらを開閉体厚さ方向へこぼれ落ちないように受ける。
【0040】
また、上端側防炎補助部材22の上面には、図9に示すように、複数のガス抜き孔22dが設けられる。これらガス抜き孔22dは、引戸20内の空間に連通しており、火災時の高温により発生した引戸20内のガスを上側横枠11内へ逃がす。
【0041】
上端側防炎補助部材22の上面において、ガス抜き孔22dの周囲には、上端側防炎補助部材22(受部)の上面よりも上方へ突出した円筒状の堤部22eが設けられる(図9参照)。この堤部22eは、火災時の高温による溶融物が、ガス抜き孔22dから引戸20内へ侵入するのを防ぎ、ひいては、前記溶融物により、引戸20内の芯材21aや接着剤等が溶融したり引火したりするのを防ぐ。
【0042】
また、図9に示すように、上端側防炎補助部材22の上面における戸先側と戸尻側には、それぞれ、戸先側突片部22fと、戸尻側突片部22gが設けられる。これら突片部22f,22gは、上端側防炎補助部材22上面から上方へ突出するとともに、戸厚方向両側の上向き突片部22b,22bの間にわたって連続している。
戸先側突片部22fは、火災時の溶融物が戸先側へ落下するのを阻んで、その落下量を最小限にする。また、戸尻側突片部22gは、火災時の溶融物が戸尻側へ落下するのを防ぐ。
【0043】
なお、図9中、符号22hは、移動支持部20aの支持ブラケット23を固定する取付孔であり、火災時に移動支持部20aの溶融物がガス抜き孔22dに落下するのを防ぐように、ガス抜き孔22dに対し開閉体幅方向へ離れた位置に設けられる。
【0044】
また、移動支持部20aは、ガイドレール11c上を転動する吊車24と、該吊車24を回転可能に支持するとともにその下端側に引戸20(開閉体)を止着した支持ブラケット23を具備してなる。
支持ブラケット23及び吊車24は、引戸本体21(詳細には上端側防炎補助部材22)の上端面に、開閉体横幅方向へ間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)支持される。
支持ブラケット23は、図示例によれば、断面L字状の金具であり、その底片部分を引戸本体21上端に固定するとともに、上方へ突出する垂直状片部分に、吊車24を回転自在に支持している。
吊車24は、例えば、合成樹脂材料等から薄肉円柱状に形成され、その外周面をガイドレール11c上で転動させるように係合している。
【0045】
また、戸尻側防炎補助部材25は、引戸上下方向の略全長にわたって、引戸本体21の戸尻側の端面に固定された略矩形板状の部材である(図4図10及び図11参照)。この戸尻側防炎補助部材25における戸厚方向の両端側には、引戸本体21面から突出するとともに戸先方向へも突出した引戸側突片部25aが形成される。
【0046】
次に、引戸20上端側と戸尻側の迂回路s1,s2について詳細に説明する。
引戸20上端側の迂回路s1は、図13に示すように、引戸20上端から戸厚方向へ突出して下方へ向く引戸側突片部22aや、上側横枠11の下端側から突出して引戸面と引戸側突片部22aとの間に下方から入り込む枠体側突片部11a21,11a11、上側横枠11内の空間等によって構成される。そして、この迂回路s1は、引戸20を挟む一方の空間と他方の空間(例えば、図13の引戸20左右の空間)を、上側横枠11内を介して連通している。
より詳細に説明すれば、この迂回路s1は、図13に二点鎖線で示すように、引戸20の戸厚方向の一方側(図13によれば右側)においては、引戸20面と枠体側突片部11a21の間に侵入した流体を、上端側防炎補助部材22に当てて、侵入方向に対する逆方向(図13によれば下方)へ略Uターン状に曲げ、枠体側突片部11a21と引戸側突片部22aの間を前記逆方向へ通過させた後、上側横枠11内の底面に当てて曲げ、前記侵入方向(図13によれば上方)へ戻して上側横枠11内へ導く、略蛇行状の経路を形成している。同様に、引戸20の戸厚方向の他方側(図13によれば左側)の迂回路s1も、前記と対称の略蛇行状の経路を形成している。
【0047】
また、引戸20戸尻側の迂回路s2は、図14に示すように、引戸20の戸尻側端部から戸厚方向へ突出するとともに戸先方向へ延設された引戸側突片部25aや、中央側縦枠13の戸先側端部から引戸20面側へ突出するとともに引戸20面と引戸側突片部25aとの間に入り込む枠体側突片部13a、戸袋部B内の空間等によって構成される。そして、この迂回路s2は、引戸20を挟む一方の空間と他方の空間(例えば、図14の引戸20上下の空間)を、戸袋部B内を介して連通している。
より詳細に説明すれば、この迂回路s2は、図14に二点鎖線で示すように、引戸20の戸厚方向の一方側(図14によれば下側)においては、引戸20面と枠体側突片部13aの間に侵入した流体を、戸尻側防炎補助部材25に当てて、侵入方向に対する逆方向(図14によれば左方向)へ略Uターン状に向け、枠体側突片部13aと引戸側突片部25aの間を前記逆方向へ通過させた後、中央側縦枠13内面に当てて曲げ、前記侵入方向(図14によれば右方向)へ戻して戸袋部B内へ導く、略蛇行状の経路を形成している。同様に、引戸20の戸厚方向の他方側(図14によれば上側)の迂回路s2も、前記と対称の略蛇行状の経路を形成している。
【0048】
なお、図13中、符号21b,21cは、引戸本体21を表部と裏部を構成する表面板であり、引戸本体21の表部と裏部の各々に略矩形板状に設けられる。
図13中、符号21dは、引戸幅方向へ連続する断面コ字状の骨材であり、その戸厚方向の両端面に表面板21b,21cを接着している。
図13中、符号21eは、引戸幅方向へ連続する断面コ字状の補強材であり、引戸本体21の上端部に厚み方向へ跨って嵌り合うことで、火災時の高熱により表面板21b,21cが骨材21dから剥がれるのを防ぐ。
【0049】
また、図14中、符号21fは、引戸本体21の戸尻側の内面に沿って上下方向へ連続する断面コ字状の骨材であり、その戸厚方向の両端面に表面板21b,21cを接着している。
図14中、符号21gは、引戸本体21の戸尻側の外面に沿って上下方向へ連続する断面コ字状の補強材であり、引戸本体21の戸尻側端部に厚み方向へ跨って嵌り合うことで、火災時の高熱により表面板21b,21cが骨材21fから剥がれるのを防ぐ。
【0050】
また、図15中、符号21hは、引戸本体21の下端側の内面に沿って引戸横幅方向へ連続する断面コ字状の骨材であり、その戸厚方向の両端面に表面板21b,21cを接着している。
図15中、符号21b1,21c1は、表面板21b,21cの下端側を、それぞれ潰し曲げしてなる断面略U字状の曲げ部である。これら曲げ部21b1,21c1は、それぞれ、骨材21hの下端縁に凹状に嵌り合うことで、火災時の高温によって表面板21b,21cが骨材21hから剥がれるのを防ぐ。
特に、図10の引戸20の下面図に示すように、曲げ部21b1,21c1と補強材21mの隙間c、曲げ部21b1,21c1と補強材21gの隙間c、骨材21hと補強材21mの隙間c、骨材21hと補強材21gの隙間cは、何れも0mm又は0mmに近い寸法に設定される。よって、火災時等の高熱により引戸本体21内のガスが前記隙間cから外部へ流出するのを防ぐことができる。
【0051】
また、図6中、符号27は、耐熱板ガラスからなる矩形板状の小窓であり、符号27aは、小窓27の周囲をパッキン等を介して支持する枠材である。
図6中、符号21i,21jは、小窓27の枠材27aを受ける骨材である。これら骨材21i,21jは、図8に示すように、引戸本体21の上下方向の略全長にわたって連続している。特に、戸尻側の骨材21jは、引戸本体21内の戸尻側に上下方向に連続する通路状の空間を確保し、この空間によって、火災時に発生したガスを横幅方向や下方へ逃がさずに上方のガス抜き孔22dへ導く(図8の二点鎖線参照)。
なお、引戸20の補強を目的に引戸20内に一つ又は複数の長尺状の骨材や補強材等を組み込む場合、引戸20の上下方向及び横幅方向等、連続する方向を任意とすることが可能であるが、特に、引戸20内に発生したガスの上方への移動を妨げないようにするためには、図示例の骨材21i,21jのように、連続する方向が上下方向又は略上下方向となるようにするのが好ましい。さらに、前記骨材や補強材等の上端部の位置は、ガス抜き孔22dを塞ぐのを避けた位置とするのが好ましい。
【0052】
また、図1及び図7中、符号28は、全閉時の引戸20を施錠する錠前装置である。また、符号21k1(図7参照)は、引戸本体21の最戸先側部分を補強する骨材であり、該骨材21k1の上端側には錠前装置28を組付けるための切欠部21k11が形成される。この切欠部21k11による強度低下を防ぐために、骨材21k1における前記切欠部21k11を有する部分の内側には、横断面コ字状の補強材21k2が設けられる。
すなわち、仮に補強材21k2を有さない構造であった場合には、火災時の高温により、骨材21k1が戸厚方向の内側へ変形するおそれがあるが、このような熱変形を、断面略コ字状の補強材21k2によって阻むことができる。
【0053】
そして、前記補強材21k2には、戸厚方向に間隔を置いた二枚の補強板21k3,21k3が溶接固定される。そして、これら補強板21k3,21k3を間に挟むとともに挿通するようにして錠前装置28が組み付けられている。
【0054】
また、図7中、符号21mは、引戸本体21の戸先側の外面に沿って上下方向へ連続する断面コ字状の補強材であり、引戸本体21の戸先側端部に厚み方向へ跨って嵌り合うことで、火災時の高熱により表面板21b,21cが骨材21k1から剥がれるのを防ぐ。
【0055】
次に、上記構成の開閉装置1について、特徴的な作用効果を詳細に説明する。
引戸20の全閉状態において、通常時は、上側横枠11と引戸20の間には、隙間が確保されるため、この隙間によって、引戸20内外の通気性も確保できる上、引戸20の開閉動作性を良好に維持することができる(図2参照)。
また、万が一、火災等の発生により、火炎が前記隙間から上側横枠11内に侵入しようとした場合には、この火炎の侵入を、前記隙間に形成される迂回路s1や、引戸側突片部22a等が阻む(図13参照)。
【0056】
火炎の勢いが強く、上側横枠11内に侵入した場合には、上側横枠11内の物体、例えば、ガイドレール11cや、吊車24、支持ブラケット23、制動装置11d、駆動装置11e、及びこれらに関連する物体等が溶融し、その溶融物が落下したり、部分的な溶融により前記物体自体が落下したりするおそれがある。
このようにして、落下した落下物は、先ず、上側横枠11に一体的に固定された受部11gによって受けられ、この際に、受け切れなかった場合等には、引戸20の上端側防炎補助部材22(受部)や、上側横枠11内下端側の凹状の内面等によって受けられる(図2参照)。
【0057】
また、前記落下物が戸尻側へ落下した場合には、この落下物は、先ず、受部11gの戸尻側の突出部分11g11(図1参照)によって受けられ、この際に受け切れなかった場合等には、引戸20の上端側防炎補助部材22(受部)における戸尻側突出部22cによって受けられる(図1及び図8等参照)。
【0058】
そして、前記のようにして受部11g、上端側防炎補助部材22(受部)又は上側横枠11内下端の凹状内面によって受けられた落下物は、こぼれ落ちるようにして更に落下しようとするのを、受部11gの戸厚方向突端側の突片部11g1(図1参照)や、上端側防炎補助部材22(受部)の戸尻側突片部22g又は戸先側突片部22f等によって阻まれる。
【0059】
よって、前記溶融物等の落下物が、床面に落ちて火種となるようなことを防ぐことができる。
特に、通過物等によって被引火物が比較的多い通路用開口部A側では、その上方に、上側横枠11に固定された受部11gと、引戸20の上端側防炎補助部材22(受部)とが二重壁状に配置されるため、前記落下物の落下が効果的に阻まれる。
また、受部11gの突出部分11g11、及び上端側防炎補助部材22の戸尻側突出部22cを、戸袋部B内に部分的に突出させるようにしているため、前記溶融物等の落下物は、戸袋部B内へは落下する可能性がある。しかしながら、戸袋部B内への落下物は、前記突出部分11g11及び戸尻側突出部22cによって、通路用開口部Aから戸袋部B内奥側へ離れた位置に落下する。このため、このような落下物が、通路用開口部A近傍の被引火物や、床面のガイドローラ26等を引火する火種となるのを防ぐことができる。また、前記溶融物等が戸袋部B内へ落下した場合であっても、戸袋部B内は比較的被引火物が少ないので、発火等の可能性を少なくすることができる。
【0060】
また、万が一、火災等の発生により、火炎や煙等が前記隙間に侵入して引戸20の内外へ通過しようとした場合には、これら火炎や煙等は、図13及び図14に二点鎖線で示すように、迂回路s1,s2によって迂回させられる。特に、上側横枠11内においては、ガイドレール11cや支持ブラケット23及び吊車24等が、火炎や煙等に対する障害物としても作用する。
【0061】
よって、火災時等の熱により溶融や脱落等した物が、床面や下枠等に落ちて飛び散り火種となるのを防ぐことができる上、火炎や煙等が引戸20内外へ通過するのを効果的に阻むことができ、ひいては、当該開閉装置1を、火災時の炎を建物内外に通過させない防火設備(防火戸)として機能させることも可能になる。
【0062】
次に、本実施の形態の他の具体例である開閉装置2について説明する(図16参照)。なお、この開閉装置2について、上記開閉装置1と略同様の部分については同一の符号を付けることで詳細な説明を省略する。
上述した開閉装置1(図1参照)が構築構造物の壁部の厚みt内に引戸20(開閉体)を配置しているのに対し、以下に示す開閉装置2(図16参照)は、構築構造物の壁部から厚み方向へ突出するように引戸20’(開閉体)を配置している(面付けタイプと呼称される)。
【0063】
開閉装置2は、内側に矩形状の通路用開口部Aを有する枠体10’と、通路用開口部Aを横幅方向への移動により開閉する引戸20’とを具備する。
【0064】
枠体10’は、引戸20の開閉経路の上方側に位置する上側横枠(図示せず)と、通路用開口部Aの閉鎖方向側(図16によれば左端側)に位置する戸先側縦枠12’と、引戸20’の開閉範囲の中央寄りに位置する中央側縦枠13’と、全開時の引戸20’の戸尻に対向するように位置する戸尻側縦枠14’とを具備する。
なお、この枠体10’の前記上側横枠は、上記上側横枠11と略同様の基本構造を有しており、ガイドレール11c、受部11g及び移動支持部20a等を内在する。
そして、この枠体10’の前記上側横枠(図示せず)と引戸20’との間には、上記開閉装置1と略同様にして迂回路が形成され(図13参照)、また、全閉時の引戸20’の戸尻側部分と戸尻側縦枠14’との間には、後述する迂回路s3が形成される(図16参照)。
【0065】
戸先側縦枠12’は、通路用開口部Aの開閉体閉鎖方向側の端部に位置する部材であり、構築構造物等の壁部から厚み方向(図16によれば下方)へ突出する部分を有し、この突出部分に、引戸20の戸先を嵌脱する凹部12a’を上下方向へわたって形成している。
この戸先側縦枠12’内には、図16に破線で示すように、戸厚方向へわたる横断面略L字状の補強材12b’が固定される。この補強材12b’は、上下方向に間隔を置いて複数配設され、枠体10’の引戸20’側の部分(図16における下側部分)が火災時の熱変形により横幅方向(図16によれば左方向)へ広がってしまうのを防ぐ。
【0066】
中央側縦枠13’は、通路用開口部Aの戸尻側の内縁を形成するとともに、全閉時の引戸20’の後端側部分に重なり合う部材である。
この中央側縦枠13’における戸厚方向の一端側(図16によれば下端側)には、戸厚方向へ突出するとともに戸尻方向へ向くように枠体側突片部13a’が設けられる。この枠体側突片部13a’は、上下方向へ連続して設けられ、迂回路s3(図16参照)を構成する。
なお、図16中、符号13b’は、中央側縦枠13’の熱変形を防ぐ補強材である。
【0067】
戸尻側縦枠14’は、構築構造物等の壁部から引戸20’側(図16によれば下方)へ突出するとともに、図示しない上側横枠から床面にわたる上下方向へ連続するように形成される。この戸尻側縦枠14’は、引戸20’を収納するための戸袋部Bの戸尻側端部を構成している。
【0068】
引戸20’は、上記引戸20に対し、戸尻側防炎補助部材25を戸尻側防炎補助部材25’に置換した構成とされる。この引戸20’の上端部には、上記引戸20と同様に、上端側防炎補助部材22(受部)が固定される(図示省略)。
【0069】
戸尻側防炎補助部材25’は、引戸上下方向の略全長にわたって、引戸本体21の戸尻側の端面に固定された略矩形板状の部材である。この戸尻側防炎補助部材25’には、引戸本体21面よりも中央側縦枠13’側へ突出するとともに戸先方向へも突出した引戸側突片部25a’が形成される(図16参照)。この引戸側突片部25a’は迂回路s3を構成する。
【0070】
迂回路s3は、図16に示すように、引戸20’の戸尻側端部から中央側縦枠13’側へ突出するとともに戸先方向へ延設された引戸側突片部25a’や、中央側縦枠13’から引戸20’面側へ突出するとともに引戸20’面と引戸側突片部25a’との間に入り込む枠体側突片部13a’等によって構成される略蛇行状の通路である。この迂回路s3は、引戸20’を挟む一方の空間と他方の空間(図16によれば引戸20’上下の空間)とを、蛇行状に連通している。
【0071】
よって、上記構成の開閉装置2によれば、火災時等の熱により溶融や脱落等した物が、床面や下枠等に落ちて飛び散り火種となるのを、図示しない上側横枠内の受部や上端側防炎補助部材22(受部)によって防ぐことができる上、火炎や煙等が引戸20内外へ通過するのを、迂回路s1,s2,s3によって効果的に阻むことができ、ひいては、当該開閉装置1を、火災時の炎を建物内外に通過させない防火設備(防火戸)として機能させることも可能になる。
【0072】
なお、上記態様において、上端側防炎補助部材22は、図17に示す上端側防炎補助部材22’に置換することが可能である。上端側防炎補助部材22’は、上記上端側防炎補助部材22(図9参照)の堤部22eを堤部22e’に置換したものである。
堤部22e’は、戸先側及び戸尻側の突片部22f,22gと同構成の部材であり、ガス抜き孔22dを間に置くようにして一対に設けられ、火災時等に引戸20上方から落下した溶融物がガス抜き孔22d内へ侵入するのを阻む。
【0073】
また、上記態様において、受部11gは、開閉体幅方向へ連続する断面L字状の部材であってその端部側には突片部を有さない構成としたが、他例としては、受部11gの戸尻側の端部(図1によれば右端部)に、上端側防炎補助部材22(受部)と同様に、上向き突片部を設けてもよい。この他例によれば、火災時の溶融物や落下物が戸袋部B側へ落下するのを、前記戸尻側端部の上向き突片部によって、効果的に阻むことができる。
【0074】
また、上記開閉装置1,2は、開閉体(引戸20)を横幅方向へ開閉動作する引戸装置として構成したが、この開閉装置の他例としては、開閉体を上下方向の軸を中心に回転させながら横幅方向へ移動させて開閉動作する折戸装置やバランスドア等を構成することも可能である。
【0075】
また、上記態様によれば、受部11gを上側横枠11の内壁に固定したが、他例としては、受部11gを、当該開閉装置1の設置対象である構造物や他の不動部位に固定することも可能である。
【0076】
また、上記態様によれば、特に好ましい具体例として、上側横枠11側の受部11gと引戸20側の上端側防炎補助部材22(受部)とによって、二重の受部を構成したが、他例としては、実使用上の支障等がなければ、前記二重の受部のうち、何れか一方のみを具備した態様とすることも可能である。
【0077】
また、上記態様によれば、上端側防炎補助部材22(受部)又は戸尻側防炎補助部材25を開閉体厚さ方向において対称に構成することで、引戸20の組立作業性及び製造性等を良好にしているが、他例としては、上端側防炎補助部材22(受部)又は戸尻側防炎補助部材25を開閉体厚さ方向において非対称に構成することも可能である。
【0078】
また、上記態様によれば、引戸側突片部22a及び上向き突片部22bを、開閉体厚さ方向の両側に設けたが、他例として、実使用上特に支障がなければ、引戸側突片部22aと上向き突片部22bの一方又は双方を、開閉体厚さ方向の片側のみに設けるようにしてもよい。また、実使用状況等によっては、引戸側突片部22aと上向き突片部22bのうち、何れか一方又は双方を省くことも可能である。
【0079】
また、上記態様によれば、移動支持部20aを吊車24と支持ブラケット23からなる構成としてが、この移動支持部の他例としては、転動することなくガイドレール11cに摺接して移動する態様や、磁気浮上してガイドレール11c上を移動する態様等とすることも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1,2:開閉装置
10,10’:枠体
11:上側横枠
11c:ガイドレール
11g:受部
11g1:突片部
20a:移動支持部
20,20’:引戸(開閉体)
21:引戸本体
22,22’:上端側防炎補助部材(受部)
22b:上向き突片部
22c:戸尻側突出部
22g:戸尻側突片部
22f:戸先側突片部
A:通路用開口部
B:戸袋部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17