特許第6324013号(P6324013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6324013-カニューレ 図000002
  • 特許6324013-カニューレ 図000003
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  • 特許6324013-カニューレ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6324013
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】カニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20180507BHJP
【FI】
   A61F9/007 130E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-203399(P2013-203399)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66199(P2015-66199A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】村上 悦男
(72)【発明者】
【氏名】大金 薫
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0089526(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0097346(US,A1)
【文献】 特表2013−515563(JP,A)
【文献】 特開2006−006605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術において眼球に刺通して用いられるカニューレであって、
眼球に刺通される金属製のパイプと、
前記パイプの一端側に接合され、柔軟性を有する素材からなり前記パイプを眼球に刺通したときに眼球に接触してストッパとして機能するベースと、を具備し、前記ベースの眼球側の端面の中央部が窪んでおり、前記ベースが眼球に接触すると、眼球の形状に合わせて前記ベースの接触部分が変形することを特徴とするカニューレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科手術で使用されるカニューレに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼科手術において、手術器具等を眼球内で用いる際にカニューレが使用される(たとえば特許文献1)。図3は、眼科手術の状況を示す図である。従来のカニューレ110は、金属性のパイプ111を硬質な樹脂からなるベース112に嵌め込んだ構成となっている。ベース112は、ほぼ円柱形状で、側面の中間位置付近に円周に沿って溝112aが設けられていて、カニューレ110をピンセットで把持できるようになっている。
【0003】
カニューレ110を眼球Aに刺通させると、ベース112が眼球Aに接触することでストッパとして機能し、刺通された状態で保持される。そして、各種の手術器具20や、モニター用の光学機器などがカニューレ110を通じて眼球内に挿入される。したがって、手術の際、カニューレ110は、1つの眼球に3、4本刺通されることもある。
【0004】
図4は、従来のカニューレを眼球に刺通した状態を示す図である。カニューレ110を刺通した状態で手術器具20を動かすと、このように、カニューレ110の軸方向bと眼球Aの法線方向aとのなす角度が、30゜から45゜程度になることがある。
【0005】
このとき、ベース112がほぼ円柱形状で、かつ、硬質な樹脂製の場合には、手術器具20を動かしてカニューレ110の角度αを変動させると、ベース112の角部112bが眼球Aに接触するので、パイプ111の刺通部分が浅くなり、手術中にカニューレ110が眼球Aから抜けてしまう、といった問題が生じ得る。また、角度αを大きくするに伴い、角部112bを支点として、パイプ111とベース112の接合部112cが開く方向に力が働くので、パイプ111がベース112から外れやすくなる、という問題も生じ得る。
【0006】
また、眼球Aとベース112との接触箇所は、角部112bにおける点接触となるので、ベース112は、眼球A上を左右に転動することができることになる。したがって、ベース112が硬質な樹脂製の場合には、眼球Aを傷つけるおそれがある、という問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/126076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
斯かる事情に鑑み、本発明は、手術器具等を動かした際に、カニューレが眼球から抜け易くなるのを抑制し、また、カニューレのベースと眼球が接触しても眼球を傷つけず、さらには、パイプがベースから外れることを抑制することができるカニューレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカニューレは、眼科手術において眼球に刺通して用いられるカニューレであって、眼球に刺通される金属製のパイプと、そのパイプの一端側に接合され、柔軟性を有する素材からなるベースと、を具備するものとする。
【0010】
さらに、ベースの眼球側の端面の中央部が、窪んでいることにしたり、ベースが眼球に接触すると、ベースの接触部分が変形することにするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベースが柔軟性を有するため、手術器具等を動かしても眼球を傷つけることがなく、また、ベースからパイプが外れにくいという効果を奏する。また、ベースが変形するので、眼球内に刺通されたパイプの深さがほとんど変わらず、カニューレが抜け易くなるのを抑制するという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のカニューレの平面図である。
図2】本発明のカニューレを眼球に刺通して動かした状態を示す図であって、(a)は小さく動かした状態、(b)は大きく動かした状態である。
図3】眼科手術の状況を示す図である。
図4】従来のカニューレを眼球に刺通した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明のカニューレの平面図である。本発明のカニューレ10は、金属製のパイプ11と、ほぼ円柱形状のベース12と、からなる。パイプ11は、一端側を円柱形状のベース12の中心位置に挿通して取り付けられている。そしてベース12は、パイプ11を眼球Aに刺通したときにストッパとして機能する。
【0015】
ベース12には、円柱形状の側面位置に、円周に沿って溝12aが形成されている。この溝12aは、カニューレをピンセットで把持するのに用いられる。また、ベース12の眼球Aに接触する側の端面は、円の中心付近に窪み12dを有する形状になっている。つまり、ベース12を縦方向に切った断面は、眼球側が凹形状になっている。そして、この窪み12dに眼球Aの曲面が合致することで、図1に示すように眼球Aとベース12が密着しやすくなっている。
【0016】
また、ベース12は柔軟性(弾性)を有するものとし、具体的には眼球Aより軟らかい素材にすればよい。ベース12が柔軟性を有すれば、図1のように眼球Aとベース12とが密着した状態のままで、手術器具を動かすことができる。
【0017】
図2は、本発明のカニューレを眼球に刺通して動かした状態を示す図であって、(a)は小さく動かした状態、(b)は大きく動かした状態である。図2(a)の小さく動かした状態というのは、図1のように眼球Aとベース12とがほぼ密着した状態のまま手術器具20を動かして、それに伴いカニューレ10が動いた状態とする。図2(b)の大きく動かした状態というのは、手術器具20を動かした結果、眼球Aの法線方向aとカニューレ10の軸方向bとのなす角度αが、30゜から45゜程度となった状態とする。
【0018】
ベース12は柔軟性を有するので、特に眼球Aよりもベース12の方が軟らかい場合には、カニューレ10を眼球Aに押し付けると、ベース12は、図2(a)(b)のように眼球Aの形状に合わせて変形する。このとき、ベース12の眼球側端面の中心部に窪み12dを有していれば、さらに柔軟性が増すので、より変形しやすくなる。
【0019】
さらに、ベース12と眼球Aとが接触する際に、ベース12の角部12bが変形すれば、眼球Aに傷が付き難いという効果も奏する。また、角部12bが変形すれば、従来のようにパイプ11とベース12の接合部12cが外れる方向に力は働かず、逆にベース12がパイプ11に押しつけられるので、パイプ11とベース12が外れることを抑制する効果もある。
【0020】
なお、ベース12の製造方法としては、例えば、二液性の液体シリコーンを金型に流し込んで冷却する射出成形を採用することができる。つまり、ベースが柔軟性を有する場合でも、従来と同様の作業で本発明のカニューレを製造することができるので、製造面で不利になることはない。
【符号の説明】
【0021】
10 カニューレ
11 パイプ
12 ベース
12a 溝
12b 角部
12c 接合部
20 手術器具
A 眼球
図1
図2
図3
図4