(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
実測のブラッグ波長変化量の差分からと、あらかじめ設定された比較用のブラッグ波長変化量の差分から準静的なひずみ差に変換し、監視対象のあらかじめ設定された値の一定範囲にある場合には正常と判断し、あらかじめ設定された一定範囲内にない場合には異常と判断することを特徴とする請求項1に記載のひずみ計測方法。
実測のブラッグ波長変化量の差分からと、あらかじめ設定された比較用のブラッグ波長変化量の差分から準静的なひずみ差に変換し、監視対象のあらかじめ設定された値の一定範囲にある場合には正常と判断し、あらかじめ設定された一定範囲内にない場合には異常と判断することを特徴とする請求項4に記載のひずみ計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物の設計時には、一定範囲内にあることを定められたひずみをFBGセンサにより長期的に安定して計測し、構造物の構造的な健全性を監視・評価することが求められている。
【0006】
またFBGセンサを用いて構造物のひずみを計測する際には、温度変化等により対象物にみかけのひずみを生じるため、本来の荷重や圧力によるひずみを適切に計測することができないという問題がある。このようなひずみと温度の分離について、特許文献1は何も触れていない。特許文献2は偏波保持機能を有する光ファイバにFBGを構成させ、複数のFBGセンサによりひずみと温度の分離を行うとしている。特許文献3はFBGセンサと併せてFBGセンサとは異なる光ファイバセンサであるBOTDRを組合わせてひずみと温度の分離を行うとしている。特許文献4はひずみと温度の分離について何も触れていない。このようにFBGセンサを用いて計測技術であっても、FBGセンサからの信号であるブラッグ波長が変化したときに、それがひずみによるものか、温度によるものかを識別することかについて明確に知ることができていないのが実情である。
【0007】
更に、特許文献2において、偏波保持機能を有する光ファイバを用いた場合の課題を詳述する。偏波保持とは、光ファイバ中を伝播する光信号の振動面を常に保持することである。そのため、偏波保持機能を有する光ファイバにFBGを構成させてその反射光を観察する際には、その計測系の光学系全てに偏波保持光ファイバを使用する必要がある。これは、実験室内においては、容易に構築し得る。一方、野外の構造物に適用しようとする場合に、光ファイバの接続を必要とする。光ファイバの接続方法として最も光信号強度損失が少ない方法は融着接続である。光ファイバ通信において光ファイバの融着接続は汎用的に使用されている。しかし、偏波保持をする融着接続のためには、光ファイバの円形断面の位相を合わせて融着接続をする必要がある。現状、このような光ファイバ融着機は、実験室内の用途であり、野外において使用可能な光ファイバ融着機は、偏波保持機能を有しない。すなわち、特許文献2の方法は、実用的ではない。また、特許文献3の方法は、FBGセンサとBOTDR方式の光ファイバセンサを組合わせている。一つの計測部位に二つの計測方法を適用することは、光ファイバセンサ計測装置を2重に必要とし、経済的ではない。よって、特許文献2および3ともひずみと温度の両方を計測可能としていながらも、経済的に実施することは難しい。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑み、光ファイバとして最も汎用的なクラッド径125μm、コア径10μmのシングルモード光ファイバに形成されたFBGセンサであり、且つ一つの計測部位に対し、複数の光ファイバセンサを適用しない構成において、対象物に温度によるみかけのひずみを生じる場合であっても、みかけのひずみに影響を受けることなく、本体の荷重や圧力によるひずみを適切に計測するひずみ計測方法及びひずみ計測装置を実用的に提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のひずみ計測方法は、対象物に複数のFBGセンサを配置するひずみ計測方法であって、
前記対象物は、準静的な状態で温度によるみかけのひずみを生じ且つ
温度によるみかけのひずみの変動を予測し得るものであり、
前記対象物の一つの計測部位について一つのFBGセンサを使用し、
計測時には、
ひずみと温度がともに変化する場合であっても計測部位のひずみ発生が異なることを利用し、一方のFBGセンサのブラッグ波長変化量から他のFBGセンサのブラッグ波長変化量を引き算してブラッグ波長変化量の差分を求め、ブラッグ波長変化量の差分を準静的なひずみ差に変換し、対象物のあらかじめ設定されたひずみ差分と比較することを特徴とするものである。
【0010】
本発明のひずみ計測方法において、実測のブラッグ波長変化量の差分からと、あらかじめ設定された比較用のブラッグ波長変化量の差分から準静的なひずみ差に変換し、監視対象のあらかじめ設定された値の一定範囲にある場合には正常と判断し、あらかじめ設定された一定範囲内にない場合には異常と判断することが好ましい。
【0011】
本発明のひずみ計測方法において、対象物を構造物とし、該構造物の健全性を監視することが好ましい。構造物として、梁構造や柱構造に分類され、構造物内の位置により、ひずみ分布がある構造物を対象とする。
【0012】
本発明のひずみ計測装置は、対象物に配置される複数のFBGセンサと、複数のFBGセンサからのブラッグ波長変化量を処理する処理部とを備え、
前記対象物は、準静的な状態で温
度によるみかけのひずみを生じ且つ
温度によるみかけのひずみの変動を予測し得るものであり、
前記対象物の一つの計測部位について一つのFBGセンサを使用し、
前記処理部は、計測時に、
ひずみと温度がともに変化する場合であっても計測部位のひずみ発生が異なることを利用し、一方のFBGセンサのブラッグ波長変化量から他のFBGセンサのブラッグ波長変化量を引き算してブラッグ波長変化量の差分を求め、ブラッグ波長変化量の差分を準静的なひずみ差に変換し、対象物のあらかじめ設定されたひずみ差分と比較するように構成されたものである。
【0013】
本発明のひずみ計測装置において、実測のブラッグ波長変化量の差分からと、あらかじめ設定された比較用のブラッグ波長変化量の差分から準静的なひずみ差に変換し、監視対象のあらかじめ設定された値の一定範囲にある場合には正常と判断し、あらかじめ設定された一定範囲内にない場合には異常と判断することが好ましい。
【0014】
本発明のひずみ計測装置において、対象物を構造物とし、該構造物の健全性を監視することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のひずみ計測方法及びひずみ計測装置によれば、対象物が準静的な状態で温度によるみかけのひずみの変動を除去し得るものである場合に、一方のFBGセンサのブラッグ波長変化量から他のFBGセンサのブラッグ波長変化量を引き算してブラッグ波長変化量の差分を求め、ブラッグ波長変化量の差分は、みかけのひずみの影響を抑制し、本来の荷重や圧力によるひずみを適切に計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のひずみ計測方法及びひずみ計測装置を実施する形態例を
図1〜
図11を参照して説明する。
【0018】
実施の形態例のひずみ計測方法及びひずみ計測装置は、対象物に配置される複数のFBGセンサaと、複数のFBGセンサaが接続されるひずみ検出機構とを備えている。
【0019】
複数のFBGセンサaは、光ファイバbの中途位置に形成されており、光ファイバbのコア部分に光軸方向に沿って一定の間隔で回折格子を形成し、ひずみや温度変化により反射波長を変化させるようになっている。また複数のFBGセンサaは、一本の光ファイバbに直列に配置されても良いし、複数の光ファイバbに並列に配置されても良い。更にFBGセンサaの個数は、ひずみを計測する範囲において、FBGセンサaの配置条件を満たす複数個ならば、特に制限されるものではない。更にまた複数のFBGセンサaのうち一方のFBGセンサと他方のFBGセンサは、特定されるものでないが、隣接するものであることが好ましい。
【0020】
ひずみ検出機構は、光源cと、光源cからの光を導波の方向を制御して複数のFBGセンサaへ出力する光サーキュレータdと、複数のFBGセンサaからの反射光を処理する処理部eとを備えている。ここで処理部eは、複数のFBGセンサaからの反射光を分光して各FBGセンサaの信号を識別する識別手段と、各FBGセンサaからの信号を記録する記録手段と、各FBGセンサaの信号から演算する機能部を有する。
【0021】
以下、ひずみを計測する際には、光源cからの光を、光サーキュレータdを介して複数のFBGセンサaに入射させ、複数のFBGセンサaからの反射光を、一つの光信号とし、光サーキュレータdにより処理部eに伝達する。
【0022】
処理部eでは、複数のFBGセンサaからの反射光を分光し、処理部eにより一つのFBGセンサaでのブラッグ波長変化量と、隣接する他のFBGセンサaでのブラッグ波長変化量を夫々検出する。
【0023】
その後、処理部eでは、一つのFBGセンサaで計測したブラッグ波長変化量と、他のFBGセンサaで計測したブラッグ波長変化量との差分を算出し、ブラッグ波長変化量の差分を、予め準備した比較用のブラッグ波長変化量の差分データと相関させて荷重や圧力による準静的なひずみを測定する。
【0024】
ここで予め測定した比較用のブラッグ波長変化量の差分は、ブラッグ波長変化量の差分と荷重や圧力によるひずみとの関係を示す相関図や関数等である。また準静的なひずみについて説明すると、準静的なひずみとは、FBGセンサの信号であるブラッグ波長が時系列信号として取得され、その変化がひずみや温度変化によるものであるとき、その時系列信号を離散フーリエ解析し、0Hzの成分となる信号を指す。例えば、ブラッグ波長信号列がサンプリング周波数100Hzで収録され、その離散フーリエ変換を信号の長さ1000個により行ったとき、離散フーリエ変換結果は、0Hzから50Hz(=ナイキスト周波数)まで、100Hz/1000個=0.1Hzごとに評価可能となる。このような場合、0.1Hz以下の信号成分は、全て0Hz成分になる。準静的なひずみはブラッグ波長が収録されるサンプリング周波数と離散フーリエ変換される際の周波数分解能により変化するが、現象の時間スケールにおいて、0Hz成分と見なされるひずみのことである。
【0025】
これにより複数のFBGセンサaとひずみ検出機構は、温度変化や振動等によるみかけのひずみを除去し、ブラッグ波長変化量の差分から構造物の準静的なひずみ変化を監視可能とし、構造物の損傷の発生を知ることができるようになっている。更に処理部eでは、対象物を監視する際に、実測のブラッグ波長変化量の差分値を、あらかじめ定めた参照値と比較し、実測のブラッグ波長変化量の差分値が一定の範囲内値にある場合には正常と判断し、実測のブラッグ波長変化量の差分値が一定の範囲内にない場合には異常と判断する。
【0026】
以下本発明を実施する形態において対象物の条件、FBGセンサaの条件について説明する。
【0027】
初めに対象とする構造物の測定条件、FBGセンサaの測定条件の前提となる、ひずみ勾配の時間変動やブラッグ波長変化履歴について説明する。
【0028】
[試験1]
ひずみ勾配の時間変動について次のような試験を行った。
試験では、
図2に示す如く、アルミ試験片fの一端(
図2では左側)を自由端にすると共に他端を治具gにより固定端にして片持ちハリにすると共に、アルミ試験片fに80mmの間隔で二つのFBGセンサaを配置したものを用いた。そしてアルミ試験片の自由端側に所定の負荷を与え、一方のFBGセンサ(FBG1)から他方のFBGセンサ(FBG2)を減算して算出するひずみ勾配と、時間変化とを調べた。
その結果、
図3に示すデータを得た。なおデータでは、原データの1Hzと、移動平均により0.1Hzのダウンサンプリングしたデータとを示しており、左右縦軸は10μεシフトさせている。
この結果からは、日中と夜間で変化するひずみ変動に対し、移動平均を行うことにより変動を減少させることが可能であるが、日中と夜間のひずみ勾配変動が残り易い傾向を示した。
【0029】
[試験2]
ブラッグ波長変化履歴では次のような試験を行った。
試験では、ひずみ勾配の時間変動の試験で取得したデータを用いた。そして試験開始から約21時間まではアルミ試験片の自由端側に所定の負荷を与えず、約21時間以後に負荷を与え、一方のFBGセンサ(FBG1)のブラッグ波長変化量ΔλB1、他方のFBGセンサ(FBG2)のブラッグ波長変化量ΔλB2、ブラッグ波長変化量の差分(ΔλB1−ΔλB2)を取得した。
その結果、
図4にブラッグ波長シフト履歴を示し、
図5に計測開始後、ひずみゼロの間のブラッグ波長シフト履歴を示す。なお、このデータでは、10サンプルによる移動平均を行っている。
この結果から、以下の点の見地を得ることができた。
(1)ブラッグ波長変化量の差分の要因について
図5に示す如くブラッグ波長変化量の差分においてひずみが負荷されていない時間帯(0〜約21時間の範囲)では、0〜6時間まではマイナス側となり、9時間以降はプラス側にステップ状になっている。一方、ブラッグ波長変化量そのものは、連続的な変化をしている。
これにより、ブラッグ波長変化量の差分(ΔλB1−ΔλB2)に偏差があるということは、一方のFBGセンサ(FBG1)と他方のFBGセンサ(FBG2)の温度感度が異なることが理由の1つと考えられる。
またΔλB1およびΔλB2の21時間後のブラッグ波長変化量は約90pmである。一般的なFBGセンサの温度感度14pm/℃およびアルミの線膨張率21.6μ/℃を合わせると、アルミ試験片に接着されたFBGセンサの温度感度は、14+21.6*1.2=39.9pm/℃となる。 よって、90pmのブラッグ波長シフトは、90/39.9=2.3℃に相当する。更に(ΔλB1−ΔλB2)は約8.5pmで安定している。これを、温度感度の差であらわそうとすると、8.5pm/2.3℃=3.7pm/℃となり、これは、上記で仮定した温度感度39.9pm/℃の9.3%に相当する。
この結果は、FBGセンサ自身の温度感度を考慮する必要があることを意味している。
(2)ブラッグ波長変化量の差分(ΔλB1−ΔλB2)に過渡的な時間帯について
一方のFBGセンサ(FBG1)と他方のFBGセンサ(FBG2)の温度感度差のみの影響だけを受けるとすると、ブラッグ波長変化量の差分(ΔλB1−ΔλB2)は時間に対して、変動しなければならない。なぜならば、一方のFBGセンサ(FBG1)の温度感度をCT1、他方のFBGセンサ(FBG2)の温度感度をCT2とすると、Tは温度、tは時間を表す。
(ΔλB1−ΔλB2)=CT1×ΔT(t)−CT2×ΔT(t)=(CT1−CT2)×ΔT(t)
つまり、ΔTに依存して(ΔλB1−ΔλB2)も変動しなければならない。しかし、
図5の過渡的な時間帯は限定されている。
この原因を推定すると、ΔT(t)が一方のFBGセンサ(FBG1)と他方のFBGセンサ(FBG2)で異なることが予想させる。すなわち(ΔλB1−ΔλB2)=CT1×ΔT1(t)−CT2×ΔT2(t)
t→∞において、ΔT1=ΔT2となるはずであるから、
(ΔλB1−ΔλB2)=(CT1−CT2)×ΔT(∞)となり、一定値となる。
ΔT1とΔT2となるのは、試験形態に依存すると考えられる。すなわち、一方のFBGセンサ(FBG1)は試験片の固定端に近く、温度変化は治具の熱容量の影響を受ける。一方、他方のFBGセンサ(FBG2)は試験片の自由端に近く、雰囲気温度の影響を受けやすい。よって、試験片の長手方向の温度分布の影響により、ブラッグ波長変化量の差分は、過渡的な(ΔλB1−ΔλB2)の変化を起こすと仮定できる。この仮定は、0〜6時間は日中であり、太陽光、照明および空調の影響で温度変化が頻繁に起きており、その影響は
図5に現れている。
図3において、日中に大きなひずみ勾配が生じていることは、上記の仮定により説明できる。
【0030】
よって試験から(1)ひずみ勾配の時間変動は計測器を変えても発生する。(2)ひずみ勾配の温度変動を起こす要因は、FBGセンサの温度感度の固体差の影響を受ける。(3)FBGセンサ間でも温度分布があると、ひずみ勾配の変動要因となる、といえる。
【0031】
[試験3]
次にブラッグ波長変化量の差分を得ることにより、温度分布等の温度影響を実際に低減できるか試験をした。
試験では、ひずみ勾配の時間変動の試験や、ブラッグ波長変化履歴の試験と同じものを使用した。そしてアルミ試験片の自由端側にシム(重り)を配してひずみ負荷量を与えると共に、シムを変えてひずみ負荷量を変え、二つのFBGセンサにおけるブラッグ波長変化量(ひずみ)の温度変化と、二つのFBGセンサにおけるブラッグ波長変化量(ひずみ)の差分の温度変化とを評価した。
その結果、
図6に示すデータ、表1に示すデータを得た。なお
図6に示すデータでは、サンプリング周波数10Hzにて収録した原データを100秒毎に平均値を求めたものである。また表1に示すデータでは、各シム枚数時のブラッグ波長変化量(ひずみ)の最大値と最小値を示している。
[表1]
[試験4]
更に試験4では、試験3においてシム枚数2枚の時の二つのFBGセンサ間のブラッグ波長変化量(ひずみ)の差が大きかったため、その再現性を確認するために同じ条件で再度試験した。
その結果、
図7に示すデータ、表2に示すデータを得た。
[表2]
よって試験3、試験4から、二つのFBGセンサのブラッグ波長変化量(ひずみ)の差分を得ることにより、温度影響を受けにくくなることが明らかとなった。これらの実験結果は、1つの計測部位について1つのFBGセンサを使用し、かつ、ひずみと温度がともに変化する場合であっても、計測部位のひずみ発生が異なることを利用し、FBGセンサ間のブラッグ波長変化量の差分に着目すれば、温度の影響を除去できることを例示するものである。
【0032】
そして、これらの実験結果は実用的に利用することが可能である。実験に用いたハリのような構造物は多く存在する。対象物の条件について説明すると、対象物は、準静的な状態により、対象物の位置により発生するひずみが異なることを利用する。すなわち、梁構造物や柱構造物は、部位により発生する準静的ひずみが異なる。よって、部位のひずみ差を監視すれば、その変化を知ることが可能となる。具体的には、架橋、配管、構造体、各種機器のフレームなどである。
【0033】
図8に示す如く対象物が架橋Aの場合には、橋脚等の下部構造A1の上側に位置する主桁等の上部構造A2に、複数のFBGセンサaが上部構造A2の延在方向に沿って配置されており、劣化や疲労等の荷重や圧力によるひずみを長期にわたり計測し、架橋(構造物)Aの健全性を監視することができる。またみかけのひずみは、天気や太陽光による温度変化や、車両等の通過に伴う振動等であって予測し得るものが該当している。
【0034】
また
図9に示す如く対象物が配管Bの場合には、支持部材B1に支持される配管本体B2に複数のFBGセンサaが配管本体B2の延在方向に沿って配置されており、劣化や疲労等の荷重や圧力によるひずみを長期にわたり計測し、配管(構造物)の健全性を監視することができる。またみかけのひずみは、内部流体による温度変化や、内部流体の通過や内燃機関の駆動に伴う振動等であって予測し得るものが該当している。
【0035】
更に
図10に示す如く対象物が構造体Cの場合には、構造体Cの支柱に複数のFBGセンサaが支柱の延在方向に沿って配置されており、長期の経時変化による劣化か疲労等の荷重や圧力によるひずみを長期にわたり計測し、構造体(構造物)の健全性を監視することができる。またみかけのひずみは、天気や太陽光による温度変化や、風による振動等であって予測し得るものが該当している。ここで構造体Cは、
図4に示す旋回翼C1を支持する風力発電機の支柱C2を示しているが、他の建築物の構造体でも良い。
【0036】
更にまた
図11に示す如く対象物が各種機器のフレームDの場合には、フレームDに複数のFBGセンサaがフレームDの延在方向に沿って配置されており、劣化や疲労等の荷重や圧力によるひずみを長期にわたり計測し、フレーム(構造物)Dの健全性を監視することが可能となる。またみかけのひずみは、内部環境及び外部環境による温度変化や、内燃機関の駆動や走行に伴う振動等であって予測し得るものが該当している。ここで各種機器のフレームDは車両フレームであるが、フレームを構成するものならば特に制限されるものではない。
【0037】
而して、実施の形態例によれば、光ファイバとして最も汎用的なクラッド径125μm、コア径10μmのシングルモード光ファイバに形成されたFBGセンサであり、且つ一つの計測部位に対し、複数の光ファイバセンサを適用しない構成において、対象物に温度によるみかけのひずみを生じる場合であっても、みかけのひずみに影響を受けることなく、本体の荷重や圧力によるひずみを適切に計測するひずみ計測方法及びひずみ計測装置を実用的に提供することができる。
【0038】
実施の形態例において、実測のブラッグ波長変化量の差分からと、あらかじめ設定された比較用のブラッグ波長変化量の差分から準静的なひずみ差に変換し、監視対象のあらかじめ設定された値の一定範囲にある場合には正常と判断し、あらかじめ設定された一定範囲内にない場合には異常と判断するように構成すると、監視対象を長期的に安定して計測し、監視対象の構造的な健全性を監視・評価することができる。また、監視対象(対象物)を構造物とした場合には、構造物の健全性を監視・評価することができる。
【0039】
尚、本発明のひずみ計測方法及びひずみ計測装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、FBGセンサの数は複数ならば特に制限されるものでないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。