(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
また、連続紙(印字媒体)を印字のために搬送する方向、具体的には連続紙を用紙供給部からサーマルヘッド部に送る方向を印字方向といい、特に説明がない場合、搬送方向上流とは印字方向において上流側のことをいい、搬送方向下流とは印字方向において下流側のことをいう。
【0020】
図1は本実施の形態に係るプリンタの外観の全体斜視図である。
【0021】
本実施の形態のプリンタ1は、例えば、台紙に仮着されたラベルに、文字、記号、図形またはバーコード等のような情報を印字するラベル印字機能を備えている。
【0022】
プリンタ1の正面のフロントカバー部2には、操作パネル部3と、電源スイッチ4と、発行口(媒体排出口)5とが設けられている。
【0023】
操作パネル部3には、メッセージ等を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、プリンタ1の動作を操作する複数のキー(ラインキー、フィードキー、ファンクションキー、方向指示キーおよびキャンセルキー等)と、プリンタ1の状態を示す複数のLED(Light Emitting Diode)とが配置されている。
【0024】
プリンタ1の片側側面には、オープンカバー部6が2箇所のヒンジ部7により上下方向に開閉自在の状態で装着されている。
【0025】
次に、プリンタ1の内部構造について
図2および
図3を参照して説明する。
図2は
図1のプリンタの内部を示した斜視図、
図3は
図2のプリンタの側面図である。なお、以下の説明ではプリンタ1の正面側(フロントカバー部2側)を前方(連続紙の搬送方向下流側)、その向かい側の背面側(バックカバー部側)を後方(連続紙の搬送方向上流側)という。
【0026】
プリンタ1の内部には、その後方に配置された用紙供給部(媒体供給部)10と、前方に配置された印字部11と、その上方に配置されたインクリボン部12とが設置されている。
【0027】
用紙供給部10は、連続紙(印字媒体)Pを印字部11に供給する構成部であり、支持軸10aと、その一端に設置されたロールガイド部10bとを備えている。
【0028】
支持軸10aは、ロール状に巻き取られた連続紙Pを回転自在の状態で支持する構成部である。ロールガイド部10bは、ロール状の連続紙Pを固定する構成部であり、連続紙Pの幅に応じて位置を変えられるように支持軸10aの軸方向に沿って移動自在の状態で設置されている。
【0029】
連続紙Pは、例えば、長尺状の台紙と、その長手方向に沿って予め決められた間隔毎に仮着された複数枚のラベルとを有している。台紙においてラベルの粘着面が接触する面には、シリコーン等のような剥離剤がコーティングされており、ラベルを容易に剥離することが可能になっている。また、台紙においてラベルが貼られていない面には、長手方向に沿って予め決められた間隔毎にラベルの位置を示す位置検出マークが形成されている。ラベルは、感熱紙を使用する場合と普通紙を使用する場合とがある。感熱紙の場合は、その表面に、予め決められた温度領域に達すると特定の色(黒や赤等)に発色する感熱発色層が形成されている。
【0030】
また、連続紙Pには、表巻きラベルと裏巻きラベルとの2種類がある。表巻きラベルは、連続紙Pのラベルがロール状の連続紙Pの外周面に位置する状態で巻回されており、
図3で示すように、連続紙Ps(P:破線)が用紙供給部10の高さ方向中央あたりから印字部11の底部に向けて繰り出されている。これに対して、裏巻きラベルは、連続紙Pのラベルがロール状の連続紙Pの内周面に位置する状態で巻回されており、
図3に示すように、連続紙Pb(P:実線)がプリンタ1の内部底面あたりから印字部11の底部に向けて繰り出されている。なお、表巻きでも裏巻きでも印字部11での連続紙P(Ps,Pb)の通紙ルートは同じである。また、表巻きラベルでも裏巻きラベルでも連続紙Pはラベルが仮着された面(被印字面)を上に向けた状態で搬送される。
【0031】
上記した印字部11は、連続紙Pのラベル等に印字を行う構成部であり、印字ヘッド部13と、その下方に配置された支持台14と、それらの後方(印字工程時の連続紙Pの搬送上流)に配置されたダンパ部15とを備えている。
【0032】
印字ヘッド部13は、後述のように、開閉自在の状態でプリンタ1の内部に設置されている。印字ヘッド部13が閉止状態の場合に、印字ヘッド部13と支持台14との間に通紙ルート(媒体搬送路)が形成される。そして、その通紙ルートは、上記した発行口5(
図1参照)に繋がっている。
【0033】
支持台14には、印字ヘッド部13の閉止状態を維持するヘッドロックレバー部16が設置されている。このヘッドロックレバー部16を操作すると印字ヘッド部13の閉止状態が解除され、印字ヘッド部13の前方部が持ち上がり印字ヘッド部13が開く(プラテンローラ部23に対して離間する)ようになっている。
【0034】
ダンパ部15は、連続紙Pに張力を付与する構成部である。本実施の形態においては、ダンパ部15が、アウターダンパ部15aとインナーダンパ部15bとを備えているとともに、印字ヘッド部13の開閉に連動して上下に移動(開閉)するようになっている。ただし、印字ヘッド部13の閉止状態時において、アウターダンパ部15aおよびインナーダンパ部15bは、それぞれ連続紙Pに張力を付与可能なように揺動自在の状態で設置されている。
【0035】
上記したインクリボン部12は、印字用インクを塗布したインクリボンを供給し、巻き取る構成部であり、リボン供給部12aと、その前方横に配置されたリボン巻き取り部12bとを備えている。リボン供給部12aは、ロール状に巻き取られたインクリボンを回転自在の状態で支持する構成部である。リボン巻き取り部12bは、印字済みのインクリボンRBを巻き取り回収する構成部である。なお、インクリボンを使用する場合は、リボン供給部12aから引き出されたインクリボンを印字ヘッド部13の下に通してリボン巻き取り部12bで巻き取る。
【0036】
このようなプリンタ1においては、用紙供給部10からシート状に繰り出された連続紙P(Ps,Pb)がダンパ部15を介して印字ヘッド部13と支持台14との間の通紙ルートに搬送され、その途中において連続紙Pのラベル等に印字処理がなされた後、発行口5からプリンタ1の外部に排出されるようになっている。
【0037】
次に、上記した印字部11の構成について
図4〜
図7を参照して説明する。
図4(a)は
図3の印字ヘッド部の閉止状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図、
図4(b)は
図3の印字ヘッド部の開放状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図、
図5は
図4(a)の印字部を背面側から見た拡大斜視図、
図6は
図3の印字部の拡大側面図、
図7は
図6の印字ヘッド部を抜き出して下側から見た斜視図である。
【0038】
印字ヘッド部13は、その前方部が後方の回転軸S1(
図5および
図7参照)を中心に上下方向に揺動(すなわち、開閉)自在の状態で印字ヘッド部13の片側側面のヘッド支持板17に支持されている。
【0039】
印字ヘッド部13の下面(通紙ルートを向く面)には、サーマルヘッド部18(
図4(b)および
図7参照)がその印字面を通紙ルートに向けた状態で設置されている。サーマルヘッド部18は、その印字面に配置された印字ライン18Lの発熱抵抗体により連続紙Pのラベル等に印字を行う印字手段である。この印字ライン18Lには、通電により発熱する複数の発熱抵抗体(発熱素子)が連続紙Pの幅方向(連続紙Pの搬送方向に対し直交する方向)に沿って並んで配置されている。
【0040】
印字ヘッド部13の前方側の下面にはサーマルヘッド部18を挟むように凹状爪部19,19(
図4(b)および
図7参照)が設けられている。また、印字ヘッド部13の下面において凹状爪部19の後方には、印字ヘッド部13の両側面から外方に突出するピン20,20が設けられている。
【0041】
このような印字ヘッド部13は、回転軸S1(
図5および
図7参照)に装着されたトーションバネ21により開方向に付勢されているが、印字ヘッド部13の下部のピン20,20に、支持台14のロック爪部22,22が引っ掛かることにより閉止状態が維持されている。ロック爪部22は、上記ヘッドロックレバー部16を
図6の右方向に引くと、それに連動して
図6の右方向に移動し、ピン20から外れるようになっている。ロック爪部22がピン20から外れると、
図4(b)に示すように、印字ヘッド部13は、トーションバネ21の付勢力により自動的に開くようになっている。
【0042】
また、印字ヘッド部13の閉止状態時には、印字ヘッド部13の凹状爪部19,19(
図4(b)および
図7参照)がプラテンローラ部23の回転軸S2(
図4および
図6参照)の両端部に嵌められるようになっているとともに、印字ヘッド部13に設けられた押圧装置(押圧手段)24(
図5参照)によりサーマルヘッド部18の印字面が下方のプラテンローラ部23(
図4(a),(b)参照)に押し付けられるようになっている。
【0043】
プラテンローラ部23は、用紙供給部10から繰り出された連続紙Pを通紙ルートに沿って発行口5(
図1参照)へ搬送する搬送手段であり、その表面は硬質ゴム等のような弾性材料により被覆されている。このプラテンローラ部23は、正逆方向に回転可能な状態で支持台14の上部に設置されている。プラテンローラ部23の回転軸S2の軸方向一端には、ギアG1が接続されている。このギアG1は、例えば、タイミングベルト(図示せず)等を介してステッピングモータのような駆動体(図示せず)の回転軸に係合されている。また、ギアG1は、連結ギアG2,G3を介してギアG4に接続されている(
図5参照)。なお、押圧装置24については後ほど詳細に説明する。
【0044】
また、本実施の形態においては、印字ヘッド部13を支持するヘッド支持板17においてダンパ部15側の端部に抑止部17a(
図5〜
図7参照)が一体形成されている。この抑止部17aは、回転軸S1を境にしてヘッド支持板17の前方部と対極の位置に形成されている。この抑止部17aの先端側においてダンパ部15を向く面には、その面から突出するピン17b(
図7参照)が設けられている。抑止部17aおよびピン17bは、印字ヘッド部13の開閉に連動してダンパ部15を開閉する機構部の一部である。
【0045】
この機構部により、印字ヘッド部13の開閉に連動してダンパ部15を上下に移動(開閉)することができる。すなわち、印字ヘッド部13を開くと、それに連動してダンパ部15が持ち上がるので、連続紙Pを挿通する間口が広くなり、ダンパ部15の下部の視認性を向上させることができる。このため、用紙供給部10から引き出された連続紙Pを幅調整ガイド部に引っ掛けることなく、ダンパ部15の下に容易にくぐらせることができる。したがって、連続紙Pをプリンタ1の通紙ルートに挿通する作業を容易にすることができる。
【0046】
また、印字ヘッド部13を閉じると、それに連動してダンパ部15が下がり元の高さに戻るので、ダンパ部15の閉じ忘れを防止することができる。このため、連続紙Pに張力が付与されない状態で印字してしまう不具合を防止することができる。また、連続紙Pの一連の挿通作業を簡単化することができる。
【0047】
さらに、ダンパ部15を手動で開くための機構部を別に設けない上、ダンパ部15の開動機構部と閉動機構部とが互いに兼用されているので、構造を簡単化することができる上、部品点数を低減することができる。このため、プリンタ1のコストを低減できる上、プリンタ1の小型化を推進することができる。
【0048】
なお、印字部11の通紙ルートにおいてサーマルヘッド部18とダンパ部15との間には、用紙位置検出センサ(図示せず)が設けられている。この用紙位置検出センサは、連続紙Pに形成された位置検出マークや隣り合うラベル間の台紙部分を検出することにより連続紙Pのラベルの位置を検出するセンサであり、例えば、光反射型または光透過型のセンサにより構成されている。
【0049】
印字工程時には、押圧装置24によりサーマルヘッド部18をプラテンローラ部23側に押し付け、サーマルヘッド部18とプラテンローラ部23との間に連続紙Pを挟み込んだ状態でプラテンローラ部23を回転させることにより連続紙Pを搬送する。そして、用紙位置検出センサにより検出された情報に基づいて印字タイミングを図り、サーマルヘッド部18に送信された印字信号により印字ライン18Lの発熱抵抗体を選択的に発熱させる。これにより、連続紙Pのラベルに、文字、記号、図形またはバーコード等のような所望の情報を印字する。
【0050】
一方、ダンパ部15のアウターダンパ部15aは、印字部11の側面を見た場合に前方側から後方側に向かって斜め下方に延びており、前方側の回転軸S3(
図4および
図6参照)を中心にして、後方部が上下方向に揺動自在の状態でダンパ支持部材25に支持されている。なお、
図5のコイルバネ26は、アウターダンパ部15aが上方側(後方側)に行きすぎないように抑制するとともに、アウターダンパ部15aを揺動自在の状態で支持する部材である。
【0051】
また、ダンパ部15のインナーダンパ部15bは、印字部11の側面を見た場合に、アウターダンパ部15aとは逆に後方側から前方側に向かって斜め下方に延びており、後方側の回転軸S4(
図4および
図6参照)を中心にして、前方部が上下方向に揺動自在の状態でアウターダンパ部15aの後方部に支持されている。
【0052】
印字工程時において、インナーダンパ部15bの用紙接触部は、アウターダンパ部15aの用紙接触部よりも連続紙Pの搬送下流に位置している。すなわち、インナーダンパ部15bの用紙接触部は、印字ヘッド部13とアウターダンパ部15aの用紙接触部との間に配置されている。
【0053】
また、通紙前段階において、インナーダンパ部15bの用紙接触部の高さは、アウターダンパ部15aの用紙接触部の高さよりも低い位置に配置されている。すなわち、インナーダンパ部15bの用紙接触部の高さは、アウターダンパ部15aの用紙接触部とプリンタ1の内部底面との間に配置されている。
【0054】
このようなインナーダンパ部15bを設けたことにより、裏巻きラベルの場合であっても連続紙Pbがインナーダンパ部15bに接触した状態で通紙ルートに挿通される。このため、裏巻きラベルの場合であってもインナーダンパ部15bにより連続紙Pbに対して充分な張力を付与することができるので、連続紙Pbを良好に搬送でき、印字品質を確保することができる。
【0055】
また、インナーダンパ部15bをアウターダンパ部15aに軸支したことにより、プリンタ1の大型化を招くことなく、裏巻きラベルの場合でも充分な張力を付加することが可能なダンパ機能を追加することができる。
【0056】
また、アウターダンパ部15aの下部には、幅調整ガイド部27が回転軸S3,S4の軸方向に沿って移動自在の状態で設置されている。幅調整ガイド部27は、用紙供給部10から搬送された連続紙Pの幅方向の両端に当接し、連続紙Pの搬送をガイドする構成部である。この幅調整ガイド部27は、アウターダンパ部15aの背面側のガイド操作部28に接続されている。このガイド操作部28は、連続紙Pの幅に合わせて幅調整ガイド部27を移動するとともに、幅調整ガイド部27の位置を固定するための摘みである。
【0057】
また、本実施の形態においては、ダンパ部15の下方のプリンタ1の内部底面に窪み部29(
図6参照)が部分的に形成されている。窪み部29は、印字ヘッド部13およびダンパ部15の閉止状態時において、幅調整ガイド部27の下部がプリンタ1の内部底面よりも下方に位置するように形成されている。幅調整ガイド部27の下端部は、窪み部29の底面には接触しておらず、窪み部29の底面から予め決められた距離だけ離れている。この幅調整ガイド部27の下端部は、例えば円弧状に形成しても良い。
【0058】
窪み部29が無い場合、連続紙Pを印字部11から用紙供給部10側に戻す、いわゆるバックフィード時に、連続紙Pが弛んでプリンタ1の内部底面についてしまう。この場合、連続紙Pが幅調整ガイド部27の下端部よりも下方に位置しているので、幅調整ガイド部27で決められた範囲から外れてしまう場合がある。しかし、その状態で印字動作に戻ると、連続紙Pが幅調整ガイド部27に乗り上げ、ダンパ部15が機能しない状態で搬送されてしまう結果、印字位置が予定位置からずれたり、印字濃度が薄くなったりして、印字品質が低下する。特に、幅の短い連続紙Pの場合には、幅調整ガイド部27から外れ易い。また、用紙供給部10に装填したロール状の連続紙Pが回転による慣性により弛む場合がある。
【0059】
これに対して窪み部29を設けたことにより、ダンパ部15の幅調整ガイド部27の下部がプリンタ1の内部底面のラインよりも下方に位置するので、連続紙Pは幅調整ガイド部27で決められた範囲から外れることがない。このため、印字動作に戻った場合に、連続紙Pが幅調整ガイド部27に乗り上げることもないので、ダンパ部15の機能が損なわれることもない。したがって、印字位置が予定位置からずれたり、印字濃度が薄くなったりする不具合を回避することができるので、プリンタ1の印字品質を向上させることができる。
【0060】
上記アウターダンパ部15aを支持するダンパ支持部材25は、前方部側の回転軸S5(
図5および
図6参照)を中心にして後方部が上下方向に揺動自在の状態でプリンタ1内に支持されている。
【0061】
このダンパ支持部材25の上部には、ダンパ支持部材25の長手方向に沿って延びる長溝部(誘導部)25a(
図5参照)が形成されている。この長溝部25aには、上記ヘッド支持板17のピン17b(
図8参照)が長溝部25aに沿って移動自在の状態で嵌められている。これにより、印字ヘッド部13を支持するヘッド支持板17は、ダンパ支持部材25と係合されている。
【0062】
また、ダンパ支持部材25は、その後方部が回転軸S5に装着されたトーションバネ30(
図5参照)により回転軸S5(
図5および
図6参照)を中心にして上方に開く方向(ダンパ部15全体が持ち上がる方向)に付勢されているが、ヘッド支持板17の抑止部17aがアウターダンパ部15a側に位置している間は抑止部17aに抑えられ、閉止状態が維持されている。一方、印字ヘッド部13を閉じると、抑止部17aがダンパ支持部材25の長溝部25aに沿って抑止解除位置から抑止位置に戻るので、トーションバネ30の付勢力に抗してダンパ支持部材25の後方部が下がり、ダンパ部15も自動的に下がるようになっている。
【0063】
ダンパ部15の開閉機構は、上記構成に限定されるものではなく、例えば以下のようにしても良い。すなわち、ダンパ支持部材25は、その後方部が回転軸S5に装着されたトーションバネ30により回転軸S5を中心に閉じる方向(ダンパ部15全体が下がる方向)に付勢されていても良い。この場合、印字ヘッド部13を開くと、抑止部17aが長溝部25aに沿って抑止位置から抑止解除位置に移動するにつれて、ダンパ支持部材25の後方部が持ち上がるように引っ張るようになっている。これにより、ダンパ部15の後方部が印字ヘッド部13の開動作に連動して開く。一方、印字ヘッド部13を閉じると、抑止部17aが長溝部25aに沿って抑止解除位置から抑止位置に移動するにつれて、トーションバネ30の作用によりダンパ支持部材25の後方部が下がり、ダンパ部15も下がるようになっている。これにより、ダンパ部15の後方部が印字ヘッド部13の閉動作に連動して閉じる。この場合、印字ヘッド部13側のトーションバネ21の付勢力が、ダンパ支持部材25側のトーションバネ30の付勢力よりも大きくなるように設定されている。
【0064】
次に、印字ヘッド部13に設けられたヘッド機構部について
図8〜
図17を参照して説明する。
図8はヘッド機構部の要部分解斜視図、
図9は
図8のヘッド機構部を構成するヘッドスライダ部およびヘッド保持部の組立状態を示す斜視図、
図10は
図8のヘッド機構部の組立状態を示す斜視図である。なお、
図10においてはヘッド機構部内の様子を見易くするために押圧装置の操作面板を省略している。
【0065】
図8に示すように、ヘッド機構部35は、下方から順に、ヘッドスライダ部36と、ヘッド保持部37と、押圧装置24とを有している。
【0066】
ヘッドスライダ部36は、印字媒体の種類(厚さや硬さ等)に応じてサーマルヘッド部18の印字ライン18Lの位置を前後(連続紙Pの搬送方向に沿って前方および後方)に移動する機構部であり、下層板36aと、上層板36bと、回転軸36cと、ギア36dとを有している。
【0067】
下層板36aは、サーマルヘッド部18の裏面(印字面の裏側の面)にネジ36eにより着脱自在の状態で固定されている。この下層板36aの前方側において下層板36aの長手方向(連続紙Pの幅方向)の両端の一部は上方に折れ曲がっており、その上方先端部には凹状爪部36f,36fが形成されている。
【0068】
下層板36a上には、上層板36bが設置されている。上層板36bには、回転軸36cが回転自在の状態で軸支されている。回転軸36cの長手方向の両端には、上記した下層板36aの凹状爪部36f,36fが嵌り込んでいる。これにより、下層板36aは、回転軸36cと係合されている。
【0069】
また、回転軸36cの一端には、ギア36dが接続されている。回転軸36cにおいて、凹状爪部36fが嵌め込まれている部分と、それらの間の回転軸部分およびギア36dの中心とは偏心している。このため、ギア36dを回転させると、回転軸36cに係合された下層板36aが前後に移動するようになっている。これにより、サーマルヘッド部18の印字ライン18Lの位置を印字媒体の種類(厚さや硬さ等)に応じて最適な位置に変えることができるので、印字品質を向上させることができる。
【0070】
また、上層板36bには、その上下面を貫通する孔部36g(
図8参照)が形成されている。この孔部36g内には、サーマルヘッド部18の裏面に設けられた突部18Pが挿入されている。
【0071】
上記したヘッド保持部37は、サーマルヘッド部18を着脱自在の状態で保持する機構部であり、押さえ板37aと、コイルバネ37bとを有している。
【0072】
押さえ板37aは、その長手方向(連続紙Pの幅方向)に沿って若干移動可能な状態でネジ37c,37cにより上層板36b上に設置されている。この押さえ板37aには、その上下面を貫通する孔部37dが形成されている。この孔部37dには、上記した突部18Pが挿入されている。また、押さえ板37aの長手方向一端は下方に折れ曲がっており、その一端にはヘッド保持解除部37e(
図8参照)が形成されている。このヘッド保持解除部37eの下方先端部は、印字ヘッド部13の下面に突出されている。
【0073】
コイルバネ37bは、ネジ37c,37cの間に装着されている。押さえ板37aは、コイルバネ37bにより突部18Pを押さえる方向に付勢されている。これにより、サーマルヘッド部18は保持されている。
【0074】
サーマルヘッド部18を取り外す場合は、上記押さえ板37aのヘッド保持解除部37eをコイルバネ37bの付勢力に対して逆方向に移動することにより、押さえ板37aによる突部18Pの押さえを解除すれば良い。一方、サーマルヘッド部18を装着する場合は、上記孔部36g,37dに突部18Pを挿入した状態でサーマルヘッド部18を押し込めば良い。したがって、サーマルヘッド部18の着脱を容易にすることができる。
【0075】
次に、押圧装置24について
図8、
図10および
図11〜
図16を参照して説明する。
図11は印字部を正面側から見た斜視図、
図12(a)は押圧装置の操作パネル部を構成する操作面板の上面の平面図、
図12(b)は
図12(a)の操作面板の裏面の平面図、
図13(a)は
図12の操作面板を裏側から見た斜視図、
図13(b)は
図13(a)の操作面板の裏面の要部拡大斜視図、
図14は
図11の印字ヘッド部のI−I線の断面図、
図15は
図11の印字ヘッド部のII−II線の断面図、
図16は
図11の印字ヘッド部のIII−III線の断面図である。なお、
図14〜
図16は断面図であるが、図面を見易くするため一部にのみハッチングを付した。
【0076】
図8に示すように、押圧装置24は、圧力操作パネル部(押圧力調整部)40と、ヘッドプレッシャ板(押圧部材)50とを有している。
【0077】
圧力操作パネル部40は、サーマルヘッド部18の印字ライン18Lに対する押圧力を調整する機構部であり、
図11に示すように、印字ヘッド部13の上面に配置されている。圧力操作パネル部40を印字ヘッド部13の側面に配置する場合もあるが、その場合、押圧装置の構造が複雑になる上、プリンタの大型化を招く。これに対して、本実施の形態においては、押圧装置24の圧力操作パネル部40を印字ヘッド部13の上面に配置したことにより、押圧装置24の構造が簡単になる上、プリンタ1を小型化することができる。また、圧力操作パネル部40の視認性を向上させることができるので、押圧装置24の操作性を向上させることができる。
【0078】
圧力操作パネル部40は、操作面板41と、押圧力表示部42と、押圧力変更部43(
図12(b)および
図13参照)と、操作部44とを有している。
【0079】
操作面板41は、印字ヘッド部13の上面に装着されている。この操作面板41の上面には、例えば、連続紙Pの幅方向に沿って2箇所に略平面扇状の窪み領域が形成されており、その窪み領域に押圧力表示部42が形成されている。
【0080】
押圧力表示部42には、例えば、扇の弧に沿って次第に直径が大きくまたは小さくなるように5個の円が表示されている。ここでは、例えば、円の直径が大きくなるほど押圧力が大きくなることを意味している。
【0081】
また、操作面板41の各窪み領域には、操作面板41の上下面を貫通する孔部41a(
図12参照)が形成されている。操作面板41の裏面において孔部41aの周囲には、押圧力変更部43が形成されている。押圧力変更部43は、孔部41aの周方向に沿って突出高さが段階的に変わるように階段状に形成されている(
図13参照)。
【0082】
また、操作面板41の各窪み領域の孔部41aの位置には、操作部44が操作面板41の面内に対して回転自在の状態で設置されている。操作部44は、
図8に示すように、摘み部44aと、大径部44bと、小径部44cと、コイルバネ(弾性部材)44dと、突部44eとを有している。
【0083】
摘み部44aは、大径部44bの上面に一体成形されている。この摘み部44aの一部は、大径部44bの上面外周よりも外側に延びている。この摘み部44aの延在端部を摘んだ状態で操作部44を回転させることにより、てこの原理によって比較的小さな力で操作部44を回転させることができる。
【0084】
大径部44bの裏面には、小径部44cが一体成形されている。小径部44cは、筒状に形成されており、その筒内にはコイルバネ44d(
図8、
図14および
図15参照)が装着されている。コイルバネ44dは、ヘッドプレッシャ板50の長手方向のほぼ中間に当接されてヘッドプレッシャ板50を押圧する部材である。
【0085】
また、小径部44cは、操作面板41の孔部41a内に挿入されている。この孔部41aから突出する小径部44cの外周には、小径部44cの径方向に突出する突部44eが形成されている。この突部44eは押圧力変更部43の階段面に接触している。これにより、操作部44を回転させると、押圧力変更部43の突出段差に応じて小径部44cの突出長さが段階的に変わり、コイルバネ44dによるヘッドプレッシャ板50(すなわち、サーマルヘッド部18)に対する押圧力が段階的に変わるようになっている。
【0086】
図14の左側および
図15の操作部44は、サーマルヘッド部18を押圧する前の状態を例示している。操作部44のコイルバネ44dはヘッドプレッシャ板50に接触していない。一方、
図14の右側および
図16の操作部44は、サーマルヘッド部18を最も強く押圧している状態を例示している。操作部44のコイルバネ44dがヘッドプレッシャ板50に接触しており、ヘッドプレッシャ板50を押圧している。
【0087】
上記したヘッドプレッシャ板50は、圧力操作パネル部40の操作部44からの押圧力をサーマルヘッド部18の印字ライン18Lに伝える部材であり、操作面板41とサーマルヘッド部18との間に、操作部44のコイルバネ44dによる押圧箇所とサーマルヘッド部18の印字ライン18Lとを繋ぐように延在した状態で設置されている。
【0088】
ここでは、操作部44が2個配置されているので、それに対応してヘッドプレッシャ板50も、例えば2個配置されている。このようにヘッドプレッシャ板50を複数配置したことにより、種々の幅の連続紙Pを良好に押さえることができるので、種々の幅の連続紙Pに対して良好に印字を行うことができる。
【0089】
各ヘッドプレッシャ板50において幅方向両端は上方に折れ曲がっており、その端部には曲折部50aが形成されている。これにより、ヘッドプレッシャ板50は、機械的強度の確保することができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0090】
この曲折部50aにおいてヘッドプレッシャ板50の長手方向後端側には孔部50bが形成されている。この孔部50bには回転軸51が挿入されている。これにより、ヘッドプレッシャ板50は、その前方側端部が回転軸51を中心にして上下方向に揺動自在の状態で回転軸51に軸支されている。このため、ヘッドプレッシャ板50の前方側端部の高さを印字媒体の厚さに応じて調節することができるので、種々の厚さの連続紙Pに対して良好に印字を行うことができる。
【0091】
また、ヘッドプレッシャ板50の長手方向の前方側端部は、下方に折れ曲がっており、その端部には突部50cが形成されている。この突部50cは、サーマルヘッド部18の印字ライン18Lの裏側を局所的に押圧するように設定されている。ヘッドプレッシャ板50の長手方向両端の中間には、上記した操作部44のコイルバネ44dが接触し、ヘッドプレッシャ板50を押圧するようになっている。
【0092】
次に、押圧装置24の作用について
図17を参照しながら説明する。
図17(a)はサーマルヘッド部を押圧する前段階の印字部の概略断面図、
図17(b)はサーマルヘッド部の押圧時における印字部の概略断面図である。
【0093】
印字工程においてサーマルヘッド部18の印字ライン18Lが印字媒体に充分に密着していないと印字ライン18Lの発熱抵抗体の熱が印字媒体に上手く伝わらないため印字品質が低下してしまう。このため、印字工程においてはサーマルヘッド部18をプラテンローラ部23側に押し付け、印字ライン18Lを印字媒体に密着させた状態で印字を行っている。
【0094】
また、印字媒体には、ラベル付きの連続紙Pのように薄く比較的柔らかい材質のものの他、タグのように厚く比較的硬い材質のものがあり、それぞれに応じてサーマルヘッド部に対する押圧力を調整し、印字ラインと印字媒体との密着性を確保するようにしている。
【0095】
ところで、印字ライン18Lを効果的に押圧するためには印字ライン18Lの直上に操作部44を配置することが好ましい。しかし、印字ライン18Lの直上には他の部材が配置されるので、印字ライン18Lの直上に操作部44を配置するとプリンタ1の大型化を招く。
【0096】
そこで、本実施の形態においては、
図17(a)に示すように、操作部44を印字ライン18Lよりも後方に配置するとともに、操作部44のコイルバネ44dによる押圧箇所と印字ライン18Lとの間にそれらを繋ぐヘッドプレッシャ板50を配置した。
【0097】
これにより、
図17(b)に示すように、操作部44のコイルバネ44dの押圧力をヘッドプレッシャ板50および突部50cによってサーマルヘッド部18の印字ライン18Lに局所的に伝えることができる。その結果、プリンタ1の大型化を招くことなく、圧力操作パネル部40の操作部44による押圧力をサーマルヘッド部18の印字ライン18Lに効果的に伝えることができる。したがって、印字ライン18Lを効果的に押圧することができるので、印字品質を向上させることができる。
【0098】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0099】
前記実施の形態においては、印字媒体として複数枚のラベルを台紙に仮着した連続紙を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、一方面に粘着面を有する連続状のラベル(台紙無しラベル)、粘着面を有しない連続状のシート(連続シート)あるいは紙類に限らずサーマルヘッドにより印字可能なフィルム等を印字媒体として使用することもできる。台紙無しラベル、連続シートまたはフィルムは位置検出マークを有することができる。また、粘着剤が露出する台紙無しラベルなどを搬送する場合には、搬送路を非粘着コーティングするとともにシリコーンを含有したローラを設けることができる。