(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置を搭載した油圧ショベル100を示す概略図である。
図2は、油圧駆動装置107の構成を示す概略図である。本第1実施形態は、
図1に示す油圧ショベル100が有する油圧駆動装置107において、
図2に示すように、閉回路Aと開回路B,Cとを併設し、開回路B用の第2液圧ポンプ10として吐出方向が変更可能な両傾転斜板機構の油圧ポンプを用いている。
【0019】
そして、受圧面積差を有する片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1の伸長開始時に、まず開回路B用の第2液圧ポンプ10にて作動油タンク18からブームシリンダ1のヘッド室1aに作動油を補充する。その後、閉回路A用の第1液圧ポンプ9を駆動しロッド室1bからヘッド室1aへ作動油を移動する。これにより、閉回路A用の第1液圧ポンプ9の駆動時に、ブームシリンダ1が動作を開始しており、ロッド室1bから流出した作動油を閉回路A用の第1液圧ポンプ9の吸込口に供給できるため、吸込側の流路14の圧力が下がらずにチャージ流量を抑制でき、チャージポンプ12の小型化が可能な油圧駆動装置107を備えた油圧ショベル100となる。
【0020】
<構成>
図2に示す、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置107を搭載する作業機械として、油圧ショベル100を例として説明する。油圧ショベル100は、
図1に示すように、左右方向の両側にクローラ式の走行用の油圧アクチュエータである走行装置105a,105bを備えた下部走行体103と、下部走行体103上に旋回可能に取り付けた本体としての上部旋回体102とを備える。上部旋回体102上には、オペレータが搭乗するキャブ101を設けている。上部旋回体102は、旋回用の油圧アクチュエータである旋回装置106を介して下部走行体103に対して旋回可能である。
【0021】
上部旋回体102の前側には、例えば掘削作業等を行うための作動装置であるフロント作業機104の基端部を回動可能に取り付けている。ここで、前側とは、キャブ101の正面方向(
図1中の左方向)をいう。フロント作業機104は、上部旋回体102の前側に基端部を俯仰動可能に連結したブーム2を備える。ブーム2は、作動油(圧油)の供給にて伸縮駆動する片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1を介して動作する。ブームシリンダ1は、ロッド1cの先端部を上部旋回体102に連結し、シリンダチューブ1dの基端部をブーム2に連結している。
【0022】
ブームシリンダ1は、
図2に示すように、シリンダチューブ1dの基端側に位置し作動油を導入することによりロッド1cの基端部に取り付けたピストン1eを押圧して作動油圧による荷重を与えて、ロッド1cを伸長移動する側の第1作動油室であるヘッド室1aを備える。また、ブームシリンダ1は、シリンダチューブ1dの先端側に位置し作動油を導入することによりピストン1eを押圧して作動油圧による荷重を与えて、ロッド1cを縮退移動する側の第2作動油室としてのロッド室1bを備える。
【0023】
ブーム2の先端部には、アーム4の基端部を俯仰動可能に連結している。アーム4は、片ロッド式油圧シリンダであるアームシリンダ3を介して動作する。アームシリンダ3は、ロッド3cの先端部をアーム4に連結し、アームシリンダ3のシリンダチューブ3dをブーム2に連結している。アームシリンダ3は、
図2に示すように、シリンダチューブ3dの基端側に位置し作動油を導入することによりロッド3cの基端部に取り付けたピストン3eを押圧して、ロッド3cを伸長移動するヘッド室3aを備える。また、アームシリンダ3は、シリンダチューブ3dの先端側に位置し作動油を導入することによりピストン3eを押圧して、ロッド3cを縮退移動するロッド室3bを備える。
【0024】
アーム4の先端部には、バケット6の基端部を俯仰動可能に連結している。バケット6は、供給する作動油にて駆動する片ロッド式油圧シリンダであるバケットシリンダ5を介して動作する。バケットシリンダ5は、ロッド5cの先端部をバケット6に連結し、シリンダチューブ5dの基端部をアーム4に連結している。バケットシリンダ5は、シリンダチューブ5dの基端側に位置し作動油を導入することによりロッド5cの基端部に取り付けたピストン5eを押圧して、ロッド5cを伸長移動するヘッド室5aを備える。また、バケットシリンダ5は、シリンダチューブ5dの先端側に位置し作動油を導入することによりピストン5eを押圧して、ロッド5cを縮退移動するロッド室5bを備える。
【0025】
図2に示す油圧駆動装置107は、油圧ショベル100を駆動するための駆動装置である。油圧駆動装置107は、フロント作業機104を構成するブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5に加え、旋回装置106および走行装置105a,105bの駆動に用いる。旋回装置106および走行装置105a,105bは、作動油の供給を受け回転駆動する液圧モータである。なお、
図2においては、ブームシリンダ1、アームシリンダ
3およびバケットシリンダ5のみを示しており、その他の旋回装置106および走行装置105a,105bの受圧面積差を有しない油圧アクチュエータ等の構成機器については、その説明を省略している。
【0026】
油圧駆動装置107は、キャブ101内に設置した操作装置としての操作レバー48a〜48dの操作に応じて、油圧アクチュエータであるブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5を駆動する。ここで、ブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5の伸縮動作、すなわち動作方向および動作速度は、操作レバー48a〜48dの操作方向および操作量にて指示する。
【0027】
また、油圧駆動装置107は、
図2に示すように、動力源であるエンジン7を備える。エンジン7は、例えば所定のギヤ等で構成し動力を配分するための動力伝達装置8に接続している。動力伝達装置8には、ブームシリンダ1を駆動するための第1液圧ポンプ9と、アームシリンダ3を駆動するための第2液圧ポンプ10と、バケットシリンダ5を駆動するための第3液圧ポンプ11と、第1液圧ポンプ9を挟む流路13と流路14との間の圧力差が所定の圧力以下になった場合に作動油(圧油)を補充するためのチャージポンプ12とをそれぞれ接続している。
【0028】
第1液圧ポンプ9は、後述する閉回路Aに用いられ、作動油の吐出方向を変更してブームシリンダ1の駆動を制御する必要性から、両方向に作動油が吐出可能な両傾転斜板機構(図示せず)を備えている。このため、第1液圧ポンプ9は、両方向への作動油の流出入を可能とする一対の流出入ポートを備える。また、第1液圧ポンプ9は、両傾転斜板機構を構成する両傾転式の斜板の傾転角(傾斜角度)を調整するためのレギュレータ9aを備える。レギュレータ9aは、制御装置としてのコントローラ47が出力する操作信号に応じて、第1液圧ポンプ9の斜板の傾転角を調整して、第1液圧ポンプ9のいずれかの流出入ポートからの作動油の吐出方向および吐出流量を制御する流量制御部である。なお、第1液圧ポンプ9は、斜軸機構など可変傾転機構であればよく、斜板機構に拘るものではない。ここで、第1液圧ポンプ9は、後述する閉回路Aに接続した閉回路用作動油流出入制御部として用いる第1作動油制御部としての閉回路液圧ポンプである。
【0029】
一方、第2および第3液圧ポンプ10,11は、後述する比例切換弁30,42にて作動油の供給方向を制御する開回路B,Cに用いられるため、一方向に作動油を吐出させればよい。このため、第2および第3液圧ポンプ10,11は、片方向にのみ作動油が吐出可能な片傾転斜板機構を備えている。よって、第2および第3液圧ポンプ10,11は、作動油の流出側である出力ポートと、作動油の流入側である入力ポートとを備えている。また、第2および第3液圧ポン
プ10,11は、片傾転斜板機構を構成する片傾転式の斜板の傾転角(傾斜角度)を調整するための流量調整部としてのレギュレータ10a,11aを備え、所定量(最小吐出流量)以上の流量の作動油を吐出する。各レギュレータ10a,11aは、コントローラ47が出力する操作信号に応じて、対応する第2または第3液圧ポンプ10,11の斜板の傾転角を調整して、これら第2および第3液圧ポンプ10,11の出力ポートからの作動油の吐出流量を制御する流量制御部である。なお、第2および第3液圧ポンプ10,11もまた、斜軸機構など可変傾転機構であればよく、斜板機構に拘るものではない。そして、第2および第3液圧ポンプ10,11は、後述する開回路B,Cに接続した開回路用作動油流出入制御部として用いる第2作動油制御部としての開回路液圧ポンプである。
【0030】
第1液圧ポンプ9の一方の流出入ポートに流路13を接続し、他方の流出入ポートに流路14を接続している。流路13は、流路15を介してブームシリンダ1のヘッド室1aに接続し、流路14は、流路16を介してブームシリンダ1のロッド室1bに接続している。よって、第1液圧ポンプ9は、ブームシリンダ1に対し流路13〜16を介して環状、すなわち閉回路状に接続した閉回路Aを構成している。ブームシリンダ1は、第1液圧ポンプ9からの作動油の供給にて伸縮作動する構成であり、その伸縮方向は作動油の供給方向に依存する。
【0031】
流路13,14には、これら流路13,14の作動油圧を検出するための圧力検出装置としての圧力センサ17a,17bを接続している。圧力センサ17a,17bは、第1液圧ポンプ9の吐出圧および吸込圧を計測し、計測した吐出圧および吸入圧情報をコントローラ47へ出力する。流路15,16には、これら流路15,16の作動油圧(流路圧)が所定の圧力以上になった場合に、作動油を作動油タンク18に逃がして回路を保護するためのリリーフ弁19a,19bや、流路15,16を通過する作動油の余剰分(余剰油)を作動油タンク18に排出するためのフラッシング弁20を接続している。フラッシング弁20と作動油タンク18とを繋ぐ流路上には、フラッシング弁20から作動油タンク18への吐出圧を調整するためのリリーフ弁20aを接続している。リリーフ弁20aのリリーフ圧P
r2は、後述するチャージ用リリーフ弁22のリリーフ圧P
r1以上、すなわちP
r2≧P
r1に設定している。
【0032】
チャージポンプ12の吐出口には、チャージポンプ12が吐出した作動油を、流路13,14のうちの圧力の低い側の流路13,14に供給するためのチャージ用チェック弁21a,21bを接続している。チャージポンプ12の吸込口は、作動油タンク18内に連通している。チャージポンプ12とチャージ用チェック弁21a,21bとの間の流路上には、チャージポンプ12が吐出する作動油の吐出圧(チャージ圧)を調整するためのチャージ用リリーフ弁22を接続している。
【0033】
第2液圧ポンプ10の入力ポートは、流路23を介して作動油タンク18内に連通し、第2液圧ポンプ10の出力ポートは、流路24を介して切換弁25〜27にそれぞれ接続している。切換弁25〜27は、コントローラ47からの指令値に応じて流路の導通と遮断とを切り換える構成であり、コントローラ47からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。コントローラ47は、切換弁25〜27が同時に作動油を通過可能とする導通状態にならないように制御する。第2液圧ポンプ10は、流路24および切換弁25を介してコントロールバルブである比例切換弁30に接続している。比例切換弁30は、流路31,32を介してアームシリンダ3のヘッド室3aおよびロッド室3bに接続し、比例切換弁30を作動油タンク18へ連通して開回路Bを構成している。よって、アームシリンダ3は、比例切換弁30からの作動油の供給にて伸縮作動する構成であり、その伸縮方向は作動油の供給方向に依存する。
【0034】
切換弁27に接続した第1分岐流路27aは、閉回路Aの流路15に接続した分岐路15aに接続している。切換弁27は、第1分岐流路27aおよび分岐路15aを介してブームシリンダ1のヘッド室1aに接続している。第2液圧ポンプ10は、切換弁27の制御により、分岐路15aと作動油タンク18との間の作動油の流量を制御し、ブームシリンダ1のヘッド室1aに流出入する作動油の流量を調整可能としている。流路24には、流路24の回路圧(作動油圧)が所定の圧力以上になった場合に、流路24内の作動油を作動油タンク18に逃がして流路24を保護するリリーフ弁28を接続している。
【0035】
切換弁25は、チェック弁29を介して比例切換弁30に接続している。比例切換弁30は、コントローラ47からの指令値に応じて、チェック弁29を流路31または流路32に接続し、比例制御弁30の開度を調整することによって、アームシリンダ3へ供給する作動油の流量を調整する。流路31,32には、アームシリンダ3の自重落下を抑制するためのカウンタバランス弁33a,33bを接続している。また、流路31,32には、これら流路31,32の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、作動油を作動油タンク18に逃がして回路を保護するためのリリーフ弁34a,34bを接続している。切換弁26は、チェック弁41を介して後述する比例切換弁42に接続している。
【0036】
第3液圧ポンプ11の入力ポートは、流路35を介して作動油タンク18内に連通し、第3液圧ポンプ11の出力ポートは、流路36を介して切換弁37〜39にそれぞれ接続している。切換弁37〜39は、コントローラ47からの指令値に応じて流路の導通と遮断とを切り換える構成であり、コントローラ47からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。コントローラ47は、切換弁37〜39が同時に作動油を通過可能とする導通状態にならないように制御する。第3液圧ポンプ11は、流路36および切換弁37を介してコントロールバルブである比例切換弁42に接続している。比例切換弁42は、流路43,44を介してバケットシリンダ5のヘッド室5aおよびロッド室5bに接続し、比例切換弁42を作動油タンク18へ連通して開回路Cを構成している。よって、バケットシリンダ5は、比例切換弁42からの作動油の供給にて伸縮作動する構成であり、その伸縮方向は作動油の供給方向に依存する。
【0037】
切換弁39に接続した第2分岐流路39aは、閉回路Aの流路15に接続した分岐路15aに接続している。切換弁39は、第2分岐流路39aおよび分岐路15aを介してブームシリンダ1のヘッド室1aに接続している。第3液圧ポンプ11は、切換弁39の制御により、分岐路15aと作動油タンク18との間の作動油流量を制御し、ブームシリンダ1のヘッド室1aに流出入する作動油の流量を調整可能としている。流路36には、流路36の回路圧が所定の圧力以上になった場合に、流路36内の作動油を作動油タンク18に逃がして流路36を保護するリリーフ弁40を接続している。
【0038】
切換弁37は、チェック弁41を介して比例切換弁42に接続している。比例切換弁42は、コントローラ47からの指令値に応じて、チェック弁41を流路43または流路44に接続し、比例制御弁42の開度を調整することによって、バケットシリンダ5へ供給する作動油の流量を調整する。流路43,44には、バケットシリンダ5の自重落下を抑制するためのカウンタバランス弁45a,45bを接続している。また、流路43,44には、これら流路43,44の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、作動油を作動油タンク18に逃がして回路を保護するためのリリーフ弁46a,46bを接続している。切換弁38は、チェック弁29を介して比例切換弁30に接続している。
【0039】
コントローラ47は、操作レバー48a〜48dからのブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5の伸縮方向および速度の指令値と、旋回装置106および走行装置105a,105bの回転方向および回転速度の指令値と、油圧駆動装置107内の種々のセンサ情報に基づき、第1ないし第3液圧ポンプ9〜11の各レギュレータ9a〜11a、切換弁25〜27,37〜39および比例切換弁30,42を制御する。操作レバー48a〜48cは、ブームシリンダ1、アームシリンダ3またはバケットシリンダ5の伸縮方向および速度の指令値をコントローラ47に与える。なお、操作レバー48dは、旋回装置106の回転方向および回転速度の指令値をコントローラ47に与える。また、コントローラ47は、走行装置105a,105bの回転方向および回転速度の指令値をコントローラ47に与える操作レバー(図示せず)も備える。
【0040】
また、コントローラ47には、各圧力センサ17a,17bにて検出した圧力情報が入力する。コントローラ47は、例えば、操作レバー48aがブームシリンダ1のロッド1cを伸長動作する方向に操作し、その操作信号を入力した場合に、開回路B側の第2液圧ポンプ10のレギュレータ10aを制御して、予め定めた所定流量の作動油を第1分岐流路27a、分岐路15aおよび流路15を介してブームシリンダ1のヘッド室1aへ供給する。その後、コントローラ47は、流路14側の圧力センサ17bにて予め定めた所定の圧力以上の圧力を検出した場合に、閉回路A側の第1液圧ポンプ9のレギュレータ9aを制御して所定流量の作動油を、流路13,15を介してブームシリンダ1のヘッド室1aへ供給する伸長開始時制御を行う。
【0041】
より詳細に、伸長開始時制御としては、ブームシリンダ1を伸長動作する操作信号がコントローラ47に入力した場合に、予め定めた目標伸長速度とするために必要となるヘッド室1aへの目標作動油流量に基づき、開回路B側のレギュレータ10aを制御して所定の作動油流量を供給する。その後、閉回路A側の第1液圧ポンプ9が供給する作動油流量と、開回路B側の第2液圧ポンプ10が供給する作動油流量との和が、上記目標作動油流量となり、かつ第1液圧ポンプ9が供給する作動油の流量と第2液圧ポンプ10が供給する作動油の流量との流量比が、ブームシリンダ1の受圧面積差に基づく流量比となるように第1および第2液圧ポンプ9,10を制御する。
【0042】
<作用>
次に、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置107の作用(伸長開始時制御を適用した場合)について説明する。
【0043】
(非操作時)
非操作時は、コントローラ47にてレギュレータ9a〜11aを介して第1ないし第3液圧ポンプ9〜11のそれぞれを最小傾転角に制御し、かつ切換弁25〜27,37〜39および比例切換弁30,42のすべてを閉動作し、ブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5をそれぞれ停止状態で保持している。
【0044】
(ブーム上げ単独操作時)
図3は、油圧駆動装置107のブーム上げ動作操作時の挙動を示すタイムチャートで、(a)は操作レバー48aの操作量、(b)は切換弁27の状態、(c)は第2液圧ポンプ10の流量、(d)は第1液圧ポンプ9の流量、(e)は流路14の圧力、(f)はブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力、(g)はブームシリンダ1の動作速度、(h)はチェック弁21bの流量である。すなわち、
図3は、本発明に係る伸長開始時制御を適用した場合のブームシリンダ1の伸長動作時の各要素の挙動を示している。
【0045】
図3(a)示す操作レバー48aの操作量、および
図3(e)に示す流路14の圧力、すなわち圧力センサ17bにて検出した圧力値は、コントローラ47への入力値である。また、
図3(b)に示す切換弁27の動作、
図3(c)に示す第2液圧ポンプ10の流量、および
図3(d)に示す第1液圧ポンプ9の流量は、コントローラ47が制御する制御対象である。
図3(f)に示すブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力、
図3(g)に示すブームシリンダ1の動作速度、および
図3(h)に示すチェック弁21bの流量は、コントローラ47による制御の影響を受ける要素である。
【0046】
ブーム上げ動作操作時は、時刻t1〜t3にかけて、操作レバー48aの操作量を0〜X
1へ変化すると、時刻t6において、操作レバー48aの操作量X
1に対し、コントローラ47は、第1液圧ポンプ9の吐出流量Q
cp1と第2液圧ポンプ10の吐出流量Q
op1との和が操作量X
1に基づく目標作動油流量となるように、これらQ
cp1およびQ
op1をレギュレータ9a,10aにて制御する。同時に、コントローラ47は、ブームシリンダ1のヘッド室1aの受圧面積A
a1およびロッド室1bの受圧面積A
a2の面積比A
a1:A
a2と、第1および第2液圧ポンプ9,10と第2液圧ポンプ10との流量比(Q
cp1+Q
op1):Q
cp1とが等しくなるように、Q
cp1およびQ
op1を決定する。ブームシリンダ1の動作速度が定常領域の場合に、コントローラ47は、第1液圧ポンプ9の吐出流量と第2液圧ポンプ10の吐出流量との比が、Q
cp1:Q
op1を維持するようにレギュレータ9a,10aを制御する。
【0047】
具体的に、時刻t1において、ブームシリンダ1を伸長する方向に操作レバー48aを操作した場合には、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10のレギュレータ10aを制御して、第2液圧ポンプ10の斜板を倒す。時刻t1において、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10からの作動油の吐出と同時に、切換弁27を制御して開動作し作動油を通過可能とする。
【0048】
時刻t1〜t2において、コントローラ47は、操作レバー48aの操作量にて決定するブームシリンダ1の目標速度V
b1を出力するために必要なブームシリンダ1のヘッド室1aへの流入流量Q
Bh(図示せず)を算出し、第2液圧ポンプ10の吐出流量をQ
Bhとする。時刻t2において、操作レバー48aの操作量がさらに増加すると、Q
Bhが第2液圧ポンプ10の最大吐出流量を超えるため、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10の吐出流量を最大吐出流量Q
op1に維持する。
【0049】
すなわち、時刻t1〜t2において、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10から作動油の吐出を開始するが、ブームシリンダ1の慣性、摩擦抵抗および作動油の圧縮性等の影響により、ヘッド室1aの圧力が上昇するまでに時間的な遅れが生じる。これにより、ブームシリンダ1の実際の動作速度が、第2液圧ポンプ10が吐出する作動油流量通りの動作速度になるまでに時間的な遅れが生じる。このとき、ブームシリンダ1の慣性、摩擦抵抗および作動油の圧縮性等を考慮し、操作レバー48aの入力に対して第2液圧ポンプ10の吐出流量をより多めにしてもよい。すなわち、第2液圧ポンプ10の吐出流量を、予め定めた所定の任意の時間に亘って、操作レバー48aの操作量に基づく指令値に対して若干多めにすることにより、作動油の圧縮性による動作遅れを緩和できる。
【0050】
時刻t4において、ブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力がP
bh2に達すると、ブームシリンダ1の動作速度が増加し、ブームシリンダ1のロッド室1bからの流出流量Q
Br(図示せず)が増加し、流路14の圧力が上昇する。時刻t4において、コントローラ47は、ロッド室1b側の圧力センサ17bの検出圧が予め定めた所定の圧力値P
r2以上になったことを検出した場合に、第1液圧ポンプ9のレギュレータ9aを制御し、第1液圧ポンプ9の斜板を倒して、第1液圧ポンプ9での作動油の吐出を開始する。すなわち、圧力値P
r2は、ブームシリンダ1のロッド室1bからの戻り作動油をヘッド室1aに供給しても作動油不足が生じない圧力値に設定している。
【0051】
時刻t4〜t5において、コントローラ47は、第1液圧ポンプ9の吐出流量を0からQ
cp1まで増加する。このとき、第1液圧ポンプ9にて作動油の吐出を開始する影響によって、流路14の圧力が一時的に降下する。ところが、時刻t5〜t6において、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出する流出流量Q
Brにより、第1液圧ポンプ9が吸込する吸入流量を確保できるため、流路14の圧力は圧力値P
r2に安定する。そして、時刻t4〜t5にかけて、流路14の圧力が下降していき、圧力値P
r1以下になると、チェック弁21bの流量がQ
c2まで増加する。
【0052】
さらに、時刻t5〜t6にかけて、流路14の圧力が上昇していき、圧力値P
r1を超えると、チェック弁21bが動作してチェック弁21bの流量は0となる。そして、時刻t6において、ブームシリンダ1の実際の動作速度が目標速度V
b1に到達し、流路14の圧力もP
r2に安定する。
【0053】
<伸長開始時制御なしの場合>
次に、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置107による伸長開始時制御を適用しない場合の作用について説明する。
【0054】
図6は、本発明に係る油圧駆動装置107による伸長開始時制御を適用しない場合のブーム上げ動作操作時の挙動を示すタイムチャートで、(a)は操作レバー48aの操作量、(b)は切換弁27の状態、(c)は第2液圧ポンプ10の流量、(d)は第1液圧ポンプ9の流量、(e)は流路14の圧力、(f)はブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力、(g)はブームシリンダ1の動作速度、(h)はチェック弁21bの流量である。
図6(a)〜
図6(g)に示す各パラメータは、
図3(a)〜
図3(g)に示す各パラメータと同一である。
【0055】
ブーム上げ動作操作時は、
図6に示すように、時刻t1〜t3にかけて、操作レバー48aの操作量を0からX
1まで変化する。このとき、時刻t1において、ブームシリンダ1を伸長する方向に操作レバー48aを操作した場合には、コントローラ47は、第1液圧ポンプ9のレギュレータ9aを制御して、第1液圧ポンプ9の斜板を倒す。そして、コントローラ47は、時刻t2において、第1液圧ポンプ9の吐出流量が最大吐出流量Q
cp1となるようにレギュレータ9aを制御する。
【0056】
時刻t2〜t3において、操作レバー48aの操作量が増加していくと、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10のレギュレータ10aを制御して第2液圧ポンプ10の斜板を倒し、第2液圧ポンプ10から作動油を吐出する。時刻t3において、操作レバー48aの操作量がX
1に達すると、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10の吐出流量が最大吐出流量Q
op1になるようにレギュレータ10aを制御する。時刻t2において、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10からの作動油の吐出と同時に、切換弁27を制御して作動油を通過可能とする。
【0057】
すなわち、時刻t1〜t3において、コントローラ47は、第1および第2液圧ポンプ9,10から作動油の吐出を開始するが、ブームシリンダ1の慣性、摩擦抵抗および作動油の圧縮性等の影響により、ブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力が上昇するまでに時間的な遅れが生じる。これにより、ブームシリンダ1の実際の動作速度が、第1および第2液圧ポンプ9,10からの吐出流量通りの動作速度になるまでに時間的な遅れが生じる。
【0058】
ブームシリンダ1の実際の動作速度が、第1および第2液圧ポンプ9,10の合計吐出流量から計算した動作速度に比べて遅い場合は、ブームシリンダ1のロッド室1bからの流出流量Q
Brが、第1液圧ポンプ9の吸込流量Q
cpより少なくなるため、流路14,16内の作動油が膨張し圧力低下が生じてしまう。このため、時刻t2において、流路14,16の圧力が圧力値P
r3まで低下する。
【0059】
さらに、時刻t1〜t2において、流路14の圧力がチャージポンプ12の設定吐出圧P
r1より低下すると、チャージポンプ12が吐出した作動油を、チェック弁21bから流路14へ供給する。そして、時刻t2において、チェック弁21bの流量がQ
c1となる。時刻t2においては、第1および第2液圧ポンプ9,10の合計吐出流量から計算したブームシリンダ1の目標速度と、ブームシリンダ1の実際の動作速度との差が大きいため、ブームシリンダ1のロッド室1bからの流出流量Q
Brは、第1液圧ポンプ9が吸い込む吸込流量Q
cpより大幅に少ない。このため、時刻t2においては、第1液圧ポンプ9の吸込流量をチェック弁21bの流量で確保しなければならず、チェック弁21bの流量Q
c1は、第1液圧ポンプ9の吐出流量Q
cp1とほぼ同量となる。
【0060】
時刻t4において、ブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力がP
bh2に達すると、ブームシリンダ1に生じる力が安定し、ブームシリンダ1の動作速度が増加する。これにより、ブームシリンダ1のロッド室1bからの流出流量Q
Brが増加し、流路14の圧力が上昇するため、チェック弁21bの流量が減少していく。時刻t5において、流路14の圧力が圧力値P
r1以上になると、チェック弁21bの流量が0になる。そして、最終的にブームシリンダ1の実際の動作速度が目標速度V
b1となり、流路14の圧力もP
r1に安定する。
【0061】
<効果>
以上のように、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置107による伸長開始時制御を適用しない場合は、ブームシリンダ1の動作開始直後に、ブームシリンダ1の慣性、摩擦抵抗および作動油の圧縮性等の影響により、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出する作動油の流出流量Q
Brと、第1液圧ポンプ9が吸い込む吸込流量Q
cpとの関係がQ
Brに対してQ
cpが大幅に少なく、Q
Br>Q
cpとなる。よって、第1液圧ポンプ9の吸込流量Q
cpをチャージポンプ12から供給しなければならないため、第1液圧ポンプ9と同容量の流量が吐出可能なチャージポンプ12が必要となる。すなわち、ブームシリンダ1の伸長動作開始時において、ブームシリンダ1が動作を開始するまでの間に、第1液圧ポンプ9の吸入側の作動油圧の低下を、チャージポンプ12を用いて一定圧以上に維持しているため、第1液圧ポンプ9と同容量のチャージポンプ12が必要となり、チャージポンプ12が大型化してしまう。
【0062】
これに対し、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置107による伸長開始時制御を適用した場合は、ブームシリンダ1の動作開始直後に、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出する作動油の流出流量Q
Brと、第1液圧ポンプ9が吸い込む流量Q
cpとの関係がQ
Br>Q
cpとなるものの、第1液圧ポンプ9を動作する前に第2液圧ポンプ10を動作して作動油を分岐流路27aおよび分岐路15aを介してブームシリンダ1のヘッド室1aへ供給してブームシリンダ1を動作する。このため、上記伸長開始時制御を適用しない場合に比べ、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出する作動油の流出流量Q
Brが多くなり、チャージポンプ12から流路14を介して第1液圧ポンプ9の吸込側へ供給する作動油流量を大幅に少なくできる。
【0063】
したがって、閉回路Aにてブームシリンダ1を駆動する構成であっても、上記のように第1および第2液圧ポンプ9,10による作動油供給タイミングを制御することによって、ブームシリンダ1の伸長動作開始時に生じるヘッド室1aの作動油不足を防止することができるため、この作動油不足を補うために従来から用いているチャージポンプ12の小型化を可能とし、より吐出容量が小さなチャージポンプ12とでき、ひいてはチャージポンプ12を無くすことが可能となる。
【0064】
さらに、ブーム上げ動作操作時に、第1液圧ポンプ9の吐出流量Q
cp1と第2液圧ポンプ10の吐出流量Q
op1との和が操作量X
1に基づく目標作動油流量となるように、これらQ
cp1およびQ
op1をレギュレータ9a,10aにて制御すると同時に、ブームシリンダ1のヘッド室1aの受圧面積A
a1およびロッド室1bの受圧面積A
a2の面積比A
a1:A
a2と、第1および第2液圧ポンプ9,10と第2液圧ポンプ10との流量比(Q
cp1+Q
op1):Q
cp1とが等しくなるように、Q
cp1およびQ
op1を決定している。この結果、ブームシリンダ1のヘッド室1aへ導入する作動油流量と、ロッド室1bから流出する作動油流量とのバランスを確保でき、ブームシリンダ1の受圧面積差に基づく作動油不足を効率力良く解消できる。よって、ブームシリンダ1の伸長動作を滑らかにでき操作性を向上できる。
【0065】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置のブーム上げ動作操作時の挙動を示すタイムチャートで、(a)は操作レバー48aの操作量、(b)は切換弁27の状態、(c)は切換弁39の状態、(d)は第2液圧ポンプ10の流量、(e)は第3液圧ポンプ11の流量、(f)は第1液圧ポンプ9の流量、(g)は流路14の圧力、(h)はブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力、(i)はブームシリンダ1の動作速度、(j)はチェック弁21bの流量である。
【0066】
本第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、ブーム上げ単独動作開始時に第2液圧ポンプ10のみを用いているのに対し、第2実施形態は、ブーム上げ単独動作開始に第2および第3液圧ポンプ10,11をそれぞれ用いている。なお、本第2実施形態において、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0067】
(ブーム上げ単独操作時)
図4(a)〜
図4(j)に示すパラメータは、
図3(a)〜
図3(g)に示すパラメータに加え、
図4(c)に示す切換弁39の状態、および
図4(e)に示す第3液圧ポンプ11の流量を加えたものである。これら
図4(c)に示す切換弁39の動作、および
図4(e)に示す第3液圧ポンプ11の流量は、コントローラ47が制御する制御対象である。
【0068】
ブーム上げ動作操作時は、時刻t1〜t3にかけて、操作レバー48aの操作量を0〜X
1へ変化すると、時刻t6において、操作レバー48aの操作量X
1に対し、コントローラ47は、第1液圧ポンプ9の吐出流量がQ
cp1、および第2液圧ポンプ10の吐出流量がQ
op1となるように、レギュレータ9a,10aを制御する。同時に、コントローラ47は、ブームシリンダ1のヘッド室1aの受圧面積A
a1およびロッド室1bの受圧面積A
a2の面積比A
a1:A
a2と、第1および第2液圧ポンプ9,10と第2液圧ポンプ10との流量比(Q
cp1+Q
op1):Q
cp1とが等しくなるように、Q
cp1およびQ
op1を決定する。ブームシリンダ1の動作速度が定常領域の場合に、コントローラ47は、第1液圧ポンプ9の吐出流量と第2液圧ポンプ10の吐出流量との比が、Q
cp1:Q
op1を維持するようにレギュレータ9a,10aを制御する。
【0069】
具体的に、時刻t1において、ブームシリンダ1を伸長する方向に操作レバー48aを操作した場合には、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10のレギュレータ10aを制御して、第2液圧ポンプ10の斜板を倒す。時刻t1において、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10からの作動油の吐出と同時に、切換弁27を制御して開動作し作動油を通過可能とする。
【0070】
時刻t1〜t2において、コントローラ47は、操作レバー48aの操作量にて決定するブームシリンダ1の目標速度V
b1を出力するために必要なブームシリンダ1のヘッド室1aへの流入流量Q
Bhを算出し、第2液圧ポンプ10の吐出流量をQ
Bhとする。時刻t2において、操作レバー48aの操作量がさらに増加すると、Q
Bhが第2液圧ポンプ10の最大吐出流量を超えるため、コントローラ47は、第2液圧ポンプ10の吐出流量を最大吐出流量Q
op1に維持する。
【0071】
さらに、時刻t2において、操作レバー48aの操作量にて決定するブームシリンダ1のヘッド室1aへの流入流量Q
Bhが、第2液圧ポンプ10の最大吐出流量Q
op1より大きくなると、コントローラ47は、第3液圧ポンプ11のレギュレータ11aを制御し、第3の液圧ポンプ11の斜板を倒す。時刻t2において、コントローラ47は、第3液圧ポンプ11からの作動油の吐出と同時に、切換弁39を制御して開動作し作動油を通過可能とする。
【0072】
時刻t2〜t3において、コントローラ47は、操作レバー48aの操作量にて決定するブームシリンダ1の目標速度V
b1を出力するために必要なブームシリンダ1のヘッド室1aへの流入流量Q
Bhを算出し、第3液圧ポンプ11の吐出流量を第2液圧ポンプ10の吐出流量Q
op1との差分を考慮して(Q
Bh−Q
op1)とする。時刻t3において、操作レバー48aの操作量がX
1となると、コントローラ47は、第3液圧ポンプ11の吐出流量がQ
cp1となるようにレギュレータ11aを制御する。
【0073】
すなわち、時刻t1〜t3において、第2および第3液圧ポンプ10,11からの作動油の吐出を開始するが、ブームシリンダ1の慣性、摩擦抵抗および作動油の圧縮性等の影響により、ブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力が上昇するまでに時間的な遅れが生じる。これにより、ブームシリンダ1の実際の動作速度が、第2および第3液圧ポンプ10,11が吐出する作動油流量通りの動作速度になるまでに時間的な遅れが生じる。このとき、ブームシリンダ1の慣性、摩擦抵抗および作動油の圧縮性等を考慮し、操作レバー48aの入力に対して第2液圧ポンプ10の吐出流量をより多めにしてもよい。すなわち、第2液圧ポンプ10の吐出流量を、予め定めた所定の任意の時間に亘って、操作レバー48aの操作量に基づく指令値に対して若干多めにすることにより、作動油の圧縮性による動作遅れを緩和できる。
【0074】
さらに、時刻t4において、ブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力がP
bh2に達すると、ブームシリンダ1の動作速度が増加し、ブームシリンダ1のロッド室1bからの流出流量Q
Brが増加し、流路14の圧力が上昇する。時刻t4において、コントローラ47は、ロッド室1b側の圧力センサ17bの検出圧が予め定めた所定の圧力値P
r2以上になったことを検出した場合に、第1液圧ポンプ9のレギュレータ9aを制御し、第1液圧ポンプ9の斜板を倒して、第1液圧ポンプ9からの作動油の吐出を開始する。
【0075】
時刻t4〜t5において、コントローラ47は、第1液圧ポンプ9の吐出流量を0〜Q
cp1まで増加する。同時に、コントローラ47は、第3液圧ポンプ11の吐出流量をQ
cp1〜0まで減少する。このとき、第1液圧ポンプ9での作動油の吐出を開始する影響によって、流路14の圧力が一時的に降下する。ところが、時刻t5〜t6において、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出する流出流量Q
Brにより、第1液圧ポンプ9が吸込する吸入流量を確保できるため、流路14の圧力は圧力値P
r2に安定する。そして、時刻t4〜t5にかけて、流路14の圧力が下降していき、圧力値P
r1以下になると、チェック弁21bの流量がQ
c2まで増加する。
【0076】
さらに、時刻t5において、コントローラ47は、切換弁39を制御して閉動作し作動油を遮断する。その後、時刻t5〜t6にかけて、流路14の圧力が上昇していき、圧力値P
r1を超えると、チェック弁21bが動作して流量が0となる。そして、時刻t6において、ブームシリンダ1の実際の動作速度が目標速度V
b1に到達し,流路14の圧力もP
r2に安定する。
【0077】
以上のように、本発明の第2実施形態によれば、第1液圧ポンプ9から作動油を吐出する動作開始直後は、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出する作動油の流出流量Q
Brと、第1液圧ポンプ9が吸い込む吸込流量Q
cpとがほぼ等しくなるため、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置107に比べ、チャージポンプ12から流路14を介して第1液圧ポンプ9の吸込側へ供給する作動油流量が少なくなる(Q
c3<Q
c2)。
【0078】
すなわち、本第2実施形態においては、第2および第3液圧ポンプ10,11をそれぞれ用いており、第1液圧ポンプ9から作動油の吐出を開始する吐出開始時(時刻t4)において、ブームシリンダ1のヘッド室1aへ導入する作動油流量が、時刻t6以降に等しい流量(Q
op1+Q
cp1)となっている。このため、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置107に比べ、ブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力をP
bh2まで上昇する際の時間を短縮できるから、操作レバー48aの操作量に対するブームシリンダ1の動作速度の応答性を向上できる。
【0079】
[第3実施形態]
本第3実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、第1および第2液圧ポンプ9,10の流量をブームシリンダ1の受圧面積比に基づいて制御しているのに対し、第3実施形態は、第1および第2液圧ポンプ9,10の流量をほぼブームシリンダ1の受圧面積比に基づいて制御するものである。なお、本第3実施形態において、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0080】
具体的に、第1液圧ポンプ9が吐出する作動油の吐出流量Q
cpがQ
cp1より多い場合は、ブームシリンダ1のヘッド室1aの受圧面積A
a1およびロッド室1bの受圧面積A
a2の面積比A
a1:A
a2に対し、(Q
cp+Q
op1):Q
cpのうちの、(Q
cp+Q
op1)の比率が小さくなる。(Q
cp+Q
op1)は、ブームシリンダ1のヘッド室1aへ流入する作動油流量であり、この比率が小さくなるとロッド室1bから流出する作動油流量が少なくなる。そこで、第1液圧ポンプ9が吸い込む作動油の吸込流量Q
cpを確保するためには、チェック弁21bから所定量の作動油を補充する必要がある。
【0081】
このため、チェック弁21bの流量は、
図3(h)中の実線で示す理想的な流量に対し、
図3(h)中の点線で示すように多くなる。また、流路14の圧力が安定する時刻t6以降においても、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出する作動油流量が第1液圧ポンプ9の吸込流量Q
cpに対して少ないため、一定の流量の作動油をチェック弁21bから流路14へ供給する。
【0082】
一方、第2液圧ポンプ10が吐出する作動油の吐出流量QopがQop1より多い場合は、ブームシリンダ1のヘッド室1aの受圧面積Aa1およびロッド室1bの受圧面積Aa2の面積比Aa1:Aa2に対し、(Qcp1+Qop):Qcp1のうちの、(Qcp1+Qop)の比率が
大きくなる。(Qcp1+Qop)は、ブームシリンダ1のヘッド室1aへ流入する作動油流量であり、この比率が大きくなるとロッド室1bから流出する作動油流量が多くなる。そこで、第1液圧ポンプ9が吸い込む作動油の吸込流量Qcp1に対して余剰分の作動油を、フラッシング弁20からリリーフ弁20aを介して作動油タンク18へ排出する。この結果、チェック弁21bの流量は、
図3(h)中の実線で示す理想的な流量に対し、
図3(h)中の一点鎖線で示すように少なくなる。
【0083】
すなわち、第1液圧ポンプ9が吐出する作動油の吐出流量Q
cpがQ
cp1より多い場合、および第2液圧ポンプ10が吐出する作動油の吐出流量Q
opがQ
op1より多い場合のいずれにおいても、チャージポンプ12から流路14を介して第1液圧ポンプ9の吸込側へ供給する作動油流量を少なくできるため、チャージポンプ12を小型化でき、より吐出容量が小さなチャージポンプ12とでき、ひいてはチャージポンプ12を無くすことができる。
【0084】
[第4実施形態]
図5は、本発明の第4実施形態に係る油圧駆動装置107Aの構成を示す概略図である。本第4実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、チャージポンプ12を用いた油圧駆動装置107に対し、第4実施形態は、チャージポンプ12を用いない油圧駆動装置107Aとしている。なお、本第4実施形態において、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0085】
具体的に、本第4実施形態に係る油圧駆動装置107Aは、フラッシング弁20からチャージ用チェック弁21a,21bまでの流路上に蓄圧装置としてのアキュムレータ50を接続している。アキュムレータ50は、リリーフ弁19a,19bとのチャージ用チェック弁21a,21bとの間の流路上に接続し、チャージ用チェック弁21a,21bと作動油タンク18との間の流路上にリリーフ弁20aを接続している。
【0086】
この結果、流路13,14のうち、低圧側の流路13,14がリリーフ弁20aにて設定した設定圧以下になる場合に、アキュムレータ50に蓄えた作動油を低圧側の流路13,14へ供給できるから、チャージポンプ12を無くすことができる。
【0087】
[その他]
なお、本発明は前述した実施形態に限定するものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【0088】
そして、上記各実施形態においては、油圧駆動装置107,107Aを油圧ショベル1に搭載した場合を例として説明したが、本発明はこれに限定せず、例えば油圧式クレーンやホイールローダなどの油圧回路で駆動可能な少なくとも1つ以上の片ロッド式油圧シリンダを備えた作業機械であれば、油圧ショベル100以外の作業機械においても、本発明に係る油圧駆動装置107,107Aを用いることができる。また、ブームシリンダ1以外のアームシリンダ3やバケットシリンダ5に本発明に係る伸長開始時制御を適用してもよい。
【0089】
また、第2および第3液圧ポンプ10,11として、作動油タンク18から流路24,36へ向かう1方向のみに作動油が吐出可能な片傾転斜板機構を備えた油圧ポンプを用いたが、吐出方向および吐出流量が制御可能な両傾転斜板機構を備えた油圧ポンプを用いてもよい。
【0090】
また、第1ないし第3液圧ポンプ9〜11のそれぞれを、動力伝達装置8を介して1台のエンジン7に接続したが、これら第1ないし第3液圧ポンプ9〜11として、複数の固定容量式の液圧ポンプを用意し、これら固定容量式の液圧ポンプに、回転方向および回転数が制御可能な電動機を接続し、これら電動機をコントローラ47にて制御して、各固定容量式の液圧ポンプの回転方向および回転数によって作動油の吐出入方向および吐出流量を制御する構成とすることもできる。
【0091】
さらに、上記各実施形態では、切換弁25〜27,37〜39や比例切換弁30,42は、コントローラ47が出力した信号による直接制御で示したが、これに拘るものでなく、例えば、コントローラ47からの信号を、電磁減圧弁などを用いて変換した油圧信号により制御したり、油圧回路にて制御したりしてもよい。
【0092】
また、圧力センサ17bにて検出した圧力値に基づき、第1液圧ポンプ9の駆動開始タイミングを制御したが、第2液圧ポンプ10の駆動を開始してから任意の時間が経過した後に、第1液圧ポンプ9を駆動するようにしてもよい。また、ブームシリンダ1にストロークセンサ等の速度変化を検出可能な検出装置を取り付け、第2液圧ポンプ10を駆動した後にブームシリンダ1が伸長動作を開始した場合に第1液圧ポンプ9を駆動するようにしてもよい。