(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回数設定手段は、前記車両の減速時におけるブレーキペダルの踏み込み量と、前記減速度との組み合わせに基づいて前記基準回数を設定し、前記踏み込み量が大きい前記位置ほど前記基準回数を小さい回数に設定する、
請求項1に記載の減速制御システム。
前記回数設定手段は、前記車両が減速した前記位置の道路種別と、前記減速度との組み合わせに基づいて前記基準回数を設定し、前記道路種別が一般道路または細街路である前記位置の前記基準回数を、前記道路種別が高速道路である前記位置の前記基準回数よりも小さい回数に設定する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の減速制御システム。
前記回数設定手段は、前記位置における前記車両の走行回数ごとに前記基準回数が記録されたテーブルを参照することにより前記基準回数を設定するとともに、前記減速度に応じて参照する前記テーブルを切り替える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の減速制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)減速制御システムの構成:
(2)対象地点登録処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)減速制御システムの構成:
本発明の減速制御システムは、車両Cに搭載されたナビゲーション端末10によって実現されている。ナビゲーション端末10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備える。制御部20は、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行する。本実施形態において制御部20は、このプログラムの一つとして減速制御プログラム21を実行する。
【0012】
車両Cは、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とECU(Electronic Control Unit)44とユーザI/F部45と制動部46とアクセルペダル47とブレーキペダル48と加速度センサ49を備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Cの現在位置を算出するための信号を制御部20に出力する。車速センサ42は、車両Cが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両Cの水平面内における角加速度を検出し、車両Cの向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両Cの進行方向を取得する。
【0013】
ECU44は、車両Cを制御するための回路である。本実施形態のECU44は、アクセルペダル47の踏み込み量を示す信号と、ブレーキペダル48の踏み込み量を示す信号とを取得する。ECU44は、アクセルペダル47の踏み込み量を示す信号と、ブレーキペダル48の踏み込み量を示す信号を制御部20に出力する。また、ECU44は制動部46を制御する。制動部46は、ブレーキペダル48の踏み込み量に応じて、車両Cを制動するための制動装置と当該制動装置の制御回路とを含む。制動装置は、摩擦ブレーキによって制動力を生じさせてもよいし、エンジンブレーキによって制動力を生じさせてもよいし、回生ブレーキによって制動力を生じさせてもよい。加速度センサ49は、車両Cに作用する加速度を計測するセンサであり、加速度を示す信号をECU44に出力する。ECU44は、加速度センサ49が計測した加速度に基づいて図示しない挙動制御装置を制御する。なお、挙動制御装置は、アンチロックブレーキシステムや横滑り防止装置やトラクションコントロールシステム等である。ECU44は、加速度センサ49が計測した加速度を制御部20に出力する。
【0014】
本実施形態において、ECU44は、制動部46を制御して車両Cの減速制御を行う。減速制御とは、減速制御の対象地点に車両Cが接近した場合に、ブレーキペダル48の踏み込み量に拘わらず、車両Cが所定の目標車速または所定の目標減速度で運動するように制動部46にて制動力を生じさせるための制御である。減速制御の対象地点とは、車両Cが高い頻度で過去に減速を行った地点であり、後述する減速位置DB(データベース)30bに登録されている。
【0015】
ユーザI/F部45は、運転者の指示を入力し、また運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイからなる入力部を兼ねた表示部やスピーカー等の出力音の出力部を備えている。減速制御プログラム21の機能により制御部20は、ユーザI/F部45に対して車両Cの現在位置および現在位置周辺の地図を表示させる。すなわち、制御部20は、車両Cの現在位置を取得し、地図情報30aに基づいて現在位置周辺の地図を示す画像を生成してユーザI/F部45に対して出力する。この結果、ユーザI/F部45の表示部は、現在位置を含む地図を表示する。
本実施形態において、ユーザI/F部45は、減速案内の音声メッセージ『前方の減速地点に注意して下さい』を出力する。
【0016】
記録媒体30には、地図情報30aが記録されている。地図情報30aには車両Cが走行する道路上に設定されたノードの位置(水平位置、標高)等を示すノードデータ、ノード間を接続する道路区間の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間データ、道路区間についての各種情報(道路種別等)を示すリンクデータ等が含まれている。
【0017】
記録媒体30には、減速位置DB30bが記録されている。表1は減速位置DB30bを示す。
【表1】
表1に示すように、減速位置DB30bは、道路区間上の減速位置Pごとに、走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせと、学習状態と、最大減速度Bと、最大踏み込み量Aと、道路種別とを規定したデータである。走行回数Nとは、地図情報30aに規定された道路区間上の減速位置Pを車両Cが走行した回数である。減速回数Mとは、車両Cが減速動作を行った回数である。減速動作は、ブレーキペダル48が所定量以上踏み込まれることによって開始し、車両Cが停止した場合、または、車両Cが再加速をした場合に終了する。ここで、車両Cが停止した場合とは、車速が所定の停止車速(例えば3km/時)以下となった場合である。車両Cが再加速をした場合とは、車速が所定量(例えば5km/時)以上小さくなったのに続いてアクセルペダルが踏み込まれた場合である。ある減速位置Pにて、毎回、車両Cが減速した場合、走行回数Nと減速回数Mとが同じ回数となる。
【0018】
減速位置Pは、減速動作の開始位置であってもよいし、終了位置であってもよいし、開始位置と終了位置との平均位置であってもよい。最大減速度Bは、減速位置Pにて行われた減速における最大の減速度である。減速度とは、減速時において加速度センサ49が計測した減速度である。減速位置Pにて複数回減速が行われた場合には、複数回計測された減速度のうちの最大値が最大減速度Bとして減速位置DB30bに記録される。最大踏み込み量Aは、減速位置Pにて行われた減速におけるブレーキペダル48の踏み込み量の最大値である。減速位置Pにて複数回減速が行われた場合には、複数回計測されたブレーキペダル48の踏み込み量のうちの最大値が最大踏み込み量Aとして減速位置DB30bに記録される。なお、減速度とは、減速開始から減速終了までのいずれかの時点の減速度であればよく、例えば減速開始から減速終了までの平均の減速度であってもよい。ブレーキペダル48の踏み込み量も、減速開始から減速終了までのいずれかの時点のブレーキペダル48の踏み込み量であればよい。
【0019】
記録媒体30には、回数テーブル30cが記録されている。
図2A〜2Cは、回数テーブル30cを説明するグラフである。回数テーブル30c(第1テーブル30c1〜30c3)は、走行回数N(横軸)ごとに、学習状態の判定基準となる減速回数M(縦軸)を規定したテーブルである。
図2A〜2Cに示すように、回数テーブル30cにおいて学習状態が画定されている。学習状態として、削除状態Dと初期状態Yと完了状態Zとが存在する。回数テーブル30cにおいて、減速回数Mを走行回数Nで除算した減速率が小さくなる順に削除状態Dと初期状態Yと完了状態Zとが存在している。走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせのうち、これらの状態間の境界(破線)となる組み合わせが回数テーブル30cに規定されている。
【0020】
走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせが削除状態Dとなる減速位置Pについては、当該減速位置Pにおける走行回数Nと減速回数Mとを示す情報が減速位置DB30cから削除されることとなる。すなわち、一度は車両Cが減速した減速位置Pであっても、その後、減速率が減少して削除状態Dとなった場合には、減速位置DB30cにおける管理の対象外となる。また、走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせが削除状態Dとなる減速位置Pは、減速案内と減速制御のいずれの対象にもならない。
【0021】
初期状態Yは、削除状態Dの次に減速率が小さい状態である。削除状態Dと初期状態Yとの境界をなす直線上の減速回数Mを削除回数M2と定義する。走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせが初期状態Yとなる減速位置Pは、減速制御の対象にならないが、減速案内および減速位置DB30cにおける管理の対象となる。
【0022】
完了状態Zは、減速率が最も大きい状態である。初期状態Yと完了状態Zとの境界線上の減速回数Mを基準回数M1と定義する。走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせが完了状態Zとなる減速位置Pは、減速案内と減速制御の双方の対象となる。むろん、走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせが完了状態Zとなる減速位置Pは、減速位置DB30cにおける管理の対象となる。走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせが完了状態Zとなる減速位置Pは、本発明の対象地点を意味する。また、走行回数Nと減速回数Mとの組み合わせが初期状態Yとなる減速位置Pは、対象地点の候補となる。
【0023】
なお、走行回数Nが下限回数Ns以下の領域においては、完了状態Zが存在しない。従って、走行回数Nが下限回数Ns以下の減速位置Pにおいて減速制御が行われることはない。学習の初期においては必ず初期状態Yとなり、初期状態Yから減速率が増加していけば完了状態Zへと移行することとなる。逆に、初期状態Yから減速率が減少していけば初期状態Yから削除状態Dへ移行することとなる。
【0024】
ここで、
図2A〜2Cに示す第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3の相違点について説明する。同一の走行回数Nにおける基準回数M1を比較すると、第1テーブル30c1が最も基準回数M1が大きく、第3テーブル30c3が最も基準回数M1が小さい。また、下限回数Nsを比較すると、第1テーブル30c1が最も下限回数Nsが大きく、第3テーブル30c3が最も下限回数Nsが小さい。第1テーブル30c1に基づいて学習状態を判断した場合、第2テーブル30c2と第3テーブル30c3に基づいて学習状態を判断した場合のいずれよりも小さい減速回数Mで早期に完了状態Zへと移行できる。一方、第3テーブル30c3に基づいて学習状態を判断した場合、第1テーブル30c1と第2テーブル30c2に基づいて学習状態を判断した場合のいずれよりも大きい減速回数Mに達しなければ完了状態Zへと移行できない。
【0025】
一方、同一の走行回数Nにおける削除回数M2を比較すると、第1テーブル30c1が最も削除回数M2が大きく、第3テーブル30c3が最も削除回数M2が小さい。第3テーブル30c3に基づいて学習状態を判断した場合、第1テーブル30c1と第2テーブル30c2とに基づいて学習状態を判断した場合のいずれよりも小さい減速率(減速回数M/走行回数N)にならなければ、初期状態Yから削除状態Dへと移行できない。一方、第1テーブル30c1に基づいて学習状態を判断した場合、第2テーブル30c2と第3テーブル30c3に基づいて学習状態を判断した場合のいずれよりも大きい減速率でも削除状態Dへと移行することとなる。
【0026】
減速制御プログラム21は、走行道路特定部21aと減速回数記録部21bと回数設定部21cと対象地点登録部21dと減速制御部21eとを含む。
【0027】
走行道路特定部21aは、車両Cの走行軌跡と地図情報30aとに基づいて、車両Cが走行している走行道路区間を特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。走行道路特定部21aの機能により制御部20は、公知のマップマッチングによって車両Cが走行している道路区間を特定する。車速センサ42やジャイロセンサ43やGPS受信部41等の出力信号に基づいて車両Cの走行軌跡を取得するとともに、地図情報30aのノードデータやリンクデータや形状補間データに基づいて道路区間の形状を取得する。そして、制御部20は、車両Cから所定距離以内に存在する道路区間の形状のそれぞれについて走行軌跡とのマッチング度を取得し、当該マッチング度が最大値となる道路区間を車両Cが走行している走行道路区間として特定する。なお、制御部20は、車両道路区間上において、車両Cの現在位置を特定する。なお、現在位置のうち、減速時における現在位置が減速位置Pとして表1の減速位置DB30cに記録される。
【0028】
減速回数記録部21bは、車両Cの減速回数Mを減速位置Pごとに記録する機能を制御部20に実現させるためのプログラムモジュールである。減速回数記録部21bの機能により制御部20は、減速位置DB30bに規定された減速位置Pの誤差範囲(例えば15m)内にて車両Cが減速した場合に当該減速位置Pの走行回数Nと減速回数Mにそれぞれ1を加算して減速位置DB30bを更新する。この場合において、制御部20は、当該減速における減速度が最大減速度Bよりも大きければ、当該減速における減速度で最大減速度Bを更新する。同様に、制御部20は、当該減速におけるブレーキペダル48の踏み込み量が最大踏み込み量Aよりも大きければ、当該減速におけるブレーキペダル48の踏み込み量で最大踏み込み量Aを更新する。
【0029】
また、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、減速位置DB30bに規定された減速位置Pを車両Cが減速することなく走行した場合に当該減速位置Pの走行回数Nに1を加算して減速位置DB30bを更新する。一方、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、減速位置DB30bに規定された減速位置Pの誤差範囲外にて車両Cが減速した場合に、当該減速時における現在位置を新たな減速位置Pとして減速位置DB30bに記録し、当該新たな減速位置Pの走行回数Nと減速回数Mとしてそれぞれ1回を記録する。
【0030】
回数設定部21cは、車両Cの減速時の減速度が閾値未満である減速位置Pについて第1基準回数を基準回数M1として設定し、減速度が閾値以上である位置について第1基準回数よりも小さい第2基準回数を基準回数M1として設定する機能を制御部20に実現させるためのプログラムモジュールである。具体的に、回数設定部21cの機能により制御部20は、減速位置Pにおける車両Cの走行回数Nごとに基準回数M1が記録された回数テーブル30cを参照することにより基準回数M1を設定するとともに、減速度に応じて参照する第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3を切り替える。すなわち、回数設定部21cの機能により制御部20は、走行回数Nに対応する基準回数M1を第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3のいずれかを参照して設定する。このとき、制御部20は、減速時における減速度に基づいて、参照する第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3を切り替える。
【0031】
具体的に、制御部20は、減速時における減速度だけでなく、減速時におけるブレーキペダル48の踏み込み量と走行道路区間の道路種別に基づいて、参照する第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3を切り替える。すなわち、回数設定部21cの機能により制御部20は、車両Cの減速時におけるブレーキペダル48の踏み込み量と、減速度との組み合わせに基づいて基準回数M1を設定し、踏み込み量が大きい位置ほど基準回数M1を小さい回数に設定する。さらに、回数設定部21cの機能により制御部20は、車両Cが減速した減速位置Pの道路種別と、減速度との組み合わせに基づいて基準回数M1を設定し、道路種別が一般道路または細街路である減速位置Pの基準回数M1を、道路種別が高速道路である減速位置Pの基準回数M1よりも小さい回数に設定する。
【0032】
本実施形態において、制御部20は、減速時における減速度として、減速位置Pにおける最大減速度Bに基づいて、参照する第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3を切り替える。また、制御部20は、減速時におけるブレーキペダル48の踏み込み量として、減速位置Pにおける最大踏み込み量Aに基づいて、参照する第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3を切り替える。
【0033】
表2は、第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3の参照条件を示す表である。
【表2】
表2において、最大減速度Bとブレーキペダル48の最大踏み込み量Aと減速位置Pの道路種別との組み合わせである減速状態(状態1〜8)ごとに、参照すべき第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3が規定されている。表2に示すように、最大減速度Bが所定の閾値G未満である場合(状態1)、制御部20は、ブレーキペダル48の踏み込み量と減速位置Pの道路種別が何であるかに拘わらず、最も基準回数M1が大きい第1テーブル30c1を参照して基準回数M1と削除回数M2とを設定する。一方、最大減速度Bが閾値G以上である場合(状態2〜状態8)、制御部20は、最大踏み込み量Aと減速位置Pの道路種別に基づいて、第1テーブル30c1以外の第2テーブル30c2,第3テーブル30c3も参照して基準回数M1と削除回数M2とを設定する。
【0034】
具体的に、最大減速度Bが閾値G以上であっても、最大踏み込み量Aが所定の第1閾値P0未満である場合(状態2)、制御部20は、最も基準回数M1が大きい第1テーブル30c1を参照して、基準回数M1と削除回数M2とを設定する。最大減速度Bが閾値G以上であり、かつ、最大踏み込み量Aが第1閾値P0以上である場合(状態3〜状態8)、制御部20は、減速位置Pの道路種別に応じて異なる回数テーブル30cを参照して、基準回数M1と削除回数M2とを設定する。ここで、減速位置Pの道路種別が一般道路または細街路である場合(状態4,状態5,状態7,状態8)に制御部20が参照する第2テーブル30c2,第3テーブル30c3は、減速位置Pの道路種別が高速道路である場合(状態3,状態6)に制御部20が参照する第1テーブル30c1よりも基準回数M1が小さい。
【0035】
ここで、道路種別が一般道路と細街路である場合(状態1,状態4,状態5,状態7,状態8)に着目すると、ブレーキペダル48の踏み込み量が大きいほど制御部20は基準回数M1が小さい第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3を参照して基準回数M1と削除回数M2を設定するということができる。
【0036】
回数設定部21cの機能により制御部20は、ある減速位置Pを車両Cが走行した場合に、当該減速位置Pにおける最大減速度Bと最大踏み込み量Aと道路種別との組み合わせに対応する第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3を取得する。そして、制御部20は、取得した第1テーブル30c1〜第3テーブル30c3において、走行回数Nに対応付けられている基準回数M1と削除回数M2とを取得して、当該基準回数M1と削除回数M2に基づいて学習状態を判定するように対象地点登録部21dを設定する。すなわち、回数設定部21cの機能により制御部20は、最大減速度Bに応じて異なる基準回数M1と削除回数M2とを減速位置Pにおける車両Cの走行回数Nごとに設定する。
【0037】
対象地点登録部21dは、減速回数Mが基準回数M1以上となった減速位置Pを、減速制御の対象地点として登録する機能を制御部20に実現させるためのプログラムモジュールである。対象地点登録部21dの機能により制御部20は、ある減速位置Pを車両Cが走行した場合に、当該減速位置Pにおける減速回数Mが基準回数M1以上であるか否かを判定し、当該減速位置Pの減速回数Mが基準回数M1以上である場合に、当該減速位置Pを減速制御の対象地点として登録する。具体的に、制御部20は、減速位置DB30bにおいて、減速回数Mが基準回数M1以上である減速位置Pの学習状態を完了状態Zに更新する。これにより、減速位置Pにて減速制御と減速案内とが行われることとなる。
【0038】
対象地点登録部21dの機能により制御部20は、減速回数Mが削除回数M2以下となった減速位置Pを、対象地点の候補から削除する。対象地点登録部21dの機能により制御部20は、ある減速位置Pを車両Cが走行した場合に、当該減速位置Pにおける減速回数Mが削除回数M2以下であるか否かを判定し、当該減速位置Pの減速回数Mが削除回数M2以下である場合に、当該減速位置Pを管理の対象外とする。具体的に、制御部20は、減速位置DB30bにおいて、減速回数Mが削除回数M2以下である減速位置Pについての情報を削除する。
【0039】
減速制御部21eは、減速制御の対象地点において減速制御を行う機能を制御部20に実現させるためのプログラムモジュールである。減速制御部21の機能により制御部20は、減速制御の対象地点、すなわち減速位置DB30bにおける学習状態が完了状態Zの減速位置Pに車両Cが接近した場合に、ブレーキペダル48の踏み込み量に拘わらず、車両Cが所定の目標車速または所定の目標減速度で運動するように制動部46にて制動力を生じさせる。また、減速制御部21の機能により制御部20は、減速位置DB30bにおける学習状態が完了状態Zまたは初期状態Yの減速位置Pに車両Cが接近した場合に、減速案内の音声メッセージをユーザI/F45に出力させる。
【0040】
以上説明した実施形態において、最大減速度Bが閾値G以上である減速位置P、すなわち最大減速度Bが大きくなる傾向が強い減速位置Pについては、最大減速度Bが閾値G未満である減速位置P、すなわち最大減速度Bが大きくなる傾向が弱い減速位置Pよりも少ない基準回数M1を設定できる。従って、減速回数Mが少なくても、最大減速度Bが大きくなる傾向が強い減速位置Pを減速制御の対象地点として登録できる。すなわち、最大減速度Bが大きくなる傾向が強い減速位置Pを早期に減速制御の対象地点として登録できる。
【0041】
最大踏み込み量Aに基づいて基準回数M1を設定することにより、運転者が大きくブレーキペダル48を踏み込む傾向が強い減速位置Pについては、運転者が大きくブレーキペダル48を踏み込む傾向が弱い減速位置Pよりも少ない基準回数M1を設定できる。すなわち、運転者が大きくブレーキペダル48を踏み込む傾向が強い減速位置Pを早期に減速制御の対象地点として登録できる。
【0042】
減速位置Pの道路種別に基づいて基準回数M1を設定することにより、大きい最大減速度Bでの減速が定常的に生じる可能性が高い一般道路または細街路内の減速位置Pについては、高速道路内の減速位置Pよりも小さい基準回数M1を設定できる。すなわち、大きい減速度での減速が定常的に生じる可能性が大きい減速位置Pを早期に減速制御の対象地点として登録できる。
【0043】
さらに、減速位置Pにおける車両Cの走行回数Nごとに基準回数M1が記録された回数テーブル30cを参照することにより基準回数M1を設定するため、車両Cの走行回数Nごとに適切な基準回数M1を設定できる。最大減速度Bに応じて異なる削除回数M2を減速位置Pにおける車両Cの走行回数Nごとに設定するため、走行回数Nと比較して減速回数Mが少ない減速位置Pを対象地点の候補から削除でき、対象地点の候補を記録する減速位置DB30bの容量を抑制できる。また、最大減速度Bが大きくなる傾向が強い減速位置Pを早期に対象地点の候補から削除することを防止したり、最大減速度Bが大きくなる傾向が弱い減速位置Pを早期に対象地点の候補から削除したりすることができる。
【0044】
(2)対象地点登録処理:
次に、対象地点登録処理について説明する。
図3Aは対象地点登録処理のフローチャートである。対象地点登録処理は、所定の時間周期または走行距離周期ごとに実行される処理である。なお、対象地点登録処理を実行する期間において、走行道路特定部21aの機能により制御部20は、所定の時間周期または走行距離周期ごとに車両Cが走行している走行道路区間を特定している。まず、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、車両Cが減速動作を行ったか否かを判定する(ステップS100)。減速動作とは、ブレーキペダル48が所定量以上踏み込まれることによって開始し、車両Cが停止した場合、または、車両Cが再加速をした場合に終了する。
【0045】
車両Cが減速動作を行ったと判定しなかった場合(ステップS100:N)、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、対象地点登録処理の最初にリターンする。すなわち、車両Cが減速動作を行うまで待機する。一方、車両Cが減速動作を行ったと判定した場合(ステップS100:Y)、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、減速動作を行った位置が減速位置Pとして減速位置DB30bに記録済みであるか否かを判定する(ステップS110)。具体的に、制御部20は、直前の減速時における現在位置が、減速位置DB30bに記録済み減速位置Pの誤差範囲内である場合に、減速動作を行った位置が記録済みであると判定する。以下、直前の減速動作が行われた位置が誤差範囲内となる減速位置Pを、単に処理対象の減速位置Pと表記する。
【0046】
直前の減速動作が行われた位置が減速位置Pとして減速位置DB30bに記録済みであると判定しなかった場合(ステップS110:N)、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、減速動作を行った位置を新たな減速位置Pとして減速位置DB30bに記録する(ステップS120)。このとき、制御部20は、新たな減速位置Pについての走行回数Nと減速回数Mとを初期値としての1回に設定する。また、制御部20は、直前の減速時における減速度と、ブレーキペダル48の踏み込み量とを、それぞれ最大減速度Bと最大踏み込み量Aとして新たな減速位置Pに対応付けて減速位置DB30bに記録する。さらに、制御部20は、直前の減速時における走行道路区間の道路種別を新たな減速位置Pに対応付けて減速位置DB30bに記録する。
【0047】
一方、減速動作を行った位置が減速位置Pとして減速位置DB30bに記録済みであると判定した場合(ステップS110:Y)、回数設定部21cの機能により制御部20は、減速位置DB30bに記録済みの減速位置Pについての走行回数Nと減速回数Mのそれぞれに1を加算する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、直前の減速動作が行われた位置が誤差範囲内となる減速位置Pに対応付けられている走行回数Nと減速回数Mのそれぞれに1を加算して減速位置DB30bを更新する。以下、直前の減速動作が行われた位置が誤差範囲内となる減速位置Pを、単に処理対象の減速位置Pと表記する。
【0048】
次に、回数設定部21cの機能により制御部20は、減速状態を更新する(ステップS140)。減速状態とは、減速位置DB30bにおいて処理対象の減速位置Pに対応付けられている最大減速度Bと最大踏み込み量Aと道路種別の組み合わせである。直前の減速時における減速度が、処理対象の減速位置Pに対応付けられた最大減速度Bよりも大きい場合、ステップS140を実行するにあたり制御部20は、直前の減速時における減速度で最大減速度Bを更新する。また、直前の減速時におけるブレーキペダル48の踏み込み量が、処理対象の減速位置Pに対応付けられた最大踏み込み量Aよりも大きい場合、ステップS140を実行するにあたり制御部20は、直前の減速時におけるブレーキペダル48の踏み込み量で最大踏み込み量Aを更新する。
【0049】
次に、回数設定部21cの機能により制御部20は、減速状態に応じた回数テーブル30c(第1テーブル30c1〜30c3)を参照して走行回数Nに対応する基準回数M1と削除回数M2とを設定する(ステップS150)。すなわち、処理対象の減速位置Pに対応付けられている最大減速度Bと最大踏み込み量Aと道路種別の組み合わせに対応する回数テーブル30cを、表2の対応関係に基づいて取得する。そして、制御部20は、当該取得した回数テーブル30cにおいて、処理対象の減速位置Pの走行回数Nに対応付けられている基準回数M1と削除回数M2とを設定する。
【0050】
次に、対象地点登録部21dの機能により制御部20は、処理対象の減速位置Pの基準回数M1と削除回数M2との比較により、当該減速位置Pの学習状態を特定する(ステップS160)。すなわち、制御部20は、処理対象の減速位置Pの減速回数Mが基準回数M1以上であるか否かを判定し、当該減速位置Pの減速回数Mが基準回数M1以上である場合に、当該減速位置Pの学習状態が完了状態Zであると特定する。さらに、制御部20は、処理対象の減速位置Pの減速回数Mが削除回数M2以下であるか否かを判定し、当該減速位置Pの減速回数Mが削除回数M2以下である場合に、当該減速位置Pの学習状態が完了状態Zであると特定する。一方、処理対象の減速位置Pの減速回数Mが基準回数M1未満、かつ、削除回数M2よりも大きい場合に、制御部20は、当該減速位置Pの学習状態が初期状態Yであると特定する。
【0051】
次に、対象地点登録部21dの機能により制御部20は、処理対象の減速位置Pの学習状態を減速位置DB30bにて更新する(ステップS170)。すなわち、ステップS160にて特定した学習状態によって、減速位置DB30bにおいて減速位置Pに対応付けられている学習状態を更新する。ここで、ステップS160にて特定した新たな学習状態が完了状態Zであり、減速位置DB30bにおいて減速位置Pに対応付けられているもとの学習状態が初期状態Yである場合、初期状態Yを完了状態Zに更新することは減速位置Pを減速制御の対象地点として登録することを意味する。処理対象の減速位置Pにて減速が行われた場合には、減速回数Mが増加(減速率が増加)するため、ステップS170にて初期状態Yを完了状態Zに更新する処理が実行され得る。
【0052】
また、ステップS160にて特定した新たな学習状態が初期状態Yであり、減速位置DB30bにおいて減速位置Pに対応付けられているもとの学習状態が完了状態Zである場合、完了状態Zを初期状態Yに更新することは減速位置Pを減速制御の対象地点から解除することを意味する。さらに、ステップS160にて特定した新たな学習状態が削除状態Dであり、減速位置DB30bにおいて減速位置Pに対応付けられているもとの学習状態が初期状態Yである場合、制御部20は、減速位置Pについての情報を減速位置DB30bから削除する。
【0053】
図3Bは、減速が行われなかった場合の対象地点登録処理のフローチャートである。まず、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、車両Cが減速動作を行うことなく減速位置Pを走行したか否かを判定する(ステップS200)。車両Cが減速動作を行うことなく減速位置Pを走行したと判定しなかった場合(ステップS200:N)、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、
図3Bの対象地点登録処理の最初にリターンする。すなわち、車両Cが減速動作を行うことなく減速位置Pを走行するまで待機する。
【0054】
一方、車両Cが減速動作を行うことなく減速位置Pを走行したと判定した場合(ステップS200:Y)、減速回数記録部21bの機能により制御部20は、直前に走行した減速位置Pに対応付けられている走行回数Nに1を加算して減速位置DB30bを更新する(ステップS210)。すなわち、制御部20は、直前に減速することなく走行した減速位置Pを処理対象の減速位置Pに設定し、当該減速位置Pに対応付けられている走行回数Nに1を加算して、減速回数Mには1を加算しない。次に、制御部20は、
図3のステップS150以降の処理を実行する。
【0055】
処理対象の減速位置Pにて減速が行われなかった場合(
図3BステップS200:Y)には、走行回数Nのみが増加(減速率が減少)するため、ステップS170にて完了状態Zと初期状態Yに更新する処理と、初期状態Yの減速位置Pについての情報を減速位置DB30bから削除する処理とのいずれかが実行され得る。
【0056】
(3)他の実施形態:
前期実施形態においては、最大減速度Bに基づいて基準回数M1が設定されたが、制御部20は、減速位置Pにおける過去の減速度の平均値に基づいて基準回数M1を設定してもよい。さらに、制御部20は、減速位置Pにおける過去の減速度のうちの、直近の所定回数分の減速度の平均値や最大値に基づいて基準回数M1を設定してもよい。むろん、制御部20は、減速位置Pにおいて最後に行われた減速時の減速度に基づいて基準回数M1を設定してもよい。むろん、制御部20は、減速位置Pにおいて最初に行われた減速時の減速度に基づいて基準回数M1を設定してもよい。
【0057】
なお、少なくとも減速度に基づいて基準回数M1を設定すればよく、制御部20は、減速度のみに基づいて基準回数M1を設定してもよい。すなわち、制御部20は、ブレーキペダル48の踏み込み量と道路種別に基づいて基準回数M1を設定しなくてもよい。さらに、制御部20は、減速度に基づいて基準回数M1のみを設定してもよく、削除回数M2を減速度に依存させないようにしてもよい。また、制御部20は、必ずしも減速率が小さい減速位置Pについての情報を減速位置DB30bから削除しなくてもよい。さらに、制御部20は、基準回数M1を直接設定しなくてもよく、減速地点を登録する基準となる減速率を減速度に基づいて設定してもよい。この場合、回数テーブル30cを省略できる。
【0058】
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。減速回数記録手段は、車両の減速回数を位置ごとに記録すればよく、車両が減速動作を行うごとに、当該減速動作が行われた位置の減速回数に1を加算すればよい。減速動作とは、車速が所定値以上減少することであってもよいし、車両に所定以上の減速度が作用することであってもよいし、ブレーキペダルが所定量踏み込まれることであってもよい。位置とは、道路上の位置であり、所定の誤差範囲内の位置が同一の位置と見なされてもよい。減速回数記録手段は、車載器に備えられもよいし、複数の車両から減速動作の状況を示す情報を受信するサーバに備えられてもよい。すなわち、減速回数とは、単一車両が減速した回数であってもよいし、複数の車両が減速した回数であってもよい。対象地点登録手段は、減速回数が基準回数以上となった位置を、減速制御の対象地点として登録するため、基準回数が小さいほど早期に対象地点が登録されることとなる。
【0059】
回数設定手段は、車両の減速時の減速度に基づいて基準回数を設定すればよく、基準回数を3段階以上の段階に設定してもよい。例えば、回数設定手段は、減速度が大きいほど基準回数が連続的に小さくなるように基準回数を設定してもよい。また、車両の減速時の減速度とは、過去の複数回の減速時における平均、最頻または最大の減速度であってもよいし、直近の減速時における減速度であってもよい。また、減速度とは、減少時に車両に作用する加速度の絶対値である。
【0060】
また、回数設定手段は、車両の減速時におけるブレーキペダルの踏み込み量と、減速度との組み合わせに基づいて基準回数を設定し、踏み込み量が大きい位置ほど基準回数を小さい回数に設定してもよい。このようにすることにより、運転者が大きくブレーキペダルを踏み込む傾向が強い位置については、運転者が大きくブレーキペダルを踏み込む傾向が弱い位置よりも少ない基準回数を設定できる。すなわち、運転者が大きくブレーキペダルを踏み込む傾向が強い位置を早期に減速制御の対象地点として登録できる。
【0061】
さらに、回数設定手段は、車両が減速した位置の道路種別と、減速度との組み合わせに基づいて基準回数を設定し、道路種別が一般道路または細街路である位置の基準回数を、道路種別が高速道路である位置の基準回数よりも小さい回数に設定してもよい。高速道路は、大きい減速度での減速が生じないように設計されているため、信号等の各種地物や急カーブ等が存在する一般道路の方が高速道路よりも、大きい減速度での減速が定常的に生じる可能性が高い。従って、大きい減速度での減速が定常的に生じる可能性が高い一般道路または細街路内の位置については、高速道路内の位置よりも小さい基準回数を設定できる。すなわち、大きい減速度での減速が定常的に生じる可能性が大きい位置を早期に減速制御の対象地点として登録できる。なお、回数設定手段は、道路種別が一般道路である場合と細街路である場合と基準回数を異なる回数に設定してもよい。
【0062】
さらに、回数設定手段は、位置における車両の走行回数ごとに基準回数が記録されたテーブルを参照することにより基準回数を設定するとともに、減速度に応じて参照するテーブルを切り替えてもよい。これにより、車両の走行回数ごとに適切な基準回数を設定できる。例えば、減速回数を走行回数で除算した減速率が一定の基準値となるように基準回数を設定してもよい。
【0063】
また、回数設定手段は、減速度に応じて異なる削除回数を位置における車両の走行回数ごとに設定し、対象地点登録手段は、減速回数が削除回数以下となった位置を、対象地点の候補から削除してもよい。これにより、走行回数と比較して減速回数が少ない位置を対象地点の候補から削除でき、対象地点の候補を記録するデータベースの容量を抑制できる。また、減速度が大きくなる傾向が強い位置を早期に対象地点の候補から削除することを防止したり、減速度が大きくなる傾向が弱い位置を早期に対象地点の候補から削除したりすることができる。
【0064】
さらに、本発明のように、減速制御の対象地点を登録する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステム、対象地点登録システムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、対象地点登録システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。