特許第6324325号(P6324325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ビルシステムの特許一覧

特許6324325エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法
<>
  • 特許6324325-エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法 図000002
  • 特許6324325-エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法 図000003
  • 特許6324325-エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法 図000004
  • 特許6324325-エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法 図000005
  • 特許6324325-エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法 図000006
  • 特許6324325-エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6324325
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/40 20060101AFI20180507BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   B66B1/40 C
   B66B3/02 V
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-1640(P2015-1640)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-124692(P2016-124692A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恭志
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−180026(JP,A)
【文献】 特開2004−175538(JP,A)
【文献】 特開2006−290500(JP,A)
【文献】 特開2008−213967(JP,A)
【文献】 特開2005−206314(JP,A)
【文献】 特開平05−000781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/40
B66B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごが停止すると、前記乗りかごの走行に同期して回転するロータリーエンコーダの出力パルスから乗りかごの位置を監視するかご位置検出装置から乗りかごの停止位置情報を取得するかご位置情報取得手段と、
前記乗りかごが停止すると、前記乗りかごの階床毎の階高値が登録される階高値テーブルから前記乗りかごが停止した階床の階高値情報を取得する階高値情報取得手段と、
前記乗りかごの停止位置情報と前記階高値情報から乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差の大きさを検出する段差検出手段と、
エレベータの駆動を制御するエレベータ制御装置に対して着床制御補正信号を送信する着床制御補正信号送信手段と、
予め設定した判定値を記憶する記憶手段と、を備え、
前記段差検出手段は、前記段差の大きさを検出すると、検出した前記段差の大きさの平均値を算出し、
前記着床制御補正信号送信手段は、算出した前記段差の大きさの平均値が、前記記憶手段に記憶されている判定値を超えると、前記エレベータ制御装置に対して着床制御補正信号を送信し、
前記着床制御補正信号は、前記エレベータ制御装置が前記乗りかごを着床させる際、前記乗りかごの停止位置を特定するために設置される遮蔽板を前記かご位置検出装置が検出してから、前記乗りかごを停止させるまでの距離である制御距離を補正する信号であることを特徴とするエレベータ乗りかごの監視装置。
【請求項2】
請求項1記載のエレベータ乗りかごの監視装置において、
前記段差検出手段は、前記段差の大きさの平均値を、前記乗りかごの走行方向別に算出し、前記乗りかごの走行方向別に算出した前記平均値それぞれと前記判定値とを比較し、
前記着床制御補正信号送信手段は、前記判定値を超える平均値の走行方向に走行時の前記制御距離を補正する前記着床制御補正信号を、前記エレベータ制御装置に送信することを特徴とするエレベータ乗りかごの監視装置
【請求項3】
請求項1または2記載のエレベータ乗りかごの監視装置において、
前記着床制御補正信号は、前記判定値と前記平均値との差に応じた距離だけ前記制御距離を補正する信号であることを特徴とするエレベータ乗りかごの監視装置
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載のエレベータ乗りかごの監視装置において、
前記乗りかごの走行に同期して回転するロータリーエンコーダが調速機の回転駆動軸に取り付けられた調速機用ロータリーエンコーダであり、
エンドレス状の調速機ロープの一部が前記調速機の回転駆動軸に巻き掛けられ、前記調速機ロープの他の一部が前記乗りかごに連結されていることを特徴とするエレベータ乗りかごの監視装置。
【請求項5】
乗りかごが起動していずれかの階床に停止したことを検出するステップと、
前記乗りかごの階床毎の階高値テーブルから前記乗りかごが停止した階床の階高値情報を取得するステップと、
かご位置検出装置から現在の前記乗りかごの停止位置情報を取得するステップと、
前記乗りかごの停止位置情報と、前記乗りかごが停止した階床の階高値情報から乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差の大きさを求め、当該階床での前記段差の大きさの平均値を求め、各階床での前記平均値に基づいて当該エレベータ全体の段差の平均値を求め段差算出ステップと、
前記平均値が予め定められている判定値を超えていると、エレベータ制御装置に対して着床制御補正信号を送信する送信ステップと、
前記着床制御補正信号に基づいて、前記エレベータ制御装置で乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差が無いように前記乗りかごの着床位置を補正するステップと、を有し、
前記着床制御補正信号は、前記エレベータ制御装置が前記乗りかごを着床させる際、前記乗りかごの停止位置を特定するために設置される遮蔽板を前記かご位置検出装置が検出してから、前記乗りかごを停止させるまでの距離である制御距離を補正する信号であることを特徴とするエレベータ乗りかごの監視方法。
【請求項6】
請求項に記載のエレベータ乗りかごの監視方法において、
前記段差算出ステップの前に、前記乗りかごの走行方向を上昇方向と下降方向に区分けするステップを設け、
前記段差算出ステップでは、前記乗りかごの走行方向別に、前記段差の大きさの平均値をそれぞれ求め、前記乗りかごの走行方向別に、それぞれ、記平均値と前記判定値を比較し、
前記送信ステップでは、前記判定値を超える平均値の走行方向に走行時の前記制御距離を補正する前記着床制御補正信号を前記エレベータ制御装置に送信することを特徴とするエレベータ乗りかごの監視方法。
【請求項7】
請求項5または6記載のエレベータ乗りかごの監視方法において、
前記着床制御補正信号は、前記判定値と前記平均値との差に応じた距離だけ前記制御距離を補正する信号であることを特徴とするエレベータ乗りかごの監視方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエレベータは、乗りかごを上下動するモータの回転駆動軸にモータ用ロータリーエンコーダを取り付け、そのモータ用ロータリーエンコーダからの出力パルスにより、乗りかごの走行距離を検出するようになっている。
【0003】
また、かご床と乗り場床の間に段差が無いように停止するために、各階床毎に乗りかごの停止位置を特定する遮蔽板が設置され、その遮蔽板を検出する位置検出部が乗りかごに設けられている。
【0004】
そして、位置検出部が遮蔽板の上下方向の中心位置で停止するとかご床と乗り場床の間に段差が0となるように遮蔽板を設置しており、乗りかごが停止する際、位置検出部が遮蔽板の下端部または上端部を検出した後、遮蔽板の半分の長さの距離を走行して停止するように着床制御を行い、かご床と乗り場床の間に段差が無いようにしている。
【0005】
ところが、乗りかごの実際の走行距離は、モータ用ロータリーエンコーダの出力パルスに現れない主ロープとモータ回転駆動軸とのスリップの影響により、モータ用ロータリーエンコーダの出力パルス数から算出する走行距離よりも長くなったり短くなったりすることが有り、乗りかごに着床ずれが発生することがある。
【0006】
この問題点を解消するため、かご床と乗り場床の間の段差が例えば±20mmの範囲を超えた位置に乗りかごが停止したことが検出できるように、同じ階床に長さの異なる遮蔽板を複数枚並設する。そして±20mmの範囲内に乗りかごが停止しなかった場合は、エレベータを再起動して段差を無くすように着床レベル合わせをする着床制御方法が提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2935685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述した特許文献1に開示された従来の技術では、同じ階床に長さの異なる複数枚の遮蔽板の設置と、その複数枚の遮蔽板を検出するための複数個の位置検出部が必要となり、そのために部品点数が増えて、遮蔽板ならびに位置検出部の設置が煩雑になり、しかもコストが高くなる問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、同じ階床に設置する複数の遮蔽板や、それに対応する複数の位置検出部は必要とせずに、簡易な構成で、精度よく乗りかごの着床制御ができるエレベータ乗りかごの監視装置ならびに監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために第1の本発明は、乗りかごが停止すると、前記乗りかごの走行に同期して回転するロータリーエンコーダの出力パルスから乗りかごの位置を監視するかご位置検出装置から乗りかごの停止位置情報を取得するかご位置情報取得手段と、前記乗りかごが停止すると、前記乗りかごの階床毎の階高値が登録される階高値テーブルから前記乗りかごが停止した階床の階高値情報を取得する階高値情報取得手段と、前記乗りかごの停止位置情報と前記階高値情報から乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差の大きさを検出する段差検出手段と、エレベータの駆動を制御するエレベータ制御装置に対して着床制御補正信号を送信する着床制御補正信号送信手段と、予め設定した判定値を記憶する記憶手段と、を備え、前記段差検出手段は、前記段差の大きさを検出すると、検出した前記段差の大きさの平均値を算出し、前記着床制御補正信号送信手段は、算出した前記段差の大きさの平均値が、前記記憶手段に記憶されている判定値を超えると、前記エレベータ制御装置に対して着床制御補正信号を送信し、前記着床制御補正信号は、前記エレベータ制御装置が前記乗りかごを着床させる際、前記乗りかごの停止位置を特定するために設置される遮蔽板を前記かご位置検出装置が検出してから、前記乗りかごを停止させるまでの距離である制御距離を補正する信号であることを特徴とする。
【0011】
前記目的を達成するために第2の本発明は、乗りかごが起動していずれかの階床に停止したことを検出するステップと、前記乗りかごの階床毎の階高値テーブルから前記乗りかごが停止した階床の階高値情報を取得するステップと、かご位置検出装置から現在の前記乗りかごの停止位置情報を取得するステップと、前記乗りかごの停止位置情報と、前記乗りかごが停止した階床の階高値情報から乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差の大きさを求め、当該階床での前記段差の大きさの平均値を求め、各階床での前記平均値に基づいて当該エレベータ全体の段差の平均値を求め段差算出ステップと、前記平均値が予め定められている判定値を超えていると、エレベータ制御装置に対して着床制御補正信号を送信する送信ステップと、前記着床制御補正信号に基づいて、前記エレベータ制御装置で乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差が無いように前記乗りかごの着床位置を補正するステップと、を有し、前記着床制御補正信号は、前記エレベータ制御装置が前記乗りかごを着床させる際、前記乗りかごの停止位置を特定するために設置される遮蔽板を前記かご位置検出装置が検出してから、前記乗りかごを停止させるまでの距離である制御距離を補正する信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は前述のような構成になっており、同じ階床に設置する複数の遮蔽板や、それに対応する複数の位置検出部は必要としないから、簡易な構成となる。また、かご床と乗り場床の間に段差が発生しても、エレベータ制御装置に対して自動的に補正要求を実行して、乗りかごの停止時に段差のない着床制御を行うことができるから、精度よく乗りかごの着床制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るエレベータの全体の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るエレベータ監視装置の制御フローチャートである。
図3】本発明の実施形態における階高値テーブルの1例を示す図表である。
図4】本発明の実施形態における乗りかごUP走行時の着床レベル計測テーブルの1例を示す図表である。
図5】本発明の実施形態における乗りかごDN走行時の着床レベル計測テーブルの1例を示す図表である。
図6】本発明の実施形態における着床制御の1例を説明するための遮蔽板の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るエレベータの全体の概略構成図である。
図1に示すように、主ロープ1の一端部には乗りかご2が吊り下げられ、主ロープ1の他端部にはカウンターウェイト3が吊り下げられている。
【0015】
この主ロープ1はモータ4の回転駆動軸に巻き掛けられており、モータ4を回転駆動することによって乗りかご2とカウンターウェイト3が釣瓶式に昇降するように構成されている。
【0016】
このモータ4の回転駆動軸にはモータ用ロータリーエンコーダ5が取り付けられており、モータ4の回転に伴ってモータ用ロータリーエンコーダ5から出力されるパルス信号はエレベータ制御装置13に送信される。
【0017】
エレベータ制御装置13ではモータ用ロータリーエンコーダ5からの出力パルスに基づいて、乗りかご2の走行速度ならびに走行距離が算出され、それに基づいて乗りかご2の走行速度制御や着床制御などを行っている。
【0018】
また、各階床には乗りかご2の停止位置を特定するための遮蔽板7(7a,7b,7c)が1枚取り付けられており、この遮蔽板7は縦方向の長さが例えば250mmの板状のものである(図6参照)。
【0019】
さらに乗りかご2には遮蔽板7を検出するための光学式、機械式あるいは磁気式などの位置検出部8が取り付けられている。この位置検出部8による遮蔽板7(7a,7b,7c)の検出信号は、エレベータ制御装置13に入力される。
【0020】
エレベータ制御装置13は停止する目的階床の遮蔽板7(7a,7b,7c)の下端部または上端部を検出すると遮蔽板7の高さ方向半分の長さ(本実施形態では125mm)の距離を移動して停止するように着床制御を行い、乗りかご2が停止したときにかご床と乗り場床(いずれも図示せず)との間に段差が無いように着床される。
【0021】
一方、乗りかご2の側面にはエンドレス状の調速機ロープ11の一部が連結されており、調速機ロープ11は調速機9に巻き掛けされている。また、調速機ロープ11の下端部には調速機ロープ11に所定の張力を付与するための調速機ロープ張り車12が設けられている。これにより調速機9(調速機ロープ11)は、乗りかご2の走行に同期して回転する。
【0022】
さらに調速機9の回転駆動軸には調速機用ロータリーエンコーダ10が取り付けられており、調速機用ロータリーエンコーダ10からの出力パルスはかご位置検出装置14に取り込まれて、乗りかご2の位置を常に監視して、乗りかご2の走行速度ならびに走行距離が算出できるようになっている。
【0023】
主ロープ1の両端部には重量の重い乗りかご2とカウンターウェイト3が吊り下げられており、主ロープ1の途中部分がモータ4の回転駆動軸に巻き掛けられているから、主ロープ1とモータ4の回転駆動軸の間ではスリップが生じ易い。
【0024】
これに対して調速機ロープ11には乗りかご2やカウンターウェイト3などの重量物が吊り下げられておらず、単に乗りかご2の移動に伴って回転するだけであるから、スリップの影響が殆どなく、そのために精度よく乗りかご2の走行速度および走行距離を検出することができる。
【0025】
かご位置検出装置14は、乗りかご2が終端階で正常に停止できず、行き過ぎた場合に、エレベータ制御装置13に対して走行停止を要求する信号を送信して、乗りかご2が終端階での行き過ぎによる事故を防止している。
【0026】
また、かご位置検出装置14は、各階床毎の最下階(1階)からの距離を予め登録した図3に示す階高値テーブルを保持しており、この階高値テーブルに登録されている位置に乗りかご2が停止すると、かご床と乗り場床の段差が0となるように設定されている。
【0027】
図1に示すエレベータ遠隔監視装置15は例えば複数のビルのエレベータを一括して管理するビル管理会社などに設置され、各エレベータに付設されているエレベータ制御装置13の異常などを監視する機能を有している。
【0028】
エレベータ遠隔監視装置15は具体的には、かご位置検出装置データ送受信部16、エレベータ制御装置データ送受信部17、制御部18ならびに記憶部19などを備えており、図1に示すような接続関係になっている。
【0029】
かご位置検出装置データ送受信部16は、かご位置検出装置14からの現在の乗りかご2の位置情報や図3に示す階高値テーブル情報などを受信する機能を有している。
また、エレベータ制御装置データ送受信部17は、エレベータ制御装置13からエレベータに関する各種信号を受信したり、エレベータを制御するための各種信号をエレベータ制御装置13に送信する機能を有している。
【0030】
制御部18は、エレベータ遠隔監視装置15の各種制御を実行するためのマイコンである。また記憶部19は、かご位置検出装置14から受信したかご位置情報を記録したり、エレベータが停止した際に、算出した乗りかご2の着床レベルデータを記録したりするものである。
【0031】
この着床レベルデータは、乗りかご2のUP(上昇)走行とDN(下降)走行別々のテーブルとして各階床毎に着床レベルデータの平均値が記録できるようになっており、図4はUP走行時の着床レベル計測テーブルを示す図表、図5はDN走行時の着床レベル計測テーブルを示す図表である。
【0032】
図4図5のテーブル中の平均値の欄、合計値の欄ならびに計測回数の欄にはすでに数値が記載されているが、エレベータを使用する前は各欄とも数値は無い状態である。例えばエレベータを最初に使用して1階から2階へ乗りかご2を移動させて、2階でのかご床と乗り場床の段差(着床レベル)が3mmであるとすると、エレベータの移動が初回であるから、計測回数は1回、合計値と平均値は共に3mmとなる。
【0033】
例えば図5の1階の欄の数値は、乗りかご2が1階に着床した回数が40回で、1階でのかご床と乗り場床の段差(着床レベル)の40回分のトータルが80mmで、段差(着床レベル)の平均値(80÷40=2mm)が2mmであることを示している。
なお、図1中の符号6は、乗りかご2の上方に設置されているそらせ車であり、そのそらせ車6に主ロープ1が掛けられている。
【0034】
図2はエレベータ遠隔監視装置15の制御フローチャートであり、このエレベータ遠隔監視装置15では、乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差(着床レベル)を検出し、その段差に応じてエレベータ制御装置13に対して着床制御の補正要求信号を送信する制御が行われる。
【0035】
まず、ステップ(以下、Sと略記する)1において、かご位置検出装置14から図3に示した各階床の階高値情報を読込み、それらを記憶部19に格納する。
S2では、エレベータが起動しているか否かを監視し、エレベータが起動していると(S2でYES)S3に進み、エレベータが起動していなければ(S2でNO)さらに起動の監視を続行する。
【0036】
S3では、起動して走行していたエレベータ(乗りかご2)がいずれかの階に停止(着床)したか否かを監視し、エレベータ(乗りかご2)が停止すると(S3でYES)S4に進み、エレベータが停止していなければ(S3でNO)停止の監視を続行する。
【0037】
S4では、乗りかご2が停止した階床をかご位置検出装置14から読み出して、記憶部19にN階(例えば3階)を登録し、S5に進む。
S5では、S1で記憶部19に格納した階高値テーブル(図3参照)からN階(本実施形態では3階)の階高値を読み出して、記憶部19にその階高値M(本実施形態では8535mm)を登録し、S6に進む。
【0038】
S6では、かご位置検出装置14から現在の乗りかご2の停止位置を読み出して、記憶部19に停止位置Tを登録し、S7に進む。
S7では、N階の階高値Mと現在の乗りかご2の停止位置Tの差分(T−M)を求め、着床レベルPとして記憶部19に登録して、S8に進む。
【0039】
S8では、乗りかご2の走行方向がUP走行か否かをチェックして、UP走行(S8でYES)であればS9に進み、DN走行(S8でNO)であればS14に進む。
S9では、S7で算出した着床レベルPをUP着床レベル計測テーブル(図4参照)の該当する階床(本実施形態ではN階)の平均値を算出して登録し、S10に進む。
【0040】
S10では、UP走行全体の着床レベル平均値を算出してUP着床レベル計測テーブルに登録して、S11に進む。
S11では、S10で算出したUP走行全体着床レベル平均値が、予め設定されている判定値を超えているか否かをチェックして、判定値を超えている場合(S11でYES)はS12に進み、判定値以下の場合(S11でNO)はS2に戻る。
なお、本実施形態では前記判定値として、かご床と乗り場床の間の段差によって乗客がが躓き易くなる値として、15mmに設定している。
【0041】
S12では、UP走行着床レベルの値分(段差分)を着床制御補正する必要があるから、エレベータ制御装置13に対して着床レベルの補正要求を送信する。
例えば、S10で算出したUP走行全体着床レベル平均値が+5mmだった場合、エレベータ制御装置13に対して通常の停止位置より−5mmの位置に着床制御するように要求する。
【0042】
図6は、その着床制御を説明するための遮蔽板7の拡大平面図である。位置検出部8(図1参照)が遮蔽板7の中心位置20で停止すると、かご床と乗り場床の間に段差が0となるように遮蔽板7が各階に設置されている。
【0043】
通常は乗りかご2が上昇して所望の階で停止する際、位置検出部8が遮蔽板7の下端部21を検出した後、遮蔽板7の半分の長さの距離(本実施形態では125mm)を走行して、その位置(中心位置20)に停止するように着床制御を行い、かご床と乗り場床の間に段差が無いようにしている。
【0044】
前述のように、S10で算出したUP走行全体着床レベル平均値が+5mmだった場合、エレベータ制御装置13に対して通常の停止位置(中心位置20)より−5mm下側の補正位置22(本実施形態では、遮蔽板7の下端部21から120mmの所)で停止するように要求する。
そしてS13では、UP着床レベル計測テーブルの内容をクリアする。
【0045】
一方、S8で乗りかご2の走行方向がDN走行(S8でNO)の場合はS14において、S7で算出した着床レベルPをDN着床レベル計測テーブル(図5参照)の該当する階床の平均値を算出して登録し、S15に進む。
S15では、DN走行全体の着床レベル平均値を算出してDN着床レベル計測テーブルに登録し、S16に進む。
【0046】
S16では、S15で算出したDN走行全体着床レベル平均値が、予め設定されている判定値を超えているか否かをチェックして、判定値を超えている場合(S16でYES)はS17に進み、判定値以下の場合(S16でNO)はS2に戻る。
【0047】
S17では、DN走行着床レベルの値分(段差分)を着床制御補正する必要があるから、エレベータ制御装置13に対して着床レベルの補正要求信号を送信する。
そしてS18では、DN着床レベル計測テーブルの内容をクリアする。
【0048】
なお、図4図5に示されている平均値、合計値ならびに計測回数は予め決められた日数(例えば1日あるいは数日間)更新しながら蓄積しておき、決められた日数が経過するとS13ならびにS18のテーブルのクリア処理を行うようになっている。
【0049】
前述のS2でのエレベータ起動の有無は、モータ用ロータリーエンコーダ5あるいは調速機用ロータリーエンコーダ10におけるパルスの出力有無によって判断できる。
S3でのエレベータ停止の有無は、位置検出部8からの検出信号の有無、あるいは調速機用ロータリーエンコーダ10におけるパルスの出力有無によって判断できる。
【0050】
S4での乗りかご2の停止階床は、位置検出部8からの検出信号、あるいは調速機用ロータリーエンコーダ10からのパルスカウント値によって判断できる。
S6での乗りかご2の停止位置は、調速機用ロータリーエンコーダ10からのパルスカウント値によって判断できる。
【0051】
本発明では、仮に着床レベルにズレ(段差)が発生してもエレベータ制御装置13に対して自動的に補正要求を実行して、乗りかご2の停止時に段差のない着床制御を行うことができる。
【0052】
前記実施形態では、かご位置検出装置14が図3に示す階高値テーブルを保持している例を示したが、エレベータ遠隔監視装置15が階高値テーブルを保持することも可能である。
【0053】
前記実施形態では、図2のS4において、調速機用ロータリーエンコーダ10からのパルスカウント値に基づいて、かご位置検出装置14で乗りかご2の停止位置を検出しているが、位置検出部8による遮蔽板7(7a,7b,7c)の検出信号をかご位置検出装置14に入力して、遮蔽板7−位置検出部8による検出信号で乗りかご2の停止位置を検出することも可能である。
【0054】
前記実施形態では、乗りかご2の走行に同期して回転するロータリーエンコーダとして調速機用ロータリーエンコーダ10を利用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、乗りかごの走行に同期して回転する他のロータリーエンコーダを用いることも可能である。
【0055】
請求項1に記載の「かご位置検出装置から乗りかごの停止位置情報を取得するかご位置情報取得手段」ならびに「高値情報を取得する階高値情報取得手段」は、本実施形態におけるかご位置検出装置データ送受信部16と対応している。
【0056】
請求項1に記載の「乗りかごの停止位置情報と階高値情報から乗りかご着床時のかご床と乗り場床の段差の大きさを検出する段差検出手段」は、本実施形態における制御部18と対応している。
【0057】
請求項1に記載の「エレベータ制御装置に対して着床制御補正信号を送信する着床制御補正信号送信手段」は、本実施形態におけるエレベータ制御装置データ送受信部17と対応している。
【0058】
請求項1に記載の「予め設定した判定値を記憶する記憶手段」は、本実施形態における記憶部19と対応している。
【符号の説明】
【0059】
1:主ロープ
2:乗りかご
3:カウンターウェイト
7,7a,7b,7c:遮蔽板
8:位置検出部
9:調速機
10:調速機用ロータリーエンコーダ
11:調速機ロープ
13:エレベータ制御装置
14:かご位置検出装置
15:エレベータ遠隔監視装置
16:かご位置検出装置データ送受信部
17:エレベータ制御装置データ送受信部
18:制御部
19:記憶部
20:中心位置
21:下端部
22:補正位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6