特許第6324503号(P6324503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6324503大規模MIMO通信システムのための低複雑度プリコーダ設計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6324503
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】大規模MIMO通信システムのための低複雑度プリコーダ設計
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0426 20170101AFI20180507BHJP
   H04B 7/0456 20170101ALI20180507BHJP
【FI】
   H04B7/0426 100
   H04B7/0456 100
【請求項の数】18
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-524397(P2016-524397)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2016-528785(P2016-528785A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】US2014052213
(87)【国際公開番号】WO2015031175
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】61/870,887
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/465,053
(32)【優先日】2014年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ユエ、 グオセン
(72)【発明者】
【氏名】プラサド、 ナラヤン
(72)【発明者】
【氏名】ランガラジャン、 サンパス
(72)【発明者】
【氏名】オイマク、 サメト
【審査官】 羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−278203(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0252101(US,A1)
【文献】 特開2009−278205(JP,A)
【文献】 特開2010−258713(JP,A)
【文献】 特表2005−527128(JP,A)
【文献】 特開2010−114676(JP,A)
【文献】 特開2011−044940(JP,A)
【文献】 特開2013−058902(JP,A)
【文献】 特開2006−025024(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/075585(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0426
H04B 7/0456
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルの各々が複数のユーザのうちの対応するユーザにサービス提供するように構成可能であるように、プリコーディングを用いて前記複数のチャネルを形成する複数の送信アンテナを備える多入力多出力通信システムに送信プリコーダを提供し、
前記提供するステップは、
前記複数の送信アンテナの各々に、対応する送信アンテナ平均電力制約を課し、
複数の行および複数の列を有する下りリンクチャネル行列に列スケーリングを適用することに応答して、対角プリコーダを決定し、
前記複数のチャネル上で対応する信号を送信する際に得られる重み付き総和レートを最適化することにより、前記対応するアンテナ平均電力制約に従って、前記対角プリコーダから重み付きプリコーダを生成することを以下の手順により行う、
複数のユーザから2人のユーザを無作為に選択し、
重み付き総和レートを決定するための目的関を最大化する二分探索を用いて前記選択された二人のユーザの電力を最適化し、前記複数のユーザのうち、選択されなかった残りのユーザの電力を変更せず、前記複数のユーザから選択された2人のユーザの合計値を変更しない、方法
【請求項2】
前記手順が複数の反復の各々について行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的関数が信号対雑音比に応じて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記目的関数が信号対干渉雑音比に応じて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記2人のユーザのうちの少なくとも1人が前記複数の反復ごとに変更される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記目的関数が前記下りリンクチャネル行列の行正規化の後に最大化される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記対角プリコーダはさらに前記下りリンクチャネル行列の行正規化に応じて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
対応する重み付きプリコーダが、注水定理技法に応じて生成された注水定理プリコーダである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対応する重み付きプリコーダがゼロフォーシングプリコーダである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記重み付き総和レートを計算するのに使用される重みが、前記複数のユーザのうちの相異なるユーザについて異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記下りリンクチャネル行列が、前記複数の送信アンテナおよび前記複数のユーザについて決定された複合チャネル行列である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
最適な重み付き総和レートおよび前記対応するアンテナ平均電力制約に従って、前記複数のチャネルのうちの対応するチャネル上で前記対応する信号を送信することをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
方法を実行するコンピュータ可読プログラムを含むコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ可読プログラムは、コンピュータ上で実行されたとき、前記コンピュータに、
複数のチャネルの各々が複数のユーザのうちの対応するユーザにサービス提供するように構成可能であるように、プリコーディングを用いて前記複数のチャネルを形成する複数の送信アンテナを備える多入力多出力通信システムに送信プリコーダを提供するステップを実行させ、
前記提供するステップは、
前記複数の送信アンテナの各々に、対応する送信アンテナ平均電力制約を課し、
複数の行および複数の列を有する下りリンクチャネル行列に列スケーリングを適用することに応答して、対角プリコーダを決定し、
前記複数のチャネル上で対応する信号を送信する際に得られる重み付き総和レートを最適化することにより、前記対応するアンテナ平均電力制約に従って、前記対角プリコーダから重み付きプリコーダを生成することを以下の手順により行う、
複数のユーザから2人のユーザを無作為に選択し、
重み付き総和レートを決定するための目的関を最大化する二分探索を用いて前記選択された二人のユーザの電力を最適化し、前記複数のユーザのうち、選択されなかった残りのユーザの電力を変更せず、前記複数のユーザから選択された2人のユーザの合計値を変更しない、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記手順が複数の反復の各々について行われる、請求項13に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記目的関数が信号対雑音比に応じて決定される、請求項14に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記目的関数が信号対干渉雑音比に応じて決定される、請求項14に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
対応する重み付きプリコーダが、注水定理技法に応じて生成された注水定理プリコーダである、請求項13に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記重み付き総和レートを計算するのに使用される重みが、前記複数のユーザのうちの相異なるユーザについて異なる、請求項13に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その内容を参照によって本明細書に引用する、2013年8月28日に出願された仮特許出願第61/870,887号に対する優先権を主張するものである。
本発明は、信号処理に関し、より詳細には、大規模多入力多出力(MIMO)通信システムのための低複雑度プリコーダ設計に関する。
【背景技術】
【0002】
多入力多出力(MIMO)システムとしても知られるマルチアンテナシステムは、新世代の高速ワイヤレスおよびセルラシステムにおけるシステムスループットを改善する重要な解決方法であった。MIMO技術は、現在、世界規模で展開されている3GPPロングタームエボリューション(LTE)システムに採用されている。MIMOのチャネル利得をさらに改善するために、シングルユーザ(SU)MIMO向けに最大8つのデータ伝送層を伴ったLTEアドバンスト(LTE−A)規格(3GPP LTEリリース10)では、8本の送信アンテナによる伝送がサポートされている。しかしながら、このような多数のアンテナを、特にスマートフォンなどのユーザ端末側終端に搭載するのは難しいため、空間多重化による大幅な利得の実現は、ワイヤレスベンダにとって魅力の乏しいものとなっている。一方で、システム容量をさらに拡張するため、LTE−A規格には線形プリコーディングによるマルチユーザMIMOが盛り込まれた。同一のチャネルリソースで複数のユーザにサービス提供することで、ユーザごとに1本の受信アンテナしか配備されていない状況でも、ユーザ間にチャネル相関がないことにより、実質的に高次のMIMOを実現できる。
【0003】
最近では、例えば、数十または百を超える多数の送信アンテナを使用したMIMOシステムが注目を集めている。このようなシステムはしばしば大規模MIMOまたはmassive MIMOと称される。大規模構成の送信アンテナでマルチユーザMIMO伝送をサポートする場合、共にスケジュールされるユーザ(co−scheduled users)間のセル内干渉は、非相関チャネルおよびプリコーディング行列によって解消されることがわかっている。したがって、ネットワーク容量の著しい改善が可能である。多数の送信アンテナを伴った、プリコーディングを用いた干渉抑制を実現するには、時分割複信(TDD)システムでは前提とされ得るように、基地局で自局がサービス提供している全ユーザのチャネル情報を完全に把握していることが1つの条件となる。送信アンテナ数がユーザ数に比して多い場合、システム容量はユーザ数に応じて増減する。さらに、大規模MIMOシステムにおいては、整合フィルタベースのプリコーディングと1つの線形受信機で十分でありうるため、送信機側と受信機側双方の信号処理の複雑度が著しく低減する。このようなスループットと複雑度における利点により、大規模MIMOは、スパース可用スペクトル(sparse available spectrum)の現状が反映され関心をますますひきつけ、ワイヤレスデータ需要を飛躍的に増大するようになった。
【0004】
整合フィルタベースのプリコーディングは大規模MIMOシステムにおいて申し分ないパフォーマンスを発揮しうるものの、アンテナ電力制約が課せられる状況で、増幅器の限界に起因する信号ひずみを避けるために、送信機が全送信アンテナ間でプリコーディング後の信号のスケーリングを行わなければならない場合にパフォーマンスが低下する可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
上記および他の欠点ならびに先行技術の不利益は、大規模多入力多出力(MIMO)通信システムのための低複雑度プリコーダ設計を対象とする本原理によって対処される。
【0006】
本原理の一態様による方法が提供される。本方法は、複数の送信アンテナを備える多入力多出力通信システムに送信プリコーダを提供することを有する。複数の送信アンテナは、複数のチャネルの各々が複数のユーザのうちの対応するユーザにサービス提供するように構成可能であるように、プリコーディングを用いて複数のチャネルを形成するものである。この提供するステップは、複数の送信アンテナの各々に、対応する送信アンテナ平均電力制約(average transmit antenna power constraint)を課すことを含む。この提供するステップは、複数の行および複数の列を有する下りリンクチャネル行列に列スケーリング(column scaling)を適用することに応答して、対角プリコーダを決定することをさらに含む。この提供するステップは、複数のチャネル上で対応する信号を送信する際に得られる重み付き総和レート(weighted sum−rate)を最適化することにより、対応するアンテナ平均電力制約に従って、対角プリコーダから重み付きプリコーダ(weighted precoder)を生成することをさらに含む。
【0007】
本原理の別の態様によるコンピュータ可読記憶媒体が提供される。本コンピュータ可読記憶媒体は、方法を実行するコンピュータ可読プログラムを含む。本コンピュータ可読プログラムは、コンピュータ上で実行されたとき、コンピュータに以下の方法を実行させる。その方法は、複数の送信アンテナを備える多入力多出力通信システムに送信プリコーダを提供することを有する。複数の送信アンテナは、複数のチャネルの各々が複数のユーザのうちの対応するユーザにサービス提供するように構成可能であるように、プリコーディングを用いて複数のチャネルを形成するものである。この提供するステップは、複数の送信アンテナの各々に、対応する送信アンテナ平均電力制約を課すことを含む。この提供するステップは、複数の行および複数の列を有する下りリンクチャネル行列に列スケーリングを適用することに応答して、対角プリコーダを決定することをさらに含む。この提供するステップは、複数のチャネル上で対応する信号を送信する際に得られる重み付き総和レートを最適化することにより、対応するアンテナ平均電力制約に従って、対角プリコーダから重み付きプリコーダを生成することをさらに含む。
【0008】
上記および他の特徴ならびに利点は、本原理の例示的実施態様に関する以下の詳細な説明を添付図面と併せて読めば明らかになろう。
【0009】
本開示では、この後、以下の図面を参照しながら好ましい実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本原理の一実施形態による、本原理が適用されうる例示の処理システム100を示すブロック図である。
図2図2は、本原理の一実施形態による、大規模多入力多出力(MIMO)通信システムのためのプリコーダを生成する例示のシステム200を示す。
図3図3は、本原理の一実施形態による、大規模多入力多出力(MIMO)通信システムのためのプリコーダを生成する例示の方法300を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本原理は大規模多入力多出力(MIMO)通信システムのための低複雑度プリコーダ設計を対象とするものである。
【0012】
一実施形態において、まず、列スケーリングを適用した下りリンクチャネル行列によって形成される、対角プリコーダと称される特定のプリコーディング構造を提案する。この符号化構造に基づき、まず注水定理(water filling)を用いたプリコーダ設計を提示する。次に、確率的ペアワイズ二分探索(stochastic pairwise bisection search)アルゴリズムを提案する。マルチユーザ干渉を考慮するために、ゼロフォーシングプリコーダを得るための効率的なアルゴリズムを提示する。
【0013】
本原理は、不均等重み付き総和レート(unequal weighted sum−rate)の最大化、様々な配置関係にあるユーザなどを含むが、これらに限定されない実際のシナリオにおいて、有利に使用することができる。
【0014】
図1は、本原理の一実施形態による、本原理が適用されうる例示の処理システム100を示すブロック図である。処理システム100は、システムバス102を介して他のコンポーネントと動作可能に結合されている、少なくとも1つのプロセッサ(CPU)104を含んでいる。キャッシュ106、読み出し専用メモリ(ROM)108、ランダムアクセスメモリ(RAM)110、入力/出力(I/O)アダプタ120、サウンドアダプタ130、ネットワークアダプタ140、ユーザインターフェースアダプタ150、およびディスプレイアダプタ160は、システムバス102に動作可能に結合されている。
【0015】
第1の記憶装置122および第2の記憶装置124は、I/Oアダプタ120によってシステムバス102に動作可能に結合されている。記憶装置122および124は、ディスク記憶装置(例えば、磁気記憶装置または光学ディスク記憶装置)、固体磁気装置などのいずれであってもよい。記憶装置122および124は、同じタイプの記憶装置であっても異なるタイプの記憶装置であってもよい。
【0016】
スピーカ132は、サウンドアダプタ130によってシステムバス102に動作可能に結合されている。送受信機142は、ネットワークアダプタ140によってシステムバス102に動作可能に結合されている。ディスプレイ装置162は、ディスプレイアダプタ160によってシステムバス102に動作可能に結合されている。
【0017】
第1のユーザ入力装置152、第2のユーザ入力装置154、および第3のユーザ入力装置156は、ユーザインターフェースアダプタ150よってシステムバス102に動作可能に結合されている。ユーザ入力装置152、154、および156は、キーボード、マウス、キーパッド、画像取込装置、動作検知装置、マイクロフォン、前述の装置のうち少なくとも2つの装置の機能を組み込んだ装置などのいずれであってもよい。言うまでもなく、本原理の趣旨を維持する限りにおいては、他のタイプの入力装置を使用してもかまわない。ユーザ入力装置152、154、および156は、同じタイプのユーザ入力装置であっても異なるタイプのユーザ入力装置であってもよい。ユーザ入力装置152、154、および156は、システム100との間で情報を入力および出力するのに用いられる。
【0018】
また、当然ながら、処理システム100は、当業者であれば容易に考えられるような他の要素(図示せず)を含んでいてもよく、特定の要素を除外してもよい。例えば、当業者であれば容易に理解できるように、処理システム100には、その固有の実現に応じて他の様々な入力装置および/または出力装置を含めることができる。例えば、無線および/または有線による種々の入力装置および/または出力装置を使用することができる。さらに、当業者であれば容易に理解できるように、様々な構成において追加のプロセッサ、コントローラ、メモリなどもまた利用することができる。処理システム100の上記および他の変形例は、本明細書で提供される本原理の教示により当業者であれば容易に考えられるものであろう。
【0019】
さらに、以下に図2を用いて説明するシステム200は、本原理の各実施形態を実現するシステムであることが理解されよう。処理システム100の一部または全部は、システム200の1つまたは複数の要素として実現されてもよい。
【0020】
さらに、処理システム100が、例えば、図3の方法300の少なくとも一部など、本明細書において説明する方法の少なくとも一部を実行してもよいと理解されるべきである。同様に、システム200の一部または全部を用いて、図3の方法300の少なくとも一部を実行してもよい。
【0021】
図2は、本原理の一実施形態による、大規模多入力多出力(MIMO)通信システムのためのプリコーダを生成する例示のシステム200を示す。図2の実施形態において、通信システム200は送信アンテナのセットを備えている。チャネルのセットのうちの対応する各チャネルが、ユーザのセットのうち対応するユーザにサービス提供するために同時に使用可能となるように、プリコーディングにより、そのチャネルのセットを作成するために、このセット内のアンテナを用いることができる。
【0022】
システム200は、アンテナ制約決定装置210、対角プリコーダジェネレータ220、および重み付きプリコーダジェネレータ230を含んでいる。重み付きプリコーダジェネレータ230は、反復確率的電力配分ペアワイズ二分探索部(iterative stochastic power allocation pairwise bisection searcher)240を含んでいる。
【0023】
アンテナ制約決定装置210は、複数の送信アンテナの各々に、対応する送信アンテナ平均電力制約を課す。
【0024】
対角プリコーダジェネレータ220は、下りリンクチャネル行列に列スケーリングを適用するのに応じて、対角プリコーダを生成する。下りリンクチャネル行列は、下りリンクチャネルの状態(パラメータ)を示す係数を含んでいる。
【0025】
重み付きプリコーダジェネレータ230は、チャネルのセットのうちの対応するチャネル上で対応する信号を送信する際に得られる重み付き総和レートを最適化することにより、対応するアンテナ平均電力制約に従って、対角プリコーダから重み付き注水定理ベースプリコーダ(weighted water filling based precoder)を生成する。
【0026】
重み付きプリコーダジェネレータ230は、重み付き注水定理プリコーダ(weighted water filling precoder)271、SNRベース重み付き対角最適化プリコーダ(SNR−based weighted diagonal optimized precoder)272、SINRベース重み付き対角最適化プリコーダ(SINR−based weighted diagonal optimized precoder)273、およびゼロフォーシングプリコーダ274のうちのいずれかを生成することができる。SINRベース重み付き対角最適化プリコーダ272はSINRベースの重み付き総和レートを最適化するため、SINRベース重み付き対角最適化プリコーダ272は、チャネルのセット内でゼロフォーシングプリコーダが除去しようとする相互干渉も考慮に入れる。一実施形態において、ゼロフォーシングプリコーダ274は、重み付き注水定理プリコーダ271、SNRベース重み付き対角最適化プリコーダ272、およびSINRベース重み付き対角最適化プリコーダ273のうちのいずれからも得ることができる。
【0027】
図3は、本原理の一実施形態による、大規模多入力多出力(MIMO)通信システムのためのプリコーダを生成する例示の方法300を示す。図3の実施形態では、対応する通信システムが送信アンテナのセットを備えている。チャネルのセットのうちの対応する各チャネルが、ユーザのセットのうち対応するユーザにサービス提供するために同時に使用可能となるように、プリコーディングにより、そのチャネルのセットを作成するために、このセット内のアンテナを用いることができる。
【0028】
ステップ310で、セット内の送信アンテナの各々に、対応する送信アンテナ平均電力制約を課す。
【0029】
ステップ320で、行のセットおよび列のセットを有する下りリンクチャネル行列に列スケーリングを適用することに応答して、対角プリコーダを決定する。
【0030】
ステップ330で、チャネルのセットのうちの対応するチャネル上で対応する信号を送信する際に得られる重み付き総和レートを最適化することにより、対応するアンテナ平均電力制約に従って、対角プリコーダから重み付きプリコーダを生成し、チャネルのセットは、送信アンテナ上でプリコーディングを使用することによって作成される。一実施形態では、これらのウェイト(weights)は、例えば、ユーザ優先度、ユーザサービス品質などに対応していてもよい。ステップ330では、少なくとも図2を参照して示し、説明したプリコーダ271から274のうちのいずれも生成できるものと理解されるべきである。
【0031】
本明細書に記載した実施形態は、完全にハードウェアであってもよく、完全にソフトウェアであってもよく、またはハードウェアとソフトウェアの両方の要素を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、本発明は、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含むがこれらに限定されないソフトウェアにおいて実現される。
【0032】
実施形態には、コンピュータもしくは任意の命令実行システムによって使用されるか、またはこれらに関連して使用されるプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体からアクセスすることができる、コンピュータプログラム製品が含まれてもよい。コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体には、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって使用されるか、またはこれらに関連して使用されるプログラムを格納、伝達、伝播、または移送する任意の装置が含まれてもよい。該媒体は、磁気、光学、電子、電磁気、赤外線、または半導体システム(または装置もしくはデバイス)、あるいは伝播媒体であってよい。該媒体には、半導体または固体メモリ、磁気テープ、取り外し可能なコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、剛性の磁気ディスク、および光ディスクなどの、コンピュータ可読媒体が含まれてもよい。
【0033】
例えば、「A/B」、「Aおよび/またはB」、および「AおよびBのうちの少なくとも1つ」の場合における「/」、「および/または」、および「うちの少なくとも1つ」のうちのいずれかの使用は、1番目に挙げた選択肢(A)のみの選択、2番目に挙げた選択肢(B)のみの選択、または両方の選択肢(AおよびB)の選択を包含することを意図したものと理解すべきである。さらに例を挙げれば、「A、B、および/またはC」および「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」の場合、このような表現法は、1番目に挙げた選択肢(A)のみの選択、2番目に挙げた選択肢(B)のみの選択、3番目に挙げた選択肢(C)のみの選択、1番目および2番目に挙げた選択肢(AおよびB)のみの選択、1番目および3番目に挙げた選択肢(AおよびC)のみの選択、2番目および3番目に挙げた選択肢(BおよびC)のみの選択、または3つの選択肢すべて(AおよびBおよびC)の選択を包含することを意図したものである。上述の例は、当業者には容易に明らかとなるように、列挙される多数の項目に応じて拡大適用されうる。
【0034】
上述の説明は、すべての点で説明および例示のためのものであり、限定的なものではないと理解されるべきであり、本明細書で開示される本発明の範囲は、詳細な説明(Detailed Description)から決定されるのではなく、特許法によって許可される最大範囲に従って解釈されるように特許請求の範囲から決定されるべきである。追加情報は、「追加情報(Additional Information)」と題する本願付属書類にて提供される。本明細書で示され、説明された実施形態は本発明の原理の例証にすぎないということ、さらに当業者であれば本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく様々な変形例を実施できるということを理解すべきである。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、他の様々な特徴の組み合わせを実施できるであろう。
図1
図2
図3