(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
骨材と、結合材であるガラス中に強化粒子であるムライト粒子が分散されたものであり細孔を形成した状態で前記骨材同士を結合する複合結合材と、を含有する多孔質材料の製造方法であって、
強化粒子である前記ムライト粒子を、焼成により生成させ、
強化粒子である前記ムライト粒子のアスペクト比の下限値が1.5であり、上限値が4.7である、多孔質材料の製造方法。
前記複合結合材生成用原料が、34.9質量%超、71.8質量%未満の酸化アルミニウム成分、28.2質量%超、52.0質量%未満の二酸化珪素成分、及び5.00質量%超、13.8質量%未満の酸化マグネシウム成分を含有するものである請求項2に記載の多孔質材料の製造方法。
前記酸化アルミニウム成分が酸化アルミニウムであり、当該酸化アルミニウムの平均粒子径の下限値が2.5μmであり、上限値が15.0μmである請求項3に記載の多孔質材料の製造方法。
前記複合結合材生成用原料が、板状アルミナを含有し、当該板状アルミナのアスペクト比の下限値が5であり、上限値が70である請求項2〜4のいずれかに記載の多孔質材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0019】
(1)多孔質材料:
本発明の多孔質材料の一の実施形態は、
図1に示されるように、骨材1と、「結合材3であるガラス中に強化粒子2であるムライト粒子が分散されたものであり細孔4を形成した状態で上記骨材1同士を結合する複合結合材5」と、を含有するものである。
図1は、本発明の多孔質材料の一の実施形態(多孔質材料100)の断面を拡大して示す模式図である。
【0020】
本発明の多孔質材料は、上記のような構成であるため、強度の絶対値が高く、且つ、「強度/ヤング率比」の値が高いものである。そのため、本発明の多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れたものである。尚、「強度/ヤング率比」における「強度」は、曲げ強度のことである。本発明の多孔質材料においては、ムライト粒子が強化粒子として機能している。例えば、多孔質材料に亀裂が生じたときに、ムライト粒子は、当該亀裂の進行を妨げることができる。結合材であるガラスには、ムライト粒子以外に、スピネル粒子やフォルステライト粒子が含有され得る。しかし、スピネル粒子やフォルステライト粒子は、ムライト粒子に比べて強度が低いため、強化粒子として機能し得ないものである。これに対し、ムライト粒子は、スピネル粒子やフォルステライト粒子に比べて、強度が高いため、多孔質材料に生じた亀裂の進行を妨げることができ、強化粒子として機能するものである。また、スピネル粒子やフォルステライト粒子は、熱膨張係数が高いため、結合材中に存在すると多孔質材料全体の熱膨張係数が高くなり、多孔質材料の耐熱衝撃性が低下する。そのため、スピネル粒子やフォルステライト粒子は、強化粒子としては適しておらず、本発明の多孔質材料には含まれていないことが好ましい。
【0021】
本発明の多孔質材料は、上記のように、骨材間に細孔が形成されるように、骨材同士が複合結合材で結合されている。また、複合結合材は、結合材であるガラス中に、強化粒子であるムライト粒子が分散されたものである。また、骨材の一部が結合材中に分散するような形態でも良い。また、多孔質材料中には、金属珪素が含有されていてもよいが、含有されていない方がよい。骨材、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する金属珪素の質量の比率は、15質量%未満が好ましく、10質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以下が特に好ましく、0質量%(含有されないこと)が最も好ましい。金属珪素の含有量が15質量%未満であることより、比熱容量が高く維持されるため、耐熱衝撃性が向上する。金属珪素の含有量が15質量%以上であると、比熱容量が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0022】
また、複合結合材は、結晶質成分が50質量%以下であることが好ましい。つまり、複合結合材は、非晶質成分(ガラス成分)が50質量%以上であることが好ましい。複合結合材中の非晶質成分(ガラス成分)は、X線回折データを解析して定量することができる。具体的には、基準物質の量を変更しながら、基準物質の(110)面の回折ピーク高さと、ガラスを示すハローパターンの最大高さの比を算出し、検量線を作成する。そして、測定対象のX線回折を行い、当該検量線により、測定対象に含有される非晶質成分(ガラス成分)の定量を行う。また、測定対象に含有されるムライトの定量は、ムライトの(110)面の回折ピーク高さと、ガラスを示すハローパターンの最大高さの比を算出し、検量線を作成する。そして、測定対象のX線回折を行い、当該検量線により、測定対象に含有されるムライトの定量を行う。測定は、多孔質材料を粉砕した粉末を測定試料とし、回転対極型X線回折装置(理学電気社製、RINT)を用いて行うことができる。基準物質としては、複合結合材中に結晶質成分(ムライトを除く)として存在する物質が好ましく、例えば、結晶相としてコージェライトが含有される場合には、コージェライトが好ましい。
【0023】
本発明の多孔質材料において、ガラスは、MgO、Al
2O
3及びSiO
2を含有するとともに、Na
2O、K
2O及びCaOからなる群から選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。さらに、ガラスは、MgO、Al
2O
3及びSiO
2を含有するとともに、Na
2O及びCaOからなる群から選択される少なくとも一種を含有するものであることが更に好ましい。Na
2O、K
2O、CaOをガラスに含ませる方法としては、Na、K、Caを含む化合物(例えば、Na
2CO
3、K
2CO
3、CaCO
3)を原料に添加する方法を挙げることができる。また、ガラス原料として、Na、K、Caを含む原料を用いる方法を挙げることができる。また、成形体を焼成する際の、焼成雰囲気に、Na、K、Caを共存させる方法を挙げることができる。最終生成物中のNa
2O、K
2O及びCaOのそれぞれの含有量は、添加物量や、原料中の濃度や、焼成雰囲気中の濃度によってコントロールすることができる。
【0024】
本発明の多孔質材料は、ナトリウム(Na)を、酸化物換算質量で、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満含有してもよい。また、本発明の多孔質材料は、カリウム(K)を、酸化物換算質量で、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満含有してもよい。また、本発明の多孔質材料は、カルシウム(Ca)を、酸化物換算質量で、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満含有してもよい。ナトリウムの酸化物換算質量は、ナトリウムが全てNa
2Oとして存在していると仮定したときの当該Na
2Oの質量である。カリウムの酸化物換算質量は、カリウムが全てK
2Oとして存在していると仮定したときの当該K
2Oの質量である。カルシウムの酸化物換算質量は、カルシウムが全てCaOとして存在していると仮定したときの当該CaOの質量である。ナトリウム、カリウム及びカルシウムのそれぞれの含有量が、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満であれば、多孔質材料の特性は、これらの物質を含有することによっては影響を受けない。また、酸化物換算で、2.0質量%未満のFeや0.4質量%未満のTiを含有しても良い。多孔質材料中の、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)及びチタン(Ti)の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)−AES(発光分光分析)法で測定した値である。
【0025】
本発明の多孔質材料において、骨材は、炭化珪素(SiC)粒子及び窒化珪素(Si
3N
4)粒子の中の少なくとも一方を含有するものであることが好ましい。また、骨材は、炭化珪素(SiC)粒子又は窒化珪素(Si
3N
4)粒子であることが好ましく、炭化珪素(SiC)粒子であることが更に好ましい。以下、骨材が炭化珪素粒子である場合の、本発明の多孔質材料及びハニカム構造体の実施形態について説明するが、本発明の多孔質材料及びハニカム構造体は、これに限定されるものではない。また、本発明の多孔質材料及びハニカム構造体は、骨材が窒化珪素粒子の場合も、骨材が炭化珪素粒子の場合と同様の条件であることが好ましい。
【0026】
本発明の多孔質材料は、気孔率の下限値が40%であることが好ましく、50%であることが更に好ましい。また、気孔率の上限値は、90%であることが好ましく、70%であることが更に好ましい。気孔率が40%未満であると、圧力損失が大きくなることがある。特に、気孔率が50%以上であると、DPF等に使用するのに好ましい、低い圧力損失となる。また、気孔率が90%を超えると、強度が低くなることがある。特に、気孔率が70%以下であると、DPF等に使用するのに好ましい、高い強度となる。本明細書において、気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積(単位:cm
3/g)とアルキメデス法により測定した見掛け密度(単位:g/cm
3)から、算出した値である。気孔率を算出する際には、「気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛け密度)+全細孔容積}×100」という式を用いる。なお、気孔率は、例えば、多孔質材料を製造する際に用いる造孔材の量や、焼結助剤量、焼成雰囲気などにより調整することができる。また、気孔率は、骨材と、複合結合材との比率によっても調整することができる。
【0027】
本発明の多孔質材料は、平均細孔径の下限値が10μmであることが好ましく、15μmであることが更に好ましい。また、平均細孔径の上限値は、40μmであることが好ましく、30μmであることが更に好ましく、25μmが最も好ましい。平均細孔径が10μm未満であると、圧力損失が大きくなることがある。平均細孔径が40μmを超えると、本発明の多孔質材料をDPF等として用いたときに、排ガス中の粒子状物質の一部が捕集されずにDPF等を透過することがある。本明細書において、平均細孔径は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)で測定した値である。
【0028】
本発明の多孔質材料は、細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下であることが好ましい。細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%を超えると、細孔径10μm未満の細孔は触媒を担持する際に詰まり易いため、圧力損失が増大し易くなることがある。細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%を超えると、細孔径40μmを超える細孔は粒子状物質が通過し易いため、DPF等のフィルター機能を十分に発揮し難くなることがある。
【0029】
骨材及び複合結合材の合計質量に対する、複合結合材の含有量の比率の下限値は、12質量%であることが好ましく、17質量%であることが更に好ましく、20質量%であることが特に好ましい。骨材及び複合結合材の合計質量に対する、複合結合材の含有量の比率の上限値は、50質量%であることが好ましく、40質量%であることが更に好ましく、35質量%であることが特に好ましい。複合結合材の含有量が12質量%未満であると、曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。複合結合材の含有量が50質量%を超えると、気孔率が小さくなることがある。
【0030】
多孔質材料中の骨材の含有量は、以下のようにして求めることができる。骨材が炭化珪素(炭化珪素粒子)の場合、化学分析(ICP発光法)を行い、定量されたC(炭素)全てが炭化珪素に起因するとして、炭化珪素量を算出する。骨材が窒化珪素(窒化珪素粒子)の場合、「JIS R 1603に準拠する方法で定量した窒素(N)」全てが窒化珪素に起因するとして、窒化珪素量を算出する。
【0031】
多孔質材料中の複合結合材の含有量は、以下のようにして求めた値である。複合結合材中に金属珪素が含有されない場合には、骨材以外は全て複合結合材として、多孔質材料の量から骨材の量を差し引いて、複合結合材の含有量を算出する。また、複合結合材中に金属珪素が含有される場合には、以下のようにして複合結合材の含有量を求める。まず、化学分析(ICP発光法)により、Si以外の成分の酸化物量を算出する。そして、化学分析により定量されたO(酸素)量から、「Si以外の成分の、酸化物」に含有される酸素量を差し引き、残ったO(酸素)量は全てSiO
2中のO(酸素)として、SiO
2量を算出する。そして、化学分析で求めたSi量から、SiO
2に含有されるSiを差し引いて、残存したSi量を、金属珪素量とする。そして、骨材(SiC、Si
3N
4)量と金属珪素量の和を、多孔質材料全体の量から差し引いた値を、複合結合材の含有量とする。
【0032】
ムライト粒子の含有量の、骨材及び複合結合材の合計質量に対する比率の下限値は、0.5質量%であることが好ましい。また、ムライト粒子の含有量の、骨材及び複合結合材の合計質量に対する比率の上限値は、15質量%であることが好ましい。そして、上記ムライト粒子の含有量の下限値は、0.9質量%であることが更に好ましい。また、上記ムライト粒子の含有量の上限値は8.0質量%であることが更に好ましく、4.5質量%であることが特に好ましい。ムライト粒子の、骨材及び複合結合材の合計質量に対する含有率(以下、「ムライト粒子の含有率」ということがある。)が、0.5質量%未満であると、強度/ヤング率比が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。また、ムライト粒子の含有率が、15質量%を超えると、強度/ヤング率比が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。ムライト粒子は、複合結合材中に含有され、強化粒子として作用するものである。
【0033】
「ムライト粒子の含有率」は、X線回折分析によって得られた値に基づき求めた値である。具体的には、ムライトの(110)面の回折ピーク高さと、ガラスを示すハローパターンの最大高さの比を算出し、検量線を作成する。そして、測定対象のX線回折を行い、当該検量線により、複合結合材に含有されるムライトの含有率を求める。測定は、多孔質材料を粉砕した粉末を測定試料とし、回転対極型X線回折装置(理学電気社製、RINT)を用いて行うことができる。そして、複合結合材の量に、上記ムライトの含有率(複合結合材中の含有率)を掛けて、ムライトの量(質量)を求める。そして、得られたムライトの量(質量)を、骨材及び複合結合材の合計質量で除算して、ムライト粒子の含有率を求める。
【0034】
本発明の多孔質材料においては、骨材である炭化珪素粒子の平均粒子径の下限値が5μmであることが好ましく、10μmであることが更に好ましい。また、骨材である炭化珪素粒子の平均粒子径の上限値は、100μmであることが好ましく、40μmであることが更に好ましい。5μmより小さいと、焼成収縮量が大きくなり、焼成体の気孔率が40%未満となることがある。また焼成体中の10μm未満の細孔が細孔全体の20%超となることがある。100μmより大きいと、焼成体中の40μmを超える細孔が細孔全体の10%以上となることがある。さらに、ハニカム構造体を成形する場合には、口金の目詰まりの原因となり成形不良を起こすことがある。本発明の多孔質材料においては、骨材である炭化珪素の平均粒子径は、強化粒子であるムライト粒子の平均粒子径より大きい。また、骨材である炭化珪素の平均粒子径は、強化粒子であるムライト粒子の平均粒子径の1.5倍以上であることが好ましい。骨材である炭化珪素の平均粒子径の、強化粒子であるムライト粒子の平均粒子径に対する倍率の上限値は、40倍であることが好ましい。炭化珪素の平均粒子径が、ムライト粒子の平均粒子径の1.5倍より小さいと、結合材との接点が減少するため焼成不良を起こすことがある。そして、それによって曲げ強度が大きく低下し、耐熱衝撃性が劣ることがある。
【0035】
本発明の多孔質材料においては、ムライト粒子のアスペクト比が1.5以上であ
る。ムライト粒子のアスペクト比の下限値は、1.8であることが更に好ましく、2.1であることが特に好ましい。ムライト粒子のアスペクト比の上限値は、4.7であ
り、4.2であることが更に好ましい。アスペクト比が1.5未満であると、強化粒子として作用する効果が低くなるために曲げ強度が低くなり、更に「曲げ強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下す
る。尚、アスペクト比が4.7を超える場合、ムライト粒子の形状は、板状又は繊維状である。ムライト粒子のアスペクト比は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定した値である。具体的には、樹脂にて包含した本発明の多孔質材料をダイヤモンドスラリー等を用いて鏡面研磨したものを観察試料とし、この断面研磨面を3000倍の倍率で観察し、微構造写真を得る。得られた微構造写真中の全てのムライト粒子の長径と短径を測定し、その比率「長径/短径」を算出し、微構造写真中のムライト粒子の個数で平均した値を、ムライトのアスペクト比とする。
【0036】
本発明の多孔質材料においては、ムライト粒子の長径の下限値が0.5μmであることが好ましく、1.8μmであることが更に好ましく、2.0μmであることが特に好ましい。ムライト粒子の長径の上限値は、35μmであることが好ましく、30.1μmであることが更に好ましい。ムライト粒子の長径が0.5μm未満であると、強化粒子として作用し難くなるために曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。ムライト粒子の長径が35μmを超えると、強化粒子ではなく欠陥として作用し曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0037】
本発明の多孔質材料は、曲げ強度が6.5MPa以上であり、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」が1.4×10
−3以上であることが好ましい。そして、曲げ強度の下限値が7.0MPaであり、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」の下限値が1.5×10
−3であることが更に好ましい。また、曲げ強度の上限値が25.0MPaであり、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」の上限値が5.0×10
−3であることが更に好ましい。曲げ強度及び「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」を上記範囲とすることにより、多孔質材料の耐熱衝撃性を向上させることができる。なお、曲げ強度は高いほどよいが、本発明の構成上、50MPa程度が上限となる。本明細書において、曲げ強度は、JIS R1601に準拠した「曲げ試験」により測定した値である。また、本明細書において、ヤング率は、上記「曲げ試験」で得た「応力−歪み曲線」より算出した値である。
【0038】
本発明の多孔質材料は、40〜800℃の熱膨張係数(線熱膨張係数)が、4.6×10
−6/K以下であることが好ましい。そして、40〜800℃の線熱膨張係数の下限値が、2.0×10
−6/Kであることが好ましい。また、40〜800℃の線熱膨張係数の上限値が、3.9×10
−6/Kであることが更に好ましい。4.6×10
−6/Kより大きいと、耐熱衝撃性が低下することがある。尚、線熱膨張係数は小さいに越したことはないが、本発明の構成上、2.0×10
−6/Kが下限となる。本明細書において、熱膨張係数は、JIS R1618に準拠する方法で、測定した値である。
【0039】
(2)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体は、上述した本発明の多孔質材料により構成され、「一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル」を区画形成する隔壁、を備えたものである。上記セルは、流体の流路となるものである。また、ハニカム構造体は、最外周に位置する外周壁を有する構造であることが好ましい。隔壁の厚さの下限値は、30μmが好ましく、50μmが更に好ましい。隔壁の厚さの上限値は、1000μmが好ましく、500μmが更に好ましく、350μmが特に好ましい。セル密度の下限値は、10セル/cm
2が好ましく、20セル/cm
2が更に好ましく、50セル/cm
2が特に好ましい。セル密度の上限値は、200セル/cm
2が好ましく、150セル/cm
2が更に好ましい。
【0040】
ハニカム構造体の形状としては、特に限定されず、円筒状、底面が多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)の筒状等を挙げることができる。
【0041】
ハニカム構造体のセルの形状は、特に限定されない。例えば、セルの延びる方向に直交する断面におけるセル形状としては、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)、円形、またはこれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0042】
ハニカム構造体の大きさは、用途に合わせて適宜決定することができる。本発明のハニカム構造体は、本発明の多孔質材料によって構成されているため、耐熱衝撃性に優れるものである。そのため、ハニカム構造体の大きさを大きくすることが可能である。そして、ハニカム構造体の大きさの下限値としては、例えば、10cm
3程度とすることができる。ハニカム構造体の大きさの上限値としては、例えば、2.0×10
4cm
3程度とすることができる。
【0043】
本発明のハニカム構造体は、DPFや触媒担体として用いることができる。また、DPFに触媒を担持することも好ましい態様である。本発明のハニカム構造体をDPF等として使用する場合には、以下のような構造であることが好ましい。すなわち、本発明のハニカム構造体は、一方の端面における所定のセルの開口部及び他方の端面における残余のセルの開口部、に配設された目封止部を備えるものであることが好ましい。両端面において、目封止部を有するセルと目封止部を有さないセルとが交互に配置され、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0044】
本発明のハニカム構造体の熱膨張係数(線熱膨張係数)の好ましい範囲は、上記本発明の多孔質材料の熱膨張係数(線熱膨張係数)の好ましい範囲と同じである。そして、本発明のハニカム構造体の熱膨張係数(線熱膨張係数)は、以下の方法で測定した値である。すなわち、ハニカム構造体から縦3セル×横3セル×長さ20mmの試験片を切り出し、40〜800℃のA軸方向(ハニカム構造体の流路に対して平行方向)の熱膨張係数を測定した値である。
【0045】
(3)多孔質材料(ハニカム構造体)の製造方法:
本発明の多孔質材料の製造方法について、以下に説明する。以下に説明する多孔質材料の製造方法は、多孔質材料によって構成される「ハニカム構造体」を製造する方法でもある。
【0046】
本発明の多孔質材料の製造方法は、成形工程と焼成工程とを有するものである。成形工程は、骨材原料、複合結合材生成用原料、造孔材及びバインダを含有する成形原料を押出成形して成形体を作製する工程である。焼成工程は、成形体を不活性雰囲気にて1400〜1500℃で焼成して多孔質材料を作製する工程である。複合結合材生成用原料は、「34.9質量%超、71.8質量%未満」の酸化アルミニウム成分、「28.2質量%超、52.0質量%未満」の二酸化珪素成分、及び「5.00質量%超、13.8質量%未満」の酸化マグネシウム成分を含有するものである。
【0047】
以下、本発明の多孔質材料の製造方法を、工程毎に説明する。
【0048】
まず、骨材となる骨材原料と、焼成により複合結合材が生成する複合結合材生成用原料粉末とを混合し、必要に応じて、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、成形原料を作製する。骨材原料は、炭化珪素(SiC)及び窒化珪素(Si
3N
4)の中の少なくとも一方を含有するものであることが好ましい。複合結合材生成用原料は、焼成により「強化粒子であるムライト粒子」及び「結合材であるガラス」が生成するものである。上記のように、複合結合材生成用原料は、「34.9質量%超、71.8質量%未満」の酸化アルミニウム(Al
2O
3)成分を含有することが好ましい。また、複合結合材生成用原料は、「28.2質量%超、52.0質量%未満」の二酸化珪素(SiO
2)成分を含有することが好ましい。また、複合結合材生成用原料は、「5.00質量%超、13.8質量%未満」の酸化マグネシウム(MgO)成分を含有することが好ましい。複合結合材生成用原料中の酸化アルミニウム成分、二酸化珪素成分及び酸化マグネシウム成分をこのような比率にすることにより、焼成により「強化粒子であるムライト粒子」及び「結合材であるガラス」を生成させることが可能となる。酸化アルミニウム成分とは、酸化アルミニウム又は「水酸化アルミニウム、カオリン、ベーマイト、長石等の、アルミニウム及び酸素を含有する原料中の、酸化アルミニウムの組成比となる「アルミニウム及び酸素」」のことである。そして、「酸化アルミニウム成分の質量」とは、酸化アルミニウム成分中のアルミニウムの酸化物換算質量(Al
2O
3の質量)のことである。酸化アルミニウム成分が酸化アルミニウムである場合、平均粒子径の下限値は2.5μmであることが好ましく、平均粒子径の上限値は15.0μmであることが好ましい。また、上記酸化アルミニウムはα−アルミナであることが好ましい。二酸化珪素成分とは、二酸化珪素又は「タルク、カオリン、長石等の、珪素及び酸素を含有する原料中の、二酸化珪素の組成比となる「珪素及び酸素」」のことである。酸化マグネシウム成分とは、酸化マグネシウム又は「水酸化マグネシウム、タルク等の、マグネシウム及び酸素を含有する原料中の、酸化マグネシウムの組成比となる「マグネシウム及び酸素」」のことである。また、複合結合材生成用原料粉末には、アルミニウム成分の原料(アルミニウム(Al)源)として、Al−Siファイバー、Al
2O
3ファイバー、板状アルミナ、粗粒Al
2O
3、カオリン等が含有されていることが好ましい。Al−Siファイバーは、二酸化珪素成分の原料でもある。このとき、板状アルミナの長径の下限値が0.5μmであることが好ましい。また、板状アルミナの長径の上限値は15μmであることが好ましい。また、板状アルミナの短径(厚さ)の下限値が0.01μmであることが好ましい。また、板状アルミナの短径(厚さ)の上限値が1μmであることが好ましい。また、板状アルミナの幅の下限値が0.05μmであることが好ましい。また、板状アルミナの幅の上限値が70μmであることが好ましい。また、板状アルミナのアスペクト比の下限値が、5であることが好ましい。また、板状アルミナのアスペクト比の上限値が、70であることが好ましい。また、アルミナファイバーは、長さが200μm以下であることが好ましい。また、アルミナファイバーは、短径が3μm以下であることが好ましい。また、アルミナファイバーは、アスペクト比が、3以上であることが好ましい。粗粒Al
2O
3の平均粒子径は、2.5〜15μmが好ましい。また、マグネシウム(Mg)成分の原料(マグネシウム(Mg)源)としては、MgO又はMg(OH)
2が好ましい。また、Si(珪素)成分の原料(珪素(Si)源)としては、カオリン、粉末シリカ、及びコロイダルシリカが好ましい。「短径」及び「長径」は、SEMで観察し得た原料粉末の画像から、長径、短径を測定した値である。更に具体的には、SEMによって、1500倍視野の画像(原料の画像)を3視野観察する。各視野の観察においては、それぞれの視野に含まれている全ての粒子を観察の対象とする。そして、3つの視野における全ての粒子の短径及び長径について、3視野分全体で平均して、「短径」及び「長径」を求める。平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0049】
骨材原料は、炭化珪素(SiC)粉末又は窒化珪素(Si
3N
4)粉末であることが更に好ましい。骨材原料の平均粒子径の下限値は、5μmが好ましく、10μmが更に好ましい。骨材原料の平均粒子径の上限値は、100μmが好ましく、40μmが更に好ましい。平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0050】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0051】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0052】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径の下限値は10μmであることが好ましい。また、造孔材の平均粒子径の上限値は30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。尚、造孔材が吸水性樹脂の場合、平均粒子径は、吸水後の値である。
【0053】
水の含有量は、成形しやすい坏土硬度となるように適宜調整されるが、成形原料全体に対して20〜80質量%であることが好ましい。
【0054】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0055】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体(成形体)を形成する(成形工程)。尚、坏土も成形原料の概念に含まれる。押出成形には、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。このように、骨材原料、複合結合材生成用原料、造孔材及びバインダを含有する成形原料を押出成形して成形体を作製する工程が成形工程である。
【0056】
こうして得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0057】
次に、ハニカム成形体のセルの延びる方向における長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0058】
次に、ハニカム成形体(成形体)を焼成して、ハニカム構造体(多孔質材料)を作製する(焼成工程)。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気において、200〜600℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。焼成は、窒素、アルゴン等の非酸化雰囲気(不活性雰囲気)下(酸素分圧は10
−4気圧以下)で行うことが好ましい。焼成温度の下限値は1300℃であることが好ましい。焼成温度の上限値は1600℃であることが好ましい。また、焼成温度は、1400〜1500℃であることが好ましい。焼成時の圧力は常圧であることが好ましい。焼成時間の下限値は、1時間であることが好ましい。焼成時間の上限値は、20時間であることが好ましい。このように、成形体を不活性雰囲気にて所定温度で焼成して多孔質材料を作製する工程が焼成工程である。また、焼成後、耐久性向上のために、大気中(水蒸気を含んでいてもよい)で、酸化処理を行ってもよい。酸化処理の温度の下限値は1100℃であることが好ましい。酸化処理の温度の上限値は1400℃であることが好ましい。酸化処理の時間の下限値は、1時間であることが好ましい。酸化処理の時間の上限値は、20時間であることが好ましい。なお、仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
【0059】
[1] 骨材と、結合材であるガラス中に強化粒子であるムライト粒子が分散されたものであり細孔を形成した状態で前記骨材同士を結合する複合結合材と、を含有する多孔質材料であって、前記ガラスが、MgO、Al
2O
3及びSiO
2を含有するとともに、Na
2O、K
2O及びCaOからなる群から選択される少なくとも一種の酸化物を、それら各酸化物につき、前記多孔質材料全体に対して0.4質量%未満(ただし、0質量%は除く。)含有する多孔質材料。
【0060】
[2] 前記骨材及び前記複合結合材の合計質量に対する、前記複合結合材の含有量の比率の下限値が12質量%であり、前記複合結合材の含有量の比率の上限値が50質量%である[1]に記載の多孔質材料。
【0061】
[3] 前記骨材及び前記複合結合材の合計質量に対する、前記ムライト粒子の含有量の比率の下限値が0.5質量%であり、前記ムライト粒子の含有量の比率の上限値が15質量%である[1]又は[2]に記載の多孔質材料。
【0062】
[4] 強化粒子である前記ムライト粒子の長径の下限値が0.5μmであり、前記ムライト粒子の長径の上限値が35μmである[1]〜[3]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0063】
[5] 前記骨材が、炭化珪素(SiC)粒子及び窒化珪素(Si
3N
4)粒子の中の少なくとも一方を含有するものである[1]〜[4]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0064】
[6] 気孔率の下限値が40%であり、気孔率の上限値が90%である[1]〜[5]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0065】
[7] 細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0066】
[8] 曲げ強度が6.5MPa以上であり、曲げ強度/ヤング率比が1.4×10
−3以上である[1]〜[7]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0067】
[9] 熱膨張係数が4.6×10
−6/K以下である[1]〜[8]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0068】
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質材料により構成され、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する、隔壁を備えたハニカム構造体。
【0069】
[11] 前記一方の端面における所定の前記セルの開口部及び前記他方の端面における残余の前記セルの開口部、に配設された目封止部を備える[10]に記載のハニカム構造体。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と複合結合材生成用原料粉末とを、95.0:5.0(質量比)の比率で混合して「混合粉末」を作製した。複合結合材生成用原料粉末としては、水酸化アルミニウムを48.8質量%、タルクを31.3質量%、シリカを20.0質量%含有する粉末を用いた。複合結合材生成用原料(結合材生成用原料)の組成及び各成分について、表3に示す。複合結合材生成用原料(粉末)中の酸化アルミニウム成分の含有率は、39.0質量%であった。また、複合結合材生成用原料(粉末)中の二酸化珪素成分の含有率は、48.7質量%であった。また、複合結合材生成用原料(粉末)中の酸化マグネシウム成分の含有率は、12.2質量%であった。そして、上記「混合粉末」に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材としてデンプン、吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。バインダの含有量は混合粉末を100質量部としたときに、7質量部であった。造孔材の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、12質量部であった。水の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、70質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は22.0μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。なお、炭化珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0072】
次に、成形原料を混練し、土練して円柱状の坏土を作製した。そして、得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を得た。
【0073】
得られたハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて550℃で3時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で2時間焼成してハニカム焼成体を得た。そして、得られたハニカム焼成体を、1200℃で4時間、酸化処理を行ってハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)を得た。
【0074】
このときのハニカム構造体の、隔壁の厚さは300μmであり、セル密度は46.5(セル/cm
2)であった。また、ハニカム構造体の外周壁の厚さは、1.0mmであった。外周壁は、隔壁とともに、上記焼成によって形成されたものである。また、ハニカム構造体の底面は一辺が35mmの四角形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは50mmであった。
【0075】
ハニカム構造体(多孔質材料)の、炭化珪素(又は、窒化珪素)、ムライト及びガラスの同定を行った。炭化珪素(又は、窒化珪素)、ムライト及びガラスの同定は、粉末X線回折による構成相の同定とともに、EPMAによる定性・定量分析及び元素マッピングの結果に基づいて行った。これにより、ハニカム構造体は、炭化珪素(又は、窒化珪素)、ムライト及びガラスを含むことが確認された。ガラス成分については、表2に示す。表2において、「CaO含有率」及び「Na
2O含有率」は、「CaO」及び「Na
2O」のそれぞれの、多孔質材料全体における含有率を示す。
【0076】
ムライト粒子のアスペクト比は3.4であった。また、ムライト粒子の長径の長さは2.3μmであった。また、「ムライトの含有率」は1.0質量%であった。そして、多孔質材料中の複合結合材の含有量は5.0質量%であった。ムライト粒子の長径及びアスペクト比は、以下の方法で測定した。また、ムライト粒子の含有率は、後述する方法で測定した。また、得られた多孔質材料中の金属珪素の含有率は、0.00質量%であり、金属珪素は含まれていなかった。
【0077】
得られたハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)の気孔率は65.0%であり、平均細孔径は18.0μmであった。また、「10μm以下の細孔容積率」は16.5%であった。また、「40μm以下の細孔容積率」は4.8%であった。また、ハニカム構造体の曲げ強度は3.1MPaであり、ヤング率は1.6GPaであり、「強度/ヤング率比」は、1.9×10
−3であった。尚、「強度/ヤング率比」の「強度」は、「曲げ強度」である。また、ハニカム構造体の熱膨張係数(40−800℃)は4.6ppm・K
−1であった。また、ハニカム構造体の比熱容量は、2.20J/(cm
3・K)であった。得られた結果を表1に示す。なお、各測定値は、以下に示す方法によって求めた値である。
【0078】
表1において、「結合材」の欄は、炭化珪素粒子及び複合結合材の合計質量に対する、複合結合材の「各成分及び合計」の質量比率(質量%)を示す。尚、各表においては、「複合結合材」を単に「結合材」と表示している。また、金属珪素の欄は、炭化珪素粒子、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、金属珪素の含有率を示す。また、「ムライトのアスペクト比」の欄は、「多孔質材料中のムライト粒子」のアスペクト比を示す。また、「ムライトの長径」の欄は、「多孔質材料中のムライト粒子」の長径を示す。また、「気孔率」及び「平均細孔径」の欄は、多孔質材料の気孔率及び平均細孔径を示す。また、「10μm以下の細孔容積率」及び「40μm以上の細孔容積率」の欄は、多孔質材料の、それぞれの細孔容積率を示す。また、「曲げ強度」、「ヤング率」及び「熱膨張係数」の欄は、多孔質材料の曲げ強度、ヤング率及び熱膨張係数を示す。また、「強度/ヤング率比」の欄は、曲げ強度(Pa)をヤング率(Pa)で除した値を示す。また、「比熱容量」の欄は、室温での、多孔質材料の比熱容量を示す。
【0079】
また、表1において、「総合評価」の欄は、A〜Cが合格、Dが不合格であることを示す。また、A〜Cの中では、「A」が最も耐熱衝撃性に優れていることを示す。また、「B」が「A」の次に耐熱衝撃性に優れていることを示し、「C」が「B」の次に耐熱衝撃性に優れていることを示す。尚、「D」は、耐熱衝撃性に劣ることを示す。総合評価Aの条件は、曲げ強度10MPa以上、熱膨張係数4.6ppm/K以下、「強度/ヤング率比」1.6以上、及び比熱容量が2.05J/(cm
3・K)以上の全ての条件を満たしていることである。また、総合評価Bの条件は、曲げ強度5.0MPa以上、熱膨張係数4.6ppm/K以下、「強度/ヤング率比」1.6以上、及び比熱容量が2.05J/(cm
3・K)以上の全ての条件を満たしていることである。また、総合評価Cの条件は、曲げ強度3MPa超、熱膨張係数4.6ppm/K以下、及び比熱容量が2.05J/(cm
3・K)以上の全ての条件を満たしていることである。また、総合評価Dの条件は、曲げ強度3MPa以下、熱膨張係数4.6ppm/K超の中の、少なくとも一つの要件を満たしていることである。
【0080】
(骨材及び複合結合材の含有量)
骨材が炭化珪素の場合、化学分析(ICP発光法)を行い、定量されたC(炭素)全てが炭化珪素に起因するとして、炭化珪素量を算出する。骨材が窒化珪素の場合、「JIS R 1603に準拠する方法で定量した窒素(N)」全てが窒化珪素に起因するとして、窒化珪素量を算出する。そして、複合結合材中に金属珪素が含有されない場合、骨材以外は全て複合結合材として、複合結合材の含有量を算出する。また、複合結合材中に金属珪素が含有される場合には以下のようにして複合結合材の含有量を求める。まず、Si以外の成分の酸化物量を算出する。そして、化学分析により定量されたO(酸素)量から、Si以外の成分の酸化物に含有される酸素量を差し引き、残ったO(酸素)量は全てSiO
2中のO(酸素)としてSiO
2量を算出する。そして、化学分析で求めたSi量から、SiO
2に含有されるSiを差し引いて、残存したSi量を金属珪素量とする。そして、骨材(SiC、Si
3N
4)量と金属珪素量の和を、多孔質材料全体の量から差し引いた値が、複合結合材の含有量である。
【0081】
(複合結合材中の各成分の質量比率)
多孔質材料(ハニカム構造体)における、複合結合材(ガラス、ムライト粒子、結晶質成分)中の各成分の質量比率は以下のようにして求める。まず、ガラスとムライトを含み、ガラスの量に対するムライトの量を変更した「複数の粉末サンプル」を作製する。そして、ガラスとコージェライト(基準物質)を含み、ガラスの量に対するコージェライトの量を変更した「複数の粉末サンプル」を作製する。作製したそれぞれのサンプルについてX線回折測定を行なう。得られたX線回折パターンより、ガラスを示すハローパターンの最大高さとムライトの(110)面の回折ピーク高さの比を算出して、検量線とする。そして、ガラスを示すハローパターンの最大高さとコージェライトの(100)面の回折ピーク高さの比を算出し、検量線とする。そして、各実施例、比較例のサンプルのX線回折測定を行ない、上記検量線を用いて、複合結合材中の各成分の比率を算出する。そして、多孔質材料中の結合材量を、各成分の比率で各成分に分配し、各成分の質量比率を算出する。X線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機製、RINT)を用いる。X線回折測定の条件は、CuKα線源、50kV、300mA、2θ=10〜60°とする。X線回折データの解析は、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて行った。
【0082】
(金属珪素の質量比率)
多孔質材料(ハニカム構造体)における、金属珪素の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)−AES(発光分光分析)法により求める。具体的には、ICP−AES法で測定したSi、C、Oから、SiCとSiO
2量を同定し、残りのSi量を求め、金属珪素の含有量とする。
【0083】
(ガラス中の各成分)
ガラス中の各成分(ガラスを構成する成分)は、化学分析(ICP発光法)により検出する。表2に、ガラス中の各成分の名称と、ガラス中の成分の中の、CaO及びNa
2Oの含有率を示している。
【0084】
(ムライト粒子のアスペクト比)
ムライト粒子のアスペクト比(ムライトのアスペクト比)は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定する。具体的には、樹脂にて包含した多孔質材料の断面をダイヤモンドスラリーを用いて鏡面研磨したものを観察試料とする。そして、観察試料の断面研磨面を3000倍の倍率で観察し、微構造写真を得る。得られた微構造写真中の全てのムライト粒子の長径と短径を測定し、その比率「長径/短径」を算出し、微構造写真中のムライト粒子の個数で平均した値を、ムライトのアスペクト比とする。
【0085】
(ムライト粒子の長径)
ムライト粒子の長径は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定する。具体的には、樹脂にて包含した多孔質材料の断面をダイヤモンドスラリーを用いて鏡面研磨したものを観察試料とする。そして、観察試料の断面研磨面を3000倍の倍率で観察し、微構造写真を得る。得られた微構造写真中の全てのムライト粒子の長径を測定し、微構造写真中のムライト粒子の個数で平均した値を、ムライト粒子の長径(ムライトの長径)とする。
【0086】
(気孔率)
気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積[cm
3/g]と、アルキメデス法により測定した見掛密度[g/cm
3]から算出する。気孔率の算出に際しては、「開気孔率(%)=100×全細孔容積/{(1/見掛密度)+全細孔容積}」の式を用いる。「全細孔容積」の測定(水銀圧入法)には、ハニカム構造体から「縦3セル×横3セル×長さ20mm」の大きさに切り出した試験片を用いる。また、見掛密度の測定(アルキメデス法)には、「20mm×20mm×0.3mm」の大きさ(ほぼ、20mm×20mmの大きさの1枚の隔壁)に切り出した試験片を用いる。
【0087】
(平均細孔径)
ハニカム構造体から、「縦3セル×横3セル×長さ20mm」の大きさの試験片を切り出し、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により測定する。
【0088】
(細孔容積率)
「10μm以下の細孔容積率」及び「40μm以上の細孔容積率」は、以下のようにして測定する。上記「平均細孔径」の場合と同様の試験片を用いて、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により全細孔容積、細孔径が40μm以上である細孔の細孔容積、細孔径が10μm以下である細孔の細孔容積を測定する。そして、「10μm以下の細孔容積率」は10μm以下の細孔容積/全細孔容積、「40μm以上の細孔容積率」は40μm以上の細孔容積/全細孔容積の式で算出する。
【0089】
(曲げ強度(強度))
ハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片(縦0.3mm×横4mm×長さ40mm)に加工し、JIS R1601に準拠した曲げ試験により曲げ強度を算出する。
【0090】
(ヤング率)
上記「曲げ強度」の測定方法により「応力−歪曲線」を作成し、当該「応力−歪曲線」の傾きを算出する。得られた「応力−歪曲線の傾き」をヤング率とする。
【0091】
(熱膨張係数)
JIS R1618に準拠する方法で、ハニカム構造体から縦3セル×横3セル×長さ20mmの試験片を切り出し、40〜800℃のA軸方向(ハニカム構造体の流路に対して平行方向)の平均線熱膨張係数(熱膨張係数)を測定する。
【0092】
(比熱容量)
ハニカム構造体の外周壁から、直径5mm×厚さ1.0mmの円盤状の測定試料を切り出す。得られた測定試料を用いてJIS R1611に準拠する方法で、室温における比熱を測定する。更に、測定試料について、アルキメデス法で、見かけ密度を測定する。そして、得られた比熱の値と見かけ密度との積を比熱容量(J/(cm
3・K))とする。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
(実施例2〜18、比較例1〜5)
各条件を表1〜3に示すものとした以外は実施例1と同様にして多孔質材料(ハニカム構造体)を作製した。実施例1の場合と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。尚、実施例18においては、骨材として、炭化珪素(SiC)ではなく、窒化珪素(Si
3N
4)を用いている。
【0097】
表1より、実施例1〜18の多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れていることが分かる。また、比較例1〜5の多孔質材料は、耐熱衝撃性に劣ることが分かる。