(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各燃料電池セルに対するガス供給量の差は小さい方が好ましい。しかしながら、従来の燃料電池スタックは、ガス導入口に近い各燃料電池セルへのガス供給量が低くなるなど、各燃料電池セルに対するガス供給量の差が大きいという問題があった。そこで本発明は、各燃料電池セルへのガス供給量の差を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある側面に係るマニホールドは、燃料電池セルにガスを供給するように構成されている。このマニホールドは、底壁と、側壁と、上壁と、ガス拡散部材と、を備えている。側壁は、ガス導入口を有している。また、側壁は、底壁から上方に延びる。上壁は、燃料電池セルが取り付けられるように構成されている。底壁、側壁、及び上壁によって、マニホールドの内部空間が画定されている。ガス拡散部材は、マニホールドの内部空間に配置されている。また、ガス拡散部材は、ガス導入口と対向するように配置されている。
【0006】
この構成によれば、ガス分散部材がガス導入口と対向するように配置されているため、ガス導入口からマニホールドの内部空間に導入されたガスは、ガス分散部材に衝突し、分散される。この結果、各燃料電池セルに対するガス供給量の差が低減される。
【0007】
好ましくは、ガス分散部材は、緻密体である。この構成によれば、マニホールドの内部空間に導入されたガスは、ガス分散部材に衝突し、ガス分散部材を回避するように分散される。
【0008】
好ましくは、ガス分散部材は、多孔質体である。この構成によれば、マニホールドの内部空間に導入されたガスは、ガス分散部材内に侵入して分散される。
【0009】
好ましくは、ガス分散部材は、板状であり、上方に向かってガス導入口に近付くように傾斜する。
【0010】
好ましくは、ガス分散部材は、板状であり、上方に向かってガス導入口から離れるように傾斜する。
【0011】
好ましくは、側壁は、上方に向かって外方に広がるように傾斜する第1傾斜部を有する。そして、ガス導入口は、第1傾斜部に形成される。この構成によれば、ガス導入口からマニホールドの内部空間に導入されたガスは、上方に向かって拡散される。
【0012】
好ましくは、側壁の全体は、第1傾斜部として構成される。すなわち、側壁全体が、上方に向かって外方に広がるように傾斜している。
【0013】
好ましくは、側壁は、下方に向かって外方に広がるように傾斜する第2傾斜部を有する。そして、ガス導入口は、第2傾斜部に形成される。
【0014】
好ましくは、側壁の全体は、第2傾斜部として構成される。すなわち、側壁全体が、下方に向かって外方に広がるように傾斜している。
【0015】
好ましくは、側壁は、一対の第1側壁と、一対の第2側壁とを有している。各第1側壁は、第1方向において互いに対向する。各第2側壁は、第1方向と直交する第2方向において互いに対向する。
【0016】
好ましくは、ガス導入口は、一対の第1側壁のうち一方の第1側壁に形成されている。ガス導入口が形成された第1側壁は、第1傾斜部として構成される。すなわち、ガス導入口が形成された第1側壁の全体が、上方に向かって外方に広がるように傾斜している。
【0017】
好ましくは、第1側壁と第2側壁との第1境界部の内側面は、R形状である。
【0018】
好ましくは、底壁と側壁との第2境界部の内側面は、R形状である。
【0019】
好ましくは、マニホールドは、側壁の上端部から外方に延びる第1フランジ部をさらに備える。上壁は、第1フランジ部に固定される。
【0020】
好ましくは、側壁と第1フランジ部との第3境界部の内側面は、R形状である。
【0021】
好ましくは、第3境界部と上壁との間に第1隙間部が形成される。この第1隙間部を有さないマニホールドに比べて、この第1隙間部においてマニホールドが変形しやすくなる。このため、例えば、マニホールドに燃料電池セルを接合材によって固定している場合において、その接合材に生じる応力が低減するため、燃料電池スタックの信頼性が向上する。
【0022】
好ましくは、上壁と側壁との第4境界部の内側面は、R形状である。
【0023】
好ましくは、マニホールドは、側壁の下端部から外方に延びる第2フランジ部をさらに備える。底壁は、第2フランジ部に固定される。
【0024】
好ましくは、側壁と第2フランジ部との第5境界部の内側面は、R形状である。
【0025】
好ましくは、第5境界部と底壁との間に第2隙間部が形成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、各燃料電池セルへのガス供給量の差を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[燃料電池スタック]
以下、本発明に係るマニホールドが採用された燃料電池スタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1〜
図3に示すように、燃料電池スタック100は、複数の燃料電池セル1と、マニホールド2と、を備えている。
【0029】
[マニホールド]
マニホールド2は、各燃料電池セル1にガスを分配するように構成されている。マニホールド2は、中空状であり、内部空間を有している。マニホールド2の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスなどのガスが導入される。マニホールド2は、この内部空間と外部とを連通する複数の貫通孔27を有している。
【0030】
マニホールド2は、各燃料電池セル1を支持している。マニホールド2は、マニホールド本体21と、上壁22とを備えている。マニホールド本体21と上壁22とは、互いに別部材であって接合されている。なお、マニホールド本体21と上壁22とは、一体的に形成されていてもよい。このマニホールド本体21と上壁22とによって、マニホールド2の内部空間を画定している。
【0031】
マニホールド本体21は、略直方体状であって、上面が開口した内部空間を有する。詳細には、マニホールド本体21は、錐台状である。マニホールド本体21は、底壁23と、一対の第1側壁24と、一対の第2側壁25と、を有している。また、マニホールド本体21は、第1フランジ部26を有していてもよい。
【0032】
底壁23は、平面視(x軸方向視)において、矩形状である。各第1側壁24及び各第2側壁25は、底壁23の周縁部から上方に延びている。一対の第1側壁24は、マニホールド2の内部空間の奥行き方向(z軸方向)において、互いに対向するように配置されている。また、一対の第2側壁25は、マニホールド2の内部空間の幅方向(y軸方向)において、互いに対向するように配置されている。なお、奥行き方向(z軸方向)は、本発明の第1方向に相当する。また、幅方向(y軸方向)は、本発明の第2方向に相当する。
【0033】
図4及び
図5に示すように、第1側壁24及び第2側壁25は、上方に向かって外方に広がるように傾斜している。すなわち、第1側壁24及び第2側壁25の全体は、本発明の第1傾斜部として構成されている。特に限定されるものではないが、例えば、第1側壁24及び第2側壁25と、底壁23とがなす角度αは、90.1〜135°程度とすることができる。このように第1側壁24及び第2側壁25が傾斜しているため、マニホールド2の内部空間を底壁23と平行な面(yz平面)で切断した断面積は、上方にいくにつれて大きくなる。また、マニホールド2の内部空間を、底壁23に垂直で幅方向(y軸方向)に延びる面(xy平面)で切断した断面は、台形状となっている。また、マニホールド2の内部空間を、底壁23に垂直で奥行方向(z軸方向)に延びる面(xz平面)で切断した断面は、台形状となっている。
【0034】
一対の第1側壁24のうち一方の第1側壁24は、ガス導入口241を有している。このガス導入口241が形成された第1側壁24に、導入管201が取り付けられる。例えば、
図5に示すように、導入管201は、第1側壁24の外側面に当接されている。そして、導入管201の流路とガス導入口241とが連通している。なお、導入管201は底壁23に対して平行に取り付けられていなくてもよい。ガス導入口241は、第1側壁24の幅方向(y軸方向)の中央に形成されていることが好ましい。このガス導入口241から、マニホールド2の内部空間にガスが導入される。
【0035】
ガス導入口241は、奥行き方向(z軸方向)に開口している。また、ガス導入口241が形成された第1側壁24が上方を向くように傾斜しているため、ガス導入口241も上方を向くように傾斜している。ガス導入口241は、円形状に形成されている。
【0036】
マニホールド2の内部空間に導入されるガスの流速は、ガス導入口241において、0.60〜45m/s程度とすることが好ましい。なお、この流速は、燃料電池セル1の発電時、0℃・1atm換算における流速である。流速は、マニホールド2内に導入される流量とマニホールド2の内部空間の断面積とから算出することができる。
【0037】
図5及び
図6に示すように、マニホールド2は、ガス分散部材29をさらに有している。ガス分散部材29は、マニホールド2の内部空間に配置されている。ガス分散部材29は、ガス導入口241と対向するように配置されている。すなわち、ガス導入口241からマニホールド2の内部空間に導入されたガスが衝突するように、ガス分散部材29が配置されている。なお、ガス分散部材29は、奥行き方向(z軸方向)において、中央よりもガス導入口241側に配置されていることが好ましい。より好ましくは、ガス分散部材29は、奥行き方向において、ガス導入口241から5〜200mm程度、離れるように配置されている。
【0038】
ガス分散部材29は、板状である。ガス分散部材29は、底壁23から上方に延びている。ガス分散部材29は、例えば、底壁23に溶接されている。ガス分散部材29と上壁22との間には隙間が形成されている。なお、ガス分散部材29と上壁22とは互いに接触していてもよい。すなわち、ガス分散部材29と上壁22との間に隙間が形成されていなくてもよい。ガス分散部材29は、内部空間の幅方向(y軸方向)において、各第2側壁25との間に隙間を形成している。
【0039】
ガス分散部材29は、緻密体によって構成されている。例えば、ガス分散部材29の気孔率は、10%以下である。より具体的には、ガス分散部材29は、金属板などによって構成することができる。ガス導入口241からマニホールド2の内部空間に導入されたガスは、ガス分散部材29に衝突して分散される。詳細には、ガス分散部材29に衝突したガスは、その流速を低減させて、ガス分散部材29と各第2側壁25との隙間を介してガス導入口241から遠ざかる方向へと流れる。
【0040】
図3及び
図4に示すように、第1フランジ部26は、各第1側壁24及び各第2側壁25の上端部から外方に延びている。第1フランジ部26は、環状である。
【0041】
マニホールド本体21は、1つの部材によって構成されている。すなわち、底壁23と各第1側壁24と各第2側壁25と各第1フランジ部26とは、1つの部材によって構成されている。例えば、マニホールド本体21は、耐熱性を有するような金属あるいは絶縁性セラミックスによって形成される。より具体的には、マニホールド本体21は、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、及びNi基合金、MgO(酸化マグネシウム)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)、MgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)、MgO・SiO
2(ステアタイト)、及び2MgO・SiO
2(フォルステライト)よりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されている。
【0042】
図6に示すように、第1側壁24と、第2側壁25との第1境界部20aの内側面は、R形状である。この第1境界部20aの内側面の曲率半径は、3〜30mm程度とすることができる。なお、第1境界部20aの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0043】
図4及び
図7に示すように、底壁23と、第1側壁24及び第2側壁25との第2境界部20bの内側面は、R形状である。この第2境界部20bの内側面の曲率半径は、2〜20mm程度とすることができる。なお、第2境界部20bの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0044】
第1側壁24及び第2側壁25と、第1フランジ部26との第3境界部20cの内側面は、R形状である。この第3境界部20cの内側面の曲率半径は、1〜10mm程度とすることができる。なお、第3境界部20cの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0045】
図7に示すように、マニホールド2の内部空間の高さ方向(x軸方向)において、第3境界部20cと上壁22との間に第1隙間部28が形成されている。すなわち、上壁22の下面と第1フランジ部26の上面とは接触している一方、上壁22の下面と第3境界部20cの内側面とは接触していない。第1隙間部28は、全周に亘って形成されている。
【0046】
図4に示すように、上壁22は、マニホールド本体21の上面を塞ぐように、マニホールド本体21上に配置されている。詳細には、上壁22は、第1フランジ部26に固定されている。マニホールド2の内部空間を密閉するため、上壁22が全周に亘ってマニホールド本体21と接合されている。例えば、上壁22とマニホールド本体21とは、結晶化ガラスによって接合されている。上壁22は、上述したマニホールド本体21の材料の少なくとも一種から形成することができる。
【0047】
図8に示すように、上壁22は、各燃料電池セル1が取り付けられるように構成されている。詳細には、上壁22は、複数の貫通孔27を有している。各貫通孔27は、マニホールド2の幅方向(y軸方向)に延びている。また、各貫通孔27は、マニホールド2の奥行き方向(z軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0048】
図6及び
図7に示すように、マニホールド2の内部空間は、互いに直交する奥行きD、幅W、及び高さHを有している。奥行きDは、ガスの導入方向(z軸方向)における内部空間の寸法である。すなわち、奥行きDは、一対の第1側壁24間の距離である。
【0049】
幅Wは、平面視(x軸方向視)において奥行きDと直交する方向における内部空間の寸法である。すなわち、幅Wは、一対の第2側壁25間の距離である。また、高さHは、奥行きD及び幅Wと直交する方向における内部空間の寸法である。すなわち、高さHは、上壁22と底壁23との距離である。
【0050】
内部空間の奥行きDは、50〜450mm程度とすることができる。また、内部空間の幅Wは、30〜200mm程度とすることができる。また、内部空間の高さHは5〜50mm程度とすることができる。
【0051】
[燃料電池セル]
図1から
図3に示すように、各燃料電池セル1は、マニホールド2に取り付けられている。各燃料電池セル1は、マニホールド2から上方に延びている。詳細には、各燃料電池セル1は、マニホールド2の上壁22から上方に延びている。燃料電池セル1の下端部101は、貫通孔27内に挿入されている。この際、燃料電池セル1の下端部は上壁22から5mmほど下方に突出していてもよい。燃料電池セル1の長手方向(x軸方向)の長さは100〜300mm程度とすることができる。なお、燃料電池セル1の下端部101が貫通孔27内に挿入された状態において、燃料電池セル1の下端部101の外周面と貫通孔27の内壁面との間には隙間が形成されている。この隙間に第1接合材3が充填されていてもよい。
【0052】
各燃料電池セル1は、マニホールド2の奥行き方向(z軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。なお、
図1では各燃料電池セル1が1列に配置されているが、各燃料電池セル1は、複数列に配置されていてもよい。燃料電池セル1の枚数は、1列につき1〜50枚程度である。各燃料電池セル1は、各主面が奥行き方向(z軸方向)を向くように配置されている。各燃料電池セル1は、第1集電部材4を介して互いに電気的に接続されている。第1集電部材4は、各燃料電池セル1の間に配置されており、隣り合う各燃料電池セル1を接続している。なお、第1集電部材4は、第2接合材5によって各燃料電池セル1に接合されている。第1集電部材4は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、第1集電部材4は、酸化物セラミックスの焼成体又は金属などによって形成されている。
【0053】
図9に示すように、燃料電池セル1は、複数の発電素子部11と、支持基板12とを備えている。各発電素子部11は、支持基板12の両面に支持されている。なお、各発電素子部11は、支持基板12の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部11は、燃料電池セル1の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル1は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0054】
各発電素子部11は、電気的接続部17(
図10参照)によって互いに電気的に接続されている。また、燃料電池セル1の上端部102側において、支持基板12の一方面に形成された発電素子部11と他方面に形成された発電素子部11とが第2集電部材6(
図2参照)によって電気的に接続されている。なお、各発電素子部11は、直列に接続されている。
【0055】
図3に示すように、支持基板12は、支持基板12の長手方向(x軸方向)に延びる複数のガス流路121を内部に有している。ガス流路121は、マニホールド2の内部空間と連通している。各ガス流路121は、支持基板12の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、各ガス流路121は、マニホールド2の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置される。各ガス流路121の面積は、0.1〜30mm
2程度とすることができる。
【0056】
支持基板12の長手方向(x軸方向)は、燃料電池セル1の長手方向と同じ方向である。各ガス流路121は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路121は、支持基板12の長手方向の両端面において開口している。
【0057】
図10に示すように、支持基板12は、複数の第1凹部123を有している。各第1凹部123は、支持基板12の両面に形成されている。各第1凹部123は支持基板12の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0058】
支持基板12は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板12は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板12は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板12の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0059】
各発電素子部11は、燃料極13、電解質14、及び空気極15を有している。また、各発電素子部11は、反応防止膜16をさらに有している。燃料極13は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極13は、燃料極集電部131と燃料極活性部132とを有する。
【0060】
燃料極集電部131は、第1凹部123内に配置されている。詳細には、燃料極集電部131は、第1凹部123内に充填されており、第1凹部123と同様の外形を有する。各燃料極集電部131は、第2凹部131a及び第3凹部131bを有している。燃料極活性部132は、第2凹部131a内に配置されている。詳細には、燃料極活性部132は、第2凹部131a内に充填されている。
【0061】
燃料極集電部131は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部131は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部131の厚さ、並びに第1凹部123の深さは、50〜500μm程度である。
【0062】
燃料極活性部132は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部132は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部132の厚さは、5〜30μmである。
【0063】
電解質14は、燃料極13上を覆うように配置されている。詳細には、電解質14は、あるインターコネクタ171から次のインターコネクタ171まで長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル1の長手方向において、電解質14とインターコネクタ171とが交互に配置されている。
【0064】
電解質14は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質14は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質14は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質14の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0065】
反応防止膜16は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜16は、電解質14と空気極15との間に配置されている。反応防止膜16は、電解質14内のYSZと空気極15内のSrとが反応して電解質14と空気極15との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0066】
反応防止膜16は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜16は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜16の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0067】
空気極15は、反応防止膜16上に配置されている。空気極15は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極15は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極15は、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極15は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極15の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0068】
電気的接続部17は、隣り合う発電素子部11を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部17は、インターコネクタ171及び空気極集電部172を有する。インターコネクタ171は、第3凹部131b内に配置されている。詳細には、インターコネクタ171は、第3凹部131b内に埋設(充填)されている。インターコネクタ171は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ171は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ171は、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ171の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0069】
空気極集電部172は、インターコネクタ171と空気極15との間を延びるように配置される。例えば、
図10の左側に配置された発電素子部11の空気極15と、インターコネクタ171とを電気的に接続するように、空気極集電部172が配置されている。空気極集電部172は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。
【0070】
空気極集電部172は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部172は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部172は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部172の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0071】
図11に示すように、燃料電池セル1の下端部101は、緻密膜18によって覆われている。詳細には、緻密膜18は、支持基板12を覆っている。緻密膜18は、空気極集電部172と支持基板12との間から下方に向かって延びている。
【0072】
緻密膜18は、緻密膜18の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜18の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。このガスシール機能を発揮するため、この緻密膜18の気孔率は、例えば、10%以下である。また、緻密膜18は、絶縁性セラミックスで構成されている。
【0073】
具体的には、緻密膜18は、上述した電解質14と反応防止膜16とによって構成することができる。緻密膜18を構成する電解質14は、支持基板12を覆っており、インターコネクタ171から支持基板12の下端近傍まで延びている。また、緻密膜18を構成する反応防止膜16は、電解質14と空気極集電部172との間に配置されている。なお、緻密膜18は、電解質14のみで構成されていてもよいし、電解質14及び反応防止膜16以外の材料によって構成されていてもよい。
【0074】
[第1接合材]
第1接合材3は、燃料電池セル1をマニホールド2に固定する。詳細には、第1接合材3は、燃料電池セル1とマニホールド2の上壁22とを接合している。第1接合材3は、燃料電池セル1の下端部101とマニホールド2の上壁22とを接合している。また、第1接合材3は、緻密膜18と接触している。
【0075】
第1接合材3は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、又はSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第1接合材3の材料として、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第1接合材3は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0076】
[発電方法]
以上のように構成された燃料電池スタック100は、次のようにして発電する。マニホールド2を介して各燃料電池セル1のガス流路121内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板12の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質14の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池スタック100を外部の負荷に接続すると、空気極15において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極13において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
【0077】
[製造方法]
次に、上述したように構成された燃料電池スタックの製造方法について説明する。
【0078】
まず、マニホールド2と複数の燃料電池セル1とを準備する。そして、
図12に示すように、第1集電部材4、及び第2接合材5によって、各燃料電池セル1を互いに接続し、セル集合体300を作製する。なお、この段階では第2接合材5は焼成されておらず、各燃料電池セル1は互いに仮止めの状態である。
【0079】
次に、
図13に示すように、セル集合体300の各燃料電池セル1の下端部101をマニホールド2の各貫通孔27に挿入する。なお、各燃料電池セル1が厚さ方向に沿って所定の間隔を保持するための治具を用いてもよい。
【0080】
次に、
図2に示すように、貫通孔27に挿入された燃料電池セル1とマニホールドの上壁22とを接合するように第1接合材3を塗布する。なお、第1接合材3は、燃料電池セル1の付け根に沿って塗布されている。また、第1接合材3は、燃料電池セル1の下端部101の外周面と貫通孔27の内壁面との隙間に充填されていてもよい。
【0081】
次に、第1接合材3及び第2接合材5に対して熱処理が加えられる。この熱処理によって、第1接合材3及び第2接合材5が固化され、燃料電池スタック100が完成する。詳細には、第2接合材5は、熱処理を施されることによって焼成される。この結果、各燃料電池セル1と第1集電部材4とが固定される。また、第1接合材3は、熱処理を施されることによって、非晶質材料の温度が結晶化温度まで到達する。そして、結晶化温度下にて材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される第1接合材3が機能を発揮し、各燃料電池セル1の下端部101がマニホールド2の上壁22に固定される。
【0082】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0083】
変形例1
上記実施形態では、燃料極集電部131が第2凹部131a及び第3凹部131bを有しているが、燃料極集電部131の構成はこれに限定されない。例えば、燃料極集電部131は第2凹部131a及び第3凹部131bなどの凹部を有していなくてもよい。この場合、燃料極活性部132は、燃料極集電部131上に形成されており、燃料極集電部131に埋設されていない。また、インターコネクタ171は、燃料極集電部131上に形成されており、燃料極集電部131に埋設されていない。
【0084】
変形例2
上記実施形態では、燃料電池セル1は、複数の発電素子部11を有している横縞型であったが、燃料電池セル1は、長手方向に延びる一つの発電素子部を有するような縦縞型であってもよい。また、燃料電池セル1は、横縞円筒型であってもよい。
【0085】
変形例3
上記実施形態では、ガス導入口241は円形状であったが、ガス導入口241の形状は特にこれに限定されず、例えば、楕円形や矩形状であってもよい。また、上記実施形態では、ガス流路121は円形状であったが、ガス流路121の形状がこれに限定されず、例えば、楕円形状や矩形状であってもよい。
【0086】
変形例4
上記実施形態では、第1側壁24及び第2側壁25が第1傾斜部として構成されているが、ガス導入口241が形成された第1側壁24のみが第1傾斜部として構成されており、残りの第1側壁24及び第2側壁25は傾斜していなくてもよい。または、ガス導入口241が形成された第1側壁24の全体が第1傾斜部として構成されていなくてもよい。例えば、
図14に示すように、第1側壁24の一部分242のみが第1傾斜部として構成されていてもよい。この場合、ガス導入口241は、この第1傾斜部242に形成されている。
【0087】
変形例5
上記実施形態では、第1側壁24及び第2側壁25が第1傾斜部として構成されているが、第1側壁24及び第2側壁25は、傾斜していなくてもよい。
【0088】
変形例6
図15及び
図16に示すように、ガス分散部材29は、多孔質体であってもよい。ガス分散部材29の気孔率は、例えば、10〜70%程度とすることができる。この構成によれば、マニホールド2の内部空間に導入されたガスは、ガス分散部材29の内部に侵入し、ガス分散部材29内で分散された後、各燃料電池セル1へと供給される。なお、ガス分散部材29と上壁22との間の隙間は、形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。また、ガス分散部材29と第1側壁24又は第2側壁25との間の隙間も、形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。
【0089】
変形例7
上記実施形態では、マニホールド本体21の上面が開口しており、上壁22によってマニホールド本体21の上面が封鎖されているが、マニホールド2の構成はこれに限定されない。
【0090】
例えば、
図17に示すように、マニホールド本体21は、下面が開口しており、底壁23によってマニホールド本体21の下面を封鎖するような構成であってもよい。この場合、マニホールド本体21は、上壁22と、一対の第1側壁24と、一対の第2側壁25と、を有している。また、マニホールド本体21は、第2フランジ部29を有していてもよい。第2フランジ部29は、第1側壁24及び第2側壁25の下端部から外方に延びている。
【0091】
上壁22と、第1側壁24及び第2側壁25との第4境界部20dの内側面は、R形状である。この第4境界部20dの内側面の曲率半径は、2〜20mm程度とすることができる。なお、第4境界部20dの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0092】
第1側壁24及び第2側壁25と、第2フランジ部29との第5境界部20eの内側面は、R形状である。この第5境界部20eの内側面の曲率半径は、1〜10mm程度とすることができる。なお、第5境界部20eの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0093】
図18に示すように、マニホールド2の内部空間の高さ方向(x軸方向)において、第5境界部20eと底壁23との間に第2隙間部30が形成されている。すなわち、底壁23の上面と第2フランジ部29の下面とは接触している一方、底壁23の上面と第5境界部20eの内側面とは接触していない。第2隙間部30は、全周に亘って形成されている。
【0094】
図17に示すように、底壁23は、マニホールド本体21の下面を塞ぐように、マニホールド本体21上に配置されている。詳細には、底壁23は、第2フランジ部29に固定されている。マニホールド2の内部空間を密閉するため、底壁23が全周に亘ってマニホールド本体21と接合されている。例えば、底壁23とマニホールド本体21とは、結晶化ガラスによって接合されている。底壁23は、上述したマニホールド本体21の材料の少なくとも一種から形成することができる。
【0095】
変形例8
図19及び
図20に示すマニホールド2では、ガス分散部材29は、ガス導入口241と対向していない。ガス分散部材29は多孔質体であり、マニホールド2の内部空間の上部に配置されている。なお、マニホールド2の内部空間の下部には何も配置されていない。この内部空間の下部に、ガス導入口241が開口している。このため、ガス導入口241からマニホールド2の内部空間に導入されたガスは、まず、内部空間の下部に導入される。その後、ガスは、内部空間の上部に送られてガス分散部材29内で分散され、最終的に各燃料電池セル1へと供給される。
【0096】
変形例9
上記実施形態では、ガス分散部材29の数は1つであったが、ガス分散部材29の数はこれに限定されず、複数のガス分散部材29が設けられていてもよい。例えば、
図21に示すように、複数のガス分散部材29は、幅方向(y軸方向)に配列されていてもよい。また、
図22に示すように、複数のガス分散部材29は、奥行方向(z軸方向)に配列されていてもよい。さらには、複数のガス分散部材29は、幅方向に配列され且つ奥行方向に配列されていてもよい。
【0097】
また、複数のガス分散部材29が設けられる場合、緻密体のガス分散部材29と、多孔質体のガス分散部材29とが混在していてもよい。
【0098】
変形例10
上記実施形態では、第1側壁24及び第2側壁25は、上方に向かって外方に広がるように傾斜しているが、第1側壁24及び第2側壁25の構成はこれに限定されない。例えば、
図23、24に示すように、第1側壁24及び第2側壁25は、下方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。すなわち、第1側壁24及び第2側壁25の全体は、本発明の第2傾斜部として構成されていてもよい。特に限定されるものではないが、例えば、第1側壁24及び第2側壁25と、上壁22とがなす角度βは、90.1〜135°程度とすることができる。本変形例において、上壁22、第1側壁24、及び第2側壁25によって、マニホールド本体21を構成することが好ましい。そして、このマニホールド本体21の開口する下面を封鎖するように、底壁23はマニホールド本体21に取り付けられる。
【0099】
変形例11
上記実施形態では、ガス分散部材29は底壁23に取り付けられているが、これに限定されない。例えば、
図25に示すように、ガス分散部材29は、上壁22に取り付けられていてもよい。この場合、例えば、ガス拡散部材29と底壁23との間には隙間が形成されている。
【0100】
変形例12
上記実施形態では、ガス分散部材29は底壁23に対して垂直に配置されるが、ガス分散部材29は、底壁23に対して傾斜していてもよい。例えば、
図26に示すように、ガス分散部材29は、上方に向かってガス導入口241に近付くように傾斜していてもよい。このときの底板23に対するガス分散部材29の傾斜角度γは、例えば、20〜70度程度である。
【0101】
この変形例12では、導入口241が形成された第1側壁24は、ガス分散部材29と同じ方向に傾斜しているが、
図27に示すようにガス分散部材29と反対方向に傾斜してもよい。また、導入口241が形成された第1側壁24は、傾斜していなくてもよい。
【0102】
変形例13
図28に示すように、ガス分散部材29は、上方に向かってガス導入口241から離れるように傾斜してもよい。このときの底板23に対するガス分散部材29の傾斜角度γは、例えば、20〜70度程度である。
【解決手段】マニホールド2は、底壁と、第1及び第2側壁24、25と、上壁と、ガス拡散部材29と、を備えている。第1側壁24は、ガス導入口241を有している。底壁、第1及び第2側壁24,25、及び上壁によって、マニホールド2の内部空間が画定されている。ガス拡散部材29は、マニホールド2の内部空間に配置されている。また、ガス拡散部材29は、ガス導入口241と対向するように配置されている。