(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のペロブスカイト粉末の粒子における気孔を含む粒子の頻度は、前記第1のペロブスカイト粉末の粒子における気孔を含む粒子の頻度よりも大きい、請求項1または2に記載の誘電体組成物。
前記第2のペロブスカイト粉末の粒子における気孔を含む粒子の頻度が、前記第1のペロブスカイト粉末の粒子における気孔を含む粒子の頻度の4倍以上である、請求項3に記載の誘電体組成物。
前記第2のペロブスカイト粉末に含まれる粒子における気孔を含む粒子の頻度は、前記第1のペロブスカイト粉末の粒子における気孔を含む粒子の頻度よりも大きい、請求項6または7に記載の誘電体組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
電気、電子機器産業の高性能化及び軽薄短小化に伴い、電子部品の小型化、高性能化及び低コスト化も求められている。特に、CPUの高速化、機器の小型軽量化、デジタル化及び高機能化の進展につれ、積層セラミックキャパシタ(Multi Layer Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という。)に対しても、小型化、薄層化、高容量化、高周波領域での低インピーダンス化等の特性を具現するための研究開発が活発に進められている。
【0003】
積層セラミックキャパシタの誘電体層に用いられるペロブスカイト粉末は、主に固相法や共沈法等により製造された。しかしながら、このような方法は、高温のか焼工程で結晶相をなすため、高温のか焼工程及び粉砕工程が必要とされ、粒径が不均一であるという短所を有する。
【0004】
近年では、積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化のために、積層セラミックキャパシタを構成する誘電体層の薄層化が求められている。誘電体層が薄層化した場合、ペロブスカイト粉末の粒径が大きいと、誘電体層の表面粗さが増加し、ショート率が増加して絶縁抵抗不良が発生する可能性がある。
【0005】
これにより、主成分であるペロブスカイト粉末の微粒化が求められている。
【0006】
一方、上記微粒化された粉末を用いて積層セラミックキャパシタを製作する場合、その特性を具現するためには、高温で焼成過程を経てセラミック粉末の密度を向上させるか又は粒成長を起こす必要がある。
【0007】
この際、微粒子であるほど、焼成時に粒子の成長が急激に起こる問題が発生する可能性がある。
【0008】
このように急激な粒成長が起こる場合、最終製品である積層セラミックキャパシタの内部の誘電体層が均一な微細構造を有するように調節することが困難であり、高い電気的信頼性を確保することが困難であるという問題がある。
【0009】
また、上記粉末の粒子が小さければ小さいほど、焼成中に添加剤成分との固溶が起こりやすくなる。
【0010】
もし、上記固溶が過度に進行される場合は、最終製品の誘電特性を示す純粋なセラミック粉末の体積比率が減少して誘電率が低下する問題が発生する可能性がある。
【0011】
最終製品である積層セラミック電子部品の内部の微細構造は、純粋なセラミック粉末部分であってコア(core)と添加剤が固溶されたセラミック粉末部分であるシェル(shell)の形態を有し、コア‐シェル構造と称される。
【0012】
一般に、均一なコア‐シェル構造を有するために、添加剤をセラミック粉末の表面にコーティングするか又はコア‐シェル構造を有するセラミック粉末を製造する方法を用いてきた。
【0013】
しかしながら、セラミック粉末の表面に添加剤をコーティングする方法は、焼成中にコーティング層が割れるか又は拡散によって再配列をして最終焼成体にコーティング層が残らないという問題がある。
【0014】
また、コア‐シェル構造を有するセラミック粉末を用いる場合は、コア部分とシェル部分の結晶学的方位が異なって温度による誘電率の変化が大きくなり、添加剤とセラミック粉末の結合が破れて粒子のサイズが不均一になるという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、誘電特性及び電気的特性に優れた誘電体組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一形態によれば、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末と、上記第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して、上記第1のペロブスカイト粉末の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末1〜70重量部と、を含み、上記第2のペロブスカイト粉末は気孔を含み、上記気孔の体積分率が3〜50vol%である誘電体組成物を提供する。
【0018】
上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0019】
上記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0020】
上記ペロブスカイト粉末は、BaTiO
3、BaTi
xZr
1−xO
3、Ba
xY
1−xTiO
3、Ba
xDy
1−xTiO
3及びBa
xHo
1−xTiO
3(0<x<1)からなる群から選択された一つであることができる。
【0021】
上記第1のペロブスカイト粉末に含まれる気孔の頻度数は、200nmのサイズの粒子を基準として5個未満であることができる。
【0022】
上記第2のペロブスカイト粉末に含まれる気孔の頻度数は、10〜80nmのサイズの粒子を基準として20個〜300個であることができる。
【0023】
本発明の他の形態によれば、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末と、上記第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して、上記第1のペロブスカイト粉末の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末1〜70重量部と、添加剤とを混合して混合物を製造する段階と、上記混合物を焼成する段階と、を含む誘電体組成物の製造方法を提供する。
【0024】
上記ペロブスカイト粉末は、BaTiO
3、BaTi
xZr
1−xO
3、Ba
xY
1−xTiO
3、Ba
xDy
1−xTiO
3及びBa
xHo
1−xTiO
3(0<x<1)からなる群から選択された一つであることができる。
【0025】
上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0026】
上記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0027】
上記第2のペロブスカイト粉末は気孔を含み、上記気孔の体積分率が3〜50vol%であることができる。
【0028】
上記第1のペロブスカイト粉末に含まれる気孔の頻度数は、200nmのサイズの粒子を基準として5個未満であることができる。
【0029】
上記第2のペロブスカイト粉末に含まれる気孔の頻度数は、10〜80nmのサイズの粒子を基準として20個〜300個であることができる。
【0030】
上記混合物を焼成する段階は還元雰囲気で行われることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一形態によれば、別途の添加剤をコーティングしたりコア‐シェル構造の複合粉末を製造したりしなくても、2種のペロブスカイト粉末を混合することにより、焼成後に均一な粒子サイズ分布を有するコア‐シェル構造の誘電体組成物が得られる。
【0032】
本発明の一形態によれば、コア用のペロブスカイト粉末とシェル用のペロブスカイト粉末のサイズ比率及び粒子内の気孔の頻度数を調節することにより、コア‐シェル粒子成長の選択性を増加させ、コアとシェルの比率を正確に制御することができる。
【0033】
これにより、粒子のサイズが均一な誘電体組成物が得られ、これを用いた積層セラミック電子部品は、誘電率に優れ、信頼性が向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態による誘電体組成物の内部構造を概略的に示す概略図である。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態による誘電体組成物に含まれるシェル用の第2のペロブスカイト粉末の結晶を撮影した走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真である。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による誘電体組成物に含まれるコア用の第1のペロブスカイト粉末の結晶を撮影した走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真である。
【0039】
図1〜
図3を参照すると、本発明の一実施形態による誘電体組成物は、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末1と、上記第1のペロブスカイト粉末1 100重量部に対して、上記第1のペロブスカイト粉末1の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末2 1〜70重量部と、を含み、上記第2のペロブスカイト粉末2は気孔を含み、上記気孔の体積分率が3〜50vol%であることができる。
【0040】
以下、本発明の一実施形態による誘電体組成物を詳細に説明するが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末1と、上記第1のペロブスカイト粉末1 100重量部に対して、上記第1のペロブスカイト粉末1の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末2 1〜70重量部と、を含むことができる。
【0042】
一般に、誘電体組成物は、ペロブスカイト構造を有するセラミック粉末の表面に添加剤をコーティングした形態を含むか、又はコア‐シェル構造を有するセラミック粉末を含むことを特徴とした。
【0043】
しかしながら、セラミック粉末の表面に添加剤をコーティングする方法は、焼成中にコーティング層が割れるか又は拡散によって再配列をして最終焼成体にコーティング層が残らないという問題がある。
【0044】
また、コア‐シェル構造を有するセラミック粉末を用いる場合は、コア部分とシェル部分の結晶学的方位が異なって温度による誘電率の変化が大きくなり、添加剤とセラミック粉末の結合が破れて粒子のサイズが不均一になるという問題もある。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体組成物は、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末1と、上記第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して、上記第1のペロブスカイト粉末の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末2 1〜70重量部と、を含むことにより、最終焼成後に均一な粒子サイズを有するコア‐シェル構造が得られる。
【0046】
より詳細には、焼成過程でコアとシェルは、微粒のセラミック粉末が添加剤と一緒に高温で溶解されて大粒径のセラミック粉末の表面に結晶成長が起こることにより生成される。
【0047】
この際、シェルの粒成長のためには微粒のセラミック粉末がうまく溶解されて添加剤と固溶されるべきであるが、コアとなる大粒径のセラミック粉末は溶解されてはならない。
【0048】
一般に、粒子のサイズの大きいセラミック粉末はコアを形成し、粒子のサイズの小さいセラミック粉末はシェルを形成するが、セラミック粉末は均一な粒度分布を有していないことから、小粒径のセラミック粉末と大粒径のセラミック粉末との境界が不明であり、粒子の溶解度の差が大きくないため、これらを区別して調節することはできないという問題がある。
【0049】
したがって、コアを形成する大粒径のセラミック粉末は、粒径は大きくて溶解度は低い状態に調節することが好ましく、シェルを形成する小粒径のセラミック粉末は、粒径は小さくて溶解度は大きい状態に調節することが好ましい。
【0050】
上記のような調節によってシェルに変換されるセラミック粉末とコアに変換されるセラミック粉末の分率を調節することにより、所望のコア‐シェル体積分率を制御することができる。
【0051】
上記コア‐シェル体積分率は、上記誘電体組成物に含まれるセラミック粉末においてコアが占める体積とシェルが占める体積との比率を意味することができる。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末2は、上記コア用の第1のペロブスカイト粉末1の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有することができるが、これに制限されるものではない。
【0053】
上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末2が上記コア用の第1のペロブスカイト粉末1の平均粒径の1/3を超える粒径を有する場合は、粒径の差が小さいことから、小粒径のセラミック粉末と大粒径のセラミック粉末との境界が不明であり、粒子の溶解度の差が大きくないため、これらを区別して調節することができない問題が発生する可能性がある。
【0054】
上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末2が上記コア用の第1のペロブスカイト粉末1の平均粒径の1/10未満の粒径を有する場合は、上記粉末間の粒径の差が大きいことから、焼成後に均一な粒子分布を有する積層セラミック電子部品を製造することが困難となる可能性がある。
【0055】
上記第1及び第2のペロブスカイト粉末は、ABO
3の構造を有する粉末である。上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0056】
また、上記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0057】
上記第1及び第2のペロブスカイト粉末は、特に制限されず、例えば、BaTiO
3、BaTi
xZr
1−xO
3、Ba
xY
1−xTiO
3、Ba
xDy
1−xTiO
3及びBa
xHo
1−xTiO
3(0<x<1)からなる群から選択された一つであることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体組成物は、上記コア用の第1のペロブスカイト粉末1 100重量部に対して、上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末2 1〜70重量部を含むことができる。
【0059】
上記のように、コア用の第1のペロブスカイト粉末とシェル用の第2のペロブスカイト粉末の含量比を調節することにより、均一な粒径を有するセラミック粉末が得られる。
【0060】
上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末が上記コア用の第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して1重量部未満で含まれる場合は、温度による誘電率の変化が大きいため、信頼性に問題が生じる。
【0061】
上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末が上記コア用の第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して70重量部を超えて含まれる場合は、誘電率低下の問題が発生する可能性がある。
【0062】
一方、本発明の一実施形態によれば、上記第2のペロブスカイト粉末2は気孔を含み、上記気孔の体積分率が3〜50vol%であることができる。
【0063】
上記第2のペロブスカイト粉末2は気孔を含み、上記気孔の体積分率は3〜50vol%に調節することにより、均一な粒径を有するセラミック粉末を製造することができ、コア‐シェルの体積比率を正確に制御することができる。
【0064】
上記気孔の体積分率は、上記第2のペロブスカイト粉末の一定体積基準気孔が占める体積の比率を意味することができる。
【0065】
上記気孔の体積分率が3vol%未満の場合は、上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末内で気孔が占める体積が小さいことから、コア用の第1のペロブスカイト粉末との溶解度の差がないため、コア‐シェルの体積比率を正確に制御することができないという問題がある。
【0066】
上記気孔の体積分率が50vol%を超える場合は、上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末内で気孔が占める体積が大きすぎることから、シェル用の第2のペロブスカイト粉末の含量が低下して温度による誘電率が低下するという問題がある。
【0067】
一方、上記第1のペロブスカイト粉末1の場合は、内部に気孔を含む粒子の数が第2のペロブスカイト粉末に比べて少なく、例えば、上記第1のペロブスカイト粉末1に含まれる気孔の頻度数は200nmのサイズの粒子を基準として5個未満であることができるが、これに限定されるものではない。
【0068】
上記気孔の頻度数は、上記第1のペロブスカイト粉末又は第2のペロブスカイト粉末において、基準となる粒径の粒子のうち気孔を含む粒子の数で定義されることができる。
【0069】
即ち、上述したように、上記第1のペロブスカイト粉末1に含まれる気孔の頻度数は、200nmのサイズの粒子を基準として5個未満であることができる。
【0070】
上記第2のペロブスカイト粉末2に含まれる気孔の頻度数は、10〜80nmのサイズの粒子を基準として20個〜300個であることができるが、これに制限されるものではない。
【0071】
上記のように、第2のペロブスカイト粉末2に含まれる気孔の頻度数が上記第1のペロブスカイト粉末1に含まれる気孔の頻度数に比べて多くなるように調節することにより、均一な粒径を有するセラミック粉末を製造することができ、コア‐シェルの体積比率を正確に制御することができる。
【0072】
図2は、本発明の一実施形態による誘電体組成物に含まれるシェル用の第2のペロブスカイト粉末の結晶を撮影した走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真である。
【0073】
図3は、本発明の一実施形態による誘電体組成物に含まれるコア用の第1のペロブスカイト粉末の結晶を撮影した走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真である。
【0074】
図2及び
図3を参照すると、シェル用の第2のペロブスカイト粉末の結晶は、コア用の第1のペロブスカイト粉末の結晶に比べて気孔の発生が多いため、多孔質(porous)の形態を示していることが分かる。
【0075】
本発明の他の実施形態による誘電体組成物の製造方法は、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末と、上記第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して、上記第1のペロブスカイト粉末の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末1〜70重量部と、添加剤とを混合して混合物を製造する段階と、上記混合物を焼成する段階と、を含むことができる。
【0076】
上記ペロブスカイト粉末は、BaTiO
3、BaTi
xZr
1−xO
3、Ba
xY
1−xTiO
3、Ba
xDy
1−xTiO
3及びBa
xHo
1−xTiO
3(0<x<1)からなる群から選択された一つであることができる。
【0077】
上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0078】
上記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0079】
上記第2のペロブスカイト粉末は気孔を含み、上記気孔の体積分率が3〜50vol%であることができる。
【0080】
上記第1のペロブスカイト粉末に含まれる気孔の頻度数は、200nmのサイズの粒子を基準として5個未満であることができる。
【0081】
上記第2のペロブスカイト粉末に含まれる気孔の頻度数は、10〜80nmのサイズの粒子を基準として20個〜300個であることができる。
【0082】
上記混合物を焼成する段階は還元雰囲気で行われることができる。
【0083】
以下、本発明の他の実施形態による誘電体組成物の製造方法を説明するにあたり、上述した本発明の一実施形態による誘電体組成物の特徴と重複する部分の説明は省略する。
【0084】
まず、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末と、上記第1のペロブスカイト粉末の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するシェル用の第2のペロブスカイト粉末をそれぞれ製造することができる。
【0085】
上記コア用の第1のペロブスカイト粉末とシェル用の第2のペロブスカイト粉末は、粒径においてのみ差異があり、同一の組成で製造されることができるが、これに制限されるものではない。
【0086】
上記第1及び第2のペロブスカイト粉末の製造方法としては、一般的なペロブスカイト粉末の製造方法を用いることができるが、特に制限されるものではない。
【0087】
まず、含水金属酸化物を洗浄して不純物を除去することができる。
【0088】
上記含水金属酸化物は、含水チタニウム又は含水ジルコニウムからなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0089】
チタニアとジルコニアの場合、加水分解が非常に容易であるため、別途の添加剤なしに純水と混合すると、含水チタニウム、含水ジルコニウムがゲル状に沈殿される。
【0090】
上記含水金属酸化物を洗浄して不純物を除去するために、H
2O/金属モル比が10以上となるように純水を加え、10分〜10時間攪拌して不純物を金属と分離させゲルを沈殿させた後、濾液を除去する。
【0091】
より詳細には、上記含水金属酸化物を加圧でフィルタリングして残留溶液を除去し、純水を注ぎながらフィルタリングして粒子の表面に存在する不純物を除去することができる。
【0092】
上記攪拌中に形成された気体は、減圧を行って除去するか、又は減圧を行いながら空気を入れると、より効果的に除去される。
【0093】
上記含水金属酸化物を加圧でフィルタリングして残留溶液を除去し、純水を注ぎながらフィルタリングして粒子の表面に存在する不純物を除去する。
【0094】
次に、上記含水金属酸化物に純水と酸又は塩基を添加することができる。
【0095】
フィルタリング後に得た含水金属酸化物粉末に純水を入れて高粘度攪拌器で攪拌を行い、0℃〜60℃で0.1時間〜72時間維持して含水金属酸化物スラリーを製造する。
【0096】
製造したスラリーに酸や塩基を加える。上記酸や塩基は、解膠剤として用いられ、含水金属酸化物の含量に対して0.0001〜0.2モルで添加されることができる。
【0097】
上記酸としては、一般的なものであれば特に制限されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、蟻酸、酢酸、ポリカルボキシル酸などがあり、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0098】
上記塩基としては、一般的なものであれば特に制限されず、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又はテトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどがあり、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0099】
次に、上記金属酸化物ゾルを金属塩と混合してペロブスカイト粒子核を形成させることができる。
【0100】
上記金属塩は、水酸化バリウム又は水酸化バリウムと希土類塩の混合物であることができる。
【0101】
上記希土類塩としては、特に制限されず、例えば、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)などを用いることができる。
【0102】
上記ペロブスカイト粒子核を形成させる段階は60℃〜150℃で行われることができる。
【0103】
この反応で反応物の混合比(金属塩/金属酸化物)は1〜4、又は1.2〜2であることができる。
【0104】
次に、上記ペロブスカイト粒子核を粒成長させてペロブスカイト粉末が得られる。
【0105】
次に、ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末と、上記第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して、上記第1のペロブスカイト粉末の平均粒径の1/3〜1/10のサイズを有するABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末1〜70重量部と、添加剤とを混合して混合物を製造することができる。
【0106】
次に、上記混合物を焼成することにより、コア‐シェル構造を有する誘電体組成物を製造することができる。
【0107】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これは、本発明の具体的な理解のためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0108】
実施例
ABO
3で表現されるコア用の第1のペロブスカイト粉末は平均粒径を200nmに調節して製造し、ABO
3で表現されるシェル用の第2のペロブスカイト粉末は平均粒径をそれぞれ10、20、50及び80nmにして製造した。
【0109】
また、上記第1のペロブスカイト粉末100重量部に対して上記シェル用の第2のペロブスカイト粉末の含量を調節して製造した。
【0110】
上記第1のペロブスカイト粉末と第2のペロブスカイト粉末と添加剤とを混合して誘電体組成物をそれぞれ製造した。
【0111】
比較例
平均粒径が200nmのペロブスカイト粉末のみを含む誘電体組成物を製造したことを除いては、上記実施例と同一に誘電体組成物を製造した。
【0112】
上記実施例及び比較例による85℃での温度による容量変化率である温度特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)、誘電率及び絶縁破壊電圧(BDV、Breakdown Voltage)を測定して下記表1に示した。
【0114】
上記表1を参照すると、実施例1〜5は、比較例に比べて85℃での温度による容量変化率である温度特性、誘電率及び絶縁破壊電圧に全て優れることが分かる。
【0115】
即ち、本発明の一実施形態による誘電体組成物は、85℃での温度による容量変化率である温度特性、誘電率及び絶縁破壊電圧が良好であるため、信頼性に優れることが分かる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。