特許第6324731号(P6324731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6324731制御装置、それを備えた発電システム、及び制御方法並びに制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6324731
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】制御装置、それを備えた発電システム、及び制御方法並びに制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20180507BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20180507BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J3/38 130
   H02J3/38 160
   H02J7/34 D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-5898(P2014-5898)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-136210(P2015-136210A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】八杉 明
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正博
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−101538(JP,A)
【文献】 特開2013−219941(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0273129(US,A1)
【文献】 特開2009−079559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D1/00−80/80
H01L31/02、
31/0216−31/0224、
31/0236、
31/0248−31/0256、
31/0352−31/036、
31/0392−31/078、
31/18、
51/42−51/48
H02J3/00−7/12、
7/34−7/36
H02P9/00−9/48
H02S10/00−10/40、
30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と連系され、自然エネルギーによって発電する発電装置と接続される蓄電装置の充放電を制御する制御装置であって、
前記電力系統の出力低減指令を取得した場合に、
現在の前記蓄電装置の充電率である現状値が、前記蓄電装置の目標充電率より大きいか否かを判定する判定手段と、
判定の結果、前記蓄電装置の前記現状値が前記目標充電率以下であると判定された場合に、前記発電装置の出力と前記出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を前記蓄電装置に充電させ、前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように充電させる制御手段と
を具備し、
前記制御手段は、前記発電装置の出力が、所定の出力低減レートによって前記目標出力に低減されるまでにかかる所要時間を算出し、前記所要時間かけて前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように制御する制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蓄電装置の劣化に影響を与えない所定の閾値以下の充電電流値で前記蓄電装置を充電させる請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記現状値と前記目標充電率との差と前記所要時間とに基づいて仮の前記充電電流値を算出し、仮の前記充電電流値が前記所定の閾値より小さい場合に、算出した仮の前記充電電流値の充電電流によって前記蓄電装置を充電させ、仮の前記充電電流値が前記閾値以上である場合に前記閾値の充電電流によって前記蓄電装置を充電させる請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記蓄電装置には、短周期の出力変動の抑制に優れた第1蓄電装置及び長周期の出力変動の抑制に優れた第2蓄電装置を含み、
前記電力系統から出力低減指令を取得した場合に、
前記制御手段は、前記第2蓄電装置の充電率が所定の満充電状態となるまで、前記第2蓄電装置を充電させる請求項1から請求項のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第2蓄電装置の充電率が前記所定の満充電状態よりも所定量低い充電率となったことを検出した場合に、前記発電装置の出力を低減させる指令を出力する請求項に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれかに記載の制御装置と、蓄電装置とを備える発電システム。
【請求項7】
電力系統と連系され、自然エネルギーによって発電する発電装置と接続される蓄電装置の充放電を制御する制御方法であって、
前記電力系統の出力低減指令を取得した場合に、
現在の前記蓄電装置の充電率である現状値が、前記蓄電装置の目標充電率より大きいか否かを判定する第1過程と、
判定の結果、前記蓄電装置の前記現状値が前記目標充電率以下であると判定された場合に、前記発電装置の出力と前記出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を前記蓄電装置に充電させ、前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように前記蓄電装置を充電させる第2過程と
を有し、
前記第2過程では、前記発電装置の出力が、所定の出力低減レートによって前記目標出力に低減されるまでにかかる所要時間を算出し、前記所要時間かけて前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように制御する制御方法。
【請求項8】
電力系統と連系され、自然エネルギーによって発電する発電装置と接続される蓄電装置の充放電を制御する制御プログラムであって、
前記電力系統の出力低減指令を取得した場合に、
現在の前記蓄電装置の充電率である現状値が、前記蓄電装置の目標充電率より大きいか否かを判定する第1処理と、
判定の結果、前記蓄電装置の前記現状値が前記目標充電率以下であると判定された場合に、前記発電装置の出力と前記出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を前記蓄電装置に充電させ、前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように前記蓄電装置を充電させ、前記発電装置の出力が、所定の出力低減レートによって前記目標出力に低減されるまでにかかる所要時間を算出し、前記所要時間かけて前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように制御する第2処理をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、それを備えた発電システム、及び制御方法並びに制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ウインドファームにおいて風力発電装置の出力変動を抑制する際、風力発電装置の出力をできる限り低減することなく、バッテリー等のエネルギー貯蔵が可能な設備を用いるだけでその変動を抑制することが要求されている。
下記特許文献1では、直流エネルギー貯蔵装置の満充電時及び放電末時において、直流エネルギー貯蔵装置の充電率を制御することによって、交流電力系統に発生する有効電力の変動を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−100487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、出力変動の抑制制御が実施されている場合において、電力系統運用者より、系統安定化のためウインドファームの出力をある一定値以下に低下させる指令が出されることがある。そうした場合、第一に風力発電装置の出力を低減するが、急激に出力を低下させると電力系統への悪影響が予測されるため、一般的には、数分間の時間を掛けて目標とする出力値に近づけるようにしている。
このとき、バッテリーの運用方法を誤ると、最大充電電流を発生させ、バッテリーが一気に満充電状態となり、その結果、バッテリーの充電機能停止や劣化が進むという好ましくない状態が引き起こされ、電力系統の安定化に寄与できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、蓄電装置の充電機能停止や劣化の進行を防ぐことができる蓄電装置の制御装置、それを備えた発電システム、及び制御方法並びに制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、電力系統と連系され、自然エネルギーによって発電する発電装置と接続される蓄電装置の充放電を制御する制御装置であって、前記電力系統の出力低減指令を取得した場合に、現在の前記蓄電装置の充電率である現状値が、前記蓄電装置の目標充電率より大きいか否かを判定する判定手段と、判定の結果、前記蓄電装置の前記現状値が前記目標充電率以下であると判定された場合に、前記発電装置の出力と前記出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を前記蓄電装置に充電させ、前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように充電させる制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記発電装置の出力が、所定の出力低減レートによって前記目標出力に低減されるまでにかかる所要時間を算出し、前記所要時間かけて前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように制御する制御装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、電力系統の出力低減指令を取得した場合に、出力低減指令によって目標とされる目標出力以上の出力は余剰となるので、蓄電装置の現在の充電率である現状値が目標充電率以下であると判定された場合には、蓄電装置が目標充電率となるまで余剰となった出力の少なくとも一部を蓄電装置に充電させる。
このように、従来は余剰となり捨てられていた発電装置の出力の一部を蓄電し、目標充電率を維持するように充電制御されることによって、蓄電装置が望ましい状態で運用される。これにより、蓄電装置の充電が急激に進行して満充電に到達するのを防ぎ、充電機能停止や蓄電装置の劣化の進行を防ぐことができる。
【0009】
また、発電装置の出力が目標出力になるまでの所要時間をかけて、蓄電装置の充電率を目標充電率になるように充電制御されるので、蓄電装置の充電の進行が緩やかとなり、発電装置の出力低減時において蓄電装置の劣化の進行を防ぐことができる。
【0010】
上記制御装置の前記制御手段は、前記蓄電装置の劣化に影響を与えない所定の閾値以下の充電電流値で前記蓄電装置を充電させることが好ましい。
【0011】
発電装置の出力低減レートが速い場合には、蓄電装置に大電流が流れることになり、蓄電装置が劣化(損傷)するおそれがあるので、充電電流に閾値を設ける。充電電流に閾値を設けることにより、蓄電装置の充電率が目標充電率に到達することよりも蓄電装置の損傷を確実に防ぐことを優先できる。
【0012】
上記制御装置の前記制御手段は、前記現状値と前記目標充電率との差と前記所要時間とに基づいて仮の前記充電電流値を算出し、仮の前記充電電流値が前記所定の閾値より小さい場合に、算出した仮の前記充電電流値の充電電流によって前記蓄電装置を充電させ、仮の前記充電電流値が前記閾値以上である場合に前記閾値の充電電流によって前記蓄電装置を充電させることとしてもよい。
【0013】
蓄電装置の充電率に応じた仮の充電電流値を算出し、仮の充電電流値が閾値を超えない範囲であれば算出した仮の充電電流値の充電電流によって蓄電装置を充電させるので、蓄電装置の充電状況に応じた制御ができ、目標充電率を精度よく維持できる。
【0014】
上記制御装置において、前記蓄電装置には、短周期の出力変動の抑制に優れた第1蓄電装置及び長周期の出力変動の抑制に優れた第2蓄電装置を含み、前記電力系統の出力低減指令を取得した場合に、前記制御手段は、前記第2蓄電装置の充電率が所定の満充電状態となるまで、前記第2蓄電装置を充電させることとしてもよい。
【0015】
発電装置の出力低減制御をしていなくても、長周期の出力変動の抑制に優れた第2蓄電装置によって充電することにより、発電装置の出力と第2蓄電装置の充電量とによって得られる合成出力が低減できる。本発明によれば、発電装置の出力を低減させる制御を遅らせることができるので、従来捨てられていた発電装置の出力の一部をより多く蓄電できるため、売電量が増加する。
【0016】
上記制御装置の前記制御手段は、前記第2蓄電装置の充電率が前記所定の満充電状態よりも所定量低い充電率となったことを検出した場合に、前記発電装置の出力を低減させる指令を出力することとしてもよい。
【0017】
これにより、第2蓄電装置が所定の満充電状態に到達した後の発電装置による出力の余剰を抑制することができる。
【0018】
本発明は、上記いずれかに記載の制御装置と、蓄電装置とを備える発電システムを提供する。
【0019】
本発明は、電力系統と連系され、自然エネルギーによって発電する発電装置と接続される蓄電装置の充放電を制御する制御方法であって、前記電力系統の出力低減指令を取得した場合に、現在の前記蓄電装置の充電率である現状値が、前記蓄電装置の目標充電率より大きいか否かを判定する第1過程と、判定の結果、前記蓄電装置の前記現状値が前記目標充電率以下であると判定された場合に、前記発電装置の出力と前記出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を前記蓄電装置に充電させ、前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように前記蓄電装置を充電させる第2過程とを有し、前記第2過程では、前記発電装置の出力が、所定の出力低減レートによって前記目標出力に低減されるまでにかかる所要時間を算出し、前記所要時間かけて前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように制御する制御方法を提供する。
【0020】
本発明は、電力系統と連系され、自然エネルギーによって発電する発電装置と接続される蓄電装置の充放電を制御する制御プログラムであって、前記電力系統の出力低減指令を取得した場合に、現在の前記蓄電装置の充電率である現状値が、前記蓄電装置の目標充電率より大きいか否かを判定する第1処理と、判定の結果、前記蓄電装置の前記現状値が前記目標充電率以下であると判定された場合に、前記発電装置の出力と前記出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を前記蓄電装置に充電させ、前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように前記蓄電装置を充電させ、前記発電装置の出力が、所定の出力低減レートによって前記目標出力に低減されるまでにかかる所要時間を算出し、前記所要時間かけて前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率となるように制御する第2処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、蓄電装置の充電機能停止や劣化の進行を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る発電システムの概略構成図である。
図2】(a)本発明の第1の実施形態に係る風力発電装置の出力の時間傾向を示した図、(b)第1の実施形態に係るマスターコントローラによる充放電制御する場合の充電電流の時間傾向を示した図、(c)第1の実施形態に係る二次電池の充電率の時間傾向を示した図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るマスターコントローラの動作フローである。
図4】本発明の第1の実施形態に係るマスターコントローラの動作フローの続きである
図5】本発明の第2の実施形態に係る発電システムの概略構成図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図7】(a)本発明の第2の実施形態に係る風力発電装置の出力の時間傾向を示した図、(b)第2の実施形態に係る第2蓄電装置の充電率の時間傾向を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る制御装置、それを備えた発電システム、及び制御方法並びに制御プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係るマスターコントローラ(制御装置)10を備えた発電システム1の概略構成を示している。本実施形態においては、自然エネルギーによって発電する発電装置は、風力発電装置(以下「風車」ともいう)である場合を例に挙げて説明するが、発電装置は風力発電装置の他に太陽光発電装置、波力発電装置など発電量平準化が可能な電力貯蔵装置との組合せが好ましい発電装置であり、風力発電装置に限定されない。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態に係る発電システム1は、風力発電装置(発電装置)2と、電力貯蔵装置3と、マスターコントローラ10とを備えており、電力系統6と接続されている。マスターコントローラ10は、接続点から取得される風力発電装置の出力に基づいて決定される充放電指令値を電力貯蔵装置3に出力する。
また、風力発電装置コントローラ20は、ウインドファームコントローラ21から取得した指令に基づいて風力発電装置2を制御する。
【0026】
風力発電装置2は、自然環境によって出力が変動する発電装置の一例であり、風力によって発電する発電装置である。簡素化のため図1は風力発電装置2が1個である場合を例に挙げて説明するが、マスターコントローラ10で管理する風力発電装置2の個数は特に限定されない。また、本実施形態では、風力発電装置を例に挙げているが、異なる種類の発電装置が複数設けられていてもよい。
【0027】
電力貯蔵装置3は、バッテリーコントローラ30と、二次電池(蓄電装置)31と、電力変換器32とを備えている。
二次電池31は、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池、ニッケル水素二次電池など特に限定されないが、充放電の追従性がよいことからリチウムイオン二次電池であることが好ましい。
バッテリーコントローラ30は、マスターコントローラ10から取得する充放電指令値に基づいて電力変換器32を制御し、二次電池31の充電率SOC(State of Charge)を調整する。
【0028】
電力変換器32は、交流と直流を変換する交流直流変換器であって、例えば、バッテリーコントローラ30によって決定された充放電指令値とするために二次電池31に蓄電されている直流電力を交流電力に変換し、二次電池31から放電させる。また、電力変換器32は、バッテリーコントローラ30によって決定された充放電指令値にするために風力発電装置2や電力系統6から取得した交流電力を直流電力に変換し、変換後の電力を二次電池31に出力し、二次電池31を充電させる。
【0029】
マスターコントローラ10は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
具体的には、図1に示されるように、マスターコントローラ10は、判定部(判定手段)11と、制御部(制御手段)12とを備えている。
【0030】
電力系統6から系統安定化のため風力発電装置2の出力をある一定値以下に低下させる指令が出されることがある。判定部11は、電力系統6の出力低減指令を取得した場合に、現在の二次電池31の充電率である現状値が、二次電池31の目標充電率より大きいか否かを判定し、判定結果を出力する。本実施形態において、目標充電率は、例えば、SOC50%と設定されていることとして説明するが、これに限定されず、目標とする充電率から所定範囲を設けて、例えば、目標充電率SOC50%±2%と設定してもよい。また、ここで用いる数値は実施形態を説明するための一例である。
【0031】
制御部12は、判定の結果、二次電池31の現状値が目標充電率以下であると判定された場合に、風力発電装置2の出力と出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を二次電池31に充電させ、二次電池31の充電率が目標充電率となるように充電させる。図2(a)には、横軸に時間を示し、縦軸に風力発電装置2の出力を示している。図2(a)に示すように、制御部12は、風力発電装置2の出力が目標出力になるまでの差の出力、すなわち、時刻0から時刻tの期間の目標出力以上の出力(斜線部)の少なくとも一部を二次電池31に充電させる。
【0032】
具体的には、制御部12は、以下のように充電電流を制御することによって、二次電池31の充電率を目標充電率になるように充電する。
制御部12は、風力発電装置2の出力が、所定の出力低減レートによって目標出力に低減されるまでにかかる所要時間tを算出し、所要時間tの時間をかけて二次電池31の充電率が目標充電率となるように制御する。より具体的には、風力発電装置2の出力と目標出力との差を低下させるべき風車出力ΔPとし、所定の風車出力低減レートをdp/dtとして示す場合に、所要時間tは以下の(1)式によって求められる。
【数1】
【0033】
制御部12は、二次電池31の劣化に影響を与えない所定の閾値以下の充電電流値で二次電池31を充電させる。具体的には、制御部12は、現状値と目標充電率との差ΔSOCと所要時間tとに基づいて仮の充電電流値I_preを算出し、仮の充電電流値I_preが所定の閾値より小さい場合に、算出した仮の充電電流値I_preの充電電流によって二次電池31を充電させ、仮の充電電流値I_preが閾値以上である場合に閾値の充電電流によって二次電池31を充電させる。
【0034】
二次電池31の劣化に影響を与えない所定の閾値以下の充電電流値とは、例えば、1C以下が好ましい。ここで、1Cとは、1〔kWh〕のシステムを1時間かけて充電するときに流れる電流値とする。
充電電流に閾値を設ける根拠は、風力発電装置2の出力低減レートが速い場合には、二次電池31に大電流が流れることになり二次電池31が劣化(損傷)するおそれがあるので、二次電池31の劣化(損傷)を防ぐためである。充電電流に閾値を設けることにより、二次電池31の充電率を目標充電率に到達させることよりも二次電池31の劣化(損傷)を防ぐことを優先できる。
【0035】
また、仮の充電電流値I_preは以下の(2)式で求められる。
【数2】
【0036】
制御部12は、こうして求めた仮の充電電流値I_preと閾値1Cとを比較し、仮の充電電流値I_preが閾値1Cより小さければ仮の充電電流値I_preを二次電池31を制御する充電電流として採用して制御し、仮の充電電流値I_preが閾値1C以上であれば閾値1Cを二次電池31を制御する充電電流として採用して制御する。このように決定された充電電流で制御すると、図2(b)のような緩やかな充電電流の変化となる。
【0037】
このように充電電流が制御された二次電池31は、図2(c)に示すように、時刻0から時刻tの風車出力が目標出力まで出力低減される所要時間tの時間をかけて、二次電池31が目標充電率に到達する。二次電池31が目標充電率に到達したら、充放電を停止する。風力発電装置2が目標出力に到達したことが検出された後、二次電池31による平滑化制御が行われる。
こうして二次電池31の充電率が目標充電率を維持するように制御されることにより、風車出力低減の完了後の時刻t以降において、系統の安定度が増す。また、二次電池31の充電率が目標充電率を維持することによって、最小限の充放電で平滑化でき、かつ、二次電池31の劣化の進行を防ぐことができる。
【0038】
以下に、本実施形態にかかるマスターコントローラ10の作用について説明する。
通常運転がされている場合に(図3のステップSA1)、出力低減指令を取得したか否かを判定する(図3のステップSA2)。出力低減指令を取得していない場合には(図3のステップSA2のNO)、出力低減指令を取得したか否かの判定を繰り返す。電力系統6の監視者より系統安定化のため所定の出力制限値を指定する出力低減指令が発令され、マスターコントローラ10に出力低減指令が入力される。出力低減指令を取得した場合には(図3のステップSA2のYES)、二次電池31の充電率が目標充電率SOC50%より大きいか否かが判定される(図3のステップSA3)。
【0039】
二次電池31の充電率が目標充電率SOC50%以下であると判定された場合には(図3のステップSA3のNO)、充電電流1C以下のレートで充電を行い(図3のステップSA4)、図3のステップSA3を繰り返す。
二次電池31の充電率が目標充電率SOC50%より大きいと判定された場合には(図3のステップSA3のYES)、二次電池31の充放電が停止され(図3のステップSA5)、風力発電装置2の出力低減が完了したか否かが判定される(図3のステップSA6)。風力発電装置2の出力低減が完了していないと判定された場合には、この判定を繰り返し、風力発電装置2の出力低減が完了と判定された場合には、平準化運転が開始される(図3のステップSA7)。
【0040】
平準化運転が開始されると(図4のステップSB1)、風力発電装置2の出力低減指令が解除されたか否かが判定される(図4のステップSB2)。風力発電装置2の出力低減指令が解除されていない場合には(図4のステップSB2のNO)、この判定を繰り返し、風力発電装置2の出力低減指令が解除された場合には(図4のステップSB2のYES)、二次電池31の充放電を停止させる(図4のステップSB3)。その後、風力発電装置2を通常運転に移行制御させ、移行が完了したか否かが判定され(図4のステップSB4)、移行が完了した場合には、通常運転が開始される(図4のステップSB5)。
【0041】
以上説明してきたように、本実施形態に係るマスターコントローラ10、それを備えた発電システム1、及び制御方法並びに制御プログラムによれば、電力系統6の出力低減指令を取得した場合に、出力低減指令によって目標とされる目標出力以上の出力は余剰となるので、二次電池31の現在の充電率である現状値が目標充電率以下であると判定された場合には、二次電池31が目標充電率となるまで余剰となった出力の少なくとも一部を二次電池31に充電させる。
このように、従来は余剰となり捨てられていた風力発電装置2の出力の一部を蓄電し、目標充電率を維持するように充電制御されることによって、二次電池31が望ましい状態で運用される。これにより、二次電池31の充電が急激に進行して満充電に到達するのを防ぎ、充電機能停止や蓄電装置の劣化の進行を防ぐことができる。
【0042】
なお、上記実施形態において、電力系統6の出力低減指令は、電力系統6を監視する監視者が発令したものとして説明していたが、これに限定されず、マスターコントローラ10が、電力系統6側から出力低減指令を取得したことによって充放電制御を開始することとしてもよい。
【0043】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態について図5から図7を用いて説明する。本第2の実施形態に係る発電システム1´は、蓄電装置として、短周期の出力変動の抑制に優れた第1蓄電装置31aと、長周期の出力変動の抑制に優れた第2蓄電装置31bとを備える点で第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0044】
図5は、本実施形態にかかる発電システム1´の概略構成を示している。
発電システム1´は、第1蓄電装置31aと、第2蓄電装置31bとを備えている。
第1蓄電装置31aは、上記第1の実施形態で述べた二次電池31と同様に制御されるものであり、風力発電装置2の出力と出力低減指令によって目標とされる目標出力との差の出力の少なくとも一部を充電し、充電率が目標充電率となるように充電制御される。第1蓄電装置31aは、短周期の出力変動の抑制に優位性を持つ電池であって、例えば、リチウムイオン電池等が用いられる。
第2蓄電装置31bは、長周期の出力変動の抑制に優位性を持つ電池であって、例えば、鉛電池、ナトリウム・硫黄電池(NAS電池(登録商標))等が用いられる。第2蓄電装置31bは、出力低減指令が検出された場合に、風力発電装置2の余剰出力をできるだけ充電させるように制御される蓄電装置である。
【0045】
制御部12´は、電力系統6の出力低減指令を取得した場合に、第2蓄電装置31bの充電率が所定の満充電状態となるまで、第2蓄電装置31bを充電させる。
また、制御部12´は、第2蓄電装置31bの充電率が所定の満充電状態よりも所定量低い充電率となったことを検出した場合に、風力発電装置2の出力を低減させる指令を出力する。
【0046】
図6は、制御部12´の機能ブロック図を示している。合成出力P_total_measureは、風力発電装置2の出力と第1蓄電装置31a及び第2蓄電装置31bの充電量とに基づいて算出される。合成出力P_total_measureと、目標出力P_total_targetとの差をデマンド値P_dem_expとし、第2蓄電装置31bに対する指令値が、所定の満充電状態までを充電可能量とするリミットRによって制限されて出力される。
また、第2蓄電装置31bで充電しきれない分の出力は、風力発電装置2に対する出力指令P_dem_wtgとして出力される。なお、このリミットRは、第2蓄電装置31bにかけられる制限であり、充電率が上がればリミットRの値が小さくなり、充電可能量が小さくなる。
【0047】
以下に、本実施形態に係る発電システム1´の作用について図7を用いて説明する。
一点鎖線は、第2蓄電装置31bが設けられる場合の風力発電装置2の出力制限の様子を示しており、実線は、第2蓄電装置31bが設けられない場合(例えば、第1の実施形態)の風力発電装置2の出力制限の様子を示しており、点線は、風力発電装置2と第1蓄電装置31aと第2蓄電装置31bとによって目標とする目標合成出力である。
【0048】
時刻t0において、出力低減指令が取得され、出力制限運転が開始されると、第1蓄電装置31aは第1の実施形態で述べたように制御される。第2蓄電装置31bは、第2蓄電装置31bの充電率が所定の満充電状態よりも所定量低い充電率に到達しているか否かが判定され、所定の満充電状態よりも所定量低い充電率に到達していない場合には、風力発電装置2の出力低減は行わずに、充電率が所定の満充電状態よりも所定量低い充電率に到達するまで第2蓄電装置31bに充電をさせる。そうすると、風力発電装置2の出力低減がされていなくても、電力系統6側への出力は低減し、図7(a)の点線で示される目標合成出力のような合成出力が得られる。また、図7(b)で示されるように、第2蓄電装置31bの充電率は上昇する。
【0049】
第2蓄電装置31bの充電率が所定の満充電状態よりも所定量低い充電率に到達していることが検出された場合には、制御部12からウインドファームコントローラ21に対して、風力発電装置2の出力を低減させる出力指令値が出力される。ウインドファームコントローラ21は、出力指令値を取得すると、風力発電コントローラ20を介して出力指令値に基づいて風力発電装置2の出力を低減させる。そうすると、図7(a)の一点鎖線で示されるように、時刻t1以降では、風力発電装置2の出力が低減される。
風力発電装置2の出力の低減と、第2蓄電装置31bによる充電によって、時刻t2において、目標合成出力に一致するような出力が得られる。
電力系統6側に出される出力が、目標合成出力に一致した場合には、平滑化が開始され、第1蓄電装置31a及び第2蓄電装置31bによる平滑化制御が開始される。
【0050】
風車発電装置2の出力を低減させる制御の完了後であったとしても、わずかながら風力発電装置2の出力は、該当風力発電装置2に吹き込む風速変動に依存する。そのため、図7(a)で示されるように、風力発電装置2は出力変動がみられることがあるが、第2蓄電装置31bが所定の満充電状態に到達していなければ、第1蓄電装置31aよりも優先して第2蓄電装置31bに充電が行われる。時刻t3において、第2蓄電装置31bの充電率が所定の満充電状態に到達すると、第2蓄電装置31bの充電は完了され、第2蓄電装置31bの充放電が停止される。時刻t3以降は、第1蓄電装置31aによって平滑化制御が行われる。
【0051】
以上説明してきたように、本実施形態に係るマスターコントローラ10、それを備えた発電システム1、及び制御方法並びに制御プログラムによれば、風力発電装置2の出力を低減させる制御をしていなくても、長周期の出力変動の抑制に優れた第2蓄電装置31bによって充電することにより、風力発電装置2の出力と第2蓄電装置31bの充電量とによって得られる目標合成出力は徐々に低減できる。これにより、風力発電装置2の出力を低減させる制御を遅らせることができるので、従来、捨てられていた風力発電装置2の出力の一部をより多く蓄電でき、売電量が増加する。
【符号の説明】
【0052】
1 発電システム
2 風力発電装置(発電装置)
3 電力貯蔵装置
6 電力系統
10 マスターコントローラ(制御装置)
11 判定部(判定手段)
12 制御部(制御手段)
30 バッテリーコントローラ
31 二次電池(蓄電装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7