(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)成分中におけるスルフォン酸基の位置が炭素鎖の2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量が5質量%以上、25質量%以下である請求項1記載の殺菌洗浄剤組成物。
(a)成分中におけるスルフォン酸基の位置が炭素鎖の1位に存在するオレフィンスルフォン酸塩の含有量が3質量%以下である請求項1又は2に記載の殺菌洗浄剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(a)成分>
本発明の殺菌洗浄剤組成物における(a)成分は、内部オレフィンスルフォン酸塩である。殺菌効果と洗浄時の泡立ち、泡質及びすすぎ性の観点から、炭素数は12以上18以下の内部オレフィンスルフォン酸塩である。洗浄時の泡立ちの観点から炭素数は12以上が好ましく、14以上がより好ましく、16以上が更に好ましい。またすすぎ性の観点から18以下である。
【0011】
本発明において、内部オレフィンスルフォン酸塩は、原料である内部オレフィン(2重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィン)をスルフォン化、中和及び加水分解することで得られるスルフォン酸塩である。また、内部オレフィンとは炭素−炭素二重結合を炭素鎖の内部に有するオレフィンである。この内部オレフィンをスルフォン化すると、定量的にβ−サルトンが生成し、β−サルトンの一部は、γ−サルトン、オレフィンスルフォン酸へと変化し、更にこれらが中和、加水分解工程においてヒドロキシアルカンスルフォン酸塩と、オレフィンスルフォン酸塩へと転換される(例えば、J.Am.oil chem.Soc.69,39(1992)。ここで得られるヒドロキシアルカンスルフォン酸塩のヒドロキシ基はアルカン鎖の内部にあり、オレフィンスルフォン酸塩の二重結合はオレフィン鎖の内部にある。また、得られる生成物は、主にこれらの混合物である。本明細書では、これらの各生成物及びこれらの混合物を総称して内部オレフィンスルフォン酸塩((a)成分)という。
【0012】
(a)成分の内部オレフィンスルフォン酸塩は1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。炭素数16の内部オレフィンスルフォン酸塩と炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸塩を組み合わせて用いるのが、洗浄時の泡質、すすぎ性の観点から好ましい。この場合に炭素数16と炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸塩の質量比は、洗浄時の泡質の観点から50/50以上が好ましく、60/40以上がさらに好ましく、70/30以上がさらに好ましい。またすすぎ性の観点から99/1以下が好ましく、95/5以下がより好ましく、更に好ましくは90/10以下である。
【0013】
なお、前記質量比は、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(以下、HPLC−MSと省略)により測定できる。具体的には、(a)成分又は得られる殺菌洗浄剤組成物から、HPLCにより炭素数16の内部オレフィンスルフォン酸塩と炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸塩のピークを分離し、それぞれをMSにかけることで同定でき、そのHPLC−MSピーク面積から質量比を求めることができる。
【0014】
(a)成分の内部オレフィンスルフォン酸塩のスルフォン酸基は、前記の製法から明らかなように、内部オレフィンスルフォン酸塩の炭素鎖の内部に存在する。本発明においては、(a)成分中に於いて、当該スルフォン酸基の位置が炭素鎖の2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量が低く、より内部に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量が高いものが、洗浄時の泡立ちの点で好ましい。
【0015】
なお、(a)成分として、炭素数16と炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸塩を組み合わせて用いる場合、いずれの内部オレフィンスルフォン酸塩もスルフォン酸基の位置が炭素鎖の2位に存在する含有量が低く、より内部に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量が高い方が好ましい。
【0016】
(a)成分中における、スルフォン酸基の位置が炭素鎖の2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量は、洗浄時の泡立ちや泡質、すすぎ性の観点から、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは24質量%以下であり、更に好ましくは23質量%以下、また更に好ましくは18質量%以下である。
【0017】
(a)成分中における、スルフォン酸基の位置が炭素鎖の1位に存在するオレフィンスルフォン酸塩の含有量は、洗浄時の泡立ちや泡質、すすぎ性の観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2.5質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下であり、また更に好ましくは1.5質量%以下であり、より更に好ましくは1質量%以下である。
【0018】
ここで、内部オレフィンスルフォン酸塩の炭素鎖におけるスルフォン酸基の存在位置は、原料である内部オレフィンの二重結合の位置に依存し、従って(a)成分中における、スルフォン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量は、原料である内部オレフィン中において二重結合の位置が2位に存在する内部オレフィンの含有量と概ね一致する。
【0019】
また、(a)成分中における、スルフォン酸基の位置が炭素鎖の3位から内側に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量は、洗浄時の泡立ちや泡質、すすぎ性の観点から、好ましくは、65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上である。なお、(a)成分中における、スルフォン酸基が3位から内側に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量は、原料である内部オレフィン中において二重結合の位置が3位から内側に存在する内部オレフィンの含有量と概ね一致する。
【0020】
(a)成分の殺菌洗浄剤組成物中の含有量は0.5質量%以上、20質量%以下である。起泡性、洗浄性を十分に発揮させる観点から、当該含有量は好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上である。また(b)成分による殺菌効果を十分に発揮させる観点から、当該含有量は好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0021】
<(b)成分>
本発明の殺菌洗浄剤組成物における(b)成分は油溶性殺菌剤である。油溶性殺菌剤の具体例としては特に限定されるものではないが、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノール等が挙げられる。
【0022】
また、(b)成分としては、1種類の油溶性殺菌剤を単独で使用することができるが、2種類以上を併用することもできる。1種類の油溶性殺菌剤を単独で使用する場合は殺菌性の観点より、好ましくはトリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、パラクロロメタキシレノールから選ばれる1種を用い、より好ましくはトリクロサン、パラクロロメタキシレノールから選ばれる1種を用い、さらに好ましくはトリクロサンを用いる。
【0023】
殺菌洗浄剤組成物中の(b)成分の含有量は0.1質量%以上、1質量%以下である。殺菌効果を十分に発揮させる観点から、当該含有量は0.2質量%以上が好ましく、組成物の安定性を確保する観点から、当該含有量は1質量%以下が好ましく、さらに0.6質量%以下がより好ましい。
【0024】
<(c)成分>
本発明の殺菌洗浄剤組成物における(c)成分はLogPが2以上、4以下である溶剤である。本発明において、LogPはChem & Bio Draw Ultra ver.11.0のChemPropを用いて算出した計算値(CLogP)を用いる。また、本発明において溶剤とは、25℃において(b)成分を溶解することのできる液体を示す。殺菌洗浄剤組成物に(c)成分を配合することによって、殺菌洗浄剤組成物の油脂汚れに対する洗浄効果を低下させることなく、大腸菌等の細菌に対する殺菌効果をより一層発揮させるという効果が奏される。
【0025】
(c)成分の具体例としては、LogPが2以上、4以下であるアルキルグリセリルエーテル(下記一般式(I))、グリコールエーテル(下記一般式(II))、及びアルコール(下記一般式(III))、等が挙げられる。
【0026】
R
1−O−CH
2−CHOH−CH
2OH (I)
式中、R
1は炭素数8以上、12以下の炭化水素基である。
【0027】
R
1の炭化水素基としては、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基が例示される。当該アルキル基としては、例えば、2−エチルへキシル基、n−オクチル基が挙げられ、これらのアルキル基は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせても良い。
【0028】
一般式(I)で表されるアルキルグリセリルエーテルとしては、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル(LogP=2.0)、n−オクチルグリセリルエーテル(LogP=2.1)、イソデシルグリセリルエーテル(LogP=3.1)が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0029】
R
21−O−(C
2H
4O)
x−(C
3H
6O)
y−R
22 (II)
式中、R
21及びR
22はそれぞれH又は炭素数8以上、10以下の炭化水素基を表し、R
21及びR
22が同時にHであることはない。x、yはそれぞれ(C
2H
4O)、(C
3H
6O)の平均付加モル数であり、x、yは独立して0以上、3以下の数であり、x、yが同時に0であることはない。(C
2H
4O)基、(C
3H
6O)基の付加の順番は問わない。また付加はランダムでもブロックでもよい。
【0030】
一般式(II)で表されるグリコールエーテルとしては、2−エチルへキシルグリコール(LogP=2.8)、2−エチルへキシルジグリコール(LogP=2.7)、デカンジグリコール(LogP=3.9)が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0031】
R
3−OH (III)
式中、R
3は炭素数6以上、10以下の炭化水素基である。
一般式(III)のアルコールは、R
3の種類に応じて第一級アルコールであってもよく、第二級アルコールであってもよい。
【0032】
R
3の炭化水素基としては直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が例示される。当該アルキル基としては、例えば、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられ、好ましくは、炭素数8以上、10以下のアルキル基であり、具体的には、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。当該アルケニル基としては、例えば、オクテン基が挙げられる。
【0033】
一般式(III)の具体的な(c)成分としては、1−ヘプタノール(LogP=2.4)、2−エチルヘキサノール(LogP=2.8)、1−オクタノール(LogP=2.9)、1−デカノール(LogP=4.0)、等が挙げられる。(c)成分としては、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、(c)成分としては、原料臭の観点からアルキルグリセリルエーテルが好ましく、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル(LogP=2.0)、n−オクチルグリセリルエーテル(LogP=2.1)、イソデシルグリセリルエーテル(LogP=3.1)がより好ましく、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル(LogP=2.0)がより更に好ましい。
【0035】
洗浄剤組成物中の(c)成分の含有量は、油脂汚れに対する洗浄効果を低下させることなく、大腸菌等の細菌に対する殺菌効果を発揮させる観点から0.25質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、製品安定性の観点から7.0重量%以下であり、5.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましい。
【0036】
(a)成分と(c)成分との比率は油脂汚れに対する洗浄効果を低下させることなく、大腸菌等の細菌に対する殺菌効果を発揮させる観点から、質量比(a)/(c)は好ましくは1/1以上である。製品安定性の観点から、当該質量比は好ましくは8/1以下であり、より好ましくは5/1以下であり、さらに好ましくは4/1以下である。
【0037】
<殺菌洗浄剤組成物>
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、水を媒体とする液状であることが望ましい。
【0038】
本発明の殺菌洗浄剤組成物(25℃)のpHは4.7以上、7.5以下である。殺菌性の観点より、好ましくはpHが7以下であり、より好ましくはpHが6.5以下である。pHは本発明の殺菌洗浄剤組成物の原液(25℃)を測定することによって求める。測定はガラス電極法のpHメーターにて行うことができる。後述の実施例に示す数値は、HORIBA pHメーター F−21((株)堀場製作所製)を用いた測定値である。
【0039】
本発明の殺菌洗浄剤組成物のpHを所望の範囲に調整するために用いられるpH調整剤としては、本発明の技術分野において公知のpH調整剤が挙げられる。例えば酸性側への調整としてはクエン酸、リンゴ酸等、アルカリ側への調整としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
【0040】
さらに本発明の殺菌洗浄剤組成物は、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えばエタノール等の低級アルコール類;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類;グアーガム等の植物由来の多糖類;キサンタンガム等の微生物由来の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類;染料、顔料等の着色剤;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類;植物エキス類;防腐剤;キレート剤;ビタミン剤;香料;抗炎症剤;酸化防止剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。例えば本発明の殺菌洗浄剤組成物は、防腐剤・保存剤として更に安息香酸及び/又はその塩を含むことができる。
【0041】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、通常使用されている容器に充填して使用することが可能であるが、泡吐出(フォーマー)容器に充填することにより、起泡性が良く、泡の安定性も良好となるため、泡吐出容器に充填することがより好ましい。泡吐出容器としては、殺菌洗浄剤組成物を空気と混合して発泡状態で吐出できるものであれば特に限定されず、例えば、軟質容器の胴部を押圧して吐出するスクイズフォーマー型、押圧ポンプより吐出するポンプフォーマー型等を用いることができる。中でも、発泡機構に多孔質膜体を備えたものが好ましく、洗浄剤組成物が通過する厚さが0.1〜2mm程度のスポンジ状、焼結体、網状等の多孔質膜体を単層又は複数層で、又は複数箇所に備えたものとすることができる。多孔質膜体のメッシュサイズは、50〜500メッシュ、特に150〜400メッシュが好ましい。また、このような多孔質膜体の材質として、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等のプラスティック材料が好ましい。
【0042】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は常法に従って製造することができる。例えば、(c)成分に(b)成分を溶解させた後、(a)成分、水を添加し、pH調整剤で4.7以上7.5以下の目標pHに調整し製造することができる。
【0043】
さらに本発明の殺菌洗浄剤組成物は、身体用の液体殺菌洗浄剤として、例えばハンドソープ等の手指用の洗浄剤、ボディーシャンプー又はヘアーシャンプーとして用いられるのが好ましく、ハンドソープ等の手指用の洗浄剤として用いられるのがより好ましい。
【0044】
以下に本発明の種々の実施形態を示す。
<1>
(a)成分:炭素数12以上18以下の内部オレフィンスルフォン酸塩を0.5質量%以上20質量%以下、
(b)成分:油溶性殺菌剤を0.1質量%以上1.0質量%以下、及び
(c)成分:LogPが2.0以上4.0以下である溶剤を0.25質量%以上7.0質量%以下含有し、25℃におけるpHが4.7以上7.5以下である殺菌洗浄剤組成物。
<2>
(b)成分がトリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールからなる群より選択される1種又は2種以上である、<1>記載の殺菌洗浄剤組成物。
<3>
更に安息香酸及び/又はその塩を含む<1>又は<2>記載の殺菌洗浄剤組成物。
<4>
(a)成分の炭素数が好ましくは14以上、より好ましくは16以上、また好ましくは18以下である、<1>から<3>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
<5>
(a)成分の内部オレフィンスルフォン酸塩が炭素数16の内部オレフィンスルフォン酸塩と炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸塩の組み合わせである、<1>から<4>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
<6>
炭素数16と炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸塩の質量比が50/50以上、好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、また99/1以下、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下である、<5>記載の殺菌洗浄剤組成物。
<7>
(c)成分がLogPが2以上、4以下のアルキルグリセリルエーテル、グリコールエーテル、及びアルコールから選ばれる1種又は2種以上である、<1>から<6>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
<8>
(a)成分中における、スルフォン酸基の位置が炭素鎖の2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、また好ましくは25質量%以下、より好ましくは24質量%以下、更に好ましくは23質量%以下、また更に好ましくは18質量%以下である、<1>から<7>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
<9>
(a)成分中における、スルフォン酸基の位置が炭素鎖の1位に存在するオレフィンスルフォン酸塩の含有量が、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、また更に好ましくは1.5質量%以下、より更に好ましくは1.0質量%以下である、<1>から<8>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
<10>
(a)成分と(c)成分との質量比(a)/(c)が1/1以上であり、好ましくは8/1以下、より好ましくは5/1以下、更に好ましくは4/1以下である、<1>から<9>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
<11>
(c)成分が下記一般式(I)から選ばれる<1>から<10>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
R
1−O−CH
2−CHOH−CH
2OH (I)
式中、R
1は炭素数8以上、12以下の炭化水素基である。
<12>
25℃におけるpHが7以下である<1>から<12>の何れか1に記載の殺菌洗浄剤組成物。
【実施例】
【0045】
本発明を下記実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(a)成分
表1に実施例及び幾つかの比較例で用いた内部オレフィンスルフォン酸塩を示すが、それらは以下に記載するようにして得られた。
【0046】
内部オレフィンの製造
[製造例A]炭素数12のオレフィンの合成
攪拌装置付きフラスコに1−ドデセン(リニアレン12、出光興産株式会社製)6000g(35.6モル)、固体酸触媒としてプロトン性β−ゼオライト(CP−814E、Zeolyst社)1080g(原料のオレフィンに対して3質量%)を仕込み、攪拌下、120℃にて20時間、反応を行った。続いて、粗内部オレフィンを蒸留用フラスコに移し、124−136℃/7.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数12の内部オレフィンを得た。得られた内部オレフィンの二重結合分布は、C1位0.5質量%、C2位33.1質量%であった。内部オレフィンの二重結合位置は、ガスクロマトグラフィーによって測定できる。
【0047】
[製造例B]炭素数14のオレフィンの合成
攪拌装置付きフラスコに1−テトラデセン(製品名:リニアレン14、出光興産株式会社製)6000g(30.6モル)、固体酸触媒としてプロトン性β−ゼオライト(CP−814E、Zeolyst社)180g(原料のオレフィンに対して3質量%)を仕込み、攪拌下、120℃にて20時間反応を行い、粗オレフィンを得た。続いて、粗オレフィンを蒸留用フラスコに移し、124〜136℃/7.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数14のオレフィンを得た。得られた内部オレフィンの二重結合分布は、C1位1.3質量%、C2位31.8質量%、であった。
【0048】
[製造例C]炭素数16のオレフィンの合成
攪拌装置付きフラスコに1−ヘキサデカノール(製品名:カルコール6098、花王株式会社製)7000g(28.9モル)、固体酸触媒としてγ−アルミナ(STREM Chemicals,Inc社)700g(原料アルコールに対して10質量%)を仕込み、攪拌下、280℃にて系内に窒素(7000mL/min.)を流通させながら5時間反応を行い、粗オレフィンを得た。反応終了後のアルコール転化率は100%、炭素数16のオレフィン純度は99.6%であった。得られた粗オレフィンを蒸留用フラスコに移し、136〜160℃/4.0mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数16のオレフィンを得た。得られたオレフィンの二重結合分布を測定した結果、1位の炭素原子にあるものの割合は0.5質量%、2位の炭素原子にあるものの割合は25.0%であった。
【0049】
[製造例D]炭素数18のオレフィンの合成
攪拌装置付きフラスコに1−オクタデカノール(製品名:カルコール8098、花王株式会社製)7000g(25.9モル)、固体酸触媒としてγ−アルミナ(STREM Chemicals,Inc社)1050g(原料アルコールに対して15質量%)を仕込み、攪拌下、285℃にて系内に窒素(7000mL/min.)を流通させながら13時間反応を行い、粗オレフィンを得た。反応終了後のアルコール転化率は100%、炭素数18のオレフィン純度は98.5%であった。得られた粗オレフィンを蒸留用フラスコに移し、148〜158℃/0.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数18のオレフィンを得た。得られたオレフィンの二重結合分布を測定した結果、1位の炭素原子にあるものの割合は0.3質量%、2位の炭素原子にあるものの割合は20.0%であった。
【0050】
内部オレフィンスルフォン酸塩の製造
[製造例1]炭素数が12の内部オレフィンスルフォン酸塩(内部オレフィンスルフォン酸塩1)
製造例Aで得た炭素数12の内部オレフィンを、外部にジャケットを有する薄膜式スルフォン化反応器を使用して三酸化硫黄ガスと反応させ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液することでスルフォン化反応を行った。スルフォン化反応の際のSO
3/オレフィンのモル比は1.09に設定した。得られたスルフォン化物を、理論酸価に対し1.5モル倍量の水酸化ナトリウムで調製したアルカリ水溶液へ添加し、攪拌しながら30℃、1時間中和した。中和物をオートクレーブ中で160℃、1時間加熱することで加水分解を行い、炭素数12の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩を得た。
【0051】
得られた粗生成物300gを分液漏斗に移し、エタノール300mLを加えた後、1回あたり石油エーテル300mLを加えて油溶性の不純物を抽出除去した。その際、エタノールの添加により油水界面に析出した無機化合物(主成分は芒硝)も、油水分離操作により水相から分離除去し、この操作を3回行った。水相側を蒸発乾固して、炭素数12の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウムを得た。この炭素数12の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム中、スルフォン酸基が炭素鎖の1位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、3質量%以下、2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、21質量%であった。スルフォン酸基が炭素鎖の1位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、原料の内部オレフィン中の二重結合が1位に存在するαオレフィンの含有量より算出した。スルフォン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0052】
[製造例2]炭素数が14の内部オレフィンスルフォン酸塩(内部オレフィンスルフォン酸塩2)
製造例Bで得た炭素数14の内部オレフィンから、製造例1と同様の条件で炭素数14の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩を得た。この炭素数14の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩中、スルフォン酸基が炭素鎖の1位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、3質量%以下、2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、22質量%であった。
【0053】
[製造例3] 炭素数が16の内部オレフィンスルフォン酸塩(内部オレフィンスルフォン酸塩3)
製造例Cで得た炭素数16の内部オレフィンから、製造例1と同様の条件で炭素数16の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩を得た。この炭素数16の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩中、スルフォン酸基が炭素鎖の1位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、3質量%以下、2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、19.9質量%であった。
【0054】
[製造例4] 炭素数が18の内部オレフィンスルフォン酸塩(内部オレフィンスルフォン酸塩4)
製造例Dで得た炭素数18の内部オレフィンから、製造例1と同様の条件で炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩を得た。この炭素数18の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩中、スルフォン酸基が炭素鎖の1位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、3質量%以下、2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、15質量%であった。
【0055】
[製造例5](内部オレフィンスルフォン酸塩5)
製造例Cで得た内部オレフィンと製造例Dで得た内部オレフィンを80:20の質量比で混合した炭素数16と18の混合の内部オレフィンから、製造例1と同様の条件で炭素数16と炭素数18の混合の内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩を得、内部オレフィンスルフォン酸塩5とした。この内部オレフィンスルフォン酸ナトリウム塩中、スルフォン酸基が炭素鎖の1位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、3質量%以下、2位に存在する内部オレフィンスルフォン酸塩の割合は、17.5質量%であった。
【0056】
【表1】
【0057】
(a’)成分:α−オレフィンスルフォン酸ナトリウム(C
14〜C
16)、ネオゲンAO−90〔第一工業製薬(株)製〕
(a”)成分:ポリオキシエチレン(1モル)アルキル(C
10〜C
16)エーテル硫酸アンモニウム、エマール125A〔花王(株)製〕
【0058】
(b)成分
トリクロサン、イルガサンDP300〔チバスペシャリティーケミカルズ(株)製〕
PCMX(パラクロロメタキシレノール)、〔クラリアント(株)製〕
【0059】
(c)成分
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル(LogP=2.0)、ペネトールGE−EH〔花王(株)製〕一般式(I)において、R
1は2−エチルヘキシル基(即ち、炭素数8の分岐鎖アルキル基)であるアルキルグリセリルエーテル
【0060】
配合方法
<実施例1〜6及び比較例1>
表1に示す内部オレフィンスルフォン酸1〜5、及び上記(a’)成分を用い、以下の方法により表2、表3に示す殺菌洗浄剤組成物を配合した。
【0061】
(殺菌洗浄剤組成物の調製)
500mlのガラスビーカーに、スターラーピースを挿入し、更に殺菌洗浄剤組成物の出来上がり質量が500gとなるように、表2に示す含有量(質量%)にて、全ての成分を投入した。ウォーターバスにて150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、30分間放置した。水溶液の外観が均一になったことを確認し、室温(25℃)まで冷却した。なおpHはクエン酸水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液で適宜調整した。
【0062】
(殺菌効果の試験方法と評価基準)
グラム陰性菌及びグラム陽性菌の供試菌として、大腸菌(Escherichia coliNBRC3972)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を用いた。予め、SCD培地にて前培養した培養液を準備した。前培養は、SCD培地30gを精製水1Lに加えてよく振り混ぜた後、121℃で15分間高圧蒸気滅菌後適当な容器に分注したものを用いた。各殺菌洗浄剤組成物は、滅菌精製水で3倍(v/v)に希釈し、それぞれ2mLずつ滅菌試験管に分注した。これに菌液を50μL接種し15秒作用させた。作用後、試験管から100μLを、SCDLP培地900μLで不活化した後、段階希釈した。その後SCDLP寒天培地に塗抹し、37℃で48時間培養後、生育した菌のコロニー数をカウントし、生残菌数を求めた。この場合の検出限界は2(logCFU/mL)となる。
なお、殺菌洗浄剤組成物の替わりに滅菌水2mLを滅菌試験管に分注したものに菌液を50μL接種し、以降の操作は殺菌洗浄剤と同様に行ったものをカウントし、初発菌数を求めた。
【0063】
SCD培地は日本製薬(株)製Soybean-CaseinDigest Broth >>DAIGO<< SCD培地「ダイゴ」より調製したものを用いた。
SCDLP培地は日本製薬(株)製Soybean-Casein Digest Brothwith Lecithin & Polysorbate 80 >>DAIGO<< SCDLP培地「ダイゴ」より調製したものを用いた。
SCDLP寒天培地は日本製薬(株)製Soybean-Casein Digestagar with Lecithin & Polysorbate 80 >>DAIGO<< SCDLP寒天培地「ダイゴ」より調製したものを用いた。
【0064】
試験は各殺菌洗浄剤組成物につき3回実施し、log(初発菌数/生残菌数)を求め平均値を用いた。即ち数値が高いほど、当該殺菌洗浄剤組成物の殺菌効果が高いことを意味する。
【0065】
(洗浄時の泡立ち試験方法と評価基準)
各殺菌洗浄剤組成物の1mLで15秒間手を洗い、以下のように評価した。
【0066】
各殺菌洗浄剤組成物について、10名の専門パネラーが、手洗い時の泡量の多さの官能評価を以下の基準で行った。
【0067】
5:泡立ちが良く、手を洗うための泡量が十分。
4:泡立ちがやや良く、泡で手を洗える。
3:泡立ちが普通で、泡で何とか手を洗える。
2:泡立ちがあまり良くなく、泡で手を洗い難い。
1:泡立ちが良くなく、手を洗うための泡量が不十分。
【0068】
そして、パネラー10名の平均値に基づき泡立ちを評価した。数値が大きいほど、泡量が多く泡立ちに優れる。
(洗浄時の泡質試験方法と評価基準)
各殺菌洗浄剤組成物の1mLで15秒間手を洗い、以下のように評価した。
【0069】
各殺菌洗浄剤組成物について、10名の専門パネラーが、手洗い時の泡質の官能評価を以下の基準で行った。泡質は泡の粒径が細かいクリームのような泡を質が良いと評価した。
【0070】
5:泡の粒径が細かいクリームのような良好な泡質。
4:泡の粒径がやや細かいクリームのようなやや良好な泡質。
3:泡の粒径が中間であり、泡質はどちらとも言えない。
2:泡の粒径がやや大きく、バブリーで泡質があまり良くない。
1:泡の粒径が大きく、バブリーで泡質が良くない。
【0071】
そして、パネラー10名の平均値に基づき泡質を評価した。数値が大きいほど、泡質に優れる。
(洗浄時のすすぎ性試験方法と評価基準)
各殺菌洗浄剤組成物の1mLで手を洗い(洗浄15秒、すすぎ各15秒、水温約30℃、水道水、水量一定100mL/秒)以下のように評価した。
【0072】
各殺菌洗浄剤組成物について、10名の専門パネラーが、手洗い時のぬるつきですすぎ性の官能評価を以下の基準で行った。
【0073】
5:すすぎ時間内で、ぬるつきが早く消失し、すすぎ性が良い。
4:すすぎ時間内で、ぬるつきが消失し、すすぎ性がやや良い。
3:すすぎ時間内で、何とかぬるつきが消失し、すすぎ性は普通。
2:すすぎ時間内では、ややぬるつきが残り、すすぎ性があまり良くない。
1:すすぎ時間内では、ぬるつきが残り、すすぎ性が良くない。
【0074】
そして、パネラー10名の平均値に基づきすすぎ性を評価した。数値が大きいほど、ぬるつきが少なくすすぎ性に優れる。
【0075】
実施例1から6及び比較例1の評価結果を表2にあわせて示す。
【0076】
【表2】
【0077】
<実施例7〜14及び比較例2〜5>
表3に示す成分と含有量(質量%)を用いて、pHの異なる殺菌洗浄剤組成物を調製し、実施例1〜6と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、短い使用時間で高い殺菌効果が奏され、かつ洗浄時の泡立ち、泡質、すすぎ性に優れるため、多忙な現場である病院や厨房向けのハンドソープ等の皮膚殺菌洗浄剤組成物として好適に使用し得る。