特許第6324807号(P6324807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6324807保護フィルムおよび保護フィルム用粘着剤組成物
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  • 特許6324807-保護フィルムおよび保護フィルム用粘着剤組成物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6324807
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】保護フィルムおよび保護フィルム用粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20180507BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20180507BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20180507BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180507BHJP
   B29C 47/02 20060101ALI20180507BHJP
   B65D 65/14 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J123/08
   C09J133/00
   B32B27/00 M
   B29C47/02
   B65D65/14
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-105945(P2014-105945)
(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-221842(P2015-221842A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・デュポンポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣中 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】森本 厚司
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−136148(JP,A)
【文献】 特開2009−275212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
前記基材フィルム上に形成された、保護フィルム用粘着剤組成物からなる粘着層と、を含み、
前記保護フィルム用粘着剤組成物は、不飽和カルボン酸由来の構成単位を12重量%、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位を10重量%含む、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、酸化防止剤を実質的に含まない、保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着層の層厚は、3〜100μmである、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
アクリル樹脂からなる被着体表面に前記粘着層を介して前記保護フィルムを貼り合わせ、23℃で24時間保管した後における前記粘着層の粘着強度が、5〜25g/25mmである、請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
前記粘着層は感圧式粘着層である、請求項1乃至3いずれかに記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記共重合体は、エチレン由来の構成単位を8085重量%含む、請求項1乃至4いずれかに記載の保護フィルム。
【請求項6】
前記共重合体を構成する不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸である、請求項1乃至5いずれかに記載の保護フィルム。
【請求項7】
前記共重合体のメルトフローレート(JIS K7210−1999;190℃、2.16kg荷重下)は、1〜50g/10minである、請求項1乃至6いずれかに記載の保護フィルム。
【請求項8】
不飽和カルボン酸由来の構成単位を12重量%、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位を10重量%含む、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、酸化防止剤を実質的に含まない、保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項9】
前記共重合体は、エチレン由来の構成単位を8085重量%含む、請求項8に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項10】
前記不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸である、請求項8または9に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項11】
前記共重合体のメルトフローレート(JIS K7210−1999;190℃、2.16kg荷重下)は、1〜50g/10minである、請求項8乃至10いずれかに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項12】
請求項8乃至11いずれかに記載の保護フィルム用粘着剤組成物からなるペレットまたは顆粒。
【請求項13】
請求項1乃至7いずれかに記載の保護フィルムからなる電子部品用保護フィルム。
【請求項14】
溶融した請求項8乃至11いずれかに記載の保護フィルム用粘着剤組成物をTダイから押し出してフィルムとする工程と、
前記フィルムを基材フィルム上に貼り合わせる工程と、
を含む、保護フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムと粘着層とを含む保護フィルムおよび保護フィルム用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保護フィルムとしては、例えば特許文献1〜9に記載されたものがある。
特許文献1〜3には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有不飽和単量体を必須の原料モノマーとして構成された重合体を含む水分散型組成物と、当該組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートが開示されている。この粘着剤層は、被着体への低汚染性に優れていると記載されている。
【0003】
特許文献4〜7には、エチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体を含む水性分散液と、基材および当該水性分散液から得られた層を備える積層体が開示されている。
【0004】
特許文献8には、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含む樹脂組成物からなる粘着フィルム層を基材の少なくとも片面に形成してなる保護フィルムが開示されている。特許文献9には、基材と、当該基材上に形成された、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩を含む接着層と、を備える電子部品用保護フィルムが開示されている。これらの保護フィルムは、樹脂組成物からなる粘着フィルムを基材上に貼り合わせて製造されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−241386号公報
【特許文献2】国際公開第2011/132565号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2012/141099号パンフレット
【特許文献4】特開2012−62414号公報
【特許文献5】特開2012−211226号公報
【特許文献6】特開2012−214571号公報
【特許文献7】国際公開第2011/096341号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2009/057624号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2010/061563号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保護フィルムを被着体から剥離する際に、粘着層に含まれる成分が被着体に残ることがあり問題となっていた。特に、電子部品のような精密部品においては、粘着層からの汚染を低減することが強く求められてきている。この汚染は、粘着層に含まれるポリマー由来の低分子量成分および成形加工時に必要な酸化防止剤等の添加剤が原因となる場合がある。したがって、1つの解決策として酸化防止剤を無添加とすれば、低汚染性とすることができるが、一方で、フィルム成形時における耐熱性が低下し、成形加工性が低下するという問題が生じる。このように、成形加工性の維持と、低汚染性とはトレードオフの関係にあり、これらの特性を満たす粘着層を備える保護フィルムが求められている。
【0007】
特許文献1〜7は、水性分散液を用いて粘着層を形成する技術であるが、成形加工性および被着体への低汚染性の良好な水性分散液を得るためには各種添加剤が必要であるため、低汚染性に改善の余地があった。また、水性分散液を調製する工程や粘着層を形成する際の乾燥工程等が必要となり、製造安定性に課題を有していた。
特許文献8および9には、汚染性改善についての課題や、成形加工性と被着体への低汚染性との関係性については記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示すことができる。
[1] 基材フィルムと、
前記基材フィルム上に形成された、保護フィルム用粘着剤組成物からなる粘着層と、を含み、
前記保護フィルム用粘着剤組成物は、不飽和カルボン酸由来の構成単位を12重量%、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位を10重量%含む、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、酸化防止剤を実質的に含まない、保護フィルム。
[2] 前記粘着層の層厚は、3〜100μmである、[1]に記載の保護フィルム。
[3] アクリル樹脂からなる被着体表面に前記粘着層を介して前記保護フィルムを貼り合わせ、23℃で24時間保管した後における前記粘着層の粘着強度が、5〜25g/25mmである、[1]または[2]に記載の保護フィルム。
[4] 前記粘着層は感圧式粘着層である、[1]乃至[3]いずれかに記載の保護フィルム。
[5] 前記共重合体は、エチレン由来の構成単位を8085重量%含む、[1]乃至[4]いずれかに記載の保護フィルム。
[6] 前記共重合体を構成する不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸である、[1]乃至[5]いずれかに記載の保護フィルム。
[7] 前記共重合体のメルトフローレート(JIS K7210−1999;190℃、2.16kg荷重下)は、1〜50g/10minである、[1]乃至[6]いずれかに記載の保護フィルム。
[8] 不飽和カルボン酸由来の構成単位を12重量%、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位を10重量%含む、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、酸化防止剤を実質的に含まない、保護フィルム用粘着剤組成物。
[9] 前記共重合体は、エチレン由来の構成単位を8085重量%含む、[8]に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
[10] 前記不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸である、[8]または[9]に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
[11] 前記共重合体のメルトフローレート(JIS K7210−1999;190℃、2.16kg荷重下)は、1〜50g/10minである、[8]乃至[10]いずれかに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
[12] [8]乃至[11]いずれかに記載の保護フィルム用粘着剤組成物からなるペレットまたは顆粒。
[13] [1]乃至[7]いずれかに記載の保護フィルムからなる電子部品用保護フィルム。
[14] 溶融した[8]乃至[11]いずれかに記載の保護フィルム用粘着剤組成物をTダイから押し出してフィルムとする工程と、
前記フィルムを基材フィルム上に貼り合わせる工程と、
を含む、保護フィルムの製造方法。
【0009】
酸化防止剤は、フィルム成形時における耐熱性を付与し、成形加工性を維持する目的で用いられるものであり、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等を挙げることができる。
【0010】
なお、酸化防止剤を実質的に含まないとは、製造工程において、製造装置等から混入するものを排除しない趣旨である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保護フィルムは、酸化防止剤を実質的に含まず、さらに各種添加剤を必要としない共重合体を主成分とする粘着剤組成物から得られるため低汚染性に優れる。さらに、粘着層は、所定量の構成単位から構成された、エチレンと不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を含み適切な分子構造を備えるため、保護フィルムに求められる適度な粘着強度を有するとともに、酸化防止剤を含まない場合であっても成形加工性にも優れる。すなわち、本発明の保護フィルムは、適度な粘着強度を有しつつ、低汚染性と成形加工性のバランスに優れる。
【0012】
また、本発明の保護フィルムの製造方法は、樹脂組成物をTダイから押し出して接着層を形成しており、水性分散液を用いた場合と比較して、乾燥等の複雑な工程を取ることなく簡単に製造できるので、工程の簡略化を図ることができ、製造時間も大幅に短縮化されるので生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る保護フィルムを模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の保護フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12上に形成された粘着層14を備える。なお、粘着層14上に剥離フィルム(不図示)を備えていてもよい。
【0016】
[基材フィルム12]
基材フィルム12は、ポリパラフェニレンテレフタルアミド樹脂(PPTA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、各種液晶性ポリマー(LCP)、ポリオレフィン樹脂等の耐熱性樹脂を含むことができる。
【0017】
本実施形態においては、適度な耐熱性を向上させる観点からポリイミド樹脂またはPETを含むことが好ましい。基材フィルム12の厚みは2〜100μm、好ましくは2〜50μm程度である。
【0018】
[粘着層14]
粘着層14は、保護フィルム用粘着剤組成物から得られる。当該組成物は、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、酸化防止剤を実質的に含まない。当該共重合体は、不飽和カルボン酸由来の構成単位を3〜20重量%、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位を6〜15重量%含む。
【0019】
粘着層14は、前記のような、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含むことにより、酸化防止剤を実質的に含まない構成とすることができ、成形加工性および低汚染性に優れた保護フィルムを提供することができる。また、粘着層を構成する共重合体は、エチレンおよび不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸エステル共重合体から構成されており適切な分子構造であるため、被着体を保護するに際して保護フィルムに求められる適度な粘着強度を有する。
【0020】
前記共重合体は、上記効果の観点から、不飽和カルボン酸由来の構成単位を3〜20重量%、好ましくは4〜15重量%、さらに好ましくは5〜12重量%含むことができる。
不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位は6〜15重量%、好ましくは7〜12重量%、さらに好ましくは8〜10重量%含むことができる。
エチレン由来の構成単位は、70〜91重量%、好ましくは75〜89重量%、さらに好ましくは80〜85重量%含むことができる。
上記数値範囲は適宜組み合わせることができる。
【0021】
不飽和カルボン酸由来の構成単位と不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位とが、上記範囲にあることにより、粘着層は、被着体を保護する際には強固に付着し、被着体から剥がす際には容易に剥離することができるような、適度な粘着強度となるため、保護フィルム、特に電子部品用保護フィルムとして好適に用いることができる。
【0022】
不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8の不飽和カルボン酸を挙げることができ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステルなどが用いられる。これらの不飽和カルボン酸のうちで、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)が上記効果の観点から特に好ましく用いられる。
【0023】
不飽和カルボン酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどが用いられる。これらの不飽和カルボン酸エステルのうちで、(メタ)アクリル酸ブチルが上記効果の観点から特に好ましく用いられる。
【0024】
本実施形態においては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルとの三元共重合体であることが好ましい。具体的な組合せとして、エチレンと、メタクリル酸と、アクリル酸ブチルとの組合せがより好ましい。
【0025】
粘着層14は、エチレンと不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体を含むことにより、酸化防止剤を実質的に含まない構成とすることができ、成形加工性および低汚染性により優れた保護フィルムを提供することができる。さらに、粘着層を構成する三元共重合体は、保護フィルムに求められる適度な粘着強度を有する。
【0026】
成形加工性などの観点から、共重合体のメルトフローレート(JIS K7210−1999;190℃、2.16kg荷重下)は、1〜50g/10min、好ましくは3〜40g/10min、さらに好ましくは7〜35g/10minである。
【0027】
粘着層14の層厚は、3〜100μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmとすることができる。粘着層14は感圧式の粘着層であり、被着体を保護する際には強固に付着し、被着体から剥離する際には容易に剥離することができる。
【0028】
粘着層14は、前記されたエチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、酸化防止剤を実質的に含まない保護フィルム用粘着剤組成物から形成される。この保護フィルム用粘着剤組成物には、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体以外に、低汚染性に影響を与えない範囲で、他の重合体や安定剤、粘着剤、着色剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0029】
粘着層14の両面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布などの表面処理を施すことができる。
【0030】
基材フィルム12と粘着層14との間に、中間層(不図示)を備えていてもよい。中間層としては、アンカーコート層、熱可塑性樹脂層、導電層等を挙げることができる。中間層はこれらの層から選択される少なくとも一層から構成することができる。
【0031】
<保護フィルムの製造方法>
本実施形態の保護フィルム10は、Tダイによる押出ラミネート法や、ヒートシール、ヒートプレス等のサーマルラミネート法、ドライラミネート法などにより製造することができる。
【0032】
本実施形態においては、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体のメルトフローレートが上記の範囲にあるので、Tダイによる押出ラミネート法により連続的に製造することができ、保護フィルム10の生産性が極めて向上する。
【0033】
例えば、ロール状に巻かれたポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムから繰り出されるフィルム(基材フィルム12)上に、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含む保護フィルム用粘着剤組成物を、Tダイによりフィルム状に押し出して形成(粘着層14)し、貼り合わせる。なお、保護フィルム用粘着剤組成物は、ペレットまたは顆粒として用いることができる。
【0034】
また、その後、ロール状に巻かれた状態から繰り出される剥離フィルム(不図示)を粘着層14側に積層し、圧着ロールで連続的に積層することもできる。これにより、複雑な工程を必要とせず、連続的に保護フィルム10を製造することができる。
【0035】
本実施形態において、保護フィルム10は、具体的に以下のように製造することができる。
まず、押出ラミネーション装置において、保護フィルム用粘着剤組成物を所定の温度に加熱して溶融させ、該組成物の流動性を向上させる。そして、溶融した組成物をTダイから押し出してフィルム状に成形する。
【0036】
一方、フィルムを押出成形すると同時に、粘着層14が形成される予定の基材フィルム12の面に、図示しない中間層を形成してもよい。中間層としては例えばアンカーコート層が挙げられる。まず、基材フィルム12の当該面にアンカーコート剤を塗布し、アンカーコート層を形成する。アンカーコート層により、基材フィルム12と粘着層14との密着性がより向上する。
【0037】
具体的には、押出ラミネーション装置に付設された塗布装置でアンカーコート剤を基材フィルム12に塗布し、アンカーコート剤に使用された希釈溶媒をドライヤーで乾燥する。そして、乾燥工程を経て得られた、アンカーコート層付き基材フィルム12が、一定速度でラミネート部に送られる。また、図示しない剥離フィルムもラミネート部に送られ、積層してもよい。
【0038】
そして、ラミネート部の1対のロール間に供給された、押出成形されたフィルム(粘着層14)と、アンカーコート層付き基材フィルム12と、剥離フィルムとをロール間に供給するとともに押圧し、基材フィルム12、アンカーコート層(中間層)、粘着層14、剥離フィルムが順に積層された保護フィルム10を製造することができる。
【0039】
このように、本実施形態の保護フィルムの製造方法は、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含む組成物をTダイから押し出して粘着層を形成しており、生産性に優れる。
【0040】
<保護フィルム>
本実施形態の保護フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12上に形成された粘着層14とを備える。
【0041】
保護フィルム10を、アクリル樹脂からなる被着体表面に粘着層14を介して貼り合わせ、23℃で24時間保管した後における粘着層14の粘着強度(JIS Z0237に準拠)は、5〜25g/25mm、好ましくは10〜20g/25mmである。
【0042】
このように、粘着層14は、被着体を保護するに際し、保護フィルム10に求められる適度な粘着強度を有するため、保護フィルムの粘着層として好適に用いることができる。粘着層14は感圧式の粘着層であり、被着体を保護する際には強固に付着し、被着体から剥離する際には容易に剥離することができる。
【0043】
また、60℃で3時間保管した後における粘着層14の粘着強度(JIS Z0237に準拠)は、5〜55g/25mm、好ましくは10〜50g/25mmであり、保護フィルムとして好適に用いることのできる範囲内である。
【0044】
<用途>
本実施形態の保護フィルム10の粘着層14は、保護フィルム10に求められる適度な粘着強度を有し、さらに低汚染性、耐熱性にバランスよく優れる。そのため、本実施形態の保護フィルム10は、導光板、偏光版、位相差板等の電子部品の表面に貼り付ける、電子部品用保護フィルムとして用いることができる。
【0045】
本実施形態の保護フィルム10は、使用に際して粘着層14面と電子部品の表面とを重ね合わせ、プレス接着、硬化させることにより、電子部品を保護することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[サンプル]
(1)評価用フィルム作製
40mmφTダイ成形機(ナカタニ機械社製)を用いて、下記樹脂を主成分とする樹脂組成物を押出加工し、表−2に記載の厚みとなるように評価用フィルムを作製した。押出加工において、樹脂温度は下記表−1の条件で行い、加工速度は10m/minの条件下でおこなった。
【0047】
【表1】
【0048】
・樹脂1:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸由来の構成単位の含有量11重量%、アクリル酸ブチル由来の構成単位の含有量8重量%、MFR(JIS K7210−1999;190℃、2.16kg荷重下) 10g/10分
・樹脂2:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸由来の構成単位の含有量2重量%、アクリル酸ブチル由来の構成単位の含有量5重量%、MFR 10g/10分
・樹脂3:エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸由来の構成単位の含有量11重量%、MFR 8g/10分
・樹脂4:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸由来の構成単位の含有量5重量%、アクリル酸ブチル由来の構成単位の含有量10重量%、MFR 33g/10分
・樹脂5:低密度ポリエチレン、MFR 5g/10分
・樹脂6:直鎖状低密度ポリエチレン、MFR 3.8g/10分、酸化防止剤を含む
【0049】
[評価方法]
(1)粘着力評価
JIS Z0237に準拠し、評価用フィルム(25mm幅)と被着体であるアクリル板(30mm幅、150mm長、2mm厚)を重ねて、手動式ローラー(45mm幅、重量2Kg)で2往復圧着し、評価用サンプルを得た。これを、23℃×50%RH雰囲気下で24時間又は60℃で3時間静置後、引取り速度=300mm/min、180度の角度で剥がし、粘着力の評価をおこなった。なお、測定は各5回実施し、測定値を平均した値を粘着力として用いた。
【0050】
(2)低汚染性評価
JIS Z0237に準拠し、評価用フィルム(25mm幅)と被着体であるアクリル板(30mm幅、150mm長、2mm厚)を重ねて、手動式ローラー(45mm幅、重量2Kg)で2往復圧着し、評価用サンプルを得た。これを、23℃×50%RH雰囲気下で24時間又は60℃で3時間静置後、フィルムを剥離し、暗室でアクリル板に光を当てることにより汚染の程度を目視観察した。汚染の程度は、試験前のアクリル板の汚染レベルを基準(ブランク)とし、相対比較にて下記基準にしたがって評価した。
○:ブランクと同等
△:ブランクよりも若干汚染あり
×:ブランクよりも著しく汚染あり
【0051】
[実施例1〜3、比較例1〜4]
表−1に記載の評価用フィルム1〜7について、粘着力および低汚染性を評価した。評価結果を表−2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表−2の結果から、本発明の保護フィルムを構成する粘着フィルム(粘着層)は、被着体に対する粘着性に優れ、低汚染性に優れていることが確認された。また、60℃で3時間静置後においても、これらの特性に優れており、本発明の保護フィルムを構成する粘着フィルムの成形加工性は良好であった。
【符号の説明】
【0054】
10 保護フィルム
12 基材フィルム
14 粘着層
図1