【実施例1】
【0019】
始めに、実施例1のシート1(乗物用シート)の構成について、
図1〜
図6を用いて説明する。本実施例のシート1は、
図1に示すように、自動車の助手席として構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成となっている。上記シート1は、いわゆる「パワーシート」の構成となっており、シートバック2の背凭れ角度の調整やシートクッション3の着座位置の調整をそれぞれスイッチの操作による電動操作によって行うことができる構成となっている。
【0020】
具体的には、シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、図示しない電動式のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結された構成となっている。これにより、シートバック2は、常時は上述した各リクライナによってその背凭れ角度が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によって各リクライナを電動操作することにより、その背凭れ角度が前後方向に調整される構成となっている。また、シートクッション3は、車両のフロア上に、左右一対の電動式のスライドレール4を介して連結された構成となっている。これにより、シートクッション3は、常時は上述した各スライドレール4によってその前後方向の着座位置が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によって各スライドレール4を電動操作することにより、その前後方向の着座位置が調整される構成となっている。
【0021】
また、シートクッション3は、上述した左右一対のスライドレール4との間に、電動式のシートリフタ5が介在して設けられた構成となっている。これにより、シートクッション3は、常時は上述したシートリフタ5によってその高さ位置が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によってシートリフタ5を電動操作することにより、その高さ位置が調整される構成となっている。また、シートクッション3は、その前部に、電動式のチルト機構6が備えられた構成となっている。これにより、シートクッション3は、常時は上述したチルト機構6によってその着座乗員の大腿部を支える前部の支持角度が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によってチルト機構6を電動操作することにより、上記前部の支持角度が高さ方向に調整される構成となっている。
【0022】
このように、シート1は、シートバック2の背凭れ角度の調整(前後2方向)と、シートクッション3の着座位置の調整(前後2方向と上下2方向)と、シートクッション3の前部の支持角度の調整(上下2方向)と、が可能ないわゆる「8ウェイ」と呼ばれる8方向の調整操作が可能とされた構成となっている。これらの調整操作は、シートクッション3の車両外側(図示向かって右側)の側部等の所定箇所に設けられた図示しないスイッチの操作による電動操作によって行われるようになっている。
【0023】
上述したシートリフタ5は、
図1〜
図2に示すように、詳しくは後述するが、シートクッション3の各サイドフレーム11とフロア上の各スライドレール4とにそれぞれ回転可能に連結されて設けられた左右一対のフロントリンク5A1,5A2と左右一対のリヤリンク5B1,5B2とを有する構成となっている。ここで、各サイドフレーム11がそれぞれ本発明の「シートフレーム」に相当し、各フロントリンク5A1,5A2及び各リヤリンク5B1,5B2が、それぞれ本発明の「リフタリンク」に相当する。上述したシートリフタ5は、上述した左右一対のフロントリンク5A1,5A2とリヤリンク5B1,5B2とによって、シートクッション3をフロアに対してリンク運動により昇降させることのできる左右一対の4節リンク機構を形成した構成となっている。
【0024】
図1〜
図2及び
図4〜
図6に示すように、上述した左右一対のフロントリンク5A1,5A2と左右一対のリヤリンク5B1,5B2とは、それぞれ、それらの上端部が、円鋼管製のブッシュ5G1,5G2とブッシュ5H1,5H2とによって、各側のサイドフレーム11に個別に回転可能に連結された状態とされている。詳しくは、上述した各フロントリンク5A1,5A2の上端部を各サイドフレーム11に連結する各ブッシュ5G1,5G2は、それぞれ、各フロントリンク5A1,5A2の上端部に軸方向(シート幅方向)に差し込まれて溶接により一体的に結合された状態として、各サイドフレーム11に対して回転可能となるように差し込まれて連結された状態とされている。また、各リヤリンク5B1,5B2の上端部を各サイドフレーム11に連結する各ブッシュ5H1,5H2も同様に、それぞれ、各リヤリンク5B1,5B2の上端部に軸方向(シート幅方向)に差し込まれて溶接により一体的に結合された状態として、各サイドフレーム11に対して回転可能となるように差し込まれて連結された状態とされている。
【0025】
そして、上記左右一対のフロントリンク5A1,5A2の上端部同士とリヤリンク5B1,5B2の上端部同士とは、それぞれ、円鋼管製のフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとによって互いに一体的に連結された状態とされている。ここで、各フロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとが、それぞれ本発明の「パイプ」に相当する。具体的には、上記フロントパイプ5Cは、
図4〜
図5に示すように、その両端部に縮径された形に形成された各差込部5C2,5C3が、それぞれ、上述した各フロントリンク5A1,5A2の上端部を各サイドフレーム11に連結している各ブッシュ5G1,5G2の円管内に差し込まれて溶接により一体的に結合された状態とされている。また、リヤパイプ5Dも同様に、その両端部に縮径された形に形成された各差込部5D2,5D3が、それぞれ、上述した各リヤリンク5B1,5B2の上端部を各サイドフレーム11に連結している各ブッシュ5H1,5H2の円管内に差し込まれて溶接により一体的に結合された状態とされている。
【0026】
このような構成となっていることにより、各側のフロントリンク5A1,5A2同士とリヤリンク5B1,5B2同士とは、それぞれ、上述したフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dを介して互いに一体的となって回転することができるようになっている。これにより、各側のサイドフレーム11を、上述したフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dによって発揮される曲げ剛性や捩り剛性によって下方側から強く支持することができるようになっている。したがって、このような支持剛性(曲げ剛性や捩り剛性)を発揮するために、上述したフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dは、それらの本体部5C1,5D1の外径が、上述した各ブッシュ5G1,5G2や各ブッシュ5H1,5H2の内径よりも大きな構造強度の高い形に形成されている。
【0027】
しかし、フロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dは、それらの両端部(差込部5C2,5C3や差込部5D2,5D3)が各ブッシュ5G1,5G2や各ブッシュ5H1,5H2の円管内にそれぞれ差し込んで嵌合させることの可能な縮径された形に形成されていることにより、上記のような高い支持剛性を発揮することのできる構成であっても、各ブッシュ5G1,5G2や各ブッシュ5H1,5H2の円管内への差し込みによる結合が可能な構成とされている。上述した各側のフロントリンク5A1,5A2やリヤリンク5B1,5B2は、予め、上述した各ブッシュ5G1,5G2や各ブッシュ5H1,5H2を介して各側のサイドフレーム11に組み付けられた状態とされ、それぞれのアッシー部品に対して後からフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dが各側のブッシュ5G1,5G2やブッシュ5H1,5H2内に差し込まれて結合されることにより、各側のアッシー部品が互いに1つに組み付けられるようになっている。
【0028】
以下、上述したシートクッション3の各部の具体的な構成について詳しく説明していく。
図1〜
図3に示すように、シートクッション3は、その骨格を成す金属製のクッションフレーム10が、シートクッション3の外周形状に沿った四角枠状に組まれた構成となっている。具体的には、クッションフレーム10は、左右一対のサイドフレーム11と、各サイドフレーム11の前端部間に架橋されて着座乗員の大腿部を下方側から支持するフロントパネル12と、を有し、各サイドフレーム11の前部間と後部間とにそれぞれ鋼管製のフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとが架橋された状態に組み付けられていることにより、全体が平面視四角枠状に組まれた構成とされている。なお、上述したクッションフレーム10の上部には、着座乗員から受ける荷重を和らげて受け止めることのできる図示しない発泡ウレタン製のクッションパッドやシートクッション3の表面全体を覆う図示しない布製のクッションカバーが取り付けられているが、これらの具体的な構成についての説明は省略することとする。
【0029】
上述した各サイドフレーム11は、それぞれ、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、前後方向に長尺な板形状にカットされて、互いにシート幅方向に向かい合う形に配設された状態とされている。各サイドフレーム11は、それぞれ、それらの上縁部と下縁部とがシート外側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。
【0030】
フロントパネル12は、上述した各サイドフレーム11と同様に、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、シート幅方向に長尺な板形状にカットされて、シート上方側に面を向けて配設された状態とされている。上記フロントパネル12は、その前側の縁部や左右両側の各縁部がそれぞれシート下方側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められていると共に、乗員が着座するシート上方側や外周側にエッジを立たせない形に形成された状態とされている。
【0031】
また、上記フロントパネル12の上面中央部には、車両の前部衝突の発生時に乗員の潜り込みを防止する図示しないエアバッグユニットを組み込むための凹部12Dがシート幅方向に長尺状に窪んだ形となって形成されている。上記フロントパネル12は、その左右両側の側部が、それぞれ、シート後方側に延びる細長状のチルトパネル12Aを介して回転軸12B(ピン)により各サイドフレーム11の前後方向の中間部に高さ方向に回転可能となるように軸連結された状態とされている。
【0032】
上述した各チルトパネル12Aは、それぞれ、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、前後方向に長尺な板形状にカットされて、各サイドフレーム11の内側面に面を重ねる向きに配設された状態とされている。各チルトパネル12Aは、それらの上縁部が、シート外側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。各チルトパネル12Aは、上記折り曲げられた各天板面部が、それぞれ、上述した各サイドフレーム11のシート外側に折り曲げられた上縁部の直上部に位置して、フロントパネル12の左右両側の縁部にそれぞれ下方側からあてがわれてリベットにより一体的に締結された状態とされている。
【0033】
そして、各チルトパネル12Aは、それらの後端部が、回転軸12B(ピン)により各サイドフレーム11の中間部に回転可能に軸連結された状態とされている。これら回転軸12Bは、互いに同軸線上の位置に並んで設けられた状態とされている。これにより、フロントパネル12が、各サイドフレーム11に対して、上述した各回転軸12Bを中心に高さ方向に回転することができる状態に設けられた状態とされている。上記構成により、フロントパネル12の支持角度を高さ方向に変化させて着座乗員の大腿部を支える支持角度を調整することが可能なチルト機構6が構成されている。上述したフロントパネル12を高さ方向に回転移動させるチルトアップやチルトダウンの各動作は、
図1の向かって右側に示された車両外側のサイドフレーム11の内側部に設けられた駆動装置6Aの駆動によって行われるようになっている。
【0034】
次に、シートリフタ5の構成について説明する。シートリフタ5は、
図1〜
図6に示すように、シートクッション3の各サイドフレーム11とフロア上の各スライドレール4との間に介在する左右一対のフロントリンク5A1,5A2と左右一対のリヤリンク5B1,5B2とを有する。更に、各フロントリンク5A1,5A2の上端部を各サイドフレーム11に回転可能な状態に連結する円鋼管製のブッシュ5G1,5G2を有する。更に、各リヤリンク5B1,5B2の上端部を各サイドフレーム11に回転可能な状態に連結する円鋼管製のブッシュ5H1,5H2を有する。更に、各フロントリンク5A1,5A2の下端部を各スライドレール4の上部に回転可能な状態に連結する回転軸5J1,5J2を有する(
図5参照)。更に、各リヤリンク5B1,5B2の下端部を各スライドレール4の上部に回転可能な状態に連結する回転軸5K1,5K2を有する(
図6参照)。
【0035】
更に、上述した各フロントリンク5A1,5A2の上端部を各サイドフレーム11に連結する各ブッシュ5G1,5G2同士を、互いに一体的な状態に繋ぐ円鋼管製のフロントパイプ5Cを有する(
図5参照)。更に、上述した各リヤリンク5B1,5B2の上端部を各サイドフレーム11に連結する各ブッシュ5H1,5H2同士を、互いに一体的な状態に繋ぐ円鋼管製のリヤパイプ5Dを有する(
図6参照)。更に、車両外側のリヤリンク5B1にブッシュ5H1を介して回転駆動力やブレーキ力を伝達するギヤリンク5Eを有する。更に、上記ギヤリンク5Eに動力伝達を行いギヤリンク5Eを回転駆動させたり回転止めしたりする駆動装置5Fを有する。更に、上述したフロント側の各ブッシュ5G1,5G2に差し込まれて、各フロントリンク5A1,5A2の各ブッシュ5G1,5G2への差し込み位置を規制する円鋼管製のスペーサ5L1,5L2を有する(
図5参照)。更に、上述したリヤ側の各ブッシュ5H1,5H2に差し込まれて、各リヤリンク5B1,5B2の各ブッシュ5H1,5H2への差し込み位置を規制する円鋼管製のスペーサ5M1,5M2を有する。ここで、ギヤリンク5Eが本発明の「伝達部材」に相当する。
【0036】
図1〜
図2及び
図4〜
図5に示すように、上述した各フロントリンク5A1,5A2のうち、車両外側に配設されたフロントリンク5A1は、同側のサイドフレーム11に対して、シート外側の位置に配設されている。また、車両内側に配設されたフロントリンク5A2は、同側のサイドフレーム11に対して、シート内側の位置に配設されている。詳しくは、上記
図5に示す車両外側に配設されたフロントリンク5A1は、その上端部が、サイドフレーム11に対してシート内側から外側に向かって差し込まれたブッシュ5G1のシート外側の端部に差し込まれて溶接により一体的に結合された状態とされている。上記ブッシュ5G1は、その軸方向の中間部に、外周部がリング状に突出した形のフランジ部5G1aが形成されており、このフランジ部5G1aがサイドフレーム11のシート内側の側面に当たる位置までサイドフレーム11にシート内側から差し込まれて組み付けられた状態とされている。上記ブッシュ5G1は、そのサイドフレーム11に差し込まれてシート外側に突出する部分にスペーサ5L1が差し込まれて、スペーサ5L1の寸法分だけサイドフレーム11からシート外側に離間した位置でフロントリンク5A1の上端部が差し込まれて溶接された状態とされている。上記連結により、フロントリンク5A1とブッシュ5G1とは、互いに一体的に連結されてサイドフレーム11に対してシート幅方向にガタ付くことのない脱落しない状態に組み付けられた状態とされている。
【0037】
また、車両内側に配設されたフロントリンク5A2は、その上端部が、サイドフレーム11に対してシート外側から内側に向かって差し込まれたブッシュ5G2にシート内側から差し込まれて、サイドフレーム11に当たる位置まで差し込まれた状態とされている。上記ブッシュ5G2は、そのシート外側の端部に、外周部がリング状に突出したフランジ部5G2aが形成されており、このフランジ部5G2aがサイドフレーム11のシート外側の側面に当たる位置までサイドフレーム11にシート外側から差し込まれて組み付けられた状態とされている。上記ブッシュ5G2は、そのサイドフレーム11に差し込まれてシート内側に突出する部分に上述したフロントリンク5A2の上端部が差し込まれて、更にその後からスペーサ5L2が差し込まれて、フロントリンク5A2とスペーサ5L2、更にスペーサ5L2とブッシュ5G2の外周部とがそれぞれ溶接されて一体的に結合されることで、フロントリンク5A2の上端部と一体的に連結された状態とされている。上記連結により、フロントリンク5A2とブッシュ5G2とは、互いに一体的に連結されてサイドフレーム11に対してシート幅方向にガタ付くことのない脱落しない状態に組み付けられた状態とされている。
【0038】
また、
図1〜
図2、
図4及び
図6に示すように、上述した各リヤリンク5B1,5B2のうち、車両外側に配設されたリヤリンク5B1は、同側のサイドフレーム11に対して、シート外側の位置に配設されている。また、車両内側に配設されたリヤリンク5B2は、同側のサイドフレーム11に対して、シート内側の位置に配設されている。詳しくは、上記
図6に示す車両外側に配設されたリヤリンク5B1は、その上端部が、サイドフレーム11に対してシート外側から内側に向かって差し込まれたブッシュ5H1のシート外側の端部に差し込まれて溶接により一体的に結合された状態とされている。上記ブッシュ5H1は、その軸方向の中間部に、外周部がリング状に突出した形のフランジ部5H1aが形成されており、このフランジ部5H1aがサイドフレーム11のシート外側の側面に当たる位置までサイドフレーム11にシート外側から差し込まれて組み付けられた状態とされている。上記ブッシュ5H1は、そのサイドフレーム11に差し込まれてシート外側に突出する部分にスペーサ5M1が差し込まれて、スペーサ5M1の寸法分だけサイドフレーム11からシート外側に離間した位置でリヤリンク5B1の上端部が差し込まれて溶接された状態とされている。
【0039】
更に、上記ブッシュ5H1のサイドフレーム11に差し込まれてシート内側に突出する部分には、前述したギヤリンク5Eが差し込まれて溶接により一体的に結合された状態とされている。上記ギヤリンク5Eは、上述したブッシュ5H1のシート内側に突出する部分に上記とは別のスペーサ5M1が差し込まれてから差し込まれており、スペーサ5M1の寸法分だけサイドフレーム11からシート内側に離間した位置でブッシュ5H1に溶接された状態とされている。上記連結により、リヤリンク5B1とブッシュ5H1とギヤリンク5Eとが互いに一体的に連結されてサイドフレーム11に対してシート幅方向にガタ付くことのない脱落しない状態に組み付けられた状態とされている。
【0040】
車両内側に配設されたリヤリンク5B2は、その上端部が、サイドフレーム11に対してシート外側から内側に向かって差し込まれたブッシュ5H2のシート内側の端部に差し込まれて溶接により一体的に結合された状態とされている。上記ブッシュ5H2は、そのシート外側の端部に、外周部がリング状に突出した形のフランジ部5H2aが形成されており、このフランジ部5H2aがサイドフレーム11のシート外側の側面に当たる位置までサイドフレーム11にシート外側から差し込まれて組み付けられた状態とされている。上記ブッシュ5H2は、そのサイドフレーム11に差し込まれてシート内側に突出する部分にスペーサ5M2が差し込まれて、スペーサ5M2の寸法分だけサイドフレーム11からシート内側に離間した位置でリヤリンク5B2の上端部が差し込まれて溶接された状態とされている。上記連結により、リヤリンク5B2とブッシュ5H2とは、互いに一体的に連結されてサイドフレーム11に対してシート幅方向にガタ付くことのない脱落しない状態に組み付けられた状態とされている。
【0041】
以上のように
図1〜
図4で示した各サイドフレーム11に組み付けられたフロント側の各ブッシュ5G1,5G2とリヤ側の各ブッシュ5H1,5H2とに対し、それぞれ前述したフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dは次のように差し込まれて連結されている。すなわち、
図5に示すように、フロントパイプ5Cは、その本体形状を構成する本体部5C1が、各ブッシュ5G1,5G2の内径(差込径)よりも大きな外径(差込径)を有する円管形状に形成されている。しかし、フロントパイプ5Cは、その本体部5C1の軸方向の両端部に、スエージング加工によって縮径された形とされた差込部5C2,5C3が形成された構成となっている。各差込部5C2,5C3は、各ブッシュ5G1,5G2の円管内に嵌合可能に差し込むことのできる縮径された円管形状に形成されている。上記フロントパイプ5Cは、上述した各側の差込部5C2,5C3が各側のブッシュ5G1,5G2の円管内にシート内側から差し込まれて嵌合された状態で、これらの嵌合した周縁部全体が溶接されることにより、各側のブッシュ5G1,5G2に対して強固に一体的に結合された状態とされている。
【0042】
また、
図6に示すように、リヤパイプ5Dもまた、その本体形状を構成する本体部5D1が、各ブッシュ5H1,5H2の内径(差込径)よりも大きな外径(差込径)を有する円管形状に形成されている。しかし、リヤパイプ5Dもまた、その本体部5D1の軸方向の両端部に、スエージング加工によって縮径された形とされた差込部5D2,5D3が形成された構成となっている。各差込部5D2,5D3は、各ブッシュ5H1,5H2の円管内に嵌合可能に差し込むことのできる縮径された円管形状に形成されている。上記リヤパイプ5Dは、上述した各側の差込部5D2,5D3が各側のブッシュ5H1,5H2の円管内にシート内側から差し込まれて嵌合された状態で、これらの嵌合した周縁部全体が溶接されることにより、各側のブッシュ5H1,5H2に対して強固に一体的に結合された状態とされている。
【0043】
上述したリヤパイプ5Dは、その車両外側のブッシュ5H1に差し込まれる差込部5D2が、ブッシュ5H1に対してシート外側に突出する位置まで貫通して差し込まれた状態とされている。そして、上記車両外側の差込部5D2は、そのブッシュ5H1からシート外側に突出した先でも、ブッシュ5H1と互いに嵌合している周縁部全体が溶接された状態とされている。このような構成となっていることにより、上記ブッシュ5H1のギヤリンク5Eとリヤリンク5B1とが連結されている軸方向の広い領域部が、上述したリヤパイプ5Dの差込部5D2によって内周側から補強された状態とされている。この補強により、上述したブッシュ5H1は、ギヤリンク5Eからリヤリンク5B1に動力を伝達するための捩り剛性を強く発揮することができる構成とされている。また、上記ブッシュ5H1は、ギヤリンク5Eにブレーキ力がかけられてリヤリンク5B1の動きが止められている状態で、シート1に大荷重が入力されてギヤリンク5Eとリヤリンク5B1との間に大きな捩りの負荷がかけられても、このような負荷に対してシート1を沈み込ませるような大変形を生じさせない高い構造強度を発揮することができる構成となっている。
【0044】
上述したシートリフタ5は、
図1〜
図3に示すように、上述した車両外側のギヤリンク5Eから同側のブッシュ5H1を介してリヤリンク5B1に伝達される回転駆動力やブレーキ力によって、各側のリヤリンク5B1,5B2やフロントリンク5A1,5A2が一斉に前後方向に揺動回転したり回転止めされたりして、シートクッション3の高さ位置を調整したり固定したりするようになっている。上述したシートリフタ5は、上述した各フロントリンク5A1,5A2同士と各リヤリンク5B1,5B2同士とがそれぞれフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dによって互いに一体的に連結された構成となっている。このような構成となっていることにより、シートリフタ5は、上述した車両外側のリヤリンク5B1が回転止めされたり回転駆動されたりする力によって、車両内側のリヤリンク5B2も同側のサイドフレーム11を下方側から支持したり持ち上げたりすることのできる高い支持剛性(捩れ剛性や曲げ剛性)を発揮することのできる構成とされている。
【0045】
上述した各スライドレール4は、
図5〜
図6に示すように、そのうちの車両内側に配設されたスライドレール4が、同側のサイドフレーム11のほぼ直下位置に配設された状態となっているのに対し、車両外側に配設されたスライドレール4が、同側のサイドフレーム11よりも外側(シート外側)に張り出した位置に配設された、シート幅方向の設置間スペースの広い構成とされている。
【0046】
しかし、上記のように各スライドレール4間の設置間隔が各サイドフレーム11間のそれよりも広い構成となっていても、上述したように車両外側に配設されたフロントリンク5A1やリヤリンク5B1が、同側のサイドフレーム11よりも外側(シート外側)に位置して、同側のサイドフレーム11からシート外側へ延びる各ブッシュ5G2,5H2の延びた先の箇所に連結される構成となっていることにより、同側のサイドフレーム11とスライドレール4との間のシート幅方向の寸法差を補うためのブラケット等の別部品を追加して設けることなく、これら寸法差のある各サイドフレーム11と各スライドレール4との間に各フロントリンク5A1,5A2と各リヤリンク5B1,5B2とを簡単に組み付けることができるようになっている。
【0047】
図1〜
図3に示すように、上述したフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとの間には、シートクッション3のクッションフレーム10の上部に組み付けられる図示しないクッションパッドを下方側から広く弾性的に受け止められるようにするための金属製の支持バネ13(Sバネ)が前後方向に架け渡される形で幅方向に4本並んで設けられた状態とされている。これら支持バネ13は、それぞれ、シート幅方向に波状に曲げられた形に形成されており、それらの前後側の各端部が、樹脂キャップ13Aを介してフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dに上方側から引掛けられて装着された状態とされている。これにより、各支持バネ13は、フロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dが上述したシートリフタ5の動作によって軸回転しても、これらの軸回転する動きに追従することなく、これらの動きを逃がして常にフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとの間で一定の姿勢状態に張設された状態として保持されるようになっている。
【0048】
このように、本実施例の構成によれば、各サイドフレーム11(シートフレーム)に組み付けられた各ブッシュ5G1,5G2や各ブッシュ5H1,5H2に対して、高い構造強度を備えたフロントパイプ5Cやリヤパイプ5D(パイプ)を組み付けることができる。
【0049】
また、シートリフタ5において、ギヤリンク5E(伝達部材)から回転駆動力の伝達を受ける車両外側のリヤリンク5B1(駆動用リンク)をサイドフレーム11に回転可能に連結するブッシュ5H1は、次のように構成されている。すなわち、ブッシュ5H1は、車両外側のリヤリンク5B1に一体的に結合されてサイドフレーム11に回転可能に連結されている。リヤパイプ5Dの差込部5D2が、ブッシュ5H1の円管内におけるリヤリンク5B1の連結位置まで軸方向に差し込まれて、差込領域の両端部がブッシュ5H1に溶接されて結合されている。このように、ブッシュ5H1のリヤリンク5B1との連結領域にリヤパイプ5Dの差込部5D2が差し込まれて一体的に結合されることにより、シート1に大荷重が入力された際に大きな負荷がかけられる上記領域の構造強度を高めて、シート1の姿勢を強く維持した状態に保持することができるようになる。
【0050】
上記車両外側のリヤリンク5B1は、サイドフレーム11を間に挟んでブッシュ5H1によりギヤリンク5Eと一体的に結合されている。リヤパイプ5Dの差込部5D2が、ブッシュ5H1の円管内におけるリヤリンク5B1の連結位置とギヤリンク5Eの連結位置とを通る位置まで軸方向に差し込まれて差込領域の両端部がブッシュ5H1に溶接されて結合されている。このように、ブッシュ5H1のリヤリンク5B1とギヤリンク5Eとの各連結領域にリヤパイプ5Dの差込部5D2が差し込まれて一体的に結合されることにより、シート1に大荷重が入力された際にブッシュ5H1がリヤリンク5B1とギヤリンク5Eとの間で捩られる方向に負荷を受ける上記領域の構造強度を高めて、シート1の姿勢を強く維持した状態に保持することができるようになる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の助手席以外のシートにも適用することができる他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
【0052】
また、本発明の構成は、「シートフレームに組み付けられた円管形状のブッシュにパイプが差し込まれて結合される」構成に対して広く適用することができるものである。具体的には、ブッシュは、シートクッションのサイドフレーム以外のフレームやシートバックのフレーム等、シートを構成するいずれかのフレームに組み付けられるものであればよい。上記実施例では、シートクッションの各サイドフレームにブッシュが組み付けられて、各ブッシュにパイプ(フロントパイプ、リヤパイプ)が差し込まれて結合されたが、パイプは、その一方側の端部において、本発明のブッシュへの組み付け構造が採用されたものであってもよい。また、ブッシュは、シートリフタ用のリフタリンクをシートクッションのサイドフレームに組み付けるもの以外にも、何らかの用途のために設けられる部材をシートフレームに組み付けるためのものとして設けられるものであってもよい。
【0053】
また、パイプの差込部は、ブッシュの円管内に対して貫通する位置まで差し込まれていてもよく、途中位置まで差し込まれていてもよい。パイプの差込部は、上記実施例で示したように、ブッシュの円管内に嵌合する位置まで必要量差し込まれるようになっていればよい。また、シートリフタ用の複数のリフタリンクのうち、回転駆動力の伝達を受けて他のリンクを従動させる駆動用リンクは、それ自体がセクタギアなどとして形成されていて、駆動装置からの駆動力の伝達を受けて回転駆動されるようになっていてもよい。すなわち、駆動用リンクと駆動力の伝達部材とが1本で構成されたものであってもよい。このような場合には、パイプの差込部を上記駆動用リンクがブッシュに連結された連結位置までブッシュの円管内に差し込んで、差込領域の両端部をブッシュに溶接することにより、駆動用リンクとパイプとの間の動力伝達経路の構造強度を適切に高めることができる。
【0054】
また、パイプは、本体部の軸方向の端部に形成された差込部がブッシュの外部に差し込まれて結合されるものであってもよい。また、差込部は、本体部よりも拡径されて、ブッシュの内部或いは外部に差し込まれて嵌合する形状とされたものであってもよい。すなわち、本発明の構成は、パイプの本体部がブッシュの差込径よりも小さな差込径を備えた構成とされたものにも適用することができるものである。なお、「差込径」とは、パイプがブッシュの外周部に差し込まれる構成の場合には、ブッシュの「外径」及びパイプの「内径」がそれぞれ「差込径」となり、パイプがブッシュの内周部(円管内)に差し込まれる構成の場合には、ブッシュの「内径」及びパイプの「外径」がそれぞれ「差込径」となる意味を指している。