(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上型(29b)と下型(29a)とを上下に重ね合わせてその中にキャビティ(29c)を形成し、真空ポンプ(25)によって、前記キャビティ(29c)内を吸引減圧し、下型(29a)の下部に設けた湯口(29d)に接続したストーク(1')から溶融金属(12)を前記キャビティ(29c)内に充填した後、上型(29b)と下型(29a)とを分離して、複数の押しピン(38)を上型(29b)から前記キャビティ(29c)内に突き出すことにより、鋳造物を脱型する真空鋳造装置の金型であって、前記真空ポンプ(25)をベローズ(39)内部に連結すると共に、ベローズ(39)内の支持板(52)又は(53)に取り付けられた複数の押しピン(38)を、上型(29b)を貫通するよう設置し、上型(29b)と下型(29a)との間に隙間(42)を設け、該隙間(42)の全外周にわたり前記真空ポンプ(25)と連結する空気通路(44)を設け、前記押しピン(38)の外周面と押しピンが貫通する管(43')との間に空気が連通する隙間(43)を設け、上型(29b)と下型(29a)との間に設けられた前記隙間(42)及び押しピン(38)の外周面と押しピンが貫通する管(43')との間に設けられた前記隙間(43)を介して、前記キャビティ(29c)内と前記真空ポンプ(25)又は前記ベローズ(39)とを連結した真空鋳造装置用金型を備え、前記ベローズ(39)内に、前記ベローズ(39)の収縮を防止する支持バネ付スライド機構(49)が設置されていることを特徴とする真空鋳造装置。
上型(29b)と下型(29a)との間に設けられた前記隙間(42)及び押しピン(38)の外周面と押しピンが貫通する管(43')との間に設けられた前記隙間(43)の幅が0.05mmから0.2mmであることを特徴とする請求項1に記載の真空鋳造装置。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム鋳造物を製造する場合、鋳型のキャビティ内に比較的低い圧力で、下方から溶融金属を充填し、鋳造物を成型するものとして低圧鋳造装置が使用されている。一般的な低圧鋳造装置では、上型と下型とを上下に重ね合わせてその中にキャビティを形成し、下型の下部に設けた湯口に密閉炉から立ち上がったストークから密閉炉にガスを注入することで溶融金属をキャビティ内に充填し、鋳造物を成型する。下型は、ストークの上端を接続した台板の上に固定して設置し、油圧シリンダ等を備える昇降機構にて上型を上下動し、その昇降機構にて上下の型の重ね合わせと脱型が行われる。
【0003】
キャビティ内に比較的低い圧力で溶融金属を注入するためには、例えば溶融金属を収納した密閉炉に不活性ガスや二酸化炭素等のガスを付加し、密閉炉から立ち上がったストークを通じて溶融金属を注入する。密閉炉を用いずに下型の下部に設けた湯口に接続したストークから溶融金属をキャビティ内に充填する方法としては、例えば特許文献1(特開2014−104469号公報)に開示されているように、溶融炉である溶融金属槽から溶融金属を電磁誘導ポンプで汲み上げ、ストークを通して鋳型のキャビティに充填する方法がある。低圧鋳造法は、鋳型の下からゆっくり溶融金属を注入するのでガスや酸化物の巻き込みの少ない良い鋳造物を作る方法として知られている。しかし、ゆっくり溶融金属を注入することから鋳型を400℃程度にして溶融金属がすぐに固まらない様にして、注入後鋳型を300℃以下に冷却後鋳造物を鋳型から取り出すことから金型の加熱冷却時間が掛かり、鋳造サイクル時間が比較的長いという問題がある。
【0004】
また、鋳型キャビティ内での空気の巻き込みを防止し、鋳造物中に発生する巣や空隙などの欠陥が少ない高品質な鋳造物を得るための鋳造装置として、キャビティ内を真空排気して鋳造を行う高圧鋳造装置であるダイカストマシーンを改造した真空鋳造装置が開発されている。真空鋳造装置は、例えば特許文献2(特開平5−123845号公報)に開示されているが、一般にキャビティ内の真空吸引に長時間かかり、スリーブ内の温度を適正に制御することが難しい。そのため、キャビティ内の真空吸引にかかる時間を短縮する技術やスリーブ内の温度を適正に制御する方法が望まれている。
【0005】
キャビティ内の空気を抜く方法としては、例えば特許文献2に記載されているように、上型と下型との合わせ目を介して行う方法や、特許文献3(実開昭62−56267号公報)に開示されているように、押しピンを介して行う方法がある。しかし、特許文献2又は3ではキャビティ内の合わせ目又は押しピンからの吸引減圧が記載されているのみで、合わせ目又は押しピンの隙間やポーラスプラグを介してキャビティ内を上方向及び外周方向から均一な圧力で吸引減圧することは考慮されていない。真空鋳造装置では、キャビティ内を上方向及び外周方向から均一な圧力で吸引減圧することが望ましく、均一な圧力で吸引減圧しないと、キャビティ内の特定個所に溶融金属が偏って回り込み、湯廻り不良などの欠陥が生じるという問題がある。
【0006】
また、金型を均一に真空にしている間、保持炉からストークを通じて真空金型に大気圧で押し上げられる溶融金属を止めるためには、保持炉を密閉炉にして密閉炉も真空にしなければならず、密閉炉を真空にする大型の真空装置が必要であり、密閉炉が大型になると密閉炉を真空にするには時間が掛かり、密閉炉のメンテナンスにかなりのコストが掛かる等の課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の低圧鋳造装置及び真空鋳造装置における上記事情に鑑み、真空ポンプとベローズを使用して、キャビティ内を上方向及び外周方向から均一な圧力で吸引減圧できると共に、キャビティ内の吸引減圧にかかる時間を短縮することができる
真空鋳造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、前記の目的を達成するため、真空鋳造装置用金型は、上型29bと下型29aとの間に隙間42を設け、その隙間42の全外周にわたり前記真空ポンプと連結する空気通路44を設けて、キャビティ29c内を外周方向から均一な圧力で吸引減圧できる構成とした。また、真空鋳造装置用金型の上型29bは、ベローズ39とこのベローズ39内の支持板52に設置されて上型29bからキャビティ29c内に突き出て鋳造物を脱型する複数の押しピン38を備えており、その押しピン38の外周面と、押しピンが貫通する管43'との間に空気が連通する隙間43を設けて、キャビティ内を上方向から均一な圧力で吸引減圧できる構成とした。
【0010】
すなわち、本発明の1は、上型29bと下型29aとを上下に重ね合わせてその中にキャビティ29cを形成し、真空ポンプ25によって、キャビティ29c内を吸引減圧し、下型29aの下部に設けた湯口29dに接続したストーク1'から溶融金属をキャビティ29c内に充填した後、上型29bと下型29aとを分離して、複数の押しピン38を上型29bからキャビティ29c内に突き出すことにより、鋳造物を脱型する真空鋳造装置の金型であって、真空ポンプ25をベローズ39に連結すると共に、ベローズ39内の支持板52
又は53に取り付けられた複数の押しピン38を、上型29bを貫通するよう設置し、上型29bと下型29aとの間に隙間42を設け、隙間42の全外周にわたり真空ポンプ25と連結する空気通路44を設け、押しピン38の外周面と押しピンが貫通する管43'との間に空気が連通する隙間43を設け、上型29bと下型29aとの間に設けられた隙間42及び押しピン38の外周面と押しピンが貫通する管43'との間に設けられた隙間43を介して、キャビティ29c内
と真空ポンプ25又はベローズ39
とを連結した真空鋳造装置用金型を備え、前記ベローズ(39)内に、前記ベローズ(39)の収縮を防止する支持バネ付スライド機構(49)が設置されていることを特徴とする真空鋳造
装置である。
【0011】
本発明の2は、上型29bと下型29aとの間に設けられた隙間42及び押しピン38の外周面と押しピンが貫通する管43'との間に設けられた隙間43の幅が0.05mmから0.2mmであることを特徴とする本発明の1に記載の真空鋳造
装置である。
【0013】
本発明の
3は、更に、吸引減圧時にベローズ39の収縮を防止するベローズ収縮防止ピン46が支持バネ付スライド機構49と同じ
支持板52に設置されていることを特徴とする本発明の
1又は2に記載の真空鋳造装置である。
【0014】
本発明の
4は、ベローズ39内の上面に取り付ける押しピン38の
支持板53が、支持バネ付スライド機構49
を取り付ける支持板52と別の板であることを特徴とする本発明の
3に記載の真空鋳造装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1の真空鋳造
装置によると、上型29bと下型29aとの間に隙間42を設け、隙間42の全外周にわたり真空ポンプと連結する空気通路44を設け、また、押しピン38の外周面と押しピンが貫通する管43'との間に空気が連通する隙間43を設けているため、キャビティ29c内を外周方向及び上方向から均一な圧力で吸引減圧でき、キャビティ29c内の吸引減圧にかかる時間を短縮することができる。
【0016】
本発明の2の真空鋳造
装置によると、上型29bと下型29aとの間に設けられた隙間42及び押しピン38の外周面に設けられた隙間43の幅を0.05mmから0.2mmとし、好ましくは0.05mmから0.1mmとすることにより、溶融金属が隙間42及び隙間43から金型の外へ流出するのを防ぐことができ、それにより、バリが出るような不具合が生じない。
【0017】
さらに、前記本発明の1の真空鋳造装置によると、キャビティ内を外周方向及び上方向から均一な圧力で吸引減圧でき、湯廻り不良などの欠陥がない高品質な鋳造物を得ることができる。また、キャビティ内の吸引減圧にかかる時間を短縮することができるため、鋳造物の鋳造サイクル時間を短縮できる。それにより、鋳造物の生産コストを低減することができる。また、ベローズ39は、吸引減圧時又は鋳造物押し出しの際に、押し潰されるが、支持バネ付スライド機構49が設置されているため、ベローズ39は横ずれせず、上下方向にのみ一定長さだけ押し潰され戻るので、横ずれに弱いベローズが壊れる事が無く、押しピン38やベローズ収縮防止ピン46の上下運動もスムーズなる。
【0018】
本発明の
3の真空鋳造装置によると、ベローズ収縮防止ピン46が下型29aの面まで届いてベローズ39が真空時に縮まない様に設置されているため、ベローズ39が吸引減圧の際に確実に押し潰されないようにすることができる。
【0019】
本発明の
4の真空鋳造装置によると、押しピン38の
支持板53を、支持バネ付スライド機構49等
を取り付ける支持板52と別の板とすることで、金型の形状に応じた押しピン38の調整が行ない易くなる。なぜなら、押しピン38は金型の形状によって配置や長さを微妙に調整する必要があるため、例えば金型の形状を変更する際に、支持バネ付スライド機構49等の取り付け板はそのまま交換せず、押しピン38の取り付け板だけを交換することで調整が可能となるからである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、上型29bと下型29aを上下に重ね合わせてその中にキャビティ29cを形成し、上下金型の隙間や押しピンの隙間やポーラスプラグ等の隙間を真空排気流路として、この真空排気流路が上型29bに設置された押しピンを内蔵したベローズ39につながり、このベローズ39に真空ポンプと、この真空ポンプと連結してベローズ39内部を減圧状態にする事によって、キャビティ29c内を吸引減圧し、この減圧を可能にするために下型の下部に設けた湯口に接続した電磁ポンプ14'の制動力によって炉内から上昇する溶融金属12を電磁ポンプ14'内に静止させ、その制動力を弱める事に依って、キャビティ29c内に充填して鋳造物を成型する真空鋳造装置に関し、真空ポンプ25とベローズ39によりキャビティ内を均一な圧力で吸引減圧できる金型27を用い、金型27を真空保持している間、電磁ポンプ14'で溶融金属12を制動(ブレーキ)して制動力を弱めることで直接真空金型に溶融金属を鋳込む電磁ポンプ式の真空鋳造装置である。以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて順に説明する。
【0022】
図1〜
図4は、本発明による真空鋳造装置の一実施例であり、
図1と
図2は金型27の上型29bを下型29aに重ね合わせた状態、
図3と
図4は金型27の上型29bを下型29aから分離した状態を示している。この真空鋳造装置は、真空ポンプ25により金型27のキャビティ29c内を吸引減圧して、溶融金属12が吸引されるのと反対方向にダクト1内の給湯誘導子14を有する電磁ポンプ14'で推力を与えて、ダクト1内に一旦溶融金属12を所定のレベル30に保持し、徐々に電磁ポンプ14'の推力を弱めていき、ストーク1'を通して下側から金型27に溶融金属を充填する形式のものである。
【0023】
溶融金属槽11に収納された溶融金属12に電磁ポンプ14'のダクト1の下端が差し込まれている。ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分の周囲には、磁性体製のヨーク15にコイル16を巻回した給湯誘導子14が配置されている。ヨーク15は、ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分を囲むようにその外周側に嵌め込まれており、このヨーク15に三相コイルを構成するコイル16が巻回されている。この給湯誘導子14には、冷却器10が設けられ、駆動時に冷却される。
【0024】
給湯誘導子14は、インバータを含む駆動電源31より電力の供給を受けて駆動される。これら駆動電源31からは給湯誘導子14にインバータで変換された三相交流が通電され、これら給湯誘導子14に移動磁界を発生させ、この移動する磁界の電磁誘導により、導電体であるダクト1内の溶融金属12に推力が発生する。
【0025】
前記ダクト1の上端には、ストーク1'がそれぞれのフランジ継手等の継手5、5'を介して密に接続されている。保護管3のストーク1'に近い一端部の周囲にフランジ6が継手5、5'の間に延設され、このフランジ6の外周に近い部分が前記ダクト1とストーク1'とを接続する前記の継手5、5'の間に挟持されている。これにより、保護管3の中のコア2がダクト1の中心に位置するよう保持されている。フランジ6には、溶融金属12の通路となる複数の円弧状の通過孔7が設けられている。ストーク1'は、図示してないバネ等により手前のダクト1に弾力的に押しつけられている。この状態で継手5、5'の間に挿入された耐熱性のガスケットにより継手5、5'の部分のシール性が確保されている。
【0026】
これらダクト1とストーク1'は、セラミック等の耐熱性、耐蝕性のある材料で作られており、その外周に設けた保温用のマイクロヒータ等からなるヒータ9、9'により溶融金属12の融点以上の温度に加熱され、溶融金属12の凝固を防ぐ構造になっている。溶融金属槽11の中の溶融金属12の液面を測定するために液面センサ等のセンサ13が設けられ、これにより溶融金属槽11の中の溶融金属12の液位が検知される。
【0027】
他方、ストーク1'に電磁誘導により溶融金属12の存在を検知する形式の誘導式液面センサ等のセンサ19が設けられ、これによりストーク1'の中の液位が検知される。前記溶融金属槽11と給湯誘導子14を囲むように少なくとも3本以上の支柱36'、36'が立設されており、ストーク1'の上の台板33を支えている。
【0028】
本実施例では、台板33の中心には、孔が開口しており、その周囲にリング板状の絶縁材35、35'が設置されており、台板33が金型27に対して断熱材35を介して熱絶縁されている。このため金型27が溶融金属12で高温になっても、台板33を低い温度に保持出来る。またストーク1'も下型29aに対して断熱材35、35'により熱絶縁されている。これにより、ストーク1'内の溶融金属12の温度低下による凝固層の拡大を防止し、更にストーク1'に連なる電磁ポンプ14'のダクト1の溶融金属12の温度低下も防止し、鋳造時の湯回り不良を防止できる。
【0029】
絶縁材35の上には金型27の下型29aが搭載されている。この下型29aの下面中央には通孔状の湯口29dが設けられ、この湯口29dは、前記絶縁材35の中心の貫通孔を介してストーク1'の上端と連絡している。この下型29aの上に上型29bが重ね合わせられ、これら上下の型29a、29bにより金型27が形成される。金型27の内部には鋳造物を成型するためのキャビティ29cが形成され、このキャビティ29cは前記湯口29dを通してストーク1'の上端に連絡される。
【0030】
前記台板33の上には、スライドガイド34、34が設置され、このスライドガイド34、34に沿ってスライド板37が上下にスライド自在となっている。このスライド板37にはスライドガイド34、34と、後述のベローズ39を収縮させる押出部材45が貫通している。台板33とスライド板37との間に油圧シリンダ等の昇降駆動機構36、36が設けられ、この昇降駆動機構36、36の動作によりスライド板37がスライドガイド34、34に沿って上下にスライドされる。また、押出部材45は昇降駆動機構(図示せず)の動作により上下にスライドして、上部ダイベース40を貫通し、ベローズ39の上面の支持板52を下に押して、ベローズ39を収縮させる。
【0031】
上型29bの上面には下部ダイベース40'が固定され、下部ダイベース40'は、支柱41、41により上部ダイベース40に連結されている。上部ダイベース40は、スライド板37に連結保持されており、スライド板37の昇降に伴って上型29bも昇降する。この上型29bが下降し、上型29bが台板33の上に固定されている下型29aと重ね合わせられると金型27のキャビティ29cが閉じる。
【0032】
下部ダイベース40'と上部ダイベース40間には、ベローズ39と支持板52が設置されている。ベローズ39は、例えばステンレス鋼からなり、伸縮性と気密性を兼ね備えており、真空ポンプ25と真空配管32により連結されてベローズ39内部は吸引減圧される。真空ポンプ25は、その駆動電源26により駆動し、ベローズ39以外にも真空配管32を介して金型27に直接連結されている。また、真空配管32の途中には、真空配管32内を常圧に戻すためのリークバルブ(図示せず)が設けられている。ベローズ39内は、真空ポンプにより約−100kPa程度にまで減圧される。ベローズ39内の上面に固定される支持板52は、上部ダイベース40に固定されておらず、ベローズ39の収縮に伴って、上下に移動する。また、支持板52には複数の押しピン38が設置されている。金型27の形状は鋳造物によって異なるが、その形状に応じて、押しピン38の配置や本数が決定される。
【0033】
押しピン38は下部ダイベース40'及び上型29bを貫通する管43'を貫通する。
押しピン38は、その先端部がキャビティ29c内に到達するが、上型29bと下型29aが重ね合わせた状態にあるとき、キャビティ29c内に突き出ないように構成されている。本発明では、押しピン38の外周面と押しピンが貫通する管43'との間に空気が連通する隙間43が設けられており、その隙間43を介して、キャビティ29c内を、ベローズ39内部と連結することができる。このように、複数の押しピン38の外周面に空気が連通する隙間43が設けられていることにより、金型27の上方向から短時間にキャビティ29c内を均一な圧力で吸引減圧できる。
【0034】
押しピン38の外周面の隙間43の幅は、0.05mmから0.2mm、好ましくは0.05mmから0.1mmとすることにより、溶融金属12をキャビティ29c内に注入した際に隙間43からベローズ39内部へ溶融金属12が流出するのを防ぐことができる。それにより、鋳造物の上部にバリが出るような不具合が生じない。
【0035】
また、ベローズ39内には、真空ポンプ25による吸引減圧の際に、ベローズ39が横ずれして押し潰されないように複数本の支持バネ付スライド機構49が設置されている。支持バネ付スライド機構49は、その上端が支持板52に固定され、下端が下部ダイベース40'に固定されている。支持バネ付スライド機構49は、支持バネ取付け管と、その中に配置されるバネとバネを上から押すスライド棒から構成され、バネは鋳造物を脱型する際にベローズ39が一定長さだけ押し潰され、ベローズ39や支持板52の自重に押し潰されないようなバネ定数を有している。
【0036】
さらに、ベローズ39が吸引減圧の際に確実に押し潰されない様に、複数本のベローズ収縮防止ピン46がベローズ39内に設置されている。ベローズ収縮防止ピン46は、その上端が支持板52に固定され、下端が下部ダイベース40'及び上型29bを貫通して下型29aの水平な部分(鋳型の外側)に載置されている。支持バネ付スライド機構49とベローズ収縮防止ピン46の本数は、例えばそれぞれ4本、互いに45°ずれた位置に設置される。このような配置とすることで支持構造の対称性が保たれ、真空に近い減圧状態(約−100kPa)であっても、ベローズ39が押し潰されない構成となっている。
【0037】
本実施例では、押しピン38の取り付け板と、支持バネ付スライド機構49及びベローズ収縮防止ピン46の取り付け板を共通の支持板52にして構成しているが、この構成に限定されず、押しピン38の取り付け板と支持バネ付スライド機構49及びベローズ収縮防止ピン46の取り付け板を分離した構成としてもよい。
【0038】
この真空鋳造装置により鋳造物を成型するときは、まず、上型29bが下型29aを重ね合わせた状態にしてキャビティ29cを形成する。本発明では、従来の金型と異なり、上型29bと下型29aとの間に隙間42を設け、隙間42の全外周にわたり真空ポンプ25と連結する空気通路44を設けている。本実施例では、
図2、4に示すように、空気通路44が真空配管32を介して真空ポンプ25と直接連結する構成としているが、ベローズ39を介して真空ポンプ25と連結する構成としてもよい(図示せず)。また、上型29bと下型29aが熱変形で上型29bと下型29aとの間の隙間42が均一に出来ない場合、やむを得ずキャビティ29cと空気通路44間の隙間42を作らず旭日旗の様に放射状の狭い土手状凸部を残したり、逆に凹部を設けて出来るだけ均一な隙間42に仕上げても良い。特にキャビティ29c内面に塗布する塗型剤は隙間42側にも塗布せざるを得ない場合には、凹部を設けて塗型剤の厚みを考慮して隙間42を形成しても良い。
【0039】
真空ポンプ25と連結する空気通路44が、隙間42の全外周にわたり設けられていることにより、空気通路44がキャビティ29cを均等に真空ポンプ25により吸引減圧され、それによりキャビティ29c内を外周方向から均一な圧力で吸引減圧することができる。また、前述の押しピン38の外周に設けられている隙間43からも同時に吸引減圧することができるため、キャビティ29c内を外周方向及び上方向から均一な圧力で吸引減圧することができる。それにより、キャビティ内の吸引減圧にかかる時間を短縮することができる。鋳造物が大きくなって押しピンが設置できない部分の近くに前記隙間と同じ穴径を持つ図示無しポーラスプラグを設けて、キャビティ29c内の吸引減圧にかかる時間を短縮することもできる。
【0040】
上型29bと下型29aとの間に設けられた隙間42の幅(
図2でgと表示)は、押しピン38の外周面と押しピンが貫通する管43'との間に設けられた隙間43と同様に、0.05mmから0.2mmとし、好ましくは0.05mmから0.1mmとする。それにより、溶融金属12が隙間42から金型の外へ流出するのを防ぐことができ、バリが生じない。図示無しポーラスプラグを設けた場合には、その穴は隙間42と隙間43と同等であり、それにより、ポーラスプラグへの湯射しが無くて済む。また、上型29bと下型29aとの隙間42から外部の空気がキャビティ29c内に入ることが防止するために、空気通路44を囲むようにして気密シール用のOリング29eが設けられている。
【0041】
キャビティ29c内を真空ポンプ25により瞬時に−100kPa程度まで吸引減圧させると、大気圧がかかった溶融金属槽11に収納された溶融金属12は、ダクト1を通過して勢いよく汲み上げられ、電磁ポンプ14'を使用しなくてもキャビティ29c内まで全ての空間に充填されてしまう。低圧鋳造法では、密閉炉にガス圧を掛けて密閉炉のストークから押し出される溶融金属12を鋳型の下からゆっくり注入することで、ガスや酸化物の巻き込みの少ない良い鋳造物を作ることができるのと同様に、本発明でも溶融金属12の注入速度を制御する必要がある。
【0042】
従って、この減圧した真空金型に溶融金属が制御されずに注入されない様に、その前に電磁ポンプ14'にキャビティ29cが真空になっても溶融金属12を電磁ポンプ14'のダクト1内で溶融金属12の注入方向と反対方向に制動力が発生する様に通電しておく。キャビティ29cが真空になると同時にダクト1内を溶融金属が上昇してゆくが、瞬時に溶融金属12に制動力が発生しダクト1内に溶融金属12が制動され、その制動力を調整してストーク1'の所定レベル30で溶融金属12を保持して、その制動力を所定の速度で弱める事でキャビティ29cに溶融金属12を充填する。本発明では、キャビティ29cが単独で真空に出来るように電磁ポンプ14'の制動力を利用しダクト1からストーク1'内に一旦保持し、電磁バルブの様な機能を持たせた。
【0043】
金型27のキャビティ29c中に溶融金属12を充填する際に、
図1,2に示すように、分流子55を使用して、溶融金属12の流れを均一的に分けるようにしてもよい。分流子55は、ヒータ47と熱電対48及び電源50と測定器51から構成される。分流子55を使用することで、金型27の湯口29dで、鋳造物が分離、切断しやすくなるという利点がある。また、分流子55を金型27よりも高温にすることにより、溶融金属12の温度低下を防止するという利点がある。
【0044】
キャビティ29cの中に溶融金属12を充填後、
図3と
図4に示すように、スライド板37を上昇させて、上型29bを上昇させると、上型29bが下型29aから離れ、金型27のキャビティ29cが開く。このとき成型した鋳造物59は上型29bに付いている。更に上型29bを上昇させると、支持板52が押出部材45に当たってベローズ39と支持板52が押され、支持板52に設置された複数の押しピン38の先端部がキャビティ29cの中に入り込んで、成型した鋳造物59が上型29bから分離される。鋳造物59が上型29bから分離される前に、図示していない受け皿等が鋳造物59の下に来て、分離される鋳造物59を受けとれるようにする。
【0045】
この時、ベローズ39は、横ずれなく支持バネ付スライド機構49に従って一定長さだけ押し潰される。ベローズ39は、このように、一定長さに押し潰され、成型した鋳造物59を上型29bから分離させた後スライド板37を下げると、押しピン38の先端部とベローズ収縮防止ピン46の先端部は、上型29bから下方へ垂れ下がるような状態にならず、一時的に垂れ下がっている状態となっても、支持バネ付スライド機構49により上型29b内に戻される。
【0046】
この成型された鋳造物59を図示していない受け皿等に取り出すことにより、1回の鋳造工程が完了する。以下、下型29aの上に上型29bを重ね合わせ、金型27を組み立て、成型を繰り返す。
図3と
図4は、鋳造物59を分かりやすくするため、鋳造物59が上型29bから押し出され下型29aの上に落ちた状態を示している。
【0047】
図5は、本発明の真空鋳造装置の他の実施例を示す上型と下型を重ね合わせた状態の部分拡大断面図である。上記の実施例と本実施例との違いは、真空鋳造装置のベローズ39内の押しピン38の
支持板53と支持バネ付スライド機構49及びベローズ収縮防止ピン46の
支持板52とを異なる支持板にして構成した点である。
図5に示すように、押しピン38は、支持板53に取り付けられており、支持バネ付スライド機構49及びベローズ収縮防止ピン46は支持板53の上部
の支持板52に取り付けられている。
【0048】
押しピン38は金型の形状によって長さを微妙に調整する必要があるため、押しピン38が取り付けられる支持板52を支持バネ付スライド機構49及びベローズ収縮防止ピン46が取り付けられる支持板53と別に構成しておくと、その調整が行ない易くなる。例えば、金型の形状を変更する際に、支持バネ付スライド機構49等の取り付け板はそのまま交換せず、押しピン38の取り付け板だけを交換することで調整が可能となる。しかし、このように押しピン38の取り付け板と他の取り付け板を異なる支持板にして構成すると、それぞれの寸法精度が異なるため、全体的な寸法のズレが生じ得るという短所もある。
【0049】
以上
説明してきた金型内部を真空にするため電磁ポンプ14'を電磁バルブとして使用した
真空鋳造装置は、上型29bと下型29aとの間に隙間42が設けられ、また、その全外周にわたり真空ポンプと連結する空気通路44を設けており、また、押しピン38の外周面と押しピンが貫通する管43'との間に空気が連通する隙間43を設けているため、キャビティ内を外周方向及び上方向から均一な圧力で吸引減圧でき、金型内のキャビティ29cにガスが無いため良質な鋳造物を生産することができる。また、キャビティ内に鋳造時に巻き込まれるガスが無いので金型への注入 度を上げる事ができ、その恩恵として金型温度を下げることが出来るので、鋳造サイクル時間を短縮でき、鋳造物の生産コストを低減することができる。