【実施例】
【0080】
1.材料および方法
1.1.接種用ベクター(
図1)
1.1.1.ベクターpCA-LTR-SHIV
KU2およびpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-
ベクターCA-LTR-SHIV
KU2は、サルのゲノムと、SIVのLTRを切り出しCAEVのLTRで置き換えたヒト免疫不全ウイルス(SHIV)とを含む。SHIVは、SIV-mac239のゲノムからなるキメラゲノムを含み、SIVのtat、env、およびrev遺伝子が切り出され、HIV-1のvpu、tat、env、およびrev遺伝子で置き換えられている。それゆえにこのベクターは、CAEVの5'および3'におけるLTRの転写制御下に、SIVのvpr、vpx、gag、pol、vif、およびnef遺伝子と、HIV-1のtat、rev、vpu、およびenv遺伝子とを有する。pol遺伝子は、インテグラーゼ(in)をコードする配列から切り出された。インテグラーゼをコードする配列から切り出されていない接種用ベクターpCA-LTR-SHIV
KU2は、配列番号16の配列(
図15)からなる。インテグラーゼをコードする配列から切り出されたベクターpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-は、配列番号17(
図16)からなる。
【0081】
ベクターCA-LTR-SHIV
KU2-IN-は、以下のようにして構築された(
図14)。ベクターSHIV-
KU2をEcoR1とNar1で消化し、0.8kbのLTR断片を取り出した。次にCAEV-pBSCAベクターをEcoR1とNar1で消化し、0.5kbのLTR断片を精製した。続いて両方の断片をライゲーションした。次にベクターSHIV-1LTRCAをStu1とAva1で消化し、0.8kbのLTR断片を取り出した。CAEVの3'におけるLTRをプライマーStu1およびAva1で増幅し、PCR産物をStu1とAva1で消化し、0.5kbのLTR断片を精製した。両方の断片をライゲーションして、CAL-SHIV
KU2を得た。最後に、CAL-SHIV
KU2-IN-を生成するために、pol遺伝子におけるKpn1とAcc1による消化を行い、SHIVのインテグラーゼの314bpの遺伝子を取り出した。
【0082】
1.1.2.ベクターpSHIV
KU2およびΔ4SHIV
KU2
プラスミドpSHIV
KU2およびpΔ4SHIV
KU2は、対照として用いられるプラスミドである。その構築は多くの出版物で説明されている(Liu ZQら、2006、Ramakrisna Hegdeら、2005)。
【0083】
1.2.接種用DNAの生産
1.2.1.細菌培養
上記プラスミドを含む大腸菌(E.coli)K12(JM109)細菌を0.05mg/mlのカナマイシンを含むBL培地5ml中で予備培養し、続いて150rpmで撹拌しながら30℃で一晩インキュベートする。予備培養物からの細菌懸濁液をBL培地で1:100,000に希釈し、続いてこの希釈液50μlをペトリ皿に入れた寒天/BL/カナマイシンの表面上に塗り広げ、続いてこれを32℃で一晩インキュベートした。ペトリ皿の寒天上に生じた孤立したコロニーを0.05mg/mlのカナマイシンを含む5mlのBL液状培地に植え付け、150rpmで撹拌しながら、30℃で一晩培養する。少量の培養液(1ml)をMacherey-NagelまたはQiagenのミニプレップ(Mini-prep)キットを用いたDNAの迅速抽出に推奨された手順に従って使用し、続いて1%アガロースゲルで抽出されたDNAを分離してその品質をチェックする。成功と推定されるDNAに対応する細菌を用いて、1Lの培養液に植え付け、これを初期の条件と同じ条件下で培養して、DNAをマキシプレップ(maxi-preparation)で単離する。
【0084】
1.2.2.マキシプレップ:プラスミド抽出
30℃で一晩撹拌しながら(150rpm)培養された細菌を遠心分離(4000g、4℃、15分)により堆積物として回収し、この堆積物を8mlの再懸濁緩衝液(50mMのトリス-HCl、pH8、10mMのEDTA)に再懸濁する。次に8mlのアルカリ性溶解緩衝液(200mMのNaOH、1%SDS)を添加することによって細胞を溶解させて、プラスミドDNAを放出させる。8mlの中和緩衝液(3Mの酢酸カリウム、pH5.5)を添加することによって溶解産物を中和する。続いてこの混合物を氷中で5分インキュベートし、15,000g、4℃で15分遠心分離する。このDNAを含む溶液を前もって平衡化したカラムに移し、そのままプラスミドDNAを保持させる。カラムを洗浄緩衝液で3回洗浄し、DNAを溶出させて、イソプロパノールで沈殿させる。遠心分離(30分、15,000g、4℃)により沈殿したDNA堆積物を得る。続いてDNAを2mlの70%エタノールで洗浄し、4℃で、15,000gで10分遠心分離することにより過量の不純物と塩を除去し、続いて堆積物を乾燥させ、適切な体積の超純水に再懸濁する。
【0085】
次にDNA溶液の濃度を分光光度法によって260nmに等しい波長λで決定し、続いてプラスミドの品質を1%アガロースゲルでの電気泳動の移動度によりチェックする。プラスミドのサイズとプラスミドの完全性は、例えば制限酵素BamH1とEcoR1で消化した後にアガロースゲルでチェックする。
【0086】
1.2.3.酵素消化によるプラスミドpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-のチェック
0.5μgのプラスミドのアリコート画分を、2ユニットの酵素EcoR1、BamH1またはSph1で、各酵素に適した1×緩衝液中で、20μlの最終容量で、37℃で60分消化することによって処理する。エチジウムブロマイド(ETB)とUV下でのゲル観察により明らかにしたTAE1×緩衝液中の1%アガロースゲルでの電気泳動の移動度により、消化のプロファイルをチェックした。
【0087】
1.3.細胞培養および処理:
1.3.1.細胞モデルおよび培養条件
細胞系を、アメリカ合衆国のNational Institute of Health AIDS Research and Reference Reagent Programから得た。その細胞を10%ジメチルスルホキシド(DMSO)中で液体窒素中-170℃で凍結保存する。それらを解凍し、培養フラスコで培養する。
【0088】
HEK293T(不死化ヒト胎児腎臓293)細胞は、ヒト胎児腎臓細胞の永久株である。この細胞は極めて簡単に100%にも達し得る極めて高いトランスフェクション効率でトランスフェクションするため、これらが用いられる。この細胞でレンチウイルスゲノムは強く発現され、そのタンパク質が集合して感染性粒子になり、それと指標細胞(CEMまたはM8166)とを共培養することにより、典型的な融合細胞が形成される。HEK293T細胞は接着性であり、フラスコ表面で、10%ウシ胎児血清(FCS)、1%ペニシリン5,000ユニット/ml、ストレプトマイシン5,000μg/ml、および1%ゲンタマイシン10mg/mlが補充されたMEM培地中で単分子層で培養される。この細胞を、37℃で、5%CO
2の加湿雰囲気下で維持する。培地を3日毎に交換する。継代培養を行うために、栄養培地を除去し、細胞をdPBS/EDTAで洗浄し、0.5%トリプシン-0.01%EDTAの存在下で37℃で1分インキュベートする。細胞を剥離した後、細胞に所定量のMEM培地を即座に添加し、続いて細胞をホモジナイズし、新しいフラスコに移す。
【0089】
細胞CEMx174およびM8166は、ヒトレンチウイルスおよびサルレンチウイルスによる感染が許容されるヒトCD4+Tリンパ球であり、典型的な細胞変性効果(CPE)を生じる。これらの細胞は非接着性であり、10%SCS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、および1%ゲンタマイシンが補充されたRPMI培地で培養される。これらの細胞を5%CO
2を含む加湿雰囲気下で37℃で維持する。3日毎に1,500Gで5分遠心分離工程を行うことにより培地を交換する。続いて堆積物を連続的に吸い上げて適切な体積の培地に注入することにより再懸濁する。
【0090】
1.3.2.インビトロの生物学的試験を用いた機能性の評価
プラスミドpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-またはpSHIV
KU2でのHEK293Tのトランスフェクション
用いられるトランスフェクション法は、ExGen500を用いた方法である。ExGen500(Euromedex、France)は、直鎖ポリエチレンイミンをベースとするカチオン性ポリマーからなる。このポリマーは、イオン結合を介してDNAと複合体を形成させる極めて大きいカチオン電荷密度を有する。次にこのExGen500/DNA複合体は、通常はアニオン性の細胞の細胞質膜との相互作用(硫酸プロテオグリカンを介した相互作用)が可能になる。続いて細胞による複合体のエンドサイトーシスが起こり、加えてそれらはエンドソーム/リソソームに輸送される。ExGen500は、その酸性pHでのプロトン付加能力により酸性小胞の培地を緩衝化し、それによってトランスフェクションされたDNAの分解を防ぐことができる。またこの特性は、DNAを細胞の細胞質に放出させる浸透圧性ショックも引き起こす。続いてExGen500は細胞核へのDNAの輸送を促進し、細胞質ヌクレアーゼによるその分解を回避する。
【0091】
5μgのプラスミドのDNAを350μlの150mMのNaCl溶液と15μlのExGen500に添加する。この混合物を室温で40分インキュベートする。続いてこの混合物を、新たに補充した培地で覆ったHEK-293Tを含むフラスコに添加する。
【0092】
CEMx174の感染およびウイルスストックの増幅
pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-またはpSHIV
KU2のDNAでトランスフェクションされたHEK-293TをCEMx174と共に培養したところ、その48時後に、CEMx174は、CEMx174が統合して融合細胞が形成されることに起因するECP形成によって示される感染の徴候を示す。感染したCEMx174を、ウイルスを増幅するための新しいCEMx174を含む新しいフラスコに移し、増幅されたウイルスは上清で回収する。
【0093】
ウイルスの生産
48時間後に注射器を用いてウイルスストックを回収し、続いてそれらを直径0.22μmのフィルターに通過させて死細胞片を除去し、その後、チューブに入れて-80℃で保存する。
【0094】
ウイルスを有する細胞の植え付け
細胞変性の開発により、またはマーカー遺伝子発現の検出によりウイルスの感染力(infectiousity)を評価するために、ウイルス上清のアリコート画分(10〜100μl)を用いて標的細胞に植え付ける。
【0095】
非接着性細胞でのウイルスの力価測定
ウイルスを含む上清を、10回の工程で培地で希釈することにより(連続希釈)10
-1〜10
-6希釈液を得て、これを用いて、24-ウェルプレートで、0.5〜1mlのRPMI培地を含む1ウェルあたり1×10
5個の細胞を含む4連のウェルに植え付ける。このようにして植え付けられた細胞を37℃で5%CO
2と共にインキュベートし、培地を3日毎に交換しながら維持する。この細胞を定期的にECPの発生について観察する。
【0096】
1.4.pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-でトランスフェクションされたHEK293T細胞の電子顕微鏡検査
接種用のゲノムpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-によって生産されたタンパク質がウイルス粒子に集合したかどうかを試験する目的で、本発明者らは、電子顕微鏡検査(EM)による形態学的な研究を行った。
【0097】
カコジル酸緩衝液(0.1Mカコジル酸ナトリウム)で希釈した2.5%グルタルアルデヒド溶液中で、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-、pSHIV
KU2またはΔ4SHIV
KU2でトランスフェクションされたHEK293T細胞のサンプルを固定する。続いてこの細胞を、1%四酸化オスミウム(OsO
4)を含むカコジル酸緩衝液で、4℃で60分、追加で固定する。続いてサンプルを、暗所で4℃で一晩、pH4の酢酸ウラニル中でインキュベートする。続いてサンプルを、連続槽中でそれぞれ30%、60%、90%、および100%に希釈したエタノールに10分浸す。次いでサンプルを、純粋なエタノールとエポキシ樹脂(8mlのDDSA、7mlのMNA、または13mlのエポキシ)との50対50の混合物中に2時間浸す。続いてサンプルを純粋なエポキシ樹脂中に2時間置き、その後ビーム(Beem)カプセルに入れ、60℃で48時間重合するように設定する。
【0098】
これらの領域の極薄の切片をウルトラミクロトームでひし形のカッターを用いて作製する。これらの厚さ70nmの切片を、Jeol 1200 EX透過型電子顕微鏡を電圧80kVで用いて観察できるように銅製のグリッド上に載せる。
【0099】
1.5.pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-接種用DNAによるマウスの免疫化
1.5.1.NOD/SCIDマウスのヒト化および接種
6週齢のマウスに、ガンマ線を120センチグレイの線量で50秒照射する。
【0100】
ヒト血液のPBMCによるマウスのヒト化
クエン酸ナトリウム上の全ての血液サンプルを遠心分離し(2000g、10分、20℃)、血漿と赤血球との間の白血球の層を回収する。細胞をPBS/EDTAで3倍に希釈し、慎重にフィコールのクッション(リンパ球を分離するための培地)上に載せ、続いて20℃で、2,000gで45分遠心分離する。PBMCを回収し、PBS/EDTAで数回洗浄し、PBS×1に再懸濁し、続いて各マウスに0.1ml中50×10
6個のPBMCを腹膜内経路で注入する。
【0101】
マウスの免疫化
ヒト化の48〜72時間後に、SCIDヒト化細胞を筋肉内経路(IM)でpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-、pSHIV
KU2またはpΔ4SHIV
KU2のDNA(50μg)と共に注入する。6〜8週齢のBALB/cマウスにそれぞれのDNA(100μg)をIM注射することによって直接免疫化する。
【0102】
1.5.2.体液性応答を評価する方法
アブノバ(Abnova)サンドイッチELISA試験:
この試験は、96-ウェルプレートのウェルの底に結合させた、ウイルス抗原に対する抗体の検出に基づく。試験される血清(免疫化後の異なる時間で回収される)、陽性対照、および陰性対照をウェルに入れる。抗HIV Ac(抗体)が存在する場合、それがウイルス抗原に結合することができる。過量の非特異的な結合を除くためにウェルを数回洗浄した後、HPRO酵素に連結したストレプトアビジンと相互作用するビオチン分子を有する第二の検出のためにAcを添加する。続いて、着色反応を引き起こす酵素の基質TMBを添加することによって形成された抗原/Ac複合体を検出する。着色は、ELISAリーダー光度計での読み出しによる光学密度で表す。
【0103】
試薬および生成物を室温にする。キットに提供された陰性対照および陽性対照(100μl)と、ブランク(100μl)と、10μlおよび50μlの血清サンプルとを100μlの最終体積でウェルに入れる。プレートを37℃で30分インキュベートし、洗浄溶液ですすぐ。ブランクを除く全てのウェルに1:100に希釈した第二のAc溶液(100μl)を添加する。続いてプレートをパラフィルム紙で覆い、37℃で20分インキュベートする。洗浄工程後、TMB溶液AおよびTMB溶液Bを添加して、プレートを実験室の温度で15分インキュベートする。着色反応を止めるために、1ウェルあたり100μlの2NのH
2SO
4を添加する。450nmでプレートの読み出しを行う。
【0104】
閾値に等しいかまたはそれよりも大きい吸光度値を有するサンプルを陽性とみなし、この閾値は、式:カットオフ値=NCx+0.100(式中NCxは、2つの陰性対照の吸光度値の平均である)に従って決定される。
【0105】
血清中和試験
この技術は、ウイルス感受性細胞の感染を阻害するAc(セロ-N(sero-N))を血清中和する能力に基づく。血清中のセロ-N Acの検出と評価のために、一定量の感染性ウイルスを試験される血清の連続希釈液と接触させ、続いてこの混合物をマイクロプレート上で許容細胞の培養物に植え付け、3〜5日インキュベートする。ほとんどの場合、ウイルスは細胞変性株であるため、ECPの非存在またはECP数の減少は、試験される血清中にAcが存在することを示す。
【0106】
ウイルスストックSHIV
KU2をRPMIで1:1000に希釈し(ウイルスの上清の体積は、ウェルの50%が融合細胞を有する際のウイルスの希釈率に相当する100TCID
50に応じて決定される)、ヒト化され、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-またはpSHIV
KU2が接種されたNOD/SCID対照マウスから回収された血清を、同じ培地で(10、20、40、80、160、および320倍の希釈率で)希釈する。希釈したウイルスおよび血清希釈液を96-ウェルプレートで混合し(100μl/ウェル)、この混合物を4℃で1時間インキュベートする。続いてこの混合物を、24-ウェルプレートで予め培養したM8166細胞上に載せた(細胞1×10
5個/ウェル)。この実験で、陽性対照は、血清を用いずにpSHIV
KU2に起因するウイルスであり、陰性対照は、細胞単独に相当する。
【0107】
細胞応答の評価方法:Elispot試験
この試験の目的は、抗原性刺激に特異的な応答としてIFN-γを分泌するTリンパ球(TL)の比率を検出し評価することである。
【0108】
まずマウスに深い麻酔をかけ、続いて全ての総血液と脾臓を取り出す。マウスの脾臓を氷中でRPMI培地に入れる。乾燥したチューブ中の血液を用いて、血清を単離する。ペトリ皿で、PBSおよび1%EDTAの存在下で刃と刃の間で脾臓をすり潰すことにより脾細胞を単離する。細胞をPBS/EDTAで2回洗浄することにより(2,000G、20℃で5分遠心分離)、脾細胞を精製して濃縮する。ウェルに細胞を撒いた後、プレートをPBSで洗浄し、続いてPBS+10%SCSと共に実験室の温度で30分インキュベートする。各ウェルに細胞(5×10
5脾細胞)を撒き、Gag、Env、Tat、RevおよびNefタンパク質のペプチドのプールを2μg/mlの最終濃度で植え付けた。この試験に陽性対照(キットに含まれるCD3-2)と陰性対照とを追加する。プレートをアルミニウム箔のパウチで覆い、37℃で19時間インキュベートする。細胞とペプチドを洗浄し、続いてビオチン化する(7-b6-ビオチン)抗IFN-γモノクローナル抗体を添加し、プレートを覆い、室温で2時間インキュベートする。0.5%FCSを含むPBSで希釈したストレプトアビジンを添加し(100μl/ウェル)、プレートを室温で1時間インキュベートする。もう1回洗浄工程を行った後、発色基質であるTMBを添加し、その後、青色のスポットが出現したらプレートを洗浄し、乾燥させる。プレートの読み出しを、双眼拡大鏡で40倍の倍率で行う。
【0109】
ウェルの陽性の基準は、条件ごとに二連のスポット数の平均と標準偏差を計算することにより決定される。スポット数は、PBMC 100万個ごとに計算され、NOD/SCIDマウスで得られたデータの20%に標準化される。この試験は、スポットの平均値が、対照培養で得られたスポットの平均に相当するPBMC 100万個あたり10スポットより大きいと陽性とみなされる。
【0110】
1.6.フローサイトメトリーによる抗原特異的T細胞の表現型および機能性の試験
1.6.1.末梢単核細胞の単離
ヒト末梢血単核細胞を上記で示したように調製する。培養とサイトメトリー試験のために、上述の手順に従って単離したマウス脾臓の脾細胞も、血清を含まないAIM V培地に再懸濁した。
【0111】
1.6.2.細胞の抗原刺激および培養
抗原特異的細胞が、増殖してサイトカインと溶解分子を生産することができるかどうかを試験するために、脾細胞とPBMCを、37℃で10分、CFSE(1μg/ml)で標識し、続いて過量分を取り除くために細胞を1×PBSで洗浄する。標識した細胞を、96-ウェルプレートのディープウェルに、1mlのAIM V培地中、2×10
6/ウェルの量で撒き、続いて、抗CD49および抗CD28同時刺激Acの存在下で、ペプチドの様々なプール(Gag、Env、およびTat+Rev+Nef)で2μg/mlの量で刺激する。陰性対照として、ペプチドを含まない細胞を用い、陽性対照として、フィトヘムアグルチニン(PHA)を2μg/mlで添加された細胞を添加する。細胞を5日間培養し(37℃、加湿)、続いて同じペプチドのプールで6時間再度刺激した後、それらを標識する。細胞を遠心分離(2,000G、5分、4℃)で回収し、100μlのPBSに再懸濁し、まず、表面Ac(CD3、CD4、およびCD8)[パシフィックブルー(Pacific Blue)抗ヒトCD3(5μl)、PE抗ヒトCD4(10μl)、およびAPC/Cy7抗ヒトCD8(10μl)]で、室温で30分標識する。続いて細胞を遠心分離し、1×PBSで洗浄し、続いて100μlのBDのサイトフィックスサイトパーム(Cytofix Cytoperm)中に固定して透過性にする。続いて細胞質の標識のために、細胞を、「抗ヒトIFN-γ PE-Cy7」および「アレクサフルオロ(Alexa Fluor)647抗ヒトグランザイムA(Granzyme A)」Ac(5μl)と共に4℃で20分インキュベートする。最後に細胞をPBSで洗浄し、4%PFAで固定し、その後フローサイトメーターでの獲得および解析を行う。
【0112】
1.6.3.機器類
BDのFACSDiva6ソフトウェアパッケージに連結したBDのLSRIIフローサイトメーターを使用した。この機器は、最大13種の蛍光パラメーターと2種の物理的パラメーター、すなわちFSCのサイズ(前方散乱)および複雑さ;または粒子のSSC(側方散乱)の測定を可能にする。この機器は、3つのレーザーを備えている。488nmで放射される青色のレーザーは、数種の蛍光色素(FITC、PE、PE-Cy7)を独立して励起することができる。633nmで放射される赤色のレーザーは、APCおよびAPC-Cy7蛍光色素を励起することができ、最後に405nmで放射される紫色のレーザーは、パシフィックブルー蛍光色素を励起することができる。
【0113】
1.7.マカクの免疫化
この研究には、合計12匹のマカク(カニクイザル)を用いる。対照グループは6匹のマカクで構成され、接種グループは残りの6匹のマカクで構成される。筋肉内経路を介した1回のDNAの二重注射(動物1匹あたり4mg)およびエレクトロポレーション(EP)で(動物1匹あたり1mg)動物を免疫化した。
【0114】
このようなワクチンの単回投与による免疫化戦略の理由はいくつかある。主な理由の1つは、各再免疫化工程に伴う一次エフェクターT細胞によるメモリーT細胞の生成、成熟、および増幅に影響を与えないことである。
【0115】
ワクチンにより誘導された免疫反応を試験するために、免疫動物の長期追跡調査を行った(4週間にわたり週に1回、続いて32週目まで2週に1回、続いて10ヶ月にわたり4週に1回)。起こり得る基底の応答を試験するために、免疫化の2週前および1週前に採取された血液サンプルを使用した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、これを、表面および細胞質内の標識によるELISPOT IFN-λ試験で、さらにフローサイトメトリーによる解析でT細胞の応答を評価するのに用いる。
【0116】
2.結果
2.1.pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-プラスミド構築の定性的および定量的チェック
2.1.1.pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-プラスミドの存在
大量のBL液状培地に撒くために用いられるBL培地での予備培養物から得られたポリクローナル細菌培養からプラスミドDNAを単離したら、約2000bpのエピソームがかなりの割合で観察される。また電気泳動プロファイルからも、プラスミドに相当する約14,000bpの単一のDNAバンドの存在(論理上は13,739bp)が示される。
【0117】
まずペトリ皿で細菌を培養し、単離したコロニーを得て、これらのコロニーを予備培養に用い、続いてバルク培養に用いてプラスミドDNAを単離し精製することによりDNAを単離したところ、0.5μgのDNAを分離した後に得られた電気泳動プロファイルから、いかなるエピソームも存在しないことが示され、さらに、環状、コイル、およびスーパーコイルの形態のpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-プラスミドに相当する3つの高分子量DNAのバンドが示される。本発明者らの2種の調製物のプラスミドDNAの純度および定量的評価を分光光度法によりチェックした。230、260、および280nmの波長での吸収測定値を使用して、260/280比を決定したところ1.75および1.82であり、260/230ではそれぞれ2.04および1.92であることから、これは、本発明者らのDNAが十分な品質であることが示される。DNA濃度は、545μg/mlおよび765μg/mlである。
【0118】
2.1.2.pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-の酵素消化
プラスミドのEcoR1での消化プロファイルから、両端にEcoRI部位を有する断片からの約5,000bpと7,500bpの2つのバンド、両端にBamH1部位を有する断片から生じた2400bp、4,900bp、および7,400bpのBamH1による3つのバンド、および1つのSph1部位を有する断片から生じた10,000bpに位置するSph1によるバンドの存在が明らかになる。さらにBamH1消化による追加の2,400bpのバンドも観察されたが、これはエピソームに起因するものと思われる。
【0119】
2.2.官能性の評価:細胞へのプラスミドDNAの作用
HEK293T細胞を、GFPを発現する対照プラスミドpCG-GFP、プラスミドpSHIV
KU2、さらにプラスミドpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-でトランスフェクションした。プラスミドpCG-GFPでトランスフェクションされた細胞から、GFP+細胞の数を評価することによりトランスフェクション効率の推測が可能になった。
【0120】
pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-またはpSHIV
KU2でトランスフェクションされたHEK293T細胞が、典型的な融合細胞を誘導するビリオンを生産するのかどうかをチェックするために、これらの細胞をCEMx174と共培養し、それに続いて顕微鏡下でECPの出現を観察した。いずれの共培養物も特徴的なECPを生産した。
【0121】
トランスフェクションされた細胞によって生産されたSHIV
KU2ウイルスが数回複製されるかどうかをチェックするために、M8166ヒトCD4+Tリンパ球株に感染させるためにトランスフェクションされた細胞の上清を使用した。SHIV
KU2で得られた結果から明らかに、SHIV
KU2は感染力があり、特に高い許容性を有するM8166細胞系でECPを誘導することが示される。これらのECPは、48時間たったらすぐに出現するが、その後の段階でも出現する。
【0122】
次いで接種用ベクターpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-のDNAだけが1回の複製サイクルを可能にすること(上記ベクターが遺伝子から切り出されるため)をチェックするために、培養中のM8166細胞に、回収したCA-LTR-SHIV
KU2-IN-ウイルスを含む上清を1回、続いて2回植え付けた。1回目の植え付けにより、48時間以降にECPが生産され、76時間後にはECPはより多数になっていた。これらの感染細胞の上清を回収し、再度M8166に1回植え付けた。以前の植え付けとは異なり、植え付けの48時間後または76時間後のどちらにもECPは目視で観察されない。これらの結果から、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-は、培養中の標的細胞を1回だけ形質導入させることができると結論付けられる。
【0123】
典型的なECPの存在は、プラスミドDNAはHEK293T細胞で複製されて、CA-LTR-SHIV
KU2-IN-ビリオンが生産されたことを示唆している。第1の感染のECPは、生産された粒子によるM8166ヒトCD4+TL株の感染力を示し、第2の感染中のそれらの非存在は、細胞において生産性のある複製が起こっていないことを示す。
【0124】
2.3.pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-でトランスフェクションされたHEK293T細胞におけるウイルス粒子の形態形成の電子顕微鏡解析
次いでHEK293T細胞中で、接種用pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-ゲノムによって生産されたタンパク質が適切にウイルス粒子に集合したかどうかを決定した。プラスミドpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-でトランスフェクションされたHEK293T細胞の形態をEMで試験した。
【0125】
結果から、ウイルス粒子は芽の形態で細胞表面に存在しており、成熟したウイルス粒子は細胞から解離していることが示される。したがって、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-ワクチンのタンパク質は、ウイルス粒子を細胞の外側で出芽させるために組み立てられる。
【0126】
2.4.ヒト化SCIDマウスおよびBALB/cマウスでのワクチンのインビボの試験
2.4.1.pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-が接種されたSCIDヒト化マウスにおける体液性応答の評価
ウイルスの抗原に特異的に結合するAcの存在について、免疫化の約1ヶ月後に採取された免疫化マウスの血清サンプルを市販のELISA試験を用いて試験する。Table 1(表1)(以下)にこの解析の結果を要約する。これらの結果から、接種用pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-DNAで免疫化されたマウスからのサンプルのうち約半分では、SHIV
KU2のDNAで免疫化されたマウスも同様に、陽性の比率は低く(それぞれ44%および37%)、これは、pΔ4SHIV
KU2で免疫化されたマウスの陽性の比率(50%)とは異なることが示される。これらの結果から、NOD/SCIDヒト化マウスにおいて接種用pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-DNAの体液性応答を誘導する能力が実証される。pΔ4SHIV
KU2で免疫化されたマウスの3つの血清サンプルのうち1つのOD値は、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-で免疫化されたマウスおよびpSHIV
KU2で免疫化されたマウスの血清サンプルで得られたOD値よりも大きい。このプラスミドは複製能がなく、ウイルスのタンパク質はトランスフェクションされた細胞の膜に結合したままであるため、Acをほとんど誘導しないと予想される。
【0127】
【表1】
【0128】
2.4.2.血清中和による中和活性の解析
選択されたプラスミドpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-またはSHIV
KU2が接種されたSCIDヒト化マウスの血清は、そのODがELISAにより陽性であることが見出されたものである。血清が少量であるため、ELISA試験で強いOD値を示した所定のサンプルを血清中和で試験することができなかった。試験の信頼性を保証するために、陰性であることが判明したpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-が接種されたSCIDヒト化マウスの血清サンプルもELISA試験に用いた。
【0129】
【表2】
【0130】
得られたECPの数は、血清を用いずにインキュベートしたSHIV
KU2ウイルス(76個のECP)または非免疫化マウスの血清と共にインキュベートしたSHIV
KU2ウイルス(42個のECP)(陰性対照)に感染させたM8166細胞において比較的高いことから、本発明者らは、ウイルス中和の陰性の閾値を42個のECP(表にデータ示さず)と設定した。一方で、ウイルスをCA-LTR-SHIV
KU2-IN-またはSHIV
KU2のDNAで免疫化されたマウスの1/10に希釈した血清と共にインキュベートすると、ECPの数はゼロに近くなる。この数は、血清の希釈率が高くなるにつれて次第に増加することから、量に応じた効果が示される。例えば、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-で免疫化されたマウスの血清を1/10の希釈率で用いた場合、5個のECPが得られ、それに対して1/320の希釈率では、血清を用いない対照の値と類似した69個のECP値が得られる。
【0131】
2.4.3.接種されたBALB/cマウスにおけるpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-の免疫原性の評価
BALB/cマウスにおけるpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-ワクチンの免疫原性を研究するために、動物に筋肉内経路を介して100μgのDNAを単回投与で注入した。ELISPOTで抗原特異的脾臓細胞(脾細胞)の比率を試験した。この研究結果から、実際に用いられたDNAが研究される全ての抗原に対して特異的な免疫反応を誘導する能力が示される(
図12)。プラスミドpΔ4SHIV
KU2によるT細胞応答は、プラスミドpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-を用いた場合よりも2倍高い。この両者のDNA間の小さい効率の差は、pΔ4SHIV
KU2のDNAの品質がpCA-LTRSHIV
KU2-IN-のDNAの品質よりも優れていることに関連する可能性がある。それでもこれらの結果から、正常なマウスにおいてこれらのワクチンにより誘導された基底レベルの免疫反応を決定することができ、さらにSCIDヒト化マウスで得られた免疫反応との比較を行うことができる。
【0132】
2.4.4.様々なDNAで免疫化されたNOD/SCIDヒト化マウスにおける細胞応答の評価
50μgのCA-LTR-SHIV
KU2-IN-、Δ4SHIV
KU2またはSHIV
KU2のDNAを単回投与で筋肉内注射することによりNOD/SCIDヒト化マウスを免疫化し、続いて脾細胞を用いてELISPOTにより免疫反応を試験し、抗原特異的細胞とIFN-γ産生細胞との比率を評価した。
図13で示されるように、Gag、EnvまたはTat+Rev+Nef抗原での刺激に応答してヒトINF-γをSIVペプチドまたはHIVペプチドの形態で生産する相当数のT細胞が見出される。興味深いことに、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-での免疫化後に得られた応答は、pSHIV
KU2で得られた応答にある程度類似しており、これらの応答はいずれも、pΔ4SHIV
KU2での免疫化後に得られた応答よりも明らかに大きいことに注目すべきである。GagおよびTat+Rev+Nef抗原に対してpCA-LTR-SHIV
KU2により誘導された応答が優勢である。
【0133】
これらの全結果から、pCA-LTR-SHIV
KU2のDNAは、NOD/SCIDヒト化マウスにおいて高い免疫原性を有すること、加えて病原性ウイルスに対する防御に関連することがわかっている抗原に対する応答を選択的に誘導することが実証される。
【0134】
2.5.フローサイトメトリーによる抗原特異的T細胞の表現型および機能性の試験
2.5.1.ゼロ日目に行われる(マウス脾臓を回収する日に行われる)単一標識
選択された抗体が、実際にそれらの標的を検出するかどうかを試験するために、一方でSCIDヒト化マウスの脾臓におけるヒト細胞の存在と比率を評価するために、これらの単一標識が用いられる。
【0135】
ヒト化マウスおよび非ヒト化マウスの非標識リンパ球をフローサイトメトリーで解析し、基底状態の細胞の蛍光(陰性対照)を測定した。
【0136】
CD3+TLの検出は、蛍光色素「パシフィックブルー」に連結されたヒト抗CD3 Acで行われる。これらの細胞は、プラスミドpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-が接種されたSCIDヒト化細胞で単離された細胞のプロファイルの10
2でピークを形成する。このピークは、SCID非ヒト化マウスで回収された細胞ではみられない。
【0137】
抗CD4+Acで単一標識した細胞(CD4抗ヒトPE)では、それが対照の場合かまたは本発明者らの試験サンプルの場合かにかかわらず有意なピークは観察されなかった。これは、用いられた抗CD4Acが機能しなかったことに起因すると予想される。
【0138】
CD8+TLを検出するために、蛍光色素APC/Cy7に連結したヒト抗CD8モノクローナルAcを使用した。これは、SCID非ヒト化マウスではなくpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-が接種されたSCIDヒト化マウスで単離された細胞のプロファイルにおいて10
2〜10
3の範囲内にあるピークの検出を可能にする。
【0139】
アレクサフルオロ647に連結した抗GRA Acで標識した免疫化マウスおよび非免疫化マウスからの細胞ではピーク差が観察されなかったために、GRA分子を生産するリンパ球の比率を評価することはできなかった。
【0140】
一方で、蛍光色素PE-Cy7に連結したヒト抗IFN-γ Acで標識した細胞は、10
2の位置に、pCA-LTR-SHIV
KU2-IN-が接種されたSCIDヒト化マウスの細胞の明確なピークを示し、非免疫化SCID非ヒト化マウスの細胞ではピークは存在しなかった。
【0141】
2.5.2.免疫動物におけるT細胞の表現型解析および機能
ウイルス抗原特異的T細胞の表現型および機能を試験するために、CFSEで標識した細胞を(Gag、EnvおよびTat+Rev+Nef)ペプチドと共に5日間インキュベートし、続いて同じペプチドで再度、6時間刺激する。続いて上記で示したように細胞をAcで標識して試験する。
【0142】
この解析結果から、IFN-γを生産し、特に接種されたNOD/SCIDヒト化マウスからの細胞を用いた場合、GRA分子を有するCD3+細胞およびCD8+細胞の存在が示される。実際に、免疫化されたNOD/SCIDヒト化マウスでは、CD8+TLの少なくとも6%がIFN-γを生産し、1.7%がGRA Aを生産するが、それに対して対照マウスではそれぞれわずか2.5%および0.6%である。これらの結果から、本発明者らのワクチンpCA-LTR-SHIV
KU2-IN-により誘導されたエフェクター細胞性免疫反応に相当するGRAとIFN-γを生産するCD3+、CD8+活性化細胞の存在が実証される。
【0143】
2.6.マカクにおける免疫および体液性応答の解析
2.6.1.ELISPOT IFN-λ試験によるT細胞の免疫反応の解析
採取された血液サンプルから単離された単核細胞画分を用い、市販のキットを用いてウイルスGag、Pol、Env、およびTat+Rev+Nef抗原による刺激に応答してIFN-λを分泌する細胞の比率を評価する。table 3(表3)に最初の20週間の解析結果を示す。この表から明らかに、接種用ベクターCAL-SHIV-IN-の1回の投与後、全ての動物が、IFN-λを分泌する抗原特異的細胞を特徴とする細胞性免疫反応を起こしたことが示される。これらの応答は、互いに異なるCMH-1ハプロタイプを有する動物ごとに異なる。免疫反応は、免疫化後(PI)2〜4週間で第一の一次応答ピークの存在と、PI後8〜10週間でそれに続く応答とを特徴とし、ここでは第二の免疫化は行われない。大変興味深いことに、第二のピークの強度はしばしば、特にIFN-λを分泌する細胞の数が3倍のBX80動物で、第一のピークの強度よりも大きいことに注目すべきである。
【0144】
【表3】
【0145】
2.6.2.接種されたサルにおけるマルチパラメータのフローサイトメトリーによるT細胞の免疫反応の解析
マルチパラメータのフローサイトメトリーによる解析の結果から、全ての動物が増殖したT細胞による応答を起こし、この応答は接種用ベクターによって発現された全ての抗原に特異的であることを解明することにより、ELISPOTにより得られた結果が裏付けられる(Table 4(表4))。これらの応答は動物間で異なっており、免疫後約8週まで及ぶ最初の一次応答期、続いて収縮期(2〜4週間)、続いて再出現期があることがわかる。52週目に試験ウイルスSIVmac251を用いた毒性試験を行うまで、このマルチパラメータのフローサイトメトリーによる免疫反応の長期追跡を継続した。
【0146】
【表4】
【0147】
2.6.3.マカクにおける体液性応答の解析
HIV-1の抗Env抗体を検出することができる市販のELISAキットを用いてSHIVの抗抗原抗体の検出を行った。各血液サンプリング時に回収された血清の長期試験によれば、抗Env抗体の存在は、BX80動物では免疫後20週目から、BX73動物では8週目から示された。SHIVのタンパク質に対するウェスタンブロットによって陽性血清中の抗体の存在を確認したところ、Gag-p27タンパク質に対する強いシグナル、加えてgp160/gp120糖タンパク質に対するシグナルが示された。
【0148】
2.6.4.結論
これらの結果から明らかに、1回の接種用DNA(CAL-SHIV-IN-)の注入で、T細胞と体液性(抗体)免疫反応を誘導できることが実証される。T細胞応答は、接種用ベクターによって発現される全てのウイルス抗原に対する。この応答は持続的であり、従来の増殖、収縮、およびメモリースキームに従っている。表現型解析により、セントラルタイプのメモリーT細胞とメモリーエフェクター細胞の存在を確認した。
【0149】
2.7.HIV-1:ベクターCAL-HIV-IN-の全抗原を発現する新規のベクターの構築および機能性の解析
ベクターCAL-SHIV
KU2-IN-のゲノムから、Nar1酵素とSph1酵素で二重に消化することによりSIVのgag、pol、vif、vpx、およびvpr遺伝子を切り出し、Nru1酵素で部分的に消化しNot1酵素で全体を消化することによりSIVのnef遺伝子を切り出した。次に残りの断片を精製した。この断片は、CAEVのRTLに挟まれており、プラスミドpETにより輸送されるHIVのtat、rev、およびenv遺伝子が結合している断片であるが、これを使用して、HIV-1のgag、pol、vif、vpx、およびvpr遺伝子が結合している5kbの断片とHIV-1のnef遺伝子が結合している620bpの断片とを導入し、ベクターCAL-HIV-IN-を作製した(
図17)。インテグラーゼをコードする配列から切り出されたCAL-HIV-IN-ベクターは、配列番号18の配列からなる。
【0150】
2.7.1.官能性の評価:細胞におけるプラスミドDNAの作用
このベクターのDNAを、ExGenと製造元推奨の手順を用いてトランスフェクションすることによってGHOST-CXCR4およびHEK-293T細胞に導入した。その後トランスフェクションされたGHOST-CXR4細胞は蛍光を放つため、接種用ベクターによるHIV-1のウイルスタンパク質の発現、より具体的にはHIVのRTLの制御下でGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子の発現を促進するTatタンパク質の発現が確認された。
【0151】
接種用ベクターCAL-HIV-IN-でトランスフェクションされたHEK-293T細胞の上清を使用してM8166に植え付けたところ、HIV感染の特徴である細胞変性効果を起こしたCD4+T細胞が示された。これらの結果から、ウイルス粒子に集合した接種用ベクターにより発現されたタンパク質は、M8166指標細胞の感染を可能にすることが証明される。これらの細胞変性効果を起こした細胞は、M8166指標細胞に再度感染して細胞変性効果を誘導することができるウイルスを生産しなかった。この結果から、CAL-HIV-IN-は、組み込みがなされない1回の複製サイクルと関連することが示される。
【0152】
トランスフェクション後に生産されたウイルスタンパク質を評価するために、接種用ベクターでトランスフェクションされたHEK-293T細胞の上清を、トランスフェクションの24時間後、48時間後、および72時間後に回収し、続いてELISAでGagp24抗原の存在について試験した。Table 5(表5)に、このタンパク質の量の測定結果を示す。この測定結果から、このタンパク質が増加して、トランスフェクションの24時間後の100ng/mlからトランスフェクションの72時間後の135ng/mlまでの範囲で蓄積されることが示される。
【0153】
【表5】
【0154】
2.7.2.BALB/Cマウスの免疫化および誘導された免疫反応の特徴付け
6週齢のBALB/cマウスの3つのグループ(1グループあたり6匹)を使用した。2つのグループを免疫化に使用し、3つめのグループを対照グループとした。2つの免疫化マウスのグループに、マウス1匹あたり100μgのベクターCAL-HIV-IN-のDNAを筋肉内経路で注入した。一つのグループの動物を2週間後に殺し、他のグループは免疫化(PI)の3週間後に殺した。対照マウスは免疫化の2週間後に殺した。それぞれのマウスの脾臓を取り出し、脾細胞を単離し、続いてこれを上述のようなELISPOT試験またはマルチパラメータのフローサイトメトリーでの解析のいずれかに用いた。Table 6(表6)にELISPOTによる解析の結果を示す。それによれば、IFN-λを分泌する全ての抗原に特異的な細胞の存在が示される。これらの細胞の大部分は、GagおよびTat+Rev+Nef抗原に特異的である。免疫化の2週間後および3週間後における応答は、実質的に類似している。
【0155】
【表6】
【0156】
フローサイトメトリーによる解析の結果(Table 7(表7))から、接種用ベクターCAL-HIV-IN-によって発現された全ての抗原に特異的なCD4+およびCD8+T細胞の免疫反応が実証される。
【0157】
【表7】