特許第6325021号(P6325021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325021
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】鉢植え胡蝶蘭の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20180507BHJP
   A01G 22/00 20180101ALI20180507BHJP
   B44C 1/14 20060101ALI20180507BHJP
   B44C 5/06 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   A01G7/00 604Z
   A01G1/00 301Z
   B44C1/14
   B44C5/06 B
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-112885(P2016-112885)
(22)【出願日】2016年6月6日
(65)【公開番号】特開2017-216916(P2017-216916A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】708002942
【氏名又は名称】株式会社リーフ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 幹憲
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−149895(JP,A)
【文献】 特開2011−116924(JP,A)
【文献】 Craft It - Gilded Flowers - A Kailo Chic Life,2016年 1月11日,URL,https://akailochiclife.com/2016/01/craft-it-gilded-flowers.html
【文献】 DIY Gold Leaf Wedding Bouquet Tutorial With Nicolas Cogral | Brids,2013年11月15日,URL,https://www.brides.com/story/exclusive-diy-gold-leaf-bouquet-tutorial-with-latelier-rouge-ever-swoon
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 22/00
A01G 7/06
A01G 5/06
B44C 1/14
B44C 5/06
A01N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花弁に金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されている鉢植え胡蝶蘭の製造方法であって、
前記金箔又は銀箔からなる装飾部は、その花弁の表面にスプレー糊を噴霧して薄膜状の接着剤層を形成した後に、前記接着剤層の上に前記金箔又は銀箔の小片を部分的に貼着させて形成すること
前記金箔又は銀箔の小片は、人差し指又は中指の第1関節上部の指腹部表面に付着させてから前記接着剤層に貼着させることを特徴とする鉢植え胡蝶蘭の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載された鉢植え胡蝶蘭の製造方法において、
前記接着剤層の上に前記金箔又は銀箔の小片を部分的に貼着させた後に、前記金箔又は銀箔の上から速乾性のセット樹脂成分を含むヘアスプレーを噴霧して、前記接着剤層及び前記金箔又は銀箔を薄膜状の透明な速乾性の被覆層によって被覆することを特徴とする鉢植え胡蝶蘭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鑑賞性に優れた鉢植え胡蝶蘭及びその製造方法に関し、詳しくは、花弁に金箔又は銀箔等からなる装飾部を施した鉢植え胡蝶蘭及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、開店・開業祝い、新築祝い、当選祝い、又は結婚祝い等の贈り物として、鑑賞性に優れた鉢植え胡蝶蘭が多く用いられている。例えば、花を縦列状に複数個付けた茎部を並列に複数列配置した鉢植え胡蝶蘭は、見栄え的にも豪華であるとともに清楚かつ気品にあふれ、祝福の真心を相手方に伝える上で、好適な贈り物として、以前から好評を博している。
【0003】
しかし、近年、鉢植え胡蝶蘭を代表とした鉢植え植物において、さらに鑑賞性を高めるべく、花の色を各種の染料や塗料で着色した着色花の鉢植え植物及びその着色方法が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載された着色花の鉢植え植物の着色方法は、図4に示すように、[1]ピペット101を準備するステップと、[2]ピペット101の先端102の外径に相当する直径を有する穴103を花106の茎部104に作るステップと、[3]ピペット101の先端102を茎部の穴103に挿入し、茎部104にピペット101を固定するステップと、[4]ステップ[1]、[2]、又は[3]のいずれか1つの後に、鉢植え植物100に対して非毒性の着色液105を、ピペット101内に充填するステップと、[5]着色液105が鉢植え植物100に吸収された後、ピペット101を取り除くステップとを含む方法である。上記着色方法によれば、ピペット101内に充填された着色液105が花106の茎部104内を上昇する樹液の流れによって自然に花106に取り込まれるという効果を奏することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−97935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記着色方法を、例えば、白花の鉢植え胡蝶蘭に適用すれば、ピペットの先端を茎部の穴に挿入し、着色液を注入した茎部に付く花は、すべて当該着色料によって同一色に着色されることになる。そのため、白花の鉢植え胡蝶蘭の花が、人工的な花色に着色されるので、自然に咲いた花色(白花)によって醸し出す清潔感や気品の高さを保持しえないという問題があった。
また、上記着色方法では、花が所望の色を帯びるだけの量の着色料を花に吸収させるためには、少なくとも8時間、好ましくは約12時間必要であり、顧客の注文に速やかに対応することが、困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた鉢植え胡蝶蘭、及びその鉢植え胡蝶蘭を短時間で製造できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る鉢植え胡蝶蘭及びその製造方法は、次のような構成を有している。
(1)鉢植え胡蝶蘭であって、その花弁には、金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、鉢植え胡蝶蘭であって、その花弁には、金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されているので、自然に咲いた花の色をそのまま生かすことによって、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さを保持させることができる。また、その花弁には、金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されているので、金箔又は銀箔が醸し出す豪華さを、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さと調和させながら、鉢植え胡蝶蘭の花に付加させることができる。
よって、本発明によれば、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた鉢植え胡蝶蘭を提供することができる。
【0009】
なお、白花の鉢植え胡蝶蘭であって、その花弁には、金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されていることによって、白花の清潔感や気品の高さと金箔又は銀箔の豪華さとを、より一層調和させることができる。
【0010】
(2)(1)に記載された鉢植え胡蝶蘭において、
前記金箔又は銀箔からなる装飾部は、前記金箔又は銀箔が前記花弁の表面に形成された薄膜状の接着剤層を介して前記花弁の表面に貼着されていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、金箔又は銀箔からなる装飾部は、金箔又は銀箔が花弁の表面に形成された薄膜状の接着剤層を介して花弁の表面に貼着されているので、大小様々な金箔又は銀箔を接着剤層に複数枚貼着させることによって、花弁の表面に金箔又は銀箔からなる装飾部を任意の大きさに形成することができる。そのため、金箔又は銀箔からなる装飾部の大小を、用途や顧客のニーズに応じて、自由に変更させることができる。
【0012】
また、金箔又は銀箔からなる装飾部の大小を、用途や顧客のニーズに応じて変化させても、大小様々な金箔又は銀箔を接着剤層に複数枚貼着させることによって、花弁の表面に金箔又は銀箔からなる装飾部を任意の大きさに形成することができるのであるから、予め金箔又は銀箔を所定の大きさに切断しておく必要がなく、簡便である。例えば、一般に市販されている食用又は装飾用のケースに入った大小様々な金箔又は銀箔をそのまま適用することができる。
【0013】
(3)(1)又は(2)に記載された鉢植え胡蝶蘭において、
前記金箔又は銀箔からなる装飾部は、前記金箔又は銀箔が薄膜状の透明な速乾性の被覆層によって保護されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、金箔又は銀箔からなる装飾部は、金箔又は銀箔が薄膜状の透明な速乾性の被覆層によって保護されているので、例えば、出荷後の移送中や観賞中において、金箔又は銀箔が花弁から離脱する恐れを回避できる。そのため、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた状態を、長期間維持することができる。
【0015】
(4)花弁に金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されている鉢植え胡蝶蘭の製造方法であって、
前記金箔又は銀箔からなる装飾部は、その花弁の表面にスプレー糊を噴霧して薄膜状の接着剤層を形成した後に、前記接着剤層の上に前記金箔又は銀箔の小片を部分的に貼着させて形成することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、金箔又は銀箔からなる装飾部は、その花弁にスプレー糊を噴霧して薄膜状の接着剤層を形成した後に、接着剤層の上に金箔又は銀箔の小片を部分的に貼着させて形成するので、自然に咲いた花の色をそのまま生かすことによって、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さを保持させることができる。また、その花弁にスプレー糊を噴霧して薄膜状の接着剤層を形成するので、花弁を傷つけることなく、花弁の上に接着剤層を短時間に形成できる。また、接着剤層の上に金箔又は銀箔の小片を貼着させるので、金箔又は銀箔が醸し出す豪華さを、自然に咲いた花の上に簡単に付加させることができる。
よって、本発明によれば、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた鉢植え胡蝶蘭を短時間で製造することができる。
【0017】
なお、花弁に金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されている白花の鉢植え胡蝶蘭の製造方法であって、前記金箔又は銀箔からなる装飾部は、その花弁の表面にスプレー糊を噴霧して薄膜状の接着剤層を形成した後に、前記接着剤層の上に前記金箔又は銀箔の小片を部分的に貼着させて形成することによって、白花の清潔感や気品の高さと金箔又は銀箔の豪華さとを、より一層調和させることができる。
【0018】
(5)(4)に記載された鉢植え胡蝶蘭の製造方法において、
前記金箔又は銀箔の小片は、人差し指又は中指の第1関節上部の指腹部表面に付着させてから前記接着剤層に貼着させることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、金箔又は銀箔の小片は、人差し指又は中指の第1関節上部の指腹部表面に付着させてから接着剤層に貼着させるので、金箔又は銀箔の小片を指腹部の指紋によって吸着させることができ、また、指腹部の弾力を用いて金箔又は銀箔の小片を接着剤層に軽く押し付けるだけで、金箔又は銀箔の小片を指腹部から簡単に離脱させ、接着剤層に簡単に貼着させることができる。
【0020】
なお、金箔又は銀箔の小片を、例えば、筆又は刷毛を用いて接着剤層に貼着させようとすると、筆又は刷毛に接着剤がこびり付いて、金箔又は銀箔を筆又は筆又は刷毛からうまく離脱させることができない。これに対して、指腹部の場合には、接着剤が付着する可能性があるが、その接着剤は、他の指等で簡単にふき取ることができるので、次にその指腹部に金箔又は銀箔を付着させても、当該指腹部から金箔又は銀箔を簡単に離脱させ、接着剤層に簡単に貼着させることができる。
【0021】
(6)(4)又は(5)に記載された鉢植え胡蝶蘭の製造方法において、
前記接着剤層の上に前記金箔又は銀箔の小片を部分的に貼着させた後に、前記金箔又は銀箔の上から速乾性のセット樹脂成分を含むヘアスプレーを噴霧して、前記接着剤層及び前記金箔又は銀箔を薄膜状の透明な速乾性の被覆層によって被覆することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、接着剤層の上に金箔又は銀箔の小片を部分的に貼着させた後に、金箔又は銀箔の上から速乾性のセット樹脂成分を含むヘアスプレーを噴霧して、接着剤層及び金箔又は銀箔を薄膜状の透明な速乾性の被覆層によって被覆するので、被覆層の表面は乾燥してサラサラしておりべとつくことがない。そのため、出荷時に花に被せる紙袋が金箔又は銀箔からなる装飾部に張り付いて、花を傷つけることはない。また、紙袋が金箔又は銀箔を花弁から離脱させる恐れも回避できる。その結果、花弁に金箔又は銀箔からなる装飾部が部分的に施されている鉢植え胡蝶蘭を、傷つけることなく、顧客のニーズに合わせて迅速に出荷することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、鉢植え胡蝶蘭の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた鉢植え胡蝶蘭、及びその鉢植え胡蝶蘭を短時間で製造できる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭の斜視図である。
図2図1に示す鉢植え胡蝶蘭において、金箔又は銀箔からなる装飾部を施した花弁の拡大図である。
図3図2に示すA―A断面において、花弁の表面に金箔又は銀箔からなる装飾部を形成する手順を表す模式図である。図3(a)は花弁にスプレー糊を噴霧して接着剤層を形成するステップの模式図であり、図3(b)は接着剤層の上に金箔又は銀箔を指で貼着させるステップの模式図であり、図3(c)は接着剤層及び金箔又は銀箔の上からヘアスプレーを噴霧して被覆層を形成するステップの模式図である。
図4】特許文献1に記載された鉢植え植物の花に着色するときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
はじめに、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭の構造を詳細に説明する。次に、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭における花弁に金箔又は銀箔からなる装飾部を形成する手順を説明する。
【0026】
<本鉢植え胡蝶蘭の構造>
まず、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭の構造を、図1図3を用いて詳細に説明する。図1に、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭の斜視図を示す。図2に、図1に示す鉢植え胡蝶蘭において、金箔又は銀箔からなる装飾部を施した花弁の拡大図を示す。図3に、図2に示すA―A断面において、花弁の表面に金箔又は銀箔からなる装飾部を形成する手順を表す模式図を示す。図3(a)は花弁にスプレー糊を噴霧して接着剤層を形成するステップの模式図を示し、図3(b)は接着剤層の上に金箔又は銀箔を指で貼着させるステップの模式図を示し、図3(c)は接着剤層及び金箔又は銀箔の上からヘアスプレーを噴霧して被覆層を形成するステップの模式図を示す。
【0027】
図1図3に示すように、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭20は、白色の花1の鉢植え胡蝶蘭であって、その花弁11には、金箔又は銀箔3からなる装飾部10が部分的に施されている。本鉢植え胡蝶蘭20は、鉢9に植えた株から複数の茎部6が上方へ伸びて先端は斜め下方へ垂れ下がるように矯正されている。花1は、茎部6の途中から枝分かれした花茎の先端に一輪ずつ付けている。花1を縦列状に複数個付けた茎部6は、添え木7に沿わせた状態で、並列状に複数列配置されている。鉢9の外周は、豪華な金色又は銀色の唐草模様が描かれた飾紙8が巻かれ紅白の組紐で結束されている。なお、本鉢植え胡蝶蘭20は、出荷時に花1を保護する筒状の紙袋を被せて段ボールの専用ケースに収納する。
【0028】
また、図2図3に示すように、花1は、純白を基調とした複数の花弁11を備えている。花弁11のうち、左右に広がる側花弁が大きいので、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、主に側花弁の表面に部分的(例えば、散点状又はラメ糸状)に形成されている。金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、金箔又は銀箔3が薄膜状の接着剤層2を介して花弁11の表面に貼着されている。接着剤層2は、花弁11の表面にスプレー糊22を略均一に噴霧して形成されている。スプレー糊22は、例えば、合成ゴム系接着剤からなり、合成ゴムとその溶剤であるアクリルゴム有機溶剤等を含む。接着剤層2の膜厚は、数十ミクロン程度である。
【0029】
また、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、1つ1つ手作業で形成されているので、同一形状のものは存在しない。各装飾部10における金箔又は銀箔3は、大小様々の大きさに形成された金箔又は銀箔3の小片を複数枚集合させて形成されている。金箔又は銀箔3の中には、微小片の金箔又は銀箔の他に、微小粒の金粉又は銀粉が含まれていてもよい。また、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、金箔のみからなる装飾部、銀箔のみからなる装飾部、又は金箔と銀箔からなる装飾部であってもよい。
【0030】
また、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、金箔又は銀箔3が薄膜状の透明な速乾性の被覆層5によって保護されている。被覆層5は、ヘアスプレー52に含まれる速乾性のセット樹脂成分が固化され、透明な薄膜として形成されている。被覆層5の膜厚は、数十ミクロン程度である。被覆層5は、少なくとも接着剤層2及び金箔又は銀箔3を覆うように形成されている。被覆層5は、速乾性のセット樹脂が固化して形成されるので、被覆層5の表面は乾燥してサラサラしておりべとつくことがない。そのため、出荷時に花1に被せる紙袋が金箔又は銀箔3からなる装飾部10に張り付いて、花1を傷つけることはない。
【0031】
なお、ヘアスプレー52は、耐圧容器の中に噴射剤(例えば、LPG)と原液が充填されていて、噴射ボタンを押すとバルブが開放されて、噴射剤と原液の混合液が霧状に噴射される。ここで使用するヘアスプレー52の原液には、少なくとも、髪をコーティングする速乾性のセット樹脂(例えば、アクリル酸アルキルコポリマーAMP)と、そのセット樹脂を溶かし込むアルコール(例えば、エタノール)とが含まれている。ヘアスプレー52を噴霧すると、アルコールが揮発して速乾性のセット樹脂が薄膜状に短時間(2〜3秒程度)で固化され、速乾性の被覆層5を形成する。
【0032】
<金箔又は銀箔からなる装飾部を形成する手順>
次に、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭における花弁に金箔又は銀箔からなる装飾部を形成する手順を、図3を用いて説明する。図3に、図2に示すA―A断面において、花弁の表面に金箔又は銀箔からなる装飾部を形成する手順を表す模式図を示す。図3(a)は花弁にスプレー糊を噴霧して接着剤層を形成するステップの模式図を示し、図3(b)は接着剤層の上に金箔又は銀箔を指で貼着させるステップの模式図を示し、図3(c)は接着剤層及び金箔又は銀箔の上からヘアスプレーを噴霧して被覆層を形成するステップの模式図を示す。
【0033】
まず、図3(a)に示すように、花弁11の表面にスプレー糊22を噴霧して接着剤層2を形成する。スプレー糊22を噴霧するノズル21は、花弁11の表面から10〜20cm程度離して、接着剤層2の膜厚が数十ミクロン程度となるように、ノズル21の向きを変化させながら、1〜2秒程度の間、開放する。スプレー糊22の塊を花弁11の上に形成させないためである。接着剤層2は、花弁11のうち、中心部にある唇部を避けて、主に、左右に広がる側花弁に形成する。接着剤層2は、金箔又は銀箔3を張り付ける範囲より、少し広めに形成する。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、接着剤層2の上に金箔又は銀箔3を指で貼着させる。大小様々な大きさの金箔又は銀箔3を接着剤層2に複数枚貼着させることによって、花弁11の表面に金箔又は銀箔3からなる装飾部10を任意の大きさに形成する。金箔又は銀箔3は、例えば、一般に市販されている食用又は装飾用のケース31に入った金箔又は銀箔3の小片をそのまま使用する。金箔又は銀箔3の大きさは、数mm程度である。
【0035】
また、金箔又は銀箔3の小片は、人差し指又は中指の第1関節上部の指腹部4の表面に付着させてから接着剤層2に貼着させる。このとき、金箔又は銀箔3の小片を指腹部4の指紋によって吸着させることができ、また、指腹部4の弾力を用いて金箔又は銀箔3の小片を接着剤層2に軽く押し付けるだけで、金箔又は銀箔3の小片を指腹部4から簡単に離脱させ、接着剤層2に簡単に貼着させることができる。
【0036】
次に、図3(c)に示すように、接着剤層2及び金箔又は銀箔3の上からヘアスプレー52を噴霧して被覆層5を形成する。ヘアスプレー52を噴霧するノズル51は、花弁11の表面から20〜30cm程度離して、被覆層5の膜厚が数十ミクロン程度となるように、ノズル51の向きを変化させながら1〜2秒程度の間、開放する。ヘアスプレー52の原液には、少なくとも、髪をコーティングする速乾性のセット樹脂(例えば、アクリル酸アルキルコポリマーAMP)と、そのセット樹脂を溶かし込むアルコール(例えば、エタノール)とが含まれているので、ヘアスプレー52を噴霧すると、アルコールが揮発して速乾性のセット樹脂が薄膜状に短時間(2〜3秒程度)で固化され、速乾性の被覆層5を形成する。接着剤層2及び金箔又は銀箔3は、速乾性のセット樹脂が薄膜状に固化された速乾性の被覆層5によって覆われているので、例えば、ドライヤー等によって乾燥させなくても、べとつくことがない。
【0037】
したがって、上記手順によれば、花弁11の表面に部分的に形成された金箔又は銀箔3からなる装飾部10を備えた鉢植え胡蝶蘭20には、金箔又は銀箔3を貼着させる接着剤層2の乾燥を待つことなく、直ちに花1を保護する紙袋を被せ、所定の専用ケースに梱包して、出荷することができる。本鉢植え胡蝶蘭20を搬送中において、紙袋が花1に付着して花1を傷つける恐れを回避でき、また、紙袋が金箔又は銀箔3を花弁11から離脱させる恐れも回避できる。その結果、花弁11に金箔又は銀箔3からなる装飾部10が部分的に施されている鉢植え胡蝶蘭20を、傷つけることなく、顧客のニーズに合わせて迅速に提供することができる。
【0038】
<作用効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭20によれば、鉢植え胡蝶蘭20であって、その花弁11には、金箔又は銀箔3からなる装飾部10が部分的に施されているので、自然に咲いた花1の色をそのまま生かすことによって、鉢植え胡蝶蘭20の特徴である清潔感や気品の高さを保持させることができる。また、その花弁11には、金箔又は銀箔3からなる装飾部10が部分的に施されているので、金箔又は銀箔3が醸し出す豪華さを、鉢植え胡蝶蘭20の特徴である清潔感や気品の高さと調和させながら、鉢植え胡蝶蘭20の花1に付加させることができる。
【0039】
よって、本実施形態によれば、鉢植え胡蝶蘭20の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた鉢植え胡蝶蘭20を提供することができる。なお、本実施形態に係る鉢植え胡蝶蘭20は、白花の鉢植え胡蝶蘭であって、その花弁11には、金箔又は銀箔3からなる装飾部10が部分的に施されていることによって、白花の清潔感や気品の高さと金箔又は銀箔3の豪華さとを、より一層調和させることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、金箔又は銀箔3が花弁11の表面に形成された薄膜状の接着剤層2を介して花弁11の表面に貼着されているので、大小様々な金箔又は銀箔3を接着剤層2に複数枚貼着させることによって、花弁11の表面に金箔又は銀箔3からなる装飾部10を任意の大きさに形成することができる。そのため、金箔又は銀箔3からなる装飾部10の大小を、用途や顧客のニーズに応じて、自由に変更させることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、金箔又は銀箔3からなる装飾部10の大小を、用途や顧客のニーズに応じて変化させても、大小様々な金箔又は銀箔3を接着剤層2に複数枚貼着させることによって、花弁11の表面に金箔又は銀箔3からなる装飾部10を任意の大きさに形成することができるのであるから、予め金箔又は銀箔3を所定の大きさに切断しておく必要がなく、簡便である。例えば、一般に市販されている食用又は装飾用のケースに入った大小様々な金箔又は銀箔3をそのまま適用することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、金箔又は銀箔3が薄膜状の透明な速乾性の被覆層5によって保護されているので、例えば、出荷後の移送中又は観賞中において、金箔又は銀箔3が花弁11から離脱する恐れを回避できる。そのため、鉢植え胡蝶蘭20の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた状態を、長期間維持することができる。
【0043】
また、他の実施形態に係る本鉢植え胡蝶蘭20の製造方法によれば、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、その花弁11にスプレー糊22を噴霧して薄膜状の接着剤層2を形成した後に、接着剤層2の上に金箔又は銀箔3の小片を部分的に貼着させて形成するので、自然に咲いた花1の色をそのまま生かしたことによって、鉢植え胡蝶蘭20の特徴である清潔感や気品の高さを保持させることができる。また、その花弁11にスプレー糊22を噴霧して薄膜状の接着剤層2を形成するので、花弁11を傷つけることなく、花弁11の上に接着剤層2を短時間に形成できる。また、接着剤層2の上に金箔又は銀箔3の小片を貼着させるので、金箔又は銀箔3が醸し出す豪華さを、自然に咲いた花1の上に簡単に付加させることができる。
【0044】
よって、他の実施形態に係る本鉢植え胡蝶蘭20の製造方法によれば、鉢植え胡蝶蘭20の特徴である清潔感や気品の高さを保持しつつ、さらに豪華さを備えた鉢植え胡蝶蘭20を短時間で製造することができる。
【0045】
なお、他の実施形態に係る本鉢植え胡蝶蘭20の製造方法は、花弁11に金箔又は銀箔3からなる装飾部10が部分的に施されている白花の鉢植え胡蝶蘭20の製造方法であって、金箔又は銀箔3からなる装飾部10は、その花弁11の表面にスプレー糊22を噴霧して薄膜状の接着剤層2を形成した後に、接着剤層2の上に金箔又は銀箔3の小片を部分的に貼着させて形成することによって、白花の清潔感や気品の高さと金箔又は銀箔3の豪華さとを、より一層調和させることができる。
【0046】
また、他の実施形態によれば、金箔又は銀箔3の小片は、人差し指又は中指の第1関節上部の指腹部4の表面に付着させてから接着剤層2に貼着させるので、金箔又は銀箔3の小片を指腹部4の指紋によって吸着させることができ、また、指腹部4の弾力を用いて金箔又は銀箔3の小片を接着剤層2に軽く押し付けるだけで、金箔又は銀箔3の小片を指腹部4から簡単に離脱させ、接着剤層2に簡単に貼着させることができる。
【0047】
なお、金箔又は銀箔3の小片を、例えば、筆又は刷毛を用いて接着剤層2に貼着させようとすると、筆又は刷毛に接着剤がこびり付いて、金箔又は銀箔3を筆又は筆又は刷毛からうまく離脱させることができない。これに対して、指腹部4の場合には、接着剤が付着する可能性があるが、その接着剤は、他の指等で簡単にふき取ることができるので、次にその指腹部4に金箔又は銀箔3を付着させても、当該指腹部4から金箔又は銀箔3を簡単に離脱させ、接着剤層2に簡単に貼着させることができる。
【0048】
また、他の実施形態によれば、接着剤層2の上に金箔又は銀箔3の小片を部分的に貼着させた後に、金箔又は銀箔3の上から速乾性のセット樹脂成分を含むヘアスプレー52を噴霧して、接着剤層2及び金箔又は銀箔3を薄膜状の透明な速乾性の被覆層5によって被覆するので、被覆層5の表面は乾燥してサラサラしておりべとつくことがない。そのため、出荷時に花1に被せる紙袋が金箔又は銀箔3からなる装飾部10に張り付いて、花1を傷つけることはない。また、紙袋が金箔又は銀箔3を花弁11から離脱させる恐れも回避できる。その結果、花弁11に金箔又は銀箔3からなる装飾部10が部分的に施されている鉢植え胡蝶蘭20を、傷つけることなく、顧客のニーズに合わせて迅速に出荷することができる。
【0049】
<変形例>
なお、本実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更することが可能なことは言うまでもない。例えば、他の実施形態に係る本鉢植え胡蝶蘭20の製造方法によれば、金箔又は銀箔3の小片は、人差し指又は中指の第1関節上部の指腹部4の表面に付着させて接着剤層2に貼着させるが、金箔又は銀箔3を接着剤層2に貼着させる手段として、必ずしも、指を用いる必要はない。例えば、ケース31に入れた金箔又は銀箔3の小片をエアー等で吹き付けて接着剤層2に貼着させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、鑑賞性に優れた鉢植え胡蝶蘭及びその製造方法として、詳しくは、花弁に金箔又は銀箔等からなる装飾部を施した鉢植え胡蝶蘭及びその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 花
2 接着剤層
3 金箔又は銀箔
4 指腹部
5 被覆層
6 茎部
9 鉢
10 装飾部
11 花弁
20 鉢植え胡蝶蘭
22 スプレー糊
52 ヘアスプレー
図1
図2
図3
図4