特許第6325026号(P6325026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6325026組織部位を治療するためのドレッシング、システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325026
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】組織部位を治療するためのドレッシング、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20180507BHJP
【FI】
   A61M27/00
【請求項の数】45
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-138111(P2016-138111)
(22)【出願日】2016年7月13日
(62)【分割の表示】特願2012-557219(P2012-557219)の分割
【原出願日】2011年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-221298(P2016-221298A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】13/043,315
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/312,968
(32)【優先日】2010年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】サモンズ,アレキサンダー
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/158126(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/136998(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/017437(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/060475(WO,A2)
【文献】 特表2005−536275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位に減圧を分配するドレッシングにおいて、当該ドレッシングが、
液体不透過性であり、積層された関係で配置された少なくとも2つの層であって、各層が当該層を通して少なくとも1以上の窓を有する少なくとも2つの層と、
少なくとも2つの前記層を結合する複数の接合部であって、当該接合部が、隣接する層の一部を相対的にずらして間隔を空けて複数の流路を形成しており、各接合部が、縦寸法と横寸法と上下寸法とを有し、前記縦寸法と前記横寸法のアスペクト比が3を超える複数の接合部と、
を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項2】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記アスペクト比が6を超えることを特徴とするドレッシング。
【請求項3】
請求項1に記載のドレッシングが、さらに、少なくとも2つの前記層の間に配置された第3の層であって、複数の前記接合部によって少なくとも2つの前記層に結合されている第3の層を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項4】
請求項3に記載のドレッシングにおいて、前記第3の層が、当該第3の層を通して1以上の窓を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項5】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、少なくとも2つの前記層の少なくとも一方の層が、少なくとも2つの前記層の他方の層と反対側にある前記一方の層の表面に形成された1以上の微小応力誘因要素を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項6】
請求項5に記載のドレッシングにおいて、前記微小応力誘因要素が、ボタンおよび突出した柱のうちの少なくとも一つを具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項7】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、各層の厚さが可変であることを特徴とするドレッシング。
【請求項8】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、少なくとも2つの前記層が、半径を有する湾曲部で折り畳まれた単一層を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項9】
請求項8に記載のドレッシングにおいて、前記半径が、前記ドレッシングの少なくとも一つの周縁に沿って延在するマイクロチャネルを形成することを特徴とするドレッシング。
【請求項10】
組織部位に減圧を分配するシステムにおいて、当該システムが、
減圧源と、
前記減圧源と流体的に連結している導管と、
前記導管によって前記減圧源に流体的に連結されるように構成されたドレッシングと、を具え、
前記ドレッシングが、
液体不透過性であり、積層された関係で配置された少なくとも2つの層であって、各層が当該層を通して少なくとも1以上の窓を有する少なくとも2つの層と、
少なくとも2つの前記層を結合する複数の接合部であって、当該接合部が、隣接する層の一部を相対的にずらして間隔を空けて複数の流路を形成しており、各接合部が、縦寸法と横寸法と上下寸法とを有し、前記縦寸法と前記横寸法のアスペクト比が3を超える複数の接合部と、
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、前記アスペクト比が6を超えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のシステムが、さらに、少なくとも2つの前記層の間に配置された第3の層であって、複数の前記接合部によって少なくとも2つの前記層に結合されている第3の層を具えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記第3の層が、当該第3の層を通して1以上の窓を具えることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のシステムにおいて、少なくとも2つの前記層の少なくとも一方の層が、少なくとも2つの前記層の他方の層と反対側にある前記一方の層の表面に形成された1以上の微小応力誘因要素を具えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記微小応力誘因要素が、ボタンおよび突出した柱のうちの少なくとも一つを具えることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項10に記載のシステムにおいて、各層の厚さが可変であることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項10に記載のシステムにおいて、少なくとも2つの前記層が、半径を有する湾曲部で折り畳まれた単一層を具えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、前記半径が、前記ドレッシングの少なくとも一つの周縁に沿って延在するマイクロチャネルを形成することを特徴とするシステム。
【請求項19】
組織部位に減圧を分配するドレッシングにおいて、当該ドレッシングが、
液体不透過性である少なくとも一つの層であって、当該層を通して1以上の窓を有する層を具え、
少なくとも一つの前記層が、1以上の折目を形成することにより、実質的な湾曲部を有する表面に適合するように構成されており、1以上の前記折り目が、流体の移動を促進するように構成された1以上のマイクロチャネルを形成していることを特徴とするドレッシング。
【請求項20】
請求項19に記載のドレッシングにおいて、少なくとも一つの前記層が円形であることを特徴とするドレッシング。
【請求項21】
請求項19に記載のドレッシングにおいて、少なくとも一つの前記層が第1の層を具え、
前記ドレッシングが、さらに、
液体不透過性である第2の層であって、当該第2の層を通して1以上の窓を有する第2の層と、
前記第1の層を前記第2の層に結合する複数の接合部であって、各接合部が隣の接合部と離間して長手方向を有しており、隣り合う一対の接合部が、少なくとも一つのフローチャネルを形成する複数の接合部と、
を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項22】
請求項21に記載のドレッシングにおいて、前記第1の層と前記第2の層が、円形状と、同一の広がりとを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項23】
請求項21に記載のドレッシングにおいて、
前記第1の層と前記第2の層が、それぞれ窓がない部分を含み、
前記窓がない部分は、同一の広がりであり、
前記ドレッシングが、さらに、
前記第1の層と前記第2の層とを結合するチャネル形成接合部であって、当該チャネル形成接合部が、前記窓がない部分と窓を有する部分との間に配置されて、液体送達路を形成するチャネル形成接合部と、
前記第1の層に形成され、前記液体送達路と流体連通している液体開口部と、を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項24】
請求項23に記載のドレッシングにおいて、前記液体開口部が、流体源に流体的に連結されるように構成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項25】
組織部位に減圧を分配するシステムにおいて、当該システムが、
減圧源と、
前記減圧源と流体的に連結している導管と、
前記導管によって前記減圧源と流体的に連結するように構成されたドレッシングと、を具え、
前記ドレッシングが、
液体不透過性である少なくとも一つの層であって、当該層を通して1以上の窓を有する層を具え、
少なくとも一つの前記層が、1以上の折目を形成することにより、実質的な湾曲部を有する表面に適合するように構成されており、1以上の前記折り目が、流体の移動を促進するように構成された1以上のマイクロチャネルを形成していることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、少なくとも一つの前記層が円形であることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項25に記載のシステムにおいて、少なくとも一つの前記層が第1の層を具え、
前記ドレッシングが、さらに、
液体不透過性である第2の層であって、当該第2の層を通して1以上の窓を有する第2の層と、
前記第1の層を前記第2の層に結合する複数の接合部であって、各接合部が隣の接合部と離間して長手方向を有しており、隣り合う一対の接合部が、少なくとも一つのフローチャネルを形成する複数の接合部と、
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムにおいて、前記第1の層と前記第2の層が、円形状と、同一の広がりとを有することを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記第1の層と前記第2の層が、それぞれ窓がない部分を含み、
前記窓がない部分は、同一の広がりであり、
前記ドレッシングが、さらに、
前記第1の層と前記第2の層とを結合するチャネル形成接合部であって、当該チャネル形成接合部が、前記窓がない部分と窓を有する部分との間に配置されて、液体送達路を形成するチャネル形成接合部と、
前記第1の層に形成され、前記液体送達路と流体連通している液体開口部と、を具えることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムが、さらに、前記液体開口部に流体的に連結するように構成された流体源を具えることを特徴とするシステム。
【請求項31】
組織部位に減圧を分配するドレッシングにおいて、当該ドレッシングが、
第1の窓を有する第1の液体不透過性層と、
第2の窓を有する第2の液体不透過性層と、
前記第1の液体不透過性層と前記第2の液体不透過性層との間に配置された複数のスペーサであって、複数の当該スペーサが、前記第1の液体不透過性層と前記第2の液体不透過性層との間の分離を提供し、前記第1の窓と前記第2の窓との間の流路を画定するスペーサと、
を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項32】
請求項31に記載のドレッシングであって、複数の前記スペーサが、前記第1の液体不透過性層と前記第2の液体不透過性層との間に接合部を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項33】
請求項31に記載のドレッシングにおいて、前記第1の液体不透過性層と前記第2の液体不透過性層との少なくとも一方が、ポリマーフィルムを具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項34】
組織部位に減圧を分配するドレッシングにおいて、当該ドレッシングが、
液体不透過性の材料から形成された第1の層であって、当該第1の層を通して延びる第1の窓を有する第1の層と、
液体不透過性の材料から形成された第2の層であって、当該第2の層を通して延びる第2の窓を有する第2の層と、
前記第1の層を前記第2の層に接合箇所において結合する複数の接合部であって、前記接合箇所が、隣り合う接合箇所の間で前記第1の層と前記第2の層の部分を画定し、少なくとも一組の前記第1の窓と第2の窓が、隣り合う接合箇所の間に配置されて、前記第1の窓と第2の窓との間の流路を画定する接合部と、を具え、
前記ドレッシングが前記組織部位に配置されて前記ドレッシングに減圧をかけた場合に、流体が、前記第1の層と、前記第2の層と、前記流路とを通って流れることを特徴とするドレッシング。
【請求項35】
請求項34に記載のドレッシングにおいて、前記ドレッシングに減圧をかけたときに、前記第1の層と第2の層の前記部分が、前記流路を閉じないで互いに近づくよう移動することを特徴とするドレッシング。
【請求項36】
請求項34に記載のドレッシングにおいて、前記ドレッシングに減圧をかけたときに流路が閉じるのを防止するように、前記第1の層と第2の層の前記部分が十分に硬いことを特徴とするドレッシング。
【請求項37】
請求項34に記載のドレッシングにおいて、前記ドレッシングに減圧をかけたときに流路が閉じるのを防止するように、前記接合部が、前記第1の層と第2の層の前記部分を硬くしていることを特徴とするドレッシング。
【請求項38】
請求項34に記載のドレッシングが、さらに、前記第1の層と第2の層との間に配置された第3の層を具え、当該第3の層が、複数の前記接合部によって前記第1の層と第2の層に結合されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項39】
請求項38に記載のドレッシングにおいて、前記第3の層が、液体不透過性の材料から形成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項40】
請求項38に記載のドレッシングにおいて、前記第3の層が、さらに、隣り合う接合箇所の間に配置されて前記第3の層を通して延びる1以上の窓を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項41】
請求項34に記載のドレッシングにおいて、前記第1および第2の層の少なくとも一方の層が、さらに、前記第1および第2の層の他方の層と反対側にある前記一方の層の表面に形成された微小応力誘因要素を具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項42】
請求項41に記載のドレッシングにおいて、前記微小応力誘因要素が、ボタンおよび突出した柱のうちの少なくとも一つを具えることを特徴とするドレッシング。
【請求項43】
請求項34に記載のドレッシングにおいて、前記第1および第2の層のいずれか一方の厚さが可変であることを特徴とするドレッシング。
【請求項44】
組織部位に減圧を分配するドレッシングにおいて、当該ドレッシングが、
液体不透過性の材料から形成された第1の層であって、当該第1の層を通して延びる第1の窓を有する第1の層と、
液体不透過性の材料から形成された第2の層であって、当該第2の層を通して延びる第2の窓を有する第2の層と、
前記第1の層と第2の層の間に配置された複数のスペーサであって、複数の当該スペーサが、前記第1の層と第2の層との間の分離を提供し、前記第1の窓と第2の窓との間の流路を画定するスペーサと、を具え、
前記ドレッシングを前記組織部位に配置して前記ドレッシングに減圧をかけた場合に、流体が、前記第1の層と、前記第2の層と、前記流路とを通って流れることを特徴とするドレッシング。
【請求項45】
請求項44に記載のドレッシングにおいて、前記ドレッシングに減圧をかけたときに、前記第1の層と第2の層の一部が、前記流路を閉じないで互いに近づくよう移動することを特徴とするドレッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、米国特許法第119条(e)に基づき、すべての目的で参照により本明細書に援用される、2010年3月11日に出願された「Dressings,Systems,and Methods for Treating a Tissue Site」と題する米国仮特許出願第61/312,968号明細書の出願の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して医療治療システムに関し、より詳細には、減圧を用いて組織部位を治療するための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医療状況に応じて、特に、組織部位における肉芽形成を促進するように、または組織部位において流体を排出させるために、減圧治療に対して減圧を使用する場合がある。特に示さない限り、本明細書で用いる「または」は、相互排他性を必要としない。減圧治療および減圧を用いるドレナージはともに、組織部位に減圧をマニホルドで集配する、または分配することを伴うことが多い。
【発明の概要】
【0004】
非限定的な例示的実施形態によれば、組織部位に減圧を分配するドレッシングは、積層される複数の液体不透過性層と、隣接する液体不透過性層の間に少なくとも部分的に配置される複数のスペーサとを有している。複数の液体不透過性層には、窓が形成されている。複数のスペーサおよび複数の液体不透過性層は、減圧下での流体の流れを可能にする複数の流路を形成する。複数の液体不透過性層の隣接する層を、同一の広がりを有する面の少なくとも大部分の間に発泡体がないように積層することができる。
【0005】
別の非限定的な例示的実施形態によれば、組織部位に減圧を分配するシステムは、減圧源と、減圧送達導管と、減圧ドレッシングとを有している。減圧送達導管は、減圧源と減圧ドレッシングとを流体結合する。減圧ドレッシングは、積層される複数の液体不透過性層と、液体不透過性層の間に少なくとも部分的に配置される複数のスペーサとを有している。複数の液体不透過性層には、窓が形成されている。複数のスペーサおよび複数の液体不透過性層は、減圧下での流体の流れを可能にする複数の流路を形成する。複数の液体不透過性層の隣接する層を、同一の広がりを有する面の少なくとも大部分の間に発泡体がないように積層することができる。
【0006】
別の非限定的な例示的実施形態によれば、組織部位に減圧を分配するドレッシングを製造する方法は、複数の液体不透過性層を提供するステップと、複数の液体不透過性層を積層するステップと、隣接する液体不透過性層の間に少なくとも部分的に配置された複数のスペーサを形成するステップとを含む。複数の液体不透過性層には、窓が形成されている。複数のスペーサおよび複数の液体不透過性層は、減圧下での流体の流れを可能にする複数の流路を形成する。複数の液体不透過性層の隣接する層は、同一の広がりを有する面の少なくとも大部分の間に発泡体がないように積層される。
【0007】
別の非限定的な例示的実施形態によれば、組織部位に減圧を送達する方法は、減圧ドレッシングを提供するステップと、減圧ドレッシングを組織部位に隣接して配置するステップと、減圧源を減圧ドレッシングに流体結合するステップと、減圧源を作動させるステップとを含む。減圧ドレッシングは、積層される複数の液体不透過性層と、隣接する液体不透過性層の間に少なくとも部分的に配置される複数のスペーサとを有する。複数の液体不透過性層には、窓が形成されている。複数のスペーサおよび複数の液体不透過性層は、減圧下での流体の流れを可能にする複数の流路を形成する。複数の液体不透過性層の隣接する層を、同一の広がりを有する面の少なくとも大部分の間に発泡体がないように積層することができる。
【0008】
例示的な実施形態の他の特徴および利点は、図面および以下の詳細な説明を参照して明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、腹腔を治療する減圧治療システムの例示的な実施形態の、一部が断面で示されている概略図である。
図2図2は、減圧で使用される例示的なドレッシングの概略斜視図である。
図3図3は、減圧がかけられていない状態で示されている図2の例示的なドレッシングの一部の概略断面図である。
図4図4は、減圧がかけられている状態で示されている図3の例示的なドレッシングの一部の概略断面図である。
図5図5は、減圧で使用されるドレッシングの例示的な実施形態におけるさまざまな流路を示す概略図である。
図6図6は、減圧で使用される例示的なドレッシングの一部の概略断面図である。
図7図7は、創傷を治療する減圧治療システムの例示的な実施形態の、一部が断面で示されている概略図である。
図8図8は、減圧で使用される例示的なドレッシングの一部の概略断面図である。
図9図9は、折目を示す、減圧で使用される例示的なドレッシングの一部の概略断面図である。
図10図10は、減圧で使用される例示的なドレッシングの一部の概略断面図である。
図11図11は、一般的な湾曲身体部分または湾曲身体部分の一部の概略斜視図である。
図12図12は、平坦構成で示す、減圧で使用される例示的なドレッシングの概略斜視図である。
図13図13は、図11の湾曲本体部分に付与されて示されている図12の例示的なドレッシングの概略斜視図である。
図14図14は、図13の例示的なドレッシングにおける折目の一部が断面で示されている概略斜視図である。
図15図15は、線15−15に沿って取り出された図14の例示的なドレッシングにおける折目の概略断面図である。
図16図16は、例示的なフローチャネルを示す、減圧で使用される例示的なドレッシングの概略斜視図である。
図17図17は、例示的な液体送達チャネルを示す減圧システムで使用される例示的なドレッシングの概略斜視図である。
図18図18は、例示的な液体送達チャネルの周縁を示す、図17の例示的なドレッシングの一部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
非限定的な例示的実施形態の以下の詳細な説明では、その実施形態の一部を形成する添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるのに十分詳細に説明されており、他の実施形態を利用してもよいこと、および本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく論理構造的、機械的、電気的および化学的変更を行ってもよいということが理解される。当業者が本明細書に記載されている実施形態を実施することができるために必要でない詳細を回避するために、説明は、当業者に既知であるいくつかの情報を省略している場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味で解釈されるべきではなく、例示的な実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって定義される。
【0011】
ここで図1を参照すると、腹部治療装置104を含む腹腔102を治療するシステム100の例示的な実施形態が提示されている。腹部治療装置104は、たとえば、図2に示すように、減圧で使用される例示的なドレッシング200であり得る。システム100および腹部治療装置104は、患者の組織部位106を治療するためのものである。組織部位106は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯または他の任意の組織を含む、あらゆる人間、動物または他の生物体の身体組織であり得る。この例示的な実施形態では、組織部位106は、体腔、特に腹腔102に組織を含み、腹腔102に近接する腹部内容物108または組織を含む。組織部位106の治療は、流体、たとえば腹水の除去、腹腔102の保護または減圧治療を含むことができる。
【0012】
図示するように、腹部治療装置104は、組織部位106を治療するために患者の腹腔102内に配置される。腹部治療装置104は、腹部内容物108によって支持される。腹部内容物108は、腹部治療装置104が配置される表面を構成している。腹部治療装置104の一部110を、第1傍結腸溝112にまたはそれに近接して配置することができ、別の部分114を、第2の傍結腸溝116にまたはそれに近接して配置することができる。図1は、概略図であって比例尺では描かれておらず、流路の密度は通常より高い。
【0013】
腹部治療装置104には、複数の液体不透過性層117、たとえば第1液体不透過性層118および第2液体不透過性層120が形成されている。複数の液体不透過性層117、たとえば層118、120には、それぞれ窓(fenestration)122、124が形成されている。「液体不透過性層」に関する「液体不透過性の」は、層に液体不透過性材料が形成されていることを意味する。したがって、層は、液体不透過性材料が形成されているが、窓が形成される場合は液体透過性である可能性があり、それにも関らず、液体不透過性層と呼ばれる。窓122、124は、いかなる形状、たとえば円形開口部、矩形開口部または多角形であってもよい。窓122、124は、例示的な実施形態ではスリットまたは直線状切り口として提供される。すべての層に窓を形成する必要はない。腹部治療装置104は、第1面105および第2の組織対向面107を有している。腹部治療装置104は、通常、面105、107が同じであるように対称的である。しかしながら、例示の目的で、異なる面として言及する。
【0014】
マニホルド126またはマニホルドパッドは、減圧を腹部治療装置104に分配する。封止部材128が腹腔102の上に流体シールを提供する。患者の表皮130の上に1つまたは複数の皮膚閉鎖装置を配置してもよい。
【0015】
減圧コネクタサブシステム132を使用して、腹部治療装置104を減圧送達導管134に流体結合することができる。減圧コネクタサブシステム132は、減圧コネクタ136またはインタフェースおよびマニホルド126を含むことができる。別法として、減圧コネクタサブシステム132は、腹部治療装置104または他のいずれかの装置上の腹部治療装置104に減圧を提供するインサイチュコネクタ(図示せず)であってもよい。減圧送達導管134は、減圧源137に流体結合されている。1つの例示的な実施形態では、減圧は、マニホルド126を介して腹部治療装置104に送達され、マニホルド126は、減圧送達導管134に結合されている減圧コネクタ136を介して減圧を受け取る。減圧源137は、減圧送達導管134に減圧を送達する。
【0016】
組織部位106からの腹水、滲出物または他の流体の除去の促進に役立つように、組織部位106に減圧をかけることができる。いくつかの例では、減圧を追加の組織の成長を刺激するように付与することができる。いくつかの例では、流体除去のみが望ましい場合もある。本明細書で用いる「減圧」は、概して、治療を受けている組織部位における周囲圧力より低い圧力を指す。大部分の場合、この減圧は、患者が位置している大気圧より低くなる。あるいは、減圧は、組織部位における静圧より低くてもよい。
【0017】
マニホルド126は、腹部治療装置104に隣接して示されている。マニホルド126は多くの形態をとることができる。本明細書で用いる用語「マニホルド」は、概して、直接または腹部治療装置104を介して、組織部位106に減圧をかける、組織部位106に流体を送達する、または組織部位106から流体を除去するのを支援するために提供される物体または構造を指す。マニホルド126は、通常、腹部治療装置104を介してマニホルド126の周囲の組織部位106に提供されかつそこから除去される流体を分配する複数のフローチャネルまたは通路を有している。1つの例示的な実施形態では、フローチャネルまたは通路は、提供されるかまたは除去される流体の分配を促進するように相互接続されている。マニホルド126は、組織部位106に接触して配置されかつ減圧を組織部位106または腹部治療装置104に分配することができる生体適合材料であり得る。マニホルド126の例には、限定なしに、フローチャネルを形成するように配置された構造的要素を有する装置、連続気泡発泡体等のセル状発泡体、多孔質組織集合体、フローチャネルを含むかまたは含むように硬化する液体、ゲルおよび発泡体が含まれ得る。マニホルド126は、多孔質であってもよく、発泡体、ガーゼ、フェルトマット、または特定の生物学的用途に適した何らかの他の材料から作製され得る。一実施形態では、マニホルド126は、多孔質発泡体であり、フローチャネルとして作用する複数の相互接続された気泡または孔を含む。多孔質発泡体は、San Antonio、TexasのKinetic Concepts,Incorporated製のGranuFoam(登録商標)材料等、ポリレタンの連続気泡構造の網状発泡体であり得る。他の実施形態は、「独立気泡」を含むことができる。状況によっては、マニホルド126を使用して、薬剤、抗菌剤、成長因子およびさまざまな溶液等の流体を分配することも可能である。吸収性材料、ウィッキング(wicking)材料、疎水性材料および親水性材料等の他の層を、マニホルド126内にまたはその上に含めることができる。
【0018】
封止部材128は、腹腔102の上に配置され、流体シールを提供する。本明細書で用いる「流体シール」または「シール」は、関連する特定の減圧源またはサブシステムを考慮して所望の部位における減圧を維持するのに適しているシールを意味する。封止部材128は、カバーまたはドレープであってもよく、腹部治療装置104の一部にマニホルド126を固定ために使用される。封止部材128は不透過性であっても半透過性であってもよい。封止部材128は、腹腔102、特に腹腔開口部140の上に封止部材128を取り付けた後に組織部位106または他の所望の位置において減圧を維持することができる。封止部材128は、シリコーン系化合物、アクリル樹脂、ハイドロゲルまたはハイドロゲル形成材料、ポリウレタン、ポリマーフィルム、または組織部位106に減圧をかける要求に応じて不透過性特性または透過性特性を有する他のいずれかの生体適合材料から形成される、可撓性オーバードレープまたはフィルムであり得る。
【0019】
封止部材128は、封止部材128を患者の表皮130に結合する取付装置142をさらに有することができる。取付装置142は多くの形態をとることができる。たとえば、取付装置142は、直接または間接的に患者の表皮130との流体シールを提供するように、封止部材128の周縁部または封止部材128の任意の部分に沿って配置することができる接着層144であってもよい。接着層144を、封止部材128に事前に付与して、付与時に除去される剥離可能な裏当てまたは部材(図示せず)によって覆ってもよい。
【0020】
減圧コネクタ136は、一例としてポートまたはコネクタであってもよく、流体がマニホルド126から減圧送達導管134へかつその逆に進むのを可能にする。たとえば、マニホルド126および腹部治療装置104を用いて組織部位106から収集される流体は、減圧コネクタ136を介して減圧送達導管134に入ることができる。別の実施形態では、システム100は、減圧コネクタ136を省略してもよく、減圧送達導管134を、封止部材128内にかつマニホルド126内に直接挿入することができる。減圧送達導管134は、医療導管もしくは配管、または減圧および流体を搬送する他の任意の手段であってもよい。減圧送達導管134は、容易に減圧を送達し流体を除去する多腔部材であってもよい。一実施形態では、減圧送達導管134は、減圧および液体搬送用の1つの内腔と圧力センサに圧力を伝達するための1つの内腔とを備えた二腔導管である。
【0021】
減圧は、減圧源137によって生成され減圧送達導管134に供給される。減圧源137により、広範囲の減圧を生成しまたは供給することができる。1つの例示的な実施形態では、減圧は−50mmHgから−300mmHgの範囲であり、別の例示的な実施形態では、範囲は−100mmHgから−200mmHgを含むことができる。圧力は、たとえば−100mmHg、−110mmHg、−120mmHg、−125mmHg、−130mmHg、−140mmHg、−150mmHg、−160mmHg、−170mmHg、−180mmHg、−190mmHgまたは−200mmHgであり得る。1つの例示的な実施形態では、減圧源137は、−100mmHg、−125mmHgおよび−150mmHgに対するプリセットセレクタを有している。減圧源137は、閉塞アラーム、漏れアラーム、キャニスタ満杯アラームまたはバッテリ不足アラーム等の複数のアラームを有していてもよい。減圧源137は、携帯型減圧源、壁面減圧源、または腹腔あるいは他の組織部位用の他のユニットであってもよい。減圧源137は、定圧、可変圧、断続圧または連続圧を選択的に送達することができる。腹腔102から減圧送達導管134を通して除去される流体は、環境に応じて1日当り5L程度以上であり得る。通常、減圧源137に、流体を受け取る流体貯蔵器が関連付けられている。
【0022】
減圧送達導管134の一部に、複数の異なる装置、たとえば装置146を追加することができる。たとえば、装置146は、流体貯蔵器、キャニスタ収集部材、圧力フィードバック装置、体積検出システム、血液検出システム、感染検出システム、フィルタ、フィルタを備えたポート、流量監視システム、温度監視システム等であり得る。複数の装置146を含めてもよい。これらの装置のうちのいくつか、たとえば流体収集部材を、減圧源137に一体的に形成してもよい。
【0023】
ここで主に図2を参照すると、多くの状況において減圧を分配し流体を除去するために使用することができるドレッシング200の例示的な非限定的実施形態が提示されている。ドレッシング200は、システムまたは装置で使用されるモジュール式構成要素であり得る。たとえば、ドレッシング200を、図1の腹部治療装置104としてまたは図7のマニホルド部材302として使用することができる。ドレッシング200は、第1液体不透過性層204および第2液体不透過性層206等の複数の液体不透過性層202と複数のスペーサ208とを有している。
【0024】
複数の液体不透過性層202は、任意の形状およびサイズで形成され得る窓203を含むことができる。窓203により、減圧の放出および流体の進入が可能になる。図1の封止部材128に使用される材料を含む多数の材料から、複数の液体不透過性層202を形成することができる。
【0025】
複数の液体不透過性層202の隣接する部材間に少なくとも部分的に、複数のスペーサ208を配置する(形成または位置決めを含む)ことができる。「部分的に」とは、ある程度を意味する。複数のスペーサ208を、隣接する層の一部を相対的にずらして保持するように接合された不透過性層自体の一部によって形成することができ、または本明細書に図示し記載するように層を折り重ねるかあるいは他の方法で形成することができる。層の「間の」スペーサと言う場合、それは、層または層の一部を変位させる部分が、隣接する層の外側の間に少なくとも部分的に位置していることを意味する。たとえば、折目は、材料の単一層から形成することができる2つの層の外側の間の湾曲部を有している。したがって、スペーサを、層の一部によって形成されている場合であっても、層の間にあると言うことができる。複数のスペーサ208は、複数の液体不透過性層202の隣接する部材の間に分離領域を提供し、それにより、複数の流路210を形成するのに役立つ。図面は比例尺では描かれておらず、流路210は図示するようにはるかに稠密であり得ることが理解されるべきである。たとえば、流路210は、1ミリメートルしか離れていなくてもよく、2ミリメートル離れていてもよく、3ミリメートル離れていてもよく、4ミリメートル離れていてもよく、または別の寸法であってもよい。
【0026】
複数のスペーサ208および複数の液体不透過性層202は、減圧または正圧下での流体の流れを可能にする複数の流路210を形成している。複数の液体不透過性層202の隣接する層は、通常積層されている。「積層されている」とは、概して、層を隣接するように堆積させるかまたは形成することを意味する。いくつかの実施形態では、流路を備えた発泡体または他の材料を、液体不透過性層202の間に含めることができる。たとえば、第1液体不透過性層204および第2液体不透過性206は領域Aを共有することができ、発泡体は、Aの0%から50%の範囲でありかつ発泡体を含まないことが多い(すなわち0%A)領域Aを有することができる。
【0027】
複数のスペーサ208を、複数の接合箇所214において複数の接合部212を形成することを含む多数の方法で形成することができる。複数の接合部212を、限定なしに溶接(たとえば超音波溶接またはRF溶接)、化学結合、接着剤またはセメントを含むあらゆる既知の技法を用いて形成することができる。複数の接合箇所214は、ランダムであってもよく、または間隔の空いたパターンを有していてもよい。複数の接合部212は、(既知の向きに対する)縦寸法、横寸法および上下寸法を有することができる。複数の接合部212は、アスペクト比(縦寸法/横寸法)が3を超えるかまたは6を超えるかまたはさらに大きくてもよい。複数の接合部212は、本質的に円形であってもまたは他のいかなる形状であってもよい。
【0028】
ここで、主に図3を参照すると、図2のドレッシング200の一部の詳細が提示されている。ドレッシング200は、減圧がかけられていない状態で示されている。図4は、図3と同じ詳細を示すが、減圧がかけられている。減圧は、複数の液体不透過性層202の隣接する部材の一部を互いにより近づくように引っ張ることができるが、複数の流路210の少なくとも一部は、減圧および液体を搬送することができる流路を提供し続ける。
【0029】
ここで主に図5を参照すると、ドレッシング200の一部に対する1つのあり得る流れパターンを示す概略平面図が提示されている。減圧開口部216は、複数の液体透過性層202の隣接する層の間で減圧を送達し、液体を、組織部位または空洞から窓203を通って、その後複数のフローチャネル210(図3)に沿って引き込むかまたは推進し、それにより、流れ218が減圧開口部216に到達することができる。
【0030】
ここで主に図6を参照すると、第1液体不透過性層204、第2液体不透過性層206および第3液体不透過性層207を含む複数の液体不透過性層202を備えた、ドレッシング200が示されている。窓203は、第3液体不透過性層207を貫通してもしなくてもよい。言い換えれば、いくつかの層、たとえば第3液体不透過性層207に窓を形成しなくてもよい。複数の液体不透過性層202にさらなる層を追加してもよい。スペーサ208は、複数の液体不透過性層202の隣接する層の間の少なくとも幾分かの分離を提供して、流路210を画定する。
【0031】
ここで主に図7を参照すると、マニホルド部材302を含む減圧治療システム300の例示的な非限定的例が提示されている。マニホルド部材302は、図2のドレッシング200であり得る。減圧治療システム300は、開放性創傷306等の組織部位304に減圧を提供する。創傷306は、表皮308を通って皮下組織310まで延在する可能性がある。
【0032】
マニホルド部材302は、組織部位304に隣接して配置され、その後、封止部材312によって覆われる。組織部位304の上に流体シールを提供するのに役立つように、取付装置314を用いることができる。コネクタサブシステム316が、減圧送達導管318およびマニホルド部材302を流体結合することができる。減圧送達導管318はまた、減圧源320にも流体結合される。装置322を、減圧送達導管318に流体結合するか、または他の方法で関連付けることができる。
【0033】
装置322は、図1の装置146と同じかまたは類似している。さらに、図3のシステム300の構成要素の多くが、図1のシステム100の構成要素と同じであるかまたは類似している。別の例として、封止部材312は、封止部材128と類似している。取付装置314は、図1の取付装置142に類似している。
【0034】
動作時、マニホルド部材302は、組織部位304に隣接して配置される。封止部材312は、組織部位304の上に付与され、それによって流体シールが形成される。減圧コネクタサブシステム316が、まだ付与されていない場合、封止部材312に付与される。減圧送達導管318が、まだ取り付けられていない場合、減圧コネクタサブシステム316にかつ減圧源320に流体結合される。減圧源320が作動する。減圧が、マニホルド部材302に伝達され、減圧は複数の流路(図2の流路210を参照)および窓(図2の窓203を参照)を通って組織部位304に送達される。それによって収集された流体は、減圧送達導管318を介して除去される。肉芽形成を促進するように、マニホルド部材302の組織対向面にさまざまな微小応力誘引要素を追加することができる。微小応力誘引要素には、小さいボタン、突出する柱または他の装置が含まれ得る。
【0035】
ここで主に図8を参照すると、ドレッシング400の別の例示的な非限定的実施形態の一部が提示されている。ドレッシング400は、複数の液体不透過性層402、たとえば第1液体不透過性層404、第2液体不透過性層406および第3液体不透過性層408を含む。複数の液体不透過性層402は、窓403によって窓が形成されている。複数の液体不透過性層402には、スペーサ412を形成する厚さの変化する部分または拡大部分410が形成されている。減圧下で、スペーサ412は、複数の流路414を提供し続ける。複数の流路414は、図2の流路210と同様に機能する。
【0036】
ここで主に図9を参照すると、ドレッシング500の例示的な非限定的実施形態の別の部分が提示されている。ドレッシング500には、複数の液体不透過性層502が形成されている。この例示的な実施形態では、複数の液体不透過性層502は、第1液体不透過性層504を2つに折るかまたは折り畳むことによって第1部分506および第2部分508を形成することによって、形成される。複数の液体不透過性層502は、窓が形成されている(明示的に示さないが図8の窓403に類似している)。
【0037】
折目510は、半径512を備えた湾曲部511を有している。ドレッシング500は、折目510等の複数の折目を有することができる。折目、たとえば510はスペーサとしての役割を果たす。複数の液体不透過性層502に対してより厚い材料かまたはより剛性の材料が使用される場合、半径512は相対的に大きくなる。半径512はマイクロチャネル520を形成し、それは、複数の流路518のうちの1つであり得る。第1液体不透過性層504に、拡大部、たとえば複数の流路518を画定するのに役立つ拡大部514および516を形成することができる。半径512はまた、流路518のうちの1つを形成するかまたは形成するのに役立つことができる。流路518を、複数の拡大部、たとえば拡大部514、516、あるいは複数の折目、たとえば折目510、または両方によって形成することができる。
【0038】
図10は、図9のドレッシング500を示すが、複数の接合箇所526には複数の接合部524が追加されている。別法としてまたは追加として、第1液体不透過性層504を折り畳み、第1部分506を第2部分508に対して伸長し(またはその逆)、その後、複数の接合部524を追加することによって、ドレッシング500に流路518を形成することができる。接合されると、引っ張られている第1液体不透過性層504の部分を解放することができる。そして、この解放により、複数の接合部524間に複数の流路518が形成される。
【0039】
ここで主に図11図15を参照すると、ドレッシング600の別の例示的な非限定的実施形態が提示されている。ドレッシング600を、腹部治療装置104としての図1のシステム100において、またはマニホルド部材302として図3のシステム300において等、多数の減圧システムで使用することができる。概して、ドレッシング600は、2次元平坦層602が3次元身体部分すなわち湾曲身体部分606に対して形状をなすことを必要とすることにより、折目608を形成する。折目608は、チャネルすなわち流路612を備えている。ドレッシング600の折目608により流体の移動が容易になる。
【0040】
ドレッシング600には、2次元平坦層602または液体不透過性層602が形成されている。液体不透過性層602は窓604を有している。窓604により、減圧の放出および流体の進入が可能になる。液体不透過性層602を、図1および図2の液体不透過性層118、120、204および206に関連して上述したもののようなあらゆる好適な材料から形成することができる。液体不透過性層602は、一重、二重または多重であり得る。図12に示すように、ドレッシング600を平坦楕円として形成することができるが、他の形状、たとえば円、正方形または不規則な形状を使用してもよい。2次元平坦層602として言及するが、2次元平坦層602は幾分かの厚さを有し、但し平坦面では平坦のままである。
【0041】
ドレッシング600は、湾曲身体部分606で使用される。湾曲身体606は、平坦ではなくかつ通常実質的湾曲部を有している、患者のいずれかの部分であり得る。ここで主に図12を参照すると、液体不透過性層602が湾曲身体部分606に対して同一平面に配置されると、折目608または複数の折目が形成される。図14および図15に明確に示すように、ドレッシング600が湾曲身体部分606に対して同一平面のままであるために生じる複数の折目608は、チャネルすなわち流路612をもたらす。折目608は複数のスペーサ610を備え、それらは、複数の流路612を画定するように液体不透過性層602の一部の間に分離領域を提供する。流路612は、流体の移動を容易にするマイクロチャネルとして機能することができる。
【0042】
ここで主に図14を参照すると、ドレッシング600の複数の折目608のうちの1つの斜視図が示されている。この例示的な実施形態では、液体不透過性層602は一重層であり、2つの折目608が示されている。この場合もまた、液体不透過性層602は多層部材であり得る。折目608はスペーサ610を構成し、折目の結果としての開口部はマイクロチャネルとしての役割を果たす。図15は、図14に示すドレッシング600の部分の断面を提示する。
【0043】
ここで主に図16を参照すると、図1のシステム100および図3のシステム300等、多数の減圧システムで使用することができるドレッシング700の別の例示的な実施形態が提示されている。ドレッシング700には、窓704を有する複数の液体不透過性層702を形成することができる。複数のスペーサ、たとえば図2のスペーサ208を、複数の液体不透過性層702の隣接する層の間に形成して、複数の流路(図示しないが図2の流路210に類似する)を形成することができる。複数の液体不透過性層702の上に複数の長手方向部材または接合部706を形成して、複数のフローチャネル708を形成することができる。たとえば、第1長手方向接合部710と第1長手方向接合部710から間隔が空けられている第2長手方向接合部712とが、流路714を形成する。第1面716に減圧開口部718を形成することにより減圧源(図示せず)の流体結合を容易にすることができる。フローチャネル708は、流体がドレッシング700の方向付けられた領域に沿った流路を流れるように仕向ける。
【0044】
ここで主に図17および図18を参照すると、ドレッシング800の別の例示的な非限定的実施形態が提示されている。ドレッシング800に複数の液体不透過性層802を形成することができる。複数の液体不透過性層802は、窓804を有することができ、図2の接合箇所214における接合部212に類似する接合された箇所において接合され得る。ドレッシング800は、液体送達チャネル806を含むことができる。
【0045】
液体送達チャネル806は、第1部分808を含むことができる。第1部分808は、複数の液体不透過性層802のうちの第1液体不透過性層810の一部であるが、窓804はない。液体送達チャネル806はまた、第2部分812も含む。第2部分812は、複数の液体不透過性層802のうちの第2液体不透過性層814の一部であり、この場合もまた、第2液体不透過性層814には窓804がない。第1部分808と第2部分812とを結合して液体送達路818を形成するチャネル形成接合部816が形成されている。第1液体不透過性層810に液体開口部820を形成することにより、液体供給源(図示せず)の液体送達チャネル806への流体結合を容易にすることができる。
【0046】
動作時、1つの例示的な実施形態によれば、治療される組織部位に近接する減圧治療システムの一部として、ドレッシング800が配置される。減圧源(図示せず)が減圧開口部822に流体結合されることにより、ドレッシング800に減圧が提供される。減圧により、液体送達チャネル806を除くドレッシング800内に流体が引き込まれる。液体開口部820に流体供給源(図示せず)が流体結合されている。液体、たとえば生理食塩水灌注流体または薬剤が、液体開口部820に送達される。周縁824にかけられる減圧の影響下で、液体開口部820に送達される液体は、液体送達路818を通して周縁824に向かって推進され、図17の矢印826および828によって示唆するように液体送達チャネル806から出る。出て行く液体828は、ドレッシング800の第2部分830を介して窓804を通って減圧開口部822に向かって引き込まれる。灌注する、薬剤を供給する、または他の目的で、液体送達チャネル806を用いることができる。
【0047】
本発明およびその利点を、いくつかの例示的な非限定的実施形態に関して開示したが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変形、置換、並べ替えおよび変更を行うことができることが理解されるべきである。いずれの実施形態に関連して説明するいかなる特徴も、他のあらゆる実施形態にも適用可能であり得ることが理解されよう。
【0048】
上述した利益および利点は、1つの実施形態に関連することができ、またはいくつかの実施形態に関連することができることが理解されよう。「1つの」項目に言及する場合、1つまたは複数のそれらの項目を指すことがさらに理解されよう。
【0049】
本明細書に記載した方法のステップを、いかなる好適な順序で、または適切な場合は同時に行うことができる。
【0050】
適切な場合は、上述した例のいずれかの態様を、上述した他の例のいずれかの態様と結合して、同等の特性または異なる特性を有しかつ同じかまたは異なる問題に対処するさらなる例を形成することができる。
【0051】
好ましい実施形態の上記説明は、単に例として与えられており、当業者によりさまざまな変更を行うことができることが理解されよう。上記仕様、例およびデータは、本発明の例示的な実施形態の構造および使用の完全な説明を提供する。本発明のさまざまな実施形態を、ある程度の特定性を持って、または1つあるいは複数の個々の実施形態に関連して上述したが、当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく開示した実施形態に多数の変更を行うことができる。
図1
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