特許第6325027号(P6325027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6325027ハイブリダイゼーションによるDNA配列決定法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325027
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】ハイブリダイゼーションによるDNA配列決定法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20180507BHJP
   C12N 15/00 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   C12N15/00 Z
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-139705(P2016-139705)
(22)【出願日】2016年7月14日
(62)【分割の表示】特願2013-511689(P2013-511689)の分割
【原出願日】2011年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-12171(P2017-12171A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】61/377,621
(32)【優先日】2010年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10305564.6
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594016872
【氏名又は名称】サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス)
(73)【特許権者】
【識別番号】508192245
【氏名又は名称】エコル ノルマル スペリュール
(73)【特許権者】
【識別番号】502381140
【氏名又は名称】ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シジェム)
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、ベンシモン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン‐フランソワ、アルマン
(72)【発明者】
【氏名】マリア、マノサス
(72)【発明者】
【氏名】ディン、ファン‐ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バンサン、クロケット
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/016937(WO,A1)
【文献】 特表2001−514742(JP,A)
【文献】 特表平08−510898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列を決定する方法であって、
a)前記核酸配列に相当する二本鎖核酸分子を、15pN以上の張力をかけることにより支持体を引き離すことによって、該分子に張力をかけることによって変性させる工程;
b)既知の核酸配列を含んでなる一本鎖核酸分子を得る工程;
c)前記二本鎖核酸分子を、張力を12pN以下に低減することによって、前記一本鎖核酸分子の存在下で復元する工程;
d)前記二本鎖核酸分子の復元の遮断を検出する工程
ここで工程d)の検出は
・前記二本鎖核酸分子の、支持体に結合されている二末端間の距離(z)を測定すること、および
・前記二本鎖核酸分子が変性された際に、前記二本鎖核酸分子の、支持体に結合されている二末端間の距離(zhigh)を測定すること、を含んでなる;
e)zとzhighを比較する工程;
f)遮断位置を決定する工程;
g)遮断した前記一本鎖核酸分子の配列が、前記遮断位置における前記二本鎖核酸分子の配列の少なくとも一部と相補的であることが示される工程;および
h)異なる既知の配列を含んでなる一本鎖核酸分子により、a)〜g)の工程を繰り返して、前記二本鎖核酸分子の配列を推定する工程;
を含んでなり、前記二本鎖核酸分子がヘアピンであり、かつ、前記二本鎖核酸分子の一方の鎖の少なくとも1つの塩基が支持体に直接的または間接的に結合され、前記二本鎖核酸分子の他方の鎖の少なくとも1つの塩基が可動支持体に結合される、方法。
【請求項2】
工程a)の張力が17pN以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の張力が18pN以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程c)において前記二本鎖分子にかけられる張力が、11pN以下に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程c)において前記二本鎖分子にかけられる張力が、10pN以下に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記遮断の持続時間を測定するさらなる工程を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遮断の持続時間を参照値と比較するさらなる工程を含んでなり、前記参照値は参照一本鎖核酸分子を用いた場合に見られる停止の長さに相当する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記一本鎖核酸分子がnマーの一本鎖核酸分子のライブラリーから選択され、該ライブラリーが、あり得る総ての組合せのn−2またはn−3個のヌクレオチドとそれぞれ連結された、あり得る総ての組合せのジまたはトリヌクレオチドからなり、nは整数、好ましくは30以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ジまたはトリヌクレオチドが前記一本鎖核酸分子の中央に位置する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジまたはトリヌクレオチドが前記一本鎖核酸分子の中央をはずれて位置する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記二本鎖核酸分子中の、4つの塩基、アデニン、シトシン、グアニンおよびチミジンのうち少なくとも1つの各存在が特定の拡大タグで置換され、前記拡大タグがオリゴヌクレオチドである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記一本鎖核酸分子が前記拡大タグのうち1つに相補的なオリゴヌクレオチドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記二本鎖核酸分子上の前記一本鎖核酸分子の各遮断位置を決定するさらなる工程を含んでなる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
工程a)〜d)と前記二本鎖核酸分子上の一本鎖核酸分子の各遮断位置を決定するさらなる工程が、前記拡大タグに相補的な各オリゴヌクレオチドを用いて連続的に繰り返される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
i)前記二本鎖核酸分子を変性させ、変性した二本鎖核酸分子にハイブリダイズする第1の上流一本鎖核酸分子に、変性した二本鎖核酸分子にハイブリダイズする隣接する一本鎖核酸分子を連結する工程、並びに
ii)
α 前記二本鎖核酸分子を、前記の連結された一本鎖核酸分子の存在下で変性させ、復元すること、および
β 前記復元の遮断を検出すること
によって前記第1の上流一本鎖核酸分子の伸長をモニタリングする工程
をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(i)〜(ii)が異なる一本鎖核酸分子を用いて繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
新たに合成された鎖を放出または解離する、さらなる工程(iii)を含んでなる、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
iv)前記二本鎖核酸分子を変性させ、変性した二本鎖核酸分子にハイブリダイズする第2の上流一本鎖核酸分子に、変性した二本鎖核酸分子にハイブリダイズする隣接する一本鎖核酸分子を連結する工程、並びに
v)
α 前記二本鎖核酸分子を、前記の連結された一本鎖核酸分子の存在下で変性させ、復元すること、および
β 前記復元の遮断を検出すること
によって前記第2の上流一本鎖核酸分子の伸長をモニタリングする工程
をさらに含んでなり、前記第1の上流一本鎖核酸分子と前記第2の上流一本鎖核酸分子により結合される配列の5’末端の位置が1塩基分はなれている、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程(iv)および(v)が異なる一本鎖核酸分子によって繰り返される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
新たに合成された鎖を放出または解離する、さらなる工程(vi)を含んでなる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記一本鎖核酸分子がnマーの一本鎖核酸分子のライブラリーから選択され、該ライブラリーが、あり得る総ての組合せのn−2個のヌクレオチドと3’末端において連結された、あり得る総ての組合せのジヌクレオチドからなり、nは20以下の整数である、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、未知の核酸の配列決定あるいは診断のための特定の核酸配列の検出に有用な、核酸、DNAまたはRNAの配列を決定する迅速な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、核酸配列の決定は分子生物学の中心をなしている。例えば、遺伝的変異、RNA発現、タンパク質−DNA相互作用、および染色体コンフォメーションなどの広範囲にわたる生物学的現象は、ハイスループットDNAシークエンシングにより評価することができる(いくつかの例として、Mitreva & Mardis, Methods Mol Biol, 533: 153-87, 2009; Mardis, Genome Med., 1(4): 40, 2009; Cloonan et al, Nat Methods, 5(7): 613-619, 2008; Valouev et al, Genome Res., 18(7): 1051-63, 2008; Valouev et al, Nat Methods., 5(9):829-34, 2008; Orscheln et al, Clin Infect Dis., 49(4): 536-42, 2009; Walter et al, Proc Natl Acad Sci U S A., 106(31): 12950-5, 2009; Mardis et al, N Engl J Med., 361(11): 1058-66, 2009, Hutchinson, Nucl. Acids Res., 35(18): 6227-6237, 2007参照)。
【0003】
加えて、生理学的試料中の特定のDNA配列の存在の証明は、現在のところ、例えば、細菌が抗生物質耐性、遺伝子異常を生じる確率、遺伝子改変に関連する癌および例えばHIVまたは肝炎ウイルスに関連する感染などのウイルス感染のリスクを特定するための、診断方法の開発の第一線を構成している(例えば、Zhang et al, Nature, 358: 591-593, 1992; Turner et al, J Bacteriol, 176(12): 3708-3722, 1994; Weston et al, Infection and Immunity, 77(7): 2840-2848, 2009参照)。
【0004】
近年、核酸配列決定は主としてSangerの生化学的方法のキャピラリーに基づく半自動の実装形態を用いて行われている。この古典的な方法は、目的のDNAの増幅工程、続いて蛍光標識されたジデオキシヌクレオチド(ddNTP)の組み込みによりプライマー伸長の各ラウンドが確率論的に終了する「サイクルシークエンシング」の工程を含む。配列は、キャピラリーポリマーゲル中の一本鎖、末端標識伸長産物の高分解能電気泳動分離により決定される。96または384本の独立したキャピラリーにおける同時電気泳動は、限定されたレベルの並列化を提供する。
【0005】
低コストの配列決定法に対する高い需要は、配列決定プロセスを並列化し、一度に数千または数百万の配列を生成するハイスループットシークエンシング技術の開発を促進した(Shendure & Ji, Nat Biotechnol, 26(10): 1135-45. 2008)。ハイスループットシークエンシング技術は、標準的なダイターミネーター法を用いて可能なものを越えるDNAシーケンシングコストの低減を意図している。現在のところ、このまさにうってつけのハイスループットは、Sangerシークエンシングと比較した場合、個々のリードの長さおよび精度において相当な犠牲をはらって実現される。そのような新しい方法の例としては、454およびSolexa技術が挙げられる。これらの技術は、大腸菌(E. coli)または宿主細胞中でのクローニングを行わずに全ゲノムのショットガンシークエンシングを可能にする。ビーズ表面に捕捉された、アダプターを両脇に配置した短いDNA断片のライブラリーを、エマルションPCR法により増幅させる。配列決定は、DNAポリメラーゼによるプライム合成を用いて行う。454法(「ピロシークエンシング」としても知られる)では、アレイは4種類のdNTPのそれぞれとともに連続して提示され、組み込み量は、放出されたピロリン酸塩の発光検出によりモニタリングする。この方法とSolexa法の決定的な違いは、後者が鎖停止ヌクレオチドを用いる点である。停止塩基の蛍光標識は除去すると非遮断3’末端が残り、鎖停止を可逆的プロセスにすることができる。このSOLiD技術は、蛍光標識二塩基プローブを、クローニングにより増幅されたライブラリー鋳型内のアダプター配列とハイブリダイズしたシークエンシングプライマーと連結することに依存している。この二塩基プローブの特異性は、各連結反応ごとに1番目と2番目の塩基を調べることで達成される。連結、検出および切断の並列サイクルは、最終的なリード長を決定するサイクル数を用いて行われる。総て最初の増幅工程を必要とする前述の3つの技術とは対照的に、Helicosプラットフォームは、単一のDNA分子の配列決定を可能にする。この技術は、合成による配列決定を介して単一のDNA分子を直接調べるための蛍光ヌクレオチド組み込みの高感度検出システムの使用に基づくものである。
【0006】
このような方法は例えば米国特許第4,882,127号、同第4,849,077号、同第7,556,922号、同第6,723,513号、PCT特許出願第03/066896号;PCT特許出願第2007111924号、米国特許出願第2008/0020392号、PCT特許出願第2006/084132号;米国特許出願第2009/0186349、米国特許出願第2009/0181860号、米国特許出願第2009/0181385号、米国特許出願第2006/0275782号、欧州特許第EP−Bl−1141399号;Shendure & Ji, Nat Biotechnol., 26(10): 1135-45. 2008; Pihlak et al, Nat Biotechnol., 26(6): 676-684, 2008; Fuller et al., Nature Biotechnol., 27(11): 1013-1023, 2009; Mardis, Genome Med., 1(4): 40, 2009; Metzker, Nature Rev. Genet., 11(1): 31-46, 2010に記載されている。
【0007】
しかしながら、これまでに開発された総ての方法には重大な欠点がある。特に、それらは総て、標識されたヌクレオチド(例えば、蛍光)を用いており、それゆえに全体的なコストの深刻な増大に関与している。さらに、これらの新しい方法は、1つ(Helicosプラットフォーム)を除いて総てが、配列決定の前に標的配列の増幅を必要とし、一方では時間がかかり、他方ではエラーの起こる確率を増大させ、コンタミネーションが非常に起こりやすい。
【発明の開示】
【0008】
本発明の方法は物理的技術および電子処理に基づくものであり、化学的または生化学的である現在のアプローチとは異なる。その利点は下記のように多数ある。
【0009】
1)単一分子の配列決定を可能にし、従って、前もって増幅工程(例えば、PCRによる)を行う必要がない。
2)標識ヌクレオチド(蛍光団または他の何らかの基を用いる)よりもはるかに安い標準的な一本鎖核酸分子が使用されるため、当技術分野の方法よりもはるかにコストが安い。
さらに、単一の二本鎖核酸分子の配列が決定されるので、標準的な一本鎖核酸分子の量が最小限にまで低減される。加えて、少なくともいくつかの実施態様では、プロービング鎖は配列決定プロセスの間に消耗されないので、再利用することができる。
3)二本鎖核酸分子の二末端間の距離を測定することにより、二本鎖核酸に沿って対合した一本鎖核酸分子の局在の決定を可能にする(bp単位で)。
4)所与の二本鎖核酸ヘアピン上のオリゴヌクレオチドの異なるハイブリダイゼーション位置を1回の変性アッセイで決定することが可能である。
5)測定は、秒単位の時間尺度で周期的に繰り返すことができ、従って偽陽(ポリメラーゼの偽停止)の排除、統計値の改善および計測機器のドリフトの大幅な減少につながる。
6)ハイブリダイズした一本鎖核酸は、(例えば、力もしくはイオン強度を低減することにより、またはヘリカーゼもしくはエキソヌクレアーゼを用いることにより)変性段階の完了の際に放出させることができるため、実験は同じ分子で何回も繰り返し行うことができ、従って統計値を改善し、かつ測定値の信頼性を改善することができる。
7)各分子を他の分子とは独立して操作することができるため、種々の二本鎖核酸分子の並列配列決定が可能となる。
【0010】
本発明は、核酸配列の決定方法に関し、本方法では、前記核酸に相当する変性された二本鎖核酸の復元が遮断される。
【0011】
本明細書において「核酸配列の決定」とは、核酸中の実際の塩基の連続を解読するのみならず、例えば、核酸分子における特定の配列の検出または、2つの異なる核酸分子の配列間の違いの検出など、核酸配列に関する情報の取得に直接的または間接的につながるあらゆる取り組みを意味する。
【0012】
本発明は、変性した二本鎖核酸の二鎖が適当な条件下で再ハイブリダイズするという知見に基づく。復元工程中に前記の変性した二本鎖核酸のいずれかの鎖に何らかの分子が結合されれば、再ハイブリダイゼーションは部分的にしか起こらない。本発明者らは、今般、特定の条件下で、永久的または一時的なこの再ハイブリダイゼーションの停止が、変性した二本鎖核酸分子に含まれる配列に関する情報を得るために使用可能であることを見出した。本発明によれば、この二本鎖核酸分子の再ハイブリダイゼーションの遮断を検出することができ、次に、この遮断に関連する物理的パラメーター(例えば、遮断の持続時間、二本鎖核酸分子上の遮断の位置)により核酸の配列の決定が可能となる。
【0013】
従って、本発明は、核酸配列を決定する方法であって、前記核酸配列に相当する変性した二本鎖核酸の復元の遮断を検出する工程を含んでなる方法に関する。
【0014】
本明細書において「変性」とは、鎖の間の大部分の水素結合が切れた場合に起こる二本鎖核酸分子の鎖の分離プロセスを意味する。この変性プロセスは変性した核酸分子を生じ、それにより、二本鎖核酸分子の変性の結果生じた2本の分離した相補鎖を意味する。本明細書において「復元」とは、2本の分離した相補鎖がハイブリダイゼーションを介して二重らせんを再形成するプロセスを意味する。本明細書において「ハイブリダイゼーション」とは、核酸の2本以上の相補鎖の間の非共有結合的な配列特異的相互作用を確立して単一のハイブリッドとするプロセスである。
【0015】
核酸を変性させるための、当業者に公知のいくつかの可能性が存在する。最も好ましい方法では、2本の鎖は物理的力をかけることによって分離される。例えば、前記二本鎖核酸の遊離末端を引き離し、そのようにして対合している塩基間の結合を破壊し、二本鎖核酸を開くことができる。
【0016】
従って、一つの実施態様において、本発明の方法は、核酸配列を決定する方法に関し、前記方法は、
・前記核酸配列に相当する二本鎖核酸分子を、その分子に物理的力をかけることによって変性させる工程;および
・前記二本鎖核酸の復元の遮断を検出する工程
を含んでなる。
【0017】
このタイプの配列決定法において、再対合を容易にするためには、二本鎖DNAの遊離末端(すなわち、支持体と結合していない末端)を、引き離す前に互いに共有結合的にまたは準共有結合的に互いに結合するよう配列することが有利であり得る。好ましい実施態様では、二本鎖核酸分子はヘアピンである。本発明において二本鎖核酸を図示することが求められる場合は、それを開いている(または閉じている)「ジッパー」に例えることができ、すなわち、二本鎖核酸の変性はジッパーを開けることであり、復元は再び閉じることである。
【0018】
本発明者らは、特定の条件下で、ある分子が変性した二本鎖核酸分子に結合された際に前記二本鎖核酸分子の復元が遮断されることを見出した。この結合分子は、例えば核酸、タンパク質または小分子など、前記の変性した二本鎖核酸分子上の特定の配列に対して親和性を有するいずれの種類の分子であってもよい。しかしながら、一本鎖核酸を使用することが好ましく、これはそのような一本鎖核酸は変性した二本鎖核酸の一方の鎖上にある相補配列とハイブリダイズ可能であるためである。この一本鎖核酸は、復元プロセスの遮断に十分な長さである限り、いずれの長さであってよい。好ましくは、この一本鎖核酸の長さは3〜20ヌクレオチドの間、より好ましくは7〜15の間、さらにより好ましくは8〜12の間である。
【0019】
本発明の一本鎖核酸は、特に、天然型または修飾型のDNAまたはRNA分子であり得る。前記一本鎖核酸はまた、例えばリボース部分が2’酸素および4’炭素をつなぐ付加的架橋で修飾されているヌクレオチドであるロックド核酸(LNA)、または主鎖がペプチド結合で連結されたN−(2−アミノエチル)−グリシンユニットの繰り返しから構成されるペプチド核酸(PNA)などの修飾ヌクレオチドから作製されてよい。
【0020】
一本鎖核酸分子が復元前の変性した二本鎖核酸に付加した場合に、再ハイブリダイゼーションが遮断されれば、その一本鎖核酸分子の配列が二本鎖核酸分子の配列の少なくとも一部と相補的であることが示される。
【0021】
従って、本発明の方法はまた、核酸配列を決定する方法であって、
a)前記核酸配列に相当する二本鎖核酸分子を、該分子に物理的力をかけることによって変性させる工程;
b)一本鎖核酸分子を得る工程;
c)前記二本鎖核酸分子を、前記一本鎖核酸分子の存在下で復元する工程;および
d)前記二本鎖核酸の復元の遮断を検出する工程
を含んでなる方法に関する。
【0022】
本発明は、任意の種類の二本鎖核酸に適用される。ほとんどの場合、二本鎖核酸はDNAであるが、本発明はまた、完全に対合しているもしくは完全は対合していない一本鎖DNA−一本鎖DNAの二本鎖、あるいは完全に対合しているもしくは完全には対合していない一本鎖DNA−一本鎖RNAの二本鎖、あるいは完全に対合しているもしくは完全には対合していない一本鎖RNA−一本鎖RNAの二本鎖に適用されると理解される。さらに、この二本鎖は、異なる起源のサンプルから得られた2本の一本鎖の少なくとも部分的な再対合から構成されてもよい。最終的に、本発明はまた、単独の一本鎖DNAまたは単独の一本鎖RNAの二次構造に適用される。
【0023】
典型的な構成において、この二本鎖核酸分子は具体的には、2つの固体支持体(例えば、顕微鏡のスライド、マイクロピペット、微粒子)に固定することができる。一方の末端は表面に直接的または間接的に結合させ、他方の末端は可動表面に直接的または間接的に結合させることができる。この実施態様では、支持体を引き離す際に、二本鎖核酸の両末端に張力をかける。この張力が閾値よりも大きい場合には2本の鎖は分離し、核酸分子は変性する。かける張力は好ましくは15pN以上、より好ましくは16pN以上、さらにより好ましくは17pN以上、非常に好ましい態様では18pN以上である。この力は温度、ヌクレオチド種およびバッファーによって異なるが、当業者ならば2本の鎖を分離させるためにこれらのパラメーターに関して容易にこのような力をかけることができる。他方、張力が最小値より小さくなった際に、変性した二本鎖核酸の2本の鎖は再ハイブリダイズ可能となる。前記2本の鎖の再ハイブリダイゼーションを得るには、好ましくは12pN以下の張力がかけられ、より好ましくは11pN以下、より一層好ましくは10pN以下である。最も好ましくは、二本鎖核酸はヘアピンである。本明細書において「ヘアピン」とは、一方の鎖の5’末端が、対合していないループを介して他方の鎖の3’末端に物理的に結合している二重らせんを意味する。前記物理結合は共有結合でも非共有結合でもよい。好ましくは、前記物理結合は共有結合である。従って、ヘアピンは、二本鎖のステムと、対合していない一本鎖ループからなる。ヘアピンにおいて、ループに関与していない2本の鎖の末端は遊離しており、従って引き離すことができる。その結果、二本鎖核酸の対合解除が起こり、変性した二本鎖核酸分子が生じる。前記核酸分子のそれぞれの末端を閾値よりも強い力で引っ張ることにより、ヘアピン二本鎖核酸分子を完全に開くことができる。分子にかけられる張力が最小値を下回るまで小さくなると、核酸分子は再ハイブリダイズしてヘアピンを再形成する。前記核酸鎖の1つにハイブリダイズされた一本鎖核酸分子が存在すると、再ハイブリダイゼーションの停止が起こる。従って、このような停止が検出されれば、その一本鎖核酸分子が前記二本鎖ステムの少なくとも一部と相補的な配列を含んでいることを示す。
【0024】
これについては、瞬時、例えば1秒、の後にヘアピンがリフォールドするようなループの配列および長さに設計することが有利である。これを達成する方法は、従来技術、例えば、Woodside et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 103 (16): 6190-6195, 2006に記載されている。開いた状態から試験値にまで力が小さくなると、一本鎖DNAの弾性のために、開いたヘアピンの伸長は様々に変わる。ヘアピンのリフォールドまでのわずかな遅延により、使用者は、遮断状態を検出するために用いられるものと同じ力でヘアピンの伸長を決定することができる。
【0025】
ヘアピンの使用により、特に、対合および対合解除のサイクルを遂行してシグナル/ノイズ比を高めることが可能となる。
【0026】
二本鎖核酸の遊離末端を結合させる技術は公知であり、その一部は以下により詳細に述べる。
【0027】
遮断の決定とは、本明細書においては、遮断に関連する物理的パラメーターの決定を意味する。これらのパラメーターのうち最も有用なものは、二本鎖核酸分子における遮断の位置であり、この位置は、二本鎖核酸分子上の一本鎖核酸分子のハイブリダイゼーションの位置に相当する。実際に、本発明者らは、復元の停止が起こる、延長された二本鎖核酸上の位置を正確に決定可能であることを見出し、ヘアピンの使用により、当業者は変性/復元プロセス中の任意の時間にヘアピンの2つの遊離末端間の物理的距離を決定する手段を与える。
【0028】
本明細書において「遊離末端」とは、もう一方の鎖の末端に共有結合されていない一方の鎖の末端を意味し、上述したように、これらの遊離末端はそれぞれ異なる表面に結合させることができる。例えば、これらの表面の一方は可動であり得、他方は不動であり得る。従って当業者は、ヘアピン二本鎖核酸の遊離末端間の距離を測定するために、単にその2つの表面間の距離を測定すればよいということを容易に実現するであろう。
【0029】
この距離は、ヘアピン核酸はその後完全に延長されるため、ヘアピン分子が完全に変性される際に最大(zhigh(Fopen))となり、ヘアピン分子が完全に復元される時に最小(zlow(Ftest))となる。長さの比較は総て、一本鎖核酸が同じ弾性特性を有するように同じ力Ftestで行うことが有利である。ループが閉じる時間の遅れを用いて当業者は、Zhigh(Ftest)を測定することができる。同様に、復元プロセスが一時的に停止された際の2つの遊離末端間の距離も測定することができ、予測されるように、この距離zはzhigh〜zlow(zは総て、F=Ftestで測定される)の間である。距離zは、一本鎖核酸の配列が相補的である配列がそのヘアピン分子内のどこに局在するかによって異なることが即明らかである。もし前記一本鎖核酸がヘアピンの遊離末端近くに局在する配列とハイブリダイズすれば、その自己復元プロセスは完全なヘアピンが再形成される直前に遮断され、この場合、zpauseは最小となる。一方、前記一本鎖核酸がヘアピンの、対合していないループに近い部分とハイブリダイズすれば、その復元プロセスはヘアピンが完全にまたはほとんど完全に変性した状態で停止し、この場合、zpauseは最大となる(図1)。
【0030】
二本鎖核酸分子における物理的距離と塩基数は正確に相関させることができる。例えば、距離1nmは、10pNの力の下で、核酸において2つのヌクレオチドにわたる距離(1bp)に相当する。力に対する正確な較正は、一本鎖核酸の弾性により与えられる。従って、二本鎖核酸分子の2つの遊離末端間の距離を単に測定することにより、復元が遮断された場所を正確に決定することができる。
【0031】
よって、一つの実施態様において、本発明は、決定する配列に相当する二本鎖核酸分子がまず物理的力をかけることにより変性され、次に、一本鎖核酸の存在下で再ハイブリダイズされ、その再ハイブリダイゼーションの遮断の存在が検出される、核酸配列決定法からなる。一態様では、復元プロセスが遮断された際に、二本鎖分子の二末端間の距離が測定される。好ましくは、前記分子の二末端間の距離は、分子が完全に変性した際に決定される。さらにより好ましくは、これらの2つの距離が比較され、遮断の位置が決定される。
【0032】
復元の遮断に関連する別の有用なパラメーターとして、復元が遮断されている時間がある(本明細書では、復元停止の持続時間と呼ぶ)。実際に、再ハイブリダイゼーションが遮断されている時間を測定することは可能である。例えば、当業者は、二本鎖核酸の二末端間の距離が上記で定義されたz(すなわち、zhigh〜zlowの間の中間値)である時間を測定することができる。
【0033】
遮断の持続時間は二配列間の相補性の程度に依存する。相補性が高ければ、その二分子間で形成される結合の数が増えるので、持続時間は長くなる。また、遮断時間が二配列間の相補性の領域の長さに依存することも明らかである。領域が長いほど、その二分子間で形成される結合の数が増えるので、持続時間が長くなる。従って、特定の条件下で復元停止の持続時間がほとんど永久的となるということに容易に想到する。特に、一本鎖核酸が変性した二本鎖核酸とハイブリダイズし得る、20を越える、好ましくは25を越える、さらにより好ましくは30を越えるヌクレオチドを含んでなる場合、その一本鎖核酸は、前記二本鎖核酸にかけられる力がFtestにまで低下された場合でも、二本鎖ヘアピンとハイブリダイズしたままであり(何分間も)、従って、前記二本鎖ヘアピンの自己再ハイブリダイゼーションが妨げられる。このような場合、一本鎖核酸分子を放出させるための酵素を使用することが有利であり得る。従って、前記一本鎖核酸分子の放出は、対合および非対合のサイクルの遂行を可能とし、従って、シグナル/ノイズ比を高める。好適な酵素の例としては、例えば、ヘリカーゼ類、例えば、UvrDヘリカーゼ、大腸菌UvrDヘリカーゼ、Tte−UvrDヘリカーゼ、T7 Gp4ヘリカーゼ、RecBCDヘリカーゼ、DnaBヘリカーゼ、MCMヘリカーゼ、Repヘリカーゼ、RecQヘリカーゼ、PcrAヘリカーゼ、T4 UvsWヘリカーゼ、SV40ラージT抗原ヘリカーゼ、ヘルペスウイルスヘリカーゼ、酵母Sgslヘリカーゼ、DEAH_ATP依存性ヘリカーゼおよび乳頭腫ウイルスヘリカーゼElタンパク質とその同族体が挙げられる。好ましくは、T4 UvsWヘリカーゼが用いられる。
【0034】
停止の持続時間はまた、反応条件によっても異なり得る。この持続時間は温度が上昇するにつれて短くなる。同様に、バッファー条件でも停止の持続時間を調節することができ、例えば、マグネシウム、ベタインおよび塩化テトラメチルアンモニウム(TMACはモル濃度で用いる)は遮断時間を延長する。これらの化合物はGC対よりもAT対を強くするので、これらの対の間の強度の差を小さくする。しかしながら、温度とバッファーを一定とすると、停止の持続時間は、変性した二本鎖核酸上の引張力および一本鎖核酸とのその相補性だけに依存する。
【0035】
従って、特定の一態様において、本発明の方法は、
・前記核酸配列に相当する前記二本鎖核酸分子を、該分子に物理的力をかけることによって変性させる工程;
・一本鎖核酸分子を得る工程;
・前記二本鎖核酸分子を、前記一本鎖核酸分子の存在下で復元する工程;
・前記二本鎖核酸分子の復元の遮断を検出する工程;および
・停止の持続時間を決定する工程
を含んでなる。
【0036】
好ましい一態様では、前記二本鎖核酸分子の復元の遮断の検出は、上記のように二本鎖核酸分子上の遮断の位置を決定することを含む。
【0037】
この特定の実施態様では、本発明の方法は、診断目的で、特に、探索する異常に相当する核酸の可変領域の配列決定を可能とするために使用することができ、従って、この技術は下記に配列決定に関して記載されるものと同等である。
【0038】
しかしながら、オリゴヌクレオチドとDNA配列の間の誤対合がはるかに短命のハイブリダイゼーションをもたらすという所見に基づけば、本発明の方法は、簡略化された技術を提供することができる。第1の態様において、ヘアピン二本鎖核酸分子の復元は、上記の方法のいずれかによって一本鎖核酸により遮断され、遮断の持続時間が決定される。好ましい一態様では、この値は参照値と比較される。さらに好ましい一態様では、参照値は、上記の方法のいずれかで決定されるような、参照一本鎖核酸を用いた場合に見られる停止の長さに相当する。
【0039】
例えばゲノムDNAの突然変異を探すなどの診断目的では、この技術は次の2つの方法で実施することができる:
【0040】
1)探索する突然変異を含んでなるゲノムDNAを用いて形成したヘアピンを溶液中、オリゴヌクレオチドでプローブする。
【0041】
2)探索する突然変異を有する配列を含むヘアピンを、一定サイズの一本鎖DNA断片として溶液中に存在するゲノムDNAによりプローブする。このアッセイの目的がこのような配列中の特定の配列または存在し得る突然変異の存在を見つけることだけであれば、このヘアピンのループ内にこの配列を置くことで、極めて簡単な検出法が提供される。オリゴがループ内でハイブリダイズすれば、ヘアピンの再折りたたみを完全に妨げ、極めて大きな伸長変化が起こり、従って、下記のように、これは容易に検出することができる。
【0042】
本発明の方法はまた、未知の核酸の直接配列決定にも使用可能である。本発明の配列決定法にはいくつかの実施態様がある。第1の実施態様では、本発明の方法を用いて物理的配列決定法が達成される。核酸ヘアピンに異なる既知の一本鎖核酸プローブを連続的にハイブリダイズさせることにより(変性および復元サイクル下)、復元期の間の停止の位置(nmで厳密に測定される)から前記核酸ヘアピンの配列を推定することができる。
【0043】
当業者ならば、配列決定される二本鎖核酸をあり得る総ての組合せの配列を表す一本鎖核酸セットとハイブリダイズさせるよりもむしろ、有利に、異なる一本鎖核酸プローブの数を最小化する戦略を採るであろう。一本鎖プローブが最適か、二本鎖標的分子が最適か、またはその両方が最適かによって種々の選択肢が適用可能である。
【0044】
一態様において、本発明は、限られた数の塩基だけが特異的であって残りのものは特異的でない一連の一本鎖核酸プローブを用いて行う。例えば、この一連のプローブはn個の塩基の一本鎖核酸分子からなり得、あり得る総てのジヌクレオチド(例えば、AA、AT、AGなど、あり得る組合せは全部で16通り)またはあり得る総てのトリヌクレオチド(例えば、AAA、AAT、AAGなど、あり得る組合せは全部で64通り)がそれぞれ、あり得る総ての組合せのn−2またはn−3個のヌクレオチドと連結され、nは整数、好ましくは30以下であり、より好ましくはnは20以下であり、さらにより好ましくはnは8以下である。2または3個の塩基だけが特異的である(すなわち、一連の16または64種の異なるプローブ)場合、ジまたはトリヌクレオチドの位置はそれぞれのハイブリダイゼーションで決定される。これにより、一連の一本鎖核酸分子を混合することが可能となり、バッファー交換の回数が減る。例えば、AANNNNNNの場合、Applied Biosystemsにより開発されたSolidシークエンシングプラットフォームで実施する際に厳密に必要なのは4バッチのプローブだけである。これらのジまたはトリヌクレオチドは、nマーのプローブのどの位置にあってもよい。好ましい実施態様では、供試ヌクレオチドはオリゴの中央に位置するが、これはこの位置が誤対合により敏感であり、この方法の感度が高まるからである。
【0045】
本発明の方法の1つの明らかな利点は、前記方法により二本鎖分子の両鎖を同時に配列決定できることである。実際に、各プローブは、そのプローブが持つ配列に相補的な配列を含んでなる鎖とハイブリダイズする。次に、ハイブリダイズしたプローブの位置を上記のジッパーの開閉法によって決定する。従って、内部対照を設ければ、両鎖の配列を同時に決定することができる。プローブが結合した鎖を同定できるようにするには、ジまたはトリヌクレオチドがプローブの中央付近であるがわずかに中央をはずれて位置するようにプローブを設計することが便利である。本方法の別の好ましい実施態様は、これらのヌクレオチドがわずかに中央をはずれており、その結果、どの鎖にオリゴが結合するかによって遮断がシフトするようなプローブに関する。例えば、ジヌクレオチドはプローブの中央のすぐ5’側または3’側に位置してよい。また、中央ヌクレオチドがトリヌクレオチドの最も5’側または最も3’側のヌクレオチドとなるプローブを使用することもできる。例えば、8マーのオリゴのあり得る選択肢としては、NNXXNNNNまたはNNXXXNNNである。最後に、総てヌクレオチド(N)の組合せの代わりに遺伝子塩基(Z)を使用することもできる。遺伝子塩基(Z、例えば、5−ニトロインドールまたは3−ニトロピロール)は、4つの塩基総てと均一な相互作用を示し、オリゴヌクレオチドの希釈率を小さくする。
【0046】
ハイブリダイゼーションの機械的検出による配列決定の分解能は、ビーズと固定面の間の距離の測定における達成可能な空間的分解能によって制限される。この分解能は最終的に、結合している分子の剛性(ビーズのブラウン運動の振幅を設定する)によって決定される。約10pNの張力下、約1000bpの分子では、空間的分解能(1秒平均で)は約2nm(すなわち、約2bp(ジッパーが閉じられた状態))である。ブラウンノイズはDNA長の2乗(すなわち、ヌクレオチド数の2乗)として低下するので、この技術はより短い分子の配列決定にも十分適している。
【0047】
別の態様では、配列決定される核酸は、ハイブリダイズするプローブの位置の決定を向上させるために再設計される。例えば、米国特許第6,723,513号は、位置特定を助けるための1以上の塩基の拡大を含む配列決定技術を開示している。この技術では、標的核酸中の塩基対を、4つの塩基、アデニン、シトシン、グアニンおよびチミン(または核酸がRNAであればウラシル)のそれぞれを表す4つの異なるタグ(拡大タグ)に関連づける。次に、各特定の塩基、アデニン、シトシン、グアニンおよびチミンの全存在を対応する拡大タグで置換する。好ましい実施態様では、各拡大タグは、特定の長さ(例えば、n個の塩基)および特定の配列のオリゴヌクレオチドである。従って、元の二本鎖核酸は、アデニン、シトシン、グアニンおよびチミンの拡大タグに相補的なオリゴヌクレオチドの連続的な存在において、上記の方法に従ってジッパーの開閉を行うことによって決定することができる。これらのオリゴヌクレオチドは二本鎖核酸の対応する鎖と対合し、対応するコードされている塩基においてその再ハイブリダイゼーションを遮断する。
【0048】
従って、この態様において、本発明は、一本鎖核酸が拡大タグの1つに相補的なオリゴヌクレオチドである、上記のような配列決定法を提供する。好ましい一態様では、本方法は、二本鎖核酸分子上で前記一本鎖核酸の各遮断位置を決定するさらなる工程を含んでなる。さらに好ましい態様では、前記方法の配列決定のための全工程ならびに各遮断位置を決定する工程は、拡大タグに相補的な各オリゴヌクレオチドを用いて連続的に繰り返される。
【0049】
各塩基が拡大される、すなわち、nマーのオリゴヌクレオチドで置換されることから、ハイブリダイズするプローブの位置を決定するために必要な精度はn nm未満となるだけでよい。例えば、拡大タグが8マーのオリゴヌクレオチドである場合には、8塩基未満、すなわち、8nm未満の精度で分子の2つの遊離末端間の物理的距離を決定することができれば、その延期の位置を正確に決定することができる。このアプローチのもう1つの利点は、多数のビーズを4回の連続アッセイだけで並列的に配列決定できることである。
【0050】
第2の実施態様では、本発明の方法は、酵素的工程を含んでなる。このアプローチの好ましい一つの実施態様は、連続的ハイブリダイゼーションと相補配列の連結によるヘアピンの配列決定からなる。本発明のこの実施態様では、長い二本鎖核酸分子の配列を決定することが可能である。なお、長い二本鎖核酸分子とは、本明細書では、500bpより長い、より好ましくは750bpより長い、さらにより好ましくは1000bpより長い分子と理解される。この技術は、上流一本鎖核酸プライマーに、隣接するハイブリダイズした一本鎖核酸を連結することからなる。次に、プライマーの伸長を、上記のように、ヘアピン二本鎖核酸分子を変性させ、復元し、復元の遮断を検出することによってモニタリングする。その後、この方法を異なる一本鎖核酸分子を用いて繰り返す。本発明の方法によれば、配列決定される二本鎖核酸分子を事前に増幅する必要はなく、本発明の方法は単一の二本鎖核酸分子に対して行うことができる。
【0051】
好ましい実施態様では、一本鎖核酸分子のライブラリーが用いられる(例えば、米国特許第4,882,127号および同第4,849,077号)。前記ライブラリーはn個の塩基の一本鎖核酸分子からなり、あり得る総てのジヌクレオチド(例えば、AA、AT、AGなど、全部で16通りの組合せ)がその3’末端において、あり得る総ての組合せのn−2個のヌクレオチドと連結され、nは整数、好ましくは20以下であり、より好ましくはnは12以下であり、さらに好ましくはnは8以下である。より好ましい一つの実施態様では、最後のm個のヌクレオチドが次回のハイブリダイゼーションおよび連結の前に切断され、mは1〜n−1の間の整数であり、好ましくは、mはn−1に等しい(Mir et al, Nucleic Acids Res., 37(1): e5, 2009)。切断可能な配列の使用により、合成工程数を少ないままに、遮断位置の精度(数nm)に対してそれほど厳密でない要件でハイブリダイゼーションの検出が可能となる。別法としては、5’末端にリン酸基を欠くオリゴを使用することであり、これにより、一度にオリゴが1個だけ連結することができ、次工程の前にキナーゼを用いて不足するリン酸基を付加すれば次の連結が可能となる。この手順をあり得る16のジヌクレオチドのそれぞれを用いて繰り返すことにより、連続する一本鎖オリゴヌクレオチドのそれぞれの連結時の相補鎖の長さの連続的増加を検出することができる。また、アッセイ数を減らすために、4バッチの16のオリゴヌクレオチドをプールすることもできる。ジヌクレオチド配列はそれぞれ2回検出されるので、その配列を決定するには十分である。従って、二本鎖核酸全体が一本鎖核酸分子のライブラリーによって相補されたところで、合成された鎖が放出され(例えば、ヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼによる)、先のプライマーよりもヌクレオチド1個分上流または下流にシフトした上流一本鎖核酸プライマーを用いてプロセスが再開される。この手順をn−m回繰り返すと、二本鎖核酸配列の完全な決定が可能となり、例えば、8マーのオリゴマーのライブラリーでは、m=3の時、二本鎖分子の完全な配列を得るためには、この手順(すなわち、相補鎖の合成)を5回繰り返すだけでよい。
【0052】
従来技術の方法は総て蛍光ヌクレオチドを用いるのに対し、本発明の方法だけがプローブの伸長の機械的検出を含む。従って、本発明の方法は、従来技術の方法に伴ういずれの欠点も被らない。例えば、8マーのオリゴマーが上手く連結されるということは、二本鎖ヘアピンの伸長変化が8nmであることを表す。これは2nm(これは約1000bpの分子では約10pNの張力下での空間的分解能(1秒平均で)である)の分解能で容易に検出することができる。各工程では単一のオリゴヌクレオチドが連結されるので、その検出は、伸長の相対的(すなわち、連続的連結の前と後の)変化の検出を意味するに他ならない。
【0053】
本発明の方法の実装形態は、特に、単一分子レベルでのリアルタイムの核酸相互作用を探査するために設計された装置の存在により可能となった。そのような装置は、例えば、米国特許第7,052,650号および同第7,244,391号に記載されている。そこに記載されている機器は、ミクロンサイズの超常磁性ビーズにピコニュートンスケールの力をかける磁気トラップを使用する。要するに、前記の機器は光学顕微鏡、磁石およびPCを含んでなる。二本鎖核酸分子は、一方の末端は例えば表面などの不動エレメントに、もう一方の末端は可動表面、この場合磁性ビーズにと、多数のポイントで固定される。磁石は、ビーズに働かせるために提供する。特に、磁石は、ビーズを前記表面から引き離すために使用することができる。しかしながら、本発明の方法の実装形態は上記の機器に限定されない。本発明の方法を実施するためには、二本鎖核酸分子を完全に伸長させ、次いでリフォールディングすると同時に、前記分子の伸長をモニタリングする任意の装置を使用することができる。例えば、光ピンセットを用いてもよいが、それらには事前に力の較正を行う必要があり、ハイスループット測定のための並列化が容易ではない。さらなる欠点は、全体的な核酸のねじれの制御ができないこと、および集束レーザーにより溶液が局所的に加熱される可能性があり、ハイブリダイゼーション条件を変化させるおそれがあることである。
【0054】
二本鎖核酸は、適切なビーズ(例えば、ストレプトアビジンでコーティングしたもの)の溶液中で数分間インキュベートし、二本鎖核酸はその標識された(例えば、ビオチン)末端のうち一方でビーズに結合する。ビーズは、後に操作のために光ピンセットが使用されるならば透明であってよく、操作のために磁気トラップまたはピンセットが使用される場合は磁性ビーズであってよい。
【0055】
ビーズ−核酸アセンブリは、分子のもう一方の標識末端と結合するようにその表面が処理された(例えば、核酸のDig標識末端に結合させるための抗Digでコーティングされた表面)流体チャンバー中に注入する。従って、ビーズは核酸ヘアピンを介して表面に固定される。図1a参照。次に、ビーズと表面の距離を当業者に公知の様々な手段でモニタリングするが、例えば、それらの距離を推定するために、カメラにおけるそれらの画像の回折環を使用することができ、あるいはエバネッセントモードで照射された場合にそれらが散乱する光の強度(または蛍光の放出)を用いてそれらの距離を測定してもよい。あるいは、固定表面上のセンサーまでのそれらの距離を推定するために、それらが発生させる磁界を測定することができる(例えばGMRまたはHallセンサーなどの磁気センサーを使用)。
【0056】
ビーズに固定した核酸分子を表面へ引き寄せるために、様々な技術が記載されている。焦点近くの透明ビーズを捕捉するために、集束レーザー光の光を使用することができる。固定表面に対する光線の相対的並進により、連結している分子に力をかけることができる(典型的な光ピンセットアッセイ)。加えられた力は、その平衡位置からのビーズの移動に比例し、結合している分子に一定の力を加えるためには捕捉光線上のフィードバックループが必要である。
【0057】
ビーズに一定の力を加えるために、ビーズの周囲の流れにより発生する流体力学的抗力の使用が記載されているが、通常、その空間的精度は低い(>100nm)。好ましい実施態様では、上記のように、核酸ヘアピンにより表面に固定された超常磁性ビーズを引き寄せるために磁気トラップを使用する。この構成においては、固定されたビーズに一定の力をかけるために、サンプルの上に配置した小さな磁石が使用され、その位置は<1nmの精度で決定することができる(引張力、および流体力学的抗力による消散に依存する)。どの場合においても、連結しているヘアピンは、約16pNよりも大きい力でビーズを引っ張ることにより、機械的に完全に開くことができることを注記しておく。分子にかける張力を約11pNより小さくすると、ヘアピンに自発的に再び閉じさせることができる(開いている状態の移行はヒステリシス的ではあるが可逆的である)。もし、開いている状態の時に、溶液中の一部の分子(例えば、タンパク質、またはDNA、RNA、LNAもしくはPNAの相補的オリゴヌクレオチド)が延長された一本鎖核酸に結合していれば、力が11pNよりも小さくなった場合に、これらの分子はヘアピンの再閉を遮断する。従って、このアッセイの原理は2つの力の間の切り替えであり、より大きい方のFopenはヘアピンを開き、小さい方のFtestは、再び閉じ、一時的遮断の際の分子の伸長の測定を可能にするために用いられる。遮断位置は、完全伸長と遮断状態の間の直線関係により、配列に関連づける。精度を最も良くするためには、完全伸長は、好ましくは、テスト張力Ftestで測定する。これは、力がFopenからFtestへと小さくなったところで、一瞬でリフォールディングされるようにヘアピンループを設計することによって達成される。
【0058】
核酸を表面または支持体に結合させるためには、当技術分野で公知のいずれの技術を用いてもよい。本質的に、核酸は、例えばマイクロビーズなどの支持体に直接的に固定され、支持体は、例えば核酸の官能基化末端と反応することができるストレプトアビジン、COOH基などでコーティングすることによるなど、この表面の官能基化を含む。
【0059】
このような方法では一般に、核酸の、特に3’および5’末端の官能基化、すなわち、適当な化学基をそれらにグラフトすることが必要となる。さらに、操作の終了時に鎖が解離するのを防ぎ、適切な場合、後者を繰り返すことができるように、分子の他の2つの遊離末端をループにより連結することが好ましい。この目的で、様々な手順を採用することができる。
【0060】
最も単純な手順は、合成オリゴヌクレオチドを用いて二本鎖核酸の一方の末端を2種類の異なる官能基(例えば、ビオチンとアミン)で官能基化することであり、これにより2つの異なる前処理面への固定が可能となる。この2本の鎖の他方の末端は、ループの形態の、部分的に対合した合成ヌクレオチドを用いて連結することができる。このようにして、対合した一本鎖核酸、すなわちヘアピンが二本鎖核酸から生成される。この方法の利点は、大きな核酸断片の異種集団(遺伝子または染色体の分画で得られるような)を官能基化し、次に同時に分析できる能力にある。この場合、核酸サンプルは2種類の(またはそれを越える)制限酵素を用いて分画され、その酵素は、断片全体は類似している、その末端に2種類の異なる制限部位を有する部分集団を得ることを可能にする。これにより、二末端に異なる処理を行うことができる(例えば、一方の末端を、その末端に適当な制限部位を有するループの形態のオリゴヌクレオチドに連結することによる)。この方法の欠点は2つの隣接する官能基間の立体的障害にあり、これにより表面への結合が困難となる場合がある。この問題を解決するために、ヘアピン分子の各遊離末端に塩基の「スペーサー」配列を付加し、次にその末端に官能基を付加し、2つのスペーサー配列は非相補的であり、各官能基に、その専用の表面に結合する十分なスペースを提供することが有利であり得る。さらに有利には、各スペーサー配列の配列が、既知配列の一本鎖シークエンシングプライマーを本発明の配列決定法において使用するために設計されている。二本鎖核酸分子へのループおよび/またはスペーサーの付加は、分子生物学で慣用されている任意の方法を用いて行うことができる。これらの方法は当業者に周知であり、従ってここでは詳細に記載する必要はない。
【0061】
実際の固定技術については多数存在し、それらは高分子(タンパク質、DNAなど)を市販の前処理表面に固定するための技術から派生したものである。これらの技術の大部分は免疫学検査のために開発されたものであり、タンパク質(免疫グロブリン)を、タンパク質のカルボキシル(−COOH)またはアミン(−NH)末端と反応できる基(−COOH、−NH、−OHなど)を担持する表面に連結させる。
【0062】
核酸の共有結合による固定は、直接的に、分子の5’末端の遊離のリン酸基を介して行うことができ、それは第二級アミン(StrasbourgのPolylaboにより市販されているCovalink−NH表面)と反応して共有結合を形成する。また、DNAをアミン基で官能基化し、次にタンパク質と同様に処理することも可能である。
【0063】
ストレプトアビジンでコーティングした表面(Dynalビーズなど)もあり、ストレプトアビジンとビオチン化DNA分子との間の準共有結合的固定を可能にする。最後に、ジゴキシゲニンに対する抗体を表面にグラフトすることにより(上述の方法による)、ジゴキシゲニンで官能基化された核酸がそこに固定され得る。これは多くの潜在的な固定技術の一例にすぎない。
【0064】
結合および固定技術としては、例えば、欧州特許第152886号に記載の、セルロースなどの固相支持体へのDNAの結合のために酵素的カップリングを用いる技術も挙げておくべきである。
【0065】
欧州特許第146815号ではまた、支持体へのDNAの結合の様々な方法が記載されている。同様に、国際公開第92/16659号では、DNAを結合するためにポリマーを使用する方法が提案されている。
【0066】
当然ながら、核酸は支持体に直接結合されてもよいが、必要に応じて、特に表面に及ぼす影響を制限する目的で、核酸は不活性なペプチドアームまたは例えば、欧州特許第329198号に記載されているような他の種類の末端に結合されてもよい。
【0067】
以下の実施例は、本発明の他の特徴および利点を明らかにすることを可能にするであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1ヘアピンDNA上でのオリゴヌクレオチドとそれらの相補配列のハイブリダイゼーションの検出原理 ビーズを引っ張る力を約16pNを上回る値まで大きくすることにより、ビーズを表面(a)に固定しているヘアピンDNAを一時的に開く。その状態で溶液中の相補的断片を開かれたDNAヘアピン上のその標的とハイブリダイズさせ、このようにして、力が小さくなり初期値に戻った際に、ヘアピン(b)が再閉するのを防ぐ。ヘアピンのリフォールディングは、持続時間は様々であるが、明確に定義された伸長において見られる4つのプラトーを示す。73.71nmにおける最上部のプラトーは、Ftestで完全に開いたヘアピン83bpに関連し、最下部のプラトーは完全にリフォールディングされたヘアピンに相当する。25.47nmおよび35.17nmの2つの中間のプラトーは、溶液に2つのオリゴが入れられたために現れたものである。これらの伸長変化(zhigh−z)から、ヘアピンに沿って相補配列が対合していた場所が推定できる。ここで、それらの位置によれば、遮断は、予想された位置29bpおよび40bpと極めてよく一致した28.66bpおよび39.60bpの場所で同時に起こっている。このプラトーの位置は、数回の開/閉サイクル(ここでは約20サイクル)から得られたヒストグラムにガウス関数を当てはめることにより、より良く推定される。
図2遮断時間はオリゴヌクレオチド長および引張力に強く依存する A)1200bpヘアピンに対する10塩基オリゴヌクレオチドによる時間τの遮断。B)遮断時間のヒストグラムは平均値2秒でポアソン分布を示す。C)遮断時間はオリゴヌクレオチドサイズによって変化し、試験段階に用いる力Ftestによって指数関数的に変化する。
図39塩基オリゴの場合のオリゴ濃度による遮断確率および遮断時間の経時的推移 遮断時間は濃度には依存しない。遮断確率はKm 10nMを示す。
図412個のヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドの遮断時間を力に対してプロットする 丸の記号の曲線を除き、これらのオリゴヌクレオチドは総て1または2個の誤対合を有するが、その後の場合では、遮断は短すぎて測定することができなかった。誤対合が最後または最初の塩基に存在すれば、遮断時間は5分の1になった。誤対合がそのオリゴヌクレオチドの中央のAT塩基対に関するものである場合、遮断時間は20分の1を下回るまで短くなったが、GC塩基対に関するものである場合には、60分の1に達する。二重の誤対合は、測定できないほど遮断時間を短くする。
図5a10個のオリゴヌクレオチドACAGCCAGCCに対する温度による遮断時間の経時的推移 一般に、温度が10℃高くなると遮断時間は3分の1になる。
図5b10bpのヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドの遮断時間を力に対してプロットする 丸の記号の曲線を除き、これらのオリゴヌクレオチドは総て1または3個のLNA(配列記号でマーク)を含む。DNAを1個のLNAで置換すると、遮断時間は2倍になる。
図6図1cに示されるものなどの実験(この場合、溶液中のオリゴヌクレオチドが分子上の様々な位置において、開いているDNAと対合することができる)におけるDNA伸長の分布のヒストグラム ヒストグラムピークの位置(3つの異なる分子、すなわち、異なる結合ビーズに強く相関している)から、そのDNA上のハイブリッドの位置を推定することができる。
図7拡大配列に相当するDNAヘアピンに対する、4種類の8塩基ヌクレオチドA、C、T、Gに相当する遮断位置のヒストグラム これらの遮断位置は、それらの予測された位置と正確に相関している。本発明者らは、ここでは、G=GCACGCAC、C=TCGCTCGC、T=GCCAGCCAおよびA=CCGACCGAを用いている。
【実施例】
【0069】
実験例
DNAの調製
未知の配列であり数十〜数千の間の塩基対からなるサイズの二本鎖(ds)DNA断片を、一方の先端においてDNAループに連結する。そのもう一方の先端をdsDNA断片に連結すれば、その2つの鎖を異なるコーティングの表面に結合させることができる。例えば、一方の鎖の遊離3’末端をビオチンで標識してストレプトアビジンでコーティングしたビーズに結合させ、反対の鎖の5’末端はジゴキシゲニンで標識して抗Dig抗体でコーティングした表面に結合させることができる。この末端標識は、例えばビオチン(またはdig)修飾ヌクレオチドを付加するためのターミナルトランスフェラーゼの使用、または適切に標識されたオリゴヌクレオチドを用いるハイブリダイゼーションなど、当業者に公知の様々な方法で行うことができる。
【0070】
フォース・ストレッチング機器(Force streching apparatus)
このDNA構築物を、それが、その標識された(例えば、ビオチン)一方の末端が結合する適当なビーズ(例えば、ストレプトアビジンでコーティングしたもの)の溶液中で数分間インキュベートする。このビーズは、後に操作のために光ピンセットが使用されるならば透明であってよく、操作のために磁気トラップまたはピンセットが使用される場合は磁性ビーズであってよい。
【0071】
ビーズ−DNAアセンブリを、例えば分子のもう一方の標識末端と結合するようにその表面が処理された(例えば、DNAのDig標識末端に結合させるための抗Digでコーティングされた表面)流体チャンバー中に注入する。このようにしてビーズはDNA−ヘアピンを介して表面に固定される(図1a参照)。次に、ビーズと表面との距離を当業者に公知の様々な手段でモニタリングするが、例えば、それらの距離を推定するために、カメラでのそれらの画像の回折環を使用することができ、あるいはエバネッセントモードで照射された場合にそれらが散乱する光の強度(または蛍光の放出)を用いてそれらの距離を測定してもよい。あるいは、固定表面上のセンサーまでのそれらの距離を推定するために、それらが発生させる磁界を測定することができる(例えばGMRまたはHallセンサーなどの磁気センサーを使用)。
【0072】
ビーズに固定されているDNA分子を表面へ引き寄せるために、様々な技術が記載されている。好ましい実施態様では、上記のように、DNAヘアピンにより表面に固定された超常磁性ビーズを引き寄せるために磁気トラップを使用する。この構成においては、固定されたビーズに一定の力を加えるために、サンプルの上に配置した小さな磁石が使用され、その位置は<1nmの精度で決定することができる(引張力および流体力学的抗力による消散に依存する)。この一連の実験では、米国特許第7,052,650号および同第7,244,391号に記載の機器を用いた。さらに、特に断りのない限り、本明細書で報告した実験は、25mM Tris pH7.5、150mM KAc、10mM MgCl、0.2%BSA中で行った。
【0073】
どの場合においても、連結しているヘアピンは、約16pNよりも大きい力でビーズを引っ張ることにより、機械的に完全に開くことができる。分子にかける張力を約11pNより小さくすると、ヘアピンが自発的に再び閉じさせることができる(開いている状態の移行はヒステリシス的ではあるが可逆的である)。もし、開いている状態の時に、溶液中の一部の分子(例えば、タンパク質、またはDNA、RNA、LNAもしくはPNAの相補的オリゴヌクレオチド)と延長された一本鎖(ss)DNAと結合していれば、力が11pNよりも小さくなった場合に、これらの分子はヘアピンの再閉を一時的に遮断する。アッセイの原理は2つの力の間の切り替えであり、大きい方のF0penはヘアピンを開き、小さい方のFtestは、再び閉じ、一時的遮断の際の分子の伸長の測定を可能にするために用いられる。遮断位置は、完全伸長と遮断状態の間の直線関係により、配列に関連づける。精度を最も良くするためには、完全伸長は、好ましくは、テスト張力Ftestで測定する。これは、力がFopenからFtestへ低減されたところで、一瞬でリフォールディングされるようにヘアピンループを設計することによって達成される。
【0074】
オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション位置は、塩基対の分解能により測定することができる
これらの再閉の停止のうちの1つの期間におけるDNA分子の伸長(ビーズと表面との距離)を測定することにより、遮断の位置をナノメーター精度で決定することが可能である(1nmはssDNAにおいて10pNの力の下で2つのヌクレオチド(1bp)にわたる距離に相当する)。開いている構造は、塩基対に対する伸長の最大比を示す(dsDNAにおいてその比はわずか0.34nm/bpである)。
【0075】
この測定の精度は、2つのノイズの関与により限定される:
・測定方法の精度;
・ビーズのブラウン運動。
【0076】
ビーズの垂直位置を測定するために様々な技術を使用することができる。最も単純なものは、ビデオ顕微鏡によるものである(米国特許第7,052,650号および同第7,244,391号)。この方法を用いて得られた図1の結果では、標準的な分解能は平均して1秒あたり1nmに達している。良好な分解能を備えた他の方法としては、例えば分解能0.1nmに達するPSDセンサーを用いるレーザー照射(Greenleaf and Block, Science, 313: 801, 2006)、およびエバネッセント波照射(Singh-Zocchi et al., Proc Natl Acad Sci U S A., 100(13): 7605-7610, 2003、Liu et al., Biophys J., 96(9): 3810-3821, 2009)が示されている。
【0077】
分解能における固有の制限は、ssDNA分子を引き寄せるビーズのブラウン搖動によりもたらされる。<x>=4kTΔf(6πηr)/kssDNA(F)、式中、kssDNA(F)はssDNA分子の剛性、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、ηは水の粘度、rはビーズの半径、Δfは測定の周波数帯域である。kssDNA(F=10pN)=0.05/Nb(N/m)、式中、NbはssDNAの塩基の数である。84bpのヘアピンに対して、これは平均して1秒間に0.04nmのノイズをもたらす(Δf=lHz)。図1におけるより大きなノイズ(σ約1nm)は、本質的に測定装置によるものであり、固有の搖動によるものではない。固有のブラウンノイズはヘアピンのサイズとともに増大し、例えば、1200bpのヘアピンは1秒間に平均して0.6nmのノイズをもたらす。
【0078】
ハイブリダイゼーションの品質は遮断時間の平均値により評価される
遮断強度は、遮断確率Pblock(=遮断を示すサイクル数/全サイクル数)と平均遮断時間τblockの2つのパラメーターによって特徴付けることができる。Pblockはkonとオリゴヌクレオチド濃度に依存するが、τblockはkoffにのみ依存し、ここで、konとkoffはそれぞれ結合反応定数と解離反応定数である。図2では、オリゴヌクレオチド長および力による典型的なτblockの変動を表す。一塩基誤対合はτblockに、オリゴヌクレオチド長を少なくともヌクレオチド1個分低減することおよび遮断時間を5分の1にすることに相当する劇的な影響を示す。
【0079】
実際、τblockおよび従ってkoffは、オリゴヌクレオチド濃度に依存しないことから測定が簡単である(図3)。しかしながら、konも測定可能である。
【0080】
平均遮断時間はオリゴヌクレオチド配列に依存するが、ヘアピン上のその位置には依存しない。ヘアピン上の2つの特定の位置が一致する配列を検討したところ、両遮断とも遮断時間は同じであるが、大きく異なる位置に見られる。
【0081】
1つの突然変異が遮断時間に劇的な影響を示す
図4に示されるように、ヘアピンと完全な一致を形成する12塩基のオリゴは、1つの誤対合を持つ同じオリゴに比べ、大きく異なる遮断時間を示す。図4では、種々のオリゴについて、力に対する遮断時間を示す。力が大きくなるほど、遮断時間が長くなる。突然変異がまさに最初のヌクレオチドか最後のヌクレオチドにあれば、その遮断時間に対する影響は最小の5分の1となる。予想されたように、この低下は誤対合の性質に依存し、一般に、ATに対する誤対合は遮断時間を20分の1にするが、GCの誤対合は60分の1にする。
【0082】
遮断時間は、誤対合がオリゴの中央にある場合に劇的に短くなる
図4に見て取れるように、オリゴヌクレオチドの中央における誤対合は、力が最大の時にのみ見られる極めて短い遮断を生じる。このような誤対合から生じる遮断時間の短縮は、同じ力条件で100分の1を切る。
【0083】
遮断時間は温度およびバッファー条件に依存する
図5aに見られるように、温度が高くなるほど、遮断時間は著しく短縮される。また、バッファー条件も遮断時間を調節し、マグネシウム、ベタインおよび塩化テトラメチルアンモニウム(TMACはモル濃度で用いる)は、これらの実験で用いたバッファー(25mM Tris pH7.5、150mM KAc、10mM MgCl、0.2%BSA)に比べて遮断時間を著しく延長する。これらの化合物はGC対よりもAT対を強くするので、これらの対の間の強度の差を小さくする。
【0084】
RNAまたはLNAオリゴヌクレオチドを用いると遮断時間が延長される
RNAおよびLNAオリゴヌクレオチドは、DNAオリゴヌクレオチドよりもssDNAと強いハイブリッドを形成する。同じ標的配列では、遮断時間は、DNAオリゴヌクレオチドに比べてRNAオリゴヌクレオチドでは2倍になる。
【0085】
LNAヌクレオチドはさらに劇的な影響を示し、1個のヌクレオチドがDNAからLNAへ変わると、そのオリゴヌクレオチド全体の遮断時間が2倍になる。3つの塩基がDNAからLNAへ変わると、遮断時間は5倍になる。総てのヌクレオチドがDNAからLNAへ変わると、10の塩基LNAオリゴヌクレオチドの遮断時間が1時間を超えるといった劇的な影響が出る。オリゴヌクレオチドのサイズをLNA6塩基まで小さくすると、1秒という妥当な遮断時間が得られる。
【0086】
DNAオリゴヌクレオチドの場合では、これらの選択的オリゴヌクレオチド(LNAまたはRNA)の1つによる遮断の平均時間を測定することにより、それが相補的オリゴヌクレオチドとの完全なハイブリダイゼーションによるものであるかどうか、また、そうでなければ誤対合がどこにあるか(例えば、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの中央かその一方の末端付近か)といった、その性質を決定することができる。
【0087】
検出可能なオリゴヌクレオチドの長さ
遮断時間はオリゴヌクレオチド長に指数関数的に依存することから、このパラメーターは大きく変えることができない。オリゴヌクレオチドが小さすぎると(室温で8塩基より小さい)、遮断時間が短すぎて検出することができない。オリゴが大きすぎると(室温で12塩基より大きい)、遮断時間が長すぎるようになる。
【0088】
酵素がハイブリッドを安定化し得る
NTPを含まずにgp43 DNAポリメラーゼを添加すると、オリゴヌクレオチドの遮断時間が長くなる。これはハイブリダイズしたプライマーがポリメラーゼの基質であるためであると思われる。gp43ポリメラーゼはオリゴの遮断時間を10倍にする。
【0089】
ハイブリダイゼーションパラメーターの概要
オリゴの長さは重要なパラメーターであり、室温で実用的な遮断時間を有するオリゴヌクレオチドの長さは8〜12塩基まで様々である。同じ分子に対して一連の開/再閉実験を容易に行い、開状態期においてオリゴヌクレオチドとDNAの対合により再閉する際の平均遮断時間を測定することができる。この時間はオリゴヌクレオチドのサイズ、再閉の際にかけられた力、温度およびイオン濃度に依存する。対合した断片が誤対合を示せば、遮断時間は有意に(少なくとも10分の1)、かつ、定量可能に短くなる。従って、機械的開/再閉技術により、既知のオリゴヌクレオチド配列と未知配列のDNA断片の間の対合の位置および安定性を即、プローブすることができる(図1cおよび図2参照)。これらの知見は、DNA配列決定および診断における適用の種々の実装形態を示唆する。
【0090】
ハイブリダイゼーションの機械的検出による診断および配列決定
種々のオリゴヌクレオチド(流体チャンバーに連続的に導入する)を有する表面を、ビーズに固定されているDNAヘアピンでプローブすることにより、既知配列上にあり得る突然変異の存在を決定すること(プローブオリゴヌクレオチドとの誤対合が起こり、再閉中の停止が短くなる)、または分子上の既知プローブの位置を決定することにより未知のDNAの配列決定を行うことが可能となる(図6参照)。
【0091】
別の態様では、配列決定される核酸が、ハイブリダイズプローブの位置の決定を増進するために拡大タグの使用によって再設計される。図7に報告されている実験では、特定の塩基、アデニン、シトシン、グアニンおよびチミンの全存在がそれぞれ対応する拡大タグ(この場合には8マーのオリゴヌクレオチド)で置換された。図7に示されるように、遮断位置は、その配列から予想される位置と完全に一致する。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]