(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内燃機関は、所定の回転数に維持されるように制御され、外力により回転数が低下した場合に、トルクを増加させて前記所定の回転数に戻るような特性となるように制御され、
前記制御装置は、前記油圧作業要素の操作に対応して、前記内燃機関に外力を加える、
請求項1乃至8の何れかのショベル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明が適用されるショベルの一例であるハイブリッド式ショベルの側面図である。本発明が適用されるショベルとしては、ハイブリッド式ショベルに限られず、エンジンにより駆動されてエンジンに負荷を加えることのできる駆動要素(例えば、発電機)を有するものであれば、他の構成のショベルにも適用することができる。
【0014】
図1に示すハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0015】
図2は、
図1に示すハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
【0016】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。メインポンプ14は可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量を制御することができる。
【0017】
なお、本実施形態では、エンジン11に過給器11aが設けられている。過給器11aは、エンジン11からの排気を利用して吸気圧を上昇させる(過給圧を発生させる)ことで、エンジン11の出力を上昇させることができる。
【0018】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0019】
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器を含む蓄電系120が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。また、操作装置26が電気式の場合には、圧力センサ29から出力される信号の代わりに、操作装置26から出力される電気信号を操作状態検出部の検出値として用いるようにしてもよい。
【0020】
図2に示すハイブリッド式ショベルは旋回機構を電動にしたもので、旋回機構2を駆動するために旋回用電動機21が設けられている。電動作業要素としての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで電気負荷駆動系が構成される。
【0021】
コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0022】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
【0023】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100(
図3参照)を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。また、コントローラ30は、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値に基づいて、蓄電器(キャパシタ)の充電率SOCを算出する。
【0024】
また、コントローラ30は、通常、電気負荷の要求に基づいて発電の要否を判断し、発電が必要と判断した場合には、電気負荷の要求量に応じて電動発電機12の発電制御を行なう。ここで、電気負荷の要求とは、例えば、キャパシタ19の充電要求、及び、旋回用電動機21への力行運転の要求を示す。
【0025】
図3は、蓄電系120の回路図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータ100とDCバス110とを含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ 電圧値とキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
【0026】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、駆動制御部としてのインバータ18A及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
【0027】
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
【0028】
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18Aを介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
【0029】
昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、キャパシタ19を接続するための電源接続端子104、インバータ18A,20を接続するための出力端子106、及び、一対の出力端子106に並列に挿入される平滑用のコンデンサ107を備える。昇降圧コンバータ100の出力端子106とインバータ18A,20との間は、DCバス110によって接続される。
【0030】
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子104に接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
【0031】
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子(スイッチング素子)である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
【0032】
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、
図4には、蓄電器としてキャパシタ19を示すが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、リチウムイオンキャパシタ、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を用いてもよい。
【0033】
電源接続端子104及び出力端子106は、キャパシタ19及びインバータ18A,20が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104の間には、キャパシタ電圧を検出するキャパシタ電圧検出部112が接続される。一対の出力端子106の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
【0034】
キャパシタ電圧検出部112は、キャパシタ19の電圧値Vcapを検出する。DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧値Vdcを検出する。平滑用のコンデンサ107は、出力端子106の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化するための蓄電素子である。この平滑用のコンデンサ107によって、DCバス110の電圧は予め定められた電圧に維持されている。
【0035】
キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子(P端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。すなわち、キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子に流れる電流値I1を検出する。一方、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタの負極端子(N端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。すなわち、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタ19の負極端子に流れる電流値I2を検出する。
【0036】
昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧が印加され、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がDCバス110に供給される。これにより、DCバス110が昇圧される。
【0037】
DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧が印加され、降圧用IGBT102B、インバータ18A,20を介して供給される回生電力がDCバス110からキャパシタ 19に供給される。これにより、DCバス110に蓄積された電力がキャパシタ19に充電され、DCバス110が降圧される。ここで、キャパシタ19に電力が蓄積される場合(充電時)には、キャパシタ19は電動発電機12に対して電気負荷として機能している。
【0038】
本実施形態では、キャパシタ19の正極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン114に、当該電源ライン114を遮断することのできる遮断器としてリレー130−1が設けられる。リレー130−1は、電源ライン114へのキャパシタ電圧検出部112の接続点115とキャパシタ19の正極端子の間に配置されている。リレー130−1はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン114を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。
【0039】
また、キャパシタ19の負極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン117に、当該電源ライン117を遮断することのできる遮断器としてリレー130−2が設けられる。リレー130−2は、電源ライン117へのキャパシタ電圧検出部112の接続点118とキャパシタ19の負極端子の間に配置されている。リレー130−2はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン117を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。なお、リレー130−1とリレー130−2を一つのリレーとして正極端子側の電源ライン114と負極端子側の電源ライン117の両方を同時に遮断してキャパシタを切り離すこととしてもよい。
【0040】
なお、実際には、コントローラ30と昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bとの間には、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bを駆動するPWM信号を生成する駆動部が存在するが、
図3では駆動部の図示は省略する。このような駆動部は、電子回路又は演算処理装置のいずれでも実現することができる。
【0041】
本実施形態では、上述のような構成のハイブリッド式ショベルにおいて、油圧負荷の増大によるエンジン11への負荷の増大が始まる前に、予めエンジン11に負荷をかけてエンジン出力を増大させておく。これにより、油圧負荷の増大によるエンジン11への負荷の増大が始まっても、エンジンの回転数を維持したままエンジン出力を迅速に増大させることができ、エンジン11の燃料消費量を低減することができる。本実施形態では、予めエンジン11に負荷をかける手段として、エンジン11で駆動される電動発電機12を用いている。
【0042】
図4は、本実施形態によるエンジン制御を行なった場合の各制御要素の変化を示すタイムチャートである。
図4において、実線は本実施形態によるエンジン制御を行なった場合の各制御要素の変化を示し、一点鎖線は本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合の各制御要素の変化を示す。エンジン制御を行なわない場合の各制御要素の変化(一点鎖線)は、本実施形態によるエンジン制御を行なった場合の各制御要素の変化と比較するために示されている。
【0043】
図4において、(a)は操作レバー(アーム操作レバー)の操作量の変化を示し、(b)は電動発電機12の出力(発電電力)の変化を示し、(c)はエンジン11に加わる油圧実負荷(アームの駆動で発生する負荷)の変化を示し、(d)はエンジン11の燃料消費量の変化を示し、(e)は過給器で発生する過給圧(ブースト圧)の変化を示し、(f)はエンジン回転数の変化を示す。
【0044】
図4に示す例は、ショベルによる掘削動作において時刻t1でアーム操作レバーが操作され、その後、ブーム上げ動作において時刻t7でブーム操作レバーが操作された場合の例である。
【0045】
まず、比較のために、本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合の各制御要素の変化について説明する。
【0046】
時刻t1において、掘削動作を行なうために、アーム操作レバーの操作が開始される。アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t1から時刻t2まで増大され、時刻t2においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t1からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t2においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。時刻t1においてアーム操作レバーの操作が開始されると、アーム5が動き始め、時刻t2になると、アーム操作レバーが最も傾けられた状態になり、アーム5は最も傾けられた状態になる。
【0047】
アーム操作レバーが最も傾けられた状態になった時刻t2から、アーム5に加わる負荷によりメインポンプ14の吐出圧が上昇し、メインポンプ14の油圧負荷が上昇し始める。すなわち、
図4(c)に示すように、時刻t2付近から、メインポンプ14の油圧負荷は上昇し始める。メインポンプ14の油圧負荷はエンジン11への負荷に相当し、エンジン11への負荷も、メインポンプ14の油圧負荷と共に上昇する。その結果、
図4(f)の一点鎖線で示すように、エンジン11の回転数は時刻t2を過ぎたあたりから大きく低下していく。なお、油圧負荷が無いときには、エンジン11の回転数は所定回転数Ncに維持されるように制御が行なわれている。
【0048】
エンジン11への負荷が増大し、エンジン回転数が所定回転数Ncからずれたことを検出すると、エンジン11の制御が働き、エンジン11の燃料噴射量を増大させる。これにより、
図4(d)の一点鎖線で示すように、時刻t3からエンジン11の燃料消費量は上昇する。すなわち、時刻t3においてエンジン11の燃料噴射量を増やす指令が出され、これに応じてエンジン11に供給する燃料の量が増大されて燃料消費量が上昇し始める。
【0049】
時刻t3で燃料噴射量が増大されると、
図4(f)の一点鎖線で示すように、低下中であったエンジン回転数は上昇に転じる。また、エンジン11への負荷が増大すると、
図4(e)の一点鎖線で示すように、時刻t4において過給圧(ブースト圧)が上昇し始める。これにより、エンジン11の燃焼効率が高められ、エンジン11の出力を効率的に増大させることができる。
【0050】
エンジン回転数が上昇し続け、所定回転数Ncに達すると、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持するための制御が働くが、エンジン回転数は直ちに所定回転数Ncに安定せず、所定回転数を超えても上昇し続ける。そして、時刻t5になると、エンジン回転数は低下し始め、これに伴い、燃料消費量も低下し始める。このように、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、直ちに所定回転数Ncで安定せずにオーバーシュートが発生してしまう。また、燃料消費量の変化も噴射指令に対して遅れが生じるので、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、燃料消費量は直ちに低下しない。
【0051】
時刻t5にて燃料消費量が低下し始めると、エンジン回転数の上昇も止まり、その後エンジン回転数は所定回転数Ncまで低下して安定して維持される。
【0052】
時刻t6において、オペレータは掘削動作を終了するためにアーム操作レバーを中立位置に戻し始める。すると、アーム5による油圧負荷は減少し、メインポンプ14の油圧負荷も低下する。この油圧負荷の低下に伴い、エンジン11への負荷も減少するので、燃料消費量及び過給圧はほとんどなくなる。
【0053】
続いて、燃料消費量及び過給圧が低下し始めた後、時刻t7において今度は、ブーム上げ動作を行なうために、オペレータはブーム操作レバーを操作する。
図4(a)に示すように、時刻t7からブーム操作レバーの操作量が増大し始めて、時刻t8において操作量は一定に維持される。
【0054】
アーム5の動作が終了して低下していた油圧実負荷は、時刻t7を過ぎてからブーム4の動作のために再び上昇し始める。すなわち、時刻t7においてブーム操作レバーの操作が開始されると、ブーム4が動き始め、時刻t8になると、ブーム操作レバーが最も傾けられた状態になる。
【0055】
ブーム操作レバーが最も傾けられた状態になった時刻t8から、ブーム4に加わる負荷によりメインポンプ14の吐出圧が上昇し、メインポンプ14の油圧負荷が上昇し始める。すなわち、
図4(c)に示すように、時刻t8を過ぎた時点から、メインポンプ14の油圧負荷は上昇し始める。メインポンプ14の油圧負荷はエンジン11への負荷に相当し、エンジン11への負荷も、メインポンプ14の油圧負荷と共に上昇する。その結果、
図4(f)の一点鎖線で示すように、エンジン11の回転数は時刻t8を過ぎたあたりから大きく低下していく。
【0056】
エンジン11への負荷が増大し、エンジン回転数が所定の回転数Ncからずれたことを検出すると、エンジン11の制御が働き、エンジン11の燃料噴射量を増大させる。これにより、
図4(d)の一点鎖線で示すように、時刻t9からエンジン11の燃料消費量は上昇する。すなわち、時刻t9においてエンジン11の燃料噴射量を増やす指令が出され、これに応じてエンジン11に供給する燃料の量が増大されて燃料消費量が上昇し始める。
【0057】
時刻t9で燃料噴射量が増大されると、
図4(f)の一点鎖線で示すように、低下中であったエンジン回転数は上昇に転じる。また、エンジン11への負荷が増大すると、
図4(e)の一点鎖線で示すように、時刻t10において過給圧(ブースト圧)が上昇し始める。これにより、エンジン11の燃焼効率が高められ、エンジン11の出力を効率的に増大させることができる。
【0058】
エンジン回転数が上昇し続け、所定回転数に達すると、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持するための制御が働くが、エンジン回転数は直ちに所定回転数Ncに安定せず、所定回転数を超えても上昇し続ける。そして、時刻t11になると、エンジン回転数は低下し始め、これに伴い、燃料消費量も低下し始める。このように、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、直ちに所定回転数Ncで安定せずにオーバーシュートが発生してしまう。また、燃料消費量の変化も噴射指令に対して遅れが生じるので、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、燃料消費量は直ちに低下しない。
【0059】
時刻t11にて燃料消費量が低下し始めると、エンジン回転数の上昇も止まり、その後エンジン回転数は所定回転数Ncまで低下して安定して維持される。
【0060】
以上のように、通常のショベルのエンジン制御によると、油圧実負荷の増大に伴ってエンジン回転数が大きく落ち込み、それを回復させるために燃料消費量が大きく増大してしまう(
図4(d)の時刻t3からt5及び時刻t9からt11における一点鎖線で示す)。
【0061】
そこで、本実施形態によるエンジン制御では、エンジン回転数の落ち込みを抑制して、エンジン回転数を回復させるために使用される燃料量を極力低減する。
【0062】
次に、本実施形態によるエンジン制御を行なう場合の各制御要素の変化について、
図4を参照しながら説明する。
図4において、本実施形態によるエンジン制御を行なう場合の各制御要素の変化は実線で示されている。
【0063】
オペレータのレバー操作としては上述のように、時刻t1において、掘削動作を行なうために、アーム操作レバーの操作が開始される。アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t1から時刻t2まで増大され、時刻t2においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t1からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t2においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。時刻t1においてアーム操作レバーの操作が開始されると、アーム5が動き始め、時刻t2になると、アーム操作レバーが最も傾けられた状態になる。
【0064】
ここで、本実施形態によるエンジン制御では、時刻t1においてアーム操作レバーが操作されたことを検知したら、コントローラ30は直ちに電動発電機12を発電運転させる。電動発電機12を発電運転させる時間は、例えば0.1秒程度の短時間だけでよい。電動発電機12はエンジン11の出力により駆動されて発電運転を行なうので、発電運転によりエンジン11に負荷が加わる。その結果、
図4(f)の実線で示すように、時刻t1からエンジン回転数は低下し始める。
【0065】
エンジン回転数が低下し始めると、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持しようとする制御が働き、燃料噴射量が増大されて燃料消費量が増大する。電動発電機12を発電運転させる時間は短時間であり、且つ発電量も小さく設定されるので、
図4(f)の実線で示すように、時刻t1からエンジン回転数は低下し始めるが、すぐに燃料噴射量が増大されるので、エンジン回転数はすぐに上昇に転じ、再び所定回転数Ncに戻る。
【0066】
このように、時刻t1においてエンジン11に予め負荷が加えられるので、
図4(e)の実線で示すように、アーム操作レバーが最も傾けられた状態となる時刻t2において、過給圧は直ちに上昇し始める。その後、電動発電機12の発電運転は終了され、エンジン回転数が所定回転数Ncに戻るので、増大していた燃料消費量は低減する。
【0067】
以上のように、電動発電機12を操作レバーの操作に応じて短時間だけ発電運転させてエンジン11に負荷を加えることで、油圧実負荷が上昇し始める時刻t2において過給圧の増大を開始させることができる。すなわち、操作レバーの操作量に基づいてメインポンプ14の油圧負荷が増大しはじめることを検出又は判断し、油圧負荷が増大することを検出したら、電動発電機12を発電運転させる。これにより、油圧負荷が実際に増大する前に、電動発電機12の発電負荷を増大させて、エンジン11に負荷を加えることができる。エンジン11に負荷を加える理由は、油圧実負荷(すなわち、メインポンプ14の油圧負荷)の増大によるエンジン11の負荷の増大に迅速に対応できるように、エンジン11の過給圧を予め上昇させておくためである。
【0068】
時刻t2を過ぎると油圧実負荷が上昇してエンジン11への負荷も増大する。そして、時刻t3において燃料噴射量を増大する指示が出される。すると、
図4(d)に示すように、燃料消費量は徐々に増加する。このときの燃料消費量の増加分は、油圧実負荷の増大に対応する分だけである。すなわち、エンジン回転数はすでに所定回転数Ncに維持されているので、エンジン回転数を上昇させるための燃料消費量は必要ない。また、時刻t3では、過給圧が所定値まで上昇しているため、油圧実負荷が増大しても、エンジン11の出力を効率的に増大することができ、燃料消費量の増大を抑制することができる。この効果は、
図4(d)の時刻t3から時刻t5までの間における一点鎖線(本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合)と実線(本実施形態によるエンジン制御を行なう場合)との差で示されている。
【0069】
時刻t6において、オペレータは掘削動作を終了するためにアーム操作レバーを中立位置に戻し始める。すると、アーム5による油圧負荷は減少し、メインポンプ14の油圧負荷も低下する。この油圧負荷の低下に伴い、エンジン11への負荷も減少するので、燃料消費量及び過給圧も減少し始める。
【0070】
続いて、燃料消費量及び過給圧が低下し始めた後、時刻t7において今度は、ブーム上げ動作を行なうために、オペレータはブーム操作レバーを操作する。
図4(a)に示すように、時刻t7からブーム操作レバーの操作量が増大し始めて、時刻t8において操作量は一定に維持される。
【0071】
ここで、本実施形態によるエンジン制御では、時刻t7においてブーム操作レバーが操作されたことを検知したら、コントローラ30は直ちに電動発電機12を発電運転させる。電動発電機12を発電運転させる時間は、例えば0.1秒程度の短時間だけでよい。電動発電機12はエンジン11の出力により駆動されて発電運転を行なうので、発電運転によりエンジン11に負荷が加わる。その結果、
図4(f)の実線で示すように、時刻t7からエンジン回転数は低下し始める。
【0072】
エンジン回転数が低下し始めると、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持しようとする制御が働き、燃料噴射量が増大されて燃料消費量が増大する。電動発電機12を発電運転させる時間は短時間であり、且つ発電量も小さく設定されるので、
図4(f)の実線で示すように、時刻t7からエンジン回転数は低下し始めるが、すぐに燃料噴射量が増大されるので、エンジン回転数はすぐに上昇に転じ、再び所定回転数Ncに戻る。
【0073】
このように、時刻t7においてエンジン11に予め負荷が加えられるので、
図4(e)の実線で示すように、時刻t7を過ぎると過給圧は上昇し始め、時刻t8において所定の値まで上昇する。その後、電動発電機12の発電運転は終了され、エンジン回転数が所定回転数Ncに戻るので、増大していた燃料消費量は低減する。
【0074】
以上のように、電動発電機12を操作レバーの操作に応じて短時間だけ発電運転させてエンジン11に負荷を加えることで、油圧実負荷が上昇し始める時点より前に過給圧の増大を開始させることができる。
【0075】
時刻t8を過ぎると油圧実負荷が上昇してエンジン11への負荷も増大する。そして、時刻t9において燃料噴射量を増大する指示が出される。すると、
図4(d)に示すように、燃料消費量は徐々に増加する。このときの燃料消費量の増加分は、油圧実負荷の増大に対応する分だけである。すなわち、エンジン回転数はすでに所定回転数Ncに維持されているので、エンジン回転数を上昇させるための燃料消費量は必要ない。また、時刻t9では、過給圧が所定値まで上昇しているため、油圧実負荷が増大しても、エンジン11の出力を効率的に増大することができ、燃料消費量の増大を抑制することができる。この効果は、
図4(d)の時刻t9から時刻t11までの間における一点鎖線(本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合)と実線(本実施形態によるエンジン制御を行なう場合)との差で示されている。
【0076】
以上のように、本実施形態では、油圧実負荷(メインポンプ14の油圧負荷)が増大しはじめることを、操作レバーの操作に基づいて検出又は判断し、油圧実負荷が増大する前に、電動発電機12の発電負荷を増大させる。これにより、エンジン11への負荷が実際に増大する前あるいは増大するときには、エンジン11の回転数は所定回転数Ncとなっており、且つエンジン11の過給圧も上昇させておくことができる。すなわち、エンジン11の過給圧が所定の値よりも低くなることを防止することができる。したがって、エンジン回転数が大きく低下することがなく、エンジン回転数を上昇させるための燃料を消費する必要ない。電動発電機12の発電負荷を増大させるのは、通常、キャパシタ19の充電率が低下したときであるが、本実施形態では、電気負荷に基づく電動発電機12への発電要求の有無にかかわらず、電気負荷に基づく発電要求が無いときでも、電動発電機12の発電負荷を増大させてエンジン11の駆動を制御する。
【0077】
次に、第2実施形態によるエンジン制御について説明する。
【0078】
図5は、第2実施形態によるエンジン制御を行なった場合の各制御要素の変化を示すタイムチャートである。
図5において、実線は本実施形態によるエンジン制御を行なった場合の各制御要素の変化を示し、一点鎖線は本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合の各制御要素の変化を示す。本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合の各制御要素の変化(一点鎖線)は、本実施形態によるエンジン制御を行なった場合の各制御要素の変化と比較するために示されている。
【0079】
図5において、(a)は操作レバー(アーム操作レバー)の操作量の変化を示し、(b)は電動発電機12の出力(発電電力)の変化を示し、(c)はエンジン11に加わる油圧実負荷(アームの駆動で発生する負荷)の変化を示し、(d)はエンジン11の燃料消費量の変化を示し、(e)は過給器で発生する過給圧(ブースト圧)の変化を示し、(f)はエンジン回転数の変化を示し、(g)はエンジン出力の変化を示す。
【0080】
図5に示す例は、ショベルによる掘削動作において時刻t1でアーム操作レバーが操作されてから中立位置に戻され、その後、時刻t7で再度アーム操作レバーが操作された場合の例である。
【0081】
まず、比較のために、本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合の各制御要素の変化について説明する。なお、時刻t1から時刻t6までの動作は
図4における時刻t1から時刻t6までの動作と同じである。
【0082】
時刻t1において、掘削動作を行なうために、アーム操作レバーの操作が開始される。アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t1から時刻t2まで増大され、時刻t2においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t1からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t2においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。時刻t1においてアーム操作レバーの操作が開始されると、アーム5が動き始め、時刻t2になると、アーム操作レバーが最も傾けられた状態になる。
【0083】
アーム操作レバーが最も傾けられた状態になった時刻t2から、アーム5に加わる負荷によりメインポンプ14の吐出圧が上昇し、メインポンプ14の油圧負荷が上昇し始める。すなわち、
図5(c)に示すように、時刻t2付近から、メインポンプ14の油圧負荷は上昇し始める。メインポンプ14の油圧負荷はエンジン11への負荷に相当し、エンジン11への負荷も、メインポンプ14の油圧負荷と共に上昇する。その結果、
図5(f)の一点鎖線で示すように、エンジン11の回転数は時刻t2を過ぎたあたりから大きく低下していく。なお、油圧負荷が無いときには、エンジン11の回転数は所定回転数Ncに維持されるように制御が行なわれている。
【0084】
エンジン11への負荷が増大し、エンジン回転数が所定回転数Ncからずれたことを検出すると、エンジン11の制御が働き、エンジン11の燃料噴射量を増大させる。これにより、
図5(d)の一点鎖線で示すように、時刻t3からエンジン11の燃料消費量は上昇する。すなわち、時刻t3においてエンジン11の燃料噴射量を増やす指令が出され、これに応じてエンジン11に供給する燃料の量が増大されて燃料消費量が上昇し始める。
【0085】
時刻t3で燃料噴射量が増大されると、
図5(f)の一点鎖線で示すように、低下中であったエンジン回転数は上昇に転じる。また、エンジンへの負荷が増大すると、
図5(e)の一点鎖線で示すように、時刻t4において過給圧(ブースト圧)が上昇し始める。これにより、エンジン11の燃焼効率が高められ、エンジン11の出力を効率的に増大させることができる。
【0086】
エンジン回転数が上昇し続け、所定回転数に達すると、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持するための制御が働くが、エンジン回転数は直ちに所定回転数Ncに安定せず、所定回転数を超えても上昇し続ける。そして、時刻t5になると、エンジン回転数は低下し始め、これに伴い、燃料消費量も低下し始める。このように、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、直ちに所定回転数Ncで安定せずにオーバーシュートが発生してしまう。また、燃料消費量の変化も噴射指令に対して遅れが生じるので、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、燃料消費量は直ちに低下しない。
【0087】
時刻t5にて燃料消費量が低下し始めると、エンジン回転数の上昇も止まり、その後エンジン回転数は所定回転数Ncまで低下して安定して維持される。
【0088】
時刻t6において、オペレータは掘削動作を終了するためにアーム操作レバーを中立位置に戻し始める。すると、アーム5による油圧負荷は減少し、メインポンプ14の油圧負荷も低下する。この油圧負荷の低下に伴い、エンジン11への負荷も減少するので、燃料消費量及び過給圧も減少し始め、レバー操作量がゼロとなると、燃料消費量及び過給圧は元の値に戻る。
【0089】
図5に示す例では、アーム操作レバーが戻されてから、例えば2秒間だけ掘削動作が中断され、時刻t7において再開されている。したがって、時刻t7において、アーム操作レバーの操作が再開され、アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t7から時刻t8まで増大され、時刻t8においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t7からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t8においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。時刻t7においてアーム操作レバーの操作が開始されると、アーム5が再び動き始め、時刻t8になると、アーム操作レバーが最も傾けられた状態になる。
【0090】
アーム操作レバーが最も傾けられた状態になった時刻t8から、アーム5に加わる負荷によりメインポンプ14の吐出圧が上昇し、メインポンプ14の油圧負荷が上昇し始める。すなわち、
図5(c)に示すように、時刻t8付近から、メインポンプ14の油圧負荷は上昇し始める。メインポンプ14の油圧負荷はエンジン11への負荷に相当し、エンジン11への負荷も、メインポンプ14の油圧負荷と共に上昇する。その結果、
図5(f)の一点鎖線で示すように、エンジン11の回転数は時刻t8を過ぎたあたりから大きく低下していく。なお、油圧負荷が無いときには、エンジン11の回転数は所定回転数Ncに維持されるように制御が行なわれている。
【0091】
エンジン11への負荷が増大し、エンジン回転数が設定された回転数からずれたことを検出すると、エンジン11の制御が働き、エンジン11の燃料噴射量を増大させる。これにより、
図5(d)の一点鎖線で示すように、時刻t9からエンジン11の燃料消費量は上昇する。すなわち、時刻t9においてエンジン11の燃料噴射量を増やす指令が出され、これに応じてエンジン11に供給する燃料の量が増大されて燃料消費量が上昇し始める。
【0092】
時刻t9で燃料噴射量が増大されると、
図5(f)の一点鎖線で示すように、低下中であったエンジン回転数は上昇に転じる。また、エンジンへの負荷が増大すると、
図5(e)の一点鎖線で示すように、時刻t10において過給圧(ブースト圧)が上昇し始める。これにより、エンジン11の燃焼効率が高められ、エンジン11の出力を効率的に増大させることができる。
【0093】
エンジン回転数が上昇し続け、所定回転数に達すると、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持するための制御が働くが、エンジン回転数は直ちに所定回転数Ncに安定せず、所定回転数を超えても上昇し続ける。そして、時刻t11になると、エンジン回転数は低下し始め、これに伴い、燃料消費量も低下し始める。このように、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、直ちに所定回転数Ncで安定せずにオーバーシュートが発生してしまう。また、燃料消費量の変化も噴射指令に対して遅れが生じるので、エンジン回転数が所定回転数Ncに到達しても、燃料消費量は直ちに低下しない。
【0094】
時刻t11にて燃料消費量が低下し始めると、エンジン回転数の上昇も止まり、その後エンジン回転数は所定回転数Ncまで低下して安定して維持される。
【0095】
以上は本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合についての説明であり、本実施形態によるエンジン制御を行なう場合との比較のために説明したものである。
【0096】
次に、本実施形態によるエンジン制御を行なう場合の各制御要素の変化について、同じく
図5を参照しながら説明する。
図5において、本実施形態によるエンジン制御を行なう場合の各制御要素の変化は実線で示されている。
【0097】
オペレータのレバー操作としては上述のように、時刻t1において、掘削動作を行なうために、アーム操作レバーの操作が開始される。アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t1から時刻t2まで増大され、時刻t2においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t1からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t2においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。時刻t1においてアーム操作レバーの操作が開始されると、アーム5が動き始め、時刻t2になると、アーム操作レバーが最も傾けられた状態になる。
【0098】
ここで、本実施形態によるエンジン制御では、時刻t1においてアーム操作レバーが操作されたことを検知したら、コントローラ30は直ちに電動発電機12を発電運転させる。電動発電機12を発電運転させる時間は、例えば0.1秒程度の短時間だけでよい。電動発電機12はエンジン11の出力により駆動されて発電運転を行なうので、発電運転によりエンジン11に負荷が加わる。その結果、
図5(f)の実線で示すように、時刻t1からエンジン回転数は低下し始める。
【0099】
エンジン回転数が低下し始めると、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持しようとする制御が働き、燃料噴射量が増大されて燃料消費量が増大する。電動発電機12を発電運転させる時間は短時間であり、且つ発電量も小さく設定されるので、
図5(f)の実線で示すように、時刻t1からエンジン回転数は低下し始めるが、すぐに燃料噴射量が増大されるので、エンジン回転数はすぐに上昇に転じ、再び所定回転数Ncに戻る。
【0100】
このように、時刻t1においてエンジン11に予め負荷が加えられるので、
図5(e)の実線で示すように、アーム操作レバーが最も傾けられた状態となる時刻t2において、過給圧は直ちに上昇し始める。その後、電動発電機12の発電運転は終了され、エンジン回転数が所定回転数Ncに戻るので、増大していた燃料消費量は低減する。
【0101】
以上のように、電動発電機12を操作レバーの操作に応じて短時間だけ発電運転させてエンジン11に負荷を加えることで、油圧実負荷が上昇し始める時刻t2において過給圧の増大を開始させることができる。
【0102】
時刻t2を過ぎると油圧実負荷が上昇してエンジン11への負荷も増大する。そして、時刻t3において燃料噴射量を増大する指示が出される。すると、
図5(d)に示すように、燃料消費量は徐々に増加する。このときの燃料消費量の増加分は、油圧実負荷の増大に対応する分だけである。すなわち、エンジン回転数はすでに所定回転数Ncに維持されているので、エンジン回転数を上昇させるための燃料消費量は必要ない。また、時刻t3では、過給圧が所定値まで上昇しているため、油圧実負荷が増大しても、エンジン11の出力を効率的に増大することができ、燃料消費量の増大を抑制することができる。この効果は、
図5(d)の時刻t3から時刻t5までの間における一点鎖線(本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合)と実線(本実施形態によるエンジン制御を行なう場合)との差で示されている。
【0103】
時刻t6において、オペレータは掘削動作を中断するためにアーム操作レバーを中立位置に戻し始める。すると、アーム5による油圧負荷は減少し、メインポンプ14の油圧負荷も低下する。この油圧負荷の低下に伴い、エンジン11への負荷も減少するので、燃料消費量及び過給圧も減少し始める。
【0104】
ここで、本実施形態によるエンジン制御では、時刻t6においてアーム操作レバーが中立位置に戻される操作を検知したら、コントローラ30は直ちに電動発電機12を発電運転させる。電動発電機12を発電運転させる時間は、例えば3秒程度である。電動発電機12はエンジン11の出力により駆動されて発電運転を行なうので、発電運転によりエンジン11に負荷が加わる。その結果、
図5(f)の実線で示すように、時刻t6からエンジン回転数は低下し始める。
【0105】
しかし、エンジン11に発電運転による負荷が加わると、
図5(e)の実線で示すように、過給圧は時刻t6以降一旦低下してから再度上昇して所定の値にもどる。また、エンジン回転数の低下に伴って、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持しようとする制御が働き、燃料噴射量はもとには戻らず、ある程度の噴射量で一定に維持される。したがって、燃料消費量は、
図5(d)の実線で示すように、時刻t6から低下し始めるが、元のレベルまでは戻らず、ある程度の燃料消費量のままで一定となる。
【0106】
次に、時刻t7において、掘削動作を継続して行なうために、オペレータは再びアーム操作レバーを操作する。アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t7から時刻t8まで増大され、時刻t8においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t7からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t8においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。時刻t7においてアーム操作レバーの操作が開始されると、アーム5が動き始め、時刻t8になると、アーム操作レバーが最も傾けられた状態になる。
【0107】
したがって、時刻t8を過ぎると油圧実負荷が上昇してエンジン11への負荷も増大する。そして、時刻t9において燃料噴射量を増大する指示が出される。すると、
図5(d)の実線で示すように、燃料消費量は徐々に増加する。このときの燃料消費量の増加分は、油圧実負荷の増大に対応する分だけである。すなわち、エンジン回転数はすでに所定回転数Ncに維持されているので、エンジン回転数を上昇させるための燃料消費量は必要ない。また、時刻t9では、過給圧が所定値で維持されているため、油圧実負荷が増大しても、エンジン11の出力を効率的に増大することができ、燃料消費量の増大を抑制することができる。この効果は、
図5(d)の時刻t9から時刻t11までの間における一点鎖線(本実施形態によるエンジン制御を行なわない場合)と実線(本実施形態によるエンジン制御を行なう場合)との差で示されている。
【0108】
以上のように、本実施形態では、レバー操作が一旦なくなって油圧負荷がゼロになるような場合でも、レバー操作が無くなることを検知したら、電動発電機12を所定の時間だけ発電運転させてエンジン11に負荷を加える。これにより、過給圧の低下を抑制して所定の値にもどしておき、所定の時間内にレバー操作が再開されたときには、無駄な燃料を消費せずに、エンジン回転数を所定回転数Ncに維持したまま、エンジン出力を上昇させることができる。
【0109】
以上の制御例では、操作レバーの操作量に基づいてメインポンプ14の油圧負荷が減少してゼロになることを検出又は判断しているが、この検出又は判断は、油圧実負荷の変化、過給圧の変化、エンジン出力の変化など、若しくは、それらの組み合わせに基づいて行なっても良い。例えば、時刻t6においてアーム操作レバーが中立位置に向かって戻されると、
図5(c)に示されるように、油圧実負荷(すなわち、メインポンプ14の油圧負荷)はすぐに減少し始めるので、油圧実負荷が減少しはじめたことで、油圧負荷がゼロになることを予め判断することができる。あるいは、時刻t6においてアーム操作レバーが中立位置に向かって戻されると、
図5(e)に示されるように、エンジン11の過給圧がすぐに減少し始めるので、過給圧が減少しはじめたことで、油圧負荷がゼロになることを予め判断することができる。さらに、時刻t6においてアーム操作レバーが中立位置に向かって戻されると、
図5(g)に示されるように、油圧実負荷に対応してエンジン出力がすぐに減少し始めるので、エンジン出力が減少しはじめたことで、油圧負荷がゼロになることを予め判断することができる。
【0110】
なお、本実施形態では、時刻t6から電動発電機12を発電運転させる時間を予め3秒程度に設定したが、電動発電機12の発電運転は、時刻t7で再びアーム操作レバーが操作されるまで継続しておけばよい。発電運転する時間は任意の時間に設定することができるが、発電運転で発電した電力は蓄電系120のキャパシタ19に充電されるので、キャパシタの充電率(SOC)が上限値を越えない範囲で設定する必要がある。すなわち、時刻t7から電動発電機12を発電運転する時間は、キャパシタ19の充電率(SOC)が上限値になるまでの時間とする必要がある。
【0111】
このように、電動発電機12の発電負荷を増大させるのは、通常、キャパシタ19の充電率が低下したときであるが、本実施形態では、電気負荷に基づく電動発電機12への発電要求の有無にかかわらず、電気負荷に基づく発電要求が無いときでも、電動発電機12の発電負荷を増大させてエンジン11の駆動を制御する。これにより、エンジン11の過給圧が所定の値よりも低くなることを防止することができる。
【0112】
なお、上述の実施形態では旋回機構2が電動式であったが、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合がある。
図6は
図2に示すハイブリッド式ショベルの旋回機構を油圧駆動式とした場合の駆動系の構成を示すブロック図である。
図6に示すハイブリッド型油圧ショベルでは、旋回用電動機21の代わりに、旋回油圧モータ2Aがコントロールバルブ17に接続され、旋回機構2は旋回油圧モータ2Aにより駆動される。このような、ハイブリッド式ショベルであっても、上述の実施形態のようにして、電動発電機12を発電運転させてエンジン11に負荷を加えることで、エンジン回転数の落ち込みを抑制し、燃料消費量の増大を抑制することができる。
【0113】
また、上述の実施形態では、エンジン11と電動発電機12とを油圧ポンプであるメインポンプ14に接続してメインポンプ14を駆動する、いわゆるハイブリッド式ショベルに本発明を適用した例について説明した。本発明は、ハイブリッド式ではなく、
図7に示すようにエンジン11でメインポンプ14を駆動するショベルにも適用することもできる。この場合、電動発電機12が無いので、エンジン11に負荷を加えるための発電機200を設けておく。発電機200が発電運転を行なって得られた電力は、電圧レギュレータやインバータ等の発電機用の駆動制御部210を介して電気負荷としての蓄電系220に供給され、蓄積される。蓄電系220は、例えばエアコン等の電装品を駆動するために設けられているものでよい。
【0114】
以上の構成において、発電機200は上述の実施形態における電動発電機12の役目を果たす。すなわち、操作レバーの操作が検知されたら、発電機200を発電運転させることで、エンジン11に負荷を加えることができる。これにより、エンジン回転数の落ち込みを抑制し、燃料消費量の増大を抑制することができる。
【0115】
本明細書ではショベルの実施形態により本発明を説明したが、本発明は具体的に開示された上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形例及び改良例がなされるであろう。
【0116】
本出願は、2011年6月9日出願の優先権主張日本国特許出願第2011−129504号に基づくものであり、その全内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、エンジンにより駆動される油圧ポンプが発生した油圧を油圧作業要素に供給して作業を行なうショベルに適用可能である。
【0118】
(付記1)
内燃機関と、
該内燃機関に連結された油圧ポンプと、
前記内燃機関に連結された発電機と、
該発電機を制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、前記油圧ポンプの油圧負荷が増大する前に、前記発電機の発電負荷を増大させることを特徴とするショベル。
(付記2)
付記1記載のショベルであって、
前記発電機で発電された電力が供給される電気負荷を有し、
前記制御部は、該電気負荷の要求に基づいた発電要求の有無にかかわらず、前記発電機の発電負荷を増大させることを特徴とするショベル。
(付記3)
付記1又は2記載のショベルであって、
前記制御部は、前記発電機の発電負荷を増大して前記内燃機関への負荷を増大させることにより、前記内燃機関の過給器による過給圧を上昇させるか、あるいは、所定値以上の値に維持することを特徴とするショベル。
(付記4)
付記1又は2記載のショベルであって、
前記制御部は、前記ショベルでの作業中において、前記油圧ポンプへの油圧負荷が加わっている状態から前記油圧ポンプの油圧負荷が低減すると、前記発電機を駆動させることにより前記内燃機関に負荷を与えることを特徴とするショベル。
(付記5)
付記4記載のショベルであって、
前記制御部は、前記油圧ポンプへの油圧負荷の低減を検出してから所定値を超えてから所定時間経過すると、前記発電機を駆動させることにより前記内燃機関に与える負荷を低減するか、又は前記内燃機関に負荷を与えることを中止することを特徴とするショベル。
(付記6)
付記4記載のショベルであって、
前記制御部は、前記油圧ポンプへの油圧負荷の変動を、油圧作業要素を駆動するための操作レバーの操作量、前記油圧ポンプの吐出圧、前記内燃機関の過給圧、及び前記内燃機関の出力のうち少なくともいずれか一つに基づいて検出することを特徴とするショベル。
(付記7)
付記3記載のショベルであって、
前記制御部は、油圧作業要素を駆動するための操作レバーが操作されると、前記発電機を駆動させることにより前記内燃機関に負荷を与え、前記過給器により発生する過給圧を上昇させることを特徴とするショベル。
(付記8)
付記7記載のショベルであって、
前記制御部は、前記操作レバーの操作量が所定値を超えてから所定時間経過すると、前記発電機を駆動させることにより前記内燃機関に与える負荷を低減するか、又は前記内燃機関に負荷を与えることを中止することを特徴とするショベル。
(付記9)
付記1又は2記載のショベルであって、
前記発電機を駆動することにより得られた電力を蓄積する蓄電部を更に有することを特徴とするショベル。
(付記10)
内燃機関に連結された油圧ポンプの油圧負荷の変動を判断し、
前記油圧ポンプの油圧負荷が増大する前に、前記内燃機関に連結された発電機の発電負荷を増大させる
ことを特徴とするショベルの制御方法。
(付記11)
付記10記載のショベルの制御方法であって、
前記発電機で発電された電力が供給される電気負荷に基づいた発電要求の有無にかかわらず、前記内燃機関に連結された発電機の発電負荷を増大させる
ことを特徴とするショベルの制御方法。
(付記12)
付記10又は11記載のショベルの制御方法であって、
前記発電機の発電負荷を増大して前記内燃機関への負荷を増大させることにより、前記内燃機関の過給器による過給圧を上昇させるか、あるいは、所定値以上の値に維持することを特徴とするショベルの制御方法。
(付記13)
付記10又は11記載のショベルの制御方法であって、
前記油圧ポンプへの油圧負荷が加わっている状態から前記油圧ポンプの油圧負荷が低減すると、前記発電機を駆動させることにより前記内燃機関に負荷を与えることを特徴とするショベルの制御方法。
(付記14)
付記13記載のショベルの制御方法であって、
前記油圧ポンプへの油圧負荷の低減を検出してから所定値を超えてから所定時間経過すると、前記発電機を駆動させることにより前記内燃機関に与える負荷を低減するか、又は前記内燃機関に負荷を与えることを中止することを特徴とするショベルの制御方法。
(付記15)
付記13記載のショベルの制御方法であって、
油圧作業要素を駆動するための操作レバーが操作されると、前記発電機を駆動させることにより前記内燃機関に負荷を与え、前記過給器により発生する過給圧を上昇させることを特徴とするショベルの制御方法。