特許第6325040号(P6325040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325040
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/03 20060101AFI20180507BHJP
   B60R 22/18 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   B60R22/03
   B60R22/18
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-167091(P2016-167091)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-34545(P2018-34545A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直弥
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 拓宏
(72)【発明者】
【氏名】秦 靖徳
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真
(72)【発明者】
【氏名】村▲崎▼ 竜博
(72)【発明者】
【氏名】綿田 侑祐
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−054360(JP,A)
【文献】 特開2007−040468(JP,A)
【文献】 特開2009−150465(JP,A)
【文献】 特開2012−131360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/03
B60R 22/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルト装置に設けられ、移動される移動体と、
前記移動体の移動を停止させる停止体と、
突出部が前記移動体移動方向において突出されて設けられると共に、前記移動体移動垂直方向において前記突出部が偏在され、前記移動体が前記突出部を介して前記停止体に干渉して前記移動体への衝撃を吸収する吸収体と、
前記吸収体の前記突出部突出方向周りの周面と互いに反対側から接触可能にされる一対の接触壁が設けられ、前記吸収体の前記突出部設置部分の前記突出部設置側端面と一対の前記接触壁の前記突出部突出方向周りにおける間において接触不能にされる接触体と、
を備えた移動装置。
【請求項2】
前記突出部の突出方向に垂直な断面積が前記突出部の突出方向に向かうに従い小さくされる請求項1記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が移動される移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のバックル移動装置では、アンカスライダがレールに案内されて移動される。さらに、アンカスライダがダンパを介してスクリューブラケットに干渉して、アンカスライダの移動をスクリューブラケットが停止させると共に、ダンパがアンカスライダへの衝撃(アンカスライダの運動エネルギー)を吸収する。
【0003】
ここで、このようなバックル移動装置では、ダンパがエネルギーを効果的に吸収できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−131360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、吸収体がエネルギーを効果的に吸収できる移動装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の移動装置は前記吸収体と接触され、前記吸収体の前記突出部設置部分と接触されない接触体を備えている。
【0007】
請求項2に記載の移動装置は、請求項1に記載の移動装置において、前記突出部の突出方向に垂直な断面積が前記突出部の突出方向に向かうに従い小さくされる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の移動装置では、シートベルト装置に移動体が設けられており、移動体が移動される。
【0012】
ここで、吸収体に突出部が突出されて設けられており、移動体が突出部を介して停止体に干渉されて、移動体の移動を停止体が停止させると共に、吸収体が移動体への衝撃を吸収する。このため、移動体への衝撃の吸収体による吸収量を突出部によって増加でき、吸収体が移動体への衝撃を効果的に吸収できる。
【0013】
請求項2に記載の移動装置では、突出部の突出方向に垂直な断面積が突出部の突出方向に向かうに従い小さくされる。このため、移動体への衝撃の吸収体による吸収量を突出部によって徐々に増加できる。
【0014】
請求項1に記載の移動装置では、接触体が吸収体と接触される。
【0015】
ここで、接触体が吸収体の突出部設置部分と接触されない。このため、吸収体が移動体への衝撃の突出部設置部分による吸収を接触体によって制限されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置を示す前斜め左方から見た分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置を示す左方から見た断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置の主要部を示す後斜め右方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置の主要部を示す後斜め左方から見た斜視図である。
図5】(A)は、本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置の主要部内を示す後斜め左方から見た斜視図であり、(B)は、本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置のダンパ及びレールを示す後方から見た断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置におけるハウジングへのダンパの組付け状況を示す後斜め左方から見た斜視図である。
図7】(A)〜(C)は、本発明の実施形態に係るリフトアップバックル装置におけるスライダ及びシューを示す上方から見た平面図であり、(A)は、スライダとシューとの組付け前を示し、(B)は、スライダとシューとの組付け状況を示し、(C)は、スライダとシューとの組付け状態を示している。
図8】(A)及び(B)は、本発明の実施形態の変形例に係るリフトアップバックル装置におけるハウジング及びレールを示す後方から見た正面図であり、(A)は、ハウジングへのレールの組付け状況を示し、(B)は、ハウジングへのレールの組付け状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の実施形態に係る移動装置としてのリフトアップバックル装置10が前斜め左方から見た分解斜視図にて示されており、図2には、リフトアップバックル装置10が左方から見た断面図にて示されている。なお、図面では、リフトアップバックル装置10の前方を矢印FRで示し、リフトアップバックル装置10の右方を矢印RHで示し、リフトアップバックル装置10の上方を矢印UPで示している。
【0021】
本実施形態に係るリフトアップバックル装置10は、車両(自動車)のシートベルト装置12を構成しており、シートベルト装置12は、車室内のシート(図示省略)に適用されている。シートには、着座センサ(図示省略)が設けられており、着座センサは、シートに乗員が着座したことを検出すると共に、制御装置(図示省略)に電気的に接続されている。
【0022】
シートベルト装置12は、巻取装置(図示省略)を備えており、巻取装置は、シート後部の車幅方向外側かつ下側に固定されている。巻取装置には、長尺帯状のウェビング(シートベルト、図示省略)が基端側から巻取られており、ウェビングは、巻取装置から引出されている。ウェビングは、巻取装置より先端側において、スルーアンカ(図示省略)に移動可能に貫通されており、スルーアンカは、シート後部の車幅方向外側かつ上側に支持されている。ウェビングの先端は、アンカ(図示省略)に固定されており、アンカは、シート後部の車幅方向外側かつ下側に固定されている。また、ウェビングは、スルーアンカとアンカとの間において、タング(図示省略)に移動可能に貫通されている。
【0023】
リフトアップバックル装置10は、シートの車幅方向内側かつ下側に固定されており、リフトアップバックル装置10の前方、右方及び上方は、それぞれ車両の前方、右方及び上方に向けられている。
【0024】
図1及び図2に示す如く、リフトアップバックル装置10の前端部には、駆動手段としてのモータ14が設けられており、モータ14の出力軸14Aは、後方に突出されている。モータ14は、上記制御装置に電気的に接続されており、モータ14が制御装置の制御により正駆動及び逆駆動されることで、それぞれ出力軸14Aが一方向及び他方向に回転される。
【0025】
モータ14の前側には、停止体としての金属製のハウジング16(図3及び図4参照)が配置されており、ハウジング16には、モータ14が組付けられている。ハウジング16の前側部分には、円筒状の支持筒16Aが設けられており、支持筒16A内には、モータ14の出力軸14Aが同軸上に挿入されている。
【0026】
ハウジング16の後端部には、停止部としての略直方体状の停止ブロック16Bが設けられており、停止ブロック16Bの中央部には、円状の挿通孔18が貫通形成されている。挿通孔18は、支持筒16A内に同軸上に連通されており、挿通孔18の径寸法は、支持筒16A内の径寸法に比し小さくされている。停止ブロック16Bの上部及び下部には、組付孔20(図6参照)が形成されており、組付孔20は、停止ブロック16Bの左右方向全体において、左右方向に延伸されている。組付孔20の基端側部分(後側部分)は、後側に開放されており、組付孔20の先端側部分(前側部分)は、上方及び下方の少なくとも一方に突出されている。
【0027】
ハウジング16の後側には、吸収体としての略矩形板状のダンパ22(図3及び図4参照)が配置されており、ダンパ22は、ゴム製にされて、弾性を有している。ダンパ22の前面の上部及び下部には、組付突起22A(図6参照)が一体に設けられており、組付突起22Aは、ダンパ22の左右方向全体において、左右方向に延伸されている。組付突起22Aの基端側部分(後側部分)は、前側に突出されており、組付突起22Aの先端側部分(前側部分)は、上方及び下方の少なくとも一方に突出されている。組付突起22Aは、ハウジング16の停止ブロック16Bの組付孔20に左側又は右側から嵌入されており、これにより、ダンパ22の停止ブロック16Bに対する上下方向及び前後方向への移動が制限されている(ダンパ22の停止ブロック16Bに対する前後方向への僅かな移動は許容されている)。ダンパ22の中央部には、円状の貫通孔24が貫通形成されており、貫通孔24は、停止ブロック16Bの挿通孔18に同軸上に連通されている。ダンパ22の後面の下部には、四角錐状の突出部22Bが一体に設けられており、突出部22Bは、後方に突出されて、前後方向に垂直な断面が後方へ向かうに従い小さくされている。
【0028】
ハウジング16の支持筒16A内、挿通孔18及びダンパ22の貫通孔24には、駆動部材としての金属製で略円柱状のドライブスクリュ26が同軸上に挿入されており、ドライブスクリュ26は、ダンパ22から後方に延出されている。ドライブスクリュ26の前端近傍は、円筒状のベアリング28内に回転可能に嵌合されており、ベアリング28は、支持筒16A内に固定されている(図5(A)参照)。ドライブスクリュ26の基端には、モータ14の出力軸14Aが連結されており、ドライブスクリュ26は、出力軸14Aと一体回転される。また、ドライブスクリュ26の外周には、前端部及び後端部を除き、雄螺子が形成されている。
【0029】
ハウジング16の後側には、接触体を構成する案内体としての金属製のレール30(図3及び図4参照)が配置されており、レール30の前端には、接触壁としての長尺略矩形板状の組付板30Aが一対設けられている。組付板30Aは、ハウジング16の停止ブロック16Bの左側と右側とに配置されており、停止ブロック16B及び一対の組付板30Aに上端部及び下端部においてボルト32が左右方向へ貫通されると共に、ボルト32にナット34が螺合されて、ボルト32の頭部とナット34との間に停止ブロック16B及び一対の組付板30Aが挟持されることで、停止ブロック16Bにレール30が組付けられている。一対の組付板30A間には、ダンパ22が配置されており、一対の組付板30Aは、ダンパ22の左右方向への移動を制限している(図5(B)参照)。一対の組付板30Aは、ダンパ22の左右方向への僅かな移動を許容しており、一対の組付板30Aは、ダンパ22が接触可能にされている。
【0030】
一対の組付板30Aの後側には、案内部としての断面U字形長尺板状のレール部30Bが設けられており、レール部30B内は、下側に開放されている。レール部30Bの左壁及び右壁は、それぞれ組付板30Aと一体にされており、レール部30Bの接触壁としての上壁は、組付板30Aの上端より下側に配置されている。レール部30B内には、ドライブスクリュ26が収容されており、レール部30Bは、ドライブスクリュ26と平行に配置されている。レール部30Bの上壁とハウジング16の停止ブロック16Bの後面との間には、ダンパ22が配置されており、レール部30Bの上壁及び停止ブロック16Bの後面は、ダンパ22の前後方向への僅かな移動を許容して、ダンパ22が接触可能にされている。
【0031】
レール部30Bの下側には、接触体を構成する追加部材としての樹脂製で長尺略矩形板状のレールカバー36が固定されており、レールカバー36は、レール部30B内を下側から被覆している。レールカバー36は、ダンパ22の下側を被覆しており、レールカバー36は、ダンパ22から下側に離間されて、ダンパ22が接触不能にされている。
【0032】
レール部30B内には、移動体を構成する移動部材としての金属製のスライダ38(図3参照)が配置されており、スライダ38の上側部分には、略円筒状の係合部38Aが設けられている。係合部38Aの内周面には、雌螺子が形成されており、係合部38Aは、内部にドライブスクリュ26が同軸上に挿通されて、雌螺子がドライブスクリュ26の雄螺子に螺合されている。係合部38Aの後側部分には、略直方体状の固定部38Bが一体に設けられており、固定部38Bは、係合部38Aから下側に突出されている。
【0033】
スライダ38の周囲には、移動体を構成する周囲部材としての樹脂製のシュー40(図3参照)が設けられており、シュー40の下側部分には、略直方体形箱状の収容箱40Aが設けられている。収容箱40A内は、上側及び後側に開放されており、収容箱40A内には、スライダ38における係合部38Aの下側部分及び固定部38Bが収容されている。収容箱40Aの上側には、断面逆U字形板状の収容枠40Bが一体に設けられており、収容枠40B内には、係合部38Aの上側部分が収容かつ嵌合されている。
【0034】
収容箱40Aの左壁及び右壁の前側部分には、当接爪40Cが形成されており、当接爪40Cは、前側に延出されている。当接爪40Cの先端部(前端部)は、シュー40の左右方向外側に突出されており、左側及び右側の当接爪40Cの先端部は、それぞれレール30のレール部30Bの左壁及び右壁に当接されている。これにより、シュー40の左右方向への移動が制限されて、シュー40及びスライダ38のレール部30Bに対するドライブスクリュ26周りの回転が制限されており、ドライブスクリュ26が回転されることで、シュー40及びスライダ38がレール部30Bに案内されつつ一体に前後方向に移動される。
【0035】
収容箱40Aの後側部分には、二対の組付爪40Dが形成されている。各対の組付爪40Dの一方は、収容箱40Aの左壁に配置されると共に、各対の組付爪40Dの他方は、収容箱40Aの右壁に配置されており、各対の組付爪40Dは、左右方向において対向されると共に、二対の組付爪40Dは、上下方向に並べられている。組付爪40Dは、後側に延出されており、組付爪40Dの先端部(後端部)は、シュー40の左右方向内側に突出されている。組付爪40Dの先端部は、スライダ38の固定部38Bの後側に配置されており、スライダ38が後側に移動されて、組付爪40Dの先端部に固定部38Bが係合されることで、上述の如くシュー40がスライダ38と一体に後側に移動される。例えば組付爪40Dの先端部が固定部38Bによって後側に押圧されて、組付爪40Dがシュー40の左右方向外側に弾性変形された際には、左側及び右側の組付爪40Dがそれぞれレール30のレール部30Bの左壁及び右壁に当接されることで、組付爪40D先端部の固定部38Bの後側への配置が維持される(図7(C)参照)。
【0036】
スライダ38の固定部38Bには、連結部材としての一対のワイヤ42の基端部(前側端部)が貫通されており、一対のワイヤ42は、基端部が固定部38Bのかしめ等によって固定部38Bに固定されて、スライダ38と一体に移動可能にされている。一対のワイヤ42には、固定部38Bの前側において、ピース44が固定されており、ピース44は、シュー40の収容箱40A内に収容されている。ピース44の前側には、収容箱40Aの前壁が配置されており、ピース44がスライダ38と一体に前側に移動されて、ピース44が収容箱40Aの前壁に当接されることで、上述の如くシュー40がスライダ38と一体に前側に移動される。
【0037】
レール30のレール部30Bの後端には、案内部材としての金属製でブロック状のワイヤガイド46が固定されており、ワイヤガイド46は、側面視略扇形状にされている。ワイヤガイド46の下部の前端には、軸支孔48が形成されており、軸支孔48には、ドライブスクリュ26の後端部が回転可能に支持されている。ワイヤガイド46には、ガイド溝50が形成されており、ガイド溝50は、左側に開放されている。ガイド溝50は、側面視で湾曲されており、ガイド溝50の下端部は、前側に開放されると共に、ガイド溝50の上端部は、上側へ向かうに従い前側へ向かう方向に開放されている。ガイド溝50には、一対のワイヤ42が挿通されており、一対のワイヤ42のワイヤガイド46より基端側部分は、前後方向に延伸されると共に、一対のワイヤ42のワイヤガイド46より先端側部分は、上側へ向かうに従い前側へ向かう方向に延出されている。ワイヤガイド46の左側には、金属製で板状のカバープレート52が固定されており、カバープレート52は、ガイド溝50の左側を閉鎖している。
【0038】
ワイヤガイド46の上部には、例えばゴム製で筒状のロアカバー54の基端部が取付けられており、ロアカバー54は、上側へ向かうに従い前側へ向かう方向に延伸されている。ロアカバー54内は、ワイヤガイド46のガイド溝50の上端部に連通されており、ロアカバー54内には、一対のワイヤ42が挿通されている。
【0039】
ロアカバー54の先端側(上側かつ前側)は、例えば樹脂製で筒状のバックルカバー56内に挿入されており、バックルカバー56は、ロアカバー54に比し硬質にされている。バックルカバー56は、ロアカバー54に沿ってスライド可能にされており、バックルカバー56内には、一対のワイヤ42が挿入されている。
【0040】
バックルカバー56内には、連動体としてのバックル58が固定されており、バックル58には、一対のワイヤ42の先端部(後側端部)が連結されている。バックルカバー56は、バックル58を先端側(上側かつ前側)に露出させており、バックル58には、上記タングが着脱可能にされている。バックル58には、バックルスイッチ(図示省略)が設けられており、バックルスイッチは、バックル58にタングが装着されたことを検出すると共に、上記制御装置に電気的に接続されている。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0042】
以上の構成のリフトアップバックル装置10では、シートに乗員が着座しない際(シートに乗員が着座したことを着座センサが検出しない際)に、スライダ38及びシュー40がドライブスクリュ26及びレール30の前部に配置されて、バックルカバー56及びバックル58が下側かつ後側の格納位置に配置される。
【0043】
シートに乗員が着座した際(シートに乗員が着座したことを着座センサが検出した際)には、制御装置の制御により、モータ14が正駆動されて、出力軸14A及びドライブスクリュ26が一方向に回転されることで、スライダ38及びシュー40がレール30のレール部30Bに案内されつつ後側に移動される。このため、スライダ38と一体に一対のワイヤ42が先端側に移動されることで、バックルカバー56及びバックル58が上側かつ前側に移動されて上昇位置に配置される。さらに、巻取装置からウェビングが引出されて、バックル58にウェビングのタングが装着される。また、上昇位置に配置されたバックル58にタングが装着されるため、バックル58にタングを容易に装着できる。
【0044】
バックル58にタングが装着された際(バックル58にタングが装着されたことをバックルスイッチが検出した際)には、制御装置の制御により、モータ14が逆駆動されて、出力軸14A及びドライブスクリュ26が他方向に回転されることで、スライダ38及びシュー40がレール30のレール部30Bに案内されつつ前側に移動される。このため、スライダ38と一体に一対のワイヤ42が基端側に移動されることで、バックルカバー56及びバックル58が下側かつ後側に移動されて格納位置に配置される。これにより、バックル58と共にタングが下側かつ後側に移動されることで、乗員にウェビングが装着される。
【0045】
ここで、上述の如く、スライダ38及びシュー40(一対のワイヤ42の基端部及びピース44を含む)が前側に移動される際には、シュー40の収容箱40Aの前面が、ダンパ22下部の突出部22Bに衝突して、ダンパ22の下部を介してハウジング16の停止ブロック16Bに干渉することで、スライダ38及びシュー40の前側への移動が停止されると共に、ダンパ22がスライダ38及びシュー40への衝撃(スライダ38及びシュー40の運動エネルギー)を吸収する。このため、ダンパ22に突出部22Bが設けられていない場合に比し、スライダ38及びシュー40によるダンパ22の変形量を突出部22Bによって増加できて、スライダ38及びシュー40への衝撃のダンパ22による吸収量を突出部22Bによって増加でき、ダンパ22がスライダ38及びシュー40への衝撃を効果的に吸収できる。これにより、スライダ38及びシュー40の前側への移動が停止される際にドライブスクリュ26の雄螺子とスライダ38(係合部38A)の雌螺子とが固着することを抑制でき、次にスライダ38及びシュー40が後側に移動される際にスライダ38及びシュー40が良好に後側に移動できる。
【0046】
さらに、突出部22Bの前後方向(突出方向)に垂直な断面積が後方(突出部22Bの突出方向、シュー40側)に向かうに従い小さくされる。このため、スライダ38及びシュー40の前側への移動が停止される際に、スライダ38及びシュー40への衝撃のダンパ22による吸収量を突出部22Bによって徐々に増加できて、スライダ38及びシュー40の前側への移動を緩やかに停止できる。これにより、バックルカバー56及びバックル58を緩やかに格納位置に停止できて、バックルカバー56及びバックル58の格納位置への停止動作に高級感を演出できる。
【0047】
しかも、レール30の下側のレールカバー36がダンパ22の下部(突出部22B設置部分)から下側に離間されて、レールカバー36にダンパ22の下部が接触不能にされている。このため、ダンパ22の下部がスライダ38及びシュー40への衝撃を吸収する際に、ダンパ22の下部の変形をレールカバー36が制限することを抑制でき、スライダ38及びシュー40への衝撃のダンパ22下部による吸収をレールカバー36が制限することを抑制できる。
【0048】
また、レール30におけるレール部30Bの上壁及び一対の組付板30Aにダンパ22が接触可能にされている。このため、モータ14が駆動される際に、モータ14の振動がハウジング16を介してレール30に伝達されても、ダンパ22がレール30の振動(振動エネルギー)を吸収する。このため、レール30の振動音を低減でき、リフトアップバックル装置10の作動音を低減できる。しかも、スライダ38及びシュー40への衝撃を吸収するダンパ22によってレール30の振動音を低減できるため、レール30の振動音を低減するための部品を別途設ける必要がなく、部品点数を低減できて、コストを低減できる。
【0049】
さらに、上述の如く、ダンパ22がレール30におけるレール部30Bの上壁とレール部30Bの左壁及び右壁のそれぞれと一体の組付板30Aとに接触可能にされている。このため、ダンパ22がレール30の振動を効果的に吸収でき、レール30の振動音を効果的に低減できる。
【0050】
また、ダンパ22が組付けられる際には、ダンパ22の組付突起22Aがハウジング16の停止ブロック16Bの組付孔20に左側又は右側(停止ブロック16Bの挿通孔18の径方向外側)から嵌入されて、ダンパ22の停止ブロック16Bに対する上下方向及び前後方向への移動が制限された後に、停止ブロック16Bにレール30が組付けられて、レール30の一対の組付板30Aによってダンパ22の左右方向への移動が制限される。このため、ダンパ22の停止ブロック16Bとレール30との間からの脱落を制限できて、ダンパ22を容易に組付けることができる。しかも、ダンパ22を組付けるための部品を別途設ける必要がなく、部品点数を低減できて、コストを低減できる。
【0051】
さらに、ダンパ22が、一対の組付板30A間で挟持されないと共に、停止ブロック16Bとレール30の上壁との間で挟持されない。このため、ダンパ22にレール30及び停止ブロック16Bから応力が作用することを抑制でき、ダンパ22がスライダ38及びシュー40への衝撃を吸収する精度を向上できる。
【0052】
また、図7の(A)及び(B)に示す如く、スライダ38がシュー40に組付けられる際には、スライダ38及びシュー40がレール30のレール部30B内に配置されない状態で、シュー40の各組付爪40Dがシュー40の左右方向外側に弾性変形されて、各対の組付爪40D間に後側からスライダ38が挿入されることで、各組付爪40Dがシュー40の左右方向内側に弾性復元されて、各組付爪40Dの先端部がスライダ38の固定部38Bの後側に配置される。
【0053】
ここで、図7(C)に示す如く、スライダ38及びシュー40がレール部30B内に配置された状態では、組付爪40Dがシュー40の左右方向外側に弾性変形されても、左側及び右側の組付爪40Dがそれぞれレール部30Bの左壁及び右壁に当接されることで、組付爪40D先端部の固定部38Bの後側への配置が維持される。このため、組付爪40Dの前後方向寸法(後側への延出寸法)を大きくしても、組付爪40Dの先端部が固定部38Bの後側への相対移動を制限できて、スライダ38のシュー40からの後側への離脱を制限できる。しかも、組付爪40Dの前後方向寸法を大きくできるため、組付爪40Dをシュー40の左右方向外側に容易に弾性変形させることができ、各対の組付爪40D間に後側からスライダ38を容易に挿入できて、スライダ38をシュー40に容易に組付けることができると共に、スライダ38のシュー40への組付工数を低減できる。
【0054】
なお、本実施形態では、レール30において、レール部30Bの上壁を一対の組付板30Aの上端の下側かつ一対の組付板30Aの後側に配置した。しかしながら、図8(B)に示す如く、レール30において、レール部30Bの上壁を、一対の組付板30Aの上端の上下方向位置に配置すると共に、前方に延伸させて、一対の組付板30Aの上端と一体にしてもよい。この場合、図8(A)に示す如く、レール30がハウジング16の停止ブロック16Bに組付けられる前に、レール30が一対の組付板30Aを下側へ向かうに従いレール30の左右方向外側へ向かう方向へ傾斜された形状にされてもよい。これにより、レール30が停止ブロック16Bに組付けられる際には、レール部30Bの上壁が停止ブロック16Bの上面から上側に離間されることを抑制できる。しかも、図8(B)に示す如く、レール30が停止ブロック16Bに組付けられた際には、ボルト32の頭部とナット34との間に停止ブロック16B及び一対の組付板30Aが挟持されて、レール部30Bの上壁に対し一対の組付板30Aがレール30の左右方向内側に傾動されることで、一対の組付板30Aをそれぞれ停止ブロック16Bの左面及び右面に当接させることができる。したがって、レール30を停止ブロック16Bに容易に組付けることができる。
【0055】
また、本実施形態では、レール30におけるレール部30Bの上壁及び一対の組付板30Aにダンパ22が接触可能にされる。しかしながら、レール30におけるレール部30Bの上壁及び一対の組付板30Aの少なくとも1つにダンパ22が常に接触されてもよい。
【0056】
さらに、本実施形態において、例えばダンパ22の下部(突出部22B設置部分)の左端部及び右端部の少なくとも一方に切欠きが形成されることで、ダンパ22の下部がレール30の一対の組付板30Aの少なくとも一方に接触不能にされてもよい。これにより、ダンパ22の下部がスライダ38及びシュー40への衝撃を吸収する際に、ダンパ22の下部の変形を一対の組付板30Aの少なくとも一方が制限することを抑制でき、スライダ38及びシュー40への衝撃のダンパ22下部による吸収を一対の組付板30Aの少なくとも一方が制限することを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、突出部22Bの前後方向(突出方向)に垂直な断面積を後方(突出方向)に向かうに従い小さくした。しかしながら、突出部22Bの前後方向に垂直な断面積は、前後方向において種々の態様で変化させてもよい。これにより、スライダ38及びシュー40の前側への移動の停止速度を種々の態様に調整できて、バックルカバー56及びバックル58の格納位置への停止速度を種々の態様に調整できる。
【0058】
さらに、本実施形態では、ハウジング16にダンパ22(突出部22Bを含む)を設けた。しかしながら、シュー40にダンパ22(突出部22Bを含む)を設けてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、スライダ38及びシュー40(移動体)が移動されることで、バックル58が移動される。しかしながら、移動体が移動されることで、巻取装置、ウェビング、スルーアンカ、アンカ又はタングが移動されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 リフトアップバックル装置(移動装置)
12 シートベルト装置
16 ハウジング(停止体)
22 ダンパ(吸収体)
22B 突出部
30 レール(接触体、案内体)
30A 組付板(接触壁)
36 レールカバー(接触体)
38 スライダ(移動体)
40 シュー(移動体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8