(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325045
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強体を取付ける構造
(51)【国際特許分類】
B60B 7/01 20060101AFI20180507BHJP
B60C 13/04 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
B60B7/01 C
B60C13/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-187764(P2016-187764)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-52184(P2018-52184A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509312868
【氏名又は名称】株式会社 東港タイヤサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悦久
(72)【発明者】
【氏名】田中 英幸
(72)【発明者】
【氏名】寺島 一稀
(72)【発明者】
【氏名】三輪 光政
(72)【発明者】
【氏名】山之内 一彦
(72)【発明者】
【氏名】荻谷 由幸
【審査官】
田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭57−007522(JP,Y2)
【文献】
英国特許出願公開第02319754(GB,A)
【文献】
実開昭54−089740(JP,U)
【文献】
特開平08−058318(JP,A)
【文献】
特開昭49−072805(JP,A)
【文献】
特開平01−160711(JP,A)
【文献】
特開2003−285728(JP,A)
【文献】
特開2010−188779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 7/01
B60C 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強ゴム板、補強鋼板、補強樹脂材でなる補強体を取付ける構造であって、
前記補強体の被固定手段は、前記補強体に設けた磁性材、又は金属材とし、
前記被固定手段が磁着される固定手段は、前記タイヤの車外側サイドウォール、又は前記大型車輌の車外側ホイールに取付け、かつ基端が前記タイヤのタイヤホイールのリムに開設した複数個の孔に係止され、自由端が前記タイヤのサイドウォールに到る金属材を少なくとも一部に備えた複数本のフレーム、又は複数本のスポーク、及び前記自由端に取付けられる金属材、又は磁性材のリムリング、又は面部の何れかでなる固定部材とでなり、
前記被固定手段を、前記固定手段に磁着し、前記車外側サイドウォール、又は前記大型車輌の車外側ホイールに、前記補強体を付設する構成とした工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強体を取付ける構造。
【請求項2】
前記被固定手段は、前記補強体に設けたゴム磁石、又は金属磁石とする構成とした請求項1に記載の工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強体を取付ける構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強体を取付ける構造に関する。特に、本発明は、工事用の大型車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、採石場、鉱山、トンネル工事現場等で作業する車輌のタイヤのサイドウォールは、路面の砕石や突起物との接触で破損する場合(サイドカット)が多い(特にラジアルタイヤ)。そこで、タイヤメーカーは、サイドカット防止のため、サイド部のゴムを厚くするか、又は、ゴムから成るサイドプロテクターや、スチールコード層を設けてタイヤのサイドウォールの保護をしてきた。
【0003】
また、近年では、トレッド部とショルダー部の外表面の角度、ショルダー部とサイドウォール部の外表面の角度を工夫する技術が開示されている(例えば、特開2011−
111003号公報)。しかしながら、まだサイドカットを確実に防ぐことはできないので、例えば、タイヤ販売業者が低コストで行うことのできるサイドウォール部強化技術が要望される処である。
【0004】
上記に鑑み、本発明は、保護用ゴム、或いは保護用鋼板でサイドウォール部全体を外側から覆う、また、鋼板を用いる場合は、サイドウォール部の内側にゴム磁石を貼り付け、外側鋼板を強固に保持する。或いは、図示しないが、鋼板の代わりに、軽量で高強度の樹脂とアルミの接合素材を使うことも考慮する。
【0005】
先行技術文献調査を行った結果、ゴム或いは鋼板(鋼線)でサイドウォール部を外側から覆う発明は、タイヤメーカーによって昭和49年と平成1年に開示されている。文献(1)は、特開平08−058318号公報(不整地走行用空気入りタイヤ)であり、サイドプロテクター内部に鋼板、若しくは太い鋼線からなる保護層を設ける。文献(2)は、特開昭49−072805号公報(サイドプロテクタ付空気タイヤ)であり、ゴム状材質の保護層を設ける。さらに、文献(3)は、特開平01−160711号公報(荒地走行用タイヤ)であり、金属板の保護層を設ける。文献(4)は、特開2003−285728号公報(タイヤに作用する力の測定方法および摩擦係数の測定方法)であり、タイヤのサイドウォール部(車外側サイド)に、磁性体を設ける構造であるが、路面がタイヤに作用する周方向、及び垂直方向の力を測定して、この測定した力から直接摩擦係数を求め、求めた摩擦係数が最適なものとなるよう制動することであり、この磁性体を利用して磁束密度パターンを測定する。また、文献(5)は、特開2010−188779号公報(タイヤ)であり、タイヤのトレッド部の内面に磁性シートを設け、この磁性シートに吸音材を付設する。即ち、磁力の作用により貼着された吸音材を具えたタイヤである。
【0006】
【特許文献1】特開平08−058318号公報
【特許文献2】特開昭49−072805号公報
【特許文献3】特開平01−160711号公報
【特許文献4】特開2003−285728号公報
【特許文献5】特開2010−188779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の文献(1)〜文献(3)の構造では、岩石や鉄屑等が散在する不整地現場での過酷な使用条件下において,岩石や鉄屑等に接触しタイヤサイドを強く擦り付ける状況が発生した場合に、ある程度の損傷防止には、有効と考えられる。また文献(1)〜文献(3)の構造では、サイドウォールに一体的に形成する構造であり、サイドウォールを始めとして、タイヤの車外側サイドの保護に有効と考えられる。しかし、文献(1)〜文献(3)の構造では、既設の車輌には、採用できず、かつ新しいタイヤへの交換が必須である。従って、タイヤの購入となり、経費が嵩み、合理的でない。上記に鑑み、本発明では、タイヤ販売業者が低コストで行うことのできるサイドウォール部(車外側サイド)の強化技術を提案する。
【0008】
また、前述の文献(4)は、タイヤの車外側サイドに、磁性体を設け、測定に使用するものである。従って、単なる測定手段であり、しかも、本発明が意図する車外側サイドと路面の砕石や突起物との接触による破損防止とは、目的と構造とが異なる。さらに、前述の文献(5)は、タイヤ内部に磁性シートを付設し、吸音材を設ける構造であり、内部の構造である。従って、本発明の如く、タイヤの車外側サイドの内側に固定手段を、タイヤの車外側サイドの外側に、被固定手段を有する補強体を、それぞれ設ける構造とは、距離感が異なることと、車外側サイドと路面の砕石や突起物との接触による破損防止とは、目的と構造とが異なる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、既設のタイヤ(工事用・建機用大型車輌のタイヤ)と既設ホイールとを利用し、簡易に、しかもタイヤ販売業者が低コストで行うことのできる
タイヤの車外側サイド
(以下、車外側サイドとする)の強化技術を提案する。また、車外側サイドと路面の砕石や突起物との接触による破損防止が図れる構造を提案する。さらに、車外側サイドのホイールに取付けできる固定手段を介して、車外側サイドに補強体を取付けできる構造を提案する。
【0010】
前記目的達成を意図し、請求項1〜
2を開示する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強ゴム板、補強鋼板、補強樹脂材でなる補強体を取付ける構造であって、
補強体の被固定手段は、補強体に設けた磁性材、又は金属材とし、
被固定手段が磁着される固定手段は、タイヤの
車外側サイドウォール、又は大型車輌の車外側ホイールに
取付け、かつ基端がタイヤのタイヤホイールのリムに開設した複数個の孔に係止され、自由端がタイヤのサイドウォールに到る金属材を少なくとも一部に備えた複数本のフレーム、又は複数本のスポーク、及び自由端に取付けられる金属材、又は磁性材のリムリング、又は面部の何れかでなる固定部材とし、
被固定手段を、固定手段に磁着し、
車外側サイドウォール、又は大型車輌の車外側ホイールに、補強体を付設する工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強体を取付ける構造である。
【0012】
従って、請求項1においては、主として、既設タイヤと、主として、既設ホイールとを利用し、簡易に、しかもタイヤ販売業者が低コストで行うことのできる車外側サイドの強化技術となること、また、車外側サイドと路面の砕石や突起物との接触による破損防止が図れる構造となること、さらに、車外側サイドのホイールに取付けできる固定手段を介して、車外側サイドに補強体を取付けできる構造となること、等の特徴を発揮できる。
また、請求項1においては、既設タイヤと既設ホイールとを利用し、簡易に、しかもタイヤ販売業者が低コストで行うことのできる構造であり、何人も、ホイールに工夫して孔を開設することで、本発明の目的を達成できる。
【0017】
請求項
2の発明では、被固定手段は、補強体に設けたゴム磁石、又は金属磁石とする工事用・建機用大型車輌のタイヤのサイドに補強体を取付ける構造である。
【0018】
従って、請求項
2においては、既設のタイヤへの工夫(例えば、補強体の取付け作業)で、簡易に、しかもタイヤ販売業者が低コストで行うことのできる車外側サイドの強化技術となり有益である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】既設のタイヤ(工事用・建機用のタイヤ)と既設ホイール(一部加工「孔」)と、金属・磁性材を一部に備えた固定手段とを利用し、タイヤの車外側サイドに補強体を取付ける状態を想定した一例の分解斜視図
【
図2】既設のタイヤと既設ホイール(一部加工「孔」)と、金属・磁性材を一部に備えた固定手段とを利用し、タイヤの車外側サイドに補強体を取付ける状態を想定したその他の一例の分解斜視図
【
図3】既設のタイヤと既設ホイールとを利用し、金属・磁性材を一部に備えた固定手段を取付けた状態の正面図
【
図4】既設のタイヤを抱持するように設けた金属・磁性材を一部に備えた固定手段を利用し、補強体を省略した正面図
【
図5】金属・磁性を一部に備えた山形の固定手段を示した斜視図
【
図6】既設のタイヤの車外側サイドの内部に、金属・磁性材を一部に備えた固定手段を設ける一例を示した正面視した断面図
【
図7】
図4に示した固定手段を利用して補強体を、サイドウォール部の内側に取付けた状態を示した一部欠截の側面視した断面図
【
図8】大型作業機械(ホイールローダー)に、本発明を採用した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図5に示した、第1実施例〜第3実施例では、既設のタイヤと既設ホイール(一部加工「孔」)と、金属・磁性材を一部に備えた十文字形態の固定手段、被固定手段とを利用し、タイヤの車外側サイドに補強体を取付ける一例を説明する。
【0021】
図1に示した、第1実施例では、1はホイール(既設、新品のいずれも含む)で、このホイール1のディスク1a(円形外周面)、及び/又は、リム1b(円形外周面)か、或いはビードシート部1c(円形外周面)かの個別の適所(図示しないが、複合箇所も有り得る。例えば、ディスク1a、及び/又は、リム1bとか、ディスク1a、及び/又は、ビードシート部1cの如く、選択した適宜箇所の如く)に、円周方向100に多数の貫通形状の孔2を開設する。この孔2を開設する作業は、ホイール1の車外側サイド1−1(図示しないが、車内側サイドも有り得る)である。この孔2を一個か、又は数個利用し、車外側サイド1−1に固定手段Aであるフレーム3を設ける。フレーム3は、基端側5aに曲げ部と、突部とかボルト孔とかを有し、
サイドウォール部1000の車外側端部に到る自由端側5bを備えた板状のスポーク5(アーム)と、各スポーク5の自由端側5bに、それぞれ設けた面部6(板材)とで構成されている。固定手段Aは、スポーク5の基端部5aの孔5cと孔2との間に止め具4で緊締して止め、スポーク5の基端側5aをビードシート部1bの適所に止めることで、
図1の如く、ホイール1の車外側サイド1−1に取付けられる。尚、図示の例では、固定手段Aは、四本のスポーク5でなるが、限定されない。また、面部6、及び/又は、スポーク5の一部(フレーム3の一部)、又は全部には、金属材(体)か、磁性材(体)とかを備えている。尚、図示しないが、スポーク5の自由端側5bを、ワイヤ等で連繋強化と、タイヤ10の車外側サイド1−1と相似形の形態維持に役立てることも可能である。尚、面部6の両面側(又は一面側)の一部、又は全部には、金属材(体)か、磁性材(体)とかを備えることもできる。両面側に、金属材(体)か、磁性材(体)とかを備える構造は、スポーク5に面部6を簡易に着脱できる特徴が考えられる。
【0022】
8は車外側サイド1−1をカバーする補強体で、補強ゴム板、補強鋼板、補強樹脂材でなり、図示の如く、環状を呈する。この補強体8の裏面側8aの一部、又は全部には、磁性材、又は金属材を備えている。この磁性材、又は金属材は、補強体8の被固定手段Bである。
【0023】
この第1実施例では、タイヤ10(既設、新品のいずれも含む)を支持するホイール1の車外側サイド1−1に、スポーク5を、順次、数本取付け、フレーム3を完成する。このフレーム3の固定手段Aに、補強体8の被固定手段Bを、磁着することで、取付けできる。この取付け方であれば、既設のタイヤと既設ホイールに、タイヤ業者が容易、かつ確実に取付けできることと、タイヤ10の車外側サイド1−1の破損防止に有効である。
【0024】
図2、
図3に示した第2実施例では、基本的には、第1実施例に準ずるが、第2実施例では、面部6に代替して、リムリング60を利用する構造であり、スポーク5の自由端側5bにリムリング60を磁着か、又は固定する。尚、リムリング60の一面、又は両面の一部、又は全部には、金属材(体)か、磁性材(体)とかを備えている。補強体8の取付けは、第1実施例に準ずる。前記両面では、スポーク5にリムリング60を簡易に着脱できる特徴が考えられる。
【0025】
図4、
図5に示した第3実施例では、基本的には、第1・第2実施例に準ずるが、第3実施例では、スポーク5に代替して、抱持構造のスポーク50を利用する構造であり、スポーク50の一方側50bに補強体8を磁着か、又は固定する。尚、一方側50bの一部、又は全部には、金属材(体)か、磁性材(体)とかを備えている。補強体8の取付けは、第1・第2実施例に準ずる。スポーク50の端側50aには、取付け用の孔51を有する。孔51と孔2とを止め具4で緊締することで、このスポーク50を、タイヤ10を抱持するように複数個設ける。
【0026】
図6、
図7に示した第4実施例では、主として、(既設)タイヤ10と、主として、(既設)ホイール1と、金属・磁性材を一部に備えたゴム磁石、又は金属磁石を備えた差込み材20による固定手段Aと、前述の各被固定手段Bとを利用し、タイヤ10の車外側サイド1−1に補強体8を取付ける一例を説明する。
【0027】
ホイール1よりタイヤ10を取外し、タイヤ10のサイドウォール部1000の内側(内部)に、ゴム磁石、又は金属磁石を備えた差込み材20(固定手段A)を展着し、タイヤ10に装着する(図面参照)。その後、ホイール1に装着して、タイヤ10内に空気を入れるが、差込み材20が移動しないように、サイドウォール部1000の内側に取付けておく。そして、補強体8に設けた被固定手段Bを利用して、補強体8を、車外側サイド1−1に取付ける構造である。この第4実施例も、基本的には、前述の第1・第2実施例の構造と特徴とに準ずる。
【0028】
何れにしても、本発明は、タイヤ販売業者等のタイヤ10を取扱う業者が、その知識と工具等を利用して、簡易かつ確実に、サイドウォール部1000(車外側サイド1−1)に、補強体8を着脱自在に装着できる構造を提案する。
【0029】
前述した各実施例は、本発明の好ましい一例の説明である。従って、本発明は前述した各実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲において構成の一部を変更する構造とか、同じ特徴と効果を達成できる構造、等は、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0030】
1 ホイール
1−1 車外側サイド
1a ディスク
1b リム
1c ビードシート部
100 円周方向
2 孔
3 フレーム
4 止め具
5 スポーク
5a 基端側
5b 自由端側
5c 孔
50 スポーク
50a 端側
50b 一方側
6 面部
60 リムリング
8 補強体
8a 裏面側
10 タイヤ
1000 サイドウォール部
20 差込み材
A 固定手段
B 被固定手段