(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6325066
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 29/04 20060101AFI20180507BHJP
【FI】
B66B29/04 G
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-243164(P2016-243164)
(22)【出願日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】砂田 哲哉
【審査官】
羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−036538(JP,A)
【文献】
特開2010−013280(JP,A)
【文献】
特開2008−156084(JP,A)
【文献】
特開2009−084014(JP,A)
【文献】
特開2012−246088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるトラスと、
前記トラスに沿って設けられた左右一対のスカートガードと、
前記スカートガードの両端部に設けられた正面スカートガードと、
前記スカートガードと前記正面スカートガードから立設された欄干と、
前記正面スカートガードに開口した第1ベルト開口部と、
前記欄干の上部を走行し、前記正面スカートガードの前記第1ベルト開口部から進入する手摺りベルトと、
前記正面スカートガードに設けられたインレット部と、
を有し、
前記インレット部は、
前記正面スカートガードの前記第1ベルト開口部の縁部に設けられ、前記手摺りベルトが進入する第2ベルト開口部が開口したインレットプレートと、
前記第2ベルト開口部の縁部から内周側に向かって前記手摺りベルトと前記第2ベルト開口部の隙間を覆うように、前記手摺りベルトの走行方向に対し斜めに設けられ、かつ、前記第2ベルト開口部の縁部に沿って前記手摺りベルトを囲むように設けられた真っ直ぐなブラシ毛から構成されたインレットブラシと、
を有する乗客コンベア。
【請求項2】
前記ブラシ毛の先端は、前記手摺りベルトに接触している、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記インレットプレートは、左右に分割可能である、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記インレットプレートは、ゴム製であって、一体に形成されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記第1ベルト開口部の内部において、前記手摺りベルトに沿って移動自在な検出部材と、
前記検出部材が、前記第1ベルト開口部とは反対側に移動したときに動作するスイッチと、
を含むインレット挟まれ検出装置と、
前記スイッチが動作したときに前記乗客コンベアを停止させる制御部と、
を有する請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記検出部材は、前記第1ベルト開口部と前記第2ベルト開口部とを通り露出している、
請求項5に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記検出部材は、前記手摺りベルトを囲むように形成されている、
請求項6に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記検出部材は、ゴム製である、
請求項7に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記インレットブラシは、複数のブラシ毛が一束になっており、前記束毎に毛の長さを変化させている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいては、欄干上部を手摺りベルトが走行し、この手摺りベルトは、欄干の乗降口にある正面スカートガードから乗客コンベア内部に進入する。この手摺りベルトが進入する部分には、幼児などの乗客のいたずらによる挟まれ防止を目的としてインレット部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−351568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記インレット部において、手摺りベルトと正面スカートガードとの隙間を見え難くするために手摺りベルトと平行にインレットブラシが設けられている。しかし、このインレットブラシが劣化した場合には、正面スカートガードを外して取り替える必要があり、非常に手数がかかるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、インレット部のインレットブラシが隙間を完全に隠すことができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、前後方向に延びるトラスと、前記トラスに沿って設けられた左右一対のスカートガードと、前記スカートガードの両端部に設けられた正面スカートガードと、前記スカートガードと前記正面スカートガードから立設された欄干と、前記正面スカートガードに開口した第1ベルト開口部と、前記欄干の上部を走行し、前記正面スカートガードの前記第1ベルト開口部から進入する手摺りベルトと、前記正面スカートガードに設けられたインレット部と、を有し、前記インレット部は、前記正面スカートガードの前記第1ベルト開口部の縁部に設けられ、前記手摺りベルトが進入する第2ベルト開口部が開口したインレットプレートと、前記第2ベルト開口部の縁部から内周側に向かって前記手摺りベルトと前記第2ベルト開口部の隙間を覆うように、前記手摺りベルトの走行方向に対し斜めに設けられ、かつ、前記第2ベルト開口部の縁部に沿って前記手摺りベルトを囲むように設けられた
真っ直ぐなブラシ毛から構成されたインレットブラシと、を有する乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの側面説明図。
【
図4】インレットプレートを左右に分割した状態の前面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータ10について
図1〜
図4を参照して説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、
図1を参照して説明する。
図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0010】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット24,24、左右一対の手摺りベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対の手摺りベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御部50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。すなわち、左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30の車輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の車輪301はトラス12に固定された不図示の案内レールに沿って走行すると共に、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して、踏段30が上下に反転する。また、車輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0014】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に進入し、案内ローラ群64を介して手摺り駆動スプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、手摺り駆動スプロケット27が主駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転する手摺り駆動スプロケット27に、走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68を有する。
【0015】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出、又は、進入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0016】
(2)安全装置
エスカレータ10には、乗客の安全を確保するために安全装置が設けられている。安全装置としては、例えば、スカートガード44に設けられたスカートガード挟まれ検出装置、インレット部46,48に設けられたインレット挟まれ検出装置100(
図3参照)、案内レール25に設けられた踏段浮き上がり検出装置、踏段チェーン切断検出装置、非常停止ボタンなどである。
【0017】
スカートガード挟まれ検出装置とは、スカートガード44と踏段30の間に異物(例えば、服や荷物)が挟まれたことを検出する装置である。
【0018】
インレット挟まれ検出装置100とは、手摺りベルト38が引き込まれるインレット部46又はインレット部48に異物(例えば、乗客の手や荷物)が手摺りベルト38と同時に引き込まれたときに検出する装置である。インレット挟まれ検出装置100については、後述する。
【0019】
(3)インレット部46、48
インレット部46、48について説明する。上階側のインレット部46は、上階側における左右一対の正面スカートガード40,40にそれぞれ設けられ、下階側のインレット部48は、下階側の正面スカートガード42,42にそれぞれ設けられている。まず、上階側のインレット部46について
図2〜
図4に基づいて説明する。
【0020】
正面スカートガード40の前面70には、
図3に示すように、手摺りベルト38が進入する第1ベルト開口部72が設けられている。この第1ベルト開口部72は、
図2に示すように手摺りベルト38の横断面の形状(ほぼ楕円形)より若干大きく形成されている。
【0021】
手摺りベルト開口部72の縁部であって、正面スカートガード40の前面70には、ほぼ長方形のインレットプレート74がネジ76によってネジ止めされている。インレットプレート74は、金属板又は合成樹脂製の板により形成されている。インレットプレート74には、
図2と
図3に示すように、手摺りベルト38が通過するための第2ベルト開口部84が設けられている。この第2ベルト開口部84の形状は、第1ベルト開口部72より若干小さい寸法のほぼ楕円形状であるが、上辺部は切欠かれて切欠き部86が形成され、第2ベルト開口部84の上端部と連続している。インレットプレート74は、
図4に示すように左プレート78と右プレート80とに分割でき、手摺りベルト38を両側から挟み込むように取り付ける。また、左プレート78と右プレート80には、
図4に示すように、それぞれネジ孔82が開口している。
【0022】
第2ベルト開口部84の縁部に沿って、インレットブラシ88のブラシ毛90が、第2ベルト開口部84の内周側に向かって設けられている。このブラシ毛90は、
図3に示すように通過する手摺りベルト38に向かって斜めに設けられ、その先端が手摺りベルト38と接触する手前まで延びている。このインレットブラシ88によって、第1ベルト開口部72、第2ベルト開口部84の周縁部が覆われる状態となる。なお、インレットブラシ88も、
図4に示すように左プレート78と右プレート80の分割と共に左右に分割される。インレットブラシ88は、複数のブラシ毛90が一束になっており、束毎に毛の長さを変化させている。
【0023】
第1ベルト開口部72の内部、すなわち正面スカートガード40の内部には、
図3に示すように、手摺りベルト38を囲むようにほぼ筒状のインレットゴム92が設けられ、このインレットゴム92は、異物を検出する検出部材であり、手摺りベルト38の走行方向に沿って移動自在となっている。インレットゴム92の先端部は、手摺りベルト38と第2ベルト開口部84の隙間から露出している。インレットゴム92の基部にはフランジ部94が形成されている。
【0024】
また、正面スカートガード40の内部には、
図3に示すように、リミットスイッチ96が設けられ、インレットゴム92が正面スカートガード40内部に押圧された場合にフランジ部94がリミットスイッチ96に当たり、リミットスイッチ96が動作し停止信号を制御部50に出力する。制御部50は、このリミットスイッチ96から停止信号が入力すると踏段30の走行を停止させる。すなわち、インレットゴム92、リミットスイッチ96により上記で説明したスカートガード挟まれ検出装置100が構成されている。
【0025】
下階側のインレット部48においても、上階側のインレット部46と同様に、インレットブラシ88、インレット挟まれ検出装置100が設けられている。
【0026】
(4)インレット部46の動作状態
インレット部46の動作状態について
図2〜
図4を参照して説明する。
【0027】
エスカレータ10が上昇方向で通常運転をしている場合には、手摺りベルト38がインレット部46から進入し、下階側のインレット部48から進出する。この場合に、インレットブラシ88のブラシ毛90が手摺りベルト38に向かって斜めに植毛されているため、第2ベルト開口部84と手摺りベルト38の隙間を覆い、インレットゴム92の先端が乗客からは見えない。
【0028】
手摺りベルト38と共に幼児の手などの異物が第2ベルト開口部84から吸い込まれようとした場合には、インレットブラシ88は、その吸い込まれようとしている手などに怪我などを与えることがない。しかし、吸い込まれようとしている異物がインレットゴム92の先端に当たり押圧すると、リミットスイッチ96が動作し、制御部50が踏段30と手摺りベルト38を停止させ、その異物が正面スカートガード40内部に入ることがなく、乗客の安全を確保できる。
【0029】
ところで、インレットブラシ88のブラシ毛90の先端はゴミが付着したりして経年劣化を起こす。そのため、インレットブラシ88を交換する必要がある。そのときは、作業員が、ネジ76を取り外し、インレットプレート74を左プレート78と右プレート80に分割して古いインレットプレート74を取り除く。その後、
図2に示すように、新しいインレットブラシ88が設けられたインレットプレート74の左プレート78と右プレート80を手摺りベルト38を囲むように取り付け、ネジ止めすることにより、インレットブラシ88を交換できる。
【0030】
(5)効果
本実施形態によれば、インレット部46、48から異物が吸い込まれようとする場合でも、異物がインレットブラシ88を通過した後にインレットゴム92を押圧するため、インレット挟まれ検出装置100が動作して、手摺りベルト38の走行が停止し、乗客の安全を確保できる。
【0031】
また、インレットブラシ88によって手摺りベルト38と第2ベルト開口部84の隙間が隠されているため、意匠的にも見栄えがよく、また、インレットゴム92の先端が露出しない。
【0032】
また、インレットプレート74は、左プレート78と右プレート80に分割できるため、インレットブラシ88が摩耗してもその交換を簡単に行うことができる。
【0033】
また、インレットブラシ88は、複数のブラシ毛90が一束になっており、束毎に毛の長さを変化させているので、見た目がギザギザになる。
【0034】
(6)変更例
上記実施形態では、インレットプレート74を左プレート78と右プレート80から構成したが、これに代えてインレットプレート74を左右に分割することなくゴムによって一体に形成する。正面スカートガード40、42に取り付ける場合には、このゴム製のインレットプレートを曲げて取り付ける。そして取り付けた後、上記実施形態と同様にネジ76によってネジ止めする。このように曲げて取り付けることができるのはインレットプレート74が弾力のあるゴム製だからである。
【0035】
また、上記実施形態では、インレットブラシ88のブラシ毛90の先端は、手摺りベルト38に接触していなかったが、その先端が接触していてもよい。この場合でも、手摺りベルト38の移動を妨げない。
【0036】
上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0037】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・エスカレータ、12・・・トラス、30・・・手摺りベルト、40・・・正面スカートガード、42・・・正面スカートガード、46・・・インレット部、48・・・インレット部、50・・・制御部、72・・・第1ベルト開口部、74・・・インレットプレート、78・・・左プレート、80・・・右プレート、84・・・第2ベルト開口部、88・・・インレットブラシ、90・・・ブラシ毛、92・・・インレットゴム、96・・・リミットスイッチ、100・・・インレット挟まれ検出装置
【要約】
【課題】インレット部のインレットブラシが隙間を完全に隠すことができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】インレット部46は、正面スカートガード40の第1ベルト開口部72の縁部に設けられ、手摺りベルト38が進入する第2ベルト開口部84が開口したインレットプレート74と、第2ベルト開口部84の縁部から、手摺りベルト38に向かって設けられ、かつ、第2ベルト開口部84の縁部に沿って手摺りベルト38を囲むように設けられたブラシ毛90から構成されたインレットブラシ88とを有する。
【選択図】
図3