特許第6325074号(P6325074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6325074開放ブリードを備えるピストンアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325074
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】開放ブリードを備えるピストンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20180507BHJP
【FI】
   F16F9/348
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-500500(P2016-500500)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-510867(P2016-510867A)
(43)【公表日】2016年4月11日
(86)【国際出願番号】US2014019358
(87)【国際公開番号】WO2014149534
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/786,678
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/191,538
(32)【優先日】2014年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505318721
【氏名又は名称】テネコ オートモティブ オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tenneco Automotive Operating Company Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】タツ,ジーン−マリー
(72)【発明者】
【氏名】マソネット,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンブラバント,ロニー
(72)【発明者】
【氏名】シックス,クリストフ
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−528089(JP,A)
【文献】 特開平03−069836(JP,A)
【文献】 特開2010−249250(JP,A)
【文献】 米国特許第04615420(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体チャンバを画定する圧力チューブと、
前記流体チャンバ内に配置されたピストンであって、前記流体チャンバを上側作動チャンバと下側作動チャンバに分割するピストンと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する圧縮通路と、
前記ピストンと係合する圧縮弁アセンブリであって、前記圧縮通路を閉じる圧縮弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する伸長通路と、
前記ピストンと係合する伸長弁アセンブリであって、前記伸長通路を閉じる伸長弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通するブリード通路と、
前記ピストンと係合する第1のブリード弁アセンブリと、を含み、前記第1のブリード弁アセンブリと前記ブリード通路が、前記ピストンを貫通する第1の流路と前記ピストンを貫通する第2の流路を画定し、前記第2の流路が前記第1の流路と異なり、
前記第1のブリード弁アセンブリは、オリフィスディスクと、前記オリフィスディスクに隣接して配置された閉鎖ディスクと、を含み、前記閉鎖ディスクは前記第2の流路が開く第1の位置と前記第2の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能である、ショックアブソーバ。
【請求項2】
前記閉鎖ディスクの厚さは前記オリフィスディスクの厚さより薄いか、それと等しい、請求項に記載のショックアブソーバ。
【請求項3】
流体チャンバを画定する圧力チューブと、
前記流体チャンバ内に配置されたピストンであって、前記流体チャンバを上側作動チャンバと下側作動チャンバに分割するピストンと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する圧縮通路と、
前記ピストンと係合する圧縮弁アセンブリであって、前記圧縮通路を閉じる圧縮弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する伸長通路と、
前記ピストンと係合する伸長弁アセンブリであって、前記伸長通路を閉じる伸長弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通するブリード通路と、
前記ピストンと係合する第1のブリード弁アセンブリと、を含み、前記第1のブリード弁アセンブリと前記ブリード通路が、前記ピストンを貫通する第1の流路と前記ピストンを貫通する第2の流路を画定し、前記第2の流路が前記第1の流路と異なり、
前記第1のブリード弁アセンブリは、オリフィスディスクと、センタリングディスクの周囲に配置された閉鎖ディスクと、を含み、前記閉鎖ディスクは前記第2の流路か開く第1の位置と前記第2の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能である、ショックアブソーバ。
【請求項4】
前記閉鎖ディスクの厚さは前記オリフィスディスクの厚さより薄いか、それと等しい、請求項に記載のショックアブソーバ。
【請求項5】
流体チャンバを画定する圧力チューブと、
前記流体チャンバ内に配置されたピストンであって、前記流体チャンバを上側作動チャンバと下側作動チャンバに分割するピストンと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する圧縮通路と、
前記ピストンと係合する圧縮弁アセンブリであって、前記圧縮通路を閉じる圧縮弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する伸長通路と、
前記ピストンと係合する伸長弁アセンブリであって、前記伸長通路を閉じる伸長弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通するブリード通路と、
前記ピストンと係合する第1のブリード弁アセンブリと、を含み、前記第1のブリード弁アセンブリと前記ブリード通路が、前記ピストンを貫通する第1の流路と前記ピストンを貫通する第2の流路を画定し、前記第2の流路が前記第1の流路と異なり、
前記第1のブリード弁アセンブリは、第1の流路を画定する第1の開孔と前記第2の流路を画定する第2の開孔を画定するオリフィスディスクを含む、ショックアブソーバ。
【請求項6】
前記第1のブリード弁アセンブリは、前記第2の開孔が開く第1の位置と前記第2の開孔が閉じる第2の位置との間で移動可能な閉鎖ディスクを含む、請求項に記載のショックアブソーバ。
【請求項7】
前記第1のブリード弁アセンブリは、オリフィスディスクと、センタリングディスクの周囲に配置された閉鎖ディスクと、を含み、前記閉鎖ディスクは前記第2の開孔が開く第1の位置と前記第2の開孔が閉じる第2の位置との間で移動可能である、請求項に記載のショックアブソーバ。
【請求項8】
前記閉鎖ディスクの厚さは前記オリフィスディスクの厚さより薄いか、それと等しい、請求項に記載のショックアブソーバ。
【請求項9】
流体チャンバを画定する圧力チューブと、
前記流体チャンバ内に配置されたピストンであって、前記流体チャンバを上側作動チャンバと下側作動チャンバに分割するピストンと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する圧縮通路と、
前記ピストンと係合する圧縮弁アセンブリであって、前記圧縮通路を閉じる圧縮弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する伸長通路と、
前記ピストンと係合する伸長弁アセンブリであって、前記伸長通路を閉じる伸長弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通するブリード通路と、
前記ピストンと係合する第1のブリード弁アセンブリと、を含み、前記第1のブリード弁アセンブリと前記ブリード通路が、前記ピストンを貫通する第1の流路と前記ピストンを貫通する第2の流路を画定し、前記第2の流路が前記第1の流路と異なり、
前記ピストンと係合する第2のブリード弁アセンブリをさらに含み、前記第2のブリード弁アセンブリと前記ブリード通路は、前記ピストンを貫通する第3の流路と前記ピストンを貫通する第4の流路を画定し、前記第4の流路は前記第3の流路と異なる
前記第1のブリードアセンブリは、第1のオリフィスディスクと、第1のセンタリングディスクに隣接して配置された第1の閉鎖ディスクと、を含み、前記第1の閉鎖ディスクは、前記第2の流路が開く第1の位置と前記第2の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能であり、前記第2のブリードアセンブリは、第2のオリフィスディスクと、第2のセンタリングディスクに隣接して配置された第2の閉鎖ディスクと、を含み、前記第2の閉鎖ディスクは、前記第4の流路が開く第1の位置と前記第4の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能である、ショックアブソーバ。
【請求項10】
前記第1の閉鎖ディスクの厚さは前記第1のオリフィスディスクの厚さより薄いか、それと等しく、前記第2の閉鎖ディスクの厚さは前記第2のオリフィスディスクの厚さより薄いか、それと等しい、請求項に記載のショックアブソーバ。
【請求項11】
流体チャンバを画定する圧力チューブと、
前記流体チャンバ内に配置されたピストンであって、前記流体チャンバを上側作動チャンバと下側作動チャンバに分割するピストンと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する圧縮通路と、
前記ピストンと係合する圧縮弁アセンブリであって、前記圧縮通路を閉じる圧縮弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通する伸長通路と、
前記ピストンと係合する伸長弁アセンブリであって、前記伸長通路を閉じる伸長弁アセンブリと、
前記上側作動チャンバと前記下側作動チャンバとの間で前記ピストンを貫通するブリード通路と、
前記ピストンと係合する第1のブリード弁アセンブリと、を含み、前記第1のブリード弁アセンブリと前記ブリード通路が、前記ピストンを貫通する第1の流路と前記ピストンを貫通する第2の流路を画定し、前記第2の流路が前記第1の流路と異なり、
前記第1のブリード弁アセンブリは、オリフィスディスクと、閉鎖ディスクと、前記オリフィスディスクと前記閉鎖ディスクとの間に配置された支点ディスクと、を含み、前記閉鎖ディスクは、前記第2の流路が開く第1の位置と前記第2の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能である、ショックアブソーバ。
【請求項12】
前記閉鎖ディスクの厚さは前記オリフィスディスクの厚さより薄いか、それと等しい、請求項11に記載のショックアブソーバ。
【請求項13】
前記閉鎖ディスクが弾性的に撓み、前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動する、請求項11に記載のショックアブソーバ。
【請求項14】
前記第1の流路が常時開の流路である、請求項1,3,5,9および11の何れか1項に記載のショックアブソーバ。
【請求項15】
前記第1のブリード弁アセンブリは、前記第2の流路が開く第1の位置と前記第2の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能である閉鎖ディスクを含む、請求項1,3,5,9および11の何れか1項に記載のショックアブソーバ。
【請求項16】
前記第1のブリード弁アセンブリは、前記第2の流路が開く第1の位置と前記第2の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能な閉鎖ディスクを含む、請求項1,3,5,9および11の何れか1項に記載のショックアブソーバ。
【請求項17】
前記ピストンと係合する第2のブリード弁アセンブリをさらに含み、前記第2のブリード弁アセンブリと前記ブリード通路は、前記ピストンを貫通する第3の流路と前記ピストンを貫通する第4の流路を画定し、前記第4の流路は前記第3の流路と異なる、請求項1,3,5および11の何れか1項に記載のショックアブソーバ。
【請求項18】
前記第1と第3の流路は常時開の流路である、請求項17に記載のショックアブソーバ。
【請求項19】
前記第1のブリード弁アセンブリは、前記第2の流路が開く第1の位置と前記第2の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能な第1の閉鎖ディスクを含み、前記第2のブリード弁アセンブリは、前記第4の流路が開く第1の位置と前記第4の流路が閉じる第2の位置との間で移動可能な第2の閉鎖ディスクを含む、請求項17に記載のショックアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年2月27日に出願された米国特許出願第14/191,538号の優先権を主張し、さらに、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/786,678号の利益を主張するものである。上記出願の開示全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、機械的衝撃を受け、緩和する自動車用のダンパまたはショックアブソーバに関する。より詳細には、本開示は、非常に低速のピストン速度で小さい制振力を生成する2つの別々のブリード制限路を含むショックアブソーバのための油圧弁アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションでは、必ずしも先行技術ではない、本開示に関連する背景情報が単に提示される。
【0004】
ショックアブソーバは、走行中に発生する望ましくない振動を吸収するために、自動車サスペンションシステムと共に使用される。これらの望ましくない振動を吸収するために、ショックアブソーバは、通常、自動車のばね上部分(ボディ)とばね下部分(ホイール)との間に連結される。ピストンは、ショックアブソーバの圧力チューブにより画定される作動チャンバ内に配置され、ピストンはピストンロッドを通じて自動車のばね上部分に連結される。圧力チューブは当業界で知られている方法の1つにより自動車のばね下部分に連結される。ピストンは弁を通じてピストンの両側間の制振流体の流れを制限するため、ショックアブソーバが圧縮または伸展されると、ショックアブソーバは望ましくない振動を緩和する制振力を発生させることができ、そうでなれば、この望ましくない振動はばね下部分からばね上部分へと伝えられてしまう。二重チューブショックアブソーバの場合、流体貯蔵器が圧力チューブと貯蔵チューブとの間に画定される。全容積変位型ピストン弁システムが使用される場合、流体貯蔵器は、作動チャンバのうち圧力チューブによって画定される下側部分(ピストンより下の領域)と直接連通する。全容積変位型弁システムが使用された場合、ショックアブソーバによって発生される制振力はすべて、ピストン弁動作の結果である。ショックアブソーバ内の流体流れがピストンによって制限される程度が大きいほど、ショックアブソーバによって発生される制振力は大きくなる。それゆえ、流体流れを大きく制限するとファームライドが得られ、一方、流体流れをあまり制限しないとソフトライドが得られる。
【0005】
ショックアブソーバが提供するべき制振の量を選択する際、少なくとも3つの車両性能特性が考慮される。これら3つの特性は、乗り心地、車両の取り回し、ロードホールディング能力である。乗り心地はしばしば、車両の主要ばねに関するばね定数のほか、シートとタイヤに関するばね定数およびショックアブソーバの制振係数によって決まる。最適な乗り心地のためには、比較的低い制振力、すなわちソフトライドが好ましい。
【0006】
車両の取り回しは、車両の姿勢の変化(すなわち、ロール、ピッチ、ヨー)に関係する。最適な車両の取り回しのためには、コーナリング、加速、および減速中に車両の姿勢が急激に変化しすぎるのを回避するために比較的大きい制振力、すなわちファームライドが必要となる。
【0007】
最後に、ロードホールディング能力は通常、タイヤと地面との接触量によって決まる。ロードハンドリング能力を最適化するためには、凸凹の表面を走行する際、過剰に長期間にわたって車輪と地面との間の接触が失われるのを防止するために、大きな制振力、すなわちファームライドが必要となる。
【0008】
各種の車両性能特性に関連して所望の制振力を発生させるために、様々な種類のショックアブソーバが開発されてきた。ショックアブソーバは、圧力チューブ内のピストンの速度または加速に応じて異なる制振特性を提供するために開発されている。圧力低下と流速との間の指数関数的関係から、比較的低速のピストン速度、特にゼロに近い速度で制振力を得ることは困難な作業である。低速での制振力は車両の取り回しにとって重要であり、これは、ほとんどの車両取り回しの事象が低速の車両ボディ速度によってコントロールされるからである。
【0009】
ピストンの低速運動中にショックアブソーバを調整するための様々な先行技術のシステムは、固定低速ブリードオリフィスを作り、これがピストンを挟んで常に開放しているブリード通路を提供する。このブリードオリフィスは、シーリングランドに隣接する柔軟なディスクの上に配置されたオリフィスノッチを利用することによって、または直接シーリングランド自体にあるオリフィスノッチを利用することによって作ることができる。これらの設計の限界は、オリフィスの断面積が一定であるため、発生する制振力がショックアブソーバの内圧に応じていないことである。これらの開放オリフィスノッチを利用して低速制御を得るために、オリフィスノッチは比較的低速での制限を実現するのに十分に小さくなければならない。これが実現されると、弁システムの低速流体回路が、非常に小さい速度範囲で動作する。したがって、第2の、すなわち高速段階弁が、所望の速度より低速で作動される。比較的低速で第2の弁が作動するとハーシュネスが発生するが、これは、固定オリフィスブリード回路の力速度特性の形状が高速回路の形状とは構成の点で全く異なるからである。
【0010】
固定オリフィスブリード弁の問題を克服し、ひいては低速ピストン運動中のハーシュネスを排除しようとした先行技術の試みでは、可変オリフィスブリード弁回路を取り入れている。ピストンの速度が増すにつれて、可変オリフィスの流れ領域も増大することによって、第2の弁へとスムーズに移行する。これらの先行技術による可変オリフィスブリード弁回路は典型的には、柔軟な弁体の外周に配置され、それゆえ、これらは弁体の直径に依存して、流れ領域が増大する速度を決定する。柔軟な弁体の直径が増大するにつれ、オリフィスの流れ領域が増大する速度は、より制御しにくくなる。流れ領域は可変オリフィスブリード弁体の撓みによって増大されるため、大きな直径の可変オリフィスブリード弁体が小さく撓むと、ブリードオリフィスの流れ領域が急速に増大する。この流れ領域の急速な増大により、低速弁回路と第2の、すなわち高速弁回路との間の調整が複雑になる。
【0011】
また別の先行技術のシステムでは、中速/高速弁システムに統合された可変オリフィスブリード弁回路が開発されている。低速回路を中速/高速回路と統合することにより、低速回路の調整が中速/高速回路に影響を与え、中速/高速回路の調整が低速回路に影響を与えるシステムが創出された。
【0012】
ショックアブソーバの継続的開発には、低速弁回路と第2の弁、すなわち高速弁回路との間のスムーズな移行を提供できる弁システムの開発が含まれる。これら2つの回路間のスムーズな移行は、移行中のあらゆるハーシュネスを軽減し、および/または排除するのを助ける。スムーズな移行に加えて、これらのシステムの開発はまた、これらの回路の各々を独立して調整できるようにするために、これら2つの回路を分離することに向けられてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、ショックアブソーバの低速制振特性を改善するために、低速ピストン速度での制振力を独立して調整する方法を提供する。本開示は、中速/高速、すなわち第2の弁システムから分離された別個の低速可変オリフィスブリード回路を含む。これに加えて、本開示は1対の流体流路を含み、この流路の一方が所定のピストン速度で閉じて、ショックアブソーバの低速制振特性を調整する。
【0014】
本明細書に提示された説明から、さらなる適用分野が明らかになるであろう。説明および特定の例は、単に例示することを意図され、本開示の範囲を限定することを意図されたものではないと理解されるべきである。
【0015】
本明細書で説明される図面は例示を目的としているにすぎず、本開示の範囲をいかようかに限定することを意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示による弁システムを内蔵した自動車の図である。
図2】本開示による弁システムを内蔵したショックアブソーバを部分断面で示した側面図である。
図3】本開示による弁システムを内蔵したピストンアセンブリの拡大側面図である。
図4図3に示すピストンの上面図である。
図5a-5b】本開示による低速ブリード回路を画定する各種の流れ通路を断面で示す側面図である。
図6a-6b】低速ブリード回路において使用可能な2種類のオリフィスディスクの上面図である。
図7】本開示の別の実施形態による低速ブリード回路を断面で示す側面図である。
図8図7に示す閉鎖ディスクの分解図である。
図9】本開示の別の実施形態による低速ブリード回路を断面で示す側面図である。
図10A-10D】図9に示す実施形態による低速ブリード回路を画定する各種の流れ通路を断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面の中のいくつかの図を通じて、対応する参照番号は対応する部品を示している。
【0018】
以下の説明は、事実上、単なる例示であり、本開示、用途、または使用法を限定することを意図されていない。
【0019】
ここで、その中のいくつかの図を通じて、対応する参照番号が同様の、または対応する部品を示している図面を参照すると、図1に、本開示による独立した可変ブリードシステムを有するサスペンションシステムを内蔵した車両が示され、これは概して参照番号10で示されている。車両10は、リアサスペンション12、フロントサスペンション14と、およびボディ16を含む。リアサスペンション12は、車両のリアホイール18を動作的に支持するように構成された横方向に延びるリアアクスルアセンブリ(図示せず)を有する。リアアクスルアセンブリは、1対のショックアブソーバ20と1対のらせんコイルスプリング22によってボディ16に動作的に連結されている。同様に、フロントサスペンション14は、車両のリアホイール24を動作的に支持するための横方向に延びるフロントアクスルアセンブリ(図示せず)を含む。フロントアクスルアセンブリは、第2の対のショックアブソーバ26と1対のらせんコイルスプリング28によってボディ16に動作的に連結されている。ショックアブソーバ20と26は、車両10のばね下部分(すなわち、フロントサスペンションとリアサスペンション、それぞれ12と14)とばね上部分(すなわちボディ16)との相対運動を弱めるように機能する。車両10はフロントおよびリアアクスルアセンブリを有する乗用車として描かれているが、ショックアブソーバ20と26は、他の車種または他の種類の用途、例えば、独立したフロントおよび/または独立したリアサスペンションシステムを内蔵した車両を含むがこれに限定されない用途においても使用できる。さらに、「ショックアブソーバ」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、ダンパ全般を指すものとし、それゆえ、マクファーソンストラットも含む。
【0020】
ここで図2を参照すると、ショックアブソーバ26がさらに詳細に示されている。図2はショックアブソーバ26だけを示しているが、ショックアブソーバ20も、ショックアブソーバ26について後述する本発明による可変ブリードオリフィス弁を含むことが理解される。ショックアブソーバ20は、それが車両10のばね上およびばね下部分に連結されるように構成される方法においてショックアブソーバ26と異なっている。ショックアブソーバ26は図2において単一チューブショックアブソーバとして示されている。二重チューブショックアブソーバまたは当業界で知られているその他のタイプのショックアブソーバの中に開放ブリードを有するピストンアセンブリを内蔵することも本開示の範囲内である。ショックアブソーバ26は、圧力チューブ30、ピストンアセンブリ32、およびピストンロッド34を含む。
【0021】
圧力チューブ30は、流体チャンバ42を画定する。ピストンアセンブリ32は圧力チューブ30の中にスライド可能に配置され、流体チャンバ42を上側作動チャンバ44と下側作動チャンバ46に分割する。シール48は、ピストンアセンブリ32と圧力チューブ30との間に配置されて、過度の摩擦力を発生させることなく、圧力チューブ30に関するピストンアセンブリ32のスライド運動を可能にするほか、上側作動チャンバ44を下側作動チャンバ46から密閉することを可能にする。ピストンロッド34は、ピストンアセンブリ32に取り付けられ、上側作動チャンバ44を通り、また圧力チューブ30の上端を閉じる上側エンドキャップ50を貫通している。シーリングシステム52は、上側エンドキャップ50と圧力チューブ30とピストンロッド34との間の界面を密閉する。ピストンアセンブリ32とは反対のピストンロッド34の端は、好ましい実施形態において、車両10のばね上部分に固定されるように構成されている。ピストンアセンブリ32内の弁は、圧力チューブ30内でのピストンアセンブリ32の移動中に、上側作動チャンバ44と下側作動チャンバ46との間の流体の移動を制御する。ピストンロッド34が上側作動チャンバ44のみを貫通し、下側作動チャンバ46を通らないため、圧力チューブ30に関するピストンアセンブリ32の移動により、上側作動チャンバ44内で流体が移動する量と下側作動チャンバ46内で流体が移動する量とに差が生じる。この移動する流体の量の差は、「ロッド体積」として知られ、これは当業界でよく知られているフローティングピストン54を使用することによって補償される。ショックアブソーバ26は単一チューブショックアブソーバとして示されているが、希望に応じてベース弁を取り入れた二重チューブ設計のショックアブソーバの中でピストンアセンブリ32を利用することも本発明の範囲内である。圧力チューブ30の下端はエンドキャップ56によって閉じられ、これは、好ましい実施形態において、車両10のばね下部分に連結されるように構成されている。
【0022】
本開示は、中速/高速弁とは独立して伸長および圧縮の両方のための可変ブリードオリフィス弁を含むフルフローピストンアセンブリ32に関する。ピストンアセンブリ32は、ショックアブソーバ26の圧縮運動と伸長運動のいずれにおいても低速弁と中速/高速弁との間の個別に調整可能なスムーズな移行を提供する。ショックアブソーバ26のための伸長(伸展)および圧縮の両方に関する制振特性はピストンアセンブリ32によって決まり、それゆえベース弁アセンブリの必要性がなくなる。
【0023】
ここで図3、5A、5Bを参照すると、ピストンアセンブリ32はピストン本体60、主圧縮弁アセンブリ62、ブリード圧縮弁アセンブリ64、主伸長弁アセンブリ66、およびブリード伸長弁アセンブリ68を含む。ピストン本体60はピストンロッド34に固定され、これは複数の主圧縮流体通路70、複数の主伸長流体通路72、および複数のブリード流体通路74を画定する。ピストン本体60はブリード圧縮弁アセンブリ64に接し、これはピストンロッド34に形成された肩部に接する。ピストン本体60はまた、ブリード伸長弁アセンブリ68に接し、これはピストン本体60およびブリード弁アセンブリ64と68をピストンロッド34に固定する保持ナット80に接する。
【0024】
主圧縮弁アセンブリ62は、支持ワッシャ84、曲げプリロードディスク86、複数の弁体88、接合ディスク90、接合部材92、および吸込み弁体94を含む。支持ワッシャ84は、ピストンロッド34の周囲に螺合式またはスライド式に受けられ、ピストン本体60の上方に配置される。支持ワッシャ84はピストンロッド34の周囲に、所定のプリロード量が弁体88と接合ディスク90によって提供されるように位置付けられ、その後、これはピストンロッド34に溶接されるか、当業界で知られているその他の手段によってピストンロッド34に固定される。接合部材92と吸込み弁体94は、ピストンロッド34に関して軸方向に自由に移動して、主圧縮流体通路70を開閉し、一方、主伸長流体通路72とブリード流体通路74は開いたままとする。接合部材92と吸込み弁体94の軸方向の移動によって、曲がって主圧縮流体通路70を開き、それゆえアセンブリのための全容積移行型弁体を提供するための構成部品の必要性がなくなる。
【0025】
ブリード圧縮弁アセンブリ64は、オリフィスディスク96、1つまたは複数の第1の支点ディスク98、閉鎖ディスク100、および1つまたは複数のシムディスク102を含む。オリフィスディスク96はピストンロッド34に形成された肩部と直接係合し、オリフィスディスク96は第1の複数の穴104と第2の複数の穴106を画定する。図3図5aの断面図は、複数の穴104のうちの1つと複数の穴106のうちの1つを通るように切断されている。図6Aと6Bに示すように、オリフィスディスク96をオリフィスディスク96’に置き換えることができ、複数の穴106は複数の穴またはノッチ106’に置き換えられている。
【0026】
支点ディスク98はオリフィスディスク96に直接隣接して配置され、閉鎖ディスク100は支点ディスク98に直接隣接して配置され、シムディスク102は直接、閉鎖ディスク100とピストン本体60との間に配置される。図5Aに示すように、閉鎖ディスク100は通常、オリフィスディスク96から離間され、それによって流体が穴104を通って流れることができる。圧縮行程中、閉鎖ディスク100は図5Aに示すように上方に撓んで穴104と106との間でオリフィスディスク96と接触することにより、穴104を閉じる。
【0027】
穴104と106は、オリフィスディスク96を通る別々の流路を画定する。穴106は常時開の流路を画定し、穴104は通常開の流路を画定するが、穴104を通る流路はピストンアセンブリ32の圧縮行程中に閉鎖ディスク100によって閉じられる。
【0028】
主伸長弁アセンブリ66は、支持ワッシャ114、曲げプリロードディスク116、複数の弁体118、接合ディスク120、接合部材122、および吸込み弁体124を含む。支持ワッシャ114は、保持ナット80の周囲に螺合式またはスライド式に受けられ、ピストン本体60の下方に配置される。支持ワッシャ114は保持ナット80の周囲に、所定の量のブロードが弁体118と接合ディスク120によって提供されるように位置付けられ、その後、これは保持ナット80に溶接されるか、当業界で知られているその他の手段によって保持ナット80に固定される。接合部材122と吸込み弁体124は、ピストンロッド34に関して軸方向に自由に移動して、主伸長流体通路72を開閉し、一方、主圧縮流体通路70とブリード流体通路74は開いたままとする。接合部材122と吸込み弁体124の軸方向の移動によって、曲がって主伸長流体通路72を開き、それゆえアセンブリのための全容積移行型弁体を提供するための構成部品の必要性がなくなる。
【0029】
ブリード伸長弁アセンブリ68は、オリフィスディスク96、1つまたは複数の支点ディスク98、閉鎖ディスク100、および1つまたは複数のシムディスク102を含む。オリフィスディスク96は保持ナット80と直接係合し、オリフィスディスク96は第1の複数の穴104と第2の複数の穴106を画定する。図3と5Bの断面図は、複数の穴104のうちの1つと複数の穴106のうちの1つを通るように切断されている。図6Aと6Bに示すように、オリフィスディスク96をオリフィスディスク96’に置き換えることができ、複数の穴106は複数の穴またはノッチ106’に置き換えられている。
【0030】
支点ディスク98はオリフィスディスク96に直接隣接して配置され、閉鎖ディスク100は支点ディスク98に直接隣接して配置され、シムディスク102は直接、閉鎖ディスク100とピストン本体60との間に配置される。図5Bに示すように、閉鎖ディスク100は通常、オリフィスディスク96から離間され、それによって流体が穴104を通って流れることができる。伸長行程中、閉鎖ディスク100は図5Bに示すように下方に撓んで穴104と106との間でオリフィスディスク96と接触することにより、穴104を閉じる。
【0031】
穴104と106は、オリフィスディスク96を通る別々の流路を画定する。穴106は常時開の流路を画定し、穴104は通常開の流路を画定するが、穴104を通る流路はピストンアセンブリ32の伸長行程中に閉鎖ディスク100によって閉じられる。
【0032】
圧縮行程中、下側作動チャンバ46と上側作動チャンバ44との間に流体の3つの流れがある。ピストンアセンブリ32の圧縮行程によって、下側作動チャンバ46内、複数の主圧縮流体通路70内、および複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇する。当初、流体は、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴104と106を通ってブリード流体通路74に入り、ブリード流体通路74を通り、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴104と106を通って上側作動チャンバ44へと流れる。流体の第1の流れは、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴106を通る、継続的に開いている流体流路を通り、これによって圧縮行程中、ピストンアセンブリ32のゼロまたはゼロに近い速度で流体が流れる。これに加えて、第2の流体流れはブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴104を通る。これによって、ゼロ速度でのオフセット制振力を排除することが可能となる。
【0033】
ピストンアセンブリ32の速度が増すと、複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇し、閉鎖ディスク100にかけられる流体圧力が図5Aに示すように閉鎖ディスク100を上方に撓ませて、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の複数の穴104を閉じることによって第2の流体流れを遮断し、流体がブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴106を通ってのみ流れるようにする。
【0034】
ピストンアセンブリ32の速度がさらに増すと、複数の主圧縮流体通路70内の流体圧力が上昇し、吸込み弁体94にかけられる流体圧力が弁体88と接合ディスク90の付勢負荷に打ち勝ち、吸込み弁体94が軸方向に移動して複数の主圧縮流体通路70を開き、流体の第3の流れを提供する。
【0035】
伸長行程中も、下側作動チャンバ46と上側作動チャンバ44との間に流体の3つの流れがある。ピストンアセンブリ32の伸長行程によって、上側作動チャンバ44内、複数の主伸長流体通路72内、および複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇する。当初、流体は、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴104と106を通ってブリード流体通路74に入り、ブリード流体通路74を通り、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴104と106を通って下側作動チャンバ46へと流れる。流体の第1の流れは、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴106を通る、継続的に開いている流体流路を通り、これによって伸長行程中、ピストンアセンブリ32のゼロまたはゼロに近い速度で流体が流れる。これに加えて、第2の流体流れはブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴104を通る。これによって、ゼロ速度でのオフセット制振力を排除することが可能となる。
【0036】
ピストンアセンブリ32の速度が増すと、複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇し、閉鎖ディスク100にかけられる流体圧力が図5Bに示すように閉鎖ディスク100を下方に撓ませて、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の複数の穴104を閉じることによって第2の流体流れを遮断し、流体がブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴106を通ってのみ流れるようにする。
【0037】
ピストンアセンブリ32の速度がさらに増すと、複数の主伸長流体通路72内の流体圧力が上昇し、吸込み弁体124にかけられる流体圧力が弁体118と接合ディスク120の付勢負荷に打ち勝ち、吸込み弁体124が軸方向に移動して複数の主伸長流体通路72を開き、流体の第3の流れを提供する。
【0038】
主流体流れの調整は、通路70と72の大きさと数、弁体88と118および接合ディスク90と120の設計のほか、ショックアブソーバ26に関するその他の設計上の特徴を制御することによって制御できる。ブリード流体流れの調整は、ブリード流体通路74の大きさと数、穴104と106の大きさと数を制御することによって、および支点ディスク98と閉鎖ディスク100の厚さを制御することによって制御できる。これは、穴104を通る第2の流路が閉じられるピストン速度を制御する。
【0039】
ここで図7と8を参照すると、閉鎖ディスクアセンブリ200が開示されている。閉鎖ディスクアセンブリ200は閉鎖ディスク100と直接置き換えることができる。閉鎖ディスクアセンブリ200はセンタリングディスク202と閉鎖ディスク204を含む。センタリングディスク202は、閉鎖ディスク204によって画定される開孔206の中に配置される。センタリングディスク202の厚さは閉鎖ディスク204の厚さと等しいかそれより大きく、閉鎖ディスク204が支点ディスク98とシムディスク102との間で軸方向に移動できるようになっている。センタリングディスク202の外径は、支点ディスク98とシムディスク102の外径よりわずかに小さい。典型的には、センタリングディスク202の外径は、同じ外径を有する支点ディスク98とシムディスク102の外径より0.5mm小さい。この構成によって、閉鎖ディスクアセンブリ200の柔軟性が増す。
【0040】
圧縮行程中、下側作動チャンバ46と上側作動チャンバ44との間に流体の3つの流れがある。ピストンアセンブリ32の圧縮行程によって、下側作動チャンバ46内、複数の主圧縮流体通路70内、および複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇する。当初、流体は、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴104と106を通ってブリード流体通路74に入り、ブリード流体通路74を通り、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴104と106を通って上側作動チャンバ44へと流れる。流体の第1の流れは、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴106を通る、継続的に開いている流体流路を通り、これによって圧縮行程中、ピストンアセンブリ32のゼロまたはゼロに近い速度で流体が流れる。これに加えて、第2の流体流れはブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴104を通る。これによって、ゼロ速度でのオフセット制振力を排除することが可能となる。
【0041】
ピストンアセンブリ32の速度が増すと、複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇し、閉鎖ディスクアセンブリ200にかけられる流体圧力が図7に示すように閉鎖ディスク204を上方に撓ませて、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の複数の穴104を閉じることによって第2の流体流れを遮断し、流体がブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴106を通ってのみ流れるようにする。
【0042】
ピストンアセンブリ32の速度がさらに増すと、複数の主圧縮流体通路70内の流体圧力が上昇し、吸込み弁体94にかけられる流体圧力が弁体88と接合ディスク90の付勢負荷に打ち勝ち、吸込み弁体94が軸方向に移動して複数の主圧縮流体通路70を開き、流体の第3の流れを提供する。
【0043】
伸長行程中も、下側作動チャンバ46と上側作動チャンバ44との間に流体の3つの流れがある。ピストンアセンブリ32の伸長行程によって、上側作動チャンバ44内、複数の主伸長流体通路72内、および複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇する。当初、流体は、ブリード圧縮弁アセンブリ64のオリフィスディスク96の穴104と106を通ってブリード流体通路74に入り、ブリード流体通路74を通り、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴104と106を通って下側作動チャンバ46へと流れる。流体の第1の流れは、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴106を通る、継続的に開いている流体流路を通り、これによって伸長行程中、ピストンアセンブリ32のゼロまたはゼロに近い速度で流体が流れる。これに加えて、第2の流体流れはブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴104を通る。これによって、ゼロ速度でのオフセット制振力を排除することが可能となる。
【0044】
ピストンアセンブリ32の速度が増すと、複数のブリード流体通路74内の流体圧力が上昇し、閉鎖ディスクアセンブリ200にかけられる流体圧力が図5Bに示すように閉鎖ディスク204を下方に撓ませて、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の複数の穴104を閉じることによって第2の流体流れを遮断し、流体がブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96の穴106を通ってのみ流れるようにする。
【0045】
ピストンアセンブリ32の速度がさらに増すと、複数の主伸長流体通路72内の流体圧力が上昇し、吸込み弁体124にかけられる流体圧力が弁体118と接合ディスク120の付勢負荷に打ち勝ち、吸込み弁体124が軸方向に移動して複数の主伸長流体通路72を開き、流体の第3の流れを提供する。
【0046】
ここで、図9と10A〜10Dを参照すると、ピストンアセンブリ232はピストン本体60、主圧縮弁アセンブリ62、ブリード圧縮弁アセンブリ264、主伸長弁アセンブリ66、およびブリード伸長弁アセンブリ268を含む。ピストン本体60はピストンロッド34に固定され、複数の主圧縮流体通路70、複数の主伸長流体通路72、および複数のブリード流体通路74を画定する。ピストン本体60はピストンロッド34に形成された肩部と保持ナット80に接する。
【0047】
主圧縮弁アセンブリ62は、支持ワッシャ84、曲げプリロードディスク86、複数の弁体88、接合ディスク90、接合部材92、および吸込み弁体94を含む。支持ワッシャ84は、ピストンロッド34の周囲に螺合式またはスライド式に受けられて、ピストン本体60の上方に配置される。支持ワッシャ84は、ピストロッド34の周囲に、所定の量のプリロードが弁体88と接合ディスク90によって提供されるように位置付けられ、その後、これはピストンロッド34に溶接されるか、当業界で知られているその他の手段によってピストンロッド34に固定される。接合部材92と吸込み弁体94はピストンロッド34に関して軸方向に自由に移動して、主圧縮流体通路70を開閉し、一方、主伸長流体通路72とブリード流体通路74は開いたままとする。接合部材92と吸込み弁体94の軸方向の移動によって、曲がって主圧縮流体通路70を開き、それゆえアセンブリのための全容積移行型弁体を提供するための構成部品の必要性がなくなる。
【0048】
ブリード圧縮弁アセンブリ264は、オリフィスディスク96、支点ディスク98、閉鎖ディスク100、およびウェーブスプリング302または当業界で知られている他のいずれかの付勢部材を含む。オリフィスディスク96はピストン本体60に直接係合し、オリフィスディスク96は第1の複数の穴またはスロット104を画定する。
【0049】
支点ディスク98はオリフィスディスク96に直接隣接して配置され、閉鎖ディスク100は支点ディスク98に直接隣接して配置され、ウェーブスプリング302は直接、閉鎖ディスク100と主伸長弁アセンブリ66の吸込み弁体124との間に配置される。オリフィスディスク96、支点ディスク98および閉鎖ディスク100は、ウェーブスプリング302の撓みによって保持ナット80の周囲で軸方向にスライドできる。図10Aに示すように、閉鎖ディスク100は通常、オリフィスディスク96から離間され、それによって流体は図10Aに示すようにスロット104を通って流れることができる。流体は、スロット104を通って軸方向とスロット104を通って半径方向との両方に流れる。圧縮行程中、閉鎖ディスク100は、図10Bに示すように上方に撓んでオリフィスディスク96と接触することにより、スロット104を通る軸方向の流れを阻止し、一方、スロット104を通る半径方向の流れは可能にする。
【0050】
スロット104はオリフィスディスク96を通る2つの流路を画定する。半径方向の流路は常時開の流路を画定し、軸方向の流路は、ピストンアセンブリ32の圧縮行程中に閉鎖ディスク100によって閉鎖される流路を画定する。
【0051】
主伸長弁アセンブリ66は、支持ワッシャ114、曲げプリロードディスク116、複数の弁体118、接合ディスク120、接合部材122、および吸込み弁体124を含む。支持ワッシャ114は、保持ナット80の周囲に螺合式またはスライド式に受けられ、ピストン本体60の下方に配置される。支持ワッシャ114は保持ナット80の周囲に、所定の量のプリロードが弁体118と接合ディスク120によって提供されるように位置付けられ、その後、これは保持ナット80に溶接されるか、当業界で知られているその他の手段によって保持ナット80に固定される。接合部材122と吸込み弁体124はピストンロッド34に関して軸方向に自由に移動し、主伸長流体通路72を開閉し、一方、主圧縮流体通路70とブリード流体通路74は開いたままとする。接合部材122と吸込み弁体124の軸方向の移動によって、曲がって主伸長流体通路72を開き、それゆえアセンブリのための全容積移行型弁体を提供するための構成部品の必要性がなくなる。
【0052】
ブリード伸長弁アセンブリ268は、オリフィスディスク96、支点ディスク98、閉鎖ディスク100、ウェーブスプリング302または当業界で知られているその他の付勢部材を含む。オリフィスディスク96はピストン本体60と直接係合し、オリフィスディスク96は第1の複数のスロット104を画定する。図9と10Bの断面図は、複数のスロット104のうちの1つを通るように切断されている。
【0053】
支点ディスク98はオリフィスディスク96に直接隣接して配置され、閉鎖ディスク100は支点ディスク98に直接隣接して配置され、ウェーブスプリング302は直接、閉鎖ディスク100と主圧縮弁アセンブリ62の吸込み弁体94との間に配置される。オリフィスディスク96、支点ディスク98、および閉鎖ディスク100は、ウェーブスプリング302の撓みによって保持ナット80の周囲で軸方向にスライドすることができる。図10Cに示すように、閉鎖ディスク100は通常、オリフィスディスク96から離間され、それによって流体は図10Cに示すようにスロット104を通って流れることができる。流体は、スロット104を通って軸方向とスロット104を通って半径方向との両方に流れる。伸長行程中、閉鎖ディスク100は、図10Dに示すように下方に撓んでオリフィスディスク96と接触することにより、スロット104を通る軸方向の流れを阻止し、一方、スロット104を通る半径方向の流れは可能にする。
【0054】
スロット104は、オリフィスディスク96を通る2つの流路を画定する。半径方向の流れは常時開の流路を画定し、軸方向の流れは、ピストンアセンブリ32の伸長行程中に閉鎖ディスク100によって閉じられる流路を画定する。
【0055】
圧縮行程中、下側作動チャンバ46と上側作動チャンバ44との間に流体の3つの流れがある。ピストンアセンブリ32の圧縮行程によって、下側作動チャンバ46内と複数の主圧縮流体通路70内の流体圧力が上昇する。当初、流体は、ブリード圧縮弁アセンブリ264のオリフィスディスク96のスロット104を通って軸方向と半径方向の両方でブリード流体通路74へと入り、ブリード流体通路74を通って、上側作動チャンバ44へと流れる。図10Aに示すように、流体の第1の流れは、ブリード圧縮弁アセンブリ264のオリフィスディスク96のスロット104を通る継続的に開放している半径方向の流体流路を通り、これによって圧縮行程中にピストンアセンブリ32のゼロまたはゼロに近い速度で流体が流れる。これに加えて、第2の流体流れはブリード圧縮弁アセンブリ264のオリフィスディスク96のスロット104を通って軸方向である。これによって、ゼロ速度でのオフセット制振力を排除することが可能となる。
【0056】
ピストンアセンブリ32の速度が増すと、下側作動チャンバ46内の流体圧力が上昇し、閉鎖ディスク100にかけられる流体圧力が閉鎖ディスク100を図10Bに示すように上方に弾性的に撓ませて、ブリード圧縮弁アセンブリ264のオリフィスディスク96のスロット104を通る軸方向の流れを閉鎖して、第2の流体流れを遮断し、流体は、ブリード圧縮弁アセンブリ264のオリフィスディスク96のスロット104を通って半径方向にのみ流れることができる。
【0057】
ピストンアセンブリ32の速度がさらに増すと、複数の主圧縮流体通路70内の流体圧力が上昇し、吸込み弁体94にかけられる流体圧力が弁体88と接合ディスク90の付勢負荷に打ち勝ち、吸込み弁体94が軸方向に移動して複数の主圧縮流体通路70を開き、流体の第3の流れを提供する。
【0058】
伸長行程中にも、下側作動チャンバ46と上側作動チャンバ44との間に流体の3つの流れがある。ピストンアセンブリ32の伸長行程によって、上側作動チャンバ44内と複数の主伸長流体通路72内の流体圧力が上昇する。当初、流体は、ブリード伸長弁アセンブリ268のオリフィスディスク96のスロット104を通って軸方向と半径方向の両方でブリード流体通路74へと入り、ブリード流体通路74を通って、下側作動チャンバ46へと流れる。図10Cに示すように、流体の第1の流れは、ブリード伸長弁アセンブリ268のオリフィスディスク96のスロット104を通る継続的に開放している半径方向の流体流路を通り、これによって伸長行程中にピストンアセンブリ32のゼロまたはゼロに近い速度で流体が流れる。これに加えて、第2の流体流れはブリード伸長弁アセンブリ268のオリフィスディスク96のスロット104を通って軸方向である。これによって、ゼロ速度でのオフセット制振力を排除することが可能となる。
【0059】
ピストンアセンブリ32の速度が増すと、上側作動チャンバ44内の流体圧力が上昇し、閉鎖ディスク100にかけられる流体圧力が閉鎖ディスク100を図10Dに示すように下方に弾性的に撓ませて、ブリード伸長弁アセンブリ68のオリフィスディスク96のスロット104を通る軸方向の流れを閉鎖して、第2の流体流れを遮断し、流体は、ブリード伸縮弁アセンブリ68のオリフィスディスク96のスロット104を通って半径方向にのみ流れることができる。
【0060】
ピストンアセンブリ32の速度がさらに増すと、複数の主伸長流体通路72内の流体圧力が上昇し、吸込み弁体124にかけられる流体圧力が弁体118と接合ディスク120の付勢負荷に打ち勝ち、吸込み弁体124が軸方向に移動して複数の主伸長流体通路72を開き、流体の第3の流れを提供する。
【0061】
主流体流れの調整は、通路70と72の大きさと数、弁体88と118および接合ディスク90と120の設計のほか、ショックアブソーバ26のその他の設計上の特徴を制御することによって制御可能である。ブリード流体流れの調整は、ブリード流体通路74の大きさと数、スロット104の大きさと数を制御することによって、および支点ディスク98と閉鎖ディスク100の厚さを制御することによって制御可能である。これは、スロット104を通る軸方向の第2の流路が閉じられるビストン速度を制御する。
【0062】
実施形態の前述の説明は、例示および説明のために提供した。これは網羅的であること、または本開示を限定することを意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または特徴部は、通常、その特定の実施形態に限定されるのではなく、具体的に髄または説明していなくても、このことが当てはまるのであれば、選択された実施形態において交換可能であり、使用することができる。これらはまた、様々な方法で変えることもできる。そのような変更は、本開示からの逸脱とみなすべきではなく、そのような改良のすべては、本開示の範囲内に含まれることを意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D