特許第6325077号(P6325077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325077
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】核酸を抽出するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180507BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12P19/34 A
【請求項の数】30
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2016-502797(P2016-502797)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-518116(P2016-518116A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】US2014028472
(87)【国際公開番号】WO2014144174
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】61/799,768
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507051972
【氏名又は名称】アボツト・モレキユラー・インコーポレイテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンドリング,ジェラード・ジェイ
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−519027(JP,A)
【文献】 特表2004−518421(JP,A)
【文献】 特表2013−504330(JP,A)
【文献】 特表2010−522544(JP,A)
【文献】 特表2008−537677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞原料から核酸を抽出する方法であって、
a)i)細胞原料及びii)1つ以上のアミンモノマーを含む抽出水溶液を提供する工程と、ここで、前記アミンモノマーは、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン及び3−アミノ−1−プロパノールからなる群から選択される第1級アミンモノマーであり、前記抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約30〜50%である
b)前記細胞原料と前記抽出水溶液とを接触させ、細胞材料を溶解して核酸を抽出する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
アミンモノマーが、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミンモノマーが、1,3−ジアミノプロパンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アミンモノマーが、3−アミノ−1−プロパノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抽出水溶液が、カオトロープをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノール及びブタノールからなる群の1つ以上から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抽出水溶液が、界面活性剤及びアルコールの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウム及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40及びTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
界面活性剤の濃度が、約8%から約15%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルコールが、エタノール及びブタノールからなる群の1つ以上から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
アルコールの濃度が約15%から約25%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mである、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
細胞原料が、生細胞原料及び固定細胞原料から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
生細胞原料が、単細胞懸濁液を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞懸濁液が細菌を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細菌がマイコバクテリアである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細胞懸濁液が酵母を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
抽出水溶液が酵素フリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
抽出水溶液がプロテアーゼフリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
固定細胞原料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
細胞原料から核酸を抽出するのに適切な抽出水溶液を含む組成物であって、1つ以上のアミンモノマー;1つ以上のカオトロピック試薬、1つ以上の界面活性剤及び1つ以上の有機溶媒を含み、前記アミンモノマーは、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン及び3−アミノ−1−プロパノールからなる群から選択される第1級アミンモノマーであり、前記抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約30〜50%である、組成物。
【請求項22】
アミンモノマーが、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
アミンモノマーが、1,3−ジアミノプロパンである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
アミンモノマーが、3−アミノ−1−プロパノールである、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノール及びブタノールからなる群の1つ以上から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウム及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40及びTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
界面活性剤の濃度が約8%から約15%である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
有機溶媒がアルコールであり、前記アルコールが、エタノール及びブタノールからなる群の1つ以上から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
アルコールの濃度が約15%から約25%である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mである、請求項25に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞原料、特にパラフィン包埋組織試料(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋試料:FFPE)から核酸を抽出するための従来技術の方法は、複雑な多段階工程を含む。
【0002】
痰は非常に粘性であり、容易に核酸抽出処理されないので、例えば、痰中のマイコバクテリアから核酸を抽出するのは困難である。典型的には、N−アセチル−L−システイン−水酸化ナトリウム(NALC−NaOH)処理(Coulter and Charache,Sputum digestion/decontamination for Mycobacteriology culture−Guidelines,SMILE,John Hopkins University,2008)を使用して痰試料を可溶化し、遠心分離によってマイコバクテリアをペレット化する。NALC−NaOH処理はマイコバクテリアを殺傷しないので、熱および/または化学物質によるさらなる処理を行って試料を不活性化する。幾つかの細胞溶解技術を使用して、細胞ペレットから核酸を抽出し得る。超音波処理(Colin,et al.,Method and apparatus for ultrasonic lysis of biological cells,米国特許第6,686,195号明細書,2004)、ビーズビーティング(Melendes,et al.,Cell disrupting apparatus,米国特許第5,464,773号明細書,1995)、酵素(Salazar and Asenjo,Enzymatic lysis of microbial cells,Biotechnol Lett(2007)29:985−994)、混合(ボルテックス)、機械的剪断およびカオトロピック溶液(Das,et al.,Method for detecting pathologenic mycobacteria in clinical specimens,米国特許第7,638,309号明細書,2009)は、核酸を抽出するためにペレット細胞を破壊するのに使用される方法の一部である。これらの工程を実際の抽出手順に追加すると、方法全体が複雑で時間を要するものになる。
【0003】
核酸(例えば、DNA)試料の調製では、酵母からの核酸抽出もより困難な技術の1つである。酵母は真菌であり、溶解困難な細胞壁を有する(Lipke and Ovalle,Cell wall architecture in yeast:new structure and new challenges,J Bacteriol 1998,180(15):3735)。カオトロピック塩および界面活性剤を使用する溶解緩衝液または従来技術のアルカリ溶解プロトコールは、酵母細胞を溶解するのに全く有効ではないが、さらなる工程と共に使用される。これらのさらなる工程は、2つの主なグループ(物理的方法および酵素的方法)に分けられ得る。物理的方法は、細胞の超音波処理(米国特許第6,686,195号明細書)(粒子の粉砕の存在にかかわらず)、粒子の粉砕を伴う強力な撹拌(米国特許第5,464,773号明細書)(ビーズビーティング、ボールミル)、または高圧力機械的剪断(例えば、当技術分野で公知のフレンチ圧力セルプレス)の使用を含み得る。酵素的方法は、より慣例的な技術によって細胞を溶解し得るように細胞壁を弱化する特定の酵素、例えばザイモラーゼ(Salazar and Asenjo,ibid;米国特許第5,688,644号明細書)に依拠する。
【0004】
FFPE材料からの核酸の抽出、濃縮および単離は非常に複雑な工程であり、有機溶媒で組織を脱パラフィン処理し、プロテアーゼで組織を消化し、次いで組織から核酸を抽出する必要がある。これらの従来技術の方法は、複数の溶液および複数の工程を使用する。使用される有機溶媒は、通常、水溶液と非混和性である。
【0005】
従って、細胞原料、特にマイコバクテリア、酵母およびFFPE試料からの核酸の効率的な抽出、濃縮、単離および精製を可能にする組成物および方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,686,195号明細書
【特許文献2】米国特許第5,464,773号明細書
【特許文献3】米国特許第7,638,309号明細書
【特許文献4】米国特許第5,688,644号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Coulter and Charache,Sputum digestion/decontamination for Mycobacteriology culture−Guidelines,SMILE,John Hopkins University,2008
【非特許文献2】Salazar and Asenjo,Enzymatic lysis of microbial cells,Biotechnol Lett(2007)29:985−994
【非特許文献3】Lipke and Ovalle,Cell wall architecture in yeast:new structure and new challenges,J Bacteriol 1998,180(15):3735
【発明の概要】
【0008】
本発明は、細菌、酵母およびホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を含む細胞原料から核酸を抽出するための一段法を提供することによって、核酸抽出に関する従来技術の問題を解決する。一実施形態では、本発明は、一段階で細胞を溶解して核酸を精製することができる抽出水溶液を含む。
【0009】
本発明は、FFPE組織を含む試料から核酸を直接抽出することを可能にする核酸抽出方法を対象とする。この方法は、極性有機溶媒および非極性有機溶媒ならびにカオトロープおよび界面活性剤の組み合わせを利用して、パラフィンを可溶化し、組織を破壊し、核酸を放出させる。次いで、例えば、単一溶液中に粒子を含有するシリカ上に核酸を捕捉し得る。使用する場合、捕捉粒子は磁性であり得る。この方法では、別個の脱パラフィン処理工程またはプロテアーゼ消化が存在しない。有機溶媒は完全に混和性であるので、この方法では相分離が起こらない。前記抽出方法は、カオトロープ、例えば尿素またはグアニジンチオシアネートおよび界面活性剤を含有する水溶液と組み合わせて、アミンモノマー、例えば2,2’(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)を使用する。前記抽出方法はまた、場合により、他の有機溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、様々なアルコールおよびリモネンを含有し得る。前記方法は非常に簡便である。アミンモノマー(例えば、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上)を含有する抽出緩衝液と試料(例えば、FFPE組織試料)を混合する。核酸の放出を助けるために、混合物を場合により加温または加熱し得る。核酸を微小粒子(または当業者に公知の他の適切な固体基材)上に捕捉し得る。例えば、シリカコーティング磁性粒子を混合物に追加して、核酸を粒子上に捕捉し得る。当業者に公知の他の核酸捕捉方法も、本発明で使用するのに適切である。さらなる溶液は必要なく、脱パラフィン処理工程もプロテアーゼ消化もない。粒子を洗浄して(または別の方法で処理して)不純物を除去し、水または希釈緩衝液を用いてシリカ粒子から核酸を放出させる。
【0010】
限定されないが、マイコバクテリアおよび酵母などの他の細胞材料試料からの核酸の濃縮、抽出、単離および精製に関しても、上記方法および組成物が適切である。
【0011】
従来技術の方法とは異なり、本発明の利点は、被験試料からの核酸の抽出に、細胞材料を溶解するための酵素を使用する必要がないことである。
【0012】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、i)細胞原料およびii)1つ以上のアミンモノマーを含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明はまた、アミンモノマーが第1級アミンモノマーであることを企図する。本発明は、アミンモノマーが、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上であることをさらに企図する。抽出水溶液はカオトロープを含み得ること、ならびにカオトロープは、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることがさらに企図される。抽出水溶液は、界面活性剤およびアルコールの1つ以上を含み得ること、ならびに界面活性剤は、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択され得ることがさらに企図される。さらに、前記界面活性剤の最終濃度は、約1%から15%、約8%から約15%または約10%であり得る。アルコールは、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されること、ならびにアルコールの最終濃度は、約10%から約40%または約20から約35%であることがさらに企図される。
【0013】
前記抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約15%から約50%または約20%から約45%であることが企図される。前記抽出水溶液中のカオトロープの濃度は、約4Mから約5Mであることがさらに企図される。
【0014】
本発明は、原料が、生細胞原料および固定細胞原料から選択され得ることを企図する。さらに、生細胞原料は細胞懸濁液を含み得、幾つかの実施形態では、単一の懸濁液は細菌を含むことが企図される。細菌は、マイコバクテリアを含み得る。他の実施形態では、細胞懸濁液は、酵母を含み得る。
【0015】
本発明の抽出水溶液は酵素フリーであり得、さらにはプロテアーゼフリーであり得ることがさらに企図される。
【0016】
抽出水溶液は、好ましくは約10から約13のpH、より好ましくは約12から約13のpHを有することがさらに企図される。
【0017】
固定細胞原料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料を含み得ることがさらに企図される。
【0018】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出するのに適切な抽出水溶液であって、1つ以上のアミンモノマー;1つ以上のカオトロピック試薬、1つ以上の界面活性剤および1つ以上の有機溶媒を含む組成物を企図する。アミンモノマーは第1級アミンモノマーであること、ならびにアミンモノマーは、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上から選択され得ることがさらに企図される。抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約15%から約50%または約20%から約45%であることがさらに企図される。さらに、カオトロープは、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択され得ることが企図される。抽出水溶液中のカオトロープの濃度は、約4Mから約5Mであることがさらに企図される。界面活性剤は、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択され得ること、ならびに最終濃度は、約1%から15%、約8%から約15%または約10%であり得ることがさらに企図される。アルコールは、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択され得ること、ならびにアルコールの最終濃度は、約10%から約40%または約20から約35%であり得ることがさらに企図される。
【0019】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、i)細胞原料およびii)水酸化アンモニウムを含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明は、前記抽出水溶液が1つ以上のカオトロープをさらに含むことをさらに企図する。本発明は、カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されること、ならびに界面活性剤の濃度が、約1%から15%、約8%から約15%または約10%であることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されること、ならびにアルコールの濃度が、約10%から約40%または約20から約35%であることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。本発明は、細胞原料が、生細胞原料および固定細胞原料から選択されることをさらに企図する。本発明は、生細胞原料が単細胞懸濁液を含むことをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が細菌を含むことをさらに企図する。本発明は、細菌がマイコバクテリアであることをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が酵母を含むことをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が酵素フリーであることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がプロテアーゼフリーであることをさらに企図する。本発明は、固定細胞原料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料を含むことをさらに企図する。
【0020】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、i)細胞原料およびii)尿素およびグアニジンチオシアネート(GITC)の1つ以上を含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されること、ならびに前記界面活性剤の濃度が、約1%から15%、約8%から約15%または約10%であることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されること、ならびに前記アルコールの濃度が、約10%から約40%または約20から約35%であることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中の尿素およびグアニジンチオシアネート(GITC)の1つ以上の総濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。本発明は、細胞原料が、生細胞原料および固定細胞原料から選択されることをさらに企図する。本発明は、生細胞原料が単細胞懸濁液を含むことをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が細菌を含むことをさらに企図する。本発明は、細菌がマイコバクテリアであることをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が酵母を含むことをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が酵素フリーであることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がプロテアーゼフリーであることをさらに企図する。本発明は、固定細胞原料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料を含むことをさらに企図する。本発明のこの実施形態の抽出水溶液はまた、15%から約50%または約20%から約45%の濃度のアミンモノマーを含み得る。
【0021】
本発明は、マイコバクテリウム(Mycobacterium)を不活性化および殺傷する方法であって、i)マイコバクテリウム(Mycobacterium)を含む細胞原料およびii)1つ以上のアミンモノマーを含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明は、アミンモノマーが第1級アミンモノマーであることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)であることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが1,3−ジアミノプロパンであることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが3−アミノ−1−プロパノールであることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)または1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)であることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がカオトロープをさらに含むことをさらに企図する。本発明は、カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、前記界面活性剤の濃度が、約1%から15%、約8%から約15%または約10%であることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、前記アルコールの濃度が、約10%から約40%または約20から約35%であることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度が、約15%から約50%または約20%から約45%であることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。本発明は、マイコバクテリウム(Mycobacterium)を含む原料が単細胞懸濁液を含むことをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が酵素フリーであることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がプロテアーゼフリーであることをさらに企図する。本発明は、前記方法が、前記マイコバクテリウム(Mycobacterium)から核酸をさらに抽出することをさらに企図する。
【0022】
本発明はまた、原料が、in situハイブリダイゼーション(FISH)によって事前にアッセイされた試料を含み得ることを企図する。FISHは当業者に公知である。例えば、標的のプレスクリーニングにまたはコンパニオンアッセイとして、FISH分析を使用し得る。次いで、本発明の組成物および手順を用いて核酸を抽出し、続いて例えばPCRを行うことによって、標的について陽性の試料を定量し得る。
【0023】
一実施形態では、本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、i)細胞原料およびii)1つ以上のアミンモノマーを含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明は、アミンモノマーが第1級アミンモノマーであることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)であることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが、1,3−ジアミノプロパンおよび3−アミノ−1−プロパノールの1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がカオトロープをさらに含むことをさらに企図する。本発明は、カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、約8%v/vから約15%v/vであることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、前記アルコールの濃度が、約15%v/vから約25%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度が、約30%v/vから約50%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。本発明は、細胞原料が、生細胞原料および固定細胞原料から選択されることをさらに企図する。本発明は、生細胞原料が単細胞懸濁液を含むことをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が細菌を含むことをさらに企図する。本発明は、細菌がマイコバクテリアであることをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が酵母を含むことをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が酵素フリーであることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がプロテアーゼフリーであることをさらに企図する。本発明は、固定細胞原料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料を含むことをさらに企図する。
【0024】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出するのに適切な抽出水溶液を含む組成物であって、1つ以上のアミンモノマー;1つ以上のカオトロピック試薬、1つ以上の界面活性剤および1つ以上の有機溶媒を含む組成物を企図する。本発明は、アミンモノマーが第1級アミンモノマーであることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)であることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが、1,3−ジアミノプロパンおよび3−アミノ−1−プロパノールの1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がカオトロープをさらに含むことをさらに企図する。本発明は、カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、約8%v/vから約15%v/vであることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、前記アルコールの濃度が、約15%v/vから約25%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度が、約30%v/vから約50%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。
【0025】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、i)細胞原料およびii)水酸化アンモニウムを含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明は、抽出水溶液がカオトロープをさらに含むことをさらに企図する。本発明は、カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、約8%v/vから約15%v/vであることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、前記アルコールの濃度が、約15%v/vから約25%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。本発明は、細胞原料が、生細胞原料および固定細胞原料から選択されることをさらに企図する。本発明は、生細胞原料が単細胞懸濁液を含むことをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が細菌を含むことをさらに企図する。本発明は、細菌がマイコバクテリアであることをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が酵母を含むことをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が酵素フリーであることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がプロテアーゼフリーであることをさらに企図する。本発明は、固定細胞原料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料を含むことをさらに企図する。
【0026】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、i)細胞原料およびii)尿素およびグアニジンチオシアネート(GITC)の1つ以上を含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、約8%v/vから約15%v/vであることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、前記アルコールの濃度が、約15%v/vから約25%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中の尿素およびグアニジンチオシアネート(GITC)の1つ以上の総濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。本発明は、細胞原料が、生細胞原料および固定細胞原料から選択されることをさらに企図する。本発明は、生細胞原料が単細胞懸濁液を含むことをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が細菌を含むことをさらに企図する。本発明は、細菌がマイコバクテリアであることをさらに企図する。本発明は、細胞懸濁液が酵母を含むことをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が酵素フリーであることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がプロテアーゼフリーであることをさらに企図する。本発明は、固定細胞原料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料を含むことをさらに企図する。
【0027】
本発明は、マイコバクテリウム(Mycobacterium)を不活性化および殺傷する方法であって、i)マイコバクテリウム(Mycobacterium)を含む細胞原料およびii)1つ以上のアミンモノマーを含む抽出水溶液を提供すること;前記細胞原料と前記抽出溶液とを接触させ、前記細胞材料を溶解して核酸を抽出することを含む方法を企図する。本発明は、アミンモノマーが第1級アミンモノマーであることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)であることをさらに企図する。本発明は、アミンモノマーが、1,3−ジアミノプロパンおよび3−アミノ−1−プロパノールの1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がカオトロープをさらに含むことをさらに企図する。本発明は、カオトロープが、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含むことをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100からなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、界面活性剤が、約8%v/vから約15%v/vであることをさらに企図する。本発明は、アルコールが、エタノールおよびブタノールからなる群の1つ以上から選択されることをさらに企図する。本発明は、前記アルコールの濃度が、約15%v/vから約25%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度が、約30%v/vから約50%v/vであることをさらに企図する。本発明は、前記抽出水溶液中のカオトロープの濃度が、約4Mから約5Mであることをさらに企図する。本発明は、マイコバクテリウム(Mycobacterium)を含む原料が単細胞懸濁液を含むことをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液が酵素フリーであることをさらに企図する。本発明は、抽出水溶液がプロテアーゼフリーであることをさらに企図する。本発明は、前記方法が、前記マイコバクテリウム(Mycobacterium)から核酸をさらに抽出することをさらに企図する。
【0028】
本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含み、前記抽出水溶液が窒素含有溶媒を含む方法を企図する。
【0029】
本発明は、固定組織細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含み、前記抽出水溶液が窒素含有溶媒を含む方法を企図する。
【0030】
本発明は、細菌細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含み、前記抽出水溶液が窒素含有溶媒を含む方法を企図する。
【0031】
本発明は、酵母細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含み、前記抽出水溶液が窒素含有溶媒を含む方法を企図する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1のアッセイの増幅曲線を示す。
図2図1のデータに関する一元ANOVA分析の結果を示す。
図3】実施例2のアッセイの増幅曲線を示す。
図4図3のデータに関する一元ANOVA分析の結果を示す。
図5】実施例3のアッセイの増幅曲線を示す。
図6図5のデータに関する一元ANOVA分析の結果を示す。
図7】実施例4の酵母抽出後のDNA濃度の結果を示す。
図8A】実施例4のアッセイの増幅曲線を示す。
図8B】実施例4のアッセイの増幅曲線を示す。
図8C】実施例4のアッセイの増幅曲線を示す。
図8D】実施例4のアッセイの増幅曲線を示す。
図8E】実施例4のアッセイの増幅曲線を示す。
図8F】実施例4のアッセイの増幅曲線を示す。
図9図8のデータに関する一元ANOVA分析の結果を示す。
図10A】実施例5のアッセイの増幅曲線を示す。
図10B】実施例5のアッセイの増幅曲線を示す。
図10C】実施例5のアッセイの増幅曲線を示す。
図10D】実施例5のアッセイの増幅曲線を示す。
図10E】実施例5のアッセイの増幅曲線を示す。
図11】Qiagen、Promegaおよび本発明のアミン溶媒(3A1P)抽出プロトコールによる、結腸直腸癌(CRC)検体の(ガラススライド上にマウントしていない)5ミクロンFFPEカールからのDNA抽出を示す。
図12図11のアッセイ試料のΔCt(dCt)を示す。
図13】Qiagen、Promegaおよび本発明のアミン溶媒(3A1P)抽出プロトコールによる、肺癌検体の(ガラススライド上にマウントしていない)5ミクロンFFPEカールからのDNA抽出を示す。
図14図13のアッセイ試料のΔCt(dCt)を示す。
図15】Qiagen、Promegaおよび本発明のアミン溶媒(3A1P)抽出プロトコールによる、黒色腫検体の(ガラススライド上にマウントしていない)5ミクロンFFPEカールからのDNA抽出を示す。
図16図15のアッセイ試料のΔCt(dCt)を示す。
図17】スライドにマウントしたFFPE検体に使用したアミン溶媒抽出プロトコールを示す。検体は、B型肝炎ウイルス内部対照(HBV−IC;Abbott Laboratories,Abbott Park,II)であった。DNAの量は既知の変量であるため、これらのスライドを選択した。LB−EtOH−3A1P中でHBV ICスライドを抽出し、CSCによって単離したか、またはLB−3A1P中でガラススライドと共にインキュベートしてから、抽出後にDNA単離EtOHを追加した。この図は、ガラススライドが相当量のDNAに結合したことを示す。
図18】抽出手順中に磁性微粒子(MMP)を追加することにより、ガラススライドなしの場合の回収と同等の回収が得られたことを示す。
図19】乳房腫瘍FFPEガラススライドに関する同等の実験を示す。
図20図20は1から4つのスライドの抽出を示しており、スライドを抽出手順に追加することによって回収を増加させ得ることを実証している。
図21図20のデータの一元ANOVA分析を示す。
図22】Aは、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)に関する、溶媒によるデータの一元分析の結果を示す。Bは、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に関する、溶媒によるデータの一元分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一実施形態では、本発明は、一段階で細胞を溶解して核酸を精製することができる抽出水溶液を含む。これに関して、本発明は、少なくとも1つの含窒素基を有する1つ以上の化合物を含む抽出水溶液または水性抽出溶液(抽出組成物)を使用して、細胞原料から核酸を抽出するのに適切な方法および組成物を提供する。好ましい実施形態では、化合物は、アミンモノマーである。水溶液および水性溶液は、溶媒として水を有すると定義される。しかしながら、これは、これらが水に混和性である場合には非水性成分が含まれることを除外するものではない。
【0034】
用語「細胞原料」は、本明細書では、細胞または、一部の場合には細胞物質(即ち、事前に溶解された細胞構成成分)を含む任意の生物学的材料を意味すると定義される。細胞原料は新鮮なもの(即ち、固定されていないもの)であり得るか、または当業者に公知の方法によって固定されたものであり得る。ホルマリン固定(および他のアルデヒドを使用する手順)が一般的な固定手順であるが、他の方法が存在し、当業者に公知である。細胞原料はまた、1つ以上の組織から構成され得る。
【0035】
「核酸の抽出」は、本明細書では、必要な場合にはさらなる処理のために溶解物から取り出すことができる程度に、他の細胞成分から十分な量で細胞原料由来の核酸を放出させることを意味する。換言すれば、核酸を濃縮する。
【0036】
本発明の核酸に関する「濃縮された」または「濃縮」は、細胞材料を本発明の方法および組成物に供する前の細胞原料の他の構成成分(continuants)と比べて核酸が高濃度であることを意味する。換言すれば、核酸を「部分的に精製する」か、または「部分的に単離する」。
【0037】
本発明の核酸に関する「精製」または「精製するための」は、試料から細胞原料の構成成分(continuants)を除去することを意味する。本明細書で使用される用語「精製された」は、天然の環境から取り出され、単離または分離された核酸配列を指す。本発明の核酸に関する「単離」および「精製」は、核酸が、これが天然に結合している他の細胞成分から10%超フリー、20%超フリー、30%超フリー、40%超フリー、50%超フリー、60%超フリー、70%超フリー、80%超フリー、90%超フリー、95%超フリーおよび99%超フリーであることを意味する。
【0038】
本明細書で使用される「単一段階」は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、一段階で材料からDNAを放出させて濃縮または精製する方法を指すものとする。
【0039】
固定組織に関する本発明の実施形態では、本明細書に記載される一段階法は、DNAを放出させるために材料の個別的な脱パラフィン処理も、材料の酵素消化も必要ない。特定の実施形態では、DNAを固体支持体(例えば、シリカ含有表面)上に捕捉するが、DNAを放出させるために材料の脱パラフィン処理も、材料の酵素消化も必要ない。固定組織に関する本発明の実施形態では、本明細書に記載される一段階法は、他の溶解方法も、材料の酵素消化も必要ない。特定の実施形態では、DNAを固体支持体(例えば、シリカ含有表面)上に捕捉するが、細胞原料からDNAを放出させるために試料の溶解は必要ない。特定の実施形態では、酵母DNAを固体支持体(例えば、シリカ含有表面)上に捕捉するが、細胞原料からDNAを放出させるために試料の溶解は必要ない。細菌細胞原料に関する本発明の実施形態では、本明細書に記載される一段階法は、他の溶解方法も、材料の酵素消化も必要ない。特定の実施形態では、DNAを材料から放出させて濃縮または精製するが、細菌の不活性化は必要ない。特定の他の実施形態では、DNAを固体支持体(例えば、シリカ含有表面)上に捕捉するが、細胞原料からDNAを放出させるために試料の溶解も、材料の酵素消化も必要ない。
【0040】
本発明は、任意の特定の細胞原料供給源に限定されない。細胞原料は、核酸を含有する任意の種類の細胞または組織から得られ得る。これとしては、ウイルスおよびウイルスを含有する細胞、細菌(例えば、マイコバクテリア(Mycobacteria)属種の1つ以上、例えばマイコバクテリウム・ツベルクロシス(M.tuberculosis))および細菌を含有する細胞、すべての他の原核生物細胞、酵母(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属種またはカンジダ(Candida)属種の1つ以上、例えばカンジダ・アルビカンス(C.albicans))、すべての他の真菌、植物(即ち、植物体)ならびに動物細胞などが挙げられる。細胞原料は、最近得られた、生きているものであり得るか、または生きていないものであり得る。同様に、細胞原料は、当業者に公知の保存化合物および固定化合物ならびに保存技術および固定技術(これらの概要は、以下に見られ得る。)によって保存された試料であり得る。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は、本発明で使用するのに特に適切である。本発明の方法および組成物は、マイコバクテリアおよび他の病原性生物を溶解し、これによりこれらを殺傷し、試料から混入の危険性を低減または排除する。
【0041】
本発明は、新鮮な(即ち、固定されていない)細胞原料のいかなる前処理も前操作も必要としない。さらに、前処理手順または前操作手順を使用する場合、本発明は、いかなる特定の前処理手順にも前抽出操作手順にも限定されない。しかしながら、一部の場合には、細胞原料の前処理または前操作が有益であり得る。例えば、遠心分離によって懸濁細胞を濃縮することが望ましい場合がある。また、より小さな切片に加工(例えば、切断またはグラウンド)する場合には、(新鮮な、固定された、または固定および包埋された)大きな組織は、操作がより容易である。試料を前処理するのに適切な方法は当技術分野で公知であり、限定されないが、細胞の超音波処理(特許第6,686,195号)(粒子の粉砕の存在にかかわらず)、混合(例えば、ボルテックス)、粒子の粉砕を伴う強力な撹拌(米国特許第5,464,773号明細書)(ビーズビーティング、ボールミル)、または高圧力機械的剪断(例えば、当技術分野で公知のフレンチ圧力セルプレス)の使用が挙げられる。さらに、細胞壁を弱化する特定の酵素、例えばザイモラーゼ(Salazar and Asenjo,ibid;米国特許第5,688,644号明細書)を使用する酵素的方法。さらにまた、特定の細胞型を標的とする場合には、より大きな集団から特定の細胞型を単離することが好ましい場合がある。しかしながら、操作容易性および便宜性の理由により、また、本発明は前処理も前操作も必要としないため、これらの手順は推奨されない。
【0042】
本発明の実施形態では、本発明は、1つ以上のアミンモノマーを含む抽出溶液(組成物)を使用する。本発明は、いかなる特定の理論にも限定されないが、本発明との関連では、1つ以上のアミンモノマーを有する試薬は、溶媒として機能すると考えられる。1つ以上のアミンモノマーを含む試薬の例としては、例えば、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン):C16)(EDBE)が挙げられる。EDBEは、第1級アミンモノマーである。さらに、本発明は、いかなる特定のアミンモノマーにも第1級アミンモノマーにも限定されない。例えば、以下に例示されているように、第1級アミンモノマージアミノプロパン(例えば、1,2−ジアミノプロパンおよび1,3−ジアミノプロパン)も本発明で有用である。さらに、以下に例示されているように、3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)は本発明で有用であり、上記他の2つのアミンモノマーよりも低い毒性を示す。本発明の抽出溶液中のアミンモノマーの最終濃度は、約15%から約50%または約20%から約45%または約40%である。予備的な結果は、有効性は低いものの、水酸化アンモニウム(NHOH)がアミンモノマーの代替物として有効であることを示唆している。
【0043】
本発明に関して、「第1級アミン」は、アンモニア分子中の水素原子の1個のみが置換されたアミンと定義される。これは、第1級アミンの式がRNHであることを意味する。第2級アミンは、アンモニア分子中の水素原子の2個が置換されたアミンと定義される。これは、第1級アミンの式がRNHRであることを意味する。「第3級アミン」は、アンモニア分子中の水素原子の3個が置換されたアミンと定義される。「アミンモノマー」は、1個以上のアミン基を有する化合物である。
【0044】
他の実施形態では、適切な結果を有する本発明の抽出水溶液において、試薬の組み合わせが使用され得ることが企図される。例えば、上記アミンモノマー(2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上)は、尿素および/またはGITCおよび/またはNHOHと共に使用され得る。当業者であれば、ルーチンな実験のみを用いて許容される濃度および条件を決定することができる。
【0045】
別の実施形態では、本発明の抽出水溶液は、アミンモノマーを追加することなく、尿素および/またはGITCを含み得ることが企図される。やはり、当業者であれば、ルーチンな実験のみを用いて許容される濃度および条件を決定することができるであろう。
【0046】
本発明の抽出溶液(組成物)はまた、場合により、他の有機溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコールおよびリモネンなどを含み得る。本発明の抽出組成物中の有機溶媒の最終濃度は、存在する場合、約10%から30%、約15%から約25%または約20%である。
【0047】
本発明の抽出溶液(組成物)はまた、カオトロピック剤、例えば尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールまたはブタノールを含み得る。他のものは当業者に公知である。カオトロピック剤は、タンパク質などの高分子の構造を破壊して変性させる物質である。カオトロピック剤は、水素結合などの非共有結合力によって媒介される分子間相互作用を妨げることによって作用する。本発明の抽出組成物中のカオトロピック剤の最終濃度は、約3.0Mから約6.0M、約4.0Mから約5.0Mまたは約4.7Mである。
【0048】
さらに、本発明の抽出溶液(組成物)は、1つ以上の界面活性剤を含む。界面活性剤は、親水性の頭部および疎水性の尾部を特徴とする。界面活性剤は、典型的には、細胞および組織の研究に使用される。非イオン性界面活性剤が好ましい。本発明で使用するのに適切な界面活性剤としては、限定されないが、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)が挙げられる。本発明の抽出組成物中の界面活性剤の最終濃度は、約1%から15%、約8%から約15%または約10%である。本発明は理論によって限定されないが、適度な濃度のマイルドな(即ち、非イオン性)界面活性剤は、細胞膜の完全性を損なうことにより、細胞の溶解および可溶性成分の抽出を促進すると一般に考えられる。
【0049】
本発明の溶解溶液のpHは、約7超である。本発明の溶解溶液のpHは、約pH10から13または12から13と同じ高さであり得る。pHは、本発明の抽出組成物の成分の選択によって、または緩衝液の使用によって調整または維持され得る。緩衝液の使用は当業者に周知である。例示的な緩衝液は、トリスHCLである。
【0050】
さらに、従来技術の方法とは異なり、本方法は、例えば、組織を破壊するための酵素(例えば、プロテアーゼ)を使用せずに実施され得るが、酵素の使用を禁止するものではない。
【0051】
核酸の放出を助けるために、混合物を場合により加温または加熱し得る。使用される温度は、約70℃から約90℃および約80℃から約90℃の範囲、ならびに約85℃の温度であり得る。
【0052】
本発明は、固定細胞および固定組織で使用するのに適切である。固定剤および固定手順の非限定的な例としては、例えば、架橋固定剤(例えば、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド(ホルマリン)などのアルデヒド)が挙げられる。架橋固定剤は、組織内のタンパク質間に共有化学結合を作ることによって作用する。これらの架橋固定剤、特にホルムアルデヒドは、タンパク質の二次構造を維持する傾向があり、重要な三次構造も保護し得る。メタノール、エタノール、酢酸およびアセトンなどの沈殿(または変性)固定剤も公知である。
【0053】
酸化固定剤は、タンパク質および他の生体分子の様々な側鎖と反応して、組織構造を安定化する架橋の形成を可能にし得る。ある特定の組織学的調製物では、四酸化オスミウム、二クロム酸カリウム、クロム酸および過マンガン酸カリウムのすべてに用途がある。
【0054】
ヘペス−グルタミン酸緩衝液によって媒介される有機溶媒保護効果(HOPE)は、ホルマリン様形態、免疫組織化学および酵素組織化学のためのタンパク質抗原の優れた保存、高いRNAおよびDNA収率、ならびに架橋タンパク質の非存在をもたらす。
【0055】
すべての構造を保存するために、およびさらなる処理のための支持を提供するために、組織試料および細胞試料などの固定細胞原料試料は包埋されることが多い。伝統的には、このような試料は、パラフィン包埋されていた。典型的には、パラフィン包埋前に、例えばホルマリン中で固定細胞原料試料を固定して、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料を作る。細胞および組織の固定ならびに細胞および組織の包埋に関する手順は、当業者に公知である(例えば、Leeson and Leeson,Histology,1981,W.B.Saunders Co.,pages 6−8およびen.wikipedia.orq/wiki/Histoloqy#Embeddinqのワールドワイドウェブを参照のこと)。従来技術では、FFPE細胞原料からの核酸抽出は、困難で時間を要する多段階法を使用することによってのみ達成されていた。本発明の組成物および手順は、簡便で効率的な手順を対象とする。
【0056】
本発明は、核酸を抽出、濃縮、単離および/または精製するために組織の脱パラフィン処理工程およびプロテアーゼ消化工程が必要ない新たな非自明の方法を対象とする。核酸の抽出および固体マトリックスへの結合(結合が望まれる場合)のために、単一の水性溶液を使用する。この溶液に含まれる有機溶媒は完全に混和性であり、有機溶媒の相分離が起こらない。FFPE組織を前記溶液と混合し、組織を破壊し、核酸を放出させ、核酸を例えば固体マトリックス(例えば、シリカ含有固体マトリックス)上に捕捉するか、または当業者に公知の任意の他の方法によって溶液から除去する。マトリックスは粒子であり得るか、または磁性粒子であり得る。核酸を固体マトリックス上に捕捉した後、最終的な精製または使用のために、この方法は、簡便な洗浄工程およびマトリックスからの核酸の溶出を使用する。所望により、当業者に公知の方法によって、抽出した核酸をさらに精製し得る。
【0057】
抽出した核酸は、当業者に公知の任意の手順によって使用され得る。このような使用の例としては、ハイブリダイゼーションアッセイ(ノーザンブロット、サザンブロットなど)、増幅アッセイ(例えば、米国特許出願第4,683,195号明細書を参照のこと)、配列決定、複製、発現ベクターへの組み込み、またはこれらの任意の有用な組み合わせが挙げられる。さらに、本発明の組成物および方法は、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)分析、または核酸が破壊されない他のプロトコールで事前に使用された試料で使用するのに適切である。
【0058】
本明細書で言及されるすべての引用文献(特許、特許出願公報、学術論文、教科書および他の刊行物)は、本開示が属する分野の当業者のレベルを示すものである。このような刊行物はすべて、個々の各刊行物が具体的に、また個別的に参照により組み込まれると示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
本明細書に具体的に開示されていない要素および限定が存在しない場合でも、本明細書に例示的に記載される本発明を適切に実施し得る。従って、例えば、用語「含む」、「から本質的になる」および「からなる」のいずれかに関する本明細書の各事例は、他の2つの用語のいずれかで代替し得る。同様に、特に文脈上明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「方法」についての言及は、本明細書に記載され、および/または本開示を読んだ当業者には明らかな種類の1つ以上の方法および/または工程を含む。
【0060】
単一段階における細胞原料からの核酸抽出の実施形態
一実施形態では、本発明は、細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含む方法を対象とする。一実施形態では、抽出水溶液は、1つ以上のアミンモノマーおよび1つ以上のアミドから選択される窒素含有溶媒を含む。一実施形態では、抽出水溶液は、アミンモノマーおよびアミドを含む。別の実施形態では、抽出水溶液は、第1級アミンモノマーを含む。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)である。一実施形態では、アミンモノマーは、1,3−ジアミノプロパンである。一実施形態では、アミンモノマー(anime monomer)は、3−アミノ−1−プロパノールである。一実施形態では、2つ以上のアミンモノマーが同時に使用される。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上から選択される。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約15%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約20%から約45%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約45%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液は、カオトロープをさらに含む。一実施形態では、カオトロープは、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群から選択される。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4Mから約5Mである。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4.5Mから約5Mである。一実施形態では、抽出水溶液は、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含む。適切な界面活性剤としては、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100が挙げられる。適切なアルコールとしては、エタノール、ブタノールが挙げられる。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約1%から約15%または約8%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約12%から約15%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約15%から約25%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約10%から約40%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約35%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約25%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約23%から約25%である。別の実施形態では、細胞原料は、組織、動物組織、哺乳類組織、ヒト組織、ヒト腫瘍組織、ウイルスを含有するヒト組織、固定ヒト組織、動物細胞、哺乳類細胞、ヒト細胞、ウイルスを含有するヒト細胞、細菌、マイコバクテリア、真菌、酵母および植物組織または植物細胞、細胞を含有する血液、細胞を含有する痰からなる群から選択される。
【0061】
単一段階における固定組織細胞原料からの核酸抽出の実施形態
一実施形態では、本発明は、固定組織細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含む方法を対象とする。一実施形態では、固定細胞原料は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織である。一実施形態では、抽出水溶液は、1つ以上のアミンモノマーおよび1つ以上のアミドから選択される窒素含有溶媒を含む。一実施形態では、抽出水溶液は、アミンモノマーおよびアミドを含む。別の実施形態では、抽出水溶液は、第1級アミンモノマーを含む。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)である。一実施形態では、アミンモノマーは、1,3−ジアミノプロパンである。一実施形態では、アミンモノマー(anime monomer)は、3−アミノ−1−プロパノールである。一実施形態では、2つ以上のアミンモノマーが同時に使用される。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上から選択される。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約15%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約20%から約45%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約45%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液は、カオトロープをさらに含む。一実施形態では、カオトロープは、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群から選択される。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4Mから約5Mである。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4.5Mから約5Mである。一実施形態では、抽出水溶液は、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含む。適切な界面活性剤としては、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100が挙げられる。適切なアルコールとしては、エタノール、ブタノールが挙げられる。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約1%から約15%または約8%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約40%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約35%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約25%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約23%から約25%である。
【0062】
単一段階における細菌細胞原料からの核酸抽出の実施形態
一実施形態では、本発明は、細菌細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含む方法を対象とする。一実施形態では、細菌細胞原料は、マイコバクテリア細胞である。別の実施形態では、細菌細胞原料は、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium Tuberculosis)である。別の実施形態では、細菌は、ヒトの痰中に見られる。別の実施形態では、細菌は、単一段階で不活性化される。一実施形態では、抽出水溶液は、1つ以上のアミンモノマーおよび1つ以上のアミドから選択される窒素含有溶媒を含む。一実施形態では、抽出水溶液は、アミンモノマーおよびアミドを含む。別の実施形態では、抽出水溶液は、第1級アミンモノマーを含む。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)である。一実施形態では、アミンモノマーは、1,3−ジアミノプロパンである。一実施形態では、アミンモノマー(anime monomer)は、3−アミノ−1−プロパノールである。一実施形態では、2つ以上のアミンモノマーが同時に使用される。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上から選択される。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約15%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約20%から約45%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約45%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液は、カオトロープをさらに含む。一実施形態では、カオトロープは、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群から選択される。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4Mから約5Mである。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4.5Mから約5Mである。一実施形態では、抽出水溶液は、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含む。適切な界面活性剤としては、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100が挙げられる。適切なアルコールとしては、エタノール、ブタノールが挙げられる。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約1%から約15%または約8%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約40%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約35%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約25%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約23%から約25%である。
【0063】
単一段階における酵母細胞原料からの核酸抽出の実施形態
一実施形態では、酵母細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含む方法を対象とする。一実施形態では、抽出水溶液は、1つ以上のアミンモノマーおよび1つ以上のアミドから選択される窒素含有溶媒を含む。一実施形態では、抽出水溶液は、アミンモノマーおよびアミドを含む。別の実施形態では、抽出水溶液は、第1級アミンモノマーを含む。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)である。一実施形態では、アミンモノマーは、1,3−ジアミノプロパンである。一実施形態では、アミンモノマー(anime monomer)は、3−アミノ−1−プロパノールである。一実施形態では、2つ以上のアミンモノマーが同時に使用される。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上から選択される。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約15%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約20%から約45%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約45%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液は、カオトロープをさらに含む。一実施形態では、カオトロープは、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群から選択される。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4Mから約5Mである。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4.5Mから約5Mである。一実施形態では、抽出水溶液は、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含む。適切な界面活性剤としては、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100が挙げられる。適切なアルコールとしては、エタノール、ブタノールが挙げられる。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約1%から約15%または約8%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約40%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約35%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約25%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約23%から約25%である。
【0064】
単一段階におけるFISHアッセイ細胞原料からの核酸抽出の実施形態
一実施形態では、本発明は、FISHアッセイ細胞原料から核酸を抽出する方法であって、細胞原料と、単一段階で細胞材料を溶解して核酸を抽出することができる抽出水溶液とを接触させることを含む方法を対象とする。一実施形態では、抽出水溶液は、1つ以上のアミンモノマーおよび1つ以上のアミドから選択される窒素含有溶媒を含む。一実施形態では、抽出水溶液は、アミンモノマーおよびアミドを含む。別の実施形態では、抽出水溶液は、第1級アミンモノマーを含む。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE)である。一実施形態では、アミンモノマーは、1,3−ジアミノプロパンである。一実施形態では、アミンモノマー(anime monomer)は、3−アミノ−1−プロパノールである。一実施形態では、アミンモノマーは、2,2’−エチレンジオキシ(eththylenedioxy))ビス(エチルアミン)(EDBE)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2−アミノ−6−メチルヘプタン(AMH)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、アミノ−2−プロパノール(A2P)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(DMP)および3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)の1つ以上から選択される。一実施形態では、2つ以上のアミンモノマーが同時に使用される。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約15%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約20%から約45%である。一実施形態では、抽出水溶液中のアミンモノマーの濃度は、約45%から約50%である。一実施形態では、抽出水溶液は、カオトロープをさらに含む。一実施形態では、カオトロープは、尿素、グアニジンチオシアネート(GITC)、エタノールおよびブタノールからなる群から選択される。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4Mから約5Mである。一実施形態では、前記抽出水溶液中のカオトロープは、約4.5Mから約5Mである。一実施形態では、抽出水溶液は、界面活性剤およびアルコールの1つ以上をさらに含む。適切な界面活性剤としては、Tween(R)、ポリソルベート、デオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、NP−40およびTriton(R)X−100が挙げられる。適切なアルコールとしては、エタノール、ブタノールが挙げられる。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約1%から約15%または約8%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約15%である。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、約10%から約40%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約35%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約20%から約25%である。一実施形態では、アルコールの濃度は、約23%から約25%である。
【0065】
用いられている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されている。これに関して、特定の用語が本明細書で定義、説明または議論される場合、このような定義、説明および議論はすべて、このような用語に帰するものである。また、このような用語および表現の使用において、提示および記載されている特徴またはこの一部のいかなる均等物も除外するものではない。
【0066】
本発明の範囲内で、様々な改変が可能であると認識される。従って、好ましい実施形態および任意選択的な特徴に関して本発明を具体的に開示したが、当業者であれば、本明細書に開示される概念の改変およびバリエーションに想到し得ると理解すべきである。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされる。
【実施例】
【0067】
[実施例1]
本発明の概念は、試料からDNAを放出させて固体支持体(例えば、シリカ含有表面)上に捕捉する単一段階溶解緩衝液を使用して、例えばホルムアルデヒド固定パラフィン包埋(FFPE)組織から核酸を容易に濃縮、精製もしくは単離し得るか、または細胞原料(例えば、固定組織)からDNAを放出させるために試料の脱パラフィン処理も、試料の酵素消化も必要とせずに、別の方法で濃縮もしくは単離し得ることである。当業者であれば、本発明の手順が、FFPEではない試料(例えば限定されないが、細菌、酵母、組織など)から核酸を抽出、精製、単離および濃縮するのにも適切であると理解するであろう。
【0068】
抽出に使用した基本的な溶解緩衝液(LB)は、4.7Mグアニジンチオシアネート(GITC)、10%Tween−20および100mMトリス緩衝液(pH7.8)を含有する。70mlの溶解緩衝液を使用し、35mlの95%エタノールを追加して、溶解−エタノール(LB−EtOH)溶液を作製した。40%EDBEのLB−EtOH溶液(LB−EtOH−EDBE)のために、9mlのLB−EtOHを6mlのEDBEと混合することによって、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(EDBE、CAS番号929−59−9)を含有するFFPE抽出溶液を作製した。すべての試料について、洗浄1溶液はLB−EtOH溶液である。すべての試料について、洗浄2溶液は70%エタノールおよび水である。溶出液は水である。このプロトコールで使用したシリカコーティング磁性微粒子(MMP)は、Abbott Laboratories mMicroparticlesDNA商品コードMD205Aであるが、同等の粒子が市販されている(例えば、Promega Corp.,Madison,WI;Life Technologies,Grand Isle,NY;Bangs Laboratories,Fishers,IN)。
【0069】
Promega Maxwell抽出器を使用して、試料の抽出を行った。この方法は、抽出プロトコールで使用した様々な溶液を含有するカートリッジ内のチャンバー間で磁性粒子を移動させる。抽出プロトコールは、磁性粒子をあるチャンバーから別のチャンバーに移動させることを含む。磁気ロッドを挿入したプランジャの表面上に、チャンバー内の磁性粒子を捕捉することによって、移動を行う。次いで、プランジャを異なるチャンバーに移動させ、プランジャの外側の磁気ロッドを動かすことによって、プランジャの表面から粒子を放出させる。流体の上下運動によってチャンバー内の流体を混合するために、磁気ロッドを含まないプランジャを使用し得る。FFPE抽出に使用したプロトコールでは、溶解物および粒子のインキュベーションならびに洗浄を室温で実施した。70℃に加熱した別個の溶出チューブ中で、溶出工程を実施した。抽出カートリッジは、7つのチャンバーを有していた。第1のチャンバーをFFPE溶解物溶液に使用し、他のチャンバーを磁性粒子または洗浄溶液の保持に使用した。チャンバー2は、200マイクロリットル(μl)のLB−EtOHおよび25マイクロリットルのMMPを含有していた。チャンバー3は、800マイクロリットルの洗浄1を含有していた。チャンバー4、5および6は、900マイクロリットルの洗浄2を含有していた。チャンバー7は空であった。溶出チューブは、100マイクロリットルの水を含有していた。このプロトコールでは、最初に、チャンバー2から、FFPE溶解物溶液を含有するチャンバー1にMMPを移動させた。FFPE溶解物溶液を磁性粒子と10分間混合した。すべての洗浄工程において、1分間混合した。溶出工程では、混合しながら10分間インキュベートした。
【0070】
試料材料は、FFPE甲状腺組織ブロックを5ミクロン切片に切片化したものから構成されており、切片を含有する1個のパラフィンを2mlスナップキャップポリプロピレンマイクロ遠心チューブに入れた。チューブにおいて、切片を順番に番号付けした。
【0071】
連続切片を以下のように抽出した。すべての他の切片が同じ溶解緩衝液を含有するように、1.5mlのLB−EtOHまたは1.5mlのLB−EtOH−EDBEのいずれかを各切片に追加した。奇数番号の試料はLB−EtOHを含有し、偶数番号の試料はLB−EtOH−EDBEを含有していた。このようにして、パラフィン切片の差異を最小限にした。次いで、定常温度制御された加熱ブロックにおいて、すべての試料を混合せずに78℃で4時間インキュベートした。加熱工程が完了した後、溶解物をPromega Maxwell抽出カートリッジのチャンバー1に直接追加し、上記のように抽出した。
【0072】
ヒトゲノムDNA用のPCRアッセイを使用して、抽出からの溶出液を分析した。PCRは当業者に周知である。このアッセイは、BRAF遺伝子のエクソン13の存在を検出する。B−Rafと称される、この遺伝子は、細胞増殖の指令に関与するタンパク質をコードする。PCRアッセイを使用して、試料から単離したDNAの相対量を測定した。このアッセイでは、蛍光プローブによって生成されるシグナルは、PCR増幅における各加熱冷却サイクルと共に増加する。元の試料におけるDNAが多いほど、シグナルがより早く検出される。シグナルが検出されるサイクルは、サイクル閾値(CT)と称される。別の試料の2倍量のゲノムDNAを有する試料は、他の試料よりも1CT低いCT値を有するであろう。別の試料の4倍量のDNAを有する試料は、他の試料よりも2CT低いCT値を有するであろう。この方法を使用して、抽出物のCT値を決定した。各試料について、2回反復アッセイを行った。アッセイの増幅曲線を図1に示す。図1は、LB−EtOH溶解緩衝液およびLB−EtOH−EDBE溶解緩衝液で抽出した試料間の明確な差異を示している。サイクル閾値の計算は、この2つの溶解緩衝液間において2CT超の差異があることを示しているが、これは、EDBE含有溶解緩衝液で抽出したDNAの量が4倍超増加しているということである。図2は、図1に示されているデータに関する一元ANOVA試験の平均を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例2]
第2の溶媒1,3−ジアミノプロパン(diaminoproane)を使用して、本発明の概念をさらに調査した。上記のように抽出を実施したが、2つの反復試験試料のみを各溶解緩衝液について行った。第1の溶解緩衝液はLB−EtOH緩衝液であり、第2の溶解緩衝液は、20%1,3−ジアミノプロパン(DP、CAS番号109−76−2)を含有するLB−EtOHであった。FFPE切片は、上記で使用したのと同じ組織試料由来のものであった。インキュベーション、抽出およびアッセイ条件は、上記と同じであった。アッセイの増幅曲線を図3に示す。図3は、LB−EtOH溶解緩衝液およびLB−EtOH−ジアミノプロパン溶解緩衝液で抽出した試料間の明確な差異を示している。サイクル閾値の計算は、この2つの溶解緩衝液間において2CT超の差異があることを示しているが、これは、1,3−ジアミノプロパン含有溶解緩衝液で抽出したDNAの量が4倍超増加しているということである。図4は、図3に示されているデータに関する一元ANOVA試験の平均を示す。
【0075】
【表2】
【0076】
[実施例3]
上記で使用した溶媒に存在するアミン基がFFPE試料からのDNA抽出に影響を与えるかを決定するために、水酸化アンモニウムの溶解緩衝液への追加を使用して、本発明をさらに調査した。上記のように抽出を実施したが、試験した第2の溶解緩衝液は、約0.6%水酸化アンモニウム(NHOH)を含有していた。200マイクロリットルの濃水酸化アンモニウム(28から30%)を10mlのLB−EtOHに追加することによって、これを作製した。上記と同じ試料材料を含有する5つの反復試験試料を、各抽出緩衝液と共に使用した。上記のようにBRAFアッセイを用いて、溶出液を2回反復でアッセイした。アッセイの増幅曲線を図5に示す。図5は、LB−EtOH溶解緩衝液およびLB−EtOH−NHOH緩衝液で抽出した試料間の差異を示している。サイクル閾値の計算は、この2つの溶解緩衝液間において1.4CT超の差異があることを示しているが、これは、NHOH含有溶解緩衝液で抽出したDNAの量が2倍超増加しているということである。図6は、図5に示されているデータに関する一元ANOVA試験の平均を示す。NHOH含有溶解緩衝液で抽出したDNAの増加は、他の2つの溶媒で抽出したものほど大きくないと思われるが、アンモニウムイオンまたはアミン基の存在が、FFPE試料からのDNA抽出に重要であることを示している。
【0077】
【表3】
【0078】
[実施例4]
全血からのカンジダ・アルビカンス(C.albicans)の抽出例。
【0079】
全血からの酵母由来核酸の抽出について、本発明をさらに調査した。この方法を、全血からの標準的な酵母抽出方法(これは、ビーズビーティングを使用して酵母を溶解する。)と比較した。
【0080】
使用した試料は、ヒト全血1ミリリットル当たり200コロニー形成単位のカンジダ・アルビカンス(C.albicans)であった。抽出に使用した溶解緩衝液および他の試薬は、実施例1に記載されているものである。LB−EtOH−EDBE溶液は20%EDBEを含有しており、15mlのEDBEを60mlのLB−EtOHと混合することによって作製した。
【0081】
1.25mlの試料を3.75のLB−EtOH−EDBEに追加し、80℃で45分間、60分間、75分間および90分間インキュベートすることによって、EDBE抽出を実施した。すべてのインキュベーションが同時に終了するように、抽出を時間差で開始した。各条件について4つの試料を処理した。また、4つの試料をLB−EtOH(EDBEを追加せず)と共に90分間インキュベートした。
【0082】
Abbott PlexlDBB(90秒間のビーズビーティングサイクルを3回、スピードを6200に設定)を使用して、試料のビーズビーティングを行った。各試料は、1.25mlの試料、150マイクロリットルの溶解緩衝液(エタノールを含まず)および約950ミリグラムのZirconia/Yttrium Beads Glenn Mills(Clifton,NJ)#7361−00010を含有していた。ビーズビーティングの後、Beckman 22R遠心分離機において、チューブを14,000rpmで3分間遠心分離した。次いで、EDBE処理溶解物と一緒に、全上清量を抽出した。
【0083】
PlexlDsp抽出器を使用して、溶解物をシリカコーティング磁性粒子と共に室温でインキュベートするプロトコールによって、抽出を実施した。抽出器は24ウェルプレートを使用し、各プレートは別個の抽出用試薬を含有する。試薬は、実施例1に記載されているものである。ウェル中で、125マイクロリットルの磁性粒子を用いて、結合工程を室温で15分間行った。ビーズビーティング溶解物を含有するウェルは、125マイクロリットルの磁性粒子+1.5mlのLB−EtOHを含有していたが、EDBE溶解物は磁性粒子のみを有しており、さらなる試薬はなかった。このプロトコールでは、2mlのLB−EtOHを含む1つの洗浄1プレートと、2mlの70%エタノールを含む3つの洗浄2プレートとを使用した。溶出プレートは、300マイクロリットルの溶出用の水を含有していた。溶出工程を70℃で10分間行った。
【0084】
Nanodrop Lite(Thermo Scientific,Wilmington,DE)を使用して、試料のDNA含量を測定した。図7Aを参照のこと。EDBE処理試料中の核酸は、ビーズビーティングよりも少ない可能性がある。EDBEもビーズビーティングも用いない試料は、収率がより低い。ビーズビーティングプロトコールは大量のタンパク質を溶液から排除するので、ビーズビーティング工程を用いると、核酸抽出がより効率的であると思われる。EDBE試料を用いると、A260/A280比がより高い。図7Bを参照のこと。
【0085】
アッセイの溶出液。上記のようにアッセイを設定する。
【0086】
【表4】
【0087】
Taqman緩衝液は、Applied Biosystems(Life Technologies,Grand Island,NY)Universal PCR Master Mix,part#4324018である。IPCミックス(#408332)およびIPCテンプレート(#4304662)は、Applied Biosystemsの外因性内部陽性対照である。サイクラーAM01789で核酸を増幅するのに使用したプログラムibisQPCR(ngul)LDAは、B132である。増幅産物をMultianalyse4にロードする。図8Aは、図8BからFからの結果をまとめたものである。図8Bは、ビーズビーティングおよび90分間(EDBEなし)の結果を示す。図8Cは、ビーズビーティング、45分間(EDBEあり)および90分間(EDBEなし)の結果を示す。図8Dは、ビーズビーティング、60分間(EDBEあり)および90分間(EDBEなし)の結果を示す。図8Eは、ビーズビーティング、75分間(EDBEあり)および90分間(EDBEなし)の結果を示す。図8Fは、ビーズビーティング、90分間(EDBEあり)および90分間(EDBEなし)の結果を示す。
【0088】
図9は、核酸増幅後のCtの結果を示す。EDBEと共に75分間および90分間インキュベートすることが、ビーズビーティングを組み込んだ従来技術と同様に有効であった。EDBEなしの試料は酵母試料を十分に抽出せず、試料中の酵母DNAは10倍超少なかった。
【0089】
[実施例5]
痰からのマイコバクテリウム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)(MTB)のEDBE抽出。
【0090】
痰試料を使用して、LB−EtOH−EDBE溶液がMTBを溶解してMTBから核酸を抽出する能力を試験した。以下のように、重量計測した15mlポリプロピレンチューブに3つの痰試料を分注した。円錐端部を除去した5mlピペットを使用して、痰を移した。チューブ中の痰の容量を計算し、次いで、熱殺MTB培養物を3000cfu/mlで試料に追加した(痰1ml当たり12.3マイクロリットル追加した。)。
【0091】
【表5】
【0092】
標的は、熱殺MTBであった。原液は245,000cfu/mlであり、これを痰1ml当たり3000cfuに希釈した。痰1ml当たり12.3ul。追加した量については、以下を参照のこと。
【0093】
痰容量の3倍のLB−EtOH−20%EDBEを痰試料に追加した。
【0094】
【表6】
【0095】
80℃に設定した加熱ブロックにチューブを入れ、70分間インキュベートした。上記のようにAbbott PlexlDspを使用して、抽出を行った。使用した試薬は上記のものである。試料をインキュベートした後、溶解物を抽出プレートに追加する。最大負荷は5mlであった。
【0096】
【表7】
【0097】
Nanodrop Lite AM03366をB130で使用して、核酸(DNA)含量を測定した。
【0098】
【表8】
【0099】
MTBのDNAについては、PCR試験を使用して、抽出した試料を試験した。図10Aは、図10Bから10Eの結果をまとめたものである。図10Bは、陰性対照および30,000コピー(陽性対照)の結果を示す。図10Cは、痰試料Aの結果を示す(それぞれ2回の抽出からなる4回反復アッセイ)。高陽性対照試料も示されている。図10Dは、痰試料Bの結果を示す(それぞれ4回の抽出からなる4回反復アッセイ)。高陽性試料も示されている。図10Eは、痰試料Cの結果を示す(それぞれ2回の抽出からなる4回反復アッセイ)。高陽性試料も示されている。LB−EtOH−EDBEミックスは痰を可溶化し、一段階でMTBを抽出し得る。
【0100】
[実施例6]
細胞材料からの核酸抽出に適切なアミンモノマーの同定。幾つかのさらなるアミンモノマーが、限定されないが、新鮮材料、固定材料およびFFPE材料を含む細胞原料からの核酸(例えば、DNA、RNAなど)の抽出に適切であると同定した。試験したアミンモノマーは、EDBE溶媒よりも低有害性であり、EDBEと類似の特性を有すると思われたので選択した。全血からの酵母(カンジダ・アルビカンス(C.albicans))およびスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)DNAの抽出において溶媒が機能するかを決定するために、最初のスクリーニングを行った。CASA(カンジダ・アルビカンス(C.albicans)およびスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)試料の混合物;以下を参照のこと)を対照として使用した。EDBEは、FFPE材料から、および列挙されている全血中の標的からDNAを抽出することができた。本実施例では、以下に列挙されている7つのアミンモノマーを試験し、EDBEによる抽出と比較した。
【0101】
【表9】
【0102】
溶解緩衝液(LB:上記を参照のこと)およびエタノールを2:1の比で混合して、ミックス33.3%エタノール(EtOH)を作製した。洗浄1は50%EtOHであった。洗浄2は約74%EtOHであった。試料を200cfu/mlのカンジダ・アルビカンス(C.albicans)またはスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に希釈した。血液を標的試料に9:1で追加した。陰性希釈液(血漿の組成を模倣するように設計された製剤;Abbott Molecular製品コード#60217;Abbott Park,II;)中、CASA標準を18μl(CASA標準は、100,000cfu/mlのカンジダ・アルビカンス(C.albicans)および100,000cfu/mlのスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)を含有する。)で追加した。LB−EtOH対照およびNaOH対照と一緒に、それぞれ3回反復試験した。
【0103】
【表10】
【0104】
第1のラン。1.5mlの上記試薬を含む15個の2mlチューブ(各ミックスについて3回反復)。新鮮な試験試料を作製し、50μlの試料を各チューブに追加した。試料を58℃で4時間インキュベートした。各ウェルに50μlのMMPを含むMaxwell(Promega,Madison WI)において、PCRのためにカセットをセットアップした。溶解後、試料を溶解ウェルにデカントで移し、以下のように処理した:試料を洗浄1で2回洗浄し、洗浄2で2回洗浄した。洗浄したMMPを100μlの溶出液で溶出した。
【0105】
第2のラン。試料を80℃で45分間溶解した。残りは、第1のランと同じであった。
【0106】
溶解および処理後、各試料についてPCRを以下のように実施した。
【0107】
【表11】
【0108】
図22は、それぞれカンジダ・アルビカンス(C.albicans)およびスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に関する溶媒によるデータの一元分析の結果を示す。図22は、全血から抽出したカンジダ・アルビカンス(C.albicans)細胞およびスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)細胞から求めたFAM CT値を示す。カンジダ・アルビカンス(C.albicans)およびスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の両方の原液(CASA試料)と血液試料を混合し、同じ反応で抽出した。カンジダ・アルビカンス(C.albicans)は病原性酵母であり、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)は病原性グラム陽性細菌である。これら2つの生物の細胞壁は構造および内容物が異なるが、これらは両方とも、DNA抽出のために溶解するのが困難であることが公知である。図22Aは、Abbott溶解緩衝液に追加した様々な溶媒を使用した、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)の抽出に関する結果を示す。様々なアミン溶媒を追加したすべての条件下において、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)のシグナルは、LB−EtOHを使用した場合に見られる結果と比較して改善している(CT値がより低い。)。LB−EtOHは、m2000Sample Preparation SystemDNA抽出キットのAbbott溶解緩衝液に33%エタノールを追加したものである。NaOHを抽出に追加すると、抽出がいくらか改善されると思われるが、アミン溶媒で見られる程ではない。第2のグラフは、上記と同じ条件下で全血から抽出したスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)で得られた結果を示す。この場合もやはり、すべてのアミン溶媒が抽出を改善したが、NaOHの使用もまた、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)で見られたよりも抽出を改善した。これらのグラフは、データの統計分析を右側に有する。接触していない円は、互いに統計的差異があるとみなす。両グラフに見られ得るように、いかなる成分も追加しなかったLB−EtOH抽出は、最も効率が低い(最も高いCt値を有する)方法であり、他の方法と統計学的差異がある。さらなるデータを以下に示す。
【0109】
【表12】
【0110】
【表13】
【0111】
カンジダ・アルビカンス(C.albicans)については、3A1P、A2PおよびDMPが最も良く機能し、LB−EtOH対照よりも約5CTの改善を示した。すべてがEDBEよりもわずかに優れていた。スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)については、AMP、DMPおよびNaOHが良く機能した。さらなる研究により、記載されている試験試料からのDNA抽出に関するDMP、AEE、2A1B、3A1PおよびA2Pの有効性が裏付けられ(データは示さず)、DNA抽出に有効なアミンモノマーに関する本発明の幅広い適用可能性が示された。さらにまた、温度および時間に関する広範囲の条件が本発明で使用するのに適切であることが見出されたが、幾つかの温度および時間はより優れた結果をもたらした(データは示さず)。
【0112】
[実施例7]
FFPE試料の3−アミノ−1−プロパノール(3A1P)抽出。3種類の試料を試験した。CRC(結腸直腸癌)、黒色腫および肺組織。Qiagen(Valencia,CA)およびPromega(Madison,WI)から入手可能な当技術分野で公知のFFPE抽出システムと試料を比較した。パラフィンブロックの試料切片(厚さ5ミクロン、ガラススライド上にマウントせず)を連続して切り取り、断面のばらつきを抑えるために、試料の3つに1つを同じ抽出条件で試験した。本発明の方法(3A1P抽出)に関するこの実験の溶解条件は、以下の通りである。溶解条件:60%溶解緩衝液(LB);20%EtOHおよび20%3A1P、総量1.5ml。インキュベーションを78℃および94℃で30分間から4時間の期間にわたって試験した。溶解インキュベーションの後、MMP(25μl)を試料に追加した。捕捉時間は、室温(RT)で10分間であった。MMPを0.5mlのLBおよび33%EtOHで2分間にわたって室温(RT)で1回洗浄し、続いて、70%EtOHで2分間にわたってそれぞれ室温(RT)で2回洗浄した。試料を5分間乾燥し、100μlのDI水で10分間にわたって70℃で溶出した。QiagenおよびPromegaのプロトコールで処理した試料を製造業者の指示に従って処理した。PCRをBRAF−Eの検出に使用した。BRAF−Eアッセイは、FAMを有する遺伝子およびCYC5を有する正常遺伝子における変異を検出する。Ct値(当業者に公知であるように、これは、PCR反応における標的の濃度の相対的指標である。)を決定した。CRC試料のCtデータを図11に示し、ΔCt(dCt:対照と試験試料との間のCt値の変化)を図12に示す。dCtについては、13未満の値は、試験腫瘍マーカーについて陽性であるとみなす。データから分かるように、本発明のアミン抽出法は、従来技術のQiagenおよびPromegaの方法よりも優秀ではないにしても、少なくとも同程度に優れているが、必要な操作工程はより少なく、処理時間はより速い。より詳細には、2つのシグナルのサイクル閾値(CT値)を図11に示す。サイクル閾値は、シグナルがバックグラウンドよりも有意に高いPCR反応のサイクル数を指す。アッセイにおける標的の量が多いほど、より少ないサイクル数でシグナルが生成され得るので、より小さい数字は標的の量がより多いことを示す。この図は、結腸直腸癌組織由来のFFPE材料の2つの別個のブロック(C9およびC13)からの結果を示す。これらのブロックから連続切片を作製し、これらの番号によって表される別個の切片を3つの異なる方法で抽出した。FAMシグナルは青色の棒であり、CY5シグナルは赤色の棒である。Qiagen処理切片からのシグナルは、淡青色および淡赤色の棒によって表されており、Qiaと表示されている。Promega処理切片からのシグナルは、濃青色および濃赤色の棒によって表されており、CSCと表示されている。これらの方法は両方とも、FFPE組織からDNAを単離するのにプロテアーゼ消化を使用する。Abbottアミン溶媒システムからのシグナルは、明青色および明赤色の棒によって表されている。グラフから分かるように、Abbott抽出からのシグナルは、他の2つの方法で得られたものと同程度である。図12は、図11におけるFAMシグナルとCY5シグナルとの間の差異を示す。このdCT値は、抽出した組織が癌性であるか否かの決定を助けるのに使用される。13未満の差異は、試料における変異遺伝子の量が比較的多く(より低いCT値)、試料が癌性であり得ることを示す。それぞれQiagen、PromegaおよびAbbottの方法について、3つの異なる方法は、淡緑色、濃緑色および明緑色の棒によって示されている。C9試料およびC13試料の両方において、Abbottの方法は、他の2つの方法と同程度のdCT値をもたらす。
【0113】
図13および図14では、肺腫瘍FFPE組織について、サイクル閾値(CT値)およびdCT値が示されている。この図は、肺腫瘍組織由来のFFPE材料の2つの別個のブロック(L1およびL4)の結果を示す。やはり、これらのブロックから連続切片を作製し、これらの番号によって表される別個の切片を3つの異なる方法で抽出した。FAMシグナルは青色の棒であり、CY5シグナルは赤色の棒である。Qiagen処理切片からのシグナルは、淡青色および淡赤色の棒によって表されており、Qiaと表示されている。Promega処理切片からのシグナルは、濃青色および濃赤色の棒によって表されており、CSCと表示されている。これらの方法は両方とも、FFPE組織からDNAを単離するのにプロテアーゼ消化を使用する。Abbottアミン溶媒システムからのシグナルは、明青色および明赤色の棒によって表されている。グラフから分かるように、Abbott抽出からのシグナルは、Promegaシステムで得られたものおよびQiagenの方法で処理した試料の一方(L1)と同程度である。しかしながら、Qiagenの方法で処理したL4試料は、Promegaの方法またはAbbottの方法のようにはDNAを単離されなかった。図14は、図13におけるFAMシグナルとCY5シグナルとの間の差異を示す。それぞれQiagen、PromegaおよびAbbottの方法について、3つの異なる方法は、淡緑色、濃緑色および明緑色の棒によって示されている。両方のL1試料において、Abbottの方法は、他の2つの方法と同程度のdCT値をもたらすが、L4試料は、Qiagenの方法のようには抽出されないように思われた。
【0114】
黒色腫試料については、抽出プロトコール実験を2回反復で行った。抽出および処理の条件は、上記の通りであった。図15はCtデータを示し、図16はdCTデータを示す。図15では、2つのシグナルのサイクル閾値(CT値)が示されている。サイクル閾値は、シグナルがバックグラウンドよりも有意に高いPCR反応のサイクル数を指す。アッセイにおける標的の量が多いほど、より少ないサイクル数でシグナルが生成され得るので、より小さい数字は標的の量がより多いことを示す。この図は、黒色腫組織由来のFFPE材料の2つの別個のブロック(M11およびM14)からの結果を示す。これらのブロックから連続切片を作製し、これらの番号によって表される別個の切片を3つの異なる方法で抽出した。FAMシグナルは青色の棒であり、CY5シグナルは赤色の棒である。Qiagen処理切片からのシグナルは、淡青色および淡赤色の棒によって表されており、Qiaと表示されている。Promega処理切片からのシグナルは、濃青色および濃赤色の棒によって表されており、CSCと表示されている。これらの方法は両方とも、FFPE組織からDNAを単離するのにプロテアーゼ消化を使用する。Abbottアミン溶媒システムからのシグナルは、明青色および明赤色の棒によって表されている。グラフから分かるように、Abbott抽出からのシグナルは、他の2つの方法で得られたものと同程度である。図16は、図15におけるFAMシグナルとCY5シグナルとの間の差異を示す。このdCT値は、抽出した組織が癌性であるか否かの決定を助けるのに使用される。13未満の差異は、試料における変異遺伝子の量が比較的多く(より低いCT値)、試料が癌性であり得ることを示す。それぞれQiagen、PromegaおよびAbbottの方法について、3つの異なる方法は、淡緑色、濃緑色および明緑色の棒によって示されている。M11試料では、Abbottの方法は、他の2つの方法よりも優れたdCT値(より低いdCT)をもたらすと思われる。M14試料は、一部の組織切片が高いdCT値を有する増加パターンを示すが、切片がさらに試料内部に向かうにつれて、これは低下する。これは、一部の組織ブロック切片が腫瘍細胞を含有しない可能性があり、複数の切片を試験する必要があることを示している。複数の切片からDNAを単離する能力については、以下で説明する。
【0115】
これら3つの実験は、本発明のアミン溶媒抽出法が、QiagenおよびPromegaのプロトコールと少なくとも同程度の性能であるが、必要な操作工程はより少なく、処理時間はより速いことを示している。
【0116】
[実施例8]
本発明の組成物および方法の多用途性は、従来技術の手順を超える改善を提供する。例えば、スライドにマウントされた検体の場合、従来技術の手順では、ガラススライドから試料を剥離する必要がある。この工程は、操作者のミスの影響を受ける。必要な剥離には時間がかかり、鋭利器具を使用し、二次混入の可能性が高い。本発明の組成物および方法は、スライドから試料を剥離することなく、スライドからDNAを直接抽出することを可能にする。さらに、切片のばらつきに起因するアッセイのばらつき(即ち、試料切片間のばらつきに起因する「ヒットまたはミス」)の可能性を軽減するために、または低レベルの標的の検出を助けるために、複数のスライドを一緒に処理することができる。複数のスライドを保持するために設計された受け入れ容器(RV)において、スライドを処理することができる。試料中のDNAは、ガラススライドよりも大きいMMP親和性を有する(これは、異なる種類のガラスおよび/または過剰に追加したMMPの結果であり得る。)。図17は、B型肝炎ウイルス対照に関する本発明の組成物および方法による処理の結果のグラフを示し、図18は、溶解インキュベーション手順中にMMPを追加した同じ手順を示す。プロトコールのこの時点でMMPを追加すると、DNAがMMP上に捕捉される。乳房FFPEスライドに対して行った実験は、この手順の有効性を証明している。LB−EtOH−3A1PまたはLB−3A1Pのいずれかで試料を抽出し、インキュベーション後にEtOHを追加した。また、MMPの有無の下で試料をインキュベートした。各条件について、インキュベーションを90℃で2時間および20分間行った。図19は、EtOHの有無の下で溶解インキュベーション中にMMPを追加すると、dRn値によって示されているように、DNAがMMPに結合したことを示している。dRnは、標準化応答の差を表しており、Multianalyze4(Abbott Molecular in−house software program,Abbott Park,II。当業者に公知であるように、また、www.gene−quantification.de/hkg.htmlなどのウェブサイトにおける教示によって明らかであるように、他の適切なプログラムは市販されている。)と称されるプログラムを使用してベースラインを設定した後の、PCR反応からの蛍光シグナルの値である。CT値は、dRnが、このdRnの特定の閾値と交差する地点から生成される。
【0117】
[実施例9]
本実施例では、複数のスライドを同時に処理した。同じ反応容器中で、1から4つのスライドを処理した。4つ未満のスライドを処理した条件では、空のスライドをプレースホルダーとして使用した。複数のスライドの同時処理は、低コピー数の標的を検出するのに役立ち得る。図20は、1から4つのスライドを同時に処理した結果を示す。処理スライドの各増加と共に、検出が改善された。乳房組織FFPEおよびPathVysion−Aプローブチェックノーマルスライド(Abbott Laboratories,Abbott Park,II)の両方を試験した。図21は、データの一元ANOVA分析を示す。
【0118】
より詳細には、図20は、FFPE材料を含有する1から4つのスライドを同じ反応容器中で抽出した場合に得られた増幅曲線の図である。2つの異なるスライドセットを使用した。一方のセットは、パラフィンを依然として含有する乳房組織FFPEスライドから構成されていた。他方のセットは、FISH法を使用して試験し、FISH処理中にパラフィンを除去したPathVyson−Aプローブチェックノーマルスライド(FFPE処理細胞)を含有していた。図21は、2つのグラフを有する。第1のグラフは、両抽出セットのCY5 CT値を示す。B1、B2、B3およびB4は、それぞれ1つ、2つ、3つおよび4つの乳房組織スライドを含有していた。スライドの各増加と共に減少するCT値は、スライドの数が多い増幅反応ほど、より多くのDNAが存在していたことを示している。スライドが3つになった後はこのレベルが減少していないが、これは、この時点で最大レベルの材料が抽出されたことを示している可能性がある。MR値は最大比を表し、増幅反応の振幅を示す。MR値が高いほど、増幅反応がよりロバストであることを示す。乳房組織試料では、スライドが4つの場合にMR値が減少するが、これは、この組織のスライドが3つの場合に最大レベルの材料が抽出されたこと、またはパラフィンレベルの増加が問題であり得ることを示している可能性がある。FISH処理スライドからの材料(PV1からPV4)も、スライドの数が多いほどCT値が減少し、従ってこの反応でより多くのDNAが存在していたことを示している。CT値は、第4のスライドに至るまで減少し続けている。MR値は、スライドの増加と共に減少していない。このスライドセットはパラフィンを有していないことが、このデータに反映されている可能性がある。
【0119】
[実施例10]
本実施例では、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析のために事前に処理したスライドを、本発明の組成物および方法で処理する。結果は、FISH分析のために事前に処理したスライドから核酸が抽出されること、および単離されたDNAが、FISH処理スライドからの抽出後におけるさらなる分析に適切であることを示している。
【0120】
[実施例11]
マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)からの核酸抽出。3A1P溶解組成物による溶解は、痰を溶解し、MTBから核酸を抽出するであろう。さらに、この組成物は、標的MTBを不活性化するのに使用され得る。理論によって本発明を限定するものではないが、本発明の3A1P溶解組成物の高pHは、標的MTBの不活性化に関与し得ると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]