特許第6325089号(P6325089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325089
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】排気処理再生制御システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/025 20060101AFI20180507BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20180507BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20180507BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20180507BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   F01N3/025 101
   F01N3/035 E
   F01N3/36 B
   B01D53/94 241
   B01D53/94 400
   B01D46/42 B
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-516492(P2016-516492)
(86)(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公表番号】特表2016-530425(P2016-530425A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2013044420
(87)【国際公開番号】WO2014196972
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】13/910,626
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505318721
【氏名又は名称】テネコ オートモティブ オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tenneco Automotive Operating Company Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ディジョージ,ジョン ダブリュー.
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−224742(JP,A)
【文献】 特開2012−087705(JP,A)
【文献】 特開2005−054634(JP,A)
【文献】 特開2010−270622(JP,A)
【文献】 特開2011−012606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01D 46/42
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス微粒子フィルタと、
前記排気ガス微粒子フィルタと流体連通した排気ガス酸化触媒と、
注入量の炭化水素燃料を前記排気ガス微粒子フィルタに供給する炭化水素注入器と、
前記炭化水素注入器を制御する再生管理モジュールと、
を含む排気ガス処理システムであって、
前記再生管理モジュールは、前記排気ガス酸化触媒の入り口温度、前記排気ガス酸化触媒の出口温度、および前記排気ガス微粒子フィルタの出口温度を示す信号を受け取り、
前記再生管理モジュールは、前記排気ガス酸化触媒の入り口温度、前記排気ガス酸化触媒の前記出口温度、および前記排気ガス微粒子フィルタの前記出口温度の1つを、基準温度として設定し、
前記再生管理モジュールは、
再生温度目標を生成し、
前記再生温度目標が、時間の関数として増加し、前記基準温度における非線形上昇に応じて時間と共に非線形に上昇するように、プロファイル時間および前記基準温度に基づいて前記再生温度目標を割り出す閉ループ温度目標設定レジームを初期化し、
前記再生管理モジュールは、前記再生温度目標に基づいて、炭化水素燃料の前記注入量を求め、
前記再生管理モジュールは、前記排気ガス酸化触媒の前記入り口温度、および前記排気ガス酸化触媒の前記出口温度、および前記排気ガス微粒子フィルタ前記出口温度のうちの最大値を、前記基準温度として設定する、システム。
【請求項2】
前記再生管理モジュールは、排気質量流量、前記基準温度、および前記再生温度目標に基づいて、比例炭化水素注入値、および積分炭化水素注入値、および微分炭化水素注入値を算出することで、炭化水素燃料の前記注入量を求める、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記再生管理モジュールは、平均微粒子フィルタ触媒温度を検出することで、前記排気ガス微粒子フィルタが、有効再生温度領域にあるかどうかを判断する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記再生管理モジュールは、前記平均微粒子フィルタ触媒温度が前記有効再生温度領域から外れていることに応じて、全再生時間を増分し、前記全再生時間が所定の全再生時間限界よりも大きいかどうかを判断する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記再生管理モジュールは、前記全再生時間が前記所定の全再生時間限界よりも大きいと判断することに応じて、完全な再生を確認して、前記排気ガス微粒子フィルタの再生を停止し、前記全再生時間が前記所定の全再生時間限界以下であると判断することに応じて、反復フィードバックループを開始し、前記反復フィードバックループは、前記排気ガス酸化触媒の前記出口温度、および前記排気ガス微粒子フィルタの前記出口温度を検出するステップに戻る、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記再生管理モジュールは、前記平均微粒子フィルタ温度が、前記有効再生温度領域内にあると判断することに応じて、正味再生時間分岐プロセスを開始し、前記正味再生時間分岐プロセスは、前記平均微粒子フィルタ温度に基づいて、正味再生時間を増分することと、前記正味再生時間が、所定の正味再生時間限界よりも大きいかどうかを判断することとを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記正味再生時間分岐プロセスは、前記正味再生時間が、前記所定の正味再生時間限界よりも大きいと判断することに応じて、完全な再生を確認して、前記排気ガス微粒子フィルタの再生を停止する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記正味再生時間分岐プロセスは、前記正味再生時間が、前記所定の正味再生時間限界以下であると判断することに応じて、前記全再生時間を増分することに戻る、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
排気ガス微粒子フィルタの再生を制御するシステムであって、
前記排気ガス微粒子フィルタの再生が、要求されているかどうかを示す再生発動状態信号を生成する再生発動モジュールと、
炭化水素注入物が、前記排気ガス微粒子フィルタに供給されつつあるかどうかを示す炭化水素注入イネーブル状態信号を生成する炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュールと、
前記再生発動モジュールから前記再生発動状態信号を受け取り、前記炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュールから前記炭化水素注入イネーブル状態信号を受け取るために、前記再生発動モジュール、ならびに前記炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュールと通信する再生管理モジュールと、
を含み、
前記再生管理モジュールは、閉ループ非線形温度目標設定レジーム、および閉ループ燃料制御レジームを備えるようにプログラムされ、
前記再生管理モジュールは、前記炭化水素注入物を前記排気ガス微粒子フィルタに直接供給する炭化水素注入器を制御し、
前記閉ループ非線形温度目標設定レジームは、少なくとも、
排気ガス酸化触媒の出口温度および前記排気ガス微粒子フィルタの出口温度を示す信号を受け取るステップと、
前記排気ガス酸化触媒の前記出口温度および前記排気ガス微粒子フィルタの前記出口温度のうちの最大値を基準温度として設定するステップと、
プロファイル時間および前記基準温度に基づいて、再生温度目標を生成すると共に、前記再生温度目標を割り出すステップと、
を含む、システム。
【請求項10】
前記閉ループ燃料制御レジームは、少なくとも、排気質量流量、前記基準温度、および前記再生温度目標に基づいて、比例炭化水素注入値、および積分炭化水素注入値、および微分炭化水素注入値を算出することで、前記排気ガス微粒子フィルタに注入される炭化水素燃料の注入量を求めるステップを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
(a)排気ガス微粒子フィルタの再生を開始するステップと、
(b)排気ガス酸化触媒の入り口温度、前記排気ガス酸化触媒の出口温度、および前記排気ガス微粒子フィルタの出口温度を検出するステップと、
(c)前記排気ガス酸化触媒の前記入り口温度、および前記排気ガス酸化触媒の前記出口温度、および前記排気ガス微粒子フィルタの前記出口温度のうちの最大値を基準温度として設定するステップと、
(d)プロファイル時間および前記基準温度に基づいて、再生温度目標を生成すると共に、前記再生温度目標を割り出すステップと、
(e)排気質量流量、前記基準温度、および前記再生温度目標に基づいて、炭化水素注入値を求めるステップと、
(f)前記炭化水素注入値に対応する注入量の炭化水素燃料を前記排気ガス微粒子フィルタに供給するように、炭化水素注入器を制御するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
(g)前記排気ガス微粒子フィルタの再生が要求されているかどうかを示す再生発動状態と、炭化水素注入物が前記排気ガス微粒子フィルタに供給されつつあるかどうかを示す炭化水素注入イネーブル状態とを検出するステップと、
(h)再生が中断されているかどうかを判断するステップであって、前記再生発動状態が、前記排気ガス微粒子フィルタの再生が要求されていることを示し、前記炭化水素注入イネーブル状態が、炭化水素注入物が前記排気ガス微粒子フィルタに供給されていないことを示すことに応じて、再生が中断されていると判断される、ステップと、
(i)再生が中断されていると判断することに応じて、再生中断フィードバックループを開始するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記再生中断フィードバックループは、
平均微粒子フィルタ触媒温度を検出するステップと、
前記排気ガス微粒子フィルタが、有効再生温度領域内にあるかどうかを判断するステップであって、前記平均微粒子フィルタ触媒温度が、前記有効再生温度領域から外れていることに応じて、前記排気ガス微粒子フィルタが、前記有効再生温度領域から外れていると判断するステップと、
前記平均微粒子フィルタが、前記有効再生温度領域外にあると判断することに応じて、前記平均微粒子フィルタ触媒温度に基づき正味再生時間を減ずるステップと、
前記正味再生時間を減じることに応じて、前記排気ガス微粒子フィルタの再生を開始するステップに戻るステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(j)前記基準温度として設定するステップ(c)を完了することに応じて、前記再生温度目標がすでに生成されたかどうかを判断するステップと、
(k)前記ステップ(j)において、前記再生温度目標がすでに生成されたと判断することに応じて、前記再生温度目標を生成するステップ(d)を飛ばすステップと、
(l)前記ステップ(j)において、前記再生温度目標が前に生成されなかったと判断することに応じて、前記再生温度目標を生成するステップ(d)を実行するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
(m)前記再生温度目標から前記基準温度を減ずることで温度誤差を算出するステップと、
(n)前記再生温度目標を所定の最小限界係数で乗ずることで温度誤差下限値を算出するステップと、
(o)前記再生温度目標を所定の最大限界係数で乗ずることで温度誤差上限値を算出するステップと、
(p)前記温度誤差が前記温度誤差上限よりも小さいかどうかを判断するステップと、
(q)前記排気ガス酸化触媒の入り口温度が前記再生温度目標よりも大きいときに、前記再生温度目標を再度割り出しすることによる、前記温度誤差が前記温度誤差上限値よりも小さいことに応じて、誤差上限フィードフォワードループを開始するステップと、
(r)前記温度誤差が、前記誤差上限値以上であることに応じて、前記再生温度目標を制御フラグにセットするステップと、
(s)平均微粒子フィルタ触媒温度を検出するステップと、
(t)前記排気ガス微粒子フィルタが、有効再生温度領域内にあるかどうかを判断するステップであって、前記平均微粒子フィルタ触媒温度が、前記有効再生温度領域内にあることに応じて、前記排気ガス微粒子フィルタが、前記有効再生温度領域内にあると判断されるステップと、
(u)前記温度誤差が前記温度誤差下限値よりも大きいかどうかを判断するステップと、
(v)制御フラグの前記再生温度目標を消去することによる、前記温度誤差が前記温度誤差下限値よりも大きいことに応じて、誤差下限フィードフォワードループを開始するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記誤差下限フィードフォワードループは、
すでに前記制御フラグにセットされた任意の再生温度目標を消去するステップと、
前記排気ガス微粒子フィルタが、有効再生温度領域内にあるかどうかを判断するステップ(t)に戻るステップと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記誤差上限フィードフォワードループは、
前記酸化触媒の入り口温度を検出するステップと、
前記酸化触媒の前記入り口温度が、前記再生温度目標よりも大きいかどうかを判断するステップと、
前記酸化触媒の前記入り口温度が、前記再生温度目標よりも大きいことに応じて、前記プロファイル時間および前記基準温度に基づき前記再生温度目標を再度割り出し、前記再生温度目標を制御フラグにセットするステップ(q)に戻るステップと、
前記酸化触媒の前記入り口温度が、前記再生温度目標以下であることに応じて、すでに前記制御フラグにセットされた任意の再生温度目標を消去し、前記排気ガス微粒子フィルタが、有効再生温度領域内にあるかどうかを判断するステップ(t)に戻るステップと、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記平均微粒子フィルタ触媒温度が、前記有効再生温度領域内にあることに応じて、正味再生時間分岐プロセスを開始するステップと、
前記平均微粒子フィルタ触媒温度が、前記有効再生温度領域から外れていること応じて、前記制御フラグが前記再生温度目標をセットされているかどうかを判断するステップと、
前記制御フラグが前記再生温度目標をセットされていることに応じて、前記プロファイル時間に1の値を加えることで全再生時間を増分して、再生温度目標を増加するステップと、
前記再生温度目標が前記制御フラグにないことに応じて、再生温度目標を増加するステップを飛ばすステップと、
前記全再生時間を増分するステップと、
前記全再生時間が所定の全再生時間限界よりも大きいかどうかを判断するステップと、
前記全再生時間が前記所定の全再生時間限界以下であると判断することに応じて、反復フィードバックループを開始するステップであって、前記反復フィードバックループは、前記排気ガス酸化触媒の前記出口温度および前記排気ガス微粒子フィルタの前記出口温度を検出するステップ(b)に戻ることで、前記ステップ(b)〜(f)および(m)〜(v)を含むプロセスを繰り返す、ステップと、
前記全再生時間が、前記所定の全再生時間限界よりも大きいと判断することに応じて、完全な再生を確認し、前記排気ガス微粒子フィルタの再生を停止するステップと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記正味再生時間分岐プロセスは、
正味再生時間を増分するステップと、
前記正味再生時間が、所定の正味再生時間限界よりも大きいかどうかを判断するステップと、
前記正味再生時間が、前記所定の正味再生時間限界以下であることに応じて、前記全再生時間を増分するステップに戻るステップと、
前記正味再生時間が、前記所定の正味再生時間限界よりも大きいと判断することに応じて、完全な再生を確認し、前記排気ガス微粒子フィルタの再生を停止するステップと、
を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)などの排気ガス微粒子フィルタの再生を制御するシステムおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、閉ループ非線形温度目標設定および燃料制御を使用して、フィルタの再生を管理するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス微粒子フィルタは、今日の多くの車両、特に、圧縮点火エンジンによって動力を供給される車両において、一般的な排出物制御装置になった。圧縮添加ディーゼルエンジンの排出物を制御するのに使用される場合に、しばしばディーゼル微粒子フィルタ(DPF)と呼ばれる排気ガス微粒子フィルタは、通常、車両の排気システムと流体連通して取り付けられる。排気ガス微粒子フィルタは、排気ガスが排気システムから出て、周囲環境に入る前に、排気システムを通過する排気ガスから未燃焼炭化水素またはすすを除去するように機能する。排気ガス微粒子フィルタによって排気ガスから除去されたすすは、排気ガス微粒子フィルタのハウジング内に捕捉される。時間と共に、このすすは蓄積し、除去されなければならない。排気ガス微粒子フィルタのディーラ保守およびハウジングの物理的清浄を要求するのではなくて、すすが燃焼できるように、排気ガス微粒子フィルタ内の排気の温度を上げる排気後処理システムが開発された。これらのシステムは、通常、すすの燃焼およびそれに伴う除去を通じて、微粒子フィルタを再生するとされている。
【0003】
排気ガス微粒子フィルタ内の排気ガス温度は、炭化水素燃料を排気システムまたは排気ガス微粒子フィルタ自体に注入することで上げることができる。排気ガスに注入された炭化水素燃料は着火して、すすが燃焼できる温度まで排気ガスの温度を上げ、すすは、排気ガス微粒子フィルタを通過し、排気システムから出る。電子制御システムを使用して、炭化水素注入器と称することもできる炭化水素注入システムを制御することができる。しかし、そのような電子制御システム、およびこれらの電子制御システムが実行する方法またはレジームは、排気ガス温度を変えることに対応するのが遅い傾向があり、結果として、必要以上に時間がかかり、余分な炭化水素燃料を消費する不完全な微粒子フィルタ再生になる。排気ガス温度が、電子制御システムによって設定された目標温度を超える温度オーバシュートもよく見られることである。これらの温度オーバシュートにより、炭化水素注入物が遮断されることがあり、これは、微粒子フィルタ触媒の急激な冷却を特徴とする大きな温度アンダーシュートを引き起こす。急激な冷却により、微粒子フィルタ触媒に亀裂が入ることがあり、排気ガス微粒子フィルタは、指定された再生温度領域まで再度引き上げられなければならないため、完全なフィルタ再生を達成するのにさらなる遅延が生じる。さらに、電子制御システムは、排気ガス温度が、指定された温度領域を上回るまたは下回るために、再生が中断される部分再生事象に対処できない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概略的には、本開示は、閉ループ非線形温度目標設定および燃料制御を使用して、排気ガス微粒子フィルタの再生を制御するシステムおよび方法を提示する。
【0005】
一形態では、本開示は、排気ガス微粒子フィルタと、排気ガス微粒子フィルタと流体連通した排気ガス酸化触媒とを含むシステムを提示する。炭化水素注入器は、再生を容易にするために、注入量の炭化水素燃料を排気ガス微粒子フィルタに供給する。再生管理モジュールは、炭化水素注入器を制御し、それにより、排気ガス微粒子フィルタの再生を制御する。再生管理モジュールは、排気ガス酸化触媒の出口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度を示す信号を受け取る。再生管理モジュールは、排気ガス酸化触媒の出口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度の1つ、基準温度として設定する。再生管理モジュールはまた、プロファイル時間および基準温度に基づいて再生温度目標を割り出すことで、再生温度目標を初期化する。次いで、再生管理モジュールは、再生温度目標に基づいて、炭化水素燃料の注入量を求める。
【0006】
別の形態では、システムは、再生発動状態信号を生成する再生発動モジュールを含む。再生発動状態信号は、排気ガス微粒子フィルタの再生が、システムによって要求されたかどうかを示す。システムはまた、炭化水素注入イネーブル状態信号を生成する炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュールを含む。炭化水素注入イネーブル状態信号は、炭化水素注入物を排気ガス微粒子フィルタに供給することができるかどうかを示す。再生発動モジュールならびに炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュールと通信する再生管理モジュールは、再生発動モジュールから再生発動状態信号を受け取り、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュールから炭化水素注入イネーブル状態信号を受け取る。再生管理モジュールは、閉ループ非線形温度目標設定レジーム、および閉ループ燃料制御レジームを備えるように、プログラムされる。
【0007】
本開示はまた、排気ガス微粒子フィルタの再生を制御する方法を提示する。方法は、排気ガス微粒子フィルタの再生を開始することと、排気ガス酸化触媒の出口温度、排気ガス酸化触媒の入り口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度を検出することとを含む。排気ガス酸化触媒の出口温度、排気ガス酸化触媒の入り口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度のうちの最大値が、基準温度として設定される。プロファイル時間および基準温度に基づいて、再生温度目標が初期化され、再生温度目標が割り出される。方法は、排気質量流量、基準温度、および再生温度目標に基づいて、少なくとも1つの炭化水素注入値を求めることをさらに含む。
【0008】
上記の結果、本明細書に開示するシステムおよび方法は、いくつかの利点をもたらす。閉ループ非線形温度目標設定レジームと閉ループ燃料制御レジームとを関連付けることで、本明細書に提示するシステムおよび方法は、排気ガス温度を変えることを考慮し、素早く対処する。特に、プロファイル時間と、排気ガス酸化触媒の入り口温度、排気ガス酸化触媒の出口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度の1つ設定された基準温度とによって、再生温度目標を割り出すことにより、閉ループ非線形温度目標設定レジームは、排気ガス温度の変化にすばやく対応することができる。これは、微粒子フィルタ再生時間を最小化し、相応して、再生プロセスによって消費される炭化水素燃料の量を低減する。閉ループ非線形温度目標設定はまた、再生温度目標が、所定の再生領域を超えて割り出され、微粒子フィルタ触媒を急冷することなく、低い排気ガス温度で再生を可能にするため、炭化水素燃料の使用を抑制する。
【0009】
本明細書に開示するシステムおよび方法はまた、排気ガス酸化触媒の入り口温度、排気ガス酸化触媒の出口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度のうちの最大値基準温度として設定することで、温度オーバシュートを軽減する。これは、炭素注入をより安定したものにし、微粒子フィルタ触媒に亀裂を入れ、完全なフィルタ再生を達成するのにさらなる遅延をもたらす恐れのある排気ガス微粒子フィルタの急激な冷却を防止する。再生が中断されたかどうかを特定することにより、開示するシステムおよび方法は、排気ガス温度が指定された再生温度領域から外れたために再生が中断されている部分再生事象にも対処する。そのような再生の中断を検出することに応じて、本明細書に開示するシステムおよび方法は、観測した部分再生事象に基づき、次の再生サイクルの期間を調整することができる。
【0010】
以下の詳細な説明を参照して、添付の図面と併せて検討した場合に、本開示をより良く理解でき、本開示のこれらの、および他の特徴および利点が容易に分かるであろう。これらの図面は、すべての可能な実施形態ではなく、選択した実施形態だけを例示することを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示で説明する例示的な再生制御システムを含むエンジンおよび排気システムのブロック図である。
図2】例示的な再生制御システムのモジュール、ならびにモジュールのそれぞれの入力信号および出力信号を示す例示的な再生制御システムのブロック図である。
図3A】本開示で説明する例示的な再生制御システムを使用する例示的な方法のステップを示す流れ図である。
図3B図3Aの流れ図の続きであり、本開示で説明する例示的な再生制御システムを使用する例示的な方法のステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照すると、同じ数字は、各図を通して対応する部分を示し、排気ガス微粒子フィルタ22の再生を管理するシステム20が提示されている。図1に示すように、システム20は、概略的には、内燃機関24の排出物を制御する。当然のことながら、内燃機関24は、圧縮点火エンジン、または火花点火エンジンを含む様々な形態を取ることができる。排気システム26は、概略的には、内燃機関24と流体連通して接続されて、排気ガスを内燃機関24から離れる方向に移送する。酸化触媒28は、排気システム26と流体連通して配置されて、排気システム26を通過する排気ガスから一酸化炭素および窒素酸化物などの汚染物質を除去することで排出物を制御することができる。当然のことながら、エンジン24が、ディーゼルエンジンなどの圧縮点火エンジンである場合に、酸化触媒28は、ディーゼル酸化触媒(DOC)とすることができる。排気ガス微粒子フィルタ22も、排気システム26と流体連通して配置されて、排気システム26を通過する排気ガスから、すすなどの未燃焼炭化水素を含む汚染物質を除去することで排出物を制御することができる。当然のことながら、エンジン24が、ディーゼルエンジンなどの圧縮点火エンジンである場合に、排気ガス微粒子フィルタ22は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)とすることができる。やはり当然のことながら、酸化触媒28および排気ガス微粒子フィルタ22の配置は、エンジン24の近辺において変えることができる。一部の配置では、酸化触媒28は、排気ガス微粒子フィルタ22よりもエンジン24に接近することができ、他の配置では、酸化触媒28は、排気ガス微粒子フィルタ22よりもエンジンから離れることができる。さらに、複数の酸化触媒28および排気ガス微粒子フィルタ22を使用することができる。
【0013】
引き続き図1を参照して、排気ガス微粒子フィルタ22は、酸化剤として作用する微粒子フィルタ触媒30を有することができる。通常、微粒子フィルタ触媒30は、例えば、二酸化窒素またはNOx排出物を低減するコーティングなどの、排気システム26に配置された固体材料である。炭化水素注入器32は、排気ガス微粒子フィルタ22と流体連通して配置することができる。炭化水素注入器32は、未燃焼燃料などの炭化水素注入物を直接的に微粒子フィルタ22、または微粒子フィルタ22に隣接する排気システム26に直接注入することができる。排気ガス微粒子フィルタ22または排気システム26に注入された炭化水素注入物は、排気ガス微粒子フィルタ22に集まったすすを燃焼させるために、再生中に微粒子フィルタ触媒30と相互作用して、排気ガス温度を上昇させる。システム20は、排気ガス微粒子フィルタ22の再生を管理するために、炭化水素注入器32と、任意選択でエンジン24との動作を制御するように動作可能である。なお、炭化水素という用語は、通常、排気ガス後処理システムで使用できるすべての燃料および注入剤を含む任意の可燃性媒体を指すように、本明細書において特殊な形で使用される。例えば、アルコールを含むそのような燃料および注入剤は、水素および炭素鎖で構成されることも構成されないこともあるが、それでもなお、その用語を本明細書で使用する場合の炭化水素の定義に当てはまる。したがって、炭化水素注入物を排気システム26に供給する炭化水素注入器32は、炭化水素という用語によって限定されず、通常、任意の可燃性媒体を排気システム26に供給する注入器を指す。
【0014】
図2に示すように、システム20は、アプリケーション入力信号を処理するアプリケーション入力処理モジュール34を含む。入力信号を処理することには、他の測定信号から推定信号を計算することが含まれる。システムはまた、再生発動モジュール36、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38、ならびに信号処理モジュール40を含む。アプリケーション入力処理モジュール34は、入力信号42、44、46を再生発動モジュール36、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38、ならびに信号処理モジュール40に送ることで、再生発動モジュール36、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38、ならびに信号処理モジュール40と通信する。再生発動モジュール36ならびに炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38は、相互に伝送信号48を送受信することで互いに通信する。同様に、信号処理モジュール40ならびに炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38は、相互に伝送信号48を送受信することで互いに通信する。伝送信号48は、それらに限定されるものではないが、発動状態、システムレディ状態、システム障害、および再生禁止を示す信号とすることができる。
【0015】
再生発動モジュール36は、アプリケーション入力処理モジュール34から少なくとも第1の入力信号42を受け取り、それに応じて、再生発動状態信号50を生成する。例として、第1の入力信号42は、それらに限定されるものではないが、すす負荷集積量、圧力差、背圧、または再生の合間の時間を示す信号とすることができる。再生発動状態信号50は、システム20が、排気ガス微粒子フィルタ22の再生を要求しているかどうかを示す。炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38は、アプリケーション入力処理モジュール34から少なくとも第2の入力信号44を受け取り、それに応じて、炭化水素注入イネーブル状態信号52を生成する。炭化水素注入イネーブル状態信号52は、炭化水素注入が可能かどうかを示す。例として、第2の入力信号44は、それらに限定されるものではないが、最大および最小排気ガス温度、燃料状態、エンジン回転数および負荷、または排気流を示す信号とすることができる。
【0016】
信号処理モジュール40は、アプリケーション入力処理モジュール34から少なくとも第3の入力信号46を受け取り、それに応じて、複数の動作パラメータ信号54、56、58、60、62、64、66を生成する。例として、第3の入力信号46は、それらに限定されるものではないが、排気ガス温度、排気ガス圧力、エンジン回転数、吸気流、および燃料流を示す信号とすることができる。したがって、第3の入力信号46は、エンジン24またはシステム20に関して測定および/または計算したものとすることができる。複数の動作パラメータ信号54、56、58、60、62、64、66には、少なくとも、エンジン負荷率信号54、エンジン回転数信号56、酸化触媒入り口温度信号58、微粒子フィルタ圧力差信号60、排気背圧信号62、平均微粒子フィルタ触媒温度信号64、および排気体積流量信号66が含まれる。エンジン負荷率信号54は、エンジン24が現時点で受けている機械負荷のパーセンテージを表す。エンジン負荷率信号54は、最大負荷100%〜無負荷0%の範囲を取る。当然のことながら、上り坂を走行するときに、または加速時に最大負荷状態になることがあり、下り坂を走行するときに、または減速時に、無負荷状態になることがある。やはり当然のことながら、エンジン負荷率信号54は、0〜1の範囲を取る分数値または小数値として表されることがある。エンジン回転数信号56は、例えば、回転/分(RPM)の単位で測定したエンジン24の現在の回転動作速度を表す。酸化触媒入り口温度信号58は、酸化触媒28の入り口に入る排気ガスの温度を表す。当然のことながら、酸化触媒入り口温度信号58は、測定するか、または推定することができる。やはり当然のことながら、酸化触媒入り口温度信号58は、例えば、摂氏温度(C)または華氏温度(F)を含む様々な異なる単位として表すことができる。
【0017】
微粒子フィルタ圧力差信号60は、排気ガス微粒子フィルタ22に入る排気ガスと、排気ガス微粒子フィルタ22から出る排気ガスとの間の圧力差を表す。当然のことながら、微粒子フィルタ圧力差信号60は、測定するか、または推定することができる。やはり当然のことながら、微粒子フィルタ圧力差信号60は、例えば、キロパスカル(kPa)を含む様々な異なる単位として表すことができる。排気背圧信号62は、酸化触媒28および排気ガス微粒子フィルタ22を通る排気ガス流を含む、排気システム26を通る排気ガスの流れと反対方向の、またはその流れに抗する圧力を表す。当然のことながら、排気背圧信号62は、測定するか、または推定することができ、例えば、キロパスカル(kPa)を含む様々な異なる単位として表すことができる。
【0018】
平均微粒子フィルタ触媒温度64信号は、微粒子フィルタ触媒30の全長に沿って平均化した微粒子フィルタ触媒30の温度を表す。やはり当然のことながら、平均微粒子フィルタ触媒温度信号64は、測定するか、または推定することができ、例えば、摂氏温度(C)または華氏温度(F)を含む様々な異なる単位として表すことができる。排気体積流量信号66は、排気システム26を移動する排気ガスの体積流量を表す。当然のことながら、排気体積流量信号66は、測定するか、または推定することができ、例えば、リットル/時間(LPH)を含む様々な異なる単位として表すことができる。
【0019】
システムは、再生発動モジュール36、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38、ならびに信号処理モジュール40と通信する再生管理モジュール68をさらに含む。より詳細には、再生管理モジュール68は、再生発動モジュール36から再生発動状態信号50を受け取り、再生管理モジュール68は、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38から炭化水素注入イネーブル状態信号52を受け取る。同様に、再生管理モジュール68は、エンジン負荷率信号54、エンジン回転数信号56、酸化触媒入り口温度信号58、微粒子フィルタ圧力差信号60、排気背圧信号62、平均微粒子フィルタ触媒温度信号64、および排気体積流量信号66を信号処理モジュール40から受け取る。再生発動モジュール36、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38、ならびに信号処理モジュール40からこれらの信号を受け取ることに応じて、再生管理モジュール68は、閉ループ温度目標設定レジームと、閉ループ温度目標設定レジームに関連付けられた閉ループ燃料制御レジームとを実行することで、炭化水素再生イネーブル状態信号70を生成する。再生管理モジュール68によって実行される閉ループ温度目標設定レジームおよび閉ループ燃料制御レジームは、下記にさらに詳細に説明される。当然のことながら、再生管理モジュール68、再生発動モジュール36、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38、ならびに信号処理モジュール40の1つまたは複数は、下記に説明する方法および/または上記の信号に関連する情報を保存するために、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)を有することができる。診断ツールとして使用するために、NVRAMを使用して、完全な再生の全回数、および再生中断の全回数を保存することができる。
【0020】
本願では、モジュールという用語は、回路という用語と置き換えることができる。モジュールという用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログ、もしくは混合アナログ/デジタルディスクリート回路、デジタル、アナログ、もしくは混合アナログ/デジタル集積回路、組み合わせロジック回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ(共有、専用、またはグループ)、プロセッサによって実行されるコードを保存するメモリ(共有、専用、またはグループ)、説明した機能を提供する他の適切なハードウェア構成要素、またはシステムオンチップなどの上記の一部もしくはすべての組み合わせの一部を指す、またはこれらを含むことができる。
【0021】
上記で使用したコードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはマイクロコードを含むことができ、プログラム、ルーチン、関数、クラス、および/またはオブジェクトを指すことができる。共有プロセッサという用語は、複数のモジュールからの一部またはすべてのコードを実行する単一のプロセッサを包含する。グループプロセッサという用語は、別のプロセッサと組み合わせて、1つまたは複数のモジュールからの一部またはすべてのコードを実行するプロセッサを包含する。共有メモリという用語は、複数のモジュールからの一部またはすべてのコードを保存する単一のメモリを包含する。グループメモリという用語は、別のメモリと組み合わせて、1つまたは複数のモジュールからの一部またはすべてのコードを保存するメモリを包含する。メモリという用語は、コンピュータ可読媒体という用語の一部とすることができる。コンピュータ可読媒体という用語は、媒体を伝播する一時的な電気および電磁信号を包含せず、したがって、有形および非一時的とみなすことができる。非一時的有形コンピュータ可読媒体の非限定的な例には、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、磁気記憶装置、光学式記憶装置がある。
【0022】
ここで、図3Aおよび図3Bを参照すると、排気ガス微粒子フィルタの再生を管理する方法のステップを示す流れ図が示されている。ステップ100で、排気ガス微粒子フィルタの再生が開始される。再生が開始されることに応じて、方法は、ステップ102で、排気ガス酸化触媒の入り口温度と、排気ガス酸化触媒の出口温度と、排気ガス微粒子フィルタの出口温度とを検出する。上記のように、これらの温度は、測定するか、または推定する(すなわち、モデル化する)ことができる。次に、方法は、ステップ104で、排気ガス酸化触媒の入り口温度、排気ガス酸化触媒の出口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度のいずれかのうちの最大値基準温度として設定する。この場合に、基準温度は、排気ガス微粒子フィルタ22に供給される炭化水素注入物の量を調整するために、閉ループ燃料制御レジームによって使用され、こうして、閉ループ温度目標設定レジームを閉ループ燃料制御レジームに関連付けるように働く。排気ガス酸化触媒の入り口温度、排気ガス酸化触媒の出口温度、および排気ガス微粒子フィルタの出口温度のうちの最大値基準温度として設定することで、排気ガス温度が、開ループ制御システムによって設定された目標温度を超える温度オーバシュートが軽減される。温度オーバシュートにより、炭化水素注入物が遮断されることがあり、これは、微粒子フィルタ触媒30の急激な冷却と共に、大きな温度アンダーシュートを引き起こすため、開示した方法は有益である。この急激な冷却は、再生プロセスを遅延させて時間がかかるようにし、結果として燃料消費を増やすのに加えて、微粒子フィルタ触媒30に亀裂を生じさせることがある。
【0023】
方法は、ステップ106で、再生が中断されているかどうかを判断する。再生の中断は、再生が発動され、炭化水素注入が実行可能になっていない任意の時点として定義される。したがって、ステップ106は、再生発動モジュール36によって生成された再生発動信号50と、炭化水素注入診断およびシステムイネーブルモジュール38によって生成された炭化水素注入イネーブル状態信号52とを解析して、再生が発動されたかどうか、および炭化水素注入が実行可能になっているかどうかを判断する。再生が中断されていると判断することに応じて、方法は、再生中断フィードバックループ108に進む。あるいは、再生が中断されていないと判断することに応じて、方法は、再生温度目標が初期化されたかどうかを判断するステップ110に進む。再生温度目標が初期化されていると判断することに応じて、方法は、排気質量流量、基準温度、および再生温度目標に基づいて、比例、積分、および微分炭化水素注入値を計算することで、閉ループ燃料制御レジームを実行するステップ112に進む。これらの炭化水素注入値は、閉ループ燃料制御レジームの一部として、再生を制御するために排気ガス微粒子フィルタ22に注入される炭化水素燃料の量または質量を表す。あるいは、再生温度が初期化されていないと判断することに応じて、方法は、最初に、再生温度目標を初期化するステップ114に進む。ステップ114では、プロファイル時間および基準温度を使用して生成された校正曲線に基づき、再生温度目標を割り出すことで、再生温度目標が初期化される。再生温度目標を初期化することに応じて、次いで、方法はステップ112に進む。結果として、ステップ110は、閉ループ温度目標設定レジームを始める。
【0024】
当然のことながら、開ループ温度目標設定レジームにおいて、所定の再生温度領域(すなわち、すすが燃焼できる温度範囲)を超えて延びない所定の線形温度勾配、または線形温度曲線に従って、目標温度が設定される。対照的に、本開示の閉ループ温度目標設定レジームは動的であり、再生温度目標が、所定の再生温度領域を超えて割り出されるのを可能にする。有利にも、これは、方法が最小再生温度目標を自動的に発見するのを可能にし、それに伴い、炭化水素注入物および燃料の節約の点で削減がなされる。言い換えると、方法は、微粒子フィルタ触媒30を急冷することなく、低い排気ガス温度で再生温度範囲を拡張する自己調整式温度目標設定および燃料制御をもたらす。閉ループ温度目標設定レジームはまた、開ループ温度目標設定に伴う待ち時間または遅延をなくす。開ループ温度目標設定において、目標温度は経過時間と共に線形的に上昇する。加速時などにエンジン24にかかる負荷が増加した場合、排気ガス温度は、開ループシステムが要求した目標温度より高くなることがあり、目標温度が、より高い排気ガス温度に追いつく前に、時間が経過せざるを得なくなる。これは、再生時間および燃料を無駄にする。開示した閉ループ温度目標設定レジームは、プロファイル時間および基準温度に従って再生温度目標を割り出すことによって、そのような遅延をなくす。プロファイル時間は、ゼロから加算し、時間の関数として、再生温度目標を増加させるように構成されたプロファイルタイマによって生成される。その一方で、ステップ104で、基準温度は、酸化触媒出口温度および微粒子フィルタ出口温度のうちの最大値に等しいように設定される。したがって、開示した閉ループ温度目標設定レジームは、エンジンで誘発された排気ガス温度の上昇を考慮する。排気ガス温度が何らかの理由で上昇した場合に、閉ループ温度目標設定レジームは、再生温度目標をより高い排気ガス温度以上の温度に自動的に上げる。
【0025】
ステップ116で、方法は、温度誤差、温度誤差下限値、温度誤差上限値を算出することを含む。温度誤差は、再生温度目標から基準温度を減ずることで算出される。温度誤差下限値は、再生温度目標を所定の最小限界係数で乗ずることで算出される。温度誤差上限値は、再生温度目標を所定の最大限界係数で乗ずることで算出される。温度誤差、温度誤差下限値、および温度誤差上限値を算出することに応じて、方法は、温度誤差が温度誤差下限値よりも大きいかどうかを判断するステップ118に進む。温度誤差が温度誤差下限値よりも大きいことに応じて、方法は、誤差下限フィードフォワードループ120に進む。温度誤差が温度誤差下限値以下であることに応じて、方法は、温度誤差が温度誤差上限値よりも小さいかどうかを判断するステップ122に進む。温度誤差が温度誤差上限値よりも小さいことに応じて、方法は、誤差上限フィードフォワードループ124に進む。温度誤差が温度誤差上限値以上であることに応じて、方法は、再生温度目標を制御フラグにセットするステップ126に進む。
【0026】
ステップ116の計算で使用される所定の最小限界係数および所定の最大限界係数は実験で求められ、再生温度目標に比例する。より具体的には、最小限界係数および最大限界係数は、参照テーブルから求められる。例として、参照テーブルは以下の通りとすることができる。
【0027】
再生温度目標:[200 300 400 600 700]
最小限界係数:[−0.1 −0.15 −0.2 −0.1 −0.05]
再生温度目標:[200 300 400 600 700]
最大限界係数:[0.1 0.15 0.2 0.1 0.05]
方法のステップ110〜126を参照すると、閉ループ燃料制御レジームは、温度誤差を第2の参照テーブルからの値で乗じたものの関数である参照テーブルを使用して、比例炭化水素注入値を割り出すことを含み、第2の参照テーブルは、排気質量流量の関数である。閉ループ燃料制御レジームはまた、温度誤差をゲイン係数で除したものの関数である第3の参照テーブルを使用して、積分炭化水素注入値を割り出すことを含む。例えば、温度誤差は、排気質量流量の関数である第4のテーブルからの値を10倍したものなどのゲイン係数で除することができる。積分炭化水素注入値の割り出しは、校正された時間量(rate of time)で行われる。最大および最小積分炭化水素注入値は、フィードフォワード項の割合を校正した結果によって制限される。積分炭化水素注入値は、注入条件が満たされた場合に、または温度誤差が校正された限界を超えたならば、再生が開始されるときにリセットされる。閉ループ燃料制御レジームはまた、微分ゲインに誤差のアクセラレーション(acceleration of the error)(すなわち、誤差の変化率(error rate))を乗ずることで、微分炭化水素注入値を計算することを含む。微分炭化水素注入値は、誤差変化率の関数である第5の参照テーブルから求められる。微分炭化水素注入値は、積分炭化水素注入値と同様の態様で、最大値および最小値によって制限される。したがって、当然のことながら、閉ループ燃料制御レジームは、限定した期間だけフィードフォワード制御を使用するのとは区別される常時閉ループである。閉ループ燃料制御レジームの各フィードバック項は、最大または最小レベルにクリップされる。
【0028】
ステップ128で、方法は、平均微粒子フィルタ触媒温度を検出することで、排気ガス微粒子フィルタ22が、有効再生温度領域にあるかどうかを判断することをさらに含む。平均微粒子フィルタ触媒温度が、有効再生温度領域内にあることに応じて、方法は正味再生時間分岐プロセス130に進む。平均微粒子フィルタ触媒温度が、有効再生温度領域から外れていることに応じて、方法は、ステップ126によって制御フラグが再生温度目標にセットされているかどうかを判断するステップ132に進む。制御フラグが、ステップ126でセットされた再生温度目標を有することに応じて、方法は、プロファイル時間の総計として定義される再生プロファイル温度目標時間を値1だけ増分することで、再生温度目標を上に進めるステップ134に進む。再生温度目標が制御フラグにないことに応じて、方法は、制御フラグフィードフォワードループ136に進む。
【0029】
ステップ138で、方法は全再生時間を増分して進む。全再生時間は、再生を完了しようするのにシステム20が費やした時間量と定義することができる。言い換えると、全再生時間は、再生が発動された時点と再生が完了した時点との間の期間である。全再生時間を増分することに応じて、方法は、全再生時間が、所定の全再生時間限界よりも大きいかどうかを判断するステップ140に進む。全再生時間が、所定の全再生時間限界よりも大きいことに応じて、方法は、完全な再生を確認し、排気ガス微粒子フィルタの再生を停止するステップ142に進む。全再生時間が所定の全再生時間限界以下であることに応じて、方法は、反復フィードバックループ144に進む。反復フィードバックループ144は、酸化触媒入り口温度、酸化触媒出口温度、および微粒子フィルタ出口温度を検出するステップ102に戻ることで、開示した方法を繰り返すことを要求する。
【0030】
再生中断フィードバックループ108は、ステップ106によって再生が中断されていると判断することに応じて実行される。再生中断フィードバックループ108は、再生温度目標を基準温度として設定するステップ146を含む。再生中断フィードバックループ108は、平均微粒子フィルタ触媒温度を検出することで、排気ガス微粒子フィルタが、有効再生温度領域にあるかどうかを判断するステップ148に進む。平均微粒子フィルタ触媒温度が、有効再生温度領域内にあることに応じて、方法は正味再生時間分岐プロセス130に進む。平均微粒子フィルタ触媒温度が、有効再生温度領域から外れている(すなわち、上か、または下)ことに応じて、方法は、平均微粒子フィルタ触媒温度に基づいて、正味再生時間を減ずるステップ150に進む。正味再生時間は、所与の温度で排気ガス微粒子フィルタ22内のすすを完全に燃焼させるのに必要とされる時間として定義することができる。言い換えると、正味再生時間は、微粒子フィルタ触媒30が有効再生温度領域内にある状態で費やされる時間である。正味再生時間は、平均微粒子フィルタ温度の関数である校正テーブルに基づいて減ぜられる。校正率は、0.5〜1.5の範囲を取り、再生が発動されたが、平均微粒子フィルタ触媒温度が、有効再生温度領域内ではないときは必ず始まる。結果的に、平均微粒子フィルタ触媒温度が低温になるほど減分が急速になる。
【0031】
正味再生時間を減じることに応じて、再生中断フィードバックループ108は、次に、排気ガス微粒子フィルタ22の再生を開始するステップ100に戻ることで、開示した方法を繰り返すことを要求する。相応して、再生時に中断が発生した場合に、有効再生温度領域で費やされる正味再生時間は、平均微粒子フィルタ触媒温度に応じて調整される。正味再生時間を調整することで、方法は、次の再生サイクル中の再生事象を短縮して、燃料の節約を可能にする。
【0032】
誤差下限フィードフォワードループ120は、温度誤差が温度誤差下限値よりも大きいことに応じて実行される。誤差下限フィードフォワードループ120は、制御フラグの再生温度目標を消去するステップ152を含む。言い換えると、誤差下限フィードフォワードループ120は、制御フラグの再生温度目標が、前のループでセットされることに応じて、前に算出された再生温度目標を保持することを要求する。制御フラグにセットされた任意の再生温度目標を消去することに応じて、誤差下限フィードフォワードループ120は、排気ガス微粒子フィルタ22が有効再生温度領域にあるかどうかを判断するステップ128に戻ることで次に進む。
【0033】
誤差上限フィードフォワードループ124は、温度誤差が温度誤差上限値よりも小さいことに応じて実行される。誤差上限フィードフォワードループ124は、酸化触媒入り口温度が、再生温度目標よりも大きいかどうかを判断するステップ154を含む。酸化触媒入り口温度が、再生温度目標よりも大きいことに応じて、誤差上限フィードフォワードループ124は、プロファイル時間および基準温度に基づいて再生温度目標を再度割り出しするステップ156に進む。次いで、誤差上限フィードフォワードループ124は、再生温度目標を制御フラグにセットするステップ126に戻る。酸化触媒入り口温度が再生温度目標以下であることに応じて、誤差上限フィードフォワードループ124は、誤差下限フィードフォワードループ120の一部と合流し、制御フラグにセットされた任意の再生温度目標を消去するステップ152に進み、次いで、排気ガス微粒子フィルタ22が有効再生温度領域にあるかどうかを判断するステップ128に戻る。
【0034】
正味再生時間分岐プロセス130は、平均微粒子フィルタ触媒温度が、有効再生温度領域内にあることに応じて実行される。正味再生時間分岐プロセス130は、平均微粒子フィルタ触媒温度に基づいて、正味再生時間を増分するステップ158を含む。正味再生時間は、平均微粒子フィルタ触媒温度の関数である校正テーブルに基づいて増分される。校正率は、0.5〜1.5の範囲を取り、再生が発動され、平均微粒子フィルタ触媒温度が、有効再生温度領域内にあるときは必ず始まる。結果的に、平均微粒子フィルタ触媒温度が高温になるほど増分が急速になる。
【0035】
正味再生時間を増分することに応じて、正味再生時間分岐プロセス130は、正味再生時間が、所定の正味再生時間限界よりも大きいかどうかを判断するステップ160に進む。正味再生時間が所定の正味再生時間限界よりも大きいことに応答して、方法は、完全な再生を確認し、排気ガス微粒子フィルタの再生を停止するステップ142に進む。正味再生時間が、所定の正味再生時間限界以下であることに応じて、方法は、全再生時間を増分するステップ138に戻る。
【0036】
制御フラグフィードフォワードループ136は、再生温度目標が制御フラグにないことに応じて実行される。ここで当然のことながら、再生温度目標は、誤差下限フィードフォワードループ120によってステップ126が飛ばされた場合、および/または制御フラグに前もってセットされた再生温度目標が、誤差下限フィードフォワードループ120のステップ152によって消去された場合に、制御フラグに存在し得ない。制御フラグフィードフォワードループ136によれば、全再生時間を増分するステップ138は、再生温度目標が制御フラグにないことに応じて、制御フラグが再生温度目標をセットされているかどうかを判断するステップ132のすぐ後に続く。言い換えると、制御フラグフィードフォワードループ136は、再生温度目標が制御フラグにない場合に、方法が、再生温度目標を上に進めるステップ134を飛ばすと規定する。
【0037】
本明細書で説明し、図3Aおよび図3Bに示す方法は、例示および開示を目的として提示されている。添付の特許請求の範囲から明らかなように、方法は、本明細書で説明され、図3Aおよび図3Bに参照数字100〜160として表記されたすべてのステップに限定されない。したがって、方法は、これらの方法の一部のみを行うことで、うまく実施することができる。さらに、方法は、本明細書で開示し、図3A、および図3Bに示したステップの順番に限定されない。方法は、別途請求項で明示的に指定されない限り、別の順番または順序でこれらのステップを行うことで実施することができる。上記の開示と一貫性を保ちながら、酸化触媒28は、ディーゼル酸化触媒(DOC)とすることができ、排気ガス微粒子フィルタ22は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)とすることができる。平均微粒子フィルタ温度は、微粒子フィルタ触媒30の全長に沿って平均化した微粒子フィルタ触媒30の温度を表す。当然のことながら、酸化触媒入り口温度、酸化触媒出口温度、微粒子フィルタ出口温度、および平均微粒子フィルタ温度は、すべて測定または推定(モデル化)され、例えば、摂氏温度(C)または華氏温度(F)を含む様々な異なる単位で表すことができる。
【0038】
実施形態の前述の説明は、例示および説明のために提示された。その説明は、それだけに限定することを意図されていない。当然ながら、上記の教示を考慮して本開示の多くの修正形態および変形形態が可能であり、添付の請求項の範囲内である限り、具体的に説明したものとは別の方法で実施することができる。添付のシステム請求項での「前記(said)」という語の使用は、システム請求項の適用範囲に含まれることを意図された明確な表現である先行詞を指し、一方、「前記(the)」という語は、システム請求項の適用範囲に含まれることを意図されていない語の前に付く。この手法は、添付の方法請求項に適用できない。
図1
図2
図3A
図3B