特許第6325091号(P6325091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6325091パラレルハイブリッド車両のためのストール発進方法およびストール発進装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325091
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】パラレルハイブリッド車両のためのストール発進方法およびストール発進装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20180507BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20180507BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20180507BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20180507BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20180507BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20180507BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20180507BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20180507BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20180507BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   B60W10/08 900
   B60K6/48ZHV
   B60K6/54
   B60W10/02 900
   B60W20/40
   B60W20/10
   F02D29/00 G
   F02D29/06 D
   B60L11/14
   B60L15/20 J
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-517236(P2016-517236)
(86)(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公表番号】特表2016-525982(P2016-525982A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2014060941
(87)【国際公開番号】WO2014195187
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2016年2月2日
(31)【優先権主張番号】1309915.5
(32)【優先日】2013年6月4日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ハンコック
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−315488(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0264248(US,A1)
【文献】 特開2003−293816(JP,A)
【文献】 特開2006−137332(JP,A)
【文献】 特開2009−030680(JP,A)
【文献】 特開2008−296896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/54
B60L 11/14
B60L 15/20
B60W 10/02
B60W 20/10
B60W 20/40
F02D 29/00
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両をストール発進させる方法であって、
ハイブリッド車両は、駆動負荷に接続された第1のクラッチに接続された電気マシンに接続された内燃エンジンを有し、また内燃エンジンと電気マシンとの間に配置された第2のクラッチを有し、内燃エンジンは第1の回転方向にトルクを与えるように構成され
この方法は、第1のストール段階および第2のスタート段階を有し、
第1のストール段階において、
第1のクラッチを非係合状態で動作させるステップと、
内燃エンジンから電気マシンへトルクを伝達させるように第2のクラッチを係合状態で動作させるステップと、
第1の回転方向とは反対の第2の回転方向のトルクを与えるように電気マシンを発電機として動作させるステップとを有し、
第2のスタート段階において、
第2のクラッチを第1の期間、非係合状態で動作させ、第1の期間は、実質的に第2のスタート段階の開始時点から開始されるステップと、
駆動負荷を駆動するように第1のクラッチを係合状態で動作させるステップと、
電気マシンを発電機として動作させることを中止するステップと
第2のクラッチを第2の期間、係合状態で動作させ、第2の期間は第1の期間の後に続くステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
第2のスタート段階において、第1の回転方向のトルクを与えるように電気マシンをモータとして動作させるステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気マシンは、第2のスタート段階において、第1の期間、第1の回転方向にトルクを与えるようにモータとして動作させられることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1クラッチは、第2のスタート段階の第1の期間、非係合状態から係合状態に移行するよう動作させられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の方法。
【請求項5】
エンジンの速度は、第1クラッチ又は第2クラッチの状態に依存して制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の方法。
【請求項6】
ハイブリッド車両のためのストール発進制御装置であって、
ハイブリッド車両は、駆動負荷に接続された第1のクラッチに接続された電気マシンに接続された内燃エンジンを有し、また内燃エンジンと電気マシンとの間に配置された第2のクラッチを有し、内燃エンジンは第1の回転方向にトルクを与えるように構成され
このストール発進制御装置は、第1のストール段階および第2のスタート段階で動作可能なコントローラを備え、
コントローラは、
第1のストール段階において、
第1のクラッチを非係合状態で動作させるように制御し、
第2のクラッチを係合状態で動作させるように制御し、
第1の回転方向とは反対の第2の回転方向のトルクを与えるように電気マシンを発電機として動作させるように制御し、
第2のスタート段階において、
第2のクラッチを第1の期間、非係合状態で動作させるように制御し、第1の期間は、実質的に第2のスタート段階への移行時から開始され、
駆動負荷を駆動するように第1のクラッチを係合状態で動作させ、
電気マシンを発電機として動作させることを中止するように制御し、
第2のクラッチを第2の期間、係合状態で動作するように制御し、第2の期間は第1の期間の後に続くように制御することを特徴とするストール発進制御装置。
【請求項7】
コントローラは、第2のスタート段階において、電気マシンをモータとして動作させるように制御することを特徴とする請求項6に記載のストール発進制御装置。
【請求項8】
コントローラは、電気マシンを、第2のスタート段階において、第1の期間、第1の回転方向にトルクを与えるようにモータとして動作させることを特徴とする請求項7に記載のストール発進制御装置。
【請求項9】
コントローラは、第1クラッチを、第2のスタート段階の第1の期間、非係合状態から係合状態に移行するよう動作させることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1に記載のストール発進制御装置。
【請求項10】
コントローラは、エンジンの速度を、第1クラッチ又は第2クラッチの状態に依存して制御することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1に記載のストール発進制御装置。
【請求項11】
ストール発進制御装置のコントローラを動作させるために構成されたヒューマン・マシン・インターフェイスを有することを特徴とする請求項6〜10のいずれか1に記載のストール発進制御装置。
【請求項12】
ヒューマン・マシン・インターフェイスは、コントローラを第1のストール段階で動作させるように構成された開始手段を有することを特徴とする請求項11に記載のストール発進制御装置。
【請求項13】
開始手段は、コントローラを第2のスタート段階で動作させるように、第1のストール段階で構成されることを特徴とする請求項12に記載のストール発進制御装置。
【請求項14】
開始手段はボタンであることを特徴とする請求項12または13に記載のストール発進制御装置。
【請求項15】
情報手段および状態モニタを有し、
状態モニタは、第1のストール段階における第1のクラッチの状態をモニタするように構成され、第1のクラッチの状態に基づいて情報手段を制御することを特徴とする請求項6〜14のいずれか1に記載のストール発進制御装置。
【請求項16】
第1のストール段階において、所定時間後、第1のストール段階を終了させるようにコントローラを動作させるように構成された調整可能なカウントダウンタイマを有することを特徴とする請求項6〜15のいずれか1に記載のストール発進制御装置。
【請求項17】
請求項6〜16のいずれか1に記載のストール発進制御装置の特徴を有するストール発進制御装置を備えたハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両のためのストール発進方法およびストール発進装置に関する。本発明に係る態様は、方法、装置、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ストール発進方法を利用して、車両を発進させるための高いレベルのトルクを提供することができる。これは、所定のエンジン構成において、可能性として0から60マイル/時または0から100km/時に達するまでの時間をできるだけ短くする上で有用である。内燃エンジンを備えた従来式の車両では、ストール発進方法は、車両にブレーキをかけながら、アクセルペダルを踏み込んで車両エンジンを所定速度まで回転させて、ストール状態(停車状態)でエンジントルクを増大させることにより実施することができる。エンジンが高出力トルクを発生しているとき、ブレーキを解放すると、始動時、標準的な始動状態から発進させる場合のトルクより大きなトルクで車両は発進する。
【0003】
ストール段階(停車段階)にあるとき、車両車輪は静止したままで、エンジン出力が回転する。しばしばトルクコンバータを用いて、エンジンと車輪との間のスリップまたはスリップ状態を実現することができる。トルクコンバータは、さまざまな他の要素の中でも、エンジン出力速度および出力トルクに依存した長さの時間経過後、スリップ状態に達する熱容量を有する。したがって熱容量に達するまでの間のみ、停車状態が維持される。トルクコンバータは、ストール段階にあるとき、エンジンが出力するトルクを蓄積する。スタート段階(発進段階)において、トルクコンバータは、これに蓄積されたパワーとともに、回転するエンジン出力を車輪に伝達するため、トルクを増幅させることができる。
【0004】
ハイブリッド車両は、一般に、内燃エンジンと車両車輪との間に配置された電気マシンで特徴付けられる。通常、電気マシンと車輪の間にクラッチが配置され、上述のトルクコンバータにとって代わるものである。クラッチは、トルクコンバータに比して、熱容量およびトルク容量がより小さく、ときおりハイブリッド車両で利用されるものであるが、内燃エンジンとともに電気マシンを備えたハイブリッド車両の搭載容量に制約があるため、クラッチの方が好ましい。
【0005】
トルクコンバータの熱容量およびトルク容量に比して、クラッチの熱容量およびトルク容量が小さいということは、クラッチを用いたハイブリッド車両は、クラッチがオーバヒートするので、トルクコンバータを用いた従来式の車両ほど長い時間、ストール段階を維持することができないということを意味する。これはひいては、ストール段階であまり大きなエンジントルクを蓄積することができず、スタート段階で車輪に伝達することができないということを意味する。さらにクラッチは、トルクコンバータと同様にトルクを蓄積せず、スタート段階でトルクを増幅することはない。
【0006】
本発明は、1つまたはそれ以上の上記問題を少なくとも低減することを目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明に係る第1の態様によれば、ハイブリッド車両をストール発進させるための方法が提供され、ハイブリッド車両は、駆動負荷に接続された第1のクラッチに接続された電気マシンに接続された内燃エンジンを有し、内燃エンジンは第1の出力回転方向を有する。この方法は、第1のストール段階および第2のスタート段階を有し、第1のストール段階において、第1のクラッチを非係合状態で動作させるように構成するステップと、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向のトルクを与えるように電気マシンを発電機として動作させるように構成するステップと、第2のスタート段階において、駆動負荷を駆動するように第1のクラッチを係合状態で動作させるように構成するステップと、電気マシンを発電機として動作させることを中止するように構成するステップとを有する。
【0008】
1つの実施形態によれば、この方法は、第2のスタート段階において、第1の回転方向トルクを与えるように電気マシンをモータとして動作させるように構成するステップを有する。これは、エンジントルクに追加的なトルクを電気モータから供給することができるという利点を有する。
【0009】
ハイブリッド車両は、トランスミッション、および電気マシンとトランスミッションの間に配置された第1のクラッチを有してもよい。
【0010】
したがって本発明に係る実施形態は、第1のクラッチがスリップする際に処理可能なトルクより大きくエンジン出力トルクを増大させることができるという利点を有する。
【0011】
1つの実施形態によれば、ハイブリッド車両は、内燃エンジンと電気マシンとの間に配置された第2のクラッチを有し、この方法は、第1のストール段階において、内燃エンジンから電気マシンへトルクを伝達させるように第2のクラッチを係合状態で(任意的には実質的にスリップさせることなく)動作させるように構成するステップを有する。この方法は、第2のスタート段階において、第2のクラッチを第1の期間、非係合状態で動作させるように構成するステップを有し、第1の期間は、実質的に第2のスタート段階の開始時点から開始される。これは、内燃エンジンと電気マシンとの間でトルクがスリップすることを許容するという利点を有する。第2のクラッチは、第2の期間、係合状態で動作するように構成されてもよく、第2の期間は第1の期間の後に続くものである。
【0012】
第2のスタート段階において、第2のクラッチは、第1の期間、非係合状態で動作するように構成され、第2の期間、係合状態で動作するように構成され、第2の期間は第1の期間の後に続き、第1の期間は、実質的に第2のスタート段階の開始時点である。
【0013】
本発明に係る別の態様によれば、ハイブリッド車両のためのストール発進制御装置が提供され、ハイブリッド車両は、駆動負荷に接続された第1のクラッチに接続された電気マシンに接続された内燃エンジンを有し、内燃エンジンは第1の出力回転方向を有する。このストール発進制御装置は、第1のストール段階および第2のスタート段階で動作可能なコントローラを備え、コントローラは、第1のストール段階において、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向のトルクを与えるように電気マシンを発電機として動作させるように構成し、第1のクラッチを非係合状態で動作させるように制御し、第2のスタート段階において、電気マシンを発電機として動作させることを中止するように構成し、駆動負荷を駆動するように第1のクラッチを係合状態で動作させるように構成する。
【0014】
コントローラは、第2のスタート段階において、ハイブリッド車両の電気マシンをモータとして動作するように構成してもよい。
【0015】
別の実施形態では、ハイブリッド車両はトランスミッションを有し、第1のクラッチは、電気マシンとトランスミッションの間に配置される。
【0016】
ハイブリッド車両は、内燃エンジンと電気マシンとの間に配置された第2のクラッチを有し、コントローラは、第2のクラッチを制御するように構成し、第1のストール段階において、第2のクラッチを係合状態で動作させるように構成する。任意的には、コントローラは、第2のスタート段階において、第1の期間、内燃エンジンと電気マシンの間でトルクスリップを許容するように構成し、第1の期間は、実質的に第2のスタート段階への移行時から開始される。第2のクラッチは、第2の期間、係合状態で動作するように構成され、第2の期間は第1の期間の後に続く。
【0017】
本発明に係る1つの実施形態によれば、ストール発進制御装置は、そのコントローラを動作させるために構成されたヒューマン・マシン・インターフェイスを有する。ヒューマン・マシン・インターフェイスは、コントローラを第1のストール段階で動作させるように構成された開始手段を有してもよい。開始手段は、コントローラを第2のスタート段階で動作させるように、第1のストール段階で構成されてもよい。開始手段はボタンであってもよい。
【0018】
本発明に係る1つの実施形態によれば、ストール発進制御装置は、情報手段および状態モニタを有し、状態モニタは、第1のストール段階における第1のクラッチの状態をモニタするように構成され、第1のクラッチの状態に基づいて情報手段を制御するように構成される。
【0019】
本発明に係る1つの実施形態によれば、ストール発進制御装置は、第1のストール段階において、所定時間後、第1のストール段階を終了させるようにコントローラを動作させるように構成された調整可能なカウントダウンタイマを有する。
【0020】
本発明に係る別の実施形態によれば、本発明の第2の態様に関連して上記説明したストール発進制御装置の特徴を有するストール発進制御装置を備えたハイブリッド車両が提供される。
【0021】
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付図面を参照しながら、本発明に係る実施形態について単なる具体例として以下説明する。
図1】先行技術に係るハイブリッド車両を示す。
図2】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両を示す。
図3】本発明の実施形態に係るストール発進方法を示すブローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係るストール発進方法を実施したときのトルク曲線を示す。
図5】本発明の実施形態に係るストール発進方法を実施したときのトルク曲線を示す。
図6】本発明の実施形態に係るストール発進方法を実施したときのトルク曲線を示す。
図7】本発明の実施形態に係るストール発進方法を実施したときのトルク曲線を示す。
図8】本発明の実施形態に係るストール発進方法を実施したときのトルク曲線を示す。
図9】本発明の実施形態に係るヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特別な実施形態に係るストール発進方法、ストール発進装置、およびハイブリッド車両について、以下詳細に説明する。理解されるように、開示された実施形態は、本発明に係る特定の態様が実施される単なる具体例であって、本発明を具現化するすべての手法を網羅的に列挙するものではない。実際のところ、理解されるように、本願で開示されるストール発進方法、ストール発進装置、およびハイブリッド車両は、さまざまな択一的な形態で具現化することができる。図面は、必ずしも実寸大に即したものではないし、特定の構成部品を詳細に示すため、いくつかの特徴物については誇張され、または最小限度に描かれている。本願の開示内容が曖昧になることを回避するために、広く知られた構成部品、材料、または方法は必ずしも十分詳細に記載されていない。本願で開示される任意の特定の構造的および機能的な詳細事項は、限定するものと解釈されるべきでなく、クレームおよび本発明をさまざまな形態で採用することを当業者に教示する代表例として解釈されるべきである。
【0024】
図1は、先行技術に係るハイブリッド車両10を示す。ハイブリッド車両は、内燃エンジン12および電気マシン14を備え、これらはともにハイブリッド車両のトランスミッション16にトルクを与え、トランスミッションは車輪にトルクを与えることができる。第1のクラッチまたはBクラッチ20は、電気マシン14とトランスミッション16との間に配置され、電気マシン14および/または内燃エンジン12で出力されたトルクを伝達させ、スリップさせることができる。第2のクラッチまたはK0クラッチ22は、内燃エンジン12と電気マシン14との間に配置され、内燃エンジン12から出力されたトルクを電気マシン14に伝達させ、スリップさせ、さらに電気マシン14から出力されたトルクを内燃エンジン12に伝達させ、スリップさせることができる。各クラッチは、係合形態(係合状態)および非係合形態(非係合状態)に構成することができ、係合形態ではトルクはクラッチにより伝達され、非係合形態では伝達されるトルクは低減する。非係合形態は、分離形態とスリップ形態を有し、分離形態ではトルクはほとんどまったく伝達されず、スリップ形態では、所定の割合のトルクが伝達される。したがって非係合形態とは、クラッチは完全に係合されないが、部分的に係合されるか、または任意の他の状態では、完全に係合されないと理解すべきである。第1のクラッチ20は、択一的には、トルクコンバータであってもよいが、通常、ハイブリッド車両の搭載容量の制約により、第1のクラッチ20はクラッチと決定される。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両10’を示す。図示のように、ハイブリッド車両10’は、図1を参照して上記説明したハイブリッド車両10の特徴を備える。本発明の実施形態に係るハイブリッド車両10’は、ストール発進コントローラ32を含むストール発進制御装置30をさらに有する。ストール発進コントローラは、電気接続34を介して電気マシンを制御するコンピュータを有してもよい。このコンピュータは、パワーエレクトロニクスを含み、3相モータ制御を用いて電気マシン14を制御してもよい。任意的には、ストール発進コントローラは、電気接続36を介して第1のクラッチ20を制御し、電気接続38を介して第2のクラッチ22を制御する。理解されるように、電気接続34,36,38は、物理的な配線に限定されるものではなく、無線または他の手段を介したものであってもよいし、電気接続が本発明を限定することはない。理解されるように、コントローラは単一の手段に限定されるものではない。むしろコントローラは、本発明の目的を実現するストール発進コントローラとして機能するように接続された複数の手段を有してもよい。本発明の実施形態に係るハイブリッド車両をストール発進させる方法で用いられることを参照する上で、コントローラを採用すると最もうまく記述することができる。
【0026】
図3は、ハイブリッド車両をストール発進させる方法50を示し、図2を参照して、この方法を説明する。ステップ52で起動されると、この方法は、第1のストール段階(停車段階)60およびスタート段階(発進段階)70の2つの段階を有する。この方法は、ハイブリッド車両のドライバがストール発進の要求を検知することにより起動してもよい。たとえばドライバがハイブリッド車両のブレーキを掛けながらアクセルペダルを踏み込んだことを検出することにより起動してもよい。ドライバによるストール発進の要求を検知した後、第1のストール段階が始まる。理解されるように、他の起動方法も本発明の範疇に含まれる。たとえばストール発進方法は、ストール発進を実行するようにストール発進コントローラに指示するためのユーザコントローラのボタンまたはトリガを介して起動してもよい。これらの具体例は、さらに後述する。
【0027】
ストール段階60において、この方法は、電気マシンを発電機として動作させるように構成するステップ62を有する。すると、エンジンアクセル/スロットルが加えられたとき、内燃エンジンが出力するトルクに対して、電気マシンが他のトルクを負荷する効果が得られる。スタート段階において、この方法は、第1のクラッチ20(図2参照)が非係合のスリップ状態に構成するステップ66を有する。この具体例では、下流側すなわち車輪側のクラッチ部分がブレーキにより制動され、上流側すなわちエンジン側のクラッチ部分が内燃エンジンおよび/または電気マシンにより回転するように、クラッチを係合/ロック形態から部分的に非係合させることにより、スリップ状態が実現される。すると、ハイブリッド車両の車輪18(図2参照)を静止させたまま、内燃エンジンの回転出力を増大させる効果が得られる。スリップ状態は、エンジン速度に抵抗力を与え、エンジン速度が大きくなるほど、より大きなトルクを出力することができる。したがってストール段階において、アクセルペダルを踏み込んでいるとき、エンジンの回転速度が大きくなるほど、内燃エンジンの出力トルクは大きくなる(ステップ64)。後述するように、アクセルの付加はドライバおよび/またはストール発進コントローラにより行ってもよい。
【0028】
さらに任意的には、スタート段階において、この方法は、第2のクラッチを係合形態で動作させて、内燃エンジンの回転出力からのトルクを電気マシンの入出力部に実質的に伝達するように構成するステップ68を有する。すると、第2のクラッチ22がスリップしなくなるため、熱容量を超えて過熱(ヒートアップ)しないという効果が得られる。これは、一般に、小型クラッチは、より大きなクラッチより小さい熱容量を有するが、搭載容量に制約があるため、第2のクラッチ22は小型クラッチにできる点で有利である。しかしながら、第1および第2のクラッチの間の熱負荷を均一にするために、第2のクラッチに多少のスリップを許容することは、本発明の範疇に含まれる。
【0029】
ストール段階の終点を検知すると、スタート段階(発進段階)が始まる。ストール段階の終点は、いくつかの手段を用いて検知することができる。たとえばドライバは、アクセルペダルを踏み込み続けているときに、ブレーキペダルを解放してもよい。これは、ハイブリッド車両を加速させて、方法50のスタート段階70に移行するというドライバの要求を示すものである。択一的には、たとえば第1および/または第2のクラッチが過熱状態にある、過熱状態に近づいていることを、コントローラ32(図2参照)が検知してもよい。このアプローチ(手法)では、ストール段階が終了し、この方法50は、スタート段階70を迂回して、終了ステップ80に直接的に移行する(ステップ60)。これについては後述する。ドライバがブレーキペダルを踏みながら、アクセルペダルを解放したとき、すなわちドライバがストール発進の実行をもはや希望しなくなったことを示したとき、ストール段階を終了させてもよい。ストール段階を終了させる他の方法を後述する。
【0030】
スタート段階に移行した後、この方法は、電気マシンを発電機として動作をさせることを中止するステップ72を含む。すると、ストール段階のステップ62で発電機により負荷されていた負のトルクを直ちに低減するという効果が得られる。この方法50の実施形態によれば、スタート段階において、この方法はステップ74で電気マシンをモータとして動作させるように構成するステップを有する。この状態において、モータは、内燃エンジンが出力するトルクの回転方向の同一方向のトルクを出力する。この方法は、スタート段階のステップ76において、第1のクラッチを係合形態で動作させるように構成するステップ、および/またはステップ78において、第2のクラッチを非係合スリップ状態で動作させて、スリップを許容するように構成するステップを有する。これによる有利な効果は、さらに後述する。スタート段階後、ステップ80でストール発進方法が終了し、ハイブリッド車両はドライバが決定したように走行することができる。第1および/または第2のクラッチが係合したとき、スタート段階を終了させてもよい。択一的には、モータとして動作する電気マシンに電力供給している電源が実質的に消耗(枯渇)したとき、スタート段階を終了させてもよい。別の具体例では、所定時間が経過した時、または車両が所定速度に達したとき、スタート段階を終了させてもよい。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係るストール発進方法を実行しているときのトルク曲線100を概略的に示す。トルク曲線は、時間tに対するエンジントルク110および電気マシントルク112のトルクTqを示す。説明の目的のみのため、破線114は、本発明の実施形態に係る方法を採用しない場合のエンジントルクを示す。
【0032】
図4に概略的に示すように、本発明の実施形態に係る方法によれば、エンジントルク110がストール段階の開始時点116で増大する。同時に、発電機として動作する電気マシンにより負のトルク118が負荷され、負のピークトルク値EM−veに達する。電気マシンの負のトルクにより、エンジントルク110は最大許容値Emaxに到達することを可能にする。これは、第1のクラッチ20(図2参照)が非係合スリップ状態で作動するように構成されたとき、正のエンジントルクと負の電気マシントルクの組み合わせ(合計)が、第1のクラッチが許容できる全体トルク値Bmaxより小さくすることができるためである。これは、第1のクラッチの損傷を回避するために、エンジントルクが値Bmaxまでに制限されるときの破線114で示すトルクとは対照的である。したがって、本発明によれば、第1のクラッチのトルク容量を超えるトルクの積み増し(増幅)を可能にするものである。トルク値Bmaxは、第1のクラッチのスリップ容量により決定される。トルク値Bmaxは、いくつかの要因に依存し、ストール段階が維持される期間においてクラッチの損傷を防止するように選択される。当然ながら、より長期間のストール段階を維持するためには、クラッチが過熱しないようにトルク値Bmaxが低減される。本発明に係る実施形態では、トルク値Bmaxは550Nmと選択され、約3秒間維持することができる。トルク値EM−veは、エンジンが出力するトルクとは反対方向の100Nmのトルクである。したがって、第1のクラッチ20(図2参照)に損傷を与えることなく、エンジンが650Nmのトルクを出力することができる。トルク値Emaxに達するまでの時間をtで示し、好適には、ストール状態を維持できる期間より短くすることにより、エンジンはストール段階中にトルク値Emaxに達することができる。
【0033】
積み増し(増幅)トルクは、スタート段階(発進段階)への移行時に解放される。この時点において、第1のクラッチは、係合してより大きなトルクを伝達することができる。上述のように、破線114は、利用されない方法を示すものであるが、エンジントルクを符号120で示すように最大トルク値Emaxに達するように増大させる必要がある。しかしながら、本発明によれば、トルクは符号122で示すように既に最大トルク値Emaxに達しているので、第1のクラッチが係合した時に、より大きなトルクを伝達することができる。したがって、符号124で示す領域からトルクゲインを得ることができる。スタート段階への移行時、電気マシンは発電機として動作しないように構成される。領域112で電気マシンを発電機としての構成から再構成することは、符号126で示すように十分に瞬間的なものである。こうして、第1のクラッチが係合するように構成されたとき、利用可能な全体トルクを第1のクラッチに出力することができる。
【0034】
図5を参照すると、経時変化する、第1のクラッチに加わるトルクが符号130で示され、このトルクは、図4を参照して上記説明したように、エンジントルク110および電気マシントルク112の組み合わせ(合計)として得られる。図5は、車輪トルク140をさらに示す。車輪トルクは、車両ブレーキが掛けられているストール段階中はゼロであり、スタート段階中、第1のクラッチ20(図2参照)を介してトランスミッション16(図2参照)および車輪にトルク伝達されるときに増大する。ポイント142において、クラッチが係合し、利用可能な全体トルク130をトランスミッションおよび車両に伝達させる。クラッチが係合するために要する期間tは、第1のクラッチのドライブライン上流側から第1のクラッチに出力されるトルク、およびクラッチに対する入力速度に依存する。期間tは、たとえば1秒のオーダであってもよい。理解されるように、期間tは、期間tより短く、ストール発進方法を用いて加速するために利用可能なトルクは、ストール発進方法を用いない標準的な条件で利用できるトルクより大きい。
【0035】
図6は、本発明に係る別の実施形態を示し、車輪トルク140を示す。この実施形態によれば、車両を加速するために利用可能なトルクが符号140’でEmaxを超えて増大するように、期間t後、符号112’で、電気マシンは、正の(すなわちエンジンと同じ方向の)トルク値EM+veをトランスミッションに出力するモータとして動作するように構成される。トルク値EM+veは、期間t後に出力され、第1のクラッチ20(図2参照)は、追加的なトルクが出力される前に係合し、さもなければ期間tを延長させ得る。さらにトルク値EM+veに追加されるトルク値Emaxは、スリップ状態で許容されるトルクを超えて増大してクラッチに伝達される。
【0036】
図7は、図6に示す実施形態に択一的な本発明に係る実施形態を示す。図7に示す実施形態では、期間t’は図6に示す期間tより短く、より短い期間t’は、スタート段階への移行時に第2のクラッチ22(図2参照)をスリップさせることにより実現することができる。すると、スタート段階の開始時点で第1のクラッチに出力されるトルクおよびドライブライン速度が低減され、図6に示す具体例に比して、第1のクラッチをより迅速に係合させることができるという効果が得られる。したがって図7に示すように、第2のクラッチがスリップ状態でスリップさせるとき、第1のクラッチに対する符号130で示すトルクは、ライン130’で概略的に示す経路に沿って低減する。しかしながら、モータとして構成された電気マシンから第1のクラッチにトルクが出力される。電気マシンを符号112の発電機としての挙動から符号112’’のモータとしての挙動への再構成は、符号113で示すようにほぼ瞬間的である。電気モータが大きなトルクを低速で出力し、第1のクラッチが迅速に係合するが、これは、図7の車輪トルク140で示すように、大きなトルクレベルが短期間で車輪に伝達されるということを意味するので、この実施形態は特に有利である。
【0037】
期間t’経過後、第1のクラッチは係合形態にあり、第2のクラッチは係合するように制御される結果、利用可能なエンジントルク全体(符号140’’で示すEmax+EM+ve)が第1のクラッチに伝達される。第2のクラッチがスリップすることを許容する期間t’は、第2のクラッチに損傷を与えるものではない。したがって、この実施形態によれば、スタート段階への移行時に利用可能な最大トルク(Emax+EM+ve)がトランスミッションに迅速に伝達され、車両を加速するために利用される。
【0038】
電気マシン14がモータとして動作するように構成された上記説明した各実施形態において、モータが出力するトルクは、エンジン12から出力可能なトルクに増幅トルクを付与するように見えることを理解されたい。
【0039】
図8は、上記実施形態のうちの任意の実施形態に係るストール段階中のトルク曲線を示す。しかし、ここでは、追加的な負のトルクは、電気マシンにより供給されて、エンジンにより出力されるトルクを補償する。とりわけ、電気マシンが供給する負のトルクは、上述した符号112で示す値から符号112aで示す値に増大される。このとき、第1のクラッチに加わるトルクを上述した符号130で示す値から符号130aで示す値に低減されるという効果が得られる。これは、クラッチに加わるトルクをトルク値Bmaxからトルク値Bextに低減するとも表現することができる。このようにトルクを低減すると、符号150で示すようにエンジントルクをトルク値Emaxでより長期間にわたって維持することができる。これは、たとえばドライバが長時間にわたって車両をストール状態に維持することを要求し、その反応時間または他の制限要因に起因して、より長時間にわたって車両をストール状態に維持することを要求するので有利である。したがってドライバに最も適した状態を提供するように、コントローラを構成することかできる。
【0040】
上記説明した実施形態を通して、スタート段階は、ストール発進中に消費されるパワーを生成する上で有用である。ストール段階の期間において、電気マシンが発電機として機能するとき、電力は、図4図8の符号101,101’で示す領域で生成される。この電力は、バッテリに蓄電され、モータとして利用されている電気マシンに電力を供給するために用いられる。これは、電気マシンをモータとして利用して加速する間に使用される十分な電力量が、ストール段階の発電で補うことができるという利点を有する。図4図7は、電力がストール段階において発電された領域101を示す。これは、電力がストール段階において発電されず、スタート段階においては使用されるシステムでは、車両を加速するために、電気モータをもはや利用できなくなるまで、ドライバはストール発進を1度か2度しか実行することができないのに対し、本発明によれば、車両ドライバが何度も続けてストール発進を繰り返すことができるので有利である。図8の具体例では、負のより大きなトルクが負荷されるので、ストール段階時の発電量が増大する。
【0041】
図3に関連して説明したように、ストール発進方法は、スタート段階の終了後、またはストール段階の完了時に終結する。上述のように、ストール発進を中止させるドライバの要求に基づいて終結させてもよい。択一的には、クラッチの過熱等の不具合を検知したことにより終結させてもよい。コントローラを用いて、接続手段34,36,38(図2参照)を介して不具合を検知してもよいし、不具合を検知した時に、ストール段階を終了するようにコントローラを構成してもよい。
【0042】
図9は、本発明に係る実施形態による例示的なヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)160を示す。インターフェイスは、タッチスクリーンディスプレイ162等を含むが、インターフェイスの選択により、本発明の範疇を限定するものではない。HMI160は、本発明に任意的な複数の特徴を提供し、図9に示すHMI160上に図示されており、独立して、または組みあわせて用いることができる。具体例で示すHMIは、ストール発進方法を実行するためのユーザ制御可能なストール発進ボタンすなわち開始手段164を有する。タッチスクリーン・インターフェイス等のディスプレイがアクティブである実施形態によれば、ストール発進方法を実行する前において、ストール発進ボタン164は、「ストール発進」と表示され、車両をストール発進させるためのストール発進ボタンであることを車両ドライバに示すものである。ストール発進ボタン164を押下すると、ストール発進方法が開始され、ストール発進ボタン164は「ストール発進中止」と表示するように更新され、現在では、スストール発進方法を中止するために、ストール発進ボタン164が利用可能であることをドライバに表示する。ストール発進ボタンを押下した後、このストール発進方法を初期化してもよい。コントローラは、第1ならびに第2のクラッチ20,22および電気マシン14を制御して、ストール発進方法を実施してもよい。
【0043】
発進段階への移行のドライバ要求を検知するまで、ドライバが入力することなく、コントローラによりストール状態が維持されるように、コントローラは、エンジン速度およびトルクの制御を介してストール発進方法を実行することができる。ストール状態は、維持されるレベルに依存して長短さまざまな期間維持される。エンジン速度を増大させながら、電気的にブレーキを掛けることにより、ストール状態を維持することができる。コントローラは、クラッチの状態を示すクラッチに設けたセンサから情報を受信して、スリップ形態中のクラッチの過熱を防止するように、エンジン速度が制御される。こうしてコントローラは、クラッチに損傷を与えることなく、ストール状態を維持するように、エンジン速度を変更することができる。たとえばストール状態において、スリップ状態の最大トルクが出力されるポイントまたはその付近まで、エンジン速度を増大させることができる。クラッチが過熱するのに十分に長い期間ストール状態が維持された場合、コントローラは、クラッチを保護しながら、エンジン速度を低減してストール状態を維持する。ドライバ
ドライバによるスタート段階への移行の要求は、アクセルペダルまたは同等のものの適用を検知することにより決定することができる。この実施形態において、ストール発進ボタンを押下することにより、ストール発進方法を実行するように車両が構成される。ただし、車両が他の手法で構成されることも本発明の範疇に含まれる。
【0044】
ストール発進ボタンが押下された後、HMI160は、ストール発進方法がスタート段階に移行するまでの時間を示すためにカウントダウンタイマ166を表示してもよい。この時間は、ユーザによりHMIを用いてあらかじめ設定およびプログラムされてもよい。任意的には、カウントダウンの終点で、車両はスタート段階における加速を自動的に開始する。別の実施形態では、ドライバがアクセルペダルを踏み込むまで、車両はスタート段階に移行しない。したがって、いくつかの実施形態では、カウントダウンタイマは、ドライバがアクセルペダルを踏み込み、スタート段階に移行するまでに残された時間を表すものである。実際のところ、ドライバがアクセルペダルを踏み込んだとき、スタート段階に移行してもよい。したがってHMIを直ちに更新して、ストール発進方法がスタート段階にあることをドライバに通知してもよい。たとえば、カウントダウンタイマ166の表示を消すことにより、時間を表す文字を「発進(GO)」という文字で置き換えてもよい。
【0045】
ドライバに残された時間は、クラッチの過熱を回避するように事前設定されてもよい。たとえば、車両に搭載されたクラッチがスリップ状態で3秒間の熱容量を有する場合、カウントダウンタイマは、3秒、2秒、1秒とカウントダウンする。別の例示的な実施形態では、クラッチ温度計または他の情報手段170がHMI上に設けられて、クラッチの温度を表示する。クラッチの熱容量は、熱容量インジケータ172により表示され、ドライバはHMI160を見て、どの程度強く、またはどの程度長く、アクセルペダルを踏み込んでもよいか判断することができる。たとえばクラッチの温度が熱容量に接近したとき、ドライバは、アクセルペダルから圧力を解放し、クラッチを冷却させて、クラッチへの出力を下げることにより、ストール段階を自動的に終了させることを防止してもよい。したがって温度計170等の動的ディスプレイにより、ドライバがストール発進をモニタすることができる。クラッチ温度は、状態モニタにより決定することかでき、情報手段上で表示される他のクラッチ特性を決定することができる。
【0046】
またHMIは、ストール発進方法のためのオプションメニュにドライバがアクセスできるように構成されたオプションボタン174を有する。オプションメニュで利用可能なオプションは、たとえばストール段階のために許容された期間を決定するための調整可能なパラメータを含んでもよい。この具体例は、より長いストール段階のための上記最大パワーの選択肢(オプション)をドライバに与えることができる。上記説明したように、クラッチの熱容量に起因して、最大パワーは短期間しか維持することができない。ただし、より小さいパワーは、比較的に長い期間維持することかできる。これらのオプションの間の選択は、HMIを用いることなく行うことができる。その具体例では、ストール段階は工場にて設定される。
【0047】
上記説明したストール発進方法は、ストール段階が初期化される前の静止状態にある車両に限定されるものではない。たとえば車両を減速しているときに、ストール段階を初期化してもよい。これは、ストップライト(赤信号)に接近したときに、ドライバが車両にブレーキを掛けながら、アクセルペダルを踏み込んだ場合に好適である。HMIを用いてストール発進方法を起動する場合、ドライバは、ストップライトに接近したときにストール発進ボタンを押して、ドライバがブレーキを掛けて車両をストップライトで停止させることができ、このときシステムおよび方法はストール段階にある。ストップライト(赤信号)からゴーライト(青信号)に変わったとき、ドライバは、アクセルペダルを踏み込んで、ストール段階を終了させ、スタート段階(発進段階)を初期化する。これらの実施形態は、信号機が赤信号である期間をドライバが知らず、発進できることを信号機が示すと直ちに加速の準備が整えたいとドライバが所望する場合に好適である。
【符号の説明】
【0048】
10…先行技術に係るハイブリッド車両、10’…本発明の実施形態に係るハイブリッド車両、12…内燃エンジン、14…電気マシン、16…トランスミッション、18…車輪、20…第1のクラッチ(Bクラッチ)、22…第2のクラッチ(K0クラッチ)、32…ストール発進コントローラ、30…発進制御装置、32…コントローラ、34,36,38…電気接続、50…ストール発進方法、60…第1のストール段階(停車段階)、70…スタート段階(発進段階)、160…ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)、162…タッチスクリーンディスプレイ、164…ストール発進ボタン(開始手段)、166…カウントダウンタイマ、170…温度計170、172…熱容量インジケータ、174…オプションボタン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9