特許第6325096号(P6325096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325096
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】歯科用トランスファーテンプレート
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20180507BHJP
   A61C 13/097 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   A61C13/00 Z
   A61C13/097
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-523324(P2016-523324)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公表番号】特表2016-537061(P2016-537061A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2014072269
(87)【国際公開番号】WO2015055790
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年4月14日
(31)【優先権主張番号】14184495.1
(32)【優先日】2014年9月11日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13189179.8
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ワッケ,ロニー
(72)【発明者】
【氏名】バースケ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,マルクス
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106686(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/155161(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/058822(WO,A1)
【文献】 特開平01−155842(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02030590(EP,A1)
【文献】 米国特許第04299573(US,A)
【文献】 米国特許第01303223(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00−13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方とも同じCAD/CAM装置によって作成されたトランスファーテンプレートと義歯床を有する構成であって、
前記トランスファーテンプレートと義歯床の両方が歯のための複数の窪みを有し、その際にトランスファーテンプレートの窪み内に歯の切端側および/または咬合側領域がまた義歯床の窪み内には歯の歯頸領域が整合し、
また前記歯がいずれも前記義歯床の窪み内に接着すべきものである歯科用トランスファーテンプレート構成であり、
トランスファーテンプレート(20)は咬合平面に向かって指向する咬合端面(22)を有し、その咬合端面は咬合側の不良接触が存在することの基準として以下のように具現化され、
すなわちトランスファーテンプレート(20)の端面(22)を超えて突立する歯の領域(310)が歯列接続を均一化するために研削され、
義歯床(10)内における各歯(31,33,35,37)の接着面の最少閾が、10mmないし25mmであり、前記最少閾値が義歯床を製造するためのCAD/CAM装置のCADソフトウェア内で決定される、ことを特徴とするトランスファーテンプレート構成。
【請求項2】
CAD/CAM装置がスキャンおよびCADデータに基づいてトランスファーテンプレート(20)を作成し、それらの両データはいずれも患者の口内状態の三次元スキャンおよびCADソフトウェア内のテンプレートライブラリから得られたものであり、また義歯床(10)を同じスキャンデータとCADソフトウェア内の義歯床ライブラリからのCADデータに基づいて作成し、さらに前記トランスファーテンプレート(20)を使用して歯の歯頸領域を義歯床の歯のための窪み内にそれぞれ挿入してそこに接着されることを特徴とする、請求項1記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項3】
トランスファーテンプレート(20)に対してそれのテンプレート形状内に歯(31,33,35,37)のための窪み(21)をラピッドプロトタイピングあるいは切削により義歯床(10)の義歯の形状に適合させ、トランスファーテンプレート(20)内の窪み(21)の内面が歯(31,33,35,57)の咬合側/切端側外面に相当し、それが歯のライブラリに基づいて形成され、前記外面は予加工された歯に対応してCAD/CAM装置内に記憶されたものである、ことを特徴とする請求項1または2記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項4】
閾値が切歯、犬歯、小臼歯、臼歯等の異なった歯の種類によって異なったものとなり、かつ義歯床(10)に適合させるために接着面の拡大をCAD/CAM装置のCADソフトウェアによって決定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項5】
閾値が異なった歯(31,33,35,37)によって異なったものとなり、なった歯長を有する規格製造された歯によって異なったものとなり、かつ義歯床(10)に適合させるために接着面の拡大をCAD/CAM装置のCADソフトウェアによって決定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項6】
接着面を拡大するために義歯床(10)の窪み(11)の歯頸領域をCAD/CAM装置を使用して切端/咬合側方向に延伸されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項7】
トランスファーテンプレート(20)内の膨張の面積計算に際して、規格製造された歯の製造に起因する収縮係数を考慮し、前記係数が歯(31,33,35,37)の収縮率を反映し、±100μmであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項8】
トランスファーテンプレート(20)内の歯(31,33,35,37)の高さ位置はCADおよびスキャンデータである患者のデータに基づいて決定され、トランスファーテンプレート(20)および義歯床(10)の高さを超える高さを有するとともにそれらが相互に嵌合した状態で義歯床(10)から突出した歯(31,33,35,37)の領域を周囲の表面と実質的に一体化するように研削されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項9】
トランスファーテンプレート(20)がCAD/CAM装置によって形成された歯のための窪み(21)を備え、前記窪みは各歯(31,33)がその長さ延長の決定された割合でトランスファーテンプレート(20)によって保持されるように歯(31,33)の位置を空間内で決定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項10】
トランスファーテンプレート(20)と義歯床(10)が組み合わされた状態において歯(31,33)を包囲する自遊空間(32)が残され、その高さが歯(31,33)の高さの決定された割合となることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項11】
トランスファーテンプレート(20)と義歯床(10)が相互に組み合わされた状態において複数、か所の支承部を介して相互に支承され、歯(31,33)が挿入された際には定義された相対位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項12】
トランスファーテンプレート(20)が義歯床(10)と共に、挿入された歯(31,33)を3つの空間方向全てにおいて固定的に支承し、その状態においてトランスファーテンプレート(20)から突出した歯(31,33)の不正咬合接触を追加的かつ独立した支承接触を使用せずに個別の歯(31,33)に対して研削あるいは切削されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項13】
CAD/CAM装置が義歯床の窪み(11)内の歯(31,33,35,37)の高さ位置の決定に際して部分的に0μmないし500μm厚みを有する接着間隙を考慮し、またその間隙の周りの外形を歯(31,33,35,37)の歯頸領域より大きく設計し従って各歯(31,33,35,37)の高さ位置を正確に決定することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項14】
各歯(31,33)の前庭側にトランスファーテンプレート(20)の窓穴を設け、トランスファーテンプレート(20)内の窪み(21)の内面中の歯(31,33)の正確な高さ位置を確認できるようにすることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【請求項15】
下顎補綴材あるいは上顎補綴材のいずれかのためにトランスファーテンプレート(20)を設けることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のトランスファーテンプレート構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の歯科用トランスファーテンプレート構成に関する。
【背景技術】
【0002】
CAD/CAMを使用して作成される歯科補綴材において人工歯を義歯床と接着することが必要である。人工歯は従来のように(工業的に)製造することもまたCAD/CAMを使用して作成することもでき、また多様な材料から形成することが可能である。
【0003】
人工歯を恒久的に義歯床のキャビティ内に接着するために、義歯床に対する歯の正確な位置決めが不可欠である。その際、個々の歯あるいは歯群を個別かつ手動で適正な整合性に制御してその後接着する必要がある。
【0004】
検査のために既にいわゆるトランスファーテンプレートが提案されている。その種のトランスファーテンプレートは特にCAD/CAMを使用して作成された雌型であり、歯を支承するために窪みが設けられる。歯および/または歯群はテンプレートの窪み内に暫定的に支承され、義歯床のキャビティ内に接着するためにそこに移転される。接着前/中はテンプレートによって義歯床のキャビティ内における歯の確実かつ正確な位置決めが保証される。
【0005】
その種のトランスファーテンプレートはスキャンおよびCADデータに基づいてCAD/CAM装置によって作成することができ、それらの両データはいずれも患者の口内状態の三次元スキャンおよびCADソフトウェア内のテンプレートライブラリから得られたものである。対応する義歯床を同じCAD/CAM装置により特に同じスキャンデータとCADソフトウェア内の義歯床ライブラリからのCADデータに基づいて作成し、従ってトランスファーテンプレートの支援によって人工歯を移転し、義歯床のキャビティ内に位置決めして接着することができる。
【0006】
その種の歯科用トランスファーテンプレートは国際公開第2012/155161号A1パンフレットによって知られている。この国際公開第2012/155161号A1パンフレットによれば、その文献においては“補助固定装置”と呼称されているトランスファーテンプレートを使用して義歯が定義された位置に移送されそこに保持される。
【0007】
別の歯科用トランスファーテンプレートが欧州特許出願公開第2030590号A1明細書によって知られている。全ての個別の義歯がワックスあるいは樹脂を使用してトランスファーテンプレートの窪み内に暫定的に保持される。そこに記載されているトランスファーテンプレートの操作ロッド18によって義歯床のキャビティ内における歯の主動的な方向付けと位置決めが可能になる。
【0008】
しかしながら、規格製造された歯を使用する際にはその規格製造された歯の個別化されていない歯長のため咬合面上で不良接触が発生するという問題が生じ、その不良接触はソフトウェア中の仮想咬合器内に作成して表示されるが、補綴材の製造に際しては考慮されない。この問題に対する実用的な解決方式は、完成した歯科補綴材を咬合器内に移送することを除いて、現在まで明らかになっていない。
【0009】
人工歯の義歯床上の接着結合が充分に強力でない場合、口内における咀嚼動作あるいはその他の歯の動作に際してさらに、歯が充分に安定して義歯床10のキャビティ内に保持されず、それどころか結果として義歯床から脱落する危険が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、規格製造された歯の使用に際して咬合面上の不良接触を低減し義歯床上での歯科補綴材の確実な接着を保証することができる、請求項1前段に記載の歯科用トランスファーテンプレート構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題は本発明に従って請求項1によって解決される。好適な追加構成が従属請求項によって定義される。
【0012】
本発明によれば、トランスファーテンプレートが追加的に研削テンプレートとして機能する。トランスファーテンプレートは咬合平面に向かって指向する咬合端面を有する。規格製造された歯がトランスファーテンプレートを使用して義歯床のキャビティ内に移送され位置決めされた後、トランスファーテンプレートの咬合端面を越えて突出する歯の領域が咬合/切端不良接触をもたらす。トランスファー/研削テンプレートを使用してその歯の領域を均一な歯列接続になるよう手動で研削することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば義歯床内における各歯の確実な接着が保証される。義歯床内の各歯の接着面は本発明に従って所与の最小閾値を有し、特に少なくとも10mm、好適には少なくとも18mm、極めて好適には少なくとも25mmであり、その閾値が特に義歯床を作成するためのCAD/CAM装置のCADソフトウェア内に設定される。この数値は(接着剤に応じて)拡大可能であり、例えば少なくとも39mmにすることができる。
【0014】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートに対してそれのテンプレート形状内にラピッドプロトタイピングあるいは切削によって歯のための窪みが形成される。トランスファーテンプレート内の窪みの内面は歯の咬合側/切端側外面に相当し、それが歯のライブラリに基づいて形成され、前記外面は特に予加工された歯に対応してCAD/CAM装置内に記憶されたものである。
【0015】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートが非硬質で歯と比べて弾力性の高い材料、特に樹脂から製造され、従ってトランスファーテンプレートの窪み内の歯を限定的な変形圧力の補助によって前記トランスファーテンプレートの窪みの内面上に保持して義歯床内に移転することができる。
【0016】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートが適宜な材料、特に金属あるいは樹脂、好適には位置決めされる歯をより良好に確認するために透明な樹脂から製造される。
【0017】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレート内の膨張の面積計算に際して製造に起因する規格製造された歯の収縮係数として約±100μmを考慮し、この係数は規格製造された歯の熱膨張による収縮率に相当する。
【0018】
規格製造された歯の使用に際しては、個別化されていない歯長のため何本かの歯がトランスファーテンプレートの咬合端面を超えて突立し、それが咬合平面内における不良接触につながる。本発明によれば、トランスファーテンプレートおよび義歯床に埋入された状態においてそのトランスファーテンプレートおよび義歯床の高さを超える高さを有する歯のトランスファーテンプレートから突出した領域を、咬頭嵌合を最適化するために手作業で研削することができる。
【0019】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレート内の歯の高さ位置はCADおよびスキャンデータすなわち間接的に患者のデータに基づいて決定され、トランスファーテンプレートおよび義歯床の高さを超える高さを有するとともにそれらが相互に嵌合した状態で義歯床の基底側から突出した歯の領域を周囲の表面と実質的に一体化するように研削することができる。
【0020】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートが歯の位置を空間内で決定するためのCAD/CAM装置によって形成された歯のための窪みを備え、すなわちその際に各歯がその長さ延長の特に5%ないし90%でトランスファーテンプレートによって保持されるようにする。
【0021】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートと義歯床が組み合わされた状態において歯を包囲する自遊空間が残され、その高さが特に部分的に歯高の0%ないし50%、特に約20%となる。
【0022】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートと義歯床が相互に組み合わされた状態において複数、特に3か所の支承部を介して相互に支承され、歯が挿入された際に定義された相対位置に配置される。
【0023】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートが義歯床と共に、挿入された歯を3つの空間方向全てにおいて固定的に支承し、また本発明によればその状態において場合によって発生し得るトランスファーテンプレートから突出した歯の不正咬合接触を追加的かつ独立した支承接触を使用せずに個別の歯に対して研削あるいは切削可能である。
【0024】
好適な構成形態によれば、義歯床上の歯の接着面の閾値が異なった歯の種類(切歯、小臼歯、臼歯)によって異なったものとなり、適宜に適合させるために接着面の拡大をCAD/CAM装置のCADソフトウェアによって要求する。
【0025】
好適な構成形態によれば、義歯床上の歯の接着面の閾値が異なった歯によって異なったものとなり、特に異なった歯長を有する規格製造された歯によって異なったものとなり、適宜に適合させるために接着面の拡大をCAD/CAM装置のCADソフトウェアによって要求する。
【0026】
好適な構成形態によれば、義歯床上における接着面を拡大するために義歯床の窪みの歯頸領域をCAD/CAM装置を使用して切端方向に延伸させ得る。
【0027】
好適な構成形態によれば、CAD/CAM装置が義歯床の中の窪み内の歯の高さ位置の決定に際して本発明に従って所与の厚み、特に部分的に0μmないし500μm、好適には50μmないし250μmの厚みを有する接着間隙を考慮し、またその間隙の周りの外形を歯の歯頸領域より大きく設計し従って各歯の高さ位置を正確に決定する。
【0028】
好適な構成形態によれば、各歯の前庭側にトランスファーテンプレート内の窪みの内面中の正確な歯の高さ位置を確認するための窓穴を設ける。
【0029】
好適な構成形態によれば、突出した歯の研削のためにトランスファーテンプレートを下顎補綴材あるいは上顎補綴材のいずれかに対して使用する。
【0030】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートによって上顎補綴材と下顎補綴材の3次元相対位置を固定し、従って義歯上の咬合補正を行うために完成した歯科補綴材を垂直軸上で摺動可能な咬合器内に設置することができる。
【0031】
その種の咬合器は人間の顎の動作推移をシミュレートすることができる。顎関節は顎の下降あるいは上昇に際してドアヒンジの原理に従って動作することが知られており、すなわち前端側の領域の3mmの上昇が咀嚼領域の約1/3ないし1mmに相当する。
【0032】
関節幾何形状は咬合器の型式によって異なる。関節幾何形状の多様性を可能にするために、垂直降下は全ての咬合器に対して同様な方式で実施する。アダプタは関節幾何形状に関わらず同じである。従って関節幾何形状は左右されない。
【0033】
このアダプタによって上下の歯科補綴材の歯列が接触し、すなわち咬合状態にされる。その能力によって上顎および下顎の歯列の心合せ状態を検査することができ、場合により研削作業によって後調節することができる。機能的な修正を行う場合、動的な調節および選択的な研削が特に咬合器内で実施される。そのため、咬合器の型式に応じて少なくとも関節傾斜とベネット角を最低要件として設定する。
【0034】
好適な構成形態によれば、トランスファーテンプレートが再利用可能であるとともに、それを使用して2体までの義歯床に歯を接着することができる。
【0035】
好適な構成形態によれば、特にCAD/CAM装置によって上顎補綴材と下顎補綴材の歯の位置の間の距離を決定することができ、その距離は咬合器の垂直摺動軸と相関する。
【0036】
好適な構成形態によれば、テンプレート内に断裂を形成することによって歯の咬合平面内の咬合修正をするために規格製造された歯を研削することができる。
【0037】
その他の詳細、特徴、ならびに種々の利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係る歯科用トランスファーテンプレートの実施例を概略的に示した前面図である。
図2図1の歯科用トランスファーテンプレートの実施例を(義歯床を除いて)示した上面図である。
図3図1の歯科用トランスファーテンプレートの実施例を示した側面図である。
図4】歯科用トランスファーテンプレートの別の実施例を(トランスファーテンプレートを除いて)示した説明図である。
図5図4の実施例を示した側面図である。
図6図4の実施例を示した側面図である。
図7】固定装置と歯科用トランスファーテンプレート構成の実施例を示した説明図である。
図8】義歯床のキャビティ内におけるスペーサとその配置を示した説明図である。
図9】咬合器を義歯床と共に概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に示された歯科用トランスファーテンプレート構成100は、トランスファーテンプレート20と(上顎)義歯床10を備え、その両方が切歯のための複数の窪み21と11を備え、そのうち切歯31と33が図1に示されている。トランスファーテンプレートの窪み21内に歯31および33の切端側および/または咬合側領域が整合し、義歯床の窪み11内には歯頸領域が整合する。切歯31と33はそれぞれ義歯床の窪み11内に接着される。
【0040】
例えばワックス、樹脂、あるいはその他の接着剤を使用して歯31および33をトランスファーテンプレート20の窪み21の内面内に暫定的に固定するかあるいはトランスファーテンプレートの窪み21の内面の変形圧力の補助により歯31および33をトランスファーテンプレート20内に保持することによって、歯31および33がトランスファーテンプレート20を使用して任意の適宜な方式で義歯床10のキャビティ/窪み11内に設置される。好適には、配置された歯をより良好に確認するためにトランスファーテンプレート10が透明な樹脂から形成される。
【0041】
その後、トランスファーテンプレート20の補助によって歯31および33がそれぞれ義歯床10内に配置され接着される。
【0042】
規格製造された歯31の領域310はトランスファーテンプレート20の咬合端面22を超えて突出し、この領域が咬合平面の不良接触につながる。本発明によれば、トランスファーテンプレート20の咬合端面22は咬合側/切端側平面の高さ基準として機能する。前記咬合端面22を超えて突出する領域310は本発明に従って咬頭嵌合を最適化するために手作業で研削することができる。
【0043】
歯31および33の前庭側には本発明に従ってトランスファーテンプレート20の窓穴が設けられ、それによってトランスファーテンプレート20内の窪み21の内面内における歯31および33の適正な高さ位置を確認する。
【0044】
不良接触を防ぐための代替的な解決方式として、幾らか長い規格製造された歯33に関してその歯のトランスファーテンプレート20に向かって指向する端部が咬合端面を超えて突出しないようにし、むしろ歯33の歯頸側端部が義歯床10の基底側の面から突出するようにすることもできる。
【0045】
義歯床10から突出した領域330は実質的に平面状に除去し、特に研削あるいは切削する。
【0046】
図1の実施形態中で、各歯が約30%の部分でトランスファーテンプレート20によって保持されるような方式でトランスファーテンプレート20の窪み21が歯31および33の空間内における位置を決定する。別の好適な実施形態によればその数値は5%ないし90%になる。
【0047】
図1に示されたトランスファーテンプレート20は、歯31および33を包囲するトランスファーテンプレート20が義歯床10と物理的な接触を形成しないような方式で義歯床10と組み合わされる。歯31と33を包囲する自遊空間32が設けられ、それの高さは特に歯長の約20%となる。
【0048】
(図示されていない)別の実施形態によれば、トランスファーテンプレートと義歯床が相互に組み合わされた状態で複数、特に3か所の支承部を介して相互に支承され、歯が挿入された状態で定義された相対位置に設置される。
【0049】
図2には、図1の本発明に係るトランスファーテンプレート20が保持された歯31および33と共に上面図として示されている。図2図3の組み合わせから歯31と33がいずれも少なくとも3か所の支承部25をトランスファーテンプレート20上に有し、それによって歯31と33がトランスファーテンプレート20の窪み21内に固定され得ることが示されている。
【0050】
好適な実施形態によれば、歯31と33がトランスファーテンプレート20の窪み21の内面の支承部25の弾力性の変形圧力の補助によって3つの空間方向全てにおいて固定的に支承される。
【0051】
図3には、図1の本発明に係る歯科用トランスファーテンプレート構成100が側面図として示されている。矢印41および42は、それぞれ唇側および舌側方向を示している。図3に示された実施形態において垂直軸と歯根軸50の間の角度は約10°ないし35°となる。
【0052】
本発明の別の実施形態が図4に示されている。それによれば、(規格製造された)歯35の高さが義歯床10に対して比較的大きいことが理解される。歯35が追加処理を伴わずに義歯床10のキャビティ内に接着される場合、強い不良接触が咬合平面内に発生する。加えて、歯35の咀嚼動作に際して義歯床10のキャビティ内に不安定に保持され結果として義歯床10から脱落する危険も存在し、その原因は垂直平面上で歯35の平面の拡がりに反比例して小さくなる義歯床10上における歯35の接着面である。てこの作用に従って、接着力に相当する荷重アームが咀嚼動作の間に摩擦力に相当する作用アームに比べて短くなる。
【0053】
本発明によれば、図4に示されるように、義歯床10内において不良接触を防止するためにトランスファーテンプレート20(図示されていない)の補助によって歯35を咬合平面22まで唇側下方に固定されることが好適である。歯35の大きな長さのためその歯35が義歯床10の基底面15を超えて突出する。それによって接着面が拡大する。突出した領域350は本発明に従ってその後研削する。結果として荷重アームと作用アームの比率が改善され、従って確実な接着が保証される。
【0054】
図4にはさらに歯37が示されており、その高さは義歯床10に対して比較的小さくなる。歯37が周知の方式によって義歯床10のキャビティ内に接着される場合、上述した歯35の場合と同様に、咀嚼のてこ作用のため確実な接着を保証するためには接着面が過小である。
【0055】
本発明によれば、充分な接着面が使えない危険を、義歯床を作成するためのCADソフトウェアが警告することが極めて好適である。
【0056】
本発明によれば、CAD/CAM装置の制御によってキャビティ11の歯頸領域が切端方向に延伸するように義歯床10のキャビティ11が変形されることも好適である。延伸の長さは図4内で高さ110として示される。本発明に従って図4に示された義歯床10のキャビティ11は、義歯床10上における歯37の追加的な接着面を可能にする。それによって確実な接着結合が保証される。
【0057】
図5および図6には、歯35と37が側面図として示されている。
【0058】
義歯床10の鍔領域の厚みは歯35および37の歯頸縁部において唇側56(あるいは頬側)および口蓋側58(あるいは舌側)に2mm超でなければならない。
【0059】
鍔領域60および62の極小点(2mm)における厚みは0.5mm超でなければならない。それ以降は厚みが拡大することができる。
【0060】
本発明によれば、接着の最低要件に関する閾値がCADソフトウェア内で設定可能であることが極めて好適であり、その際に2つのケースが例示される:
ケース1:図5の歯35のように義歯床10への基底側接触を伴わないかあるいは部分的に伴った接着:
義歯床10の鍔領域52および54の最小の高さは360°にわたって2mm超である必要がある;
ケース2:図6の歯37のように義歯床10への完全な基底側接触を伴った接着:
義歯床10の鍔領域64および66の最小高は180°にわたって、また好適には唇側および口蓋側(あるいは頬側および舌側)を含めて2mm超でなければならず、さらに残りの180°について義歯床10の鍔領域の最小高が1mm超でなければならない。
【0061】
ケース1において最適な鍔の高さは3mm超であり、その際に隆起あるいは被覆部材を備え、それが図4において義歯床10のキャビティ11の延長を形成し、その際に前記被覆部材の少なくとも50%が好適には舌側あるいは口蓋側領域内に存在する。
【0062】
本発明によれば、上述した閾値に基づいて義歯床上における歯の確実な接着を保証する最小の接着面を算出することができるとともに特に義歯床10を作成するためのCADソフトウェア内で決定することがさらに好適である。
【0063】
本願出願人による現状で最小の歯フォームA3をトラフ無しで使用する場合、前記歯フォームA3の周囲は鍔の高さ中央で計測して14.6mmとなり、また歯A3の底面は16.97mmとなる(後述するアルゴリズムはその他のサイズを有する別の歯フォームあるいは別の製造者の歯フォームにも適用可能である)。
【0064】
上述したケース1、すなわち義歯床への基底側の接触を伴わないあるいは部分的に伴う接着の場合において、14.6mm×2mm=29.2mmの最小接着面が形成される。
【0065】
上述したケース2、すなわち義歯床に対する完全な基底側の接触を伴った接着の場合においては、合計の接着面を鍔面と基底面の組み合わせから算出することができ、その際最小接着面は:
‐180°にわたって鍔面が2mmの高さ=14.6mm/2×2mm=14.6mm
‐180°にわたって鍔面が1mmの高さ=14.6mm/2×1mm=7.3mm
‐義歯床に対する完全な基底側の接触を伴った基底面=16.97m
‐最小接着面=14.6mm+7.3mm+16.97mm=38.87mm
モフィット結合度試験(持ち上げ試験)により、上記の最小接着面を有する歯に対して500Nの破断荷重が示された。その際、好適には100μmの粒子大と1ないし2バールの圧力による酸化アルミニウム粒子を使用したサンドブラストによって接着の直前に粗面加工を行うことが好適である。さらに、特にエナメル層が歯頸領域内のみに到達する合成歯を使用する場合、例えば本願出願人によるプロベースコールドモノマーを使用して接着面を予め湿潤化することが極めて好適である。
【0066】
図7には、下顎および/または上顎補綴材用の固定装置70が示されており、その装置が義歯床10上における歯の固定あるいは接着剤の硬化を支援/保証することができる。
【0067】
固定装置70は、基板72と枠部材78と少なくとも3本のビーム74(そのうち2本のみが図7に示されている)とネジ山76を備えたスタンプ79と回転ハンドル80を有する。
【0068】
義歯床10は、それのキャビティ内の歯ならびにトランスファーテンプレート20と共に固定装置70の基板72上に設置してそこに固定することができる。
【0069】
ビーム74は、回転ハンドル80を回転させることによってスタンプ79を介して垂直方向に上昇および下降させることができる。図7に示されるようにビーム74がトランスファーテンプレート20の上面までおよびさらに下方に降下する場合、ビーム74から下方に向かってトランスファーテンプレート20を介して歯および義歯床10に圧力が作用する。
【0070】
義歯床10は歯と固定装置70の基板72によって挟持され、それによって義歯床10上の歯の固定と接着剤の硬化が支援される。スタンプ79を中央に配置することによって均一な固定力が発生する。
【0071】
本発明によれば、CADソフトウェア内で歯と義歯床の間の接着間隙が100μmに定義されることがさらに好適である。位置決めおよび接着に際して歯を義歯床10のキャビティ内に正確に心合せする必要が有りまた100μmの接着間隙を歯の周りに確保することが要望される場合、本発明によれば図8に示されるように少なくとも3個のスペーサ81を使用することが好適である。スペーサが無い場合接着間隙は78ないし160μmであったが、スペーサが有る場合間隔の変動が観測されなかった。
【0072】
義歯床10の歯のための窪み11が図8の平面図に示されている。前記3本のスペーサ81は略円形の歯のための窪み11の内面上に相互に120°離間し内側方向に突立しながら水平面に対して直角に延在するように配置される。
【0073】
スペーサ81の上部材82は、義歯床10のキャビティ11内に歯を容易に挿入できるように面取りされている。歯と義歯床10のキャビティの間の側方の間隔および基底側の間隔は接着間隙としてスペーサ81によって形成され、それが長さ84および高さ86に相当してそれぞれ100μmに相当する。
【0074】
図9には、咬合器90が義歯床と共に概略的に示されている。上顎部92と下顎部94を有する完成した補綴材が、義歯上で咬合補正を行うために垂直軸上で摺動可能に咬合器内に設置される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9