(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方向に伸びる第1駆動軸と、前記第1駆動軸に沿って移動可能に支持された第1スライダと、前記第1スライダを前記第1駆動軸に沿って駆動制御する第1駆動手段と、前記第1スライダに搭載され、前記第1駆動軸と同方向に伸びる第2駆動軸と、前記第2駆動軸に沿って移動可能に支持された第2スライダと、前記第1スライダに搭載され、前記第2スライダを前記第2駆動軸に沿って駆動制御する第2駆動手段と、前記第2スライダに搭載され、部品組付け処理が行われる基板に対し複数の前記部品組付け処理が可能な部品組付ヘッドと、を備える部品組付装置の部品組付方法であって、
前記部品組付ヘッドの目標移動距離を演算する目標移動距離演算ステップと、
前記第1スライダの第1指令速度を演算する第1指令速度演算ステップと、
前記第1スライダの第1位置指令距離を演算する第1位置指令距離演算ステップと、
前記第2スライダの第2指令速度を演算する第2指令速度演算ステップと、
前記第2スライダの第2位置指令距離を演算する第2位置指令距離演算ステップと、
演算した前記目標移動距離が相殺処理を必要とする距離である場合、演算した前記第1および第2指令速度が前記第1および第2スライダの限界速度範囲内である場合、および演算した前記第1および第2位置指令距離が前記第1および第2スライダの限界可動範囲内である場合を全て満たすとき、前記部品組付ヘッドの位置指令に従って前記第2駆動手段により前記第2スライダを前記第2駆動軸に沿って駆動制御したときの反力を、前記第1駆動手段により前記第1スライダを前記第1駆動軸に沿って前記第2スライダの移動方向と反対方向に駆動制御したときの慣性力で相殺する反力相殺移動制御ステップと、
前記各場合のうち少なくとも1つを満たさないとき、前記第1駆動手段をサーボロックした状態で前記部品組付ヘッドの位置指令に従って前記第2駆動手段により前記第2スライダを前記第2駆動軸に沿って駆動制御する移動制御ステップと、
演算した前記第2位置指令距離が前記第2スライダの限界可動範囲外である場合、前記部品組付ヘッドによる部品組付け処理パターンに応じて、前記第2スライダを複数の前記部品組付け処理毎の前記反力相殺移動制御が可能な位置に移動し、複数の前記部品組付け処理を開始する駆動制御を行う開始制御ステップと、
を備える部品組付方法。
演算した前記第2位置指令距離が前記第2スライダの限界可動範囲外である場合、前記部品組付け処理に影響を与えないタイミングで、前記第2スライダを前記反力相殺移動制御が可能な初期位置に戻す駆動制御を行う戻し制御ステップ、を備える請求項1の部品組付方法。
前記第1スライダの相対位置へ前記第1スライダを移動するとき、当該移動距離のうち増速側の距離は前記第1スライダを第1加速度で増速し、残りの減速側の距離は前記第1スライダを第2加速度で減速して停止させる第1スライダ移動部と、
前記第2スライダの相対位置へ前記第2スライダを移動するとき、当該移動距離のうち増速側の距離は前記第2スライダを第3加速度で増速し、残りの減速側の距離は前記第2スライダを第4加速度で減速して停止させる第2スライダ移動部と、を備える請求項3から5の何れか一項の部品組付装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(部品組付装置の構成)
以下、本発明の部品組付装置として部品実装装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1において、基板PBの搬送方向をX方向、X方向と直交する水平方向をY方向、Y方向と直交する垂直方向をZ方向とする。
【0024】
図1Aに示すように、本実施形態による部品実装装置1は、基台19上面の奥側に配設され、基板PBを搬送して部品実装位置Aに搬入出する基板搬送装置2と、基台19上面の手前側に配設され、基板PB上に装着する部品を供給する部品供給装置3と、基台19上面の上方に配設され、基板PB上に装着する部品を部品供給装置3で吸着して移送する部品移載装置4と、部品実装動作を駆動制御する駆動制御装置10等とを備えて構成される。
図1Aには、2台の部品実装装置1が、X方向に並べて設けられている。
【0025】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21a,21bと、一対のコンベアベルト(図示省略)と、クランプ装置23等とを備えている。一対のガイドレール21a,21bは、X方向に延在し基板PBの幅と略同一の距離を隔てて互いに平行に配置されている。一対のコンベアベルトは、ガイドレール21a,21bの直下に並設されている。クランプ装置23は、一対のガイドレール21a,21bの間であって実装位置の下方に配設されている。このような構成の基板搬送装置2においては、基板PBが一対のガイドレール21a,21bによりX方向に案内されつつ一対のコンベアベルトにより部品実装位置Aまで搬送され、クランプ装置23によりコンベアベルトから押し上げられてクランプされ位置決め固定されるようになっている。
【0026】
部品供給装置3は、異なる部品種の部品を夫々収容して供給する複数のカセット式のフィーダ31がX方向に沿ってセットされるフィーダホルダ部32等を備えている。フィーダ31は、後部に部品供給リール33がセットされるフィーダ本体31aと、該フィーダ本体31aの前部に設けられた部品取出し箇所31bとにより概略構成されている。部品供給リール33には、部品が所定ピッチで配置されカバーテープ(図示省略)で覆われたキャリアテープ34が巻回されている。このような構成の部品供給装置3においては、キャリアテープ34がフィーダ本体31aに備えられたスプロケット(図示省略)により所定ピッチで引き出されてカバーテープが引き剥がされ、部品が部品取出し箇所31bに順次送り込まれると共にキャリアテープ34が巻き取られるようになっている。
【0027】
部品移載装置4は、Y方向移動装置40と、X方向移動装置50(本発明の「多段駆動軸装置」に相当)等とを備えている。Y方向移動装置40は、一対の固定レール41,41、移動レール42(
図1B参照)、ボールねじ43、サーボモータ44および軸受45等とを備えている。一対の固定レール41,41は、基板搬送装置2の両端部の上方にY方向に延在し互いに平行に配置されている。移動レール42は、一対の固定レール41,41間にX方向に延在して配置され、移動レール42の両端が、固定レール41,41に沿って移動可能に支持されている。ボールねじ43は、一方の固定レール41に沿ってY方向に延在して配置され、ボールねじ43の一端が、固定レール41に固定されたサーボモータ44のモータ軸に連結され、ボールねじ43の他端が、固定レール41に固定された軸受45に支持されている。移動レール42の移動は、ボールねじ43を介してサーボモータ44により制御されている。
【0028】
図1Bに示すように、X方向移動装置50は、第1X方向移動装置51および第2X方向移動装置61を備えている。第1X方向移動装置51は、第1スライダ52、第1ボールねじ53(本発明の「第1駆動軸」に相当)、第1サーボモータ54(本発明の「第1駆動手段」に相当)および第1軸受55(本発明の「第1駆動手段」に相当)等とを備えている。第1スライダ52は、移動レール42に沿ってX方向に移動可能に配置されている。第1ボールねじ53は、移動レール42に沿ってX方向に延在して配置され、第1ボールねじ53の一端が、移動レール42に固定された第1サーボモータ54のモータ軸に連結され、第1ボールねじ53の他端が、移動レール52に固定された第1軸受55に支持されている。第1スライダ52の移動は、第1ボールねじ53を介して第1サーボモータ54により制御されている。
【0029】
第2X方向移動装置61は、ガイドレール62、第2スライダ63、第2ボールねじ64(本発明の「第2駆動軸」に相当)、第2サーボモータ65(本発明の「第2駆動手段」に相当)および第2軸受66(本発明の「第2駆動手段」に相当)等とを備えている。ガイドレール62は、第1スライダ52にX方向に延在して配置されている。第2スライダ63は、ガイドレール62に沿ってX方向に移動可能に配置されている。第2ボールねじ64は、ガイドレール62に沿ってX方向に延在して配置され、第2ボールねじ64の一端が、ガイドレール62に固定された第2サーボモータ65のモータ軸に連結され、第2ボールねじ64の他端が、ガイドレール62に固定された第2軸受66に支持されている。第2スライダ63の移動は、第2ボールねじ64を介して第2サーボモータ65により制御されている。
【0030】
第2スライダ63には、基板PBにおける部品装着位置の認識が可能な認識用カメラ67およびZ軸回りを回転可能且つZ方向に昇降可能な実装ヘッド68(本発明の「部品組付ヘッド」に相当)が保持されている。この実装ヘッド68には、部品を吸着する部品吸着ノズル70を着脱可能に保持するノズルホルダ69が、実装ヘッド68の回転軸線を中心とする一円周上に等角度間隔で複数個(例えば、8個)下方に突設されている。
【0031】
部品吸着ノズル70が装着されたノズルホルダ69は、実装ヘッド68からZ方向に昇降可能に且つZ軸回りで回転可能に支持されている。部品吸着ノズル70が装着されたノズルホルダ69の昇降は、ボールねじを介してサーボモータ(いずれも図示省略)により制御され、部品吸着ノズル70が装着されたノズルホルダ69の回転は、ギヤ機構を介してサーボモータ(いずれも図示省略)により制御されている。部品吸着ノズル70は、略中空円筒状に形成され大気圧、正圧、負圧の切換可能な三方向バルブを介して真空ポンプ(図示省略)と接続されており、ノズル下端において部品を吸着保持可能に構成されている。また、部品移載装置4と部品供給装置2の間には部品吸着ノズル70の部品の吸着状態の認識が可能な部品認識用カメラ71(
図1A参照)が取り付けられている。
【0032】
このような構成の部品移載装置4においては、部品供給装置3で供給される部品が、実装ヘッド68の部品吸着ノズル70により吸着され、Y方向移動装置40およびX方向移動装置50により部品実装位置Aに位置決めされた基板PBまで移送され、部品吸着ノズル70により基板PB上の部品装着位置Aに装着されるようになっている。
【0033】
また、X方向移動装置50は、第1X方向移動装置51および第2X方向移動装置61を備えた構成となっている。この構成の部品実装装置1は、複数台の部品実装装置1がX方向に並べて配置されている場合、当該部品実装装置1に対しX方向に隣接して配置される他の部品実装装置1の基板搬送装置2により位置決めされた基板PB上に、当該部品実装装置1の第1X方向移動装置51および第2X方向移動装置61を駆動制御して実装ヘッド68により部品を装着する動作、所謂跨ぎ生産が可能となっている。
【0034】
すなわち、第1X方向移動装置51は、第1スライダ52を基板搬送装置2の左端側又は右端側へ移動してサーボロック停止する。そして、第2X方向移動装置61は、第2スライダ63を第1スライダ52の左端側又は右端側へ移動する。これにより、実装ヘッド68は、当該部品実装装置1に対しX方向に隣接して配置される他の部品実装装置1側へ飛び出すことができる。よって、実装ヘッド68は、吸着している部品を左側又は右側に隣接する部品実装装置1の基板搬送装置2により位置決めされた基板PB上に装着することができる。
【0035】
(部品実装装置における振動発生の抑制)
ここで、本実施形態の部品実装装置1は、1つの実装ヘッド68を備えた装置であるが、第1X方向移動装置51および第2X方向移動装置61を備えているため、第2スライダ63(実装ヘッド68)を一方向に高加減速で駆動制御するとき、第1スライダ52を一方向とは逆方向に高加減速で駆動制御することができる。これにより、第2スライダ63(実装ヘッド68)で発生する反力は、第1スライダ52で発生する慣性力で相殺されるので、部品実装装置1における実装ヘッド68の高加減速動作時の振動発生を抑制することができる。
【0036】
詳しくは、
図2に示す部品実装装置1の基台19等(以下、「装置本体1A」という)、第2X方向移動装置61のガイドレール62、第2ボールねじ64、第2サーボモータ65および第2軸受66を含む第1X方向移動装置51の第1スライダ52(以下、単に「第1スライダ52」という)、および第2X方向移動装置61の認識用カメラ67および実装ヘッド68を含む第2スライダ63(以下、単に「第2スライダ63」という)の簡略モデルを参照して説明する。
【0037】
装置本体1Aの振動は、バネ81およびダンパ82で表している。また、第1X方向移動装置51および第2X方向移動装置61の第1サーボモータ54および第2サーボモータ65は、第1スライダ52および第2スライダ63と第1ボールねじ53および第2ボールねじ64との相対変位に応じたフィードバック制御による駆動力を発生し、第1スライダ52および第2スライダ63の移動量および駆動時の加速度を制御可能となっている。
【0038】
第1スライダ52、第2スライダ63および装置本体1Aは、各質量をM1,M2,Mmとし、装置設置部1Bに対する各移動量をX1,X2,Xmとする。また、第1スライダ52の駆動力をF1、駆動時の反力を−F1とし、第2スライダ63の駆動力をF2、駆動時の反力を−F2とする。装置本体1Aに対する第2スライダ63の相対移動量であるX0(=X2−Xm)が、最終的な反力相殺移動時の制御量になる。この反力相殺移動制御のため、第2スライダ63の指令位置(第2スライダ63と第1スライダ52との相対指令位置)r
h、および第1スライダ52の指令位置(第1スライダ52と装置本体1Aとの相対指令位置)r
sを、実装ヘッド68の部品装着指令位置(第2スライダ63と装置本体1Aとの相対指令位置)r
0に基づいて生成する。
【0039】
具体的には、第2スライダ63、第1スライダ52および装置本体1Aにおける運動方程式は、次式(1)〜(3)で表される。
F2=M2・a2・・・(1)
F1−F2=M1・a1・・・(2)
−F1=Mm・am+Cm・vm+Km・Xm・・・(3)
なお、a2:第2スライダ63の加速度、a1:第1スライダ52の加速度、am:装置本体1Aの加速度、vm:装置本体1Aの速度、Cm,Km:係数
【0040】
第2スライダ63および第1スライダ52が動作する反力相殺移動制御の際に装置本体1Aに加わる力を0とすると、F1=0,Xm=0,vm=0,am=0となるので、式(1)〜(3)に代入すると次式(4)が得られる。
M2・a2=−M1・a1・・・(4)
【0041】
ここで、第2スライダ63および第1スライダ52の各移動距離X2,X1は、第2スライダ63および第1スライダ52の各加速度a2,a1に比例する関係にあるため、式(4)は、次式(5)となる。
M2・X2=−M1・X1・・・(5)
【0042】
また、第2スライダ63および第1スライダ52の各指令位置r
h,r
sと各位置応答が十分に一致している状況では、次式(6)〜(8)が得られる。なお、Xm=0である。
r
h=X2−X1・・・(6)
r
s=X1−Xm=X1・・・(7)
r
0=r
h+r
s=X2−Xm=X2・・・(8)
【0043】
よって、第2スライダ63および第1スライダ52の各指令位置r
h,r
sは、次式(9),(10)で表される。
r
h=(M2+M1)r
0/M1・・・(9)
r
s=−M2・r
0/M1・・・(10)
【0044】
図3のブロック線図で説明すると、
図3の駆動制御装置10においては、実装ヘッド68の部品装着指令位置r
0は、[(M2+M1)/M1]のブロック11および[−M2/M1]のブロック12で第2スライダ63の指令位置r
hおよび第1スライダ52の指令位置r
sに分配される。そして、第2スライダ63の指令位置r
hは、例えばPID制御のための補償器17aで補償されて出力され、第1スライダ52の指令位置r
sは、例えばPID制御のための補償器17bで補償されて出力される。
【0045】
また、部品実装装置1の応答を数式で模擬したモデル10Aにおいては、補償器17aの出力は、第2サーボモータ65のトルクとして、[1/M2s2]のブロック14に入力される。補償器17bの出力と補償器17aの出力との差は、第2サーボモータ65のトルク反力と第1サーボモータ54のトルクの和として、[1/M1s2]のブロック15に入力される。補償器17bの出力は、第1サーボモータ54のトルク反力として、[1/Mms2]のブロック16に入力される。そして、第2サーボモータ65のエンコーダで検出される第2スライダ63と第1スライダ52との相対移動量は、第2スライダ63の指令位置r
hにフィードバックされる。また、第1サーボモータ54のエンコーダで検出される第1スライダ52と装置本体1Aとの相対移動量は、第1スライダ52の指令位置r
sにフィードバックされる。
【0046】
また、
図4のフローチャートで説明すると、駆動制御装置10は、第2スライダ63の質量M2を、第1スライダ52の質量M1で除算し、この除算値M2/M1に実装ヘッド68の移動距離w
0を乗算し、この乗算値M2・w
0/M1を第1スライダ52の現位置から反力相殺移動制御を行うための第1スライダ52の指令位置r
sまでの移動距離w
sとして求める(ステップS1、本発明の「第1スライダ移動距離演算部」に相当)。
【0047】
さらに、駆動制御装置10は、第2スライダ63の質量M2と、第1スライダ52の質量M1とを加算し、この加算値M2+M1を第1スライダ52の質量M1で除算し、この除算値(M2+M1)/M1に実装ヘッド68の移動距離w
0を乗算し、この乗算値(M2+M1)・w
0/M1を第2スライダ63の現位置から反力相殺移動制御を行うための第2スライダ63の指令位置r
hまでの移動距離w
hとして求める(ステップS2、本発明の「第2スライダ移動距離演算部」に相当)。
【0048】
そして、駆動制御装置10は、第2スライダ63の指令位置r
hへ第2スライダ63を移動するとき、
図5の一点鎖線で示すように、当該移動距離のうち増速側の距離、すなわち当該移動距離の半分の距離(時点0から時点t1まで)は第2スライダ63を等加速度a2で増速し、当該移動距離のうち減速側の距離、すなわち残りの半分の距離(時点t1から時点t2まで)は第2スライダ63を等加速度a2で減速して停止させる(ステップS3、本発明の「第2スライダ移動部」に相当)。これにより、
図6の一点鎖線で示すように、第2スライダ63は、時点0における現位置0から時点t2にて移動距離w
hだけ移動して第2スライダ63の指令位置r
hに達する。
【0049】
同時に、駆動制御装置10は、第1スライダ52の指令位置r
sへ第1スライダ52を移動するとき、
図5の二点鎖線で示すように、当該移動距離のうち増速側の距離、すなわち当該移動距離の半分の距離(時点0から時点t1まで)は第1スライダ52を等加速度a1で増速し、当該移動距離のうち減速側の距離、すなわち残りの半分の距離(時点t1から時点t2まで)は第1スライダ52を等加速度a1で減速して停止させる(ステップS4、本発明の「第1スライダ移動部」に相当)。これにより、
図6の二点鎖線で示すように、第1スライダ52は、時点0における現位置0から時点t2にて移動距離w
sだけ移動して第1スライダ52の指令位置r
sに達する。
【0050】
以上の第2スライダ63および第1スライダ52の加減速移動により、実装ヘッド68は、
図5の実線で示すように、実装ヘッド68の部品装着指令位置r
0への移動距離のうち増速側の距離、すなわち半分の距離(時点0から時点t1まで)を等加速度a0で増速し、当該移動距離のうち減速側の距離、すなわち残りの半分の距離(時点t1から時点t2まで)を等加速度a0で減速して停止する。よって、実装ヘッド68は、
図6の実線で示すように、時点0における現位置0から時点t2にて移動距離w
0だけ移動して実装ヘッド68の部品装着位置r
0に達することができる。
【0051】
なお、第2スライダ63の移動時の加速度a2および第1スライダ52の移動時の加速度a1は、第2スライダ63の質量M2および第1スライダ52の質量M1との関係から、モータの許容最大トルク、および許容連続トルクのスペック内で最大値となるように決定する。また、上述の加速度a2,a1は、部品吸着ノズル70に吸着されている部品が落下しないように、部品毎の質量や形状等を考慮して決定する。これにより、部品実装時間は、短縮される。
【0052】
以上説明したように、第2スライダ63(実装ヘッド68)で発生する反力は、第1スライダ52で発生する慣性力で相殺されるので、
図7に示すように、本実施形態の部品実装装置1における実装ヘッド68の高加減速動作時の振動の振幅(図示実線)を、従来の部品実装装置における実装ヘッドの高加減速動作時の振動の振幅(図示一点鎖線)の半分以下に抑制することができる。よって、部品実装装置1では、第1、第2スライダ52,63の相対位置を演算により簡易に求めることができるので、第1、第2スライダ52,63の移動を正確に行うことができ、部品装着を高精度に行うことができる。
【0053】
ところで、駆動制御装置10は、第1、第2X方向移動装置51,61の第1、第2スライダ52,63の動作状態によっては反力相殺移動制御を行わない場合がある。反力相殺移動制御を行わない場合とは、実装ヘッド68(第2スライダ63)の目標移動距離が反力相殺移動制御を必要とする距離でない場合、第1、第2スライダ52,63の第1、第2指令速度が第1、第2スライダ52,63の限界速度範囲を超える場合、および第1、第2スライダ52,63の第1、第2位置指令距離が第1、第2スライダ52,63の限界可動範囲を超える場合のうち少なくとも1つを満たさない場合である。各場合においては、駆動制御装置10は、第1サーボモータ54をサーボロックした状態で第2スライダ63を駆動制御し、実装ヘッド68を実装ヘッド68の部品装着指令位置r
0に位置決めする。
【0054】
一方、反力相殺移動制御を行う場合は、反力相殺制御を必要とし、且つ限界可動範囲内、限界速度範囲内のときである。この場合は、第2スライダ63を第2スライダ63の指令位置r
hへ駆動制御したときの反力を、第1スライダ52を第2スライダ63の移動方向と反対方向の第1スライダ52の指令位置r
sに駆動制御したときの慣性力で相殺し、実装ヘッド68を実装ヘッド68の部品装着指令位置r
0に位置決めする。
【0055】
実装ヘッド68の位置決め動作時の加速度波形が有する振動数は、実装ヘッド68の目標移動距離により変化する。このため、駆動制御装置10は、実装ヘッド68の位置決め動作時の加速度波形が有する振動数と実装ヘッド68の目標移動距離との相関を予め測定・解析等で把握してテーブル化しておき、部品実装の際の実装ヘッド68の目標移動距離に応じてテーブルを参照し、反力相殺移動制御の実施の要否を判別する。実装ヘッド68の目標移動距離としては、例えば、数10mm以内であり、それを越える目標移動距離の場合、反力相殺移動制御は不要となる。すなわち、部品実装装置1は、実装ヘッド68の位置決め動作時の加速度波形が有する振動数と装置本体1Aの固有振動数とが一致する場合に大きな振動が発生するが、両者が一致しない場合は振動は殆ど発生しないという特性を持っている。
【0056】
具体的には、
図8に示すように、駆動制御装置10は、部品実装装置1に対する実装ヘッド68の目標移動距離を演算する(ステップS11、本発明の「目標移動距離演算部」に相当)。駆動制御装置10は、実装ヘッド68の目標移動距離が反力相殺移動制御を必要とする距離であるか否かを判断し(ステップS12)、実装ヘッド68の目標移動距離が反力相殺移動制御を必要としない距離である場合、第1サーボモータ54をサーボロックした状態で第2スライダ63を駆動制御し、実装ヘッド68を実装ヘッド68の部品装着指令位置r
0に位置決めする(ステップS22、本発明の「移動制御部」に相当)。これにより、部品実装装置1においては、第1および第2スライダ52,63の動作限界によって反力相殺移動制御を行えない場合であっても、第2スライダ63を動作させて部品装着を行うことができるので、部品装着のスループットの低下を抑制することができる。
【0057】
一方、ステップS12において、駆動制御装置10は、実装ヘッド68の目標移動距離が反力相殺移動制御を必要とする距離であると判断した場合、反力相殺移動制御時の第1スライダ52の第1指令速度を演算する(ステップS13、本発明の「第1指令速度演算部」に相当)。すなわち、駆動制御装置10は、
図5の二点鎖線で示す第1スライダ52の第1指令加速度波形に基づいて第1スライダ52の第1指令速度を演算する。そして、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第1スライダ52の第1指令速度が第1スライダ52の限界速度範囲内であるか否かを判断し(ステップS14)、第1指令速度が限界速度範囲を超える場合、ステップS22に進んで上述の移動制御を行う。
【0058】
一方、ステップS14において、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第1スライダ52の第1指令速度が第1スライダ52の限界速度範囲内であると判断した場合、反力相殺移動制御時の第1スライダ52の第1位置指令距離(移動量X1)を演算する(ステップS15、本発明の「第1位置指令距離演算部」に相当)。すなわち、駆動制御装置10は、上記式(8)〜(10)に基づいて第1スライダ52の第1位置指令距離(移動量X1)を演算する。そして、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第1スライダ52の第1位置指令距離(移動量X1)が第1スライダ52の限界可動範囲内であるか否かを判断し(ステップS16)、第1位置指令距離(移動量X1)が限界可動範囲を超える場合、ステップS22に進んで上述の移動制御を行う。
【0059】
一方、ステップS16において、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第1スライダ52の第1位置指令距離(移動量X1)が第1スライダ52の限界可動範囲内であると判断した場合、反力相殺移動制御時の第2スライダ63の第2指令速度を演算する(ステップS17、本発明の「第2指令速度演算部」に相当)。すなわち、駆動制御装置10は、
図5の一点鎖線で示す第2スライダ63の第2指令加速度波形に基づいて第2スライダ63の第2指令速度を演算する。そして、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第2スライダ63の第2指令速度が第2スライダ63の限界速度範囲内であるか否かを判断し(ステップS18)、第2指令速度が限界速度範囲を超える場合、ステップS22に進んで上述の移動制御を行う。
【0060】
一方、ステップS18において、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第2スライダ63の第2指令速度が第2スライダ63の限界速度範囲内であると判断した場合、反力相殺移動制御時の第2スライダ63の第2位置指令距離(移動量X2)を演算する(ステップS19、本発明の「第2位置指令距離演算部」に相当)。すなわち、駆動制御装置10は、上記式(7),(10)に基づいて第2スライダ63の第2位置指令距離(移動量X2)を演算する。そして、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第2スライダ63の第2位置指令距離(移動量X2)が第2スライダ63の限界可動範囲内であるか否かを判断し(ステップS20)、第2位置指令距離(移動量X2)が限界可動範囲を超える場合、ステップS22に進んで上述の移動制御を行う。
【0061】
一方、ステップS20において、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第2スライダ63の第2位置指令距離(移動量X2)が第2スライダ63の限界可動範囲内であると判断した場合、第2スライダ63を第2スライダ63の指令位置r
hへ駆動制御したときの反力を、第1スライダ52を第2スライダ63の移動方向と反対方向の第1スライダ52の指令位置r
sに駆動制御したときの慣性力で相殺し、実装ヘッド68を実装ヘッド68の部品装着指令位置r
0に位置決めし(ステップS21、本発明の「反力相殺移動制御部」に相当)、全ての処理を終了する。
【0062】
また、上述のステップS20において、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時の第2スライダ63の第2位置指令距離(移動量X2)が第2スライダ63の限界可動範囲を超えたと判断した場合、以下に説明する制御を行ってもよい。すなわち、
図9に示すように、駆動制御装置10は、第2位置指令距離(移動量X2)が限界可動範囲を超える場合(ステップS30)、現時点が部品実装に影響を与えないタイミングであるか否かを判断する(ステップS31)。この部品実装に影響を与えないタイミングとは、例えば、基板PB上における部品の装着点から部品供給装置3の部品取出し箇所31bへの移動時、Y方向移動装置40の移動レール42の移動時、又はY方向移動装置40およびX方向移動装置50が動作していない移動待ち時等である。
【0063】
駆動制御装置10は、現時点が部品実装に影響を与えるタイミングである場合は、部品実装に影響を与えないタイミングになるまで待ち、現時点が部品実装に影響を与えないタイミングである場合は直ちに、第2スライダ63を反力相殺移動制御が可能な初期位置に戻す駆動制御を行う(ステップS32)。この初期位置とは、例えば、
図10に示すように、第1スライダ52が、部品供給装置3の中央に近接し、且つ、第2スライダ63が、第1スライダ52の中央に位置決めされている位置である。これにより、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御を行うことができる。よって、部品実装装置1では、第2スライダ63の動作限界を解消することができるので、高速且つ高精度に部品装着を行うことができる。
【0064】
また、実装ヘッド68は、8本の部品吸着ノズル70を有するノズルホルダ69を備えた所謂ロータリーヘッドであり、複数の部品を基板PB上に順次装着可能である。上述のステップS20において、駆動制御装置10は、反力相殺移動制御時のロータリーヘッド68を備えた第2スライダ63の第2位置指令距離(移動量X2)が第2スライダ63の限界可動範囲を超えたと判断した場合、以下に説明する制御を行ってもよい。すなわち、
図11に示すように、駆動制御装置10は、第2位置指令距離(移動量X2)が限界可動範囲を超える場合(ステップS40)、ロータリーヘッド68による部品装着パターンに応じて、第2スライダ63を各部品の基板PB上への装着毎の反力相殺移動制御が可能な位置に移動し(ステップS41)、各部品の基板PB上への装着を開始する駆動制御を行う(ステップS42)。これにより、駆動制御装置10は、各部品の基板PB上への装着毎に反力相殺移動制御を行うことができる。
【0065】
例えば、
図12に示すように、部品移載装置4が、部品供給装置3の部品取出し箇所31bから部品認識用カメラ71を経由し、基板PB上においてX方向に右側から左側に所定間隔をあけて並んだ第1部品装着点P1、第2部品装着点P2、第3部品装着点P3を通り、部品供給装置3の部品取出し箇所31bに戻る場合を考える。この場合、ロータリーヘッド68による部品装着パターンとしては、第1部品装着点P1で部品装着してから第2部品装着点P2へ移動して部品装着し、第2部品装着点P2から第3部品装着点P3へ移動して部品装着するというパターンになる。
【0066】
先ず、
図13に示すように、第2スライダ63は、第1スライダ52の右側に移動されて第1部品装着点P1に位置決めされる。そして、ロータリーヘッド68は、第1部品装着点P1に部品を装着する。この第1部品装着点P1が、上述の装着開始位置である。このように、第2スライダ63は、第1スライダ52の左側への移動のための距離を十分に取ることができるので、第2部品装着点P2および第3部品装着点P3において反力相殺移動制御を行うことができる。
【0067】
次に、
図14に示すように、第2スライダ63は、実装ヘッド68の第2部品装着点P2の位置指令に従って左方に移動され、同時に第1スライダ52は、第1スライダ52の位置指令に従って右方に移動される。これにより、第2スライダ63を駆動制御したときの反力は、第1スライダ52を駆動制御したときの慣性力で相殺することができる。そして、ロータリーヘッド68は、第2部品装着点P2に部品を装着する。
【0068】
次に、
図15に示すように、第2スライダ63は、実装ヘッド68の第3部品装着点P3の位置指令に従って左方に移動され、同時に第1スライダ52は、第1スライダ52の位置指令に従って右方に移動される。これにより、第2スライダ63を駆動制御したときの反力は、第1スライダ52を駆動制御したときの慣性力で相殺することができる。そして、ロータリーヘッド68は、第3部品装着点P3に部品を装着する。よって、部品実装装置1では、複数の部品装着が可能な場合において第2スライダ63の動作限界を解消することができるので、高精度でより高速に部品組付け処理を行うことができる。
【0069】
(実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の部品実装装置1は、1つの実装ヘッド68に備えられた第2スライダ63を一方向に高加減速で駆動制御するとき、当該実装ヘッド68に備えられた第1スライダ52を一方向とは逆方向に高加減速で駆動制御することができる。これにより、第2スライダ63で発生する反力は、第1スライダ52で発生する慣性力で相殺されるので、部品実装装置1における実装ヘッド68の高加減速動作時の振動発生を抑制することができる。よって、この部品実装装置1においては、高速且つ高精度に部品装着を行うことができ、また、実装ヘッド68は1つのみであり、従来のようにカウンタマスは不要であるので、装置サイズを小型化することができる。
【0070】
(別形態)
なお、上述の実施形態においては、駆動制御装置10は、第1、第2スライダ52,63の相対位置r
h,r
sへ第1、第2スライダ52,63を移動するとき、当該移動距離w
s,w
hの半分の距離は第1、第2スライダ52,63を等加速度a1,a2で増速し、残りの半分の距離は第1、第2スライダ52,63を等加速度a1,a2で減速して停止させる制御を行う構成とした。しかし、駆動制御装置10は、第1、第2スライダ52,63の増速の制御を、第1、第2スライダ52,63の移動距離のうち任意の距離行い、第1、第2スライダ52,63の減速・停止の制御を、残りの距離行う構成としてもよい。また、駆動制御装置10は、第1、第2スライダ52,63の増減速の制御を、変動する加速度で行う構成としてもよい。例えば、駆動制御装置10は、第1、第2スライダ52,63の位置によって、第1、第2スライダ52,63の加速度を変動させ、もしくは段階的に切り替える。
【0071】
また、
図16,17に示すように、第1、第2スライダ52,63が、移動距離u
s,u
hのうち所定距離u1
s,u1
hを等加速度a1,a2で増速移動した時点で加速度を0にして等速度で所定距離u2
s−u1
s,u2
h−u1
h移動させ、その後に残りの所定距離u
s−u2
s,u
h−u2
hを等加速度a1,a2で減速移動して停止させる制御を行う構成としてもよい。これにより、実装ヘッド68は、移動距離u
0のうち増速側の距離u1
0を等加速度a0で増速移動した時点で加速度を0にして等速度で所定距離u2
0−u1
0移動し、その後に減速側の距離u
0−u2
0を等加速度a0で減速移動して停止する。よって、実装ヘッド68の目標移動距離u
0を等速度で移動させる分だけ延長することができる。
【0072】
また、上述の実施形態においては、部品組付装置として部品実装装置を例に説明したが、他の部品組付装置、例えば半田塗布装置等にも本発明を適用可能である。