特許第6325684号(P6325684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6325684
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】観察装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20180507BHJP
   A61B 3/02 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   A61B3/10 Z
   A61B3/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-554975(P2016-554975)
(86)(22)【出願日】2014年10月21日
(86)【国際出願番号】JP2014077943
(87)【国際公開番号】WO2016063345
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】奧山 健久
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 琢麿
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 善尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(72)【発明者】
【氏名】白戸 琢也
【審査官】 森川 能匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−232032(JP,A)
【文献】 特開2003−106940(JP,A)
【文献】 特開平06−245907(JP,A)
【文献】 特開2005−230328(JP,A)
【文献】 特表2012−517325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズを備える投影部と、
前記投影レンズを介して前記投影部から発せられた光を、被検眼の角膜の曲率半径の中心に集光させる対物レンズと、
前記被検眼を撮像する撮像部と、
を備え、
前記投影部は、前記投影部から発せられた光として、前記撮像部により撮像された画像を投影する投影光を発し、
前記投影レンズは、前記投影光が前記被検眼の網膜に結像されるように配置されている
ことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
前記投影部から発せられた光が前記網膜に結像される位置と前記投影部から発せられた光が前記角膜表面近傍に結像される位置とに変化するように、前記投影レンズを移動する移動手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記投影レンズの位置が、前記投影部から発せられた光が前記網膜に結像される位置と前記投影部から発せられた光が前記角膜表面近傍に結像される位置とを、周期的且つ交互にとるように、前記投影レンズを移動することを特徴とする請求項2に記載の観察装置。
【請求項4】
前記投影部は、前記投影部から発せられた光として、その内周部に前記撮像部により撮像された画像を含む画像を投影する投影光を発し、
前記投影レンズ、前記対物レンズ及び前記被検眼を結ぶ光路上に配置され、前記投影された画像の前記内周部に対応する投影光を前記網膜に結像すると共に、前記投影された画像の外周部に対応する投影光を前記角膜表面近傍に結像するレンズを更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の観察装置。
【請求項5】
前記投影部は、前記投影部から発せられた光として、その内周部に前記撮像部により撮像された画像を含む画像を投影する投影光を発し、
前記対物レンズには、前記投影された画像の前記内周部に対応する投影光が前記網膜に結像されると共に、前記投影された画像の外周部に対応する投影光が前記角膜表面近傍に結像されるような開口が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼を観察する観察装置に係り、特に眼の角膜表面を観察する観察装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
VDT(Visual Display Terminals)作業の増加や、スマートフォン及びタブレット端末等の携帯端末の普及に伴い、ドライアイの症状を訴える患者が増加している。
【0003】
ドライアイの検査は、眼科医が、患者の眼に蛍光染色液を点眼後、細隙灯顕微鏡を用いて涙液の状態を観察することにより行われる。この際、眼科医は、患者が開瞼してから涙液表面に亀裂が入るまでの時間、即ちBUT(Tear film Break Up Time)をストップウォッチで計測する。この計測された時間の長さがドライアイの診断基準の一つにされている。
【0004】
上述の方法は、侵襲的ではあるものの、眼科医が直接涙液の状態を観察しているので、涙液破壊を見逃すことなく捉えることができる。ただし、眼科医の主観で検査するために、該眼科医の経験や熟練度によって検査結果が異なる可能性がある。
【0005】
ところで、ドライアイのスクリーニング検査に用いられる装置として、非侵襲的に涙液表面の観察が可能な装置が提案されている。具体的には例えば、蛍光染色液を用いることなく、涙液表面を覆っている油(油層)の状態を観察する装置が提案されている(特許文献1参照)。ここで、油層は、涙液と同じく可視光に対してほぼ透明であるが、数%の反射率を有しており、油層の表面反射光と該油層の裏面反射光とが干渉し、油層の厚みに対応した干渉色が現れる。
【0006】
この種の装置では、装置内部に設けられた光源から発せられた光が、対物レンズを介して角膜表面に照射されるため、「対物レンズ照明方式」と呼ぶこととする。
【0007】
尚、被験者自身が測定状況を確認することが可能な眼圧測定装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3586039号
【特許文献2】特開平6−245907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術では、油層の状態は観察可能ではあるが、BUTを計測することができないという技術的問題点がある。尚、BUTを自動計測する装置も提案されてはいるが、プラチド板と呼ばれる多重リングパターンが刻まれた照明板を別途設ける必要があるという技術的問題点がある。
【0010】
特許文献2に記載の技術では、前眼部(角膜)の照明光と、測定状況を確認するために被験者が視認する光(即ち、映像)とが互いに異なる光源から発せられている上、いずれの光も拡散光であるため、涙液表面の観察に適さないという技術的問題点がある。
【0011】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、対物レンズ照明方式によりBUTの計測が可能な、或いは、被験者自身が涙液表面を観察可能な、観察装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の観察装置は、上記課題を解決するために、
投影レンズを備える投影部と、前記投影レンズを介して前記投影部から発せられた光を、被検眼の角膜の曲率半径の中心に集光させる対物レンズと、前記被検眼を撮像する撮像部と、を備え、前記投影部は、前記投影部から発せられた光として、前記撮像部により撮像された画像を投影する投影光を発し、前記投影レンズは、前記投影光が前記被検眼の網膜に結像されるように配置されている。
【0013】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
図2】第2実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
図3】第3実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
図4】第4実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
図5】第5実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
図6】第6実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の観察装置に係る実施形態について説明する。
【0016】
実施形態に係る観察装置は、投影レンズを備える投影部と、該投影レンズを介して投影部から発せられた光を、被検眼の角膜の曲率半径の中心に集光させる対物レンズと、を備えて構成されている。ここで特に、投影レンズは、投影部から発せられた光が、被検眼の網膜又は被検眼の角膜表面近傍に結像されるように配置されている。
【0017】
ここで、「投影部から発せられた光が被検眼の網膜に結像」とは、被験者が、投影部により投影されたもの(例えば画像、光源の前に存在する物の影(輪郭)等)を認識することができる(つまり、見ることができる)状態を意味する。他方、「投影部から発せられた光が被検眼の角膜表面近傍に結像」とは、投影部のピント(厳密には、対物レンズを介した投影部のピント)が、被検眼の角膜表面近傍に合っている状態を意味する(この場合、被験者は、投影部により投影されたものを認識できない)。
【0018】
投影レンズが、投影部から発せられた光が被検眼の網膜に結像されるように配置されている場合、該被検体の角膜表面は、投影部から発せられた光により全体的に照らされる(仮に、何らかの画像が投影されていたとしても、角膜表面にはピントが合っていないため、ほぼ一様な強度の光で角膜表面を照らすことができる)。
【0019】
このため、投影部から発せられた光を用いて被検眼の涙液表面の観察をすることができる。加えて、投影部から、被検眼を撮像した画像が投影されれば、被験者が自身の被検眼の涙液表面を観察することができる。
【0020】
尚、被検眼の涙液表面の観察を、例えば眼科医等、被験者とは別の人物が行う場合には、投影部により、例えば風景等の任意の画像が投影されることが望ましい。このように構成すれば、被験者の緊張を緩和することができると共に、観察中の被検眼の動きを抑制することができる。
【0021】
他方、投影レンズが、投影部から発せられた光が被検眼の角膜表面近傍に結像されるように配置されている場合、投影部から、例えば多重リングパターンの画像が投影されれば、被検眼の角膜表面に多重リングパターンが現れ、プラチド板を用いることなくBUTを計測することができる。或いは、投影部から、例えば白色光が発せられれば又は白ベタの画像が投影されれば、被検眼の涙液表面が一様に照らされるので、涙液表面の観察をすることができる。つまり、当該観察装置一台により、BUTの計測と涙液表面の観察との二つを実施することができる。
【0022】
実施形態に係る観察装置の一態様では、被検眼を撮像する撮像部を更に備え、投影部は、該投影部から発せられた光として、撮像部により撮像された画像を投影する投影光を発する。投影レンズは、投影光が被検眼の網膜に結像されるように配置されている。
【0023】
この態様によれば、比較的容易にして、被験者が自身の被検眼の涙液表面の観察をすることができ、実用上非常に有利である。
【0024】
実施形態に係る観察装置の他の態様では、投影部から発せられた光が前記網膜に結像される位置と前記投影部から発せられた光が前記角膜表面近傍に結像される位置とに変化するように、投影レンズを移動する移動手段を更に備える。
【0025】
この態様によれば、例えば、多重リングパターンの画像が投影部により投影されると共に、投影部から発せられた光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置に投影レンズが移動されれば、BUTの計測を比較的容易に行うことができる。或いは、被検眼を撮像した画像若しくは任意の画像が、投影部により投影されると共に、投影部から発せられた光が被検眼の網膜に結像される位置に投影レンズが移動されれば、涙液表面の観察を比較的容易に行うことができる。
【0026】
尚、移動手段は、手動により投影レンズが移動される構成であってもよいし、機械的・自動的に投影レンズが移動される構成であってもよい。また、移動手段は、投影レンズそのものを移動する構成であってもよいし、投影部全体を移動することにより、結果として投影レンズが移動する構成であってもよい。
【0027】
この態様では、移動手段は、投影レンズの位置が、投影部から発せられた光が被検眼の網膜に結像される位置と、投影部から発せられた光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置とを、周期的且つ交互にとるように、投影レンズを移動してよい。
【0028】
このように構成すれば、例えばプラチド板を用いないBUTの計測を、被験者自身が行うことができる。
【0029】
具体的には例えば、先ず、投影レンズが投影部から発せられた光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置にある場合に、投影部から多重リングパターンの画像が投影され、投影レンズが投影部から発せられた光が被検眼の網膜に結像される位置にある場合に、投影部から被検眼を撮像した画像が投影されるものとする。そして、例えば60分の1秒毎等、被験者が画像の切り替えを認識できない程度に高速に、投影レンズの位置が移動手段により移動されれば、プラチド板を用いないBUTの計測を、被験者自身が行うことができる。
【0030】
実施形態に係る観察装置の他の態様では、投影部は、該投影部から発せられた光として、画像を投影する投影光を発する。ここでは特に、当該観察装置は、投影レンズ、対物レンズ及び被検眼を結ぶ光路上に配置され、投影された画像の内周部に対応する投影光を被検眼の網膜に結像すると共に、該投影された画像の外周部に対応する投影光を被検眼の角膜表面近傍に結像するレンズを更に備える。
【0031】
この態様によれば、例えば、外周部に多重リングパターンが描かれ、内周部に風景が描かれた画像が、投影部により投影されれば、被検眼の動きを抑制しつつ、プラチド板を用いずにBUTの計測を行うことができる。或いは、外周部が白ベタにされ、内周部に風景が描かれた画像が、投影部により投影されれば、被検眼の動きを抑制しつつ、涙液表面の観察を行うことができる。更に、画像の内周部に、被検眼を撮像した画像を含めれば、BUTの計測又は涙液表面の観察を、被験者自身が行うことができる。
【0032】
実施形態に係る観察装置の他の態様では、投影部は、該投影部から発せられた光として、画像を投影する投影光を発する。ここでは特に、対物レンズには、投影された画像の内周部に対応する投影光が被検眼の網膜に結像されると共に、投影された画像の外周部に対応する投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像されるような開口が設けられている。
【0033】
この態様によれば、上述した態様と同様に、被検眼の動きを抑制しつつ、プラチド板を用いないBUTの計測又は涙液表面の観察を行うことができる。更に、画像の内周部に、被検眼を撮像した画像を含めれば、BUTの計測又は涙液表面の観察を、被験者自身が行うことができる。ここでは、開口が設けられた対物レンズを用いればよいので、当該観察装置の部品点数の増加や光学系の複雑化を防止することができ、実用上非常に有利である。
【実施例】
【0034】
本発明の観察装置に係る実施例を、図面に基づいて説明する。
【0035】
<第1実施例>
本発明の観察装置に係る第1実施例について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
【0036】
図1において、観察装置100は、プロジェクタ10、ビームスプリッタ20、対物レンズ30、カメラ40及び投影画像制御装置50を備えて構成されている。実施例に係る「プロジェクタ10」及び「カメラ40」は、夫々、本発明に係る「投影部」及び「撮像部」の一例である。
【0037】
プロジェクタ10は、表示素子11、投影レンズ12及び投影絞り13を備えて構成されている。表示素子11は、空間光変調器としての、例えば液晶パネル等を有している。例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる投影画像制御装置50により、表示素子11が制御されることにより、例えばカメラ40により撮像された被検眼の画像、多重リングパターンの画像、風景の画像、単一色の画像等が、プロジェクタ10により投影される。
【0038】
カメラ40は、撮像レンズ41及び受光素子42を備えて構成されている。カメラ40は、投影画像制御装置50と接続されており、例えば受光素子42の出力信号が、該投影画像制御装置50に送信される。
【0039】
尚、図1において、投影レンズ12、対物レンズ13及び撮像レンズ41は、夫々単一のレンズとして描かれているが、複数枚の凸レンズや凹レンズが組み合わされて構成されていてよい。
【0040】
プロジェクタ10の表示素子11から発せられた光(以降、適宜“投影光”と称する)は、投影レンズ12、投影絞り13、ビームスプリッタ20及び対物レンズ30を介して、被検眼の角膜の曲率半径の中心(図示せず)に集光される(図1中の実線参照)。被検眼の角膜で反射された光は、対物レンズ30、ビームスプリッタ20、撮像レンズ41を介して、受光素子42に入射する(図1中の点線参照)。
【0041】
尚、投影光が、被検眼の角膜の曲率半径の中心に集光されることにより、投影光を角膜に対してほぼ垂直に入射させることができる。
【0042】
本実施例では特に、投影光(即ち、投影画像)が被検眼の網膜に結像されるように、投影レンズ12が配置されている。ここで、投影画像を被検眼の網膜に結像させるためには、対物レンズ30の前側主点から前側焦点距離だけ離れた位置近傍(図1における破線a参照)に一旦結像させることになる。つまり、プロジェクタ10のピントは、図1における破線aに合っている。この場合、被検眼の角膜表面では、プロジェクタ10のピントが大きくずれているため、該角膜表面はほぼ一様な強度の光で照らされる(所謂、ケーラー照明)。
【0043】
ここで、本実施例では、表示素子11全体(即ち、面光源)から発せられた光が、1点に集束することを「集光」と呼んでいる。表示素子11を構成する複数の画素各々(即ち、点光源)から発せられた光が、集束することを「結像」と呼んでいる。
【0044】
本実施例に係る観察装置100によれば、先ず、プロジェクタ10の投影光を用いて被検眼の涙液表面の観察を行うことができる。次に、カメラ40により撮像された被検眼の画像が、プロジェクタ10により投影されれば、被験者が自身の被検眼の涙液表面を観察することができる。
【0045】
尚、カメラ40を、ここでは図示しないテレビモニタ等にも接続し、例えば眼科医等が涙液表面の観察を行ってもよい。この場合、被験者の緊張を緩和するため、及び観察中の被検眼の動きを抑制するために、プロジェクタ10により、例えば風景等の任意の画像や映像が投影されてよい。
【0046】
投影絞り13は、その開口の大きさが変更可能に構成されている。このため、投影光を被検眼の角膜に対してより垂直に投影される光だけに絞ることも可能である。
【0047】
<第2実施例>
本発明の観察装置に係る第2実施例について、図2を参照して説明する。第2実施例では、投影レンズの位置が異なる以外は、上述した第1実施例と同様である。よって、第2実施例について、第1実施例と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図2を参照して説明する。図2は、第2実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
【0048】
第2実施例に係る観察装置200では、投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像されるように、投影レンズ12が配置されている。このため、対物レンズ30の後側主点から後側焦点距離だけ離れた位置近傍(図2における破線b参照)に、プロジェクタ10のピントが合っている。
【0049】
プロジェクタ10により、例えば多重リングパターンの画像が投影されると、被検眼の角膜表面に多重リングパターンが現れるので、プラチド板を用いることなくBUTの計測をすることができる。
【0050】
ここで、投影絞り13の開口が変更可能に構成されているため、該開口を変更することにより、角膜の曲率に起因して、被検眼の黒眼の外周部のリングパターンのボケを抑制することができる。この結果、比較的鮮明なリングパターンが現れた被検眼の画像をカメラ40により撮像することができ、実用上非常に有利である。
【0051】
或いは、プロジェクタ10により、例えば白ベタの画像が投影されると、被検眼の涙液表面が一様に照らされるので、涙液表面の観察をすることができる。
【0052】
以上の結果、本実施例に係る観察装置200一台により、BUTの計測と涙液表面の観察とを実施することができる。
【0053】
<第3実施例>
本発明の観察装置に係る第3実施例について、図3を参照して説明する。第3実施例では、投影レンズの位置が変更可能に構成されている以外は、上述した第1実施例と同様である。よって、第3実施例について、第1実施例と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図3を参照して説明する。図3は、第3実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
【0054】
第3実施例に係る観察装置300は、投影レンズ12を光軸方向に沿って移動可能な投影レンズ移動機構51を備えて構成されている。
【0055】
投影レンズ移動機構51は、投影レンズ12の位置が、投影光が被検眼の網膜に結像される位置(図3において実線で描かれた投影レンズ12の位置参照)と、投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置(図3において破線で描かれた投影レンズ12´の位置参照)との間で変化するように、投影レンズ12を移動する。投影レンズ移動機構51は、手動により投影レンズ12が移動される構成であってもよいし、操作者の指示に従って、自動的に投影レンズ12が移動される構成であってもよい。
【0056】
投影レンズ移動機構51は、投影画像制御装置50に接続されている。該投影画像制御装置50は、投影レンズ移動機構51から出力される、投影レンズ12の位置を示す信号に基づいて、表示素子11に表示される画像を変更する。
【0057】
具体的には例えば、投影レンズ12が、投影光が被検眼の網膜に結像される位置にある場合、投影画像制御装置50は、カメラ40により撮像された被検眼の画像、或いは、風景等の任意の画像が、表示素子11に表示されるように該表示素子11を制御する。この結果、プラチド板を用いることなくBUTの測定を、被験者自身が、又は、眼科医等の被験者とは異なる人物が、行うことができる。
【0058】
他方、投影レンズ12が、投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置にある場合、投影画像制御装置50は、多重リングパターンの画像が、表示素子11に表示されるように該表示素子11を制御する。この結果、涙液表面の観察を行うことができる。
【0059】
尚、投影レンズ12の位置が、投影光が被検眼の網膜に結像される位置である場合に可視光を出力し、投影レンズ12の位置が、投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置である場合に赤外光を出力するように、プロジェクタ10を構成してもよい。
【0060】
また、投影レンズ移動機構51が、プロジェクタ10全体を光軸方向に沿って移動することにより、投影レンズ12の位置を変更するように、該投影レンズ移動機構51を構成してもよい。
【0061】
<第4実施例>
本発明の観察装置に係る第4実施例について、図4を参照して説明する。第4実施例では、投影レンズ移動機構が比較的高速に投影レンズを移動するように構成されている以外は、上述した第3実施例と同様である。よって、第4実施例について、第3実施例と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図4を参照して説明する。図4は、第4実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
【0062】
第4実施例に係る観察装置310は、例えば60分の1秒毎等、被験者が画像の切り替えを認識できない程度に高速な周期で、投影レンズ12が、投影光が被検眼の網膜に結像される位置と投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置とを交互にとるように、投影レンズ12を移動する投影レンズ移動機構51aを備えて構成されている。
【0063】
投影画像制御装置50は、投影レンズ12が、投影光が被検眼の網膜に結像される位置にある場合、カメラ40により撮像された被検眼の画像が、表示素子11に表示されるように該表示素子11を制御し、投影レンズ12が、投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像される位置にある場合、多重リングパターンの画像が、表示素子11に表示されるように該表示素子11を制御する。この結果、プラチド板を用いないBUTの計測を、被験者自身が行うことができる。
【0064】
尚、被験者自身がBUTの計測を行わない場合、投影画像制御装置50は、投影レンズ12が、投影光が被検眼の網膜に結像される位置にあるときに、例えば風景等の任意の画像が、表示素子11に表示されるように該表示素子11を制御する。このように構成すれば、被験者の緊張を緩和することができると共に、計測中の被検眼の動きを抑制することができる。
【0065】
また、結像位置の切り替えは、必ずしも周期的且つ交互である必要はなく、非周期による切り替えであってもよい。
【0066】
<第5実施例>
本発明の観察装置に係る第5実施例について、図5を参照して説明する。第5実施例では、光学系の一部が異なる以外は、上述した第2実施例と同様である。よって、第5実施例について、第2実施例と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図5を参照して説明する。図5は、第5実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
【0067】
第5実施例に係る観察装置400では、投影レンズ12は、上述した第2実施例と同様に、投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像されるように配置されている。つまり、プロジェクタ10自体のピントは、対物レンズ30の後側主点から後側焦点距離だけ離れた位置近傍(図5における破線b参照)に合っている。
【0068】
第2実施例に係る観察装置200は、上述の如く、プラチド板を用いることなくBUTの計測が可能ではあるが、被験者自身がBUTの計測を行うことはできない。
【0069】
そこで、本実施例に係る観察装置400は、プロジェクタ10、対物レンズ30及び被検眼を結ぶ光路上に、プロジェクタ10により投影された画像の内周部に対応する光を、被検眼の網膜に結像するケーラー照明レンズ60を更に備えている。
【0070】
ケーラー照明レンズ60は、投影された画像の外周部に対応する光が被検眼の角膜表面近傍に結像されるように、該投影された画像の外周部に対応する光に干渉しないような大きさに設定されている。
【0071】
尚、「投影された画像の内周部に対応する光」とは、理想的には、被検眼の瞳孔部分を照明する(透過する)光を意味するが、実践上該瞳孔部分を照明しているとみなせる限りにおいて、該瞳孔部分よりも多少広い範囲又は狭い範囲を照明する光を意味してかまわない。「投影された画像の外周部に対応する光」とは、投影光のうち、投影された画像の内周部に対応する光以外の光を意味する。
【0072】
ケーラー照明レンズ60は、投影された画像の内周部に対応する光を、被検眼の網膜に結像させるために、対物レンズ30の前側主点から前側焦点距離だけ離れた位置近傍(図5における破線a参照)に一旦結像させる。つまり、ケーラー照明レンズ60は、投影された画像の内周部についてのピントを、図5における破線aに合わせる。
【0073】
表示素子11に表示される画像(つまり、投影される画像)を、カメラ40により撮像された被検眼の画像の周囲に、例えば多重リングパターンが描かれた画像とすれば、ケーラー照明レンズ60の作用により、投影された画像の内周部に対応する被検眼の画像が、該被検眼の網膜に結像される。他方で、ケーラー照明レンズ60を介さない、投影された画像の外周部に対応する多重リングパターンが、被検眼の角膜表面近傍に結像される。この結果、プラチド板を用いないBUTの計測を、被験者自身が行うことができる。
【0074】
尚、上述した第4実施例に係る観察装置310でも被験者自身がBUTの計測を行うことはできるが、該観察装置310に比べて、本実施例に係る観察装置400は、駆動機構である投影レンズ移動機構51aがないため、装置の不具合の発生確率を低減することができると共に、小型化、軽量化を図ることができる。
【0075】
カメラ40により撮像された被検眼の画像を、例えば眼科医等、被験者以外の人物が観察することにより、BUTの計測が行われる場合には、例えば風景等の任意の画像が、投影された画像の内周部に対応する画像として採用されてよい。
【0076】
<第6実施例>
本発明の観察装置に係る第6実施例について、図6を参照して説明する。第6実施例では、光学系の一部が異なる以外は、上述した第2実施例と同様である。よって、第6実施例について、第2実施例と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図6を参照して説明する。図6は、第6実施例に係る観察装置の光学系の概要を示す概念図である。
【0077】
第6実施例に係る観察装置500では、投影レンズ12は、上述した第2実施例と同様に、投影光が被検眼の角膜表面近傍に結像されるように配置されている。つまり、プロジェクタ10自体のピントは、対物レンズ30の後側主点から後側焦点距離だけ離れた位置近傍(図6における破線b参照)に合っている。
【0078】
第2実施例に係る観察装置200は、上述の如く、プラチド板を用いることなくBUTの計測が可能ではあるが、被験者自身がBUTの計測を行うことはできない。
【0079】
そこで、本実施例に係る観察装置500は、プロジェクタ10により投影された画像の内周部に対応する光が被検眼の網膜に結像されるように、対物レンズ31に開口32が設けられている。つまり、投影レンズ12は、対物レンズ31の開口32以外を介する投影光が被検眼の角膜表面に結像されると共に、対物レンズ31の開口32を通過する投影光が被検眼の網膜に結像されるように、配置されている。
【0080】
表示素子11に表示される画像(つまり、投影される画像)を、カメラ40により撮像された被検眼の画像の周囲に、例えば多重リングパターンが描かれた画像とすれば、投影された画像の内周部に対応する被検眼の画像が該被検眼の網膜に結像されると共に、投影された画像の外周部に対応する多重リングパターンが被検眼の角膜表面近傍に結像される。この結果、プラチド板を用いないBUTの計測を、被験者自身が行うことができる。
【0081】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う観察装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
10…プロジェクタ、11…表示素子、12…投影レンズ、13…投影絞り、20…ビームスプリッタ、30、31…対物レンズ、40…カメラ、41…撮像レンズ、42…受光素子、50…投影画像制御装置、51、51a…投影レンズ移動機構、60…ケーラー照明レンズ、100、200、300、310、400、500…観察装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6