【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年 6月20日岡山コンベンションセンター(岡山県岡山市北区駅元町14番1号)において開催された第9回ICME国際複合医工学会議―CME2015で発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2015年1月27日、日本国の厚生労働省は、日本全国で認知症を患う人の数が2025年には700万人を超えるとの推計値を発表した。この推計値は、日本国において、2025年の時点で、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症に罹患する計算となる。また、上記の発表によると、認知症を患っている高齢者の人数は、2012年の時点で、日本全国で約462万人と推計されている。従って、2015年から10年経過すると、認知症の高齢者の人数は、現在の1.5倍にも増える見通しである。
【0006】
なお、認知症とは、脳の器質的障害によって、発育過程で獲得した種々の精神機能が障害され、このことにより、独立した日常生活及び社会生活や、円滑な人間関係を営めなくなる状態をいう。また、本明細書中において、「認知症」の文言は、アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー病、又は、ADともいう。)、レビー小体型認知症等の各種の認知症を含む概念である。さらに、障害を受ける精神機能としては、知能、記憶、判断力、理解力、抽象能力、言語、行為能力、認識、見当識、感情、意欲、性格等がある。
【0007】
そして、人の脳には、大脳半球の表層を形成する灰白質である大脳皮質が存在する。大脳皮質の大部分は、新皮質であり、思考や言語等の高次機能を担う中枢が局在する。また、灰白質には、神経細胞が集まっている。そのため、脳表又は脳表に近い層の血流量を測定することは、認知症の鑑別や治療効果の判定に有用であると考えられる。一方で、脳表又は脳表に近い層に対する定量的な血流量の画像に関する研究報告等は未だ見受けられない。
【0008】
従って、脳のCT画像を取得し、取得したCT画像から脳表又は脳表に近い層の血流量の画像を作成することができれば、当該血流量の画像を用いて、認知症の鑑別や治療をより効果的に行えることが期待される。
【0009】
ところが、従来のキセノンCT装置では、所定方向(被検体の体軸方向、被検体の前後方向、被検体の左右方向)に直交する断層画像をCT画像として取得する。そのため、脳のCT画像について、所定方向に沿って順に見ていくと、比較的早い層で脳室の写り込んだCT画像を視認することになる。
【0010】
そのため、CT画像を用いて脳キセノン濃度を求め、求めた脳キセノン濃度に基づき脳の血流量を求める場合、医師等のオペレータは、CT画像を見ながらキセノンCT装置を操作し、脳室を除外したCT画像のデータ(CT画素データ)を用いて脳の血流量を計算するよう指示する。すなわち、脳室が含まれた状態では、脳の血流量の評価が難しくなり、解析が困難になるためである。従って、大脳や小脳等の脳実質のみで血流量を評価できることが望ましい。
【0011】
しかしながら、オペレータにとり、CT画像から脳室を除外する作業は煩わしい。また、当該作業は、オペレータの技量に左右される。そのため、同じ被検体のCT画像であっても、オペレータによって、血流量の算出精度にバラツキが生じる可能性がある。
【0012】
さらに、近時、コーンビームCT装置の出現により、被検体を中心として、放射線源及び放射線検出器を1回転させながら放射線源から放射線検出器に向けて放射線を照射することにより、1回の放射線撮影のみで脳全体のCT画像を短時間で取得することが可能になってきている。そのため、被検体の被曝量低減の観点からも、コーンビームCT装置を用いて被検体の脳のCT画像を取得し、取得したCT画像を用いて脳の血流量を精度良く算出できることが望ましい。
【0013】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、オペレータの作業負担を軽減すると共に、オペレータに依存することなく、被検体の脳の血流量を精度良く算出でき、さらには、被検体の被曝量の低減も実現可能なキセノンCT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ガス供給装置、CT装置本体及びデータ処理装置を備えるキセノンCT装置に関する。前記ガス供給装置は、被検体にキセノンガスを供給する。前記CT装置本体は、前記被検体の脳のCT画像を取得する。前記データ処理装置は、前記CT画像に基づいて前記脳のキセノン濃度である脳キセノン濃度を求め、前記脳キセノン濃度に基づいて前記脳の血流量を求める。
【0015】
そして、上記の目的を達成するため、本発明に係るキセノンCT装置において、前記CT装置本体は、コーンビームCT装置であり、前記データ処理装置は、画像作成部を有する。
【0016】
すなわち、前記CT装置本体は、前記被検体を中心として、放射線源及び放射線検出器を少なくとも1回転させながら前記放射線源から前記放射線検出器に向けて放射線を照射することにより、所定方向に直交する前記脳の断層画像であって、且つ、第1スライス厚の第1CT画像を、前記所定方向に沿って複数取得するコーンビームCT装置である。
【0017】
また、前記画像作成部は、前記CT装置本体から前記各第1CT画像を取得し、前記所定方向に沿った積層状態の前記各第1CT画像を用いて、前記脳の脳表に沿った断層画像であって、且つ、第2スライス厚の第2CT画像を、前記所定方向に沿って複数作成する。
【0018】
このように、前記脳表に沿った第2CT画像を作成することにより、前記脳表に近い層から前記所定方向に沿って順に第2CT画像を見た場合、前記脳表から相当離れた層において脳室の写り込んだ第2CT画像を視認することができる。すなわち、大部分の第2CT画像、特に、大脳や小脳等の脳実質が写り込む前記脳表に近い層の第2CT画像は、前記脳室の写り込まない断層画像となる。
【0019】
これにより、前記脳実質のみで当該脳を評価することが可能となる。また、CT画像から前記脳室を除外する作業が不要となるため、オペレータの作業負担を軽減することができる。この結果、前記オペレータに依存することなく、前記脳室の写り込んでいない第2CT画像を作成できるので、当該第2CT画像を用いることにより、前記被検体の脳の血流量を精度良く算出することが可能となる。さらに、前記第2CT画像は、前記コーンビームCT装置本体による少なくとも1回の放射線撮影により取得された前記第1CT画像に基づく断層画像であるため、前記被検体の被曝量の低減を図ることもできる。
【0020】
ここで、前記画像作成部は、下記のようにして、前記各第2CT画像を作成すればよい。
【0021】
先ず、前記画像作成部は、前記脳表に最も近い第2CT画像を第1層の第2CT画像とした場合、前記所定方向から積層状態の前記各第1CT画像を見たときに、当該所定方向から視認可能な前記各第1CT画像の画素を用いて、前記第1層の第2CT画像を作成する。
【0022】
一方、第2層以降の第2CT画像、すなわち、mを1以上の整数としたときに、前記所定方向に沿って前記脳表から離れた第(m+1)層の第2CT画像を作成する場合、前記画像作成部は、最初に、積層状態の前記各第1CT画像の中から、第1層から第m層までの各第2CT画像の作成に用いた画素を取り除く。次に、前記画像作成部は、取り除いた状態の前記各第1CT画像を前記所定方向から見たときに、当該所定方向から視認可能な前記各第1CT画像の画素を用いて、前記第(m+1)層の第2CT画像を作成する。
【0023】
このように、本発明では、1つ前の層までに使用した画素(前記第1層から前記第m層までの第2CT画像の作成に使用した前記各第1CT画像の画素)を、積層状態の前記各第1CT画像から取り除き、残余の前記各第1CT画像の画素を用いて前記第(m+1)層の第2CT画像を作成する。これにより、第1層から順に第2CT画像を容易に且つ効率良く作成することが可能となる。
【0024】
また、前記データ処理装置は、パラメータ決定部及び血流量算出部をさらに備える。
【0025】
前記パラメータ決定部は、前記各第1CT画像の層毎に、該当する層の前記第1CT画像のCT値を用いて、前記脳キセノン濃度を求め、求めた前記脳キセノン濃度の経時変化に基づいて、前記脳の動脈中の血流のキセノン濃度の速度定数と、前記脳の組織と前記血流との間のキセノン濃度の分配係数とを、前記各第1CT画像の層毎に決定する。前記血流量算出部は、前記脳キセノン濃度、前記速度定数及び前記分配係数を用いて、前記血流量を前記各第1CT画像の層毎に算出する。
【0026】
この場合、前記画像作成部は、下記のようにして、前記第1CT画像及び前記第2CT画像に応じた、前記分配係数の画像及び前記血流量の画像を作成する。
【0027】
先ず、前記画像作成部は、前記所定方向に直交する前記分配係数の断層画像である第1分配係数画像を前記第1CT画像の層毎に作成し、一方で、前記所定方向に直交する前記血流量の断層画像である第1血流量画像を前記第1CT画像の層毎に作成する。
【0028】
次に、前記画像作成部は、前記所定方向から積層状態の前記各第1分配係数画像及び前記各第1血流量画像を見たときに、当該所定方向から視認可能な前記各第1分配係数画像及び前記各第1血流量画像の画素を用いて、前記脳表に沿い且つ前記第1層の第2CT画像に応じた当該第1層の第2分配係数画像及び第2血流量画像をそれぞれ作成する。
【0029】
最後に、前記画像作成部は、前記所定方向に沿って前記脳表から離れた第(m+1)層の第2分配係数画像及び第2血流量画像をそれぞれ作成する場合、積層状態の前記各第1分配係数画像及び前記各第1血流量画像の中から、第1層から第m層までの各第2分配係数画像及び各第2血流量画像の作成に用いた画素を取り除く。そして、前記画像作成部は、取り除いた状態の前記各第1分配係数画像及び前記各第1血流量画像を前記所定方向から見たときに、当該所定方向から視認可能な前記各第1分配係数画像及び前記各第1血流量画像の画素を用いて、前記第(m+1)層の第2分配係数画像及び第2血流量画像をそれぞれ作成する。
【0030】
このように、前記画像作成部は、前記第1CT画像を用いて前記第1分配係数画像及び前記第1血流量画像を作成し、前記第2CT画像と同様の作成方法で、前記第1分配係数画像及び前記第1血流量画像から前記第2分配係数画像及び前記第2血流量画像をそれぞれ作成する。これにより、前記第2分配係数画像及び前記第2血流量画像は、前記脳室の影響を受けない画像となるため、前記第2分配係数画像及び前記第2血流量画像の画素値を用いて、層毎の前記分配係数及び前記血流量(の平均値)を容易且つ精度良く求めることができる。
【0031】
また、このように作成された前記第2血流量画像及び前記第2分配係数画像は、それぞれ、前記脳室の影響を受けず、且つ、前記脳表又は前記脳表に近い層に対する定量的な血流量及びキセノン濃度の分配係数の画像である。従って、本発明では、前記被検体の脳の第1CT画像から前記第2血流量画像及び前記第2分配係数画像をそれぞれ作成し、作成した前記第2血流量画像及び前記第2分配係数画像を前記被検体の認知症の鑑別又は治療に利用することが可能となる。
【0032】
また、前記データ処理装置は、前記各第2分配係数画像及び前記各第2血流量画像の層毎に前記分配係数及び前記血流量の散布図を作成し、当該各散布図に四分円を設けて、前記各散布図中の前記分配係数及び前記血流量のデータが前記四分円の内側又は外側のどちらにプロットされているのかを判定するプロット判定部をさらに備える。
【0033】
このように、前記脳室を除外した前記第2CT画像に基づく前記分配係数及び前記血流量の散布図を用いて判定することにより、前記被検体の脳を定量的に評価できると共に、当該脳の状態を容易に診断することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、脳表に沿った第2CT画像を作成することにより、脳表に近い層から所定方向に沿って順に第2CT画像を見た場合、脳表から相当離れた層において脳室の写り込んだ第2CT画像を視認することができる。すなわち、大部分の第2CT画像、特に、大脳や小脳等の脳実質が写り込む脳表に近い層の第2CT画像は、脳室の写り込まない断層画像となる。
【0035】
これにより、脳実質のみで当該脳を評価することが可能となる。また、CT画像から脳室を除外する作業が不要となるため、オペレータの作業負担を軽減することができる。この結果、オペレータに依存することなく、脳室の写り込んでいない第2CT画像を作成できるので、当該第2CT画像を用いることにより、被検体の脳の血流量を精度良く算出することが可能となる。さらに、第2CT画像は、コーンビームCT装置本体による少なくとも1回の放射線撮影により取得された第1CT画像に基づく断層画像であるため、被検体の被曝量の低減を図ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係るキセノンCT装置の好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0038】
[1.本実施形態の構成]
図1及び
図2は、本実施形態に係るキセノンCT装置10の全体的構成を示し、
図3は、キセノンCT装置10の概略ブロック図を示す。
【0039】
キセノンCT装置10は、
図1〜
図3に示すように、人等の被検体12に対するキセノンCT検査を行うための装置であり、基本的には、被検体12の断層画像(キセノンCT画像)を得るX線CT装置14と、被検体12にキセノン(Xe)及び酸素(O
2)の混合ガスを供給する混合ガス供給装置16とから構成される。
【0040】
X線CT装置14は、X線CT装置本体18と、該X線CT装置本体18を制御すると共に混合ガス供給装置16を制御する制御装置20とから構成される。制御装置20は、X線CT装置本体18により得られた、被検体12中の組織のCT画像(を構成するCT画素データ)等を処理するデータ処理装置としても機能する。なお、制御装置20を、X線CT装置本体18を制御する制御装置と、混合ガス供給装置16を制御する制御装置とに物理的に分離して構成することもできる。
【0041】
X線CT装置本体18には、被検体12を載せた状態で矢印AB方向に移動される移動テーブル22が上面に配置された被検体載せ台24と、円筒状の開口26が形成されたガントリ28とが備えられている。ガントリ28には、その円筒状の開口26の回りを、例えば、矢印a方向に旋回するように構成されたX線管(放射線源)30と、開口26の回りの円周上に配置された複数の検出器からなる検出器(放射線検出器)32とが配されている。
【0042】
なお、X線CT装置本体18は、被検体12を中心として、X線管30及び検出器32を矢印a方向に少なくとも1回転させながらX線管30から検出器32に向けてX線(放射線)を照射することにより、被検体12の脳34のCT画像を1回のX線CT撮影で取得可能なコーンビームCT装置(例えば、東芝メディカルシステムズ株式会社製 Aquilion ONE(登録商標))である。また、以下の説明において、X線CT装置本体18が取得したCT画像を第1CT画像と呼称する場合がある。
【0043】
一方、混合ガス供給装置16は、キセノンガスボンベ36及び酸素ガスボンベ38と、これらからのキセノンガス及び酸素ガスを内部のコンピュータ40の制御の下に混合する吸入装置本体42と、この吸入装置本体42に一端側が接続され、且つ、他端側が呼吸用マスク44に接続される導管46とを有している。
【0044】
この場合、導管46は、吸気管46aと呼気管46b及び呼吸用マスク導管46cとから構成されている。そして、呼吸用マスク44にはキセノン濃度測定センサ48が取り付けられ、該キセノン濃度測定センサ48の検出信号がコンピュータ40に供給され、コンピュータ40により呼気中のキセノン濃度が計算されるようになっている。
【0045】
混合ガス供給装置16の全体動作を制御するコンピュータ40は、制御装置20と電気的に接続され、相互に通信を行うように構成されている。
【0046】
X線CT装置14の制御装置20は、データ処理装置の中心的機能を担うコンピュータ50を有する。コンピュータ50は、X線CT装置本体18及び混合ガス供給装置16の動作を制御すると共に、ガントリ28内の検出器32により検出された、被検体12の被検査部位のCT画像(本実施形態では脳34の第1CT画像)を構成するCT画素データを処理することにより、後述する第2CT画像等を作成する。
【0047】
コンピュータ50には、さらに、マウス52や図示しないキーボードを有する操作コンソール54と、光磁気ディスク装置や磁気ディスク装置等の外部記憶装置56と、液晶ディスプレイやカラーCRT等の表示装置58と、プリンタ60とが接続されている。
【0048】
キセノンCT装置10において、実際上、操作コンソール54は、表示装置58の画面上に表示され、マウス52により操作されるマウスポインタにより画面上の該当表示をクリックすることで、該当表示が示す処理の実行を指示する。
【0049】
表示装置58上には、後述するように、コンピュータ50による処理を通じて、X線CT装置本体18により得られたCT画素データに基づく脳34の断層画像(第1CT画像、第2CT画像)等がカラー又はモノクロームで表示される。また、表示装置58には、脳34の血流量f(以下、脳血流量fともいう。)の分布の画像(CBF画像である第1血流量画像、第2血流量画像)や、脳34の組織と血液との間のキセノン分配係数λの分布の画像(第1分配係数画像、第2分配係数画像)が表示される。また、表示装置58の画面上に表示された画像は、制御装置20に内蔵されたプリンタ60によりプリントアウトし、カラー又はモノクロームのハードコピー62として出力することができる。
【0050】
コンピュータ50は、画像作成部64、パラメータ決定部66、血流量算出部68及びプロット判定部70を有する。
【0051】
画像作成部64は、X線CT装置本体18から脳34の第1CT画像のCT画素データを取得する。第1CT画像は、所定方向に直交し且つ第1スライス厚d1を有する断層画像である。具体的に、第1CT画像は、(1)矢印AB方向(被検体12の体軸方向)から見た脳34のアキシャル像(体軸方向に沿った上面視又は底面視のCT画像)、(2)脳34のコロナル像(被検体12に対して前面視及び背面視のCT画像)、(3)脳34のラテラル像(被検体12に対して右側面視及び左側面視のサジタル像のCT画像)である。そして、所定方向とは、アキシャル像であれば体軸方向(矢印AB方向)であり、コロナル像であれば被検体12に対する前後方向であり、サジタル像であれば被検体12に対する左右方向である。また、第1スライス厚d1とは、X線CT装置本体18が被検体12に対してX線CT撮影を行う際のスライス幅をいい、例えば、d1=0.5mm以上の任意の幅、具体的には、d1=5mmであることが好ましい。
【0052】
そこで、画像作成部64は、所定方向に沿って積層された複数の第1CT画像を用いて、脳34の脳表に沿った断層画像であって、且つ、第2スライス厚d2の第2CT画像を、当該所定方向に沿って複数作成する。なお、第2スライス厚d2は、第1スライス厚d1と同じスライス幅であるか、又は、第1スライス幅d1の整数倍のスライス幅であることが好ましい。
【0053】
パラメータ決定部66は、所定方向に沿った第1CT画像の層毎に、該当する層の第1CT画像を構成するCT画素データのCT値(ハウンスフィールドユニット[HU])ΔCTを用いて、脳34の組織中のキセノン濃度C(t)(以下、脳キセノン濃度C(t)ともいう。)を求める。そして、パラメータ決定部66は、脳キセノン濃度C(t)の経時変化に基づいて、脳34の動脈中の血流のキセノン濃度の速度定数Ka(以下、動脈血速度定数Kaともいう。)とキセノン分配係数λとを、第1CT画像の層毎に決定する。
【0054】
血流量算出部68は、第1CT画像の層毎に求められた脳キセノン濃度C(t)、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを用いて、脳血流量fを第1CT画像の層毎に算出する。
【0055】
その上で、画像作成部64は、パラメータ決定部66で第1CT画像の層毎に決定されたキセノン分配係数λを用いて、キセノン分配係数λの断層画像である第1分配係数画像を第1CT画像の層毎に作成する。次に、画像作成部64は、第2CT画像と同様の作成方法で、各第1分配係数画像から、第2CT画像に応じた第2分配係数画像を、当該第2CT画像の層毎に作成する。
【0056】
また、画像作成部64は、血流量算出部68で第1CT画像の層毎に算出された脳血流量fを用いて、脳血流量fの断層画像である第1血流量画像を第1CT画像の層毎に作成する。次に、画像作成部64は、第2CT画像及び第2分配係数画像と同様の作成方法で、各第1血流量画像から、第2CT画像及び第2分配係数画像に応じた第2血流量画像を、当該第2CT画像の層毎に作成する。
【0057】
プロット判定部70は、キセノン分配係数λ及び脳血流量fについて、第2分配係数画像及び第2血流量画像の層毎の散布図を作成し、当該散布図に四分円を設けて、散布図中のキセノン分配係数λ及び脳血流量fのデータが四分円の内側又は外側のどちらにプロットされているのかを判定する。
【0058】
なお、コンピュータ50内の各部の具体的な処理、特に、第2CT画像、第2分配係数画像、第2血流量画像、及び、散布図の各作成処理については、後述する。
【0059】
[2.本実施形態の基本的な動作]
次に、本実施形態に係るキセノンCT装置10の基本的な動作について、
図4及び
図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。フローチャートの制御主体はコンピュータ50である。なお、
図4のステップS1〜S11、S13の各ステップは、特許文献1のキセノンCT装置と概ね同じ動作であり、一方で、ステップS12は、本実施形態の特徴的なステップ(
図5のステップS21〜S27)である。また、この動作説明では、必要に応じて、
図1〜
図3も参照しながら説明する。
【0060】
先ず、ステップS1において、医師等のオペレータが
図3の操作コンソール54を操作し、
図1及び
図2に示すように、被検体載せ台24上に被検体12を載せた状態で移動テーブル22を矢印B方向に移動させ、被検体12の脳34の断層画像が撮影できる位置で停止させる。次のステップS2では、呼吸用マスク44が被検体12の口及び鼻部を覆うように取り付けられる。
【0061】
ステップS3では、
図2の測定可能状態において、操作コンソール54が操作されることで、制御装置20のコンピュータ50からの測定開始指令が混合ガス供給装置16のコンピュータ40及びX線CT装置本体18にそれぞれ送られる。これにより、ステップS4において、X線CT装置本体18による脳34の断層画像、いわゆるベースラインCT画像が撮影されて外部記憶装置56に取り込まれる。
【0062】
なお、ベースラインCT画像は、
図6中、被検体12への混合ガスの送出が開始される直前(例えば、t=0min前)において、X線CT装置本体18が取得した第1CT画像である。また、第1CT画像は、CT画素データとしてコンピュータ50に取り込まれる。つまり、ベースラインCT画像は、被検体12が混合ガスを吸入する前に、当該被検体12を中心として、ガントリ28中のX線管30及び検出器32が約1sで1回転することにより、体軸方向に沿った約160mmの撮影領域で、X線CT装置本体18により取得された第1CT画像である。
【0063】
次に、混合ガス供給装置16のコンピュータ40による制御の下に、キセノンガスボンベ36及び酸素ガスボンベ38からそれぞれ送出されるキセノンガス及び酸素ガスが吸入装置本体42によりキセノンガス30%及び酸素70%の割合で混合される。混合ガスは、吸気管46a、呼吸用マスク導管46c及び呼吸用マスク44を通じて被検体12の肺に供給される。被検体12の肺を通じて排出される呼気ガスは、呼吸用マスク44、呼吸用マスク導管46c及び呼気管46bを通じて吸入装置本体42に戻される。
【0064】
このとき、ステップS5において、被検体12に対する混合ガスの供給開始時点から、混合ガス中のキセノン濃度が所定値(この場合、30%)となるようにコンピュータ40により混合ガス供給装置16が制御されて測定が開始されることで、吸入過程、いわゆるWash−in(
図6参照)が開始される。なお、呼気中のキセノン濃度の測定は、測定開始時点から、例えば、40ms毎に行われる。
【0065】
次に、ステップS6において、被検体12に対する混合ガスの吸気開始時点(t=0min)から、t=2min、4minの各時点において、ガントリ28中のX線管30からX線が被検体12に対して放射され、被検体12を通過したX線が検出器32により検出されることで脳34の断層画像(第1CT画像)が撮像される。撮影された第1CT画像は、CT画素データとしてコンピュータ50に取り込まれ、外部記憶装置56に記憶される。
【0066】
この場合も、ベースラインCT画像の場合と同様に、t=2min、4minの各時点において、被検体12を中心として、X線管30及び検出器32を約1sで1回転させることにより、体軸方向に沿って約160mmの撮影領域の第1CT画像が取得される。
【0067】
次いで、ステップS7において、コンピュータ50のパラメータ決定部66は、取り込んだCT画素データからCT値ΔCTを各画素毎に抽出する。そして、パラメータ決定部66は、抽出したCT値ΔCTに基づき、脳キセノン濃度C(t)を第1CT画像の画素毎に計算する。なお、本実施形態において、画素の大きさは約0.5mm角としているが、適当な大きさに変更することが可能である。
【0068】
この場合、各画素のキセノン濃度は、移動平均法を用いて計算される。具体的には、複数個(7×7個、9×9個、11×11個等であり、好ましくは、9×9個)の画素で構成された測定領域から画素毎に脳キセノン濃度C(t)を求め、さらに、測定領域全体における脳キセノン濃度C(t)の平均値を、測定領域の例えば中心に位置する画素の脳キセノン濃度C(t)として算出する。そして、測定領域を1画素単位又は複数の画素単位(例えば、測定領域単位である9画素単位)の幅で移動させながら、各画素の脳キセノン濃度C(t)を算出する。
【0069】
次いで、ステップS8において、コンピュータ50は、混合ガスの吸気開始時点からt=4minの時点に到達したか否かを判断する。この場合、t=4minに到達していなければ、コンピュータ50は、脳キセノン濃度C(t)の増加の割合が、予め定めてある所定値より小さくなっておらず、飽和状態に到達していないものと判断し(ステップS8:NO)、ステップS6に戻る。すなわち、t=2minの時点でステップS6の撮影が行われ、ステップS7の処理後、ステップS8の判断処理が行われる場合には、ステップS6に戻り、t=4minの時点でステップS6の撮影が再度行われる。
【0070】
一方、t=4minに到達していた場合、コンピュータ50は、脳キセノン濃度C(t)の増加の割合が、予め定めてある所定値より小さくなり、飽和状態になったものと判断する(ステップS8:YES)。
【0071】
続くステップS9において、コンピュータ50は、洗い出し過程、いわゆるWash−out過程(
図6参照)が済んでいるかどうかの判断を行う。この判断では、t=8minに到達しているか否かで洗い出し過程が終了したか否かを判断する。この場合、コンピュータ50は、t=8minに到達していなければ、洗い出し過程が終了していないと判断し(ステップS9:NO)、ステップS10において、混合ガスの供給を中止し、混合ガスの代わりに通常の空気を送る、いわゆる洗い出し(
図6のWash−out過程)を行う。
【0072】
その後、ステップS6に戻り、t=8minの時点でステップS6以降の処理が再度行われる。洗い出しでX線CT装置本体18が取得したt=8minの時点での第1CT画像も、外部記憶装置56に記憶される。なお、本実施形態では、洗い出し過程中、t=6minの時点でステップS6〜S10の処理を実行し、第1CT画像及び脳キセノン濃度C(t)を取得することも可能である。
【0073】
その後、ステップS9において、混合ガスの吸入開始からt=8minの時点に到達していた場合、コンピュータ50は、洗い出し過程が終了したと判断する(ステップS9:YES)。これにより、ステップS11において、脳キセノン濃度C(t)が所定値以下になったことが確認されるまで、ステップS6、S7の処理を繰り返し行う。
【0074】
そして、脳キセノン濃度C(t)が所定値以下になったとき(ステップS11:YES)、ステップS12において、以下に説明するように、第1CT画像のCT画素データから第2CT画像を作成する。また、ステップS12では、脳キセノン濃度C(t)の経時変化から、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを決定し、決定した動脈血速度定数Kaに基づいて脳血流量fを算出する。さらに、ステップS12では、第1CT画像に応じたキセノン分配係数λの画像(第1分配係数画像)及び脳血流量fの画像(第1血流量画像)を作成する一方で、第2CT画像に応じたキセノン分配係数λの画像(第2分配係数画像)及び脳血流量fの画像(第2血流量画像)を作成する。
【0075】
続くステップS13においては、表示装置58に各種画像の表示を行う一方で、プリンタ60による各種画像のハードコピーを行う。
【0076】
[3.本実施形態の特徴的な動作(ステップS12)]
次に、本実施形態の特徴的な機能であるステップS12の詳細な処理(ステップS21〜S27)について、
図5を参照しながら説明する。ここでは、
図7A〜
図26の各図面を参照しつつ、
図5のステップS21〜S27の処理を説明する。
【0077】
ここで、ステップS21〜S27の説明に先立ち、本実施形態の背景と、従来技術の問題点とについて説明する。
【0078】
[発明が解決しようとする課題]でも説明したように、今後、認知症の高齢者の人数が増加することが推計されている。また、脳の大脳皮質は、灰白質であり、思考や言語等の高次機能を担う中枢が局在している。灰白質には神経細胞が集まっているので、脳表又は脳表に近い層の脳血流量fを測定することは、認知症の鑑別や治療効果の判定に有用と考えられる。一方で、脳表又は脳表に近い層に対する定量的な脳血流量fの画像に関する研究報告等は未だ見受けられない。
【0079】
従って、第1CT画像を取得し、取得した第1CT画像から脳表又は脳表に近い層の脳血流量fの画像を作成することができれば、脳血流量fの画像を用いて、認知症の鑑別や治療をより効果的に行えることが期待される。
【0080】
ところで、前述の第1CT画像は、被検体12の体軸方向に垂直なアキシャル断面のCT画像(アキシャル像)、被検体12の前後方向に垂直なコロナル断面のCT画像(コロナル像)、又は、被検体12の左右方向に垂直なラテラル断面のCT画像(ラテラル像)である。また、第1CT画像は、所定方向(体軸方向、前後方向又は左右方向)に沿った任意の第1スライス幅d1を有するCT画像である。従って、X線CT装置本体18によって取得された脳34の断層画像は、当該所定方向に沿って複数の第1CT画像が積層された断層画像である。
【0081】
図7A及び
図7Bに示すように、第1CT画像72には脳34が写り込んでいる。脳34において、大脳や小脳等の脳実質74の奥側(内方)には、脳室76がある。
図7Aは、前面視のコロナル像の第1CT画像72であり、
図7Bは、左側面視のラテラル像の第1CT画像72である。
【0082】
ここで、例えば、頭頂78から下方(頸部側)に向かって、図示しないアキシャル像の第1CT画像72を順に見ていくと、比較的早い(浅い)層で脳室76の写り込んだ断層画像を視認することになる。また、被検体12の前後方向又は左右方向に沿って、第1CT画像72を順に見る場合でも、比較的早い層で脳室76の写り込んだ断層画像を視認することになる。
【0083】
このような第1CT画像72を用いて脳キセノン濃度C(t)を求め、求めた脳キセノン濃度C(t)に基づき脳血流量fを求める場合、医師等のオペレータは、第1CT画像72を見ながら操作コンソール54を操作し、脳室76を除外したCT画素データを用いて脳血流量fを計算するようコンピュータ50に指示する。しかしながら、オペレータにとり、第1CT画像72から脳室76を除外する作業は煩わしい。また、この作業は、オペレータの技量に左右される。そのため、同じ被検体12の第1CT画像72であっても、オペレータによって、脳血流量fの算出精度にバラツキが生じる可能性がある。
【0084】
さらに、近時、コーンビームCT装置の出現により、被検体12を中心として、X線管30及び検出器32を1回転させながらX線管30から検出器32に向けてX線を照射することにより、1回のX線CT検査のみで脳34全体の第1CT画像72を短時間で取得することが可能になってきている。そのため、被検体12の被曝量低減の観点からも、コーンビームCT装置を用いて被検体12の脳34の第1CT画像72を取得し、取得した第1CT画像72を用いて脳血流量fを精度良く算出できることが望ましい。
【0085】
そこで、本実施形態は、オペレータの作業負担を軽減しつつ、被検体12の脳血流量fを精度良く算出することにより、当該被検体12の認知症の鑑別又は治療に利用可能な脳血流量fの画像を作成すると共に、被検体12の被曝量の低減も実現すべく、下記のステップS21〜S27の処理を実行する。
【0086】
先ず、
図5のステップS21において、
図3のコンピュータ50は、外部記憶装置56に記憶された第1CT画像72のCT画素データを読み出す。
【0087】
次のステップS22において、コンピュータ50の画像作成部64は、第1CT画像72において、脳34の脳表80に沿った断層画像であって、且つ、第2スライス厚d2の第2CT画像となる層(本実施形態では第1層L1〜第10層L10)を設定する。すなわち、
図7A及び
図7Bに示すように、脳実質74(の外表面である脳表80)は、略円弧状に形成されており、一方で、脳室76も脳実質74の奥側で略円弧状に形成されている。そこで、ステップS22では、このような脳34の構造に着目し、
図7A及び
図7Bに示すように、脳表80に最も近い第2CT画像を第1層L1とし、脳表80から最も遠い(脳室76に近接する)第2CT画像を第10層L10として、各層L1〜L10を第2スライス厚d2とする第2CT画像を、第1CT画像72上に設定する。
【0088】
なお、本実施形態では、
図7Aに示すように、一例として、第1CT画像72の第1スライス厚d1と、第2CT画像の第2スライス厚d2とを、d1=d2=5mmに設定している。また、
図7A及び
図7Bにおける第2スライス厚d2は、第2CT画像における頭頂78直下のスライス幅である。さらに、
図7A及び
図7Bにおける水平線81は、当該水平線81よりも上側の第1CT画像72のCT画素データを用いて、第2CT画像を作成することを意味している。
【0089】
次のステップS23において、画像作成部64は、ステップS22の設定内容に従って、第1層L1〜第10層L10の第2CT画像を作成する。
図8A〜
図9Bは、第1CT画像72から第2CT画像を作成する方法を模式的に図示した説明図である。
【0090】
図8A及び
図8Bに示すように、X線CT装置本体18は、所定方向(
図8Bの上下方向)に沿った第1スライス厚d1の複数の第1CT画像72を取得する。従って、画像作成部64は、ステップS21の処理を実行することにより、所定方向に沿って積層状態の複数の第1CT画像72を読み出すことになる。
【0091】
そこで、ステップS23において、画像作成部64は、先ず、脳表80に最も近い第2CT画像を第1層L1の第2CT画像とした場合、所定方向(
図8Bの上方であって
図7A及び
図7Bの頭頂78側)から積層状態の複数の第1CT画像72を見る。この場合、所定方向から見た状態が
図8Aであるので、画像作成部64は、
図8Aの状態で視認可能な各第1CT画像72の画素を用いて、第1層L1の第2CT画像を作成する。
【0092】
次に、画像作成部64は、第2層L2以降の第2CT画像については、以下のようにして作成すればよい。
【0093】
すなわち、mを1以上の整数としたときに、所定方向に沿って脳表80から離れた第(m+1)層の第2CT画像を作成する場合、画像作成部64は、積層状態の各第1CT画像72の中から、第1層L1から第m層Lmまでの各第2CT画像の作成に用いた画素を取り除く。
【0094】
例えば、
図8Aの状態で視認可能な各第1CT画像72の画素を用いて、第m層Lmの第2CT画像を作成した場合、
図8Cに示すように、各第1CT画像72中、白抜きの画素82が削除対象となる。従って、斜線のハッチングで示した画素84が第(m+1)層目の第2CT画像の作成に用いられる画素となる。
【0095】
そのため、第(m+1)層Lm+1の第2CT画像の作成では、
図9A及び
図9Bに示すように、取り除いた状態の各第1CT画像72を上記の所定方向(
図9Bの上方であって
図7A及び
図7Bの頭頂78側)から見て、当該所定方向から視認可能な各第1CT画像72の画素84を用いて、第(m+1)層Lm+1の第2CT画像を作成する。このようにすれば、第2層L2〜第10層L10の第2CT画像を作成することが可能となる。
【0096】
図10A〜
図12Bは、高齢の健常者(85歳、MMSE(ミニメンタルステート検査):28点)が被検体12である場合に、当該被検体12の第1CT画像72を用いて作成された、第1層L1の第2CT画像86を図示したものである。
【0097】
図10Aは、右側面視のラテラル像であり、
図10Bは、左側面視のラテラル像である。
図11Bは、上面視のアキシャル像であり、
図11Bは、底面視のアキシャル像である。
図12Aは、前面視のコロナル像であり、
図12Bは、背面視のコロナル像である。また、
図10A〜
図12Bの各第2CT画像86における等高線表示は、
図8A及び
図9Aのように、当該第2CT画像86の作成に用いた各第1CT画像72における各層の境界線を示している。
【0098】
なお、後述する
図13Aには、他の高齢の健常者(77歳の女性、MMSE:27点)の第7層L7の第2CT画像86hが図示され、
図13Bには、高齢のアルツハイマー病の患者(以下、AD患者ともいう。)(83歳の女性、MMSE:12点)の第7層L7の第2CT画像86aが図示されている。
【0099】
また、
図16A及び
図16Bには、
図13Aと同一の健常者の第3層L3及び第4層L4の第2CT画像86hがそれぞれ図示され、
図17A及び
図17Bには、他の高齢のAD患者(77歳の女性、MMSE:23点)の第3層L3及び第4層L4の第2CT画像86aがそれぞれ図示されている。
【0100】
なお、
図16B及び
図17Bの第2CT画像86h、86aの横に配置されている1〜100の表示の棒グラフは、
図16A〜
図17Bの各第2CT画像86a、86hにおけるCT値ΔCTの範囲を示したものである。この場合、
図16Aの第2CT画像86hにおけるCT値ΔCTの平均値は40.3HUであり、
図16Bの第2CT画像86hにおけるCT値ΔCTの平均値は39.9HUである。また、
図17Aの第2CT画像86aにおけるCT値ΔCTの平均値は36.1HUであり、
図17Bの第2CT画像86aにおけるCT値ΔCTの平均値は36.9HUである。
【0101】
次のステップS24において、パラメータ決定部66は、各第1CT画像72の層毎に、該当する層の第1CT画像72のCT画素データのCT値ΔCTを用いて、脳キセノン濃度C(t)を求める。次に、パラメータ決定部66は、求めた脳キセノン濃度C(t)の経時変化に基づいて、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを、各第1CT画像72の層毎に決定する。
【0102】
次のステップS25において、血流量算出部68は、脳キセノン濃度C(t)、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを用いて、脳血流量fを各第1CT画像72の層毎に算出する。
【0103】
なお、ステップS24、S25の各処理は、特許文献1に開示されているので、具体的な処理方法についての説明は省略する。
【0104】
次のステップS26において、画像作成部64は、先ず、ステップS24で第1CT画像72の層毎に決定したキセノン分配係数λを用いて、第1CT画像72の積層方向である所定方向に直交する当該キセノン分配係数λの断層画像(第1分配係数画像)を、第1CT画像72の層毎に作成する。また、画像作成部64は、ステップS25で第1CT画像72の層毎に算出した脳血流量fを用いて、所定方向に直交する脳血流量fの断層画像(第1血流量画像)を、第1CT画像72の層毎に作成する。
【0105】
次に、画像作成部64は、前述した第1CT画像72からの第2CT画像86の作成方法(
図8A〜
図9B参照)と同様の方法で、第1分配係数画像から第2CT画像86に応じたキセノン分配係数λの断層画像(第2分配係数画像)を作成すると共に、第1血流量画像から第2CT画像86に応じた脳血流量fの断層画像(第2血流量画像)を作成する。
【0106】
具体的に、画像作成部64は、所定方向から積層状態の各第1分配係数画像及び各第1血流量画像を見たときに、当該所定方向から視認可能な第1各分配係数画像及び各第1血流量画像の画素を用いて、脳表80に沿い且つ第1層L1の第2CT画像86に応じた当該第1層L1の第2分配係数画像及び第2血流量画像をそれぞれ作成する。
【0107】
また、所定方向に沿って脳表80から離れた第(m+1)層Lm+1の第2分配係数画像及び第2血流量画像をそれぞれ作成する場合には、先ず、積層状態の各第1分配係数画像及び各第1血流量画像の中から、第1層L1から第m層Lmまでの各第2分配係数画像及び各第2血流量画像の作成に用いた画素を取り除く。次に、取り除いた状態の各第1分配係数画像及び各第1血流量画像を所定方向から見たときに、当該所定方向から視認可能な各第1分配係数画像及び各第1血流量画像の画素を用いて、第(m+1)層Lm+1の第2分配係数画像及び第2血流量画像をそれぞれ作成する。
【0108】
すなわち、
図8A〜
図9Bの説明において、第1CT画像72の文言を第1分配係数画像及び第1血流量画像にそれぞれ置き換え、第2CT画像86の文言を第2分配係数画像及び第2血流量画像にそれぞれ置き換えることにより、第1分配係数画像を用いた第2分配係数画像の作成、及び、第1血流量画像を用いた第2血流量画像の作成の説明となる。
【0109】
図14Aは、
図13Aの健常者における第7層L7の第2血流量画像88h(上面視のアキシャル像)を示す図であり、
図14Bは、
図13BのAD患者における第7層L7の第2血流量画像88a(上面視のアキシャル像)を示す図である。
図14A及び
図14Bにおいて、矩形の枠89h、89aでそれぞれ囲ったように、枠89h内において、健常者の帯状回の脳血流量f[ml/(100g・min)]は相対的に高く、一方で、枠89a内において、AD患者の帯状回の脳血流量fが相対的に低いことが視覚的に明確に分かる。なお、
図14Bの第2血流量画像88aの横に配置されている0.1〜80の表示の棒グラフは、
図14A及び
図14Bの各第2血流量画像88h、88aにおける脳血流量f[ml/(100g・min)]の範囲を示したものであり、以下同様とする。
【0110】
すなわち、帯状回は、大脳皮質の内側面に存在し、感情の形成及び処理、並びに、学習及び記憶に関わりを持つ部位である。そして、帯状回には神経細胞が存在し、脳血流量fが比較的多い部位である。従って、帯状回の脳血流量fを把握することにより、被検体12が健常者であるか、又は、AD患者であるかを定量的に評価(判定、鑑別)することが可能となる。
【0111】
図15Aは、
図13A及び
図14Aの健常者における第7層L7の第2分配係数画像90h(上面視のアキシャル像)を示す図であり、
図15Bは、
図13B及び
図14BのAD患者における第7層L7の第2分配係数画像90a(上面視のアキシャル像)を示す図である。なお、
図15Bの第2分配係数画像90aの横に配置されている0.01〜1.5の表示の棒グラフは、
図15A及び
図15Bの各第2分配係数画像90h、90aにおけるキセノン分配係数λの範囲を示したものであり、以下同様とする。
図15A及び
図15Bにおいて矩形の枠91h、91aで囲ったように、健常者の白質において、キセノン分配係数λの高い領域は相対的に少なく、一方で、AD患者の白質において、キセノン分配係数λの高い領域は相対的に広いことが視覚的に明確に分かる。
【0112】
すなわち、健常者と比較して、AD患者の脳34には、脂質が相対的に多く存在する。また、脂質は、キセノンガスを吸収しやすく、当該脂質のキセノン分配係数λは相対的に高い。従って、第2分配係数画像90aを視認することにより、当該被検体12がアルツハイマー病(AD患者)であることを定量的に評価(判定、鑑別)することが可能となる。
【0113】
また、
図16A及び
図16Bは、他の健常者における第3層L3及び第4層L4の第2CT画像86h(左側面視のラテラル像)を示す図である。
図17A及び
図17Bは、他のAD患者における第3層L3及び第4層L4の第2CT画像86a(左側面視のラテラル像)を示す図である。
【0114】
図18A及び
図18Bは、それぞれ、
図16A及び
図16Bの第2CT画像86hを用いて得られた第3層L3及び第4層L4の第2血流量画像88h(左側面視のラテラル像)を示す図である。また、
図19A及び
図19Bは、それぞれ、
図17A及び
図17Bの第2CT画像86aを用いて得られた第3層L3及び第4層L4の第2血流量画像88a(左側面視のラテラル像)を示す図である。
【0115】
図20A及び
図20Bは、それぞれ、
図16A及び
図16Bの第2CT画像86hを用いて得られた第3層L3及び第4層L4の第2分配係数画像90h(左側面視のラテラル像)を示す図である。また、
図21A及び
図21Bは、それぞれ、
図17A及び
図17Bの第2CT画像86aを用いて得られた第3層L3及び第4層L4の第2分配係数画像90a(左側面視のラテラル像)を示す図である。
【0116】
この場合、
図18A及び
図18Bの健常者の第2血流量画像88hと、
図19A及び
図19BのAD患者の第2血流量画像88aとを比較すれば、脳34全体として、健常者の脳血流量fがAD患者の脳血流量fよりも多いことを、視覚的に理解することができる。なお、
図18Aの第2血流量画像88hにおける脳血流量fの平均値は、31.9ml/(100g・min)であり、
図18Bの第2血流量画像88hにおける脳血流量fの平均値は、31.8ml/(100g・min)である。一方、
図19Aの第2血流量画像88aにおける脳血流量fの平均値は、26.0ml/(100g・min)であり、
図19Bの第2血流量画像88aにおける脳血流量fの平均値は、24.9ml/(100g・min)である。
【0117】
また、
図20A及び
図20Bの健常者の第2分配係数画像90hと、
図21A及び
図21BのAD患者の第2分配係数画像90aとを比較すれば、脳34全体として、AD患者におけるキセノン分配係数λの高い領域が、健常者におけるキセノン分配係数λの高い領域よりも広がりがあるため、当該被検体12は、脂質が多く、アルツハイマー病(AD患者)であることを容易に確認することができる。なお、
図20Aの第2分配係数画像90hにおけるキセノン分配係数λの平均値は、0.52であり、
図20Bの第2分配係数画像90hにおけるキセノン分配係数λの平均値は、0.57である。一方、
図21Aの第2分配係数画像90aにおけるキセノン分配係数λの平均値は、0.79であり、
図21Bの第2分配係数画像90aにおけるキセノン分配係数λの平均値は、0.87である。
【0118】
なお、脳34の灰白質のキセノン分配係数λは、約0.8であり、白質のキセノン分配係数λは、約1.5である。
【0119】
ここで、次のステップS27について説明する前に、健常者及びAD患者の第2CT画像86h、86aから得られる脳血流量f及びキセノン分配係数λについて、
図22〜
図24を参照しながら、さらに説明する。
【0120】
図22及び
図23は、脳血流量f及びキセノン分配係数λを第2CT画像86a、86hの層毎にプロットしたグラフを示す。これは、複数の健常者及びAD患者について、それぞれの被検体12毎に、脳血流量f及びキセノン分配係数λの平均値を第2層L2から第6層L6までの層毎に求め、求めた各平均値の結果を各層毎にプロットしたものである。
【0121】
図22は、15名の高齢の健常者(75歳〜89歳の女性、MMSE:28.6点(平均点)±1.4点)の脳血流量f及びキセノン分配係数λの平均値を第2CT画像86hの層毎にプロットしたグラフである。この場合、黒色の丸印は、右側面視のラテラル像を用いた脳血流量f及びキセノン分配係数λについて、全ての健常者の平均値を示す。また、白抜きの丸印は、左側面視のラテラル像を用いた脳血流量f及びキセノン分配係数λについて、全ての健常者の平均値を示す。さらに、15名の健常者の標準偏差は、エラーバーで図示している。
【0122】
図22において、第2層L2から第6層L6まで順に見ていくと、脳血流量fが減少すると共に、キセノン分配係数λが増加する。これは、第2層L2等の脳表80に近い層は、脳表80近傍の灰白質の領域であり、神経細胞等が存在し、脳血流量fが相対的に多いからである。一方、第5層や第6層は白質が多く、脂質が多いので、脳血流量fが低下すると共に、キセノンガスが吸収されやすく、キセノン分配係数λが高くなる。
【0123】
図23は、27名の高齢のAD患者(75歳〜87歳の女性、MMSE:17.7点(平均点)±5.6点)の脳血流量f及びキセノン分配係数λの平均値を第2CT画像86aの層毎にプロットしたグラフである。この場合も、黒色の丸印は、右側面視のラテラル像を用いた脳血流量f及びキセノン分配係数λについて、全てのAD患者の平均値を示す。また、白抜きの丸印は、左側面視のラテラル像を用いた脳血流量f及びキセノン分配係数λについて、全てのAD患者の平均値を示す。さらに、27名のAD患者の標準偏差は、エラーバーで図示している。
【0124】
図23において、第2層L2から第6層L6まで順に見ていくと、脳血流量fに大きな変化がない一方で、キセノン分配係数λが大幅に増加する。一方、第5層や第6層は白質が多くなるので、前述の脂質と白質とによって、キセノンガスの吸収が顕著となり、キセノン分配係数λが著しく増大する。
【0125】
図24は、健常者及びAD患者の脳血流量f及びキセノン分配係数λについて、第2CT画像86a、86hの層毎(第2層L2〜第6層L6)、及び、第2CT画像86a、86hの表示方向毎(右側面視、左側面視、上面視、正面視、背面視)に、スチューデントのt検定を実施した場合のP値を示した表である。
【0126】
図24において、P値が小さい程、健常者の結果とAD患者の結果との差異が大きい。すなわち、P値が小さい程、当該P値の元となった第2CT画像86a、86hを用いて、被検体12がアルツハイマー病(AD患者)であるか否かの画像診断(判定、鑑別)が行いやすいことを示唆している。ここで、第3層及び第4層の左側面視のラテラル像(第2CT画像86a、86h)におけるP値は、いずれも、
図24中の他のP値よりも小さい。従って、第3層及び第4層の左側面視のラテラル像から、被検体12が健常者又はAD患者であるかを容易に識別(判定、鑑別)しやすいことが予想される。
【0127】
そこで、ステップS27において、
図3のプロット判定部70は、
図24での知見に基づき、第2血流量画像88a、88h及び第2分配係数画像90a、90h(第2CT画像86a、86h)の層毎、すなわち、P値が最も小さい第3層及び第4層におけるキセノン分配係数λ及び脳血流量f(の平均値)の散布図を作成する。
【0128】
図25は、第3層でのキセノン分配係数λ及び脳血流量fの平均値の散布図であり、
図26は、第4層でのキセノン分配係数λ及び脳血流量fの平均値の散布図である。この場合、27名のAD患者の結果を黒色の丸印で図示し、15名の健常者の結果を白抜きの丸印で図示する。
【0129】
そして、プロット判定部70は、各散布図に四分円92を設け、各散布図中のプロットが四分円92の内側又は外側のどちらにプロットされているのかを判定する。ここで、
図25の四分円92は、脳血流量fの軸上における24.1ml/(100g・min)の箇所と、キセノン分配係数λの軸上における0.78の箇所とを通る円弧である。また、
図26の四分円92は、脳血流量fの軸上における23.3ml/(100g・min)の箇所と、キセノン分配係数λの軸上における0.80の箇所とを通る円弧である。
【0130】
この場合、プロット判定部70は、四分円92の外側のデータについては、アルツハイマー病の結果(AD患者)であると判定し、一方で、四分円92の内側のデータについては、健常者の結果であると判定する。
【0131】
この結果、
図25の第3層での散布図において、被検体12がAD患者であると識別できる感度は92.5%(=(25/27)×100%)であり、特異度は100%(=(25/25)×100%)であった。一方、
図26の第4層での散布図において、被検体12がAD患者であると識別できる感度は96.3%(=(26/27)×100%)であり、特異度は93.3%(=(15/16)×100%)であった。
【0132】
従って、散布図に被検体12の脳血流量f及びキセノン分配係数λの平均値をプロットし、プロットしたデータが四分円92の内側又は外側のどちらにあるかをプロット判定部70で判定することにより、当該被検体12がAD患者であるか否かを容易に且つ精度よく診断することが可能となる。なお、ステップS27の処理は、ステップS25又はS26の処理後に実行すればよい。また、プロット判定部70での判定結果は、表示装置58の画面上に表示し、又は、プリンタ60によりプリントアウトしてもよいことは勿論である。
【0133】
[4.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るキセノンCT装置10において、X線CT装置本体18は、コーンビームCT装置であり、制御装置20のコンピュータ50は、画像作成部64を有する。
【0134】
X線CT装置本体18は、被検体12を中心として、X線管30及び検出器32を少なくとも1回転させながらX線管30から検出器32に向けてX線を照射することにより、所定方向に直交する脳34の断層画像であって、且つ、第1スライス厚d1の第1CT画像72を、所定方向に沿って複数取得するコーンビームCT装置である。
【0135】
また、画像作成部64は、X線CT装置本体18から各第1CT画像72を取得し、所定方向に沿った積層状態の各第1CT画像72を用いて、脳34の脳表80に沿った断層画像であって、且つ、第2スライス厚d2の第2CT画像86、86a、86hを、所定方向に沿って複数作成する。
【0136】
このように、脳表80に沿った第2CT画像86、86a、86hを作成することにより、脳表80に近い層から所定方向に沿って順に第2CT画像86、86a、86hを見た場合、脳表80から相当離れた層において脳室76の写り込んだ第2CT画像86、86a、86hを視認することができる。すなわち、大部分の第2CT画像86、86a、86h、特に、大脳や小脳等の脳実質74が写り込む脳表80に近い層の第2CT画像86、86a、86hは、脳室76の写り込まない断層画像となる。
【0137】
これにより、脳実質74のみで当該脳34を評価することが可能となる。また、CT画像から脳室76を除外する作業が不要となるため、オペレータの作業負担を軽減することができる。この結果、オペレータに依存することなく、脳室76の写り込んでいない第2CT画像86、86a、86hを作成できるので、当該第2CT画像86、86a、86hを用いることにより、被検体12の脳血流量fを精度良く算出することが可能となる。さらに、第2CT画像86、86a、86hは、X線CT装置本体18による少なくとも1回のX線CT撮影により取得された第1CT画像72に基づく断層画像であるため、被検体12の被曝量の低減を図ることもできる。
【0138】
また、画像作成部64は、各第2CT画像86、86a、86hを下記のように作成する。先ず、画像作成部64は、脳表80に最も近い第2CT画像86、86a、86hを第1層L1の第2CT画像86、86a、86hとした場合、所定方向から積層状態の各第1CT画像72を見たときに、当該所定方向から視認可能な各第1CT画像72の画素を用いて、第1層L1の第2CT画像86、86a、86hを作成する。
【0139】
一方、第2層L2以降の第2CT画像86、86a、86h、すなわち、mを1以上の整数としたときに、所定方向に沿って脳表80から離れた第(m+1)層Lm+1の第2CT画像86、86a、86hを作成する場合、画像作成部64は、最初に、積層状態の各第1CT画像72の中から、第1層L1から第m層Lmまでの各第2CT画像86、86a、86hの作成に用いた画素82を取り除く。次に、画像作成部64は、取り除いた状態の各第1CT画像72を所定方向から見たときに、当該所定方向から視認可能な各第1CT画像72の画素84を用いて、第(m+1)層Lm+1の第2CT画像86、86a、86hを作成する。
【0140】
このように、本実施形態では、1つ前の層までに使用した画素82(第1層L1から第m層Lmまでの第2CT画像86、86a、86hの作成に使用した各第1CT画像72の画素82)を、積層状態の各第1CT画像72から取り除き、残余の各第1CT画像72の画素84を用いて第(m+1)層Lm+1の第2CT画像86、86a、86hを作成する。これにより、第1層L1から順に第2CT画像86、86a、86hを容易に且つ効率良く作成することが可能となる。
【0141】
また、コンピュータ50のパラメータ決定部66は、各第1CT画像72の層毎に、該当する層の第1CT画像72のCT画素データのCT値ΔCTを用いて、脳キセノン濃度C(t)を求め、求めた脳キセノン濃度C(t)の経時変化に基づいて、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを、各第1CT画像72の層毎に決定する。血流量算出部68は、脳キセノン濃度C(t)、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを用いて、脳血流量fを各第1CT画像72の層毎に算出する。
【0142】
その上で、画像作成部64は、下記のようにして、第1CT画像72及び第2CT画像86、86a、86hに応じた、キセノン分配係数λの画像及び脳血流量fの画像を作成する。
【0143】
先ず、画像作成部64は、所定方向に直交するキセノン分配係数λの断層画像である第1分配係数画像を第1CT画像72の層毎に作成し、一方で、所定方向に直交する脳血流量fの断層画像である第1血流量画像を第1CT画像72の層毎に作成する。
【0144】
次に、画像作成部64は、所定方向から積層状態の各第1分配係数画像及び各第1血流量画像を見たときに、当該所定方向から視認可能な第1各分配係数画像及び各第1血流量画像の画素を用いて、脳表80に沿い且つ第1層L1の第2CT画像86、86a、86hに応じた当該第1層L1の第2分配係数画像90a、90h及び第2血流量画像88a、88hをそれぞれ作成する。
【0145】
最後に、画像作成部64は、所定方向に沿って脳表80から離れた第(m+1)層Lm+1の第2分配係数画像90a、90h及び第2血流量画像88a、88hをそれぞれ作成する場合、積層状態の各第1分配係数画像及び各第1血流量画像の中から、第1層L1から第m層Lmまでの各第2分配係数画像90a、90h及び各第2血流量画像88a、88hの作成に用いた画素を取り除く。そして、画像作成部64は、取り除いた状態の各第1分配係数画像及び各第1血流量画像を所定方向から見たときに、当該所定方向から視認可能な各第1分配係数画像及び各第1血流量画像の画素を用いて、第(m+1)層Lm+1の第2分配係数画像90a、90h及び第2血流量画像88a、88hをそれぞれ作成する。
【0146】
このように、画像作成部64は、第1CT画像72を用いて第1分配係数画像及び第1血流量画像を作成し、第2CT画像86、86a、86hと同様の方法で、第1分配係数画像及び第1血流量画像から第2分配係数画像90a、90h及び第2血流量画像88a、88hをそれぞれ作成する。これにより、第2分配係数画像90a、90h及び第2血流量画像88a、88hは、脳室76の影響を受けない画像となるため、第2分配係数画像90a、90h及び第2血流量画像88a、88hの画素値を用いて、層毎のキセノン分配係数λ及び脳血流量fの平均値を容易且つ精度良く求めることができる。
【0147】
また、このように作成された第2血流量画像88a、88h及び第2分配係数画像90a、90hは、それぞれ、脳室76の影響を受けず、且つ、脳表80又は脳表80に近い層に対する定量的な脳血流量f及びキセノン分配係数λの画像である。従って、本実施形態では、被検体12の脳34の第1CT画像72から第2血流量画像88a、88h及び第2分配係数画像90a、90hをそれぞれ作成し、作成した第2血流量画像88a、88h及び第2分配係数画像90a、90hを被検体12の認知症の鑑別又は治療に利用することが可能となる。
【0148】
また、コンピュータ50のプロット判定部70は、各第2分配係数画像90a、90h及び各第2血流量画像88a、88hの層毎にキセノン分配係数λ及び脳血流量fの散布図を作成し、当該各散布図に四分円92を設けて、各散布図中のキセノン分配係数λ及び脳血流量fのデータが四分円92の内側又は外側のどちらにプロットされているのかを判定する。
【0149】
このように、脳室76を除外した第2CT画像86、86a、86hに基づくキセノン分配係数λ及び脳血流量fの散布図を用いて判定することにより、被検体12の脳34を定量的に評価できると共に、当該脳34の状態(被検体12がAD患者であるか否か)を容易に診断することが可能となる。
【0150】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。