(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326046
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】医療分野、特に眼科におけるその使用のための生体適合性ヒドロゲルで作られている物体を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20180507BHJP
C08J 3/075 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
A61L27/16
C08J3/075CEY
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-516739(P2015-516739)
(86)(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公表番号】特表2015-525102(P2015-525102A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】IB2013054874
(87)【国際公開番号】WO2013186747
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年6月6日
(31)【優先権主張番号】1255631
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514318493
【氏名又は名称】ラロシュ ローラン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ ローラン
【審査官】
幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−071751(JP,A)
【文献】
特開2003−144139(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0102276(US,A1)
【文献】
特開平08−052209(JP,A)
【文献】
特表2004−501700(JP,A)
【文献】
Hirama,H.et al.,A microfabrication-free procedure to fabricate 3-dimensional microfluidic devices using hydrogel molds.,The 15th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences,2011年10月 2日,p.975-7
【文献】
J. Biomed Mater Res, anionic polyelectrolyte hydrogel for corneal surgery, 1997, Vol.37(4), p.548-553
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61L 15/00−33/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ヒドロゲルで作られている物体を製造するための方法であって、
(i)アクリロニトリルとアニオン性基を有するオレフィン性不飽和コモノマーの共重合体を非プロトン性溶媒に、任意選択で非溶剤の存在下で、溶解することによってポリマー溶液を調製するステップと、
(ii)前記非溶剤を含有する材料または前記非溶剤に対して透過性である材料からなる型において、ステップ(i)の終了時に得られたポリマー溶液を成形しゲル化を開始するステップと、
(iii)ステップ(ii)によって生じるゲル化を起こしている物体を非溶剤中で浸漬するステップと
を含み、
前記非溶剤が、水、無機塩水溶液および有機塩水溶液から選択され、
前記ステップ(ii)の型がヒドロゲルで作られている型である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
アクリロニトリル/コモノマー共重合体が、90/10から99/1の範囲のモル比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オレフィン性不飽和コモノマーのアニオン性基が、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基および硫酸基から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アクリロニトリル/コモノマー共重合体がアクリロニトリル−メタリルスルホン酸ナトリウム共重合体である、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
非プロトン性溶媒が有機または無機の極性非プロトン性溶媒から選択される、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
非プロトン性溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、Nーメチルピロリドン(NMP)から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非溶剤が水または塩化ナトリウム水溶液から選択される、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(ii)の型が、アガロース、アルギン酸、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート(PHPMA)またはポリアクリレートをベースとするヒドロゲルで作られている型である、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(ii)の型がアガロースヒドロゲルで作られている型である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)の型が、
− 1から10質量%、好ましくは2から6質量%のアガロースまたはアルギン酸、
− 90から99質量%、好ましくは94から98質量%の水または無機塩水溶液または有機塩水溶液からなる、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
浸漬ステップ(iii)が2つのステップ:
− 第1に:ゲル化を起こしている物体を非溶剤の冷浴中で、好ましくは0℃から10℃の範囲の温度で浸漬するステップと、
− 第2に:ゲル化を起こしている物体を非溶剤の浴中で室温で浸漬するステップとで行われる、請求項1から10の一項に記載の方法。
【請求項12】
生体適合性ヒドロゲルで作られている前記物体が、医療、生物学、眼科および/または特別な眼科使用のためのフィルム、糸、ロッドまたはインプラントから選択されることを特徴とする、請求項1から11の一項に記載の方法。
【請求項13】
生体適合性ヒドロゲルで作られている前記物体が、眼用インプラントの形態であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記眼用インプラントが、近視、遠視、老眼、円錐角膜またはLASIK後の拡張症を補正するための角膜内レンズである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の材料で作られている型においてポリマー溶液を成形することにより、生体適合性ヒドロゲルで作られている物体を製造するための方法に関する。本発明はまた、この方法による生体適合性ヒドロゲルで作られている物体、例えば、角膜内に移植可能な角膜内レンズ(もしくは角膜片)または眼科において使用可能な他の任意のインプラントなどに関する。
【背景技術】
【0002】
適切な形状の型においてポリマー溶液を成形することにより得られる医療および/または外科的使用のためのヒドロゲルの物体を作るためのいくつかの方法は、従来技術において既に記載されている。後者の中では、触媒されたヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)から得られるヒドロゲルコンタクトレンズの製造のためにWichterle(1960)によって用いられた遠心鋳造とも呼ばれる「スピンキャスティング」法を挙げることができ、そのゲル化時間は、とりわけ温度に依存する。
【0003】
ヒドロゲルの物体を作るための別の方法は、ゲル化点未満の温度に冷却することによってポリマー溶液をゲル化することからなる(特許FR2051147)。この方法の主な利点は、型内に入れたポリマー溶液の体積変化の補償である。ゲル化点未満の温度に低下させることによるゲル化に基づくこの方法は、透明なヒドロゲルがアニオン性共重合体溶液AN69(会社GAMBROによって供給される共重合体)から得られるようにすることはできず、その代わりに屈折眼科手術において使用できない半透明なヒドロゲルをもたらす。
【0004】
ヒドロゲルで作られている他の物体は、刃、マイクロのこぎりもしくはレーザーを用いて室温でヒドロゲルのブロックから機械的に切断することによって、または非常に高い圧力での水のマイクロジェットによる切断によって、または非常に低い温度でのクライオ加工によって製造することができる。この方法はまた、AN−69共重合体をベースにしたヒドロゲルからのレンズの製造について試験されてきたが、成功しなかった。
【0005】
共重合体AN−69は、血液透析膜を作るために長年使用されてきた(J.Denisら、Gut、1978年、19、787〜793)。この共重合体から得られるヒドロゲルはまた、バイオ人工膵臓の開発においてランゲルハンス島をカプセル化するために(J.Honigerら、The International Journal of Artificial Organs、1994年、17、046〜052)、またはバイオ人工肝臓の開発のために肝細胞をカプセル化するために(J.Honingerら、Biomaterials、1995年、16、753〜759;R.Sarkisら、Transplantation、2000年、Vol.70、58〜64;Journal of Hepatology、2001年、35、208〜216;E.Baldiniら、Transplantation Proceeding、2009年、41(4)、1367〜1369)使用されてきた。多発性関節炎の治療についての研究において、マウス細胞はまた、AN−69ヒドロゲルの中空繊維(N.Bessisら、Clin.Exp.Immunol.、1999年、117、376〜382)およびこの同じヒドロゲルから作られているカプセル(N.Bessisら、Rhumatologie、2003年、70、855〜7)中にカプセル化されてきた。エリスロポエチンを産生する細胞もまた、AN−69ヒドロゲルの中空繊維中にカプセル化されてきた(E.Payenら、Haematologica、1999年、84、EHA−4)。したがって、共重合体AN−69は、その生体適合性および血液適合性の特性、ならびに補体系を活性化しないためのその能力を既に広範に示してきた(J.Honingerら、J.Biomed.Mater.Res.、1997年、37、548〜553)。この共重合体から得られるヒドロゲルは広く眼科の分野でも用いられている。角膜内レンズは、実際に、この重合体から既に作られており(特許EP0347267;L.Larocheら、Macromol.Symp.、1995年、100、51〜55)、動物に移植された後、既に20年間ヒトにおいて臨床的に評価されている。同じAN−69ヒドロゲルはまた、エピケラトファキア用のレンズを開発するための上皮細胞の増殖を研究するために使用されてきた(F.Mauryら、Journal of Materials Science−Materials in medicine、1997年、8、571〜576)。
【0006】
角膜内レンズを作るためのヒドロゲルのディスクの熱成形は、J.HonigerおよびL.Larocheによって1980年代の終わりから用いられてきた。これらのレンズの光学的品質は完璧だった。角膜に移植する前に、レンズは過酢酸で除染され、次いで無菌の等張液ですすがれた。薬局方の新しい、より厳しい要件は、移植可能な物体の、もはや単なる除染ではなく滅菌を指定し得る。それらが、湿熱、ガンマ線または加速電子などの所定の方法によって滅菌される場合、熱成形されたレンズは形状を変えることがあり、このことによりそれらの光パワーが変化する。
【0007】
したがって、上述の方法から得られる角膜内インプラントの弱点は、滅菌ステップ中にそれらの形状を維持する能力が低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】FR2051147
【特許文献2】EP0347267
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Denisら、Gut、1978年、19、787〜793
【非特許文献2】J.Honigerら、The International Journal of Artificial Organs、1994年、17、046〜052
【非特許文献3】J.Honingerら、Biomaterials、1995年、16、753〜759
【非特許文献4】R.Sarkisら、Transplantation、2000年、Vol.70、58〜64
【非特許文献5】Journal of Hepatology、2001年、35、208〜216
【非特許文献6】E.Baldiniら、Transplantation Proceeding、2009年、41(4)、1367〜1369
【非特許文献7】N.Bessisら、Clin.Exp.Immunol.、1999年、117、376〜382
【非特許文献8】N.Bessisら、Rhumatologie、2003年、70、855〜7
【非特許文献9】E.Payenら、Haematologica、1999年、84、EHA−4
【非特許文献10】J.Honingerら、J.Biomed.Mater.Res.、1997年、37、548〜553
【非特許文献11】L.Larocheら、Macromol.Symp.、1995年、100、51〜55
【非特許文献12】F.Mauryら、Journal of Materials Science−Materials in medicine、1997年、8、571〜576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本出願人は、医療または外科的使用のための信頼性の高い物体、特に、様々な生体分子に対して適切な透過性を有する眼用インプラントを調製するために使用される透明で生体適合性があるヒドロゲルを供給するように努めてきた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の第1の目的は、生体適合性ヒドロゲルで作られている物体を製造するための方法であって、
(i)アクリロニトリルとアニオン性基を有するオレフィン性不飽和コモノマーの共重合体を非プロトン性溶媒に、場合によって非溶剤の存在下で、溶解することによってポリマー溶液を調製するステップと、
(ii)所望の物体の形状を有する型において、ステップ(i)の終了時に得られたポリマー溶液を成形しゲル化を開始するステップであって、前記型は前記非溶剤を含有する材料または前記非溶剤に対して透過性である材料からなり、好ましくは室温で行われるステップと、
(iii)ステップ(ii)によって生じるゲル化を起こしている物体を非溶剤中で十分な時間浸漬し、前記非溶剤と溶媒の完全な交換を可能にし、ヒドロゲルで作られている物体を得るステップと
を含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
全く予想外に、本出願人は、非溶剤からなり、前記非溶剤に対して透過性である特定の材料で作られている型の使用が、ポリマー溶液中に存在する溶媒とゲル化ステップ時の非溶剤との間の交換を確実にし、(非溶剤が水である場合)所望の形状を有するヒドロゲルを形成することを同時に可能にすることを見出した。実際、成形されたポリマー溶液にゲル化を引き起こすのは型内の非溶剤の存在である。本発明の方法の終了時に得られるヒドロゲルで作られている眼用および/または角膜内インプラントは、生体細胞に対して不活性であるというそれらの特性に加えて、
− 優れた光学特性:可視光に対する完全な透明性、UV照射の吸収、角膜のものに近い屈折率、
− 非常に良好な物理化学的な特性:水、生理食塩水、小型および中型の分子に対する高い透過性、溶解ガスに対する透過性、高い親水性、毒性基を持たない化学的性質、
− 優れた寸法安定性
− 特定の生物学的特性:生理環境において非生体吸収性である、滅菌可能および/または再滅菌可能である、この環境における老化に対する良好な耐性、角膜支質における移植部位の良好な組織耐性(角膜上皮および内皮の変化を引き起こさない)、タンパク質に対する低親和性
を示す。
【0013】
ステップ(i)の溶解は、室温から70℃の範囲の温度、好ましくは約50℃の温度で撹拌しながら行われてもよい。
【0014】
本発明の方法のステップ(i)は、有利には、90/10から100/0の範囲、好ましくは95/5から99/1の範囲のモル比を有するアクリロニトリル/コモノマー共重合体を溶解することによって調製することからなる。
【0015】
有利な実施形態によれば、オレフィン性不飽和コモノマーのアニオン性基は、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基および硫酸基から選択される。
【0016】
アクリロニトリル/コモノマー共重合体は、有利には、共重合体AN−69(供給業者GAMBRO)などのアクリロニトリル−メタリルスルホン酸ナトリウム共重合体である。これらの共重合体は、細胞との相互作用を示さないので、大幅に改善された耐性を有する。
【0017】
アクリレート/コモノマー共重合体を溶解させる非プロトン性溶媒は、有利には、有機または無機の極性非プロトン性溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、Nーメチルピロリドン(NMP)から選択される。
【0018】
非溶剤は、水、無機塩水溶液および有機塩水溶液から選択される。
【0019】
この実施形態の有利な構成によれば、非溶剤が塩水溶液である場合、ポリマー溶液において、0.03から1質量%の間の塩の濃度を得るために前記溶液は0.5から5質量%の間、好ましくは0.05から1質量%の間の濃度である。
【0020】
さらにより好ましくは、無機および有機塩は、塩化ナトリウム(生理溶液)または塩化カリウム、ヨウ素酸ナトリウムまたはヨウ素酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウム、塩素酸ナトリウムまたは塩素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウムまたは過ヨウ素酸カリウム、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム、酒石酸ナトリウムまたは酒石酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸カリウム、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム、乳酸ナトリウムまたは乳酸カリウムである。好ましい塩水溶液は、塩化ナトリウム溶液である。
【0021】
有利な実施形態によれば、ステップ(ii)の型は、ヒドロゲルで作られている型である。
【0022】
本発明の意味において、ヒドロゲルは親水性部位を有するポリマー鎖からなる材料である。
【0023】
ステップ(ii)の型は、アガロース、アルギン酸、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート(PHPMA)またはポリアクリレート(ナトリウムもしくはカリウム)をベースとするヒドロゲルで作られている型であってもよい。
【0024】
有利には、ステップ(ii)の型は、
− 1から10質量%、好ましくは2から6質量%のアガロースまたはアルギン酸、
− 90から99質量%、好ましくは94から98質量%の水または無機塩水溶液または有機塩水溶液
からなる。
【0025】
特に好ましくは、ステップ(ii)の型は、アガロースヒドロゲルで作られている型である。
【0026】
ステップ(i)の終了時に得られる均質なポリマー溶液の「脱混合」のステップまたは「相分離」のステップという用語でも知られている本発明の方法のステップ(ii)の過程において、ヒドロゲルを形成する。
【0027】
三成分図(共重合体/溶媒/非溶剤)によれば、平衡曲線は3つの成分が混和性であるゾーンを他の2相が形成するゾーン(ポリマーの豊富な固相およびポリマーの乏しい液相、またはポリマーの枯渇)から分離する。ヒドロゲルの形成過程において、系は、初期ポリマー溶液からすべての溶媒が非溶剤で置き換えられた組成物に変化し、それがゲルをヒドロゲルに変換する。液体形態からゲル化形態への遷移は、意図したその後の用途に応じて予め選択された形状を有する型に含有される非溶剤とポリマー溶液との接触によって誘発される。非溶剤を含有する型の表面に直接接触しているポリマー溶液の表面層は、ゲル化を開始し、型の形状をとる。成形される物体の厚さが大きいほど、ゲル化時間が長くなる。
【0028】
ゲル化を起こしている物体を浸漬するステップ(iii)は、2つのステップ:
− 第1に:ゲル化を起こしている物体を非溶剤の冷浴中で、好ましくは0℃から10℃の範囲の温度で、5から15分であり得る間、浸漬するステップと、
− 第2に:ゲル化を起こしている物体を非溶剤の浴中で室温で、15から45分であり得る間、好ましくは約30分間浸漬するステップと
で行うことができる。
【0029】
ステップ(i)から(iii)の後、本発明の方法はまた、場合によって滅菌ステップを含むことができる。有利には、この滅菌ステップは、放射線滅菌、例えば、ガンマ線または加速電子によって、より好ましくはガンマ線または加速電子による放射線滅菌によって行われる。
【0030】
本発明はまた、本発明の方法によって得られる生体適合性ヒドロゲルで作られている物体に関する。
【0031】
「生体適合性ヒドロゲルで作られている物体」という用語は、生物系と接触して、それらを変性させることなく、すなわち、細胞組織の挙動の異常をもたらすことなく、およびヒトまたは動物の体の内部器官を循環している生体液の中毒を引き起こすことなく相互作用するように意図された医療デバイスとして使用される非生物材料から製造される物体として理解されるべきである。インプラントの場合に明らかであるこの接触は、ヒトもしくは動物の体の表面または外部で生じる接触、例えば、血液透析の場合の血液またはコンタクトレンズの場合の角膜に生じるものに拡張されなければならない。
【0032】
これらの物体は、医療、生物学、眼科および/または特別な眼科使用のためのフィルム、糸、ロッドまたはインプラントである場合がある。
【0033】
別の有利な実施形態によれば、本発明の生体適合性ヒドロゲルで作られている物体は眼用インプラントである。それらには、光パワーまたは屈折力があってもなくてもよく、より詳細には、視力の欠陥を補正するために角膜に移植されるように意図された角膜内レンズであってもよい。特に好ましくは、本発明の眼用インプラントは、近視、遠視、老眼、円錐角膜またはLASIK後の拡張症(医原性円錐角膜)を補正するための角膜内レンズである。角膜が、例えば、フェムト秒レーザーで切断される、角膜における所定の形状を有する角膜片の移植は、円錐角膜疾患によって変形した角膜が内側から再形成されることを可能にする。
【0034】
前述の構成に加えて、本発明はさらに他の構成を含み、それは本発明の方法による生体適合性ヒドロゲルで作られている物体の改善された特性を示す実施例に関する以下に記載される説明の残りの部分から明らかになるであろう。
【実施例】
【0035】
本発明の方法によるAN−69共重合体のヒドロゲルコンタクトレンズの製造
アガロースヒドロゲルで作られている型の調製:
アガロースヒドロゲル型を会社Essilorによって提供されるコンタクトレンズのポリプロピレンマトリックス(雄部および雌部)から調製する。
【0036】
2〜4%のアガロースの水溶液は、アガロースを等張液(H
2O中0.9%のNaCl)に80℃の温度で溶解することによって調製する。次いで、それを40〜50℃の温度に冷却し、ポリプロピレンマトリックスに(2つの部分に別々に)注ぐ。
【0037】
室温に冷却した後、得られたアガロース型の2つの部分を型から取り出す。次いで、型の2つの部分を生理溶液(H
2O中0.9%のNaCl)に浸漬する。
【0038】
ポリマー溶液の調製:
以下に示されている組成物に対応するポリマー溶液を撹拌しながら60℃の温度で水浴上で調製する:
【0039】
【表1】
【0040】
コンタクトレンズの製造:
予め調製したポリマー溶液1滴をアガロースヒドロゲル型の予め調製した雌部分に注ぐ。型の雌部分を直ちに雄部分で閉じる。
【0041】
30秒後に、型を開く。次いで、コンタクトレンズのゲル化形態の抽出を行う。それを生理溶液0.5Lに室温で30分間2回連続して浸漬し、それが生理溶液(非溶剤)によるDMF(溶媒)の完全な交換をもたらす。
【0042】
このようにして、中央の厚さが0.3〜0.4mmである直径10mmのコンタクトレンズが得られる。それは、2.5Dの光パワーおよび75%の平均「保水量」(含水量)を有する。
【0043】
次いで、コンタクトレンズをガンマ線を用いて滅菌する。ガンマ線の吸収線量は25グレイ(または2.5MRad)である。
【0044】
滅菌後、コンタクトレンズを生理食塩水を含有するカプセルに入れる。
【0045】
以下の観察を行う:
− レンズの形状(凸状/凹状)が変更されなかった、
− 「保水量」が2%減少した、
− 光パワーが非常にわずかに(±0.25D)変化した。