(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326058
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】制御された媒体流動上での三次元組織測定のための装置、インサート、および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20180507BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20180507BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20180507BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20180507BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/02
G01N1/00 101H
!C12M3/00 A
【請求項の数】37
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-542029(P2015-542029)
(86)(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公表番号】特表2016-503299(P2016-503299A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】US2013069839
(87)【国際公開番号】WO2014078379
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年11月9日
(31)【優先権主張番号】61/725,781
(32)【優先日】2012年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】マクガー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ニールソン,アンディ,シー
(72)【発明者】
【氏名】テイチ,ジェイ,エス
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−092935(JP,A)
【文献】
特開2010−041988(JP,A)
【文献】
特開2005−218368(JP,A)
【文献】
特表平05−508991(JP,A)
【文献】
国際公開第91/018653(WO,A1)
【文献】
特表2005−514056(JP,A)
【文献】
国際公開第03/060055(WO,A1)
【文献】
特表2009−506752(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0172412(US,A1)
【文献】
特表2002−537851(JP,A)
【文献】
国際公開第00/053797(WO,A1)
【文献】
特表2002−534997(JP,A)
【文献】
国際公開第00/044876(WO,A1)
【文献】
特開2004−113092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元細胞試料の分析を実施するための装置であって、装置が、
個々の試料および試料の媒体を保持するための複数のウェルを含み、
ここで前記ウェルの少なくとも一つが、
その中に配置された試料ネスティング部位、
その上に配置される穴であって、穴が、穴の中、およびウェル中に配置される試料の媒体の中に垂直に下降するプランジャーと嵌合するような寸法にされている、穴、ならびに
前記試料ネスティング部位と流体接続する媒体チャネルであって、その中を通る媒体の流動がプランジャーによって促進され、媒体の動きによって前記試料が新鮮な媒体へと曝露される、媒体チャネルを含む、
装置。
【請求項2】
プランジャーがネスティング部位に対して移動し、試料周辺の媒体の還流を誘導する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
プランジャーと試料ネスティング部位が一緒に移動して、試料を媒体の異なる領域に曝露する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記媒体チャネルが、試料周辺を還流した媒体をウェル中に配置される媒体へと返す流体管路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも一つの前記穴が、取り外し可能なウェルインサートによって画定される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも一つの前記試料ネスティング部位と前記穴とが取り外し可能なウェルインサートによって画定される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記試料ネスティング部位、前記穴、および前記媒体チャネルが、取り外し可能なウェルインサートによって画定される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記試料ネスティング部位が、取り外し可能なウェルインサートによって画定される媒体透過性プラットフォームを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ウェルが、媒体チャネルと流体接続する水だめを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記試料ネスティング部位が、媒体を収集する水だめに配置され、前記媒体チャネルと流体接続する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記媒体チャネルが、ウェル中の媒体表面直下の閉ループを画定する流体管路を含み、前記穴中のプランジャーの上方および下方の移動の際に媒体による前記試料周辺の還流的流動を可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記試料周辺に配置される媒体中の溶質の濃度を検出するセンサをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記センサがウェルの底に配置される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
個々のウェルの穴中を往復運動するよう適合するプランジャーをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記試料周辺に配置される媒体中の溶質の濃度を検出するためにプランジャー上に配置されるセンサをさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記センサが、前記試料周辺の媒体に溶解した酸素、二酸化酸素、水素イオンの濃度を測定する、請求項12〜15に記載の装置。
【請求項17】
前記複数のウェルが24穴もしくは96穴を含むマルチウェルプレートを画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
ウェル中の上部空間もしくはウェル中の媒体中のガスの組成を制御するために、ウェル中の媒体中もしくはウェル中の媒体表面上の上部空間と流体接続した酸素、二酸化炭素および/もしくは生物学的に不活性なガスの供給源をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
試料を生物学的に活性な基質に曝露させるために、ウェル中の媒体と流体接続した生物学的に活性な基質の溶液の供給源をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記試料ネスティング部位の上部に配置される三次元細胞増殖の足場をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項21】
三次元細胞試料の分析を実施するための装置であって、装置が、
試料および試料の媒体を保持するためのウェルであって、
試料ネスティング部位、
前記試料ネスティング部位上に配置され、穴の中、およびウェル中に配置される媒体の中に垂直に下降するプランジャーと嵌合するような寸法にされている、穴、ならびに
前記試料ネスティング部位と流体接続する媒体チャネルであって、前記試料周辺を媒体が還流するようにできる、媒体チャネルを含むウェルと、
前記穴を往復運動するよう適合し、それによって前記試料周辺の媒体の還流を促進する、プランジャーを含む、
装置。
【請求項22】
試料ネスティング部位周辺の媒体中の溶解された媒体成分の濃度を検出するためのセンサをさらに含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
培養プレートのウェルのためのインサートであって、その中に配置された三次元細胞培養試料の還流を促進するようウェルを適合させるインサートであり、
媒体透過性プラットフォームを含む試料ネスティング部位、
その上に配置され、穴の中、およびウェル中に配置される媒体の中に垂直に下降するプランジャーと嵌合するような寸法にされている、穴、
プランジャーによって促進される前記試料周辺の媒体の還流を可能にする前記試料ネスティング部位と流体接続する媒体チャネル
を画定する構造を含む、インサート。
【請求項24】
三次元細胞培養試料とともに実験する際に、該試料の生存性を維持し、その微環境の制御を実施するように、三次元細胞培養試料とともに実験するための方法であって、
試料ネスティング部位、試料ネスティング上に配置されるプランジャーと嵌合するような寸法にされている穴、前記試料ネスティング部位と流体接続した媒体チャネル、ならびに前記穴中を往復するように適合するプランジャーを提供するステップ、
試料を、ウェル中の媒体中の前記試料ネスティング部位上に配置するステップ、
試料周辺の媒体の流動を促進するために前記プランジャーを穴の中で移動させ、媒体をチャネルを通して流動させそれによって試料を媒体で還流させるステップ、
を含む方法。
【請求項25】
媒体もしくはウェルの上部空間に対してガスを添加し、溶解するガスの組成を変化させて試料周辺の微環境を変化させるステップをさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
生物学的に活性な基質の溶液を媒体中に添加し、試料を生物学的に活性な基質に曝露することによって試料周辺の微環境を変化させるステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記試料周辺の媒体中の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度を測定するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記試料周辺の媒体の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度を分離した時間において複数回測定するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記試料周辺の媒体に対して、定量された量の一つもしくはそれ以上のガスおよび/もしくは一つもしくはそれ以上の溶質を添加し、所定の点に前記試料周辺の媒体の微環境を設定するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
低酸素状態に微環境を設定することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
酸素捕捉剤を媒体中に添加することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
ヒト生検組織試料を前記ネスティング部位に配置し、媒体中に薬剤候補を添加し、薬剤の試料に対する効果を調査するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
一つもしくはそれ以上のガスおよび/もしくは一つもしくはそれ以上の溶質を前記ウェル中の媒体に添加して、前記試料周辺の媒体中の微環境を所定の点に設定するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法
【請求項34】
前記試料が腫瘍試料であり、前記方法が、定量された量の一つもしくはそれ以上のガスおよび/もしくは一つもしくはそれ以上の溶質を前記ウェル中の媒体に対して添加し、それによって、前記試料周辺の媒体中の微環境をin vivoにおける腫瘍試料の微環境を模倣する所定の点に設定することをさらに含む、請求項24もしくは請求項32に記載の方法。
【請求項35】
複数の試料ネスティング部位を含む前記ウェル、試料ネスティング上に配置されるプランジャーと嵌合するような寸法にされている穴、前記試料ネスティング部位と流体接続した媒体チャネル、ならびに前記穴中を往復するように適合するプランジャーを提供するステップ、
試料を、複数のウェル中の媒体中の試料ネスティング部位上に配置するステップ、
複数の前記プランジャーを穴の中で移動させて試料周辺の媒体の流動を促進し、媒体を前記チャネルを通じて流動させ、それによって前記試料を媒体中で還流させるステップ、ならびに
複数の前記ウェル中の前記試料周辺の媒体の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度を1回もしくはそれ以上測定するステップ
のステップによって前記方法を複合化することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
媒体中の試料から分泌されるかまたは試料によって吸収される関心のある対象の生体分子に対する固相化された結合剤を含む一つもしくは複数のビーズを配置し、ビーズを用いて前記試料の微環境中の前記生体分子の存在もしくは濃度を検出するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
チャネルから還流した培地が試料中に返されることを阻害するための前記媒体チャネル中に配置される逆止め弁をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願へのクロスレファレンス
本出願は、35 U.S.C. §119(e)下で2012年11月13日に出願された米国仮出願連続番号61/725,781の優先権の利益を主張し、参照により、そのすべての内容を本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、三次元細胞試料(例えば組織試料)の分析を実施するための装置および方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
がん細胞の代謝表現型の明確な相違は、生存と増殖における選択有利性を提供するもとになるメカニズムと関連するということが長い間確立されてきた。しかしながら、腫瘍形成を引き起こす正確なメカニズムについてはあまり理解されていない。解糖系の適用が、低pHおよび低酸素圧によって特徴付けられる微環境において腫瘍を増殖させ得る生存メカニズムであるとの仮説がなされていた。これらの「Warburg(ワールブルグ)シフト」の適用は、生合成、エネルギーおよび還元当量への要求を満たすために、グルコース取り込みとATP合成の増加を通じて腫瘍に対して選択有利性を提供する。
【0004】
微環境における好気的代謝(O
2)、解糖(H
+)および中間代謝(CO
2)を示す重要な分析対象の流動を測定する装置の開発における近年の進歩は、悪性形質転換のもととなるメカニズムに対する洞察を提供し得る。しかしながら、これらのシステムは、細胞に基づいた分析での使用のために設計され、最適化されており、環境の制御を欠いている可能性があり、そして、一般的に、チャンバのサイズ、固定における困難性および試料の還流のために多細胞の組織試料の測定を促すものではない。
【0005】
Seahorse Bioscience(マサチューセッツ州ビルリカ)はXF96「細胞外流動分析器」を2007年に開始した。そのときから、この製品は、ミトコンドリアの機能および細胞生体エネルギーの定量的測定をなすための技術のプラットフォームとして採用されてきた。XFによる測定は、細胞にもとづいた分析における、細胞外の媒体中のさまざまな分析対象(O
2、H
+、CO
2)を測定する完全に統合された計測器において実施される。分析対象の濃度は、細胞周辺の小容量中において非侵襲的に測定され、時間の関数としての分析対象の濃度における変化の定量的測定が提供され、それにより生体エネルギーの流動(例えば、dO
2/dtは酸素消費速度であり、dpH/dtは細胞外酸性化速度である)が決定し得る。XF測定は、少量の、一時的な測定容量が細胞周辺に作り出されるか、またはセンサが細胞の近接近に配置される方法に基づく。これらの状況における測定は、濃度の変化を増幅し、一連の光学センサより集められる高感度な時間分解測定を可能にする。測定がなされるとすぐに、プランジャー(プローブ)が持ち上げられ、そして細胞の周りの媒体が元の状態に復元される。この非破壊の方法は、さまざまな刺激の条件(基本条件、環境変化、化合物刺激)下の生物学的試料に対する連続的に集められるべき複数の測定を可能にする。
【0006】
酸素消費速度(OCR)および細胞外酸化速度(ECAR)のような重要な代謝パラメータを測定することにより、生体エネルギーの表現型のプロファイルが、エネルギー発生と生合成にための基質と経路(解糖もしくは酸化的リン酸化)に基づいて明らかになり得る。製品は、細胞のミトコンドリアの機能および細胞の生体エネルギーの定量的測定を可能にする。
【0007】
例えば多細胞組織における好気的代謝、解糖および中間代謝のような重要な分析対象の測定を可能にするシステムに対する需要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書に記載される装置および方法は、例えば腫瘍組織試料のような、組織試料中もしくは細胞集団中の、その代謝プロファイルを作成するための生体エネルギーのパラメータの測定を可能にし、それにより、例えば悪性進行のメカニズムのより良い理解を可能にする。従って、本発明の実施態様は、今日まで他では検証し得なかったような生理学的に関連する仮説の検証を可能にし、それは例えば、腫瘍における表現型のシフトの測定および定量化を可能にすることによる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様は、三次元細胞試料の分析を実施するための装置を含む。当該装置は、プレートのウェルにおいて分析を実施するために、本明細書に開示されるように具体的に適合された機械中にプレートを配置することによって試験される組織試料を充填するウェルのプレートを含む。プレートは典型的には、個別の試料および試料の媒体を保持するための複数のウェルを画定し、それらにおいて、少なくとも一つのウェル、典型的にウェルの全体の配列が、それらの中に配置された試料ネスティング部位を含む。穴が試料ネスティング部位上に配置され、当該穴は、穴の中、およびウェル中に配置される試料の媒体の中に垂直に下降するプランジャーと嵌合するような寸法にされる。実施に際して、ウェルもしくはウェルプレートを、ステージもしくはプラットフォーム上の位置に維持し、そしてプランジャーをロボット制御で移動させることが好ましいが、プランジャーを固定してプレートを移動させることも、好ましくはないがまた可能である。構造はまた、試料ネスティング部位と流体接続された媒体チャネルを画定する。媒体チャネルは、プランジャーによって変位された媒体が媒体チャネルを通して流れることを可能にし、プランジャーが移動すると、試料を新鮮な媒体へと曝露することを可能にする。
【0010】
以下の特徴の一つもしくはそれ以上が含まれ得る。プランジャーは、好ましくはネスティング部位に対して移動し、好ましくは上昇工程と降下工程との両方において、試料周辺にて還流が引き起こされる。代替的に、プランジャーと試料ネスティング部位とが一緒に移動して試料を媒体の他の領域へと曝露し得る。媒体チャネルは、試料周辺で還流した媒体をウェルに配置された媒体へと返す流体管路を含み得る。穴、サンプルネスティング部位、および/もしくは媒体チャネルは、取り外し可能なウェルインサートによって画定されていても良い。
【0011】
試料ネスティング部位は、取り外し可能なウェルインサートによって画定されるか、または取り外し可能なウェルインサートの一部として画定される、媒体透過性プラットフォームを含み得る。ウェルは媒体チャネルとの流体接続中に水だめを含み得る。試料ネスティング部位は、媒体が集められ、媒体チャネルを通じて流れるような水だめ中に配置され得る。
【0012】
媒体チャネルは、媒体が穴中のプランジャーの上方への移動と下方への移動の両方において、試料周辺における還流の流動をなし得るように、ウェルの媒体表面真下の閉ループを画定する流体管路を含み得る。プランジャーの上方への移動の際にチャネルから試料へと使用済みの媒体が逆流することを防ぐための逆止め弁が、媒体チャネル中に含まれ得る。
【0013】
装置は、試料より分泌されるか、または試料によって吸収される、試料周辺の媒体中の溶質の濃度を検出するためのセンサを含み得る。センサは、組織試料近傍の領域において、例えば酸素、CO
2もしくはH
+の濃度を測定するために、プランジャ上に設置され、媒体中の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度に感受性である蛍光色素分子を含み得る。センサは、組織によって吸収されるか、または組織によって分泌され、ビーズ上に固相化する特定のサイトカイン、ケモカイン、ホルモン、もしくは他の生体分子に対する特異的な結合物質によってコートされるビーズを含み得る。組織によって分泌されるかまたは組織によって吸収される、関心の対象である分子の濃度を検出するために、ビーズは、ウェルの水だめ中で、その場で調査され得る。代替的に、ビーズは媒体から分離され、そして分析され得る。ある実施態様において、ビーズの代わりに、スポットされた抗体がウェルを通じた媒体の還流と流体接続するウェルの底部に配置され得る。スポットされた抗体は、関心の対象である他の分子を検出するために使用され得る。
【0014】
装置は、個々のウェルの穴中で往復運動するように適応したプランジャーを含み得る。ある好ましい実施態様において、蛍光色素分子のセンサは、試料周辺に配置される媒体中の溶質の濃度を検出するためにプラジャー上に配置され得る。センサは、試料周辺の媒体中に溶解した酸素、二酸化炭素および/もしくは水素イオンの濃度を測定し得る。
【0015】
複数のウェルが、例えば24ウェルもしくは96ウェルを含む、マルチウェルプレートを画定し得る。
【0016】
酸素、二酸化炭素、および/もしくは生物学的に不活性なガスの供給源は、媒体表面の上部に出来た空間もしくは媒体中で、ガスの組成を制御するために、ウェル中の媒体もしくは媒体表面の上部にできた空間と流体接続し得る。生物学的に活性な基質の溶液の供給源は、試料を基質へと曝露するためにウェル中の媒体と流体接続し得る。
【0017】
三次元細胞増殖の足場は、試料ネスティング部位上に配置され得る。
【0018】
他の態様において、本発明の実施態様は、三次元細胞試料の分析を実施するための装置を含み得る。装置は、試料および試料媒体を保持するウェルを含み得、ウェルは試料ネスティング部位を含む。穴はネスティング部位上に配置され得、穴は、穴の中、およびウェル中に配置される媒体の中に垂直に下降するプランジャーと嵌合するような寸法にされる。装置は試料ネスティング部位と流体接続する媒体チャネルをもまた含み得、試料周辺の媒体還流を可能にし、そして、プランジャーは穴中を往復運動して試料周辺の媒体の還流を推進するよう適応している。
【0019】
装置は、試料ネスティング部位周辺の媒体中における溶解した媒体成分の濃度を検出するセンサを任意選択で含み得る。
【0020】
さらに他の態様において、本発明の実施態様は、その中に配置される三次元細胞培養試料の還流を実現するためにウェルを適応させるための培養プレートのウェルに対するインサートを特徴とする。インサートは、(i)媒体透過性プラットフォームを含む試料ネスティング部位、ならびに(ii)その上に配置される、穴の中、およびウェル中に配置される媒体の中に垂直に下降するプランジャーと嵌合するような寸法にされている穴、を画定する構造を含む。インサートは、試料ネスティング部位と流体接続する媒体を画定し得、プランジャーによって推進される試料周辺の媒体の還流を可能にする。
【0021】
他の態様において、本発明の実施態様は、例えば、組織試料、生検試料、もしくは細胞足場が保持する細胞のような三次元細胞培養試料を用いて実験する方法を特徴とし、これにより試料の生存性を維持し、その微小環境を制御する。方法は、試料ネスティング部位を含むウェル、試料ネスティング部位上に配置されるプランジャーと嵌合するような寸法にされている穴、試料ネスティング部位と流体接続する媒体チャネル、ならびに穴の中を往復運動するよう適応したプランジャーを画定する構造を提供することを含む。試料はウェル中の媒体中の試料ネスティング部位に配置される。プランジャーは穴の中へと移動し、試料周辺の媒体の流動を促進し、チャネルを通じて媒体で試料を還流させる。
【0022】
一つもしくはそれ以上の、下記の特徴が含まれ得る。溶解したガスの組成を変化させることによって試料周辺の微環境を変化させるために、ガスが媒体中もしくは媒体上のウェル上部に出来た空間へと添加される。薬剤、薬剤候補もしくは毒素のような生物学的に活性な基質の溶液が媒体中へと添加され、試料を生物学的に活性な基体へと曝露することによって試料周辺の微環境を変化させる。
【0023】
試料周辺の媒体中の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度が測定され得る。時間的に分離された複数の測定が、試料周辺の媒体中の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度においてなされ得る。
【0024】
定量された一つもしくはそれ以上のガスならびに/または一つもしくはそれ以上の溶質が、ウェル中の媒体中へと添加され得、それによって、試料周辺の媒体中の微環境を所定の点に設定する。微環境は、低酸素状態に設定され得る。酸素捕捉剤が媒体中に添加され得る。
【0025】
ヒト生検組織試料が、ネスティング部位へと配置され、治療薬の候補が媒体中へと添加され得、試料に対する薬剤の効果が調査され得る。
【0026】
試料は腫瘍試料であってよく、定量された一つもしくはそれ以上のガスならびに/または一つもしくはそれ以上の溶質が、ウェル中の媒体へと添加され得、試料周辺の微環境が、生体内の腫瘍試料の微環境を模倣するような所定の点に設定される。
【0027】
方法は、試料ネスティング部位を含む複数のウェル、個々の試料ネスティング部位上に配置されるプランジャーと嵌合するような寸法にされる穴、試料ネスティング部位のそれぞれと流体接続した媒体チャネル、ならびにそれぞれの穴中で往復運動するよう適応したプランジャーを提供することによって、多重化し得る。試料は、複数のウェルのそれぞれの中の媒体中の試料ネスティング部位上に配置され得る。複数のプランジャーは、穴中を移動して試料周辺およびチャネルを通じた媒体の流動を促進し、それによって試料を媒体によって還流し得る。複数のウェル中の試料周辺の媒体中の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度は、一回もしくはそれ以上の回数で測定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1a】
図1aは、本発明の実施態様による、マルチウェルプレートの単一のウェルの概略的な断面図であり、プランジャーが降下状態にあり、そして、インサートがその中に配置されている。
【
図1b】
図1bは、本発明の実施態様による、マルチウェルプレートの単一のウェルの概略的な断面図であり、プランジャーが上昇状態にあり、そして、インサートがその中に配置されている。
【
図1c】
図1bは、インサートの底部の断面を示す。
【
図1d】
図1dは、本発明の実施態様による、インサートおよびインサートの底部の概略的な断面図であり、特定の現在好ましい寸法を示す。
【
図1e】
図1eは、インサートがその中に配置されたマルチウェルプレートの単一のウェルのより低い部分の二つの実施態様の概略的な断面図であり、試料ネスティング部位がウェルの底の水だめ中にあることを示す。
【
図1f】
図1fは、インサートがその中に配置されたマルチウェルプレートの単一のウェルのより低い部分の二つの実施態様の概略的な断面図であり、試料ネスティング部位(およびネストされた足場)がウェルの底のスクリーン上に配置されることを示す。
【
図1g】
図1gは、本発明のウェルの代替的な実施態様の構造の概略的な断面図であり、プランジャーの上方への移動の際に媒体チャネルから試料へと使用済みの媒体が逆流することを防ぐための逆止め弁として機能するリングを示す。
【
図2】
図2は、マルチウェルプレートの単一のウェルのより低い部分の概略的な断面図であり、その中に配置されるインサートと、インサート中にネストされる試料とを伴い、そして、水だめに配置される組織試料から還流する媒体に存在する生体分子を検出するためのビーズを示す。
【
図3】
図3は、マルチウェルプレートの単一のウェルのより低い部分の概略的な断面図であり、その中に配置されるインサート、インサート(「3D足場」)中にネストされた試料、および水だめ中のウェルの底に配置されるセンサを伴う。
【
図4a】
図4aは、マルチウェルプレート、およびプレートと合致するよう適応したカバーされたカートリッジの直立分解斜視図であり、本発明の実施態様によるプレートのさまざまな特徴を示す。
【
図4b】
図4bは、マルチウェルプレート、およびプレートと合致するよう適応したカバーされたカートリッジの反転分解斜視図であり、本発明の実施態様によるプレートのさまざまな特徴を示す。
【
図5】
図5は、ウェル中のガス含有物を制御するために、かつ溶液中への外部からの基質の添加を空気圧制御するためにその上に配置されるポートを含むウェルプレートのウェルの概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施態様による測定システムおよび測定装置の概略図である。
【
図7】
図7は、HCT116細胞の2D培養および3D培養を比較するミトコンドリアストレス試験結果を示すグラフおよび顕微鏡写真を含む。
【
図8】
図8は、本発明の実施態様による、プロトタイプ還流プレート中で測定される単一の膵島のグルコース応答を示すグラフを含む。
【
図9】
図9は、本発明の実施態様による、細胞が合体することを可能にされているウェルの概略的な断面図と上面図とを含む。
【
図10】
図10は、足場ディスクの発生を示すグラフおよび顕微鏡写真を含む。
【
図11】
図11は、カルボニルシアニド−p−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP)濃度の関数としての肝臓微小組織の測定呼吸容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施態様は、例えばマルチウェルプレートの一つもしくはそれ以上のウェルに配置された一つもしくはそれ以上の三次元細胞試料(例えば組織試料、生検試料もしくは細胞足場が保持する細胞)の一つもしくはそれ以上の性質の測定を可能にする。本発明を具体化するさまざまな具体的な形のプレート、ならびに本発明を具体化する構造へ、より従来型のプレートを適応させるウェルインサートは、本開示に基づいて当業者によって設計し得、そしてポリエチレンテフタレートもしくはポリスチレンのようなポリマー材料から従来の成型技術を用いて製造し得る。
【0030】
図1a〜1gは、取り外し可能なインサート100のみ(
図1d)のみを示すか、または例えばマルチウェルプレートの単一のウェルのようなウェル110へと配置されているものを示す。インサートは、媒体還流チャネル120を画定し、例えばウェル中に配置される組織140のような三次元細胞試料上の媒体の還流130を促進する。チャネルは、インサート自身の本体中に形成された多重の管路を含み得、より好ましくは、ウェルの内部表面とインサートの外部表面との間を画定する管路を含み得る。還流チャネルは、プランジャーの上昇工程の際にチャネルから試料へと媒体が逆流することを制限するよう機能する逆止め弁を含み得る。インサートは、インサートをウェルに挿入する前に試料を受容する試料ネスティング部位150をも含み得る。ある実施態様において、試料ネスティング部位は、インサートと独立して、例えばくぼみもしくは水だめ中のようなウェル自身に配置される。インサートもしくはウェル自身の本体は、プランジャー160と嵌合する穴150を画定する。プランジャー160、ウェル110および穴150は、好ましくはプランジャーのウェルに対する挿入および往復が媒体を攪拌し、および混合することを可能にするように、互いに整合している。プランジャーと穴は、プランジャーが下方に移動するか上方に移動するときに還流を誘導し、媒体が試料を還流し、還流チャネルを通過するように、互いに整合している。ある実施態様において、プランジャーは、ウェル中に配置される媒体中の一つもしくはそれ以上の分析対象の存在もしくはその濃度を観測するための一つもしくはそれ以上のセンサ180を導入するよう設計され得る。センサ180からの情報は、プランジャー170中に配置される光ファイバープローブ182を通じて伝送され得る。ある実施態様において、化合物送達構造185は、ウェル上に配置され得、例えば送達ポートを通じて、生物学的に活性な基質もしくはガスの、ウェルの三次元試料周辺の媒体への導入を可能にする。
【0031】
本発明の実施態様のこれらの要素は、より詳細に説明されるであろう。ウェル110の底部表面は、使用中の水だめとして機能するくぼみを画定し得る。くぼみは、ウェル中の試料の位置決定を方向付け、そして制御するために利用され得、そして底部表面は試料ネスティング部位150として機能する。ウェルは、6mmウェル直径を持ち、ウェル底部のくぼみが例えば0.5mmの深さと例えば3mmの直径とを持つ標準的な「Society for Biological Screening」SBSフットプリントとして設計されるマルチウェルプレートの多数のウェルの一つであってよい。くぼみの寸法は、ウェルで実施される分析の観点から選択され得る。例えば、容量は試料を保持するのに十分であるべきである。上述の例示的な寸法は、おおよそ300μmの厚さの試料を保持するのに好適である。分析の要求に応じて他の寸法もまた提供され得る。
【0032】
取り外し可能なインサート100は、一般的に円筒形であってよく、内部壁に対する締り嵌めを伴ってウェルに滑りこむような寸法であり、そしてそのように設計される。
図1dを参照できる。例えば、インサートは、約0.2インチ(約5.08ミリメートル)の高さh1と、約0.247インチ(約6.27ミリメートル)の外径ODを持ち得る。インサートの高さは、穴の長さによって画定されるストローク距離(ここでプランジャーが静水圧を発生する)、すなわち還流ストローク190が、還流容量の制御のために増加するかまたは減少するように選択され得る。インサートの外径は、インサートがウェル中にぴったりとおさまることができるように選択され得る。例えば、ウェル中でインサートを固定して中心に置くようにするように、突起195がインサートの外部側壁に配置され、いくつかの点で0.251インチ(6.37ミリメートル)外径OD’を提供する。インサートの上端は薄くなっていてよく、0.002インチ(50.8マイクロメートル)の厚さtlを持ち、プランジャーをインサートへと導く助けとなる。インサートの内部表面は、例えば0.15インチ(3.81ミリメートル)の直径(d1)を持つ穴を画定する上部テーパ部および下部垂直部を持ち得る。上部テーパ部は、例えば0.1インチ(2.54ミリメートル)の直径d2を持つ開口部を画定し得る。インサートの穴の底は、例えば0.080インチ(2.03ミリメートル)の直径d3を持つ開口部を画定し得る。開口部は、三次元細胞培養もしくは組織試料を保持する足場を支持するような寸法を持ち、かつそうするように配置される、例えばスクリーンのような媒体透過性プラットフォームを含み得る。インサートはインサートの底部で開始し、インサートの外径の壁まで達するような複数の還流チャネル120を画定し、プランジャーの降下工程の際に、直径d3を持つ開口部を通ってポンプ送達される流体が試料を横切る還流を作り出すように排出され得るようなチャネルを形成するようにされる。それぞれの還流チャネルは、例えば0.004インチ(0.1ミリメートル)の高さh2を持ち得る。
【0033】
一つの現在好ましい一組の寸法は、3ミリメートルの穴中の3ミリメートルのプランジャーのストロークを画定し、ポンプの排水容量(20mm
3もしくは20μlを少し上回る)は、チャネルの容量のおおよそ4倍になるようにされる。従って、現在企図されるように、プランジャーが穴に挿入されるときに少なくとも20μlの媒体を移動させるようにプランジャーとインサートの寸法が決められる。穴とプランジャーとの間のより小さいクリアランスは、よりよいポンプの効率をもたらし、それゆえ、0.001インチ(25.4マイクロメートル)の最小限のクリアランスと0.01インチ(0.25ミリメートル)の最大限のクリアランスは合理的な範囲である。ある実施態様において、より大きなクリアランスが企図され、以下に示すような、特に逆止め弁の機能を含む実施態様において、新鮮な媒体が上昇工程においてピストン近辺を下流に流れるようにされる。
【0034】
図1eを参照すると、インサート100がウェル110にぴったりおさまることが、インサートがしっかりと保持されることを可能にし、使用の際、ウェルの底およびインサートの底部におけるくぼみによって形成された接触点によって形成される小さいマイクロチャンバもしくは水だめに配置される試料ネスティング部位に試料140を固定化し、方向付けをし得る。示されるように、水だめは、還流チャネル120、すなわち媒体チャネルと流体接続し、それを通じて還流流動130が起こる。ある実施態様(図示されない)において、媒体チャネルは、使用済みの媒体の収集のためのドレインへと導かれ得る。ある実施態様において、媒体は、媒体チャネルによって、ウェルに戻されるよりもむしろ廃液部位へと移動させられる。
【0035】
これ以降、
図1fへの参照を含めてより詳細に説明されるように、他の実施態様において、試料ネスティング部位150は、インサート100自身の上に配置される。例えば、インサートはスクリーン190を穴160の底に含み得、そこでは、組織試料もしくは細胞を含む足場200が配置され得る。さらに他の実施態様において(図示されない)、試料ネスティング部位は、プランジャー上に配置され、例えばその底部表面から固定されて吊持され、試料ネスティング部位がプランジャーと一緒に移動して試料を媒体の異なる領域に曝露するようにする。従って、可能性があるが好ましくない設計は、プランジャー上の試料ネスティング部位の吊り下げを含む。
【0036】
インサートによって画定される媒体チャネルは、媒体がプランジャーによって入れ替えられて試料の近傍を離れるようにするよう画定され得、例えば、インサートの外部表面とウェルの内部側壁によって画定される環帯を通じて周壁を流れることによってである。ある実施態様(図示されない)において、媒体チャネルはインサートの底部からインサートのより高い部分まで伸長し得る。
図1cを参照すると、例示的な実施態様において、媒体チャネルはインサート100の底部に画定される複数の(例えば4個の)還流チャネル120を含み得る。還流チャネルはインサート底部表面上に画定されるぎざぎざであってよい。代替的に、還流チャネルはインサートの底部に画定される円筒形の開口部であってもよい。それぞれの媒体チャネルは、サンプル周辺を還流した媒体を、ウェル中に配置される媒体へと戻すか、または代替的に廃液貯蔵器へと移送するような流体管路を画定し得る。媒体チャネルは試料ネスティング部位と流体接続し、その中を通じての媒体の流動を可能にする。媒体の流動は、プランジャー170によって推進され、それよによってプランジャーの移動に伴って試料を新鮮な媒体へと曝露することを可能にする。
【0037】
図1を参照すると、インサートは試料ネスティング部位150を含み得る。例えば、インサートは、インサート底部表面の開口部にわたるスクリーン190のような媒体透過性プラットフォームを含み得る。スクリーンは、ポリエチレンテフタラート(PET)もしくはポリスチレン、セルロース、紙などのようなポリマーのような任意の数の材料から作製し得、そして超音波溶接、熱かしめ、接着剤、機械的封入によって固着され得る。ある実施態様において、試料のネスティング部位への接着は、MarriGelTMもしくはCellTakTMのような、接着促進剤もしくは組織接着剤を用いて向上され得る。上述するような代替的な実施態様において、試料ネスティング部位はウェルの底のくぼみ中にあり得る。
【0038】
媒体チャネルのそれぞれは、ウェル中の媒体表面の真下の閉ループを画定する流体管路を含み得、穴中のプランジャーの上方への移動および下方への移動における試料周辺の媒体還流流動を可能にする。
【0039】
インサートは、射出成型によって製造し得る。表面濡れ性は、例えば、より親水性の表面を作出することによって還流チャネルにおけるガスの泡の捕捉を消失させるためのインサートのプラズマ前処理を実施することによるような、それ自体公知の処理によって増加され得る。
【0040】
穴は、好ましくはネスティング部位上部に配置され、ウェルに配置された試料の媒体中のインサートへ向けてプランジャーが垂直に降下するのを誘導し、静水圧と試料周辺の媒体の動きを作出する。このように、プランジャーは、ウェル中に配置される穴中、例えばインサートによって画定される穴中での往復運動を可能にするよう適応し得る。
図1aは、プランジャー170が穴160中の試料の近接近にまで伸長することを図示し、一方で
図1bは、プランジャー170がいくらか引っ張られているところを図示する。プランジャーが還流ストローク190を画定する距離に沿って上下動するに従って、媒体の容量が、静止圧を介して組織もしくは足場を横切って、インサートとウェルの内部表面の間の外壁を上方(もしくは下方)へと動かされる。
【0041】
図1gは、プランジャーの上昇工程の際の還流チャネルから試料への媒体の逆流を阻止するための逆止め弁120の一つの形態を示す。任意選択で追加される逆止め弁210は、例えば、培養媒体の本対中のチャネルの環状開口部にわたって適合する弾性ポリマーを含む、浮遊環状リングの形態をとる。降下工程の際、チャネルからの静水圧はリングを移動させ、使用済みの媒体を上方かつ半径方向内向きに流動させ、ウェル中の媒体の容量へと返すようにする。プランジャーの上方への移動の際、吸引がリングをチャネル開口部と実質的に封止係合するように保持し、チャネルからの媒体の逆流を阻止する。従って、媒体はプランジャーと穴の間の環状クリアランス空間を通ってプランジャー付近へと引き込まれる。他の逆止め弁の配置は企図され、いくらかの媒体の逆流が許容されるとき、逆止めバルブの機能は省略され得る。逆流を阻止する逆止め弁のさらに他の代替は、使用済みの媒体の再循環をしないようにし、ウェルプレート本体中の貯蔵器へと一方向排水に還流チャネルを設計する(図示されない)。
【0042】
ある実施態様において、試料ネスティング部位は、インサートもしくは水だめの底部に付着された足場200を含み得る。足場は、組織の実質およびそれを取り巻く生体内の構造を模倣するようなコラーゲン膜のような三次元の多孔質体である。そのような足場は市販され、例えばAlvetex(登録商標)Scaffoldもしくは3D BioTek足場材料のようなゲルもしくは線維性/多孔性材料から製造され得る。Alvetex(登録商標)Scaffoldは、高多孔性の、架橋されたポリスチレン足場であり、200μm厚の膜にされた断片である。生じる材料は、不活性であり、通常の使用において分解しない。それはさまざまな従来の細胞培養プラスチック製品のフォーマットと適合するよう適応される。Alvetex(登録商標)Scaffoldは、その中の、適切なニッチ環境において細胞が増殖し、移動し、分化しそして機能することのできる好適な3D構造である。細胞は、三次元の形態を維持し、近接の細胞と密接な相互作用をなし得る。
【0043】
図2を参照すると、代替的な実施態様において、ビーズ220が、関心のある対象である生体分子への特異的な結合剤が、試料分析を補助するための手段として試料の真下で、もしくは試料の近傍で、ウェル110に配置される。特に、足場200もしくは組織がインサートに固定化され得、媒体がそれを通って、およびそれの周辺を還流し得るようにされる。この配置において、媒体は、例えば、重要な栄養素、シグナル伝達分子、薬剤などを含む。接着分子を含むLuminex(登録商標)より入手可能であるようなビーズはウェルの底に配置され得、複数のシグナル伝達分子が捕捉され、そして続けて検出されるか定量されるかする。シグナル伝達分子の濃度を効果的に増幅させ、およびそれらをビーズ上に効果的に捕捉するような試料との密接な接触において、水だめおよび小容量の媒体の利点を得ることができる。ビーズは、それらが足場と外周近辺の小チャネルとの間に捕捉されるため、好ましくは、ウェルの底に滞在する。分析の最後に、インサートもしくはインサートの配列は取り出され、ビーズは、例えばフローサイトメーターによる分析のような公知の技術によって解析される。
【0044】
上述の任意選択のビーズに加えて、装置は、好ましくは、例えばプランジャー上に配置される、試料周辺に配置される倍対中の溶質の濃度を検出するためのセンサ180を含む。センサは、試料近辺の媒体に溶解した酸素、二酸化炭素、水素イオンの濃度を測定し得る。定時的な測定により、その微環境のさまざまな条件下の試料の健康もしくは代謝効率の調査を可能にする。
【0045】
図3を参照すると、センサ180は、ウェルの底もしくは水だめに配置され、媒体中の溶質の濃度を検出する。例えば、インサート100の底と、ウェル110の底との間の空間においてO
2センサもしくはpHセンサを配置し得る。センサを含むプレートは市販されるが、その欠点は、細胞をセンサ上で増殖する必要があることである。媒体に添加する水溶性センサを含むキットもまた市販されるが、それもまた欠点を示す。本明細書に記載される実施態様は、底のセンサとその上部のインサートを伴って供給されるマイクロウェルプレートを可能にし、マイクロウェルプレートを、例えば一連のBioTek Synergyのプレートリーダーのような標準的なプレートリーダーによって解析できるようにする。これらの型のセンサの設計は、足場または膜上で増殖する二次元培養もしくは三次元培養と共に利用され得る。
【0046】
実施すべき分析およびその選択された構成に応じて、酸素消光蛍光センサーのような酸素センサ、蛍光センサ、ISFETおよびインピーダンスセンサを含むpHセンサ、重炭酸塩緩衝共役センサ、アンモニウム染色共役蛍光センサならびに他のCO
2センサを含むCO
2センサ、さまざまなイオンセンサおよび低分子センサ、表面プラズモン共鳴センサおよびウッドの異常回折の原理を利用するセンサを含む高分子センサ、およびマイクロ波センサのようなさまざまな型のセンサが装置と共に使用できる。ある実施態様において従来型のプレートリーダーを使用し得る。
【0047】
好ましいセンサは蛍光色素分子である。多くの蛍光感受性化合物および前駆体が当技術分野において記載され、そして多くは、例えばMolecular Probes Inc.およびFrontier Scientific,Incから市販されている。現在好ましい酸素センサは、例えばシリコーンラバーのような酸素透過性ポリマー中に粒子としてもしくは均一に分散して固定化された、ポルフィリン化合物もしくはローダミン化合物のような酸素濃度に反比例するシグナルを示す蛍光色素分子である。現在好ましい化合物はポルフィリンである。現在好ましいpHセンサは蛍光指示色素であるフルオレセインであり、そのシグナルは色素のプロトン化によって減衰し、そして担体ポリマー中に懸濁された粒子中に封入されるか、または親水性ポリマーに対し共有結合されている。有用な蛍光分子CO
2指示センサは、二酸化炭素と水との反応による炭酸の生成によって間接的に変調する蛍光を持つpH感受性の伝達に基づく。例えば、O.S.Wolfbeis、Anal.Chem.2002年、74、2663〜2678ページを参照できる。グルコースと複合体となりプローブの蛍光を変調させる電荷移動を生じるボロン性のプローブを用いる非酵素性の伝達に基づくか、またはグルコース酸化酵素を蛍光性酸素センサへと結合させて、グルコースの結合と酸化によって酸素センサの定量的な変調をもたらすような酵素性の伝達に基づく、グルコースを検出する蛍光色素分子もまた使用できる。例えば乳酸塩、アンモニアもしくは尿素のような生物学的分子に感受性のある蛍光色素分子もしくは他の型のセンサを用いることもまた、本発明の実施態様に包含される。乳酸塩センサは、酵素性センサの設定に基づき得、乳酸塩酸化酵素が蛍光性酸素センサへと結合し、乳酸塩の結合および酸化が酸素センサの定量的な変調を生じる。アンモニアもしくはアンモニウムイオンのセンサはプロトン化pH指示薬の疎水性のガス透過性ポリマーへの固相化で構成され、一過性のアンモニアとの反応によって蛍光出力が定量的に変調する。尿素センサは、酵素性センサの構成に基づき得、ウレアーゼが蛍光性アンモニア伝達へと結合し、尿素の結合とアンモニアへの還元がアンモニアセンサの蛍光の変調を生じる。センサの性質は、一般的に本発明の実施態様の態様を形成するものではない。
【0048】
使用の際、インサートは、インサート中および/もしくはウェルの底のくぼみ中の組織試料上の媒体のカラム中に静水圧を形成することによって還流を提供するためにプランジャーを誘導する。プランジャーがカラムを通じて垂直に往復運動するとき、媒体が組織を横切って、しばしば、組織を貫いて流動し、そしてインサートの外周周辺の一連のチャネルを通じ、かつインサートの外部表面とウェルの内部壁との間を上向きにチャンバから外に出る。プランジャーを上下に動かすことによって、媒体は組織を横切って移動し、栄養素を補給し、酸素を提供し、そして老廃物を洗い流す。従って、試料周辺の微環境は、測定中、連続的に還流され得る。プランジャーが底部に移動するとき、インサートの残りの部分もしくはインサートの上部において、その動きは停止し、少量の一過性の容量が作出され、測定がなされる。インサートを通る還流の効率は、プランジャーとインサートの間のストロークの高さ、速度およびクリアランスを変化させることによって増加し得る。
【0049】
図4aおよび4bを参照すると、上述のインサートを受容し、かつ本発明の実施態様を実施するのに好適なウェルのプレートの設計が示される。それは、複数のウェル110を画定するウェルプレート400を含む。ウェルプレートは、カートリッジ410および取り外し可能なカバー420と組み合わせることができる。描かれる実施態様において、マルチウェルプレート400は24ウェルを持つ。プレート中のウェル110の数は、1から数千まで変化し得る。ある実施態様において、ほとんどすべてのサイズの単一のウェルを製造でき、または複数のウェルもまた作製でき、または複数のウェルは、一次元の配列でも二次元の配列でも作製できる。さまざまな実施態様において、例えば、Society for Biomolecular Screening standards for microplate(「SBS−1 Footprint」および「SBS−4 Well Positions」、いずれも2003年5月20日に更新された十分に提案された標準である)に記載されるようなマイクロプレートの配列および寸法に対応する二次元配列のウェルを利用することができる。プレートは、12、24、96、384、1536個、または任意の他の数の個々のウェルを含み得る。本発明の実施態様を実施するために必要とされる微細構造のために、より大きな数のウェルは技術上の課題をもたらす。カートリッジ410は、一般的に、例えば成型されたプラスチックより作製されるフレーム430を含む平面要素である。平面440は、マルチウェルプレート400において画定される複数のウェル110の個々の開口部の数に対応する、すなわち一致する、複数の領域450を画定する。描写される実施態様におけるこれらの領域450のそれぞれにおいて、平面は、ガスもしくは試薬の送達のための容器として機能する第一の、第二の、第三の、および第四のポート460ならびにプランジャー170に対する中央開口部460を画定する。ポートのそれぞれは、その真下の対応するウェル110への試験用流体を保持し、要時に放出するよう適応する。ポート460は、4つのポートのグループがウェル110にわたって配置され得るような寸法であり、そのように配置され、4つのポートのいずれかからのガスもしくは試験用流体が対応するウェル110へと送達され得る。ある実施態様において、それぞれの領域におけるポートの数は、4つより少なくてもよく、または4つより多くてもよい。ポート460およびプランジャー170は、協調的な横の動きによってマイクロプレート中に入れ子になるようにマイクロプレート400に対して適合するよう配置される。適合する領域を含むためのマイクロプレートの構成は、その製造についてより緩い許容範囲を可能にし、微妙に異なる寸法を持つマイクロプレートと共にカートリッジを使用することを可能にする。例えば、平面440を形成するために弾性ポリマーを用いることによって適合性を達成でき、フレーム430とそれぞれの領域におけるプランジャーおよびポートとの間の相対的な動きを可能にする。
【0050】
ポート460のそれぞれは、円筒形、円錐形もしくは立方形を持ち得、頂部において平面430を介して開口し、通常定部表面の中心に位置する小さい穴、すなわち毛細管開口部を除いて底において閉じられている。毛細管開口部は、正の圧力差力、負の圧力差力もしくは正の遠心力のような外部の力がないときに、表面張力によって試験用流体をポート中に残すように適合する。それぞれのポートは、ガス、試験用化合物、もしくは任意の他の固形物に対して不浸透性のポリマー材料によって製造され得る。マルチウェルマイクロプレート400と共に使用されるよう構成されるとき、それぞれのポートに含まれる液体容量は、500μlから2μlのように少量の範囲であってよく、この範囲外の容量もまた企図される。
【0051】
図4bを参照すると、カートリッジの個々の領域において、対応するウェル110中に配置されるよう適合する潜水可能なプランジャー170(すなわち、センサスリーブもしくはバリヤ)が一つもしくはそれ以上のポート460の間に配置され、それらと関連する。プランジャー170は一つもしくはそれ以上のセンサ180を持ち得、ウェル110の媒体中への挿入のために、そのより低い表面に配置される。センサは、試料ネスティングサイト周辺の媒体中の溶解した媒体成分の濃度を検出するのに使用できる。この目的のためのセンサの一つの例は、シリコーンラバーのような酸素透過性物質中に包まれた酸素干渉性蛍光色素分子のような蛍光性指示剤である。蛍光色素分子は、ウェル110中の成分の存在および/もしくは濃度に応じて蛍光する性質を持つ。電気化学センサー、クラーク電極などの他の型の公知のセンサも上述のように使用できる。プランジャー170は、センサを受容するよう適合した開口部と内部容量とを画定できる。
【0052】
カートリッジ410は、プランジャーに付着し得るか、または接着なしにプランジャー近傍に配置されて独立した移動をなし得る。カートリッジ410は、単一の単位に仕上げられ、同様のプランジャーの配列と関連した、化合物の貯蔵と送達ポートの配列を含み得る。
【0053】
開口部は、カートリッジ110もしくはマルチウェルプレート400に対する取り外し可能なカバー420をもまた特徴とし得る。マルチウェルプレート400に対するカバーとしてのカートリッジ110の構成は、ウェル110に配置された試料もしくは媒体の蒸発もしくは混入の防止を助ける。カバー420はまた、カートリッジ110にわたって合致するよう構成され得、それによってあり得る混入を低減し、ウェル中のガスの含有物を保持し、もしくは、カートリッジ410のポート460に配置された流体の蒸発を低減する。
【0054】
図5は、本発明の実施態様のウェル110の概略的断面図を描写し、実験中の試料の微環境を変更するために、ウェルに対して薬剤もしくはガスを添加するのに用いられる構造185を示す。存在する送達システムの詳細として、市販のSeahorse XF Analyzerが、米港特許出願公開20080014571に開示され、参照によりその開示を本明細書中に組み入れる。薬剤送達マニフォールド510は、例えばすなわちガスシリンダーもしくは内部空気530からそれぞれのウェルの真上の上部空間に対して外部ガス520のような環境ガスを送達するように修正され得る。内部空気は、例えば、薬剤ポートを加圧して薬剤化合物を送達するために小さい内部コンプレッサーを介して圧縮される装置内部からの大気であってよい。上部空間へのガスの送達は、試験用試料周辺の環境を操作して低酸素症(5%未満のO
2)、正常酸素および/もしくは低pHを模倣する状況を作り出すことを可能にする。ある実施態様において、酸素、二酸化炭素および/もしくは生物学的に不活性なガスの供給源は、上部空間もしくは媒体中のガスの組成を制御するために、ウェル中の媒体中もしくはウェル中の媒体表面上部の空間へと注入できる。ガスは、ポート460から媒体もしくは上部空間へと注入できる。
【0055】
特に、このことを達成する一つの手段は、カートリッジ410がさまざまな化合物をウェルプレート中の試料に送達するために使用され得る一連の4ポート460を含む
図2aおよび2bに関して記載される構成とともにである。例えば、XF装置において実施される共通の試験は、ミトコンドリアストレス試験である。この分析において、生物学的試料のさまざまな化合物(オリゴマイシン、FCCP、ロテノンおよびアンチマイシン)に対する反応を測定するために、一連の注入がカートリッジの薬剤ポートを通じて送達される。化合物は、分析の開始前にXFカートリッジの薬剤貯蔵器(ポート)にあらかじめ充填される。カートリッジが装置中に挿入されるとき、電磁弁によって活性化されるとき、貯蔵器の上部空間に対して空気圧を提供し、化合物を小さな開口部を通じて生物学的試料を含むウェルに対して推し進めるようなマニフォールドに結合される。空気のマニフォールドおよびバルブシステムは、ポートの一つを外部ガス供給(ガスシリンダーもしくはボトル)に対して向けなおすよう調節され得る。ガス供給器は装置へと背部コネクタパネル上のポートを介して結合され得る。ボトルは装置近辺に配置され得、注入されるガスの過失のための調節器およびバブラーを含み得る。活性されるとき、電磁弁が開き得、ガスをマニフォールド/カートリッジ接触面を通し、薬剤ポート開口部を通し、そして生物学的試料上の頂部空間へと流動させ得る。プランジャー(プローブ)を垂直に周期的に移動させることによって、ガスが媒体と混合され、利用可能な酸素の試料に対する制御を可能にする。例えば、アルゴンを頂部空間へと還流させることによって、媒体中の利用可能なO
2が退去され、より低酸素の状況が試料周辺に作出される。ガスと混合を停止させることによって、周囲環境レベルのO
2が再び確立され得る。
【0056】
ある実施態様において、生物学的に活性な基質溶液の供給源は、試料を基質に曝露させるために、ウェルの媒体と流体接続され得る。
【0057】
電磁弁の操作とタイミングを制御するために、装置のソフトウェアは、バルブ/タイミングを制御するのを促進し、校正の際に用いられる演算変数の一部を示すために修正され得る。例えば、媒体中のO
2のモル濃度を計算するために、校正における濃度は好ましくは知られており、計算表に入力される。ある条件において、開始時の校正値(Fもしくは現在の周囲環境濃度)は未知であってもよい。この場合、校正と式(1)の溶液(以下の例2を参照)は、一連の対照ウェルに対して亜硫酸ナトリウムが注入され、既知のF0値に基づいてシステムを校正することによって達成され得る。これらの結果を計算するために、ある係数はソフトウェアにおいて、利用可能にされ得る。これらの変数、バルブ制御および校正係数の計算への参照を促進するためにソフトウェア中において分離したウィンドウが作出され得る。
【0058】
装置は、よく分析された細胞株(マウスC2C12)を用いて、ガスシステムの正しい操作と制御とを確認するために試験され得る。一連の試験は、媒体からO
2を追い出し、試料周辺の低酸素の微環境を作出するために実施され得る。これらの試験は、
1. 公知および未知の周囲環境のO
2濃度において、装置を校正すること。
2. ガス送達システムの性能および、環境O
2レベルを所望の値(5%未満)にする能力を確認すること。これは、O
2レベルのデータを観察することによって装置内で確認され得る。
【0059】
O
2およびpHを制御するための代替として、試料の環境を環境チャンバに装置丸ごと封入すること、および、チャンバを吸引することによって所望のレベルになし得る。この代替的な解決法は、非常にコストがかかる可能性があり、多くの実験室の空間を必要とし、組織周辺の所望のレベルを達成するのに長い時間を必要とするため、望ましくはない。これらのO
2レベルが達成されるときまでに、組織が死亡している可能性がある。
【0060】
図6は、本発明の実施態様と関連して使用される分析器の概略図を示す。それは、筐体615(点線で示される)中に配置される化合物貯蔵器と送達装置610、適合して配置されるセンサー構造および複数の流体ポートを受容するための複数の開口部を画定するカートリッジ410(
図4aおよび4bに詳細が示される)、ならびに例えば細胞培養プレートのようなマルチウェルプレート400を受容するよう適合するステージもしくはベース130を含む装置600を含む。カートリッジ410は、マルチウェル400上に配置され、合致するよう適合する。カートリッジ410は、カートリッジ410を受容するよう適合するカートリッジホルダ630に任意選択で保持される。装置はまた、双頭矢印によって示されるように往復運動でき、好ましくはモーター(図示されない)によって駆動され、エレベーター機構650を含むマウンティングブロック640を含む。エレベーター機構650は、ステージ620もしくはウェルプレート400に対してカートリッジ410を移動させるように適合され得る。マウンティングブロックは、ガス供給もしくはガス受容器670に結合したガス多重変換器660を含む。ガス供給器670は、カートリッジと流体接続してポートからマルチウェルプレート400中のウェルへの試験用流体の送達を促進するか、または一つもしくはそれ以上のウェル中のガス組成を固定するために使用される。センサを伴う複数のプローブもしくはプランジャー170は、カートリッジ410の複数の開口部に対して挿入できるように適合し、そして、マルチウェルプレート400中のウェルに配置される細胞の状態を示すデータを収集するために使用され得る。
【0061】
化合物貯蔵および送達装置610は、コンピュータ690と統合され得、エレベーター機構、多重変換器および圧力源を制御できるような制御器680によって制御される。制御器680は、これによって、関連するセンサーがウェル中に配置されるときにポートから対応するウェルへの試験用流体の送達を可能にする。
【0062】
本明細書に記載される装置は、上に参照される米国特許出願公開20080014571に開示される装置の修正であり、組織試料、生検試料もしくは細胞を保持する細胞足場のような三次元細胞培養試料の分析の実験を可能にする。さまざまな資料はその微環境において維持され、制御がなされる。ある実施態様において、媒体もしくは媒体上のウェル中の上部空間に対してガスが添加され、溶解するガス組成を変更することによって試料周辺の微環境が変更される。他ある他の実施態様において、生物学的に活性な基質溶液が媒体へと添加され、試料を生物学的に活性な基質へと曝露させることによって試料周辺の微環境を変更できる。一つもしくはそれ以上のガスならびに/または一つもしくはそれ以上の薬剤もしくは他の溶質の定量された量がウェル中の媒体へと添加され得、試料周辺の媒体の微環境を所定の点に設定できる。ウェル中の微環境を低酸素状況へと設定し得る。試料周辺の媒体中の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度を測定し得る。試料周辺の媒体中の一つもしくはそれ以上の溶質の濃度の時間的に分離された複数の測定もなし得る。
【0063】
ある実施態様において、方法は、硫酸ナトリウムのような酸素捕捉剤を媒体へ添加することを含む。
【0064】
ヒト生検組織試料がネスティング部位へと配置され得、薬剤候補が媒体中へと添加され得、試料中の薬剤の効果が調査され得る。
【実施例】
【0065】
以下の例は、ある例示的な好ましい実施態様ならびに本発明の実施を例示するが、すべての実施態様およびすべての用途を例示することを意図していない。
【0066】
例1:組織還流および固定化を意図した、特製の射出成型したウェルプレートおよび還流インサートの開発
Seahorse XF96流動分析器は、細胞を基にした分析における生体エネルギー活性を測定するために開発され、最適化された。XF測定は、少量の一次的な測定容量が、ウェルプレートの底に接着した細胞の単層培養周辺に作出される、特許化された方法に基づく。プランジャー(プローブ)がウェル(3.8mm直径)の底に降下するときに作出され、一連のスタンドオフ(0.20mm高さ)を用いておおよそ2.25マイクロリットルの容量が作出される。ウェルプレートのこの設計は、組織試料での使用に最適化されておらず、それは以下の理由による。(1)測定の間に試料が異動することを防ぐために試料を固定化しかつ方向付けする必要がある。(2)三次元試料の栄養素の連続的で均一な供給(還流)が不足するためである。(3)200マイクロメートル厚へと試料を企図するときに、より大きな測定チャンバが必要とされるためである。組織試料での使用にウェルの形状を適合させるために、本明細書に開示されるのは、Seahorse XF96装置中で機能する使い捨ての96穴プレートと、プランジャー(プローブ)システムであり、それは組織試料を固定化し、方向付けし、還流を提供する。
【0067】
上述の特製のウェルプレートおよび還流インサートは組織試料と共に使用するのに好適である。上述のように、ウェルプレートは、ウェルの底のくぼみ中での試料の配置を方向付けし、制御するための0.5mmの深さのウェルの底の3mmの直径のくぼみを持ち、6mmのウェル直径を持つ標準的な「Society for Biological Screening」SBS footprintへと設計され得る。還流インサートは、インサートが試料にわたる空間に保持され、そしてウェルの底のくぼみに試料を固定化するように、壁とわずかに緩衝してウェル中に滑入するよう設計される。
【0068】
例2:pHセンサと酸素センサの校正係数の測定
ウェルプレート、インサートおよびプランジャー(プローブ)は組み立てられ、試料の配置と熱制御とを抵抗する特殊なヒートシンクに導入された。適切な位置の補正とセンサの校正手順は開発され得る。校正手順は、おおよその容量、拡散定数の測定、ならびにプレート、インサートおよびプローブの形状に特異的なセンサの利得からなる。これらの定数は、分析対象の濃度(O
2もしくはH
+)の関数としてシグナルの出力を示す一連の定数を示す既知の濃度に滴定される校正試薬を用いて計算できる。例えば、pHセンサを校正するとき、光学シグナル(16ビット出力に基づく)が、pH7.4の所望の開始シグナルを提供するそれぞれのプローブの励起強度を測定することによって開始H
+濃度(pH7.4)に標準化される。異なるH
+濃度におけるシグナルは、標準曲線を作成するために記録される。標準曲線の係数は、装置へと入力され、それぞれのセンサは測定されるべき濃度の範囲にわたって校正される。酸素センサのための同様の校正もまた、周囲環境のO
2濃度下(PPO=115mmHg)において出力を標準化し、硫酸ナトリウム(酸素捕捉剤)を注入することによってゼロにおける校正点(PPO=0mmHg)を発生させて第二の校正点を測定することによって実施され得る。Stem Volmer消失定数は、以下の式1に基づいて計算でき、この関係は測定の際のそれぞれの時間点におけるO
2レベルを測定するために使用される。
K=1/O
2(F
0/F−1)(式1)
ここで、
Kはシュテルン-フォルマー定数
F
0はゼロO
2での信号出力
Fは周囲環境での信号出力
O
2は周囲環境でのO
2濃度。
【0069】
例3:最良のインサート形状の評価と選択
校正定数が確立され、装置に導入されると、一連の試験が還流インサートの最良の形状を決定するために実施された。これらの試験は、標準的な、よく分析されたC2C12線維芽細胞のような細胞株におけるOCR/ECARの繰り返し測定を含む。そのような測定の後、プランジャー(プローブ)を、測定チャンバを還流させ、タイミング、Z移動、最良の還流を得るための速度を最適化するために周期運動させ得る。最良の還流は、システムがO
2およびpHの開始濃度へと測定チャンバを復元する能力をもとに決定され得る。
【0070】
例4〜6:本発明の実施態様を用いる実験研究
プロトタイプの装置が以下の例4〜6に述べられるように、さまざまな形状の性能と本発明の実施態様の用途を評価するために製造された。装置は、ポリカーボナートの還流インサートと合致する複数の円筒形の容器を含む。インサートは容器の底に合致して、1.5mmポートを通じて接続する容器中で一対のチャンバを形成する。上部チャンバは、下部チャンバの容量のおおよそ30倍の容量の媒体貯蔵器からなる。インサートの内部直径は、おおよそ5mmのストローク長と3mmの直径を持つピストン様ポンプを形成するSeahorseセンサカートリッジを使用する。Seahorseセンサカートリッジのプランジャーが、インサートの内径を通じて移動するとき、チャンバの上部セクションからポートを通じてチャンバの下部へと媒体を移動させ、容器の内径とインサートの外径の間の一連の周辺弁を通じて媒体が流出する。それぞれのカートリッジのストロークによって、流体の容量は、流体の入れ替わりが静止容量の2倍量を最小限とするように下部チャンバを通じて還流する。下部チャンバの底において、容器中にくぼみが配置され、使用の際、球形の微細組織が測定のために配置される。測定の際、カートリッジは表面の残余部分に至り、そこでは、センサはポートの中心に配置され、上部チャンバを下部チャンバと分離する。センサは微細組織にわたって配置され、上部チャンバから下部チャンバを封止する。この流体の減少した容量において、さまざまな時間間隔において測定結果がセンサより集められ、酸素およびpHの濃度が記録される。このデータより、酸素およびpH流動(dO/dT)、(dpH/dT)が測定される。方法は、インサートの形状による、組織の位置を維持し、組織の代謝能測定を促進し、かつ流体の入れ替わりを最適化する性能を評価するのに使用された。
【0071】
例4
プロトタイプのインサートとプレートを用いる単一の3Dスフェロイドの測定の実現可能性が証明された。例えば、
図7を参照して、Seahorse Bioscience Mitochondrial Stress Test(MST)を用いて2D単層培養結腸癌細胞(HTC116)が、3Dスフェロイド(ハンギングドロップ法を用いる)で形成された細胞と比較された。右側のスフェロイドの画像は、ウェル(約200マイクロメートルの寸法)の底に1mm×0.25mm起伏に配置される単一の微細組織を示す。特徴は2つの培養型(最大呼吸、ベース部分)の間での予備の呼吸容量における明確な差異を明らかにした。可能な理論的な説明は、2Dで増殖する細胞はより増殖性であり、これにより、増殖を維持するためにより高い分画の基礎的なOCRを使用し、一方で3D(n=3)での細胞は2倍高い予備能力を持つということである。この例における3D培養はまた、3D培養スフェロイドいおけるより遅い反応によって証明されるように薬剤曝露(オリゴマイシン注入)に対する動的反応において、明確な差異を示す。
【0072】
例5
プロトタイプのチャンバを用いて、単一の膵島の代謝能を還流し、維持し、そして測定する能力が証明された。例えば
図8を参照して、単一の膵島(おおよそ100マイクロメートルの直径)が(ウェル当たり1個)プレートに導入され、15mMのグルコース、FCCPおよびアンチマイシンAの導入の連続した注入に暴露された
これらの特徴は、15mMのグルコース注入に反応した呼吸の明確な変化を測定する能力を明らかにした。さらに、単一の膵島(ウェル当たり1個)の測定において、機能を測定するために膵島集団における代謝の特徴を直接的に比較し、違いを調べるのに使用できる。例えば、表の上部左における膵島は、グルコースに反応する一方で、上部右の膵島は反応しない。これらの測定は、グルコースに反応して酸素消費を増加する倍率に応じてグループ分けすることを促進し、移植前に品質管理のために膵島を順位付けすることを可能にする。将来的に、このデータは、還流管路中に共配置されるin situ ELISA分析を用いてグルカゴンおよびインスリンのバイオマーカーのセットと相関させて、酸素消費とインスリンおよびグルカゴンの分泌と相関させられるであろう。
【0073】
例6
50〜600マイクロメートルの寸法の範囲の3D微細組織が生成された。例えば、ハンギングドロップ法を用いて、細胞はInSphero Bioscience(スイス国チューリッヒ)により提供され市販される播種蓋中の40μlの媒体中に播種された。
図9を参照すると、媒体を伴う細胞は液滴の底で合体し、そこで4日後に、それらは、細胞と自ら生成した細胞外マトリクス(ECM、すなわちそれらが組織を形成するように細胞を包む/囲む物質であり、一般的に、細胞周辺の微細環境を画定するたんぱく質のマトリックスからなる)を含む統一された球を形成する。スフェロイドがいったん形成されると、それらは、追加の100μlの媒体とともに貯蔵プレートへと配置され、そこれでそれらは使用まで維持される。この方法を用いて3Dスフェロイドは、HepG2(ヒトの肝臓がん)およびHCT116(ヒトの結腸癌)から生成された。これらの細胞株は、単一の培養としておよび共培養として、均一の寸法のスフェロイドを形成した。さらに、
図10を参照すると、MCF−7(乳管癌)を含む足場ディスクが成功裏に作成された。これらの足場はSeahorse還流マイクロチャンバの底に配置される2mm直径のセルロースフィルター紙(ワットマン114)を用いて作出され、Seahorse MST手順を用いて生体エネルギーの機能について測定された。これは、自己集合スフェロイドと足場マイクロディスクの両方を組み立て、維持し、それらの生体エネルギーの機能を測定することについて実現可能であることを証明した。
【0074】
図11を参照すると、スフェロイドは、ミトコンドリアの毒性を試験するために用いられ得る。この例において、肝細胞は非実質細胞(Kupffer細胞など)と共培養され、機能的な免疫反応を提供する肝臓微細組織を形成した。このシステムは、FCCPを導入することによって毒性に対して組織をスクリーンし、呼吸容量を測定(FCCP刺激対基本的OCR)するために用いられた。試験は、刺激したものと刺激していないもののOCRの差異が最大になるようなFCCPの最適な濃度を第一に見出すことによってミトコンドリアの機能を測定するのに分析が最適化され得ることを証明した。
【0075】
本発明は、これらの精神もしくは重要な特徴から離れるとなく、他の形態の実施態様となし得る。上述の実施態様はそれゆえに、本明細書に記載される発明の例示としてすべて考えられるべきである。当業者に明らかなように、他の実施態様のさまざまな特徴や要素もまた、異なる組み合わせおよび順列において使用できる。それゆえ、本発明の範囲は、上述の記載によってではなく、添付する請求項によって示され、それゆえ請求項の代替物の範囲および意味に包含されるすべての変更は本明細書の実施態様であることが意図される。