(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326068
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】大腿骨機能軸の位置を特定するための器具および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/58 20060101AFI20180507BHJP
【FI】
A61B17/58
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-557109(P2015-557109)
(86)(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公表番号】特表2016-506823(P2016-506823A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】US2014015265
(87)【国際公開番号】WO2014124233
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】61/762,492
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/904,083
(32)【優先日】2013年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/904,086
(32)【優先日】2013年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/904,099
(32)【優先日】2013年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515219137
【氏名又は名称】オーソペディック インターナショナル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】サシン,ジュード エル.
(72)【発明者】
【氏名】ガスティロ,ラモン ビー.
【審査官】
大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0216247(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0131021(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0184173(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0070897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56−17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨機能軸の位置を特定し、かつ空間における少なくとも3つの点の位置を特定するための器具であって、
空間における上記少なくとも3つの点は、円周上にあり、当該円周は、中心が大腿骨頭部の中心と一致する球上にあり、当該円周の平面は、当該大腿骨頭部の中心と一致しておらず、
基部と、
並進および回動するように上記基部に接続された伸長アームクランプと、
並進および回動するように上記伸長アームクランプに接続された伸長アームと、
回動するように上記伸長アームの遠位端に接続された旋回アームと、
回動するように上記旋回アームに接続されたブラケットと、
上記ブラケットに着脱可能に接続された位置特定アームと、を備えており、
上記旋回アームは、近位端における外側位置特定部、および遠位端における内側位置特定部を備えており、
上記位置特定アームは、中間位置特定部を備えている、器具。
【請求項2】
上記外側位置特定部は、上記少なくとも3つの点の、第1の点を特定するように配置可能であり、
上記内側位置特定部は、上記の少なくとも3つの点の、第2の点を特定するように配置可能であり、かつ、
上記中間位置特定部は、上記の少なくとも3つの点の、第3の点を特定するように配置可能である、請求項1の器具。
【請求項3】
上記第1の点、上記第2の点、および上記第3の点は、中心を有する球および円を画定する、請求項2の器具。
【請求項4】
上記旋回アームは、上記伸長アームが基部に対して回動することができる方向と略平行である方向に、上記伸長アームに対して回動することができる、請求項1の器具。
【請求項5】
上記ブラケットは、上記旋回アームが上記伸長アームに対して回動する方向に略垂直な方向に、上記旋回アームに対して回動することができる、請求項1の器具。
【請求項6】
各々の、上記伸長アームクランプ、上記伸長アーム、上記旋回アームおよび上記ブラケットは、それぞれ、上記基部、上記伸長アームクランプ、上記伸長アームおよび上記旋回アームに対して、固定可能であり、かつ解放可能である、請求項1の器具。
【請求項7】
上記ブラケットは、基部を備え、当該基部からアーチ部は伸長しており、当該アーチ部は、湾曲スロットを備え、当該湾曲スロットに沿って、上記旋回アームの固定ネジはスライド可能である、請求項1の器具。
【請求項8】
膝中心と所定の関係にある大腿骨の内部に配置可能である少なくとも1つの位置特定ピンと組み合わされた、請求項1の器具。
【請求項9】
上記少なくとも1つの位置特定ピンは、大腿骨遠位部の前面内部に配置可能であり、大腿骨の解剖学的軸に略垂直な矢状面に沿って配置可能であり、かつ上記膝中心に配置可能である、請求項8の組み合わせ。
【請求項10】
上記少なくとも1つの位置特定ピンは、上記外側位置特定部、上記内側位置特定部および上記中間位置特定部の少なくとも1つと協働係合するためのビーズ部を備えている、請求項8の組み合わせ。
【請求項11】
上記外側位置特定部、上記内側位置特定部および上記中間位置特定部の少なくとも1つは、内部スロットを含む構造を備えている、請求項10の組み合わせ。
【請求項12】
少なくとも1つの位置特定ピンは、上記外側位置特定部、上記内側位置特定部および上記中間位置特定部の少なくとも1つと協働係合するためのバンドを備えている、請求項8の組み合わせ。
【請求項13】
上記外側位置特定部、上記内側位置特定部および上記中間位置特定部の少なくとも1つは、遠位端を有する長尺部を備える、請求項12の組み合わせ。
【請求項14】
上記少なくとも1つの位置特定ピンの少なくとも一部に配置可能なアラインメントガイドをさらに備えている、請求項8の組み合わせ。
【請求項15】
上記大腿骨機能軸の位置および方向を特定するための、上記アラインメントガイドの開口部と係合可能なアラインメントロッドをさらに備えている、請求項14の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願請求項は、「大腿骨機能軸の位置を特定するための器具」と題された米国特許仮出願No.61/762,492(2013年2月8日提出)、「大腿骨機能軸の位置を特定するための器具および方法」と題された米国特許仮出願No.61/904,083(2013年11月14日提出)、「人工膝関節置換術の方法、システムおよび器具」と題された米国特許仮出願No.61/904,086(2013年11月14日提出)および「人工膝関節置換術の方法、システムおよび器具」と題された米国特許仮出願No.61/904,099(2013年11月14日提出)の利益を主張するものであり、それらの出願は、全文が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般的に大腿骨頭部の中心と膝関節の中心とを結ぶ線と定義される大腿骨機能軸の位置を特定することに関する。特に、本発明は、人工膝関節置換術中における機能軸の位置を特定するために利用される。
【0003】
〔背景〕
人工膝関節置換術の成功は、正確な骨切断と、適切な靭帯バランスとに依拠する。膝インプラントが適切に機能するためには、大腿骨機能軸に関して正確な骨切断が行われる必要がある。さらに、外側側副靭帯および/または内側側副靭帯は、脛骨機能軸が大腿骨機能軸と一直線に並ぶように、解放される必要がある。脛骨機能軸は、脛骨の解剖学上の軸と同一であるため、特定することは比較的容易である。一方、大腿骨機能軸を特定することはより難しい。なぜなら、大腿骨機能軸は、大腿骨頭部の中心から膝関節の中心に伸長しているが、人工膝関節手術中には大腿骨頭部を視認することはできないからである。一般的に、大腿骨機能軸は、大腿骨の解剖学上の軸に対し、約6度内側に向いているが、この向きは、患者間における解剖学的変異によって異なる。
【0004】
最も広く使用されている、当該機能軸の位置を特定する方法は、ロッドを用いる方法であり、それは、大腿骨骨髄管内に配置される。次に、当該機能軸は、ロッドの軸から約6度内側に位置すると想定される。この方法は、実施が容易であるが、大腿骨の解剖学的構造におけるバリエーションのため、また、ロッドとロッドが配置される大腿骨骨髄管との間にあそびができるため、あまり正確ではない。また、この方法では、矢状面で見た場合に、機能軸の方向を決定することができない。さらに、この方法では、大腿骨骨髄管を侵襲する必要があり、これは、潜在的に、失血の増加、および合併症をもたらす可能性がある。大腿骨機能軸の位置を特定する別の方法では、コンピュータ・ナビゲーション装置を用いることにより、骨性指標を特定し、これらを大腿骨の動きと関連付けて、大腿骨機能軸の位置を特定する。しかし、そのような装置は、とても高額であり、また、手術中に使用するには扱いづらい可能性がある。よって、コンピュータ・ナビゲーション装置の使用を必要とせずに、前頭面および矢状面の両方において、正確に大腿骨機能軸の位置を特定するシステムおよび方法を提供する必要がある。
【0005】
〔概要〕
本明細書に記載される本発明は、患者の大腿骨頭部中心の位置を特定することに関し、その情報は、前頭面および矢状面の両方において大腿骨機能軸の位置を特定するために順番に用いられる。すなわち、本明細書に記載される器具および方法は、3次元的に大腿骨機能軸の位置を特定するのに有用である。
【0006】
本発明の一態様によれば、大腿骨機能軸の位置を特定して、かつ大腿骨頭部中心に関連した空間における少なくとも3つの点の位置を特定するための器具が提供される。上記器具は、基部と、並進および回動するように上記基部に接続された伸長アームクランプと、並進および回動するように上記伸長アームクランプに接続された伸長アームと、回動するように上記伸長アームの遠位端に接続された旋回アームと、回動するように上記旋回アームに接続されたブラケットと、上記ブラケットに着脱可能に接続された位置特定アームと、を備えており、上記旋回アームは、近位端における外側位置特定部、および遠位端における内側位置特定部を備えており、上記位置特定アームは、中間位置特定部を備えている。
【0007】
本発明の別の態様によれば、大腿骨機能軸の位置を特定するための方法が提供される。上記方法は、膝中心から所定距離ずれたトレースポイントによって描写される代表球を特定する工程であって、上記代表球中心は、大腿骨頭部中心と一致している、工程と、上記代表球上の3点を特定する工程と、上記代表球上の上記3点によって画定される円の中心の位置を特定する工程と、上記代表球上の上記3点によって画定される上記円の中心を通って、かつ上記円の平面に垂直な、直線を特定する工程と、上記大腿骨頭部中心と上記トレースポイントとを結ぶ直線が、上記代表球上の上記3点によって画定される上記円の中心を通って、かつ上記円の平面に垂直な上記直線と、一致するように、上記大腿骨を配置する工程と、複数の位置特定器具を上記大腿骨上に配置し、前頭面および矢状面の両方における上記大腿骨機能軸の位置を特定する工程と、を含んでいる。上記大腿骨頭部中心と上記トレースポイントとを結ぶ上記直線が、上記大腿骨機能軸から所定の角度ずれて、上記膝中心からの、上記トレースポイントの所定のずれを補正するように、上記位置特定器具は、上記大腿骨上に配置される。
【0008】
〔図面の簡単な説明〕
本発明は、添付された図面を参照してさらに説明される。なお、いくつかの図面を通して、同様の構造物には、同様の符号を付してある。
【0009】
図1は、大腿骨に関連した代表球の概略図である。
【0010】
図2は、本発明の一実施形態に係る、大腿骨に対して配置された機能軸測定器の斜視図である。
【0011】
図3は、
図2の機能軸測定器の詳細な斜視図である。
【0012】
図4は、
図2の機能軸測定器の一部の分解組み立て図で表した斜視図である。
【0013】
図5は、大腿骨に対して配置された、
図2の機能軸測定器の側面図である。
【0014】
図6は、大腿骨がピンを介して外側位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【0015】
図7は、本発明の機能軸測定器の底面を拡大した斜視図であり、当該図は、外側位置特定器スロットの図を含んでいる。
【0016】
図8は、大腿骨がピンを介して内側位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【0017】
図9は、
図2の機能軸測定器の別の斜視図であり、当該図は、複数の位置特定器スロットを示している。
【0018】
図10は、大腿骨がピンを介して中間位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【0019】
図11は、大腿骨がピンを介して最後の位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【0020】
図12は、上記最終位置特定器スロットを備えた、
図2の機能軸測定器の一部の底面を拡大した斜視図である。
【0021】
図13は、
図2の機能軸測定器の上面を拡大した斜視図であり、当該図は、ブラケットの上部を示している。
【0022】
図14は、大腿骨における代表位置に配置されたガイドピンの斜視図である。
【0023】
図15は、大腿骨に対して配置されたアラインメントガイドの斜視図である。
【0024】
図16は、前頭面で見た場合、アラインメントロッドが機能軸と一致するように配置された状態における、大腿骨の上面図である。
【0025】
図17は、アラインメントロッドが機能軸と平行になるように配置された状態における、大腿骨の側面図である。
【0026】
図18は、本発明の一実施形態に係る機能軸測定器の斜視図である。
【0027】
図19は、
図18の機能軸測定器のスライド部を拡大した斜視図である。
【0028】
図20は、
図18の機能軸測定器の一部を拡大した斜視図である。
【0029】
図21は、大腿骨が外側位置特定部と係合された状態における、機能軸測定器の斜視図である。
【0030】
図22は、
図20の機能軸測定器の一部を拡大した斜視図であり、当該図は、外側位置特定部とピンとのアラインメントを図示している。
【0031】
図23は、
図18の機能軸測定器の底面の斜視図である。
【0032】
図24は、大腿骨の一部に適用された、
図18の機能軸測定器の上面斜視図である。
【0033】
図25は、機能軸測定器の一部の斜視図であり、それのブラケットの一部が断面図で示されている。
【0034】
図26は、大腿骨に対して位置決めされた解剖面の斜視図である。
【0035】
図27は、膝中心位置特定器の斜視図である。また、
図28は、大腿骨の端部に対して配置された、
図27の膝中心位置特定器の斜視図である。
【0036】
〔詳細な説明〕
ここで図面を参照し(いくつかの図面を通して、いくつかの部材には同様の符号が付されている)、最初に、
図1を参照すると、大腿骨50と球52の一部とが示されている。球52と大腿骨50とは、大腿骨頭部中心54が球52の中心58と一致するように配置されている。さらに、膝中心56は、球52の表面上にある。したがって、球52は、大腿骨頭部中心54から膝中心56までの距離と等しい半径を有する。
【0037】
本発明によれば、
図1に示される第1の点60、第2の点62、第3の点64などの、球52の表面上の点を用いて、球52の中心58を通る直線を見出すことよって、大腿骨機能軸の位置を特定しようとした場合に、一般的に直面する問題を解決することができる。本発明のデバイスおよび/または方法を用いて、上記直線の位置特定を達成することができる。さらに本発明によれば、膝の身体的な動きは、大腿骨頭部中心の周りを三次元的に回動するように想定されている。したがって、膝中心56は、膝が動きまわされることにより、それが点60、62および64を通って動いたときに、球52の表面を描く。
【0038】
当該球体上の少なくとも3つの点によって画定される円の中心を通って、かつ当該円の平面に垂直な直線が、当該球体の中心を通ることを、与えられた任意の球に対して示すことができる。本発明に適用した場合、
図1の点60、62および64は、球52の表面上にあり、中心68を有する円66を画定するために用いられる。ある特定の大腿骨の機能軸70の位置を特定するために、膝中心56は、第1の点60に対応するように作成し得る空間の任意の点に動かされる。次に、膝中心56は、第2の点62に動かされ、そして最終的に、第3の点64に動かされる。これら点60、62、64は、円66を画定するために使用され、次に、点68は、この円の中心として特定され得る。これらの点のすべてが、特定され、かつ/または位置特定された後に、円66を含む平面に垂直であって、かつ円66の中心68を通る軸72は、特定され得る。膝中心56を動かして、軸72に一致させることによって、大腿骨50の機能軸70は、軸72と同一線上になり、軸72の位置を特定することが可能となる。本発明の器具および方法は、大腿骨に関連した点60、62、64および68、ならびに軸72を特定するために使用され、また、大腿骨機能軸の位置を特定するために使用される。本発明の器具および方法は、次の段落に記述される。
【0039】
ここで、
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る機能軸測定器1が図示されている。機能軸測定器1は、通常、基部2、伸長アーム3、旋回アーム4、および位置特定アーム5を備えている。また、代表的または例示的な、患者の大腿骨50が、機能軸測定器1に隣接して示されている。基部2は、操作盤のサイドレールにクランプ留めすることにより、または、機能軸測定器と操作盤との間の安定した係合を与える他の任意の取り付け構造物または複数の取り付け構造物を使用することにより、操作盤に着脱可能となっている。
【0040】
図3は、
図2の機能軸測定器1の一部の拡大図を示す。図のように、基部2は、ポスト7の先端に伸長アームクランプ6を備えている。通常、クランプ6は、解放された形態の場合に、伸長アーム3がポスト7に対して並進および回転できるように設計された、フレア形状の開口部(flared opening)もしくは角度のついた開口部を備える、基部または構造物を備える。しかし、後述のように、クランプ6が固定された形態の場合、伸長アーム3は、基部2に対して並進または回転することができない。
【0041】
続いて、
図3の実施形態を参照すると、伸長アームクランプ6は、ピボットペグ8(pivot peg)または回転部8、スライドナット9、固定ネジ10を備えている。固定ネジ10は、スライドナット9の対応するネジ山と係合するように筋が入れられている。スライドナット9は、湾曲した滑り路11内で、または湾曲した滑り路11に沿って、スライドするように配置されている。さらに、伸長アーム3は、長手方向に伸長するスロット12を備え、ピボットペグ8は、部材間で並進および回転するように、スロット12と係合することができる。このように、クランプ6が解放された形態の場合、伸長アーム3は、クランプ6に対して並進することができ(スロット12を介して)、また、同時に、ピボットペグ8の周りを回転することができる。さらに、クランプ6に対する伸長アーム3の向きにかかわらず、固定ネジ10が伸長アーム3と結合し続けるように、固定ネジ10は、スロット12に係合していることが指摘される。従って、クランプ6の部材は、解放された形態の場合、互いに対して、所望の位置に動かすことができ、さらにまた、固定ネジ10を回すことなどにより、固定ネジ10が伸長アーム3を基部2に固定するまで固定ネジ10を締めることができる。このように、伸長アーム3は、基部2に対して並進および回転するように取り付けられる。本発明の別の実施形態において、クランプ6は、操作盤から大腿骨前面までの種々の高さに適応するために、ポスト7の高さに沿って、鉛直方向に調節して、かつ固定するための特徴を備えてもよい。さらに別の実施形態において、部材の相対位置を調節した後、部材を互いに固定するために、固定ネジ以外の異なる固定機構を用いることができる。
【0042】
また、伸長アーム3は、ピン(図示せず)を介して旋回アーム4の回動クランプ13に接続されており、当該ピンは、旋回アーム4が伸長アーム3に対して当該ピンの軸15の周りを回転することを、可能にする。固定ネジ16は、回動クランプ13の湾曲スロット14を介して、伸長アーム3の対応するネジ穴17に挿通される。解放された形態の場合、伸長アーム3および旋回アーム4は、互いに対して、動くことができ、さらにまた、固定ネジ16を締めた場合、固定ネジ16は、旋回アーム4を伸長アーム3に固定する。この場合においても、旋回アームならびに伸長アームの固定に、固定ネジ以外の機構が用いられることが想定される。
【0043】
ブラケット18は、ピボットピン19を介して旋回アーム4に接続されている。これにより、ブラケット18は、部材が解放された形態である場合、旋回アーム4に対してピボットピン19の軸20の周りを回転することができる。アーチ24は、ブラケット18の一側面から上方に伸長しており、当該アーチ24は、湾曲スロット23を備えている。固定ネジ21、または他の機構は、旋回アーム4のネジ穴22に挿通され、アーチ24の湾曲スロット23に沿ってスライドすることが可能である。固定ネジ21を締めた場合、当該ネジ21は、ブラケット18を、旋回アーム4に関連した位置に固定する。
【0044】
さらに
図4を参照すると、位置特定アーム5がブラケット18から取り外された状態における、機能軸測定器1の一部の分解図が示されている。位置特定アーム5は、2つの位置特定ペグ25および26を備え、当該位置特定ペグ25および26は、それぞれ、ブラケット18の、穴27およびスロット28に係合する。固定ネジ29または他の機構は、位置特定アーム5をブラケット18に固定するために用いられる。
【0045】
本発明の機能軸測定器を用いる例示的な方法において、患者の膝関節を露出するために、最初に切開をする。膝関節が露出した後、膝の中心は、外科医によって、前頭面および矢状面において特定される。
図5には、例示的な膝中心56が図示されている。ここにおいて示されている「矢状面」、および本明細書の他の段落において示されている「矢状面」とは、解剖学的矢状面に平行であって、かつ膝中心を通る面であることに注意すべきである。
図26を参照すると、膝中心56は、解剖学的横断面161に対し垂直な直線160沿いにある点として定義され得る。当該直線は、膝の遠位端から見た場合、滑車溝162前面の最深部と、顆間窩163(intercondylar notch)の最深部との中間にあって、かつ大腿骨顆164の遠位面からおよそ20mm〜50mm近位にある、点を通る。
【0046】
図27は、膝中心56の位置を特定するために使用することができる例示的なデバイス、すなわち膝中心位置特定器165を示している。しかし、同様の目的を達成するために、他のデバイスまたは器具を、追加で、または代わりに、使用し得ることが理解される。膝中心位置特定器165は、前方後方ガイドバー166、すなわちAPガイドバー166、近位遠位ガイドバー167、すなわちPDガイドバー167、前方後方ガイドスリーブ168および169、すなわちAPガイドスリーブ168および169、近位遠位ガイドスリーブ170、すなわちPDガイドスリーブ170、連結棒171および172、前方位置特定ジョー173、後方位置特定ジョー174、位置特定パドル175、ならびにピンガイド176から構成される。前方位置特定ジョー173および後方位置特定ジョー174は、膝のサイズに合わせて異なるサイズの位置特定ジョーを使用できるように、それぞれ、APガイドスリーブ168および169に着脱可能に接続されている。APガイドスリーブ168および169は、APガイドバー166に沿ってスライドすることができ、一方で、PDガイドスリーブ170は、PDガイドバー167に沿ってスライドすることができる。APガイドスリーブ168とPDガイドスリーブ170とは、連結棒171を介してピン接続されている。APガイドスリーブ169とPDガイドスリーブ170とは、連結棒172を介してピン接続されている。PDガイドバー167と前方位置特定ジョー173との距離が、PDガイドバー167と後方位置特定ジョー174との距離とおよそ等しくなるように、連結棒171と172とは、およそ同じ長さである。これにより、前方位置特定ジョー173と後方位置特定ジョー174との距離にかかわらず、PDガイドバー167は、前方位置特定ジョー173と後方位置特定ジョー17との中間に位置する。
【0047】
膝が露出したあと、脚は、屈曲した状態で載置され、膝中心位置特定器165は、
図28に示されるように配置される。前方位置特定ジョー173は、およそ滑車溝162の中央である、滑車溝162の最深部に載置され、後方位置特定ジョー174は、およそ顆間窩163の中央である、顆間窩163の最深部に載置される。次に、前方位置特定ジョー173と後方位置特定ジョー174とは、互いに向かって押し付けられ、これらの間で、大腿骨遠位部を挟持する。次に、位置特定パドル175は、大腿骨顆の遠位面に対して押し付けられる。膝中心は、PDガイドバー167の軸沿いで、位置特定パドル175の近位にある20mmから50mmのあいだに位置する。ピンガイド176は、PDガイドバー167の軸に垂直であって、かつ位置特定パドル175から20mm〜50mmの位置に配置される。次に、膝中心の位置を示すために、ピンガイド176の軸に沿って、ピンが大腿骨遠位部に穿設され得る。
【0048】
ここで、
図5を参照すると、一度、膝中心56の位置が特定されると、大腿骨機能軸に略鉛直であって、かつ膝中心56を通る矢状面に沿って、ピン30および略球状であるビーズ31を備えたピンデバイスは、大腿骨遠位部の前面部に挿入される。ピン30は、球状ビーズ31が膝中心56から所定の距離(参照番号80によって表されている)にあるように挿入される。このビーズ31の位置と、大腿骨頭部54の中心とは、軸70´(あるいは、本明細書において、“近似機能軸”として示される)を画定するために用いられる2つの点であり、当該軸70´は、大腿骨頭部54の中心からビーズ31の中心まで伸長する。そのような軸70´を画定する利点は、下記で考察される。
【0049】
本発明の方法およびデバイスは、近似機能軸70´の位置を特定するために用いられる。特定の外科的アプローチでは、“真の”大腿骨機能軸70の代わりにこの軸を用いることができる。これの理由は、膝中心の位置は、大腿骨遠位部の内部にあり、当該位置には、通常の物理的アクセス手段によっては直接到達することができない。また、ピン30が解剖学的軸とほぼ一致するようにして、球状ビーズ31を膝より遠位にある前頭面に配置することも可能であるが、そのような配置は、膝を伸長するときに、脛骨近位部の妨げとなってしまう可能性があることが指摘される。さらに、それは、機能軸の位置を特定する全工程のあいだ、膝を屈曲した状態に維持するためには不便である。ここに記載されている近似が、前頭面で見た場合における真の機能軸の位置を特定する上でエラーを生じないことに注目すべきである。矢状面において、真の機能軸70と近似機能軸70´とがなす角度は、大腿骨の長さ、および球状ビーズ31と膝中心56との間の距離80を用いることで補正され得る。患者によって大腿骨の長さは異なるため、平均的な長さを仮定し得る。例えば、330mmから470mmの大腿骨の長さに対して、誤差は、およそプラスマイナス1度であり得ることが推定される。
【0050】
ピン30およびビーズ31が膝中心56に関連した所望の位置に配置されたあと、機能軸測定器1は、伸長アーム3、旋回アーム4および位置特定アーム5が
図2および5に示されるように配列され、基部2が大腿骨の外側面に位置するように構成される。いったん部材がこのように配置されたら、固定ネジ10、16および21は締められる。次に、膝を外側に旋回し、旋回アーム4から下向きに伸びる外側位置特定スロット32の内部に、球状ビーズ31が捕捉されるように、膝を操作する。スロット32は、
図7に最もよく示されており、スロット32とビーズ31との係合は、
図6に最もよく示されている。膝が異なる位置に動かされているときは、大腿骨は、大腿骨頭部中心の周りを回動する。ビーズ31を外側位置特定スロット32内部に捕捉するために、固定ネジ10を緩め、膝を操作すると同時に、伸長アーム3を、並進および回転させ、調整する。ビーズ31が外側位置特定スロット32内部に捕捉されたら、固定ネジ10を締めて、伸長アーム3の位置を固定する。この外側位置特定スロット32の位置が、
図1の第1の点60によって示される位置を示す。
【0051】
再度、
図7を参照すると、位置特定スロット32の底面斜視図を含む、機能軸測定器1の一部の拡大図が図示されている。位置特定スロット32は、ビーズ31を捕捉することができる凹部32´と、ビーズ31を越えて伸長しているピン30の円筒部のための空間を提供することができるスロット部32´´と、を備えている。
【0052】
旋回アーム4は、さらに、内側位置特定スロット33(例えば、
図3および8を参照すること)を備え、位置特定アーム5は、さらに、中間位置特定スロット34を備える。これらのスロットの形態は、機能的および/または物理的に位置特定スロット32の形態に類似してもよい。位置特定スロット32、33および34の用途は、大腿骨機能軸の位置を特定する工程の特定の時点の空間における、球状ビーズ31の中心の位置を特定することである。したがって、本発明の記載において、位置特定スロット32、33、34の位置を参照している場合は、各位置特定スロットの凹部の中心を参照していると理解するべきである。
【0053】
外側位置特定スロット32の凹部内部にビーズ31を捕捉し、固定ネジ10を締めることにより伸長アーム3の位置を固定する工程によって、第1の点60を特定したあと、ビーズ31を、外側位置特定スロット32から取り外す。次に、
図8に示されるように、ビーズ31が今度は旋回アーム4の内側位置特定スロット33の内部に捕捉されるように、膝を内側に旋回し、かつ操作する。これを達成するために、固定ネジ16を緩め、伸長アーム3に対して回転する旋回アーム4の位置を調整する。ビーズ31が内側位置特定スロット33内部に捕捉されたら、固定ネジ16を締める。この内側位置特定スロット33の位置が、
図1の第2の点62の位置を示す。旋回アーム4が球状ビーズ31を捕捉するために回転させられたとき、伸長アーム3は、基部2に固定されており、旋回アーム4は、外側位置特定スロット32を通る軸15に沿って回動するため、外側位置特定スロット32の位置は変化しないことが分かる。
【0054】
図9に示されるように、点68´を、外側位置特定スロット32と内側位置特定スロット33とを結ぶ線上に決定することができる。点68´は、当該2つの点の間の中ほどに位置し、
図1における、円66の中心として特定される点68に一致する。
【0055】
ビーズ31が内側位置特定スロット33の凹部内部に捕捉され、旋回アーム4が伸長アーム3に対して回転できないように固定されたあと、ビーズ31を内側位置特定スロット33から取り外す。次に、
図10に示すように、ビーズ31が位置特定アーム5の中間位置特定スロット34内部に捕捉され得るように、膝を、後部方向および外側方向に旋回し、かつ操作する。これを達成するために、固定ネジ21を緩め、位置特定アーム5が接続されているブラケット18の向きを調整する。ビーズ31が中間位置決定スロット34内部に捕捉されたら、固定ネジ21を締める。この中間位置特定スロット34の位置が、
図1における第3の点64の位置を示す。ブラケット18が回転したとき、外側位置特定スロット32、内側位置特定スロット33および点68´の、位置は、変化しないことが分かる。中間位置特定スロット34の内部にビーズ31を捕捉するために、位置特定アーム5が調節されるとき、位置特定アーム5は、外側位置特定スロット32、点68´および内側位置特定スロット33を通る軸20の周りを回転する。外側位置特定器32から点68´までの距離は、内側位置特定器33から点68´までの距離に等しく、また、中間位置特定スロット34から点68´までの距離と等しい。したがって、外側位置特定スロット32、内側位置特定スロット33および中間位置特定スロット34は、点68´を中心とする円周上の点を特定し、中間位置特定スロット34から点68´までの直線は、外側位置特定スロット32から内側位置特定スロット33までの直線に対して垂直である。さらに、中間位置特定スロット34から点68´までの直線は、
図1の軸72に対して垂直である。
【0056】
次に、
図11および12に示されるように、位置特定アーム5をブラケット18から取り外し、ビーズ31を、ブラケット18の最終位置特定スロット35の内部に設置する。
図12に示されるように、最終位置特定スロット35は、肩部35´を有する。ビーズ31がスロット35内部に設置された場合、点68´から球状ビーズ31までの直線が、中間位置特定スロット34から点68´までの直線と垂直になるように、ビーズ31は、肩部35´に当接する。これにより、球状ビーズ31が最終位置特定スロット35内部に設置された場合、ビーズ31は、
図1の軸72と同一直線上に並ぶ。
【0057】
図13は、大腿骨50に対して配置されたブラケット18を含む上面斜視図を示す。ビーズ31が最終位置特定スロット35内部に設置された場合、ピン30の円筒形の先端部がガイドスロット36の内部に捕捉される。これは、膝中心がガイドスロット36の中間面と同一平面上にあるように大腿骨を配向させる。次に、ガイドスロット36から間隔をあけたガイド穴38を介して、ガイドピン37を大腿骨に穿設すると同時に、大腿骨をこの位置に保持する。ガイド穴38は、真の機能軸70と近似機能軸70´とがなす角度を補正するように、点68´とビーズ31とを結ぶ直線から傾いている。これにより、ピン37は、大腿骨50に穿設された場合、
図1の軸70と垂直になっている。
【0058】
次に、
図14に示されるように、ガイドピン30および37を、大腿骨50のそれぞれの位置に残す一方で、機能軸測定器1を患者から取り外す。次に、
図15に示されるように、ロッドアラインメントガイド39をピン30、37に設置する。特に、ロッドアラインメントガイド39は、ガイド穴40およびガイドスロット41を備え、ガイド穴40と、ピン37とは、スライドすることができ、ガイドスロット41と、ピン30のビーズ31とは、スライドすることができる。最後に、アラインメントロッド42を、アラインメントガイド39のガイド穴43内部に設置する。
図16および17に示されるように、アラインメントロッド42は、前頭面で見た場合、機能軸70と同一直線上にあり、かつ矢状面で見た場合、機能軸70と平行である。ガイドピン37は、矢状面で見た場合、機能軸70と垂直である。ビーズ31の中心とガイドピン37の軸とを結ぶ直線は、前頭面で見た場合、当該機能軸と同一直線である。
【0059】
ここで、
図18、19、20を参照すると、本発明の実施形態に係る機能軸測定器101が図示されている。機能軸測定器101は、通常、基部102、伸長アーム103、旋回アーム104、および位置特定アタッチメント105を備えている。基部102は、ポスト107と、スプリット端107´に取り付けられた固定クランプ107´´とを備える。伸長チューブ106´は、アームクランプ106から伸長しており、鉛直方向にスライドすることができ、かつ、ポスト107に対して回転するようにスライドすることができる。固定クランプ107´´が固定されている場合、スプリット端107´は、圧縮され、伸長アームクランプ106をポスト107に固定する。通常、クランプ106は、解放された形態の場合、伸長アーム103が並進および回転できるような基部または構造物を備える。しかし、クランプ107´´およびクランプ106の両方が固定された形態の場合、伸長アーム103は、基部102に対して並進または回転することができない。
【0060】
アームクランプ106は、スライド部108および固定ナット109を備える。スライド部108は、さらに、ピボットペグ110およびスレッドスタッド111を備える。スライド部108は、伸長アーム103の縦スロット112の中をスライドするように設計されている。ピボットペグ110は、クランプ106の開口部113の内部を回動する一方で、スレッドスタッド111は、湾曲スロット114の中、または湾曲スロット114に沿って、スライドし、固定ナット109と係合している。このように、クランプ106が解放された形態の場合、伸長アーム103は、クランプ106に対して並進することができ(スロット112を介して)、同時にピボットペグ110の周りを回転することができる。したがって、クランプ106の部材は、解放された形態の場合、互いに対して、これらの所望の位置に動かすことができ、次に、固定ナット109が伸長アーム103をクランプ106に固定するまで固定ナット109を回すことなどにより、固定ナット109を締めることができる。クランプ107´´が固定された場合、伸長アーム103は、基部102に対して並進および回転できないように固定される。
【0061】
また、伸長アーム103は、ピン(図示せず)を介して旋回アーム104のピボットクランプ115に接続されており、当該ピンは、旋回アーム104が伸長アーム103に対して軸116に沿って回転することを、可能にする。固定ネジ117は、伸長アーム103の対応するネジ穴に、ピボットクランプ115の湾曲スロット118を介して挿通されている。解放された形態の場合、伸長アーム103および旋回アーム104は、互いに対して、動くことができ、それから、固定ネジ117が締められた場合、固定ネジ117は、旋回アーム104を伸長アーム103に固定する。
【0062】
ブラケット119は、旋回アーム104に対して回転できるように、旋回アーム104に接続されている。ブラケット119は、スライド部120と、ブラケット119の片側から上方に伸長しているアーチ121と、を有しており、当該アーチ121は、湾曲スロット122を備えている。固定ネジ123は、旋回アーム104のネジ穴に挿通され、アーチ121の湾曲スロット122に沿ってスライドすることができる。固定ネジ123を締めた場合、固定ネジ123は、ブラケット119を、旋回アーム104に関連した位置に固定する。また、位置特定アーム105は、ブラケット119に着脱可能に取り付けられており、位置特定アーム105は、固定ネジ124を介して固定可能である。
【0063】
機能軸測定器101は、大腿骨の機能軸の位置を特定する工程のあいだに、特定の点の位置を決定するための複数の機構をさらに備える。特に、旋回アーム104は、外側位置特定部132および内側位置特定部133を備え、位置特定アタッチメント105は、中間位置特定部134を備える。位置特定部132、133および134の各々は、それぞれ、伸長フィンガー152、153、154を備え、当該フィンガーは、それぞれの位置特定部に対して略垂直な角度で伸長することができ、また、当該フィンガーは、それぞれの位置特定部に対して固定されてもよく、または、それぞれの位置特定部に対して移動可能であってもよい。
【0064】
機能軸測定器101を使用する例示的な方法において、最初に、切開を行い、患者の膝関節を露出させる。膝関節を露出させたあと、膝中心は、外科医により前頭面および矢状面において特定される。膝中心を、本明細書に記載されたものに類似した膝中心位置特定システムまたはデバイスを使用することにより見つけてもよいし、別の方法および/またはデバイスを使用することにより見つけてもよい。本発明の一態様によれば、マーキングまたは(例えば、
図22に示された)バンド131を伴ったピン130は、大腿骨遠位部の前面に、矢状面に沿って、かつ膝中心を通るように挿入される。ピン130は、バンド131が膝中心から所定の距離にあるように挿入される。このバンド131の位置は、大腿骨頭部中心からバンド131の中心に伸長する軸(あるいは、本明細書で、「近似機能軸」として示されている)を画定する。
【0065】
本発明は、“真の”大腿骨機能軸の位置を特定する代わりに、近似機能軸の位置を特定する方法およびデバイスを提供する。これの動機は、膝中心の位置が大腿骨遠位部の骨の内部にあり、膝中心の位置に通常の物理的アクセス手段では直接到達することはできないということである。また、ピン130が解剖学的軸と略一致するようにして、バンド131を、膝の遠位にある矢状面に設置することも可能であるが、そのような配置は、膝を伸長するときに、脛骨近位部の妨げとなってしまう可能性があることが指摘される。それは、機能軸の位置を特定する全工程のあいだ、膝を屈曲した状態に維持するためには不便である。記述された近似が、前頭面で見た場合の真の機能軸の位置を特定することにおいて誤差を生じないことに注目すべきである。矢状面において、真の機能軸と近似機能軸との間の角度は、大腿骨の長さ、およびバンド131と膝中心との間の距離が与えられることにより、補正され得る。患者によって大腿骨の長さは異なるため、大腿骨の長さの平均値が想定される。例えば、330mmから470mmの大腿骨の長さに対して、誤差は、およそプラスマイナス1度であり得ることが推定される。
【0066】
最初に、拡張アーム103、旋回アーム104および位置特定アーム105が互いに一直線に並ぶように、機能軸測定器101を調節する。また、伸長アームクランプ106の鉛直方向の位置は、大腿骨機能軸の位置を特定する工程中に膝を動き回せる空間を与えるために調節されてもよい。いったん部材をこのように配置したら、クランプ107´´、固定ナット109ならびに固定ネジ117および123を締める。次に、
図21および22に示されるように、バンド131が、位置特定部132のフィンガー152と同一直線上に並んで、かつフィンガー152の先端と接触するように、膝を、外側に旋回し、かつ操作する。膝を旋回するとき、大腿骨が大腿骨頭部中心の周りを回動するであろうことに注意すべきである。このようにバンド131を配置するために、固定ナット109を緩め、膝を操作すると同時に、伸長アーム103を並進および回転させて調節する。バンド131を伸長指152と同一直線上に並べて、接触させたら、固定ナット109を締めて、伸長アーム103の位置を固定する。通常、このバンド131の位置が、
図1の第1の点60によって示される位置である。
【0067】
位置特定部132、133および134の用途は、大腿骨軸の位置を特定する工程の特定の時点の空間における、バンド131の位置を決定することである。したがって、本明細書で、位置特定部132、133または134の位置を参照している場合は、参照されているものは、位置特定部のフィンガーの軸沿いにある点であって、バンド131を当該フィンガーと同一直線上に並べて、当該フィンガーの先端と接触させた場合に、当該点がバンド131の中心と一致するように当該フィンガーの先端からずらされた点であることが理解される。
【0068】
バンド131を、フィンガー152と同一直線上に並べて、かつ接触させるように配置し、固定ナット109を締めることにより伸長アーム131の位置を固定したあと、次に、バンド131が、内側位置特定部133のフィンガー153と、同一直線上に並んで、かつ接触するように、膝を内側に旋回し、かつ操作する。これを達成するために、固定ネジ117を緩めて、旋回アーム104の位置を、伸長アーム103に対して回転させ、調節する。いったん、上記のように、バンド131を内側位置特定部133に対して配置したら、固定ネジ117を締める。この内側位置特定部133の位置が、
図1の第2の点62の位置を示す。伸長アーム103が基部102に固定されているため、バンド131に関連する位置に旋回アーム104を回転させたとき、外側位置特定部132の位置は変化しないことがわかる。点168は、位置特定部132と位置特定部133とを結ぶ直線沿いに画定される。点168は、2つの位置特定部の間の中ほどに位置し、通常、
図1の点68と一致する。
【0069】
バンド131を、フィンガー153と、同一線上に並べて、かつ接触するように配置し、旋回アーム104を、伸長アーム103に対して回転しないように固定したあと、次に、バンド131が、中間位置特定部134のフィンガー154と、同一直線上に並んで、かつ接触するように、膝を、後方、および外側方向に旋回し、操作する。これを達成するために、固定ネジ123を緩めて、位置特定アーム105が設置されているブラケット119の向きを調節する。いったん、バンド131を中間位置特定部134に対して適切な位置に配置したら、固定ネジ123を締める。この中間位置特定部134の位置が、
図1の第3の点64の位置を示す。ブラケット119を回転させたとき、外側位置特定部132の位置、内側位置特定部133の位置、および
図23の点168の位置は変化しないことがわかる。バンド131を中間位置特定部134に対して配置するために位置特定アーム105を調節する場合、位置特定アーム105は、外側位置特定部132、点168および内側位置特定部133を介して伸長する軸169の周りを回転する。外側位置特定部132から点168までの距離は、内側位置特定部133から点168までの距離と等しく、また、中間位置特定部134から点168までの距離と等しい。したがって、外側位置特定部132、内側位置特定部133および中間位置特定部134は、点168を中心とする円周上の点を特定し、中間位置特定部134から点168までの直線は、外側位置特定部132から内側位置特定部133までの直線に対して垂直である。
【0070】
次に、位置特定アーム105を、ブラケット119から取り外し、
図24に示されるように、ピン130を、ブラケット119のスライド部120の最終位置特定スロット135の内部に設置する。
図25は、ブラケット119の断面図を含み、当該断面図は、ストッパー端136を有する最終位置特定スロット135を示している。ストッパー端136は、ピン130の先端がそれに接触したとき、点168からバンド131までの直線が中間位置特定部134から点168までの直線に対して垂直になるように設計されている。したがって、ピン130が最終位置特定スロット135内部に設置されたとき、バンド131は、(
図1に示されている)軸72と同一直線上に並ぶようになる。
【0071】
図24に示されるように、ピン130が最終位置特定スロット135内部に設置されたとき、大腿骨は、膝中心が最終位置特定スロット135の中間面と同一平面にあるように配向させられる。次に、大腿骨をこの位置に保持する一方で、ガイドピン137を、最終位置特定スロット135から間隔をあけたガイド穴138を介して大腿骨50に穿設する。ガイド穴138は、真の大腿骨機能軸70と近似大腿骨機能軸70´との間の角度を補正するように、点168とバンド131とを結ぶ直線から傾いている。したがって、ピン137が大腿骨50に穿設されたとき、ピン137は、真の大腿骨機能軸70に対して垂直になる。
【0072】
次に、ガイドピン30および37に関連する
図14に示された手段と同様の手段で大腿骨のそれぞれの位置に配置されたガイドピン130および137を残す一方で、機能軸測定器101を患者から取り外す。次に、ロッドアラインメントガイドを、ピン130および137上に設置する。特に、ロッドアラインメントガイドは、ピン137をスライドすることができるガイド穴と、ピン130をスライドすることができるガイドスロットと、を備え得る。最後に、アラインメントロッドを、アラインメントガイドの別のガイド穴の内部に設置することができる。アラインメントロッドは、前頭面で見た場合、機能軸と同一直線上にあり、矢状面で見た場合、機能軸と平行である。ガイドピン137は、矢状面で見た場合、機能軸に対して垂直である。バンド131の中心とガイドピン137の軸とを結ぶ直線は、前頭面で見た場合、機能軸と同一直線上にある。
【0073】
すでに、本発明は、それのいくつかの実施形態を参照して記載された。これにより、本明細書で特定された、いかなる特許または特許出願の開示も、すべて、参照により組み込まれる。上記の詳細な説明および例は、あくまでも、明確に理解するために与えられている。そこから、不必要な限定を解釈するべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく記載された実施形態において、多くの変更が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。従って、本発明の範囲は、本明細書に記載された構造物に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の言語によって記載された構造物、およびそれらの構造物の均等物によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1は、大腿骨に関連した代表球の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る、大腿骨に対して配置された機能軸測定器の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2の機能軸測定器の一部の分解組み立て図で表した斜視図である。
【
図5】
図5は、大腿骨に対して配置された、
図2の機能軸測定器の側面図である。
【
図6】
図6は、大腿骨がピンを介して外側位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の機能軸測定器の底面を拡大した斜視図であり、当該図は、外側位置特定器スロットの図を含んでいる。
【
図8】
図8は、大腿骨がピンを介して内側位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図2の機能軸測定器の別の斜視図であり、当該図は、複数の位置特定器スロットを示している。
【
図10】
図10は、大腿骨がピンを介して中間位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【
図11】
図11は、大腿骨がピンを介して最後の位置特定器スロットと係合された状態における、
図2の機能軸測定器の斜視図である。
【
図12】
図12は、上記最終位置特定器スロットを備えた、
図2の機能軸測定器の一部の底面を拡大した斜視図である。
【
図13】
図13は、
図2の機能軸測定器の上面を拡大した斜視図であり、当該図は、ブラケットの上部を示している。
【
図14】
図14は、大腿骨における代表位置に配置されたガイドピンの斜視図である。
【
図15】
図15は、大腿骨に対して配置されたアラインメントガイドの斜視図である。
【
図16】
図16は、前頭面で見た場合、アラインメントロッドが機能軸と一致するように配置された状態における、大腿骨の上面図である。
【
図17】
図17は、アラインメントロッドが機能軸と平行になるように配置された状態における、大腿骨の側面図である。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態に係る機能軸測定器の斜視図である。
【
図21】
図21は、大腿骨が外側位置特定部と係合された状態における、機能軸測定器の斜視図である。
【
図22】
図22は、
図20の機能軸測定器の一部を拡大した斜視図であり、当該図は、外側位置特定部とピンとのアラインメントを図示している。
【
図25】
図25は、機能軸測定器の一部の斜視図であり、それのブラケットの一部が断面図で示されている。
【
図26】
図26は、大腿骨に対して位置決めされた解剖面の斜視図である。
【
図28】
図28は、大腿骨の端部に対して配置された、
図27の膝中心位置特定器の斜視図である。