(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスの流量を計測するガスメータとして種々のものが知られており、例えば超音波式ガスメータがある。超音波式ガスメータは、超音波周波数で作動する圧電式振動子等からなる一対の音響トランスジューサ(超音波式流速センサ)を備えており、一対の超音波式流速センサは、ガス流路内に一定距離だけ離して配置されている。
【0003】
ガスメータのボディ本体には、ガス供給源に接続されるガス流入口と燃焼器等に接続されるガス流出口とが設けられ、ボディ本体の内部には、ガス流入口からガス流出口へと至るガス流路が形成されている。このガス流路は、ガス流入口と連通してガスが上下方向に流れる入口流路部と、ガス流出口と連通してガスが上下方向に流れる出口流路部と、入口流路部と出口流路部とを連通する中間流路部とから構成され、略U字状に折れ曲がった流路形状を有している。
【0004】
中間流路部には、ガスの流れを整流する整流板をその内部に配置した筒状の流路ケースが配置されており、入口流路部から出口流路部へと至るガスはこの流路ケース内を流れる。流路ケースの側部には、一対の超音波式流速センサが配置され、当該一対の超音波式流速センサを通じて流路ケース内を流れるガスの流速が計測される。
【0005】
ところで、入口流路部は、ガスの流れを遮断する遮断弁等を備える関係上、ガスメータの背面側へとガスが一旦流れたり、流路径が部分的に縮小した部位を流れたりするといった複雑な流路構造となっている。この複雑な流路構造により、入口流路部を流れるガスに乱れが生じ、この乱れた状態のガスが流路ケース内に流入することで、流量計測にバラツキが生じ、流量誤差が大きくなってしまうことがある。
【0006】
そこで、例えば特許文献1には、ガスの流れを整流する整流板を、計測管(流路ケース)の流入口の近傍に配置した構造が開示されている。この整流板は、ボディ本体の底面側から流路部材に取り付けられている。また、例えば特許文献2には、入口流路部に形成された上壁部に、整流板を配設した構造が開示されている。上壁部には、ビス穴を備えるボスが、ガス流れ方向に沿って突出して設けられている。また、整流板は、その板厚方向に貫通されたビス穴を備えており、ビスによってボスに固定される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る超音波式ガスメータの構成を示す正面図である。
図2は、本実施形態に係る超音波式ガスメータの内部構造を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る超音波式ガスメータは、超音波を送受信する一対の超音波式流速センサによりガス流量の計測を行うガスメータである。超音波式ガスメータは、メータボディ10と、アンダーカバー20と、計測ユニット30とを主体に構成されている。
【0016】
メータボディ10は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料により形成されたボディ本体10aと、その正面に設けられる樹脂製のフロントカバー10bを備え、ボディ本体10aとフロントカバー10bとの間の隙間に制御基板等を収納している。
【0017】
ボディ本体10aは、その上部に、ガス供給源からの配管が接続されるガス流入口11aと、燃焼器等が接続されるガス流出口11bとを備えている。そして、ボディ本体10aの内部には、ガス流入口11aからガス流出口11bに至る一連のガス流路12を備えている。
【0018】
ガス流路12は、入口流路部12aと、中間流路部12bと、出口流路部12cとから構成されており、略U字状に折れ曲がった流路形状を備えている。これらの流路部12a〜12cは、ガス流入口11aからガス流出口11bにかけて、入口流路部12a、中間流路部12b、出口流路部12cの順番で並んでいる。
【0019】
入口流路部12aは、ガス流入口11aと連通し、上下方向に沿って形成されている。入口流路部12aの中間部には、円形状の開口部12a1が設定されている。ガス流入口11aから流入したガスは下方に向かって流れると、開口部12a1においてメータボディ10の正面側(前側)から背面側(後側)に向かって流れ、その後向きを変えて再度下方に向かって流れる。開口部12a1には、図示しない遮断弁が設けられている。遮断弁の弁体が正面から背面に向かって突出して開口部12a1を塞ぐことにより、入口流路部12aの途中でガスの流れを遮断することができる。
【0020】
出口流路部12cは、ガス流出口11bと連通し、入口流路部12aと同様に上下方向に沿って形成されている。
【0021】
中間流路部12bは、入口流路部12aと出口流路部12cとにそれぞれ連通し、左右方向に沿って形成されている。この中間流路部12bには、計測ユニット30が収容配置されている。
【0022】
ボディ本体10aの底面は開放された構造となっており、開放された底面側には、ボディ本体10aの内部に形成されたガス流路12が現れている。アンダーカバー20は、メータボディ10の底面に配設され、ボディ本体10aの底面側を覆ってガス流路12を閉塞する。アンダーカバー20は、ボディ本体10aと同様、アルミニウムあるいはアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。
【0023】
図3は、アンダーカバー20の要部を模式的に示す斜視図である。アンダーカバー20の上面、すなわち、メータボディ10の内部と正対する面には、凹部21が長手方向に沿って形成されている。凹部21は、入口流路部12aに対応する入口凹部21aと、中間流路部12bに対応する中間凹部21bと、出口流路部12cに対応する出口凹部21cとで構成されている。
【0024】
入口凹部21a及び出口凹部21cは、中間凹部21bよりも幅広かつ底までの距離(深さ)が大きく形成されている。アンダーカバー20の上面側における入口凹部21a及び出口凹部21cの周縁形状は、ボディ本体10aの底面側における入口流路部12a及び出口流路部12cの周縁形状と対応するように設定されている。一方、中間凹部21bは、その幅が計測ユニット30の流路ケース31の外幅と対応し、その深さが流路ケース31の高さの半分程度となるように設定されている。
【0025】
入口凹部21aにおける周側壁21a1には、受け部21a2が形成されており、本実施形態では、メータボディ10の正面側及び背面側に対応する二箇所にそれぞれ設定されている。受け部21a2は、入口凹部21aの内方に向けて膨出形成されており、周側壁21a1の高さ方向(上下方向)に沿って連続的に形成されている。
【0026】
計測ユニット30は、流路ケース31と、一対の超音波式流速センサ32と、制御基板33とを主体に構成されている。流路ケース31は、その下側半分がアンダーカバー20の中間凹部21bに挿入固定され、流路ケース31の軸方向が水平となるように中間流路部12bに配設されている。この配置状態において、一対の超音波式流速センサ32は、流路ケース31の上側面に組み付けられている。
【0027】
流路ケース31は、ガス流入口11aの中心軸とガス流出口11bの中心軸との間の距離よりも長く設定された長尺筒状の部材であり、その一方の開口端部が入口流路部12aに、他方の開口端部が出口流路部12cに臨むように配置されている。入口流路部12aを流れたガスは、一方の開口端部から流路ケース31内へと流入し、当該流路ケース31内を流れた後に、他方の開口端部から出口流路部12cへと流れ出る。流路ケース31の内部には、ガスの流れを整流するための複数の整流板(図示せず)が積層配置されている。
【0028】
この流路ケース31は、長手方向に所要の間隔を空けて設けられた2つのOリング保持部36を備えている。2つのOリング保持部36は、ゴム状等のOリングが設けられる部位であって、流路ケース31を中間凹部21bに配置した場合において、中間凹部21bの両端部にそれぞれ位置する。このため、Oリング保持部36に保持されるOリングは中間凹部21bに密着し、この密着部位がシール部として機能する。これにより、アンダーカバー20の入口凹部21a内のガスが、流路ケース31と中間凹部21bとの隙間を介して出口凹部21cに流入しないように、そのシール性が確保される。なお、Oリングはメータボディ10側にも密着しており、流路ケース31とメータボディ10と間に隙間が生じないようにもなっている。
【0029】
一対の超音波式流速センサ32は、一方の超音波式流速センサ32から送信された超音波信号が流路ケース31の底面にて反射し、他方の超音波式流速センサ32にて受信される反射型のユニットである。
【0030】
制御基板33は、超音波信号の送信処理及び伝播時間の計測等を行う。流路ケース31の上面には、制御基板33を保護するための保護ケース(図示せず)が組み付けられている。
【0031】
以下、本実施形態の特徴の一つであるストレーナ15について説明する。ここで、
図4は、ストレーナ15の構成を示す斜視図である。
図5は、ストレーナ15の組み付け後の状態を模式的に示す説明図であり、
図6は、ストレーナ15の組み付け前の状態を模式的に示す説明図である。ストレーナ15は、入口流路部12aに配置され、計測ユニット30に流入するガスの流れ、すなわち、入口流路部12aを流れるガスの流れを整流するものである。このストレーナ15は、計測ユニット30の近傍、特に、入口流路部12aにおける開口部12a1よりも下流領域に配置されている。
【0032】
ストレーナ15は、上下方向に延在する筒部材16と、端壁17とを主体に構成されている。
【0033】
筒部材16は、略四角筒状に形成されており、その外周形状は、入口流路部12aの内壁面と対応した形状を備えている。筒部材16の下端16cは開放されたままとなっている。また、筒部材16の一部には、流路ケース31を配置するために必要な開口16aが設定されている。
【0034】
端壁17は、筒部材16の上端に連設されており、入口流路部12a内のガスの流れに対して略垂直となる面を構成している。端壁17の一部には、所要の形状に設定された開口からなるガス通路17aが形成されている。このガス通路17aは、入口流路部12aを流れるガスが当該ガス通路17aを通過することで、端壁17よりも下流側のガスの流れを整流する機能を備えている。ガス通路17aは、整流機能から定められる所要の形状に設定されており、本実施形態では、端壁17の中央部に形成された略矩形状の第1開口17a1と、この第1開口17a1に隣接して前後方向に幅広に形成された略矩形状の第2開口17a2とで構成されている。
【0035】
このストレーナ15において、筒部材16の下端16c側の周縁部には、外方に向かって突出する突起部16bが形成されている。突起部16bは、開口16aの両側にそれぞれ設定されている。個々の突起部16bの上面には、所定の高さのリブ16b1が形成されている。このリブ16b1により、高さ方向(上下方向)に対するマージンが突起部16bに付与される。
【0036】
一方で、ボディ本体10aの底面側における入口流路部12aの周縁部の所要の位置には、2つの突起部16bに対応した溝部10a1が設定されている。突起部16bと溝部10a1は、ストレーナ15が入口流路部12aに組み付けられた際に、互いに嵌まり合う関係となっている(
図5参照)。リブ16b1を含めた突起部16bの高さは、この溝部10a1の深さよりも多少大きくなるように設定されている。
【0037】
また、ストレーナ15の端壁17には、円筒形の突起からなるボス部17bが立設されている。一方、ボディ本体10aの入口流路部12aの所要の位置には上壁面が形成されており、当該上壁面にはボス部17bに対応した凸部(図示せず)が設定されている。ボス部17bと凸部は、ストレーナ15が入口流路部12aに組み付けられた際に、相互に嵌まり合う関係となっている(
図2参照)。
【0038】
入口流路部12aに対するストレーナ15の組み付けは、ボディ本体10aの底面側から、入口流路部12aに対してストレーナ15を嵌め込むことで行われる。
図6に示すように、ストレーナ15は、端壁17を先頭に入口流路部12aに嵌め込まれる。
【0039】
このとき、端壁17に設定されたボス部17bと、入口流路部12aの凸部とが嵌り合い、これにより、ストレーナ15の位置決めがなされる。同様に、筒部材16に設定された一対の突起部16bは、ボディ本体10a底面側の入口流路部12aに設定された一対の溝部10a1に嵌め込まれる。
【0040】
この際、突起部16bのリブ16b1の設定により、入口流路部12aに嵌め込まれたストレーナ15の下端(筒部材16の下端16c)は、入口流路部12aの周縁部よりもわずかに突き出した状態となる。
【0041】
つぎに、ボディ本体10aにアンダーカバー20が取り付けられると、ボディ本体10aの底面側はアンダーカバー20により覆われ、ガス流路12が閉塞される。アンダーカバー20はねじ止め等によりボディ本体10aに対して圧着固定される。
【0042】
アンダーカバー20の取り付けに起因して、ボディ本体10aの底面には、当該アンダーカバー20による押圧力が作用する。これにより、筒部材16に設定された一対の突起部16bが、入口流路部12aの溝部10a1内に圧入される。また、入口凹部21aに設定された一対の受け部21a2がストレーナ15の下端(筒部材16の下端16c)を押圧し、これにより、ストレーナ15が入口流路部12aの内方へ押し入れられるとともに、一対の受け部21a2においてアンダーカバー20の下端が保持される。
【0043】
このような状態において、ストレーナ15は、入口流路部12aに嵌まり込み、入口流路部12aの内壁面によって収容保持される。
【0044】
ストレーナ15を組み付けることで、入口流路部12aにおけるガスの流れの途中に、ガス通路17aが配置される。ガス通路17aを介してガスが流れることで、端壁17の下流側のガスの流れ、すなわち、計測ユニット30に流入するガスの流れを整流することができる。その結果、計測ユニット30に流入するガスの流量ばらつきを抑制することができるので、流量の誤計測の発生や計測ができないといった事態の発生を抑制することができる。
【0045】
また、ストレーナ15(筒部材16)の外周形状が入口流路部12aの内壁面と対応した形状に設定されているので、両者の間に生じる隙間を無くすことができる。これにより、入口流路部12aを流れるガスが、ストレーナ15と入口流路部12aとの隙間に流れ込むことなく、ガス通路17aを流れる。その結果、ストレーナ15による整流作用を適切に得ることができる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、ストレーナ15は、入口流路部12aの内壁面と対応した外周形状を有する筒部材16と、筒部材16の一方の端部に連設されているとともにガス通路17aとなる開口を備える端壁17と、を有している。そして、このストレーナ15は、入口流路部12aの内壁面によって収容保持されている。
【0047】
この構成によれば、整流用のガス通路17aを備える端壁17が、筒部材16に一体化して構成されている。また、メータボディ10の底面側は開放されているので、入口流路部12aに対して筒状のストレーナ15を嵌め込むことで、ストレーナ15が入口流路部12aに収容保持されることとなる。従って、入口流路部12aにストレーナ15を簡単に組み付けることができる。このため、組み付けや固定のための別途の部材が必要なく、部品点数や組付工数の低減を図ることができる。また、ねじ止めなどの複雑な作業が必要ないので、作業性が向上し、組付工数の低減を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態において、ストレーナ15は、端壁17が筒部材16の上方に位置付けられるように入口流路部12aに嵌め込まれている。このとき、ストレーナ15の下端(筒部材16の下端16c)がアンダーカバー20に形成された受け部21a2によって保持されている。
【0049】
この構成によれば、ストレーナ15が受け部21a2によって保持されることで、ストレーナ15がアンダーカバー20の内部(入口凹部21a)に落下するといった事態を抑制することができる。また、ストレーナ15の下端(筒部材16の下端16c)が、正面側及び背面側の2箇所の受け部21a2によって保持されるので、ストレーナ15の上下方向の位置を適切に維持することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、入口流路部12aにおけるストレーナ15の位置決めを行う位置決め手段として、端壁17に立設されている筒状のボス部17bと、ボディ本体10aにおける入口流路部12a内に配置される凸部とを備えている。この位置決め手段は、ボス部17bと凸部とが相互に嵌まり合うことで、端壁17の面方向及び面直方向についてのストレーナ15の位置決めを行っている。
【0051】
この構成によれば、ストレーナ15の位置と高さとを適切に位置決めすることができる。また、ボス部17bと凸部とを相互に嵌め合わすだけで位置決めを行うことができるので、作業性の向上を図ることができる。
【0052】
さらに、本実施形態においては、入口流路部12aにおけるストレーナ15の固定を行う固定手段として、筒部材16の下端16cの周縁部において外方に向かって突出する突起部16bと、ボディ本体10aの底面側に臨む入口流路部12aの周縁部に設定されている溝部10a1とを有している。この固定手段は、突起部16bと溝部10a1とが相互に嵌まり合うことで、ストレーナ15の固定を行う。
【0053】
この構成によれば、突起部16bと溝部10a1とが相互に嵌まり合うことで、ストレーナ15が固定され、そのガタツキの発生を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、突起部16bには、リブ16b1が設定されており、突起部16bの高さ方向のマージンがリブ16b1によって確保されている。この突起部16bは、リブ16b1の分だけ溝部10a1より突き出すように設定されており、アンダーカバー20が取り付けられることで、この突起部16bが溝部10a1に圧入される。これにより、ストレーナ15の固定が強固に行われ、そのガタツキの発生を効果的に抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ストレーナ15を入口流路部12aにのみ配置するものであるが、出口流路部12cのみに、あるいは、入口流路部12aと出口流路部12cのそれぞれにストレーナ15を配置するものであってもよい。出口流路部12cにストレーナ15を配置することで、脈動が発生しても、その影響を受けにくい構成とすることができる。なお、出口流路部12cに設けるストレーナ15の構成は、入口流路部12aのものと同様にすることができる。
【0056】
以上、本実施形態にかかる超音波式ガスメータについて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その発明の範囲において種々の変更が可能である。