特許第6326085号(P6326085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326085
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】電子打楽器に用いる振源伝導機構
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20180507BHJP
   G10H 1/32 20060101ALI20180507BHJP
   G10H 3/14 20060101ALI20180507BHJP
   G10D 13/00 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   G10H1/00 A
   G10H1/32 Z
   G10H3/14 Z
   G10D13/00 230
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-95022(P2016-95022)
(22)【出願日】2016年5月11日
(65)【公開番号】特開2017-203861(P2017-203861A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】516139126
【氏名又は名称】創新生活科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100111442
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 英一
(72)【発明者】
【氏名】林 志宏
(72)【発明者】
【氏名】王 建彬
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 萬進
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−057596(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3202993(JP,U)
【文献】 特開2004−070250(JP,A)
【文献】 特開2005−234400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00− 7/12
G10D 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子打楽器に用いる振源伝導機構は、共振伝導部材を備え、
該共振伝導部材は円形であり、中心に位置する円形板の感知結合部、及び該感知結合部周囲に環状に設置され、連接する振動伝導部を備え、
該振動伝導部は円環状であり、該振動伝導部と前記該感知結合部の両者は、同心円配置を呈し、
該振動伝導部には、ハニカム構造又は正六角形の複数の中空メッシュを設置し、しかも該各中空メッシュは、辺の長さを共用する方式で相互に連接し、該振動伝導部全体を満たすことを特徴とする電子打楽器に用いる振源伝導機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子打楽器(electronic percussion instruments)に関し、特に電子打楽器に用いる振源伝導機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電子打楽器には、電子ドラム(electronic drums)、電子シンバル(electronic cymbals)等タイプがある。
従来の電子ドラムは、ラバーパッド(rubber pad)及び該ラバーパッドに密着する薄金属板(thin metallic plate)を備え、該金属板の中心近くには、圧電素子センサー(piezoelectric sensor)を設置する。
従来の電子シンバルの該圧電素子センサーは、ラバーパッド上にダイレクトに設置する。
ドラム或いはシンバルのパーカッションエリア(percussion area)に比べ、従来の電子打楽器の圧電素子センサーは、シグナル探知範囲が非常に小さい。
これにより、該パーカッションエリアの周辺範囲(peripheral region)のパーカッション動作に対する圧電素子センサーの探知敏感度(sensitivity)は低下してしまう。
こうして、圧電素子センサーの感知シグナルに基づき生じる電子パーカッション音響効果(electronic percussion sound)は不安定になってしまう。
【0003】
上述の問題を緩和するためには、電子ドラム或いはシンバルのサイズを、一般のドラム或いはシンバルより小さくせざるを得ない。
しかし、それでは電子楽器は従来の(非電子)楽器に対して、サイズの上でリアルさを欠き、これにより演奏者の操作体験及び演出効果に影響を与える。
【0004】
前記問題に対して、特許文献1は、クモの巣状のセンサー(spider web-like sensor)を備える電子打楽器を開示する。
それは、振動共振部材(vibration resonance member)、圧電素子センサーを備える。
該振動共振部材は、中心部(hub portion)、該中心部から外へと放射状に延伸する複数の放射部(radial portions)及び複数の環状部(ring portions)を備える。
該圧電素子センサーは、該振動共振部材の中心部に連接(connected to)する。
これにより、クモの巣状センサーを備える電子打楽器は、より良い感知安定度を達成することができる。
【0005】
しかし、該振動共振部材の振動波の感知及び伝送ルートは、振源に最も近い環状部から放射部に沿って、中心部に位置する圧電素子センサーに伝送する、というもので、その伝導ルートは少なく、しかも単一である。
このため、該振動共振部材の中心部から離れたところで生まれた振動の振動波は、明らかに減衰し、感知結果の正確性と敏感度に影響を与える。
これにより、後続のサウンドのアウトプット効果の安定性が悪くなってしまい、同時に、該振動共振部材、及び該振動共振部材を運用した電子打楽器のサイズを制限することともなる。
【0006】
よって、伝導ルートを増やし、またそれを多重とし、これにより異なるルートの振動波を集合或いは重ね合わせることで、伝送過程でのエネルギーの減衰を緩和し、こうして感知敏感度と正確性を高める電子打楽器の振源伝導機構の開発は、切迫性と実用の価?を備える技術課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第(USP)9099070B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、伝導ルートを増やすことで、異なるルートの振動波が集合或いは重ね合わせを形成でき、こうして可減緩伝送過程におけるエネルギーの減衰を緩和できる電子打楽器に用いる振源伝導機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、下記の電子打楽器に用いる振源伝導機構を提供する。
電子打楽器に用いる振源伝導機構は、共振伝導部材を備え、該共振伝導部材は円形であり、中心に位置する円形板の感知結合部、及び該感知結合部周囲に環状に設置され、連接する振動伝導部を備え、該振動伝導部は円環状であり、該振動伝導部と前記該感知結合部の両者は、同心円配置を呈し、該振動伝導部には、ハニカム構造又は正六角形の複数の中空メッシュを設置し、しかも該各中空メッシュは、辺の長さを共用する方式で相互に連接し、該振動伝導部全体を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子打楽器に用いる振源伝導機構の振動伝導部はより多くの伝導ルートを備え、同時に中空メッシュがハニカム構造又は正六形であるため、異なるルートの振動波が集合或いは重ね合わせを形成できる。
こうしてエネルギー伝送過程における減衰の問題を低減し、感知の敏感度と正確性を高められ、より大きなサイズの電子打楽器に適用可能となり、製品の実用性を劇的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の構造模式図である。
図2】本発明の電子ドラムの構成部材の分解模式図である。
図3図2の側視模式図である。
図4】本発明の動作模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(実施例)について詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、本発明の電子打楽器に用いる振源伝導機構は、共振伝導部材3を備える。
【0014】
該共振伝導部材3は通常、電子ドラム或いは電子シンバルなどの電子打楽器のパーカッションエリアと対応するため、円形に製造される。
【0015】
該共振伝導部材3は、中心に位置する感知結合部31、及び該感知結合部31周囲に環状に設置され、連接する振動伝導部32を備える。
【0016】
さらに図2に示すように、該感知結合部31は、該電子打楽器の圧電素子センサー(piezoelectric sensor)などのセンサー4と連接して結合される。
【0017】
通常、該センサー4はさらに、電子音響効果発生(electronic sound generation)回路5と接続する。
【0018】
本実施形態では、該感知結合部31は、図1,2,4に示す様に、中空メッシュのような中空ではない通常の円形板体で、該振動伝導部32は、円環状で、しかも該振動伝導部32と感知結合部31両者は、同心円配置を呈する。
【0019】
該振動伝導部32には、ハニカム構造或いは正六形の複数の中空メッシュ321を設置し、しかも該各中空メッシュ321は、辺を共用する方式で相互に連接し、振動伝導部32全体を満たす。
【0020】
中空メッシュ321の辺の長さを変える、或いは調整することで、使用者は実際の必要に応じて、該中空メッシュ321の数量或いは密度を増減、調整できる。
【0021】
一般的には、共振伝導部材3と感知結合部31全体の大きさが不変であるとの前提下で、該中空メッシュ321の数量が多ければ多いほど(密であればあるほど)、より優れた伝導効果を得ることができる。
【0022】
図2図3は、それぞれ本発明の電子ドラムの構造の構成模式図、及び側視模式図である。
【0023】
該電子ドラムは、パーカッション部材(percussion member)6、複数のダンピング部材(damping member)7、該共振伝導部材3、センサー4及び電子音響効果発生回路5を備える。
【0024】
該パーカッション部材6は、ラバーパッド61、及び該ラバーパッド61一側面に密着して設置される金属板62を備える。
【0025】
該複数のダンピング部材7は、該金属板62と該共振伝導部材3との間に密着して設置される。
【0026】
該パーカッション部材6は、パーカッションを受けると、振動(vibrations)を発生する。
【0027】
該ダンピング部材7は、具体的にはフォーム(foam)材質で、パーカッション部材6が発生した振動を該共振伝導部材3に伝送(propagate)する。
【0028】
ここで注意を要するのは、本発明の電子ドラムと従来の電子ドラムの他の構造構成は、おおよそ相同だということである。
【0029】
これにより、演奏者が該電子ドラムのパーカッション部材6を打撃すると、発生した振動は、順番に、該ダンピング部材7、該共振伝導部材3の振動伝導部32を経て、該共振伝導部材3に結合する感知結合部31のセンサー4に伝送される。
【0030】
これにより、該センサー4は、感知した振動に基づき、対応する電気信号を発生し、該電気信号を該電子音響効果発生回路5に伝送し、スピーカーなどの音響効果アウトプット装置を駆動し、対応するドラム音を発する。
【0031】
図1に示すように、本発明の共振伝導部材3の振動伝導部32には、ハニカム構造或いは正六形である複数の中空メッシュ321を設置し、しかも該各中空メッシュ321は、辺を共用する方式で相互に連接し、振動伝導部32全体を満たす。
【0032】
図3及び図4に示すように、演奏者が該電子ドラムのパーカッション部材6上のある位置でパーカッションを行い、ダンピング部材7の伝送を通して、該共振伝導部材3の相対位置において振源8を生じると、該振源8にある、或いは該振源8に近い中空メッシュ321にとっては、それが感知した振動は、「Y字状」及び/或いは「逆Y字状」のルートで、他の隣り合い、しかも該感知結合部31にもっと近い中空メッシュ321の方向へと、該感知結合部31に結合するセンサー4に伝導するまで、伝導する。
【0033】
こうして、本発明の共振伝導部材3の振動伝導部32は、より多くの伝導ルートを備えるようになる。
【0034】
同時に、前述の動作過程において、異なるルートからの振動波は、中空メッシュ321の頂点において集合(convergence)或いは重ね合わせ(superposition)の現象を形成する。
【0035】
しかも、正六形の中空メッシュ321の辺の長さはすべて等しいため、異なるルートの振動波は、相位が同じであるため、共振(resonance)を形成することができる。
【0036】
こうして、エネルギー伝送過程における減衰の問題を大幅に低減でき、感知の敏感度と正確性をさらに高められ、本発明はより大きなサイズの電子打楽器に適用でき、製品の実用性を劇的に高めることができる。
【0037】
この他、注意を要する点は、該中空メッシュ321をハニカム構造或いは正六形に設計するのであり、同様に多くの伝導ルートを備える五辺形、七辺形、八辺形などの他の多辺形ではない点である。
【0038】
本発明は、幾何学原理に基づき、各中空メッシュ321を、空隙或いは重なりが発生しない方式で相互に連接し、振動伝導部32全体を満たすことで、感知上の死角或いは盲点の発生を回避し、本発明はより高い信頼性を達成できる。
【0039】
上記の本発明名称と内容は、本発明技術内容の説明に用いたのみで、本発明を限定するものではない。本発明の精神に基づく等価応用或いはいは部品(構造)の転換、置換、数量の増減はすべて、本発明の保護範囲に含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は特許の要件である新規性を備え、従来の同類製品に比べ十分な進歩を有し、実用性が高く、社会のニーズに合致しており、産業上の利用価値は非常に大きい。
【符号の説明】
【0041】
3 共振伝導部材
31 感知結合部
32 振動伝導部
321 中空メッシュ
4 センサー
5 電子音響効果発生回路
6 パーカッション部材
61 ラバーパッド
62 金属板
7 ダンピング部材
8 振源
図1
図2
図3
図4