(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326097
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】電動機及びディスポーザ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20180507BHJP
H02K 3/44 20060101ALI20180507BHJP
B02C 18/00 20060101ALI20180507BHJP
B02C 18/24 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
H02K5/10 B
H02K3/44 Z
B02C18/00 103A
B02C18/24
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-135173(P2016-135173)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-7504(P2018-7504A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2016年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】593047552
【氏名又は名称】株式会社フロム工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 宇喜雄
(72)【発明者】
【氏名】武田 拓真
【審査官】
マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−004214(JP,U)
【文献】
実開昭57−095052(JP,U)
【文献】
実開昭56−145341(JP,U)
【文献】
特開2015−198538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
B02C 18/00
B02C 18/24
H02K 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングの上部に配置された負荷側ブラケットと、
前記ケーシングの下部に配置された反負荷側ブラケットと、
前記ケーシングの内部に固定された固定子と、
前記ケーシングの内部において、前記固定子の内側に配置されて、前記負荷側ブラケットと前記反負荷側ブラケットに回転自在に支持されて、垂直軸回りに回転する回転子と、
前記固定子と前記回転子の間に配置されて、前記ケーシングの内部に侵入した漏水が前記固定子を濡らすことを防ぐ制水部材を備える電動機であって、
前記制水部材は、
前記固定子と前記回転子の間に配置された、前記回転子の回転中心を中心軸とする制水円筒と、
前記負荷側ブラケットの下方にあって、前記回転子の上方を覆うとともに、中心部に前記回転子の回転軸を通す開口を有し、外径部が、前記制水円筒の内面に水密に接続されている制水円板を備えるとともに、
さらに、前記負荷側ブラケットを上下に貫く上部水抜き穴と、
前記反負荷側ブラケットを上下に貫く下部水抜き穴と、を備え、
前記上部水抜き穴と前記下部水抜き穴は、平面形において、前記制水円筒の内側に配置されている、
電動機。
【請求項2】
前記制水円板の前記開口の直径は、前記ケーシングの上部に取り付けられて前記回転子の回転軸を軸支する軸受の外径よりも小さい、
請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に固定された固定子と、
前記ケーシングの内部において、前記固定子の内側に配置されて、垂直軸回りに回転する回転子と、
前記固定子と前記回転子の間に配置されて、前記ケーシングの内部に侵入した漏水が前記固定子を濡らすことを防ぐ制水部材を備える電動機であって、
前記制水部材は、
前記固定子と前記回転子の間に配置された、前記回転子の回転中心を中心軸とする制水円筒と、
前記回転子の上方を覆うとともに、中心部に前記回転子の回転軸を通す開口を有し、外径部が、前記制水円筒の内面に水密に接続されている制水円板を備えるとともに、
前記制水円板は、前記外径部から前記開口に向かって下る円錐状傾斜面を備えている、
電動機。
【請求項4】
前記制水円筒の上端は、前記固定子の上端よりも高い位置にある、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項5】
前記制水円筒の下端は、前記固定子の下端よりも低い位置にある、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項6】
前記制水部材は、絶縁材料で構成されている、
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電動機を備えて、該電動機で駆動される、
ディスポーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機、及び該電動機を備えるディスポーザに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスポーザは、キッチンのシンクの下に配置されて、シンクから投入される厨芥を粉砕し、水と混合して排出する装置(例えば、特許文献1)である。ディスポーザを駆動する電動機はディスポーザの下部に取り付けられていて、電動機の出力軸は、厨芥を粉砕する処理室の内部に突出している。また、電動機の出力軸が処理室の底板を貫通する部分には軸シールを備えて、処理室からの漏水を防止している。しかしながら、長期の使用の結果、軸シールが摩耗して処理室内の水が漏れて、電動機の内部に侵入することがある。電動機の中に漏水が侵入すると、漏電や感電の危険が生じる。そのため、ディスポーザは、アース接続(接地)することが求められている(例えば、特許文献2)。また、ディスポーザに漏電ブレーカを接続することが求められている(例えば、特許文献3)。
【0003】
しかしながら、ディスポーザの使用を前提に設計された新築家屋ならともかく、既存の家屋のシンクにディスポーザを設置する場合は、近くにアース端子が存在しないことが多いので、アース接続工事に手間がかかるという問題がある。また、ディスポーザ本体価格と取付工事費の2〜3割に相当する費用がアース接続工事費として追加的に必要になるので、需要者の負担が大きいという問題がある。また、アース接続すれば、感電の危険は回避できるが、水濡れによって生じるディスポーザの故障等は回避できないという問題がある。
【0004】
そこで、本願の発明者らは、回転子と固定子の間に円筒状の制水部材を配置して、電動機の内部に侵入した漏水が、制水部材で囲まれた空間を通って電動機の下部に流れて、電動機の下部から電動機の下方に排出されるようにした電動機を発明して、特許出願(特願2014−76445(以下、「先願」と言う))している。この先願に係る電動機においては、電動機の内部に侵入した漏水の大部分は、固定子を濡らすことなしに、電動機の外部に排出される。そのため、固定子の水濡れに起因する故障を予防することができる。また、制水部材を絶縁性の材料で構成すれば、回転子が水濡れしても、固定子と回転子の間に導通が生じることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−122526号公報
【特許文献2】特表2006−520266号公報
【特許文献3】特開2007−43617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電動機の内部への漏水の侵入は、ディスポーザの運転中に生じるので、電動機の上方から電動機の内部に侵入した漏水は回転中の回転子に当たって、遠心力で弾かれて飛沫になる。そして、弾かれた飛沫は飛散して、制水部材の上縁を越えて、固定子が置かれた空間に侵入し、固定子を濡らすことがある。1回の運転で侵入する飛沫の量は僅かであっても、飛沫の侵入が繰り返されると、電動機に故障が生じる場合がある。例えば、固定子の巻線の絶縁材が劣化して、絶縁破壊が生じる恐れがある。このように、先願に係る電動機においては、漏水による固定子の水濡れを完全には防ぐことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電動機の上方から電動機の内部に侵入した漏水が、回転子に当たって飛沫が生じても飛沫が固定子を濡らすことがない電動機と、該電動機を備えるディスポーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る電動機は、ケーシングと、
前記ケーシングの上部に配置された負荷側ブラケットと、前記ケーシングの下部に配置された反負荷側ブラケットと、前記ケーシングの内部に固定された固定子と、前記ケーシングの内部において、前記固定子の内側に配置されて、
前記負荷側ブラケットと前記反負荷側ブラケットに回転自在に支持されて、垂直軸回りに回転する回転子と、前記固定子と前記回転子の間に配置されて、前記ケーシングの内部に侵入した漏水が前記固定子を濡らすことを防ぐ制水部材を備える電動機であって、前記制水部材は、前記固定子と前記回転子の間に配置された、前記回転子の回転中心を中心軸とする制水円筒と、
前記負荷側ブラケットの下方にあって、前記回転子の上方を覆うとともに、中心部に前記回転子の回転軸を通す開口を有し、外径部が、前記制水円筒の内面に水密に接続されている制水円板を備える
とともに、さらに、前記負荷側ブラケットを上下に貫く上部水抜き穴と、前記反負荷側ブラケットを上下に貫く下部水抜き穴と、を備え、前記上部水抜き穴と前記下部水抜き穴は、平面形において、前記制水円筒の内側に配置されているものである。
【0009】
前記制水円板の前記開口の直径は、前記ケーシングの上部に取り付けられて前記回転子の回転軸を軸支する軸受の外径よりも小さくされても良い。
【0010】
本発明に係る電動機は、ケーシングと、前記ケーシングの内部に固定された固定子と、前記ケーシングの内部において、前記固定子の内側に配置されて、垂直軸回りに回転する回転子と、前記固定子と前記回転子の間に配置されて、前記ケーシングの内部に侵入した漏水が前記固定子を濡らすことを防ぐ制水部材を備える電動機であって、前記制水部材は、前記固定子と前記回転子の間に配置された、前記回転子の回転中心を中心軸とする制水円筒と、前記回転子の上方を覆うとともに、中心部に前記回転子の回転軸を通す開口を有し、外径部が、前記制水円筒の内面に水密に接続されている制水円板を備えるとともに、前記制水円板は、前記外径部から前記開口に向かって下る円錐状傾斜面を備え
ているものである。
【0011】
前記制水円筒の上端は、前記固定子の上端よりも高い位置にあるようにしても良い。
【0012】
前記制水円筒の下端は、前記固定子の下端よりも低い位置にあるようにしても良い。
【0013】
前記制水部材は、絶縁材料で構成されるようにしても良い。
【0014】
本発明に係るディスポーザは、上記いずれかの電動機を備えて、該電動機で駆動されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電動機は、制水円筒と制水円板を備えているので、電動機の内部に侵入した漏水が回転子に弾かれて、飛沫が生じた場合に、固定子が配置された区画への飛沫の飛散を防ぐことができる。そのため、固定子が飛沫を浴びないので、固定子の濡れに起因する不具合に発生が抑制される。また、制水円筒と制水円板を絶縁材料で構成することにより、漏水が侵入しても固定子と回転子の間に導通が生じない電動機が得られる。そのため、漏電や感電の発生が防止される。
【0016】
本発明に係るディスポーザは、前記の電動機を備えているので、処理室と電動機の間を水密に封止するシールが損傷して、電動機が水を被ることがあっても、電動機の故障が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態を例示するディスポーザの断面図である。
【
図2】
図1の部分拡大図であって、電動機の詳細な構成を示す断面図である。
【
図3】
図2に記載の電動機が備える制水円筒の形状を示す斜視図である。
【
図4】
図2に記載の電動機が備える飛沫避け部材の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るディスポーザ1を断面図示して、その構成を説明する図である。ディスポーザ1はシンク2の下方に取り付けられて、シンク2から排出される厨芥(図示せず)を粉砕して水とともに排出する装置であり、取付フランジ3、連結管4及びディスポーザ本体5を備えている。
【0020】
取付フランジ3はシンク2の排水口に挿入されるプラスチック製の部品であって、ナット6で締め上げられてシンク2に固定される。取付フランジ3の素材は、特に限定されないが、電気的絶縁性と相応の機械的強度を有する素材、例えばABS樹脂が選ばれる。連結管4は取付フランジ3とディスポーザ本体5を連結するゴム製の部品であって、金属製のバンド7で緊迫されて、取付フランジ3とディスポーザ本体5に固定される。
【0021】
ディスポーザ本体5の最上部には、処理室カバー8と処理室ブラケット9が配置されて、処理室10を構成している。つまり処理室10は、処理室カバー8と処理室ブラケット9で囲まれた空間である。処理室10の内部には固定歯11と回転歯12が配置され、回転歯12は電動機13によって回転駆動される。シンク2に投入された厨芥(図示せず)と水は、取付フランジ3を通って処理室10に入り、固定歯11と回転歯12に挟まれて粉砕され、水と混合されてスラリーとなって排出管14から排出される。なお、処理室カバー8及び処理室ブラケット9の素材も、特に限定されないが、電気的絶縁性と相応の機械的強度を有する素材、例えばABS樹脂が選ばれる。
【0022】
前述したように、電動機13は回転歯12を回転駆動するモータであって、処理室ブラケット9に固定されている。電動機13の固定は、電動機13を貫通するボルト15を処理室ブラケット9に鋳込まれたナット16に螺合させて行う。処理室ブラケット9の素材は電気的絶縁性を有するので、ボルト15あるいはナット16と処理室ブラケット9の間に導通は生じない。なお、
図1では、繁雑を避けるために、ボルト15とナット16を1組だけ描いているが、ディスポーザ1は、3組以上のボルト15とナット16を備えている。電動機13を安定して保持するためである。
【0023】
電動機13は、フレーム17、負荷側ブラケット18及び反負荷側ブラケット19で構成されるハウジングの内部に固定子20と回転子21を配置して、構成されている。フレーム17は電動機13の外殻を構成する鋼製の円筒である。負荷側ブラケット18と反負荷側ブラケット19は、回転子21を支持するとともに、フレーム17の上下端を塞ぐ「蓋」として機能する部品である。負荷側ブラケット18と反負荷側ブラケット19は、絶縁性のプラスチックを素材としている。回転子21の回転軸22は、ベアリング23を介して負荷側ブラケット18に回転自在に支持され、ベアリング24を介して反負荷側ブラケット19に回転自在に支持されている。なお、負荷側ブラケット18と反負荷側ブラケット19の素材も特に限定されないが、処理室ブラケット9等と同様に、電気的絶縁性と相応の機械的強度を有する素材、例えばABS樹脂が選ばれる。
【0024】
回転子21の回転軸22は、負荷側ブラケット18を貫通して電動機13の外に突出し、更に処理室ブラケット9を貫いて、処理室10の内部に突出して、そこで、回転歯12と結合されている。処理室ブラケット9と回転軸22の間には2枚の回転軸シール25が上下に重ねて装着されて、処理室10からの漏水を封止している。回転軸22には、処理室ブラケット9と負荷側ブラケット18の間において、鍔部材26が嵌装されている。鍔部材26は円環状の平面形を有する、刀の鍔に似た部品であって、上方から見た場合にベアリング23を覆うような寸法と形状を有している。また、回転軸22の下部には、別の鍔部材27が嵌装されている。鍔部材27も円環状の平面形を有する、刀の鍔に似た部品であって、上方から見た場合にベアリング24を覆うような寸法と形状を有している。鍔部材26と鍔部材27の作用については後述する。
【0025】
電動機13の外側には電動機カバー28が装着されている。電動機カバー28は処理室ブラケット9に固定されて、電動機13の全体を覆う容器である。また、電動機カバー28の下面には水受け皿29が取り付けられている。水受け皿29の作用については後述する。
【0026】
次に、
図2を参照して、電動機13の詳細な構成を説明する。電動機13の固定子20は、回転子21と同心に配置されて、回転子21を取り囲む電磁石である。固定子20は、
図2に示すように、固定子鉄心30と巻線31とから構成される。回転子21は、回転子鉄心32に永久磁石33を放射状に配置して構成される。したがって、固定子20には電力が供給されるが、回転子21には電力は供給されない。また、回転子21には、回転子21を上下に貫く水抜き穴34が形成されている。
【0027】
固定子20と回転子21の間には、制水部材35が配置されている。制水部材35は、制水円筒36と飛沫避け部材37とで構成される。
図3に示すように、制水円筒36は、円筒状の部材であって、上部と下部において円筒の直径が変化し、中間部(固定子鉄心30と対面する部位)において円筒の直径が一定になるように構成されている。また、制水円筒36の上端部36aは外側に折り曲げられ、下端部36bは内側に折り曲げられている。
【0028】
飛沫避け部材37は、
図4に示すように、接続円筒部37aと制水円板37bを備え、接続円筒部37aと制水円板37bは接続円筒部37aの上端37cにおいて互いに接合されている。制水円板37bは、中心部に向かうに従って下に下がる傾斜を有していて、中心部には開口37dが形成されている。つまり、制水円板37bは上端37cから開口37dに向かって下る円錐状傾斜面を有している。制水円板37bは円錐状傾斜面を有しているので、水抜き穴39から制水円板37b上に落下した漏水は、円錐状傾斜面を流れて、開口37dに導かれる。なお、以下、本明細書においては、開口37dの輪郭を形成する円周を制水円板37bの内径と呼び、制水円板37bの外周円、つまり接続円筒部37aの上端37cによって描かれる円周を制水円板37bの外径と呼ぶことにする。
【0029】
図2に戻って、制水部材35(制水円筒36、飛沫避け部材37)の構成の説明を続ける。
図2に示すように、制水円筒36の上端部36aは、固定子20の上端(巻線31の上端)より高い位置にあり、下端部36bは、固定子20の下端(巻線31の下端)より低い位置にある。このように、制水円筒36は、巻線31を含む固定子20の高さ方向の全範囲を覆って、漏水による固定子20の濡れを防いでいる。また、制水円筒36は、上に行くに従って直径が大きくされていて、上端部36aが固定子20(巻線31)に覆い被さるような形状を備えている。飛沫避け部材37は、接続円筒部37aの外面が制水円筒36の内面と面接触するように構成されていて、制水円筒36に接着固定されている。また、飛沫避け部材37は、その上端37cが制水円筒36の上端部36aよりも低くなるように、制水円筒36に取り付けられている。なお、制水円板37bの内径部の直径(開口37dの直径)はベアリング23の外径よりも小さくされている。そして、制水円板37bは回転子21の上方にあって、回転子21の大部分を覆っている。
【0030】
制水部材35の素材は特に限定されないが、電気的絶縁性があって、薄肉成形が容易であって、しかも相応の機械的強度を有する素材、例えばABS樹脂が選ばれる。本実施形態においては、制水部材35(制水円筒36と飛沫避け部材37)は、厚さ0.4mm以上のABS樹脂で構成されている。また、制水部材35の厚さは、経済産業省の「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」(http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku20134701.pdf)421ページの別表第8、1共通の事項、(7)二重絶縁構造、イ(ロ)(c)の「外傷を受けるおそれのない部分に用いる絶縁物の厚さは、0.4mm以上であること。」を根拠としている。
【0031】
電動機13を構成する部品についての説明を続ける。
図2に示すように、負荷側ブラケット18には凹部38が形成されている。そして、凹部38には、負荷側ブラケット18を上下に貫通する水抜き穴39が開けられている。なお、凹部38は負荷側ブラケット18を平面視する場合に、つまりディスポーザ1をシンク2の上方から見る場合に回転子21の回転中心を中心とする円環状をなしている。
【0032】
反負荷側ブラケット19の上面には、環状堤部40が形成されている。環状堤部40は、回転軸22の外側を取り囲むように形成されていて、平面形において、回転子21の回転中心を中心とする円環状をなしている。制水円筒36の下端部36bは、環状堤部40の内側(回転軸22に近い部位)にあって、環状堤部40の上端より低い位置にある。固定子20は、環状堤部40の外側に配置されている。また、反負荷側ブラケット19の、環状堤部40の内側にある部位には、反負荷側ブラケット19を上下に貫通する水抜き穴41が開けられている。
【0033】
最後に、ディスポーザ1の作用を説明する。前述したように、処理室ブラケット9の回転軸22の回転軸22が貫通する部位には回転軸シール25が嵌装されているので、通常の場合、処理室10内の水が漏れて、処理室ブラケット9の下方に落ちることはない。万一、回転軸シール25の劣化や破損によって、処理室10内の水が漏れて、処理室ブラケット9の下方に落ちて、電動機13内に流入しても、以下に示すような経路を辿って、電動機13の外に排出される。
【0034】
回転軸シール25に不具合が生じると、処理室10内の水は電動機13の回転軸22を伝って処理室ブラケット9の下方に流れるが、回転軸22には鍔部材26が嵌着されているので、回転軸22を伝って流れた水(以下、「漏水」と言う)は、回転軸22から離れて、鍔部材26の外縁端から落下して、凹部38に流れる。そのため、漏水がベアリング23に流入して、ベアリング23内のグリースを洗い流すことがない。その結果、グリースの喪失に起因するベアリング23の焼付きが防止される。
【0035】
凹部38に落下した漏水は、水抜き穴39を通って、電動機13(のハウジング)の内部に流入する。そのため、漏水が凹部38に溜まることがない。凹部38に溜まって、凹部38から溢れた漏水がベアリング23に流れて、ベアリング23内のグリースを洗い流すことがない。その結果、グリースの喪失に起因するベアリング23の焼付きが防止される。
【0036】
水抜き穴39を通って、電動機13(のハウジング)の内部に流入した漏水は、回転子鉄心32の上面に落下して、水抜き穴34を通って、回転子鉄心32に下方に流れ落ちる。なお、回転子鉄心32の下方においては、回転軸22に嵌装された鍔部材27が、ベアリング24を覆っているので、水抜き穴34から流れ落ちた漏水がベアリング24に流れて、ベアリング24内のグリースを洗い流すことがない。その結果、グリースの喪失に起因するベアリング24の焼付きが防止される。
【0037】
水抜き穴34から流れ落ちた漏水は、反負荷側ブラケット19の上面の環状堤部40で囲まれた部位に落下する。そして、かかる部位に落下した漏水は、水抜き穴41を通って、反負荷側ブラケット19の下方、つまり、電動機13(のハウジング)の外部に排出される。電動機13(のハウジング)の外部に排出された漏水は、水受け皿29の中に一時的に貯留される。
【0038】
さて、処理室10からの漏水は、ディスポーザ1の運転中に生じる。ディスポーザ1の運転中においては、回転子21は回転している。そのため、水抜き穴39を通って、回転子鉄心32の上面に落下した漏水が、遠心力で弾かれて飛沫が生じる。この飛沫は、回転子鉄心32の上面と飛沫避け部材37の下面の間で衝突を繰り返して、最終的には制水円筒36の内面を伝って下方に流れて、反負荷側ブラケット19の上面の環状堤部40で囲まれた部位に流入する。そのため、水抜き穴39を通って、回転子鉄心32の上面に落下した漏水が、遠心力で弾かれて飛沫が生じても、飛沫が制水円筒36の上端を越えて飛散して、固定子20を濡らすことがない。また、水抜き穴34から流れ落ちた漏水は、飛沫避け部材37の制水円板37bの上面を流れて、開口37dを通って、回転子鉄心32の上面に落ちる。そのため、漏水は、飛沫避け部材37(制水円板37b)を備えない場合に比べて、回転子鉄心32の回転中心に近い位置に落下する。回転子鉄心32の回転中心に近い位置では、回転中心から遠い位置に比べて漏水に加わる遠心力が小さくなるので、飛沫の発生が抑制される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る電動機13は、固定子20と回転子21の間に制水円筒36を備えるので、電動機13の上面から侵入した漏水は、制水円筒36の内側を通って、電動機13の下部に流れて、電動機13の下方に排出される。そのため、電動機13の上面から侵入した漏水が、固定子20を濡らすことがない。電動機13の上面から侵入した漏水が回転中の回転心鉄心32に弾かれて飛沫が生じても、飛沫避け部材37が飛沫の飛散を防ぐので、飛沫が固定子20を濡らすことがない。このように、電動機13の上面から漏水が侵入しても、漏水が固定子20に直接流れることがないし、漏水が回転心鉄心32に弾かれて生じた飛沫が固定子20に向けて飛散することがない。そのため、電動機13に漏水が生じても、故障が発生しにくい。ディスポーザ1は、回転軸シール25が破損しても、故障が発生しにくい。
【0040】
なお、上記の実施形態は、本発明の具体的実施態様の一例を示すものであって、本発明の技術的範囲を画すものではない。本発明は特許請求の範囲に記述された技術的思想の限りにおいて、自由に変形、応用あるいは改良して実施することができる。
【0041】
上記実施形態においては、制水円筒36に飛沫避け部材37を取り付けて、制水部材35を構成する例を示したが、制水円筒36は、このような2材を組み合わせて構成されるものには限定されない。制水部材35は1材で構成されていても良い。例えば、制水円筒36の内部に制水円板37bが一体成形されていても良い。また、制水部材35を2材で構成する場合、飛沫避け部材37は、上記実施形態で例示したような、接続円筒部37aと制水円板37bを備えるものには限定されない。飛沫避け部材37は制水円板37bだけを備えていても良い。つまり、制水円筒36に制水円板37bを接着固定して、制水部材35を構成するようにしても良い。
【0042】
上記実施形態で示された制水部材35(制水円筒36、飛沫避け部材37)の具体的な形状は、例示であって、制水部材35の形状は、上記実施形態によっては限定されない。制水部材35の形状は、任意に設計することができる。特に、制水円筒36の直径の変化や、上端部36aと下端部36bの折り曲げは任意の構成要素である。
【0043】
上記実施形態で示された制水部材35(制水円筒36、飛沫避け部材37)の素材は例示であって、制水部材35の素材は、上記実施形態によっては限定されない。制水部材35の素材は、任意に選択できる。
【0044】
なお、本発明に係る電動機は、電力が供給される固定子と、電力が供給されない回転子を備える電動機であれば十分であり、動作原理によっては限定されない。本発明に係る電動機は、永久磁石同期電動機であっても、誘導電動機(かご形、巻線形の別を問わない)であっても良いし、いわゆるブラシレスモータであっても良い。また、本発明に係る電動機は交流機には限定されない。直流機(回転子に永久磁石を備えるDCブラシレスモータ)であっても良い。
【0045】
上記実施形態で示された、ディスポーザ1の構成や形状は例示である。本発明に係るディスポーザは上記実施形態によっては限定されない。本発明に係るディスポーザは、目的や用途に応じて任意に設計できる。
【0046】
上記実施形態においては、ディスポーザ1に水受け皿29を備える例を示したが、本発明において、水受け皿29は任意の構成要素である。ディスポーザ1は水受け皿29を備えなくても良い。例えば、水抜き穴41から排出された漏水を、ディスポーザ1の設置場所の床面に直接落とすようにしても良い。あるいは、水抜き穴41から排出された漏水を図示しない排水管に導くホースを備えても良い。また、水受け皿29に漏水を検出するセンサを備えて、該センサが漏水を検出した場合に外部にアラームを送出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 ディスポーザ
2 シンク
3 取付フランジ
4 連結管
5 ディスポーザ本体
6 ナット
7 バンド
8 処理室カバー
9 処理室ブラケット
10 処理室
11 固定歯
12 回転歯
13 電動機
14 排出管
15 ボルト
16 ナット
17 フレーム
18 負荷側ブラケット
19 反負荷側ブラケット
20 固定子
21 回転子
22 回転軸
23 ベアリング
24 ベアリング
25 回転軸シール
26 鍔部材
27 鍔部材
28 電動機カバー
29 水受け皿
30 固定子鉄心
31 巻線
32 回転子鉄心
33 永久磁石
34 水抜き穴
35 制水部材
36 制水円筒
36a 上端部
36b 下端部
37 飛沫避け部材
37a 接続円筒部
37b 制水円板
37c 上端
37d 開口
38 凹部
39 水抜き穴
40 環状堤部
41 水抜き穴