(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
上述したように、紫外線発光素子用窓材として石英が用いられているが、石英は熱伝導率が約1W/m・Kと低い。従って、効率よく放熱することができず、紫外線発光素子の温度の上昇による破損、劣化が生じやすいという懸念がある。
【0006】
また、石英は、波長が短くなるに従い、前方全光線透過率が減少していく。特に、300nm以下で顕著である。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、熱伝導率が高く、しかも、300nm以下の紫外線に対して高い透過率を確保することができ、紫外線発光素子に用いて好適な紫外線発光素子用窓材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
[1] 第1の本発明に係る紫外線発光素子用窓材は、300nm以下の波長の紫外線を発する紫外線発光素子の少なくとも紫外線出射側に設置される紫外線発光素子用窓材において、透光性アルミナからなり、表面の平均粒径が6〜60μmであることを特徴とする。
【0009】
[2] 第1の本発明において、厚みが2.0mm以下の板状を有し、一方の面と、該一方の面に対向する他方の面とを有する基板にて構成されていてもよい。上述の厚みは1.5mm以下でもよく、1.0mm以下でもよい。好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下である。
【0010】
[3] この場合、前記基板の一方の面が紫外線の出射側の面であり、少なくとも前記一方の面の面粗度がRa=0.03μm以下であってもよい。
【0011】
[4] あるいは、前記他方の面が紫外線の入射側の面であり、少なくとも前記他方の面の面粗度がRa=0.2μm以上であってもよい。好ましくは0.2〜0.6μmである。
【0012】
[5] あるいは、前記基板の前記一方の面の面粗度と、前記他方の面の面粗度が異なることが好ましい。
【0013】
[6] この場合、前記一方の面が紫外線の出射側の面であり、前記他方の面が紫外線の入射側の面であり、前記一方の面の面粗度がRa=0.03μm以下、前記他方の面の面粗度がRa=0.2μm以上であってもよく、好ましくは0.2〜0.6μmである。
【0014】
[7] 第2の本発明に係る紫外線発光素子用窓材の製造方法は、上述した第1の本発明に係る紫外線発光素子用窓材を製造するための紫外線発光素子用窓材の製造方法であって、透光性アルミナからなり、一方の面と該一方の面と対向する他方の面を有する基板を、ゲルキャスト法あるいはテープ成形法にて作製する工程を有することを特徴とする。
【0015】
[8] 第2の本発明において、前記基板の前記一方の面の面粗度と、前記他方の面の面粗度とを異ならせてもよい。この場合、基板の一方の面又は他方の面を鏡面研磨したり、あるいは、基板の一方の面又は他方の面を研削処理すること等が挙げられる。その他、ゲルキャスト法あるいはテープ成形法にて、後に基板となる成形体を作製し、その後、成形体の一方の面と他方の面にそれぞれ種類の異なるセッターを接触させて焼成すること等も挙げられる。
【0016】
[9] 第2の本発明において、さらに、少なくとも前記基板の前記一方の面を、面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨を実施する工程を有してもよい。
【0017】
[10] あるいは、さらに、少なくとも前記基板の前記他方の面の面粗度を大きくする処理を行ってもよい。この処理は、少なくとも前記基板の前記他方の面を、研削処理することが挙げられる。その他、成形体の焼成の際に、成形体の一方の面と他方の面にそれぞれ種類の異なるセッターを接触させて焼成することが挙げられる。例えば他方の面に接触するセッターとして、一方の面に接触するセッターよりも表面粗さが大きいセッターを使用することで、基板の他方の面の面粗度を大きくしてもよい。
【0018】
[11] あるいは、前記基板の前記一方の面を、面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨を実施する工程を有し、さらに、前記基板の前記他方の面の面粗度を大きくする処理を行ってもよい。この処理は、少なくとも前記基板の前記他方の面を、研削処理することが挙げられる。その他、成形体の焼成の際に、他方の面に接触するセッターとして、一方の面に接触するセッターよりも表面粗さが大きいセッターを使用することで、基板の他方の面の面粗度を大きくしてもよい。その後、基板の一方の面を、面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨を実施する。
【0019】
本発明に係る紫外線発光素子用窓材によれば、300nm以下の紫外線に対して高い透過率を確保することができ、紫外線発光素子に用いて好適な窓材とすることができる。しかも、透光性アルミナ基板は、熱伝導率が30W/m・K以上と高いため、紫外線発光素子の駆動によって発生する熱を効率よく放熱することができ、紫外線発光素子での温度の上昇による破損、劣化を回避することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る紫外線発光素子用窓材の製造方法によれば、300nm以下の紫外線に対して高い透過率を確保することができ、しかも、紫外線発光素子の駆動によって発生する熱を効率よく放熱することができる窓材を容易に作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る紫外線発光素子用窓材及びその製造方法の実施の形態例を
図1〜
図6を参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0023】
本実施の形態に係る紫外線発光素子用窓材(以下、単に窓材10と記す)は、
図1に示すように、300nm以下の波長の紫外線を発する図示しない紫外線発光素子からの紫外線12を高い透過率で透過する。
【0024】
この窓材10は、アルミナ基板(透光性アルミナ基板14)にて構成されている。
【0025】
透光性アルミナ基板14は、紫外線12が出射する側の面(出射側面16a:一方の面)と、該出射側面16aと対向し、紫外線12が入射する側の面(入射側面16b:他方の面)とを有し、厚みtが0.3mm以下の板状に構成されている。各板面の平面形状は、紫外線発光素子が実装されるケースの形状に応じて、例えば三角形状、長方形状、正方形状、円形状、楕円形状、多角形状等が挙げられる。
【0026】
透光性アルミナ基板14の表面の平均粒径は、6〜60μmであることが好ましく、さらに好ましくは6〜20μmである。表面の平均粒径の測定方法は次のようにして行った。すなわち、表面の任意の箇所を光学顕微鏡によって200倍に拡大して観察し、0.7mmの線分上に位置する結晶数を数えた。そして、0.7に4/πを掛けた値をこの結晶数で割った値を平均粒径とした。
【0027】
特に、本実施の形態では、透光性アルミナ基板14の出射側面16aの面粗度と、入射側面16bの面粗度とが異なる。具体的には、出射側面16aの面粗度がRa(算術平均粗さ)=0.03μm以下であり、入射側面16bの面粗度がRa=0.2μm以上、好ましくは0.2〜0.6μmである。その他、出射側面16a及び入射側面16bの各面粗度がRa=0.2μm以上、好ましくは0.2〜0.6μmであって、出射側面16a及び入射側面16bの各面粗度が異なっていてもよい。
【0028】
透光性アルミナ基板14の作製方法は、特に限定されないが、ドクターブレード法(テープ成形法)、押し出し法、ゲルキャスト法等、任意の方法であってよい。好ましくは、ゲルキャスト法あるいはテープ成形法を用い、特に好ましくはゲルキャスト法を用いて透光性アルミナ基板14を作製する。
【0029】
好適な実施の形態においては、アルミナ粉末を含む原料粉末(セラミック粉末)、分散媒及びゲル化剤を含むスラリーを型に注型し、このスラリーをゲル化させることによって成形体を得る。この成形体を焼結することで、透光性アルミナ基板14を得る(特開2001−335371号公報参照)。
【0030】
特に好ましくは、純度99.9%以上(好ましくは99.95%以上)の高純度アルミナ粉末に対して、150〜1000ppmの助剤を添加した原料を用いる。このような高純度アルミナ粉末としては、大明化学工業株式会社製の高純度アルミナ粉体を例示することができる。助剤としては、酸化マグネシウムが好ましいが、ZrO
2、Y
2O
3、La
2O
3、Sc
2O
3も例示することができる。
【0031】
ゲルキャスト法は、以下の方法が挙げられる。
【0032】
(1) 無機物粉体と共に、ゲル化剤となるポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプレポリマーを、分散剤と共に分散媒中に分散してスラリーを調製する。その後、スラリーを型に注型後、架橋剤により三次元的に架橋してゲル化させることにより、スラリーを固化させる。
【0033】
(2) 反応性官能基を有する有機分散媒とゲル化剤とを化学結合させることにより、スラリーを固化させる。この方法は、本出願人の特開2001−335371号公報に記載されている方法である。
【0034】
ここで、本実施の形態に係る窓材10(透光性アルミナ基板14)のいくつかの製造方法(第1製造方法〜第7製造方法)について
図2A〜
図5の工程図を参照しながら説明する。
【0035】
第1製造方法は、先ず、
図2AのステップS1において、アルミナ粉末を含む原料粉末、分散媒及びゲル化剤を含むスラリーを型内に注型した後、スラリーを硬化してアルミナ成形体を作製する。あるいは、スラリーをドクターブレードを用いてテープ状に成形し、硬化してアルミナ成形体を作製する。
【0036】
その後、ステップS2において、アルミナ成形体を焼成して、厚みが0.3mm以下の透光性アルミナ基板14、すなわち、窓材10を得る。
【0037】
第2製造方法は、先ず、
図2BのステップS101において、上述したステップS1と同様にして、アルミナ成形体を作製する。
【0038】
ステップS102において、アルミナ成形体を焼成して、厚みが0.3mmを超える透光性アルミナ基板14を作製する。
【0039】
その後、ステップS103において、透光性アルミナ基板14の出射側面16aのみを、面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨して、厚みが0.3mm以下の透光性アルミナ基板14、すなわち、窓材10を得る。
【0040】
第3製造方法は、先ず、
図3AのステップS201において、上述したステップS1と同様にして、アルミナ成形体を作製する。
【0041】
ステップS202において、アルミナ成形体を焼成して、厚みが0.3mmを超える透光性アルミナ基板14を作製する。
【0042】
その後、ステップS203において、透光性アルミナ基板14の出射側面16aのみを、面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨し、透光性アルミナ基板14の入射側面16bのみを、面粗度がRa=0.2〜0.6μmとなるまで研削処理して、厚さが0.3mm以下の透光性アルミナ基板14、すなわち、窓材10を得る。
【0043】
透光性アルミナ基板14の入射側面16bを研削処理する代わりに以下の方法を採用してもよい。すなわち、ステップS202においてアルミナ成形体を焼成する際に、アルミナ成形体の他方の面(入射側面となる面)に接触するセッターとして、一方の面(出射側面となる面)に接触するセッターよりも表面粗さが大きいセッターを使用する。これにより、焼成後における透光性アルミナ基板14の入射側面16bの面粗度をRa=0.2〜0.6μmにする。そして、透光性アルミナ基板14の出射側面16aのみを、面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨する。
【0044】
第4製造方法は、先ず、
図3BのステップS301において、上述したステップS1と同様にして、アルミナ成形体を作製する。
【0045】
ステップS302において、アルミナ成形体を焼成して、厚みが0.3mmを超える透光性アルミナ基板14を作製する。
【0046】
その後、ステップS303において、透光性アルミナ基板14の出射側面16a及び入射側面16bを、共に面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨して、厚さが0.3mm以下の透光性アルミナ基板14、すなわち、窓材10を得る。
【0047】
第5製造方法は、先ず、
図4AのステップS401において、上述したステップS1と同様にして、アルミナ成形体を作製する。
【0048】
ステップS402において、アルミナ成形体を焼成して、厚みが0.3mmを超える透光性アルミナ基板14を作製する。
【0049】
その後、ステップS403において、透光性アルミナ基板14の入射側面16bのみを、面粗度がRa=0.03μm以下まで鏡面研磨して、厚みが0.3mm以下の透光性アルミナ基板14、すなわち、窓材10を得る。
【0050】
第6製造方法は、先ず、
図4BのステップS501において、上述したステップS1と同様にして、アルミナ成形体を作製する。
【0051】
ステップS502において、アルミナ成形体を焼成して、厚みが0.3mmを超える透光性アルミナ基板14を作製する。
【0052】
その後、ステップS503において、透光性アルミナ基板14の出射側面16a及び入射側面16bを、共に面粗度がRa=0.2〜0.6μmとなるまで研削処理して、厚さが0.3mm以下の透光性アルミナ基板14、すなわち、窓材10を得る。
【0053】
透光性アルミナ基板14の出射側面16a及び入射側面16bを研削処理する代わりに以下の方法を採用してもよい。すなわち、ステップS502においてアルミナ成形体を焼成する際に、アルミナ成形体の一方の面及び他方の面に接触するセッターとして、表面粗さが大きいセッターを使用する。種類の異なるセッターを使用してもよい。これにより、焼成後における透光性アルミナ基板14の出射側面16a及び入射側面16bの面粗度をそれぞれRa=0.2〜0.6μmにする。出射側面16a及び入射側面16bの面粗度は同じでもよいし、異なってもよい。
【0054】
第7製造方法は、先ず、
図5のステップS601において、上述したステップS1と同様にして、アルミナ成形体を作製する。
【0055】
ステップS602において、アルミナ成形体を焼成して、厚みが0.3mmを超える透光性アルミナ基板14を作製する。
【0056】
その後、ステップS603において、透光性アルミナ基板14の出射側面16aを、面粗度がRa=0.2〜0.6μmとなるまで研削処理して、厚さが0.3mm以下の透光性アルミナ基板14、すなわち、窓材10を得る。
【0057】
透光性アルミナ基板14の出射側面16aを研削処理する代わりに以下の方法を採用してもよい。すなわち、ステップS602においてアルミナ成形体を焼成する際に、アルミナ成形体の一方の面(出射側面となる面)に接触するセッターとして、他方の面(入射側面となる面)に接触するセッターよりも表面粗さが大きいセッターを使用する。これにより、焼成後における透光性アルミナ基板14の出射側面16aの面粗度をRa=0.2μm以上、好ましくは0.2〜0.6μmにする。
【0058】
このように、本実施の形態に係る窓材10においては、透光性アルミナ基板14を用い、表面の平均粒径を6〜60μm、より好ましくは、6〜20μmとした。これにより、300nm以下の紫外線に対して高い透過率を確保することができ、紫外線発光素子に用いて好適な窓材とすることができる。しかも、透光性アルミナ基板14は、熱伝導率が30W/m・K以上と高い。そのため、紫外線発光素子の駆動によって発生する熱を効率よく放熱することができ、紫外線発光素子での温度の上昇による破損、劣化を回避することが可能となる。
【0059】
透光性アルミナ基板14の出射側面16aの面粗度はRa=0.03μm以下でもよいし、Ra=0.2μm以上、好ましくは0.2〜0.6μmでもよい。同様に、入射側面16bの面粗度はRa=0.03μm以下でもよいし、Ra=0.2μm以上、好ましくは0.2〜0.6μmでもよい。
【0060】
特に、好ましくは、透光性アルミナ基板14の出射側面16aの面粗度はRa=0.03μm以下であり、入射側面16bの面粗度はRa=0.2〜0.6μmである。
【実施例】
【0061】
実施例1〜6、比較例1〜3について、面粗度の測定及び透過率の評価を行った。実施例1〜6、比較例1〜3の内訳並びに評価結果は後述する表1〜表3に示す。
【0062】
<面粗度>
測定試料(実施例1〜6、比較例1〜3)の出射側面及び入射側面の面粗度をレーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製:VK−9700)で倍率500倍にて測定した。
【0063】
<透過率の評価>
透過率の評価は、前方全光線透過率を用いた。具体的には、測定波長200〜280nmでの透過率の平均値と、特定波長210nmでの透過率とをそれぞれ評価値とした。評価値選定の理由は、UV−Cが波長280nm以下の光であること、波長200nm以下の光は、通常、大気中で吸収されるため、装置の測定限界であること等である。さらに、本実施例においては、波長が短いほど効果が顕著なため、特定波長として210nmを挙げ、この特定波長210nmでの透過率も評価値とした。
【0064】
[前方全光線透過率]
前方全光線透過率は、
図6に示すように、光源20と検出器22とを有する分光光度計28(日立ハイテク製、U−4100)を用いて測定した。光源20と検出器22との間に1つの貫通孔24(直径3mm)を有するスリット板26を設置した。スリット板26のうち、検出器22に対向する面に貫通孔24を塞ぐように測定試料(実施例1〜6、比較例1〜3)を固定した。このとき、測定試料の入射側面をスリット板26に固定した。すなわち、入射側面を光源20側、出射側面を検出器22側に向けて固定した。分光光度計28の測定波長は175〜2600nmであるが、光源20として波長200〜280nmの紫外線12を出射する光源を用いた。
【0065】
光源20から波長200〜280nmの紫外線12をスリット板26に固定した測定試料の入射側面に入射させ、測定試料を通過して出射側面から放射される紫外線12を検出器22によって検出する。
【0066】
前方全光線透過率は、測定試料を通過する紫外線12の強度(I)と、測定試料を固定せずに測定したときの紫外線12の強度(I
0)の比率(=I/I
0)より算出した。
【0067】
(実施例1)
図2Aに示す第1製造方法に従って、セラミック粉末、分散媒及びゲル化剤を含むスラリーを型に注型し、このスラリーをゲル化させることによってアルミナ成形体を得、このアルミナ成形体を焼結させて実施例1に係る透光性アルミナ基板14を得た。
【0068】
具体的には、純度99.99%以上、BET表面積9〜15m
2/g、タップ密度0.9〜1.0g/cm
3の高純度アルミナ粉末に対して、500ppmの酸化マグネシウム粉末を添加した。この原料粉末をゲルキャスト法によって成形した。この粉末100重量部、分散媒(マロン酸ジメチル)40重量部、ゲル化剤(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート変成物)8重量部、反応触媒(トリエチルアミン)0.1〜0.3重量部、ノニオン系分散剤を混合した。
【0069】
20℃で、分散媒に前記原料粉末及び分散剤を添加して分散し、次いで、ゲル化剤を添加して分散し、最後に、反応触媒を添加することにより、スラリーを作製した。このスラリーを型内に注型し、2時間放置してゲル化させた。ゲル化したアルミナ成形体を型から取り出し、60〜100℃で乾燥した。次いで、成形体を1100℃で2時間脱脂し、水素雰囲気中で焼成した。
【0070】
この透光性アルミナ基板14の厚さtは0.3mm、表面の平均粒径は20μmであった。また、出射側面16a及び入射側面16bの面粗度は共にRa=0.3μmであった。
【0071】
そして、透光性アルミナ基板14の前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は89%、210nmの波長では90%であった。
【0072】
(実施例2)
アルミナ粉末の平均粒径(あるいは焼成温度、あるいは焼成時間)を異ならせたこと以外は、上述した実施例1と同様の製法で実施例2に係る透光性アルミナ基板14を作製した。この透光性アルミナ基板14の厚さtは0.3mm、表面の平均粒径は12μmであった。また、出射側面16a及び入射側面16bの面粗度は共にRa=0.2μmであった。そして、前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は90%、210nmの波長では95%であった。
【0073】
(実施例3)
図2Bに示す第2製造方法に従って実施例3に係る透光性アルミナ基板14を得た。先ず、上述した実施例1と同様の製法で、厚さが0.5mmの透光性アルミナ基板14を作製した。その後、この透光性アルミナ基板14の出射側面16aのみに鏡面研磨を実施し、厚さ0.3mmの実施例3に係る透光性アルミナ基板14を得た。鏡面研磨前の透光性アルミナ基板14の表面の平均粒径は20μmであり、出射側面16a及び入射側面16bの面粗度は共にRa=0.3μmであった。鏡面研磨を実施した後における透光性アルミナ基板14の出射側面16aの面粗度はRa=0.03μmであった。そして、前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は91%、210nmの波長では96%であった。
【0074】
(実施例4)
図3Aに示す第3製造方法に従って実施例4に係る透光性アルミナ基板14を得た。具体的には、先ず、上述した実施例1と同様の製法で、厚さが0.5mmの透光性アルミナ基板14を作製した。その後、この透光性アルミナ基板14の出射側面16aのみに鏡面研磨を実施し、入射側面16bのみを砥石で研削処理(表面を荒らす処理:粗面処理)を行って、厚さ0.3mmの実施例4に係る透光性アルミナ基板14を得た。鏡面研磨及び粗面処理を実施する前の透光性アルミナ基板14の表面の平均粒径は20μmであった。鏡面研磨及び粗面処理を実施した後における透光性アルミナ基板14の出射側面16aの面粗度はRa=0.03μm、入射側面16bの面粗度はRa=0.6μmであった。そして、前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は92%、210nmの波長では97%であった。
【0075】
(実施例5)
図3Bに示す第4製造方法に従って実施例5に係る透光性アルミナ基板14を得た。具体的には、先ず、上述した実施例1と同様の製法で、厚さが0.5mmの透光性アルミナ基板14を作製した。その後、この透光性アルミナ基板14の出射側面16a及び入射側面16bにそれぞれ鏡面研磨を実施して、厚さ0.3mmの実施例5に係る透光性アルミナ基板14を得た。鏡面研磨を実施する前の透光性アルミナ基板14の表面の平均粒径は20μmであった。鏡面研磨を実施した後における透光性アルミナ基板14の出射側面16a及び入射側面16bの面粗度は共にRa=0.03μmであった。そして、前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は83%、210nmの波長では84%であった。
【0076】
(実施例6)
図4Aに示す第5製造方法に従って実施例6に係る透光性アルミナ基板14を得た。具体的には、先ず、上述した実施例1と同様の製法で、厚さが0.5mmの透光性アルミナ基板14を作製した。その後、実施例3とは反対に、透光性アルミナ基板14の入射側面16bのみに鏡面研磨を実施し、厚さ0.3mmの実施例6に係る透光性アルミナ基板14を得た。鏡面研磨前の透光性アルミナ基板14の表面の平均粒径は20μmであり、出射側面16a及び入射側面16bの面粗度は共にRa=0.3μmであった。鏡面研磨を実施した後における透光性アルミナ基板14の入射側面16bの面粗度はRa=0.03μmであった。そして、前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は87%、210nmの波長では91%であった。
【0077】
(比較例1)
直径20mm、厚さ0.5mmの石英基板の前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は88%、210nmの波長では86%であった。
【0078】
(比較例2)
アルミナ粉末の平均粒径(あるいは焼成温度、あるいは焼成時間)を異ならせたこと以外は、上述した実施例1と同様の製法で比較例2に係る透光性アルミナ基板14を作製した。この透光性アルミナ基板14の厚さtは0.3mm、表面の平均粒径は5μmであり、出射側面16a及び入射側面16bの面粗度は共にRa=0.1μmであった。そして、前方全光線透過率を測定したところ、200〜280nmの波長領域で透過率の平均は67%、210nmの波長では68%であった。
【0079】
(比較例3)
アルミナ粉末の平均粒径(あるいは焼成温度、あるいは焼成時間)を異ならせたこと以外は、上述した実施例1と同様の製法で比較例3に係る透光性アルミナ基板14を作製した。この透光性アルミナ基板14の厚さtは0.3mm、表面の平均粒径は65μmであった。焼成後の透光性アルミナ基板14を確認したところ、クラックの発生が見られた。従って、面粗度並びに前方全光線透過率は測定できなかった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
表1〜表3から、窓材10は、材質が透光性アルミナからなり、表面の平均粒径が6〜60μmであることが好ましいことがわかる。比較例1の石英は、前方全光線透過率の評価が実施例5よりも良好となっているが、熱伝導率が約1W/m・Kと低いため、効率よく放熱することができず、紫外線発光素子の温度の上昇による破損、劣化が生じやすいという懸念がある。
【0084】
好ましい評価結果を得られた実施例1〜6のうち、実施例1、2及び5の結果から、透光性アルミナ基板の出射側面及び入射側面の面粗度が同じ場合は、出射側面及び入射側面に対して鏡面研磨を行わないことが好ましいことがわかる。
【0085】
また、実施例3及び4の評価結果が良好であることから、透光性アルミナ基板の出射側面の面粗度と入射側面の面粗度が異なっていることがさらに好ましく、特に、出射側面の面粗度がRa=0.03μm以下、入射側面の面粗度がRa=0.2〜0.6μmであることが好ましいことがわかる。
【0086】
なお、本発明に係る紫外線発光素子用窓材及びその製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。