(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326455
(24)【登録日】2018年4月20日
    
      
        (45)【発行日】2018年5月16日
      
    (54)【発明の名称】照明ランプ
(51)【国際特許分類】
   F21V   5/00        20180101AFI20180507BHJP        
   F21V   5/04        20060101ALI20180507BHJP        
   F21S   2/00        20160101ALI20180507BHJP        
   F21S   8/02        20060101ALI20180507BHJP        
   F21Y 115/10        20160101ALN20180507BHJP        
【FI】
   F21V5/00 320
   F21V5/04 650
   F21S2/00 330
   F21S8/02 410
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】8
      (21)【出願番号】特願2016-147421(P2016-147421)
(22)【出願日】2016年7月27日
    
      
        
          
            (62)【分割の表示】特願2012-69871(P2012-69871)の分割
【原出願日】2012年3月26日
          
        
      
    
      (65)【公開番号】特開2016-184595(P2016-184595A)
(43)【公開日】2016年10月20日
    【審査請求日】2016年7月27日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000140269
【氏名又は名称】株式会社遠藤照明
          (74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
          (74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井  宏行
          (74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本  周子
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】原田  泰彦
              
            
        
      
    
      【審査官】
        津田  真吾
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2013−137985(JP,A)      
        
        【文献】
          独国実用新案第202006014814(DE,U1)    
        
        【文献】
          特開2008−084696(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2010/0290234(US,A1)    
        
        【文献】
          国際公開第2011/114265(WO,A1)    
        
        【文献】
          実開昭63−037001(JP,U)      
        
        【文献】
          特開2006−019170(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2011−141450(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V      5/00        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  白色発光ダイオードからなる発光源と、
  前記発光源に被せられるレンズ部を有するレンズ板とを備えた照明ランプであって、
  前記レンズ部の内面周縁部には、内斜面と外斜面とを有する突条を同心円状に多重配置されてなり、前記外斜面において前記発光源からの光を前記レンズ部の中心軸方向に反射させるレンズパターンが形成されており、前記突条先端部と前記光源の中心を含み前記中心軸に垂直な面との距離は、最も内面中央部に近い突条の先端部に比べて最も外周側の突条の先端部が近く、
  前記レンズ部の内面中央部には、前記レンズパターンが形成されておらず、
前記内面周縁部と重畳する外面周縁部には、微小な凸面又は凹面からなるファセットがタイル状に張り巡らされた拡散領域が形成されており、
  前記発光源から発する光の広がりを前記レンズ部によって狭める、照明ランプ。
【請求項2】
  請求項1に記載の照明ランプにおいて、
  前記レンズ部の内面中心と前記光源の中心との距離は、前記内面周縁部における突条先端部と前記光源の中心を含み前記中心軸に垂直な面との距離より離れている、照明ランプ。
【請求項3】
  請求項1又は2に記載の照明ランプにおいて、
  円筒状の遮光フード部と、その奥に嵌められた前記レンズ板と、すり鉢状の反射鏡と、
その底部に前記発光源を備えた、
  スポットライト又はダウンライトである照明ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、発光ダイオードを発光源としたスポットライト等の照明ランプに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  上記のような照明ランプのレンズ板について、次の特許文献1には、発光源からの光が入射する面に集光用のフレネルレンズを形成することの記載がある。また特許文献2には、照明ランプに用いられるフレネルレンズにおいて、透明な軟質シリコーンゴムシートをマスター金型によりヒートプレスすることによってフレネルレンズの微細パターン条を転写形成する技術の開示がある。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-084696公報
【特許文献2】特開2007-212771公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  このようなレンズ板は、低コスト化のために、たとえばアクリル樹脂によって形成されることが多いが、アクリル樹脂の耐熱性はそれほど高くない。そのため、引用文献1のようにレンズ板の内面に集光用のフレネルレンズを形成した構成では、発光源とレンズパターンとの距離が近くなるため、レンズパターンの先端部が熱を受けて変形する等の問題が生じる可能性がある。これを防止するには、フレネルレンズを発光源から遠ざける必要があり、レンズを小型化するのが難しい。一方、引用文献2が教示するように、耐熱性が高い素材でフレネルレンズを形成すれば、そのような問題は生じないが、複雑な工程となるためコスト高になる。
【0005】
  そこで本発明は、小型のレンズ板であっても発光源からの熱の影響を受けにくい新規な構成の照明ランプを提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本発明は、発光源と、前記発光源に被せられるレンズ部を有するレンズ板とを備えた照明ランプであって、前記レンズ部の内面周縁部には、同心円状のレンズパターンが形成されており、前記内面周縁部と重畳する外面周縁部には、拡散領域が形成されている。ここに内面は、発光源からの光が入射する側の面である。
【0007】
  前記内面周縁部のレンズパターンは、内斜面と外斜面とを有する突条を同心円状に多重配置されてなり、前記外斜面において前記発光源からの光を中心軸方向に反射させるとよい。
【0008】
  前記拡散領域は、ファセット加工によって形成してもよい。
 
【発明の効果】
【0009】
  本発明では、レンズ部の外面中央部と内面周縁部とを用いてレンズパターンを形成している。特にレンズパターンの中央部はレンズ部の外面にパターンを形成しているので、フレネル段差面に入射する分の光が少なく、効率的に光を入射および出射させられる。また同時にレンズパターンの中央部が発光源から遠くなるため、レンズパターンの先端部が熱によって変形しにくく、レンズ部を発光源に近づけることができ、結果としてレンズ部が小型化される。またレンズパターンの周縁部は、レンズ部の内面に形成して発光源に近づけているので、小型のレンズ板であっても、発光源からの光を効率的に入射および反射させることができる。
【0010】
  レンズパターンが形成されていないレンズ部の外面周縁部や内面中央部に拡散領域を形成した構成では、発光源を白色発光ダイオードとしたときの色むらが抑えられる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、本発明による照明ランプ用レンズ板の一例の斜視図、(b)はそのレンズ板の部分破断図である。
 
【
図2】本発明による照明ランプ用レンズ板の他例の斜視図である。
 
【
図4】本発明による照明ランプ用レンズ板の作用を説明する図である。
 
【
図5】本発明による照明ランプの一例の斜視図である。
 
【
図6】(a)は、本発明による照明ランプ用レンズ板の他例の斜視図、(b)はそのレンズ板の部分破断図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0012】
  図1(a)、
図1(b)に示すように、本発明による照明ランプ用レンズ板1は、たとえばアクリルあるいはポリカーボネイト等の透光素材で形成され、発光ダイオード等の発光源2に所定の間隔をもって被せられるレンズ部11を備えている(
図4)。透光素材は、基本的に無色透明なものを想定しているが、各種着色剤あるいは酸化チタン等の拡散剤が配合されたものでもよい。レンズ部11は所定の厚みを有した球面の一部を切り取った基本形状である。
 
【0013】
  図2に示すように複数のレンズ部11が共通の保持部13に配列されていてもよい。このときレンズ部11の個数は特に制限されず、発光源2の個数に応じて決定される。
 
【0014】
  レンズ部11は、その外面中央部と内面周縁部とを用いて、レンズパターン12が平面視したとき重畳しないように同心円状に形成されている。ここに内面は発光源2の照射した光が入射する側の面であり、外面はその光が出射する側の面である。レンズ部11の中心軸とレンズパターン12の中心軸は通常一致させることが望ましいが、レンズ板1から斜め方向に光を照射させたい場合には、レンズ部11の中心とレンズパターン12の中心軸をずらしてもよい。
 
【0015】
  ここに発光源2が高出力タイプであれば、そこから発する熱もそれだけ大きなものとなる。したがって、レンズ板1が充分な耐熱性を有していないならば、発光源2とレンズ部11との間に相応の距離が必要となり、結果としてレンズ部11が大型化することになる。
 
【0016】
  ところが、上記のようにレンズ部11の外面中央部と内面周縁部とを用いて、レンズパターン12を形成すれば、レンズパターン12の中央部が発光源2から遠くなる。そのため小型のレンズ部1であっても、レンズパターン12の先端が熱によって変形しにくく、レンズ部1を発光源2に近づけることができ、結果としてレンズ部が小型化される。またレンズパターン12の中央部が外面に形成されているので、突条の急峻な内斜面(フレネル段差部)に入射する分の光が少なく、効率的に光を入射および出射させられる。またレンズパターン12の周縁部はレンズ部1の内面に形成して発光源2に近づけているので、小型のレンズ板1であっても、発光源2からの光を、その部分に効率的に入射および反射させることができる。
 
【0017】
  また同様な観点から、レンズ部11は外面側に突出したドーム形状にして、その中央部を発光源2から遠ざけるようにしてもよい。
 
【0018】
  このレンズ板1は、主にスポットライトあるいはダウンライト等での用途を想定したものであり、発光源2から照射される光の広がりを集光作用によって狭めることを意図している。そのためレンズパターン12の中央部は、発光源2からの光を中心軸方向に屈折させる一方、レンズパターン12の周縁部は、発光源2からの光を中心軸方向に反射させるように形成するとよい。
 
【0019】
  より具体的には、レンズパターン12の中央に円形凸面を配置し、その周囲に、急峻な内斜面と緩い外斜面とを有する突条を同心円状に多重配置して、円形凸面と突条の緩い外斜面とによって発光源2からの光を中心軸方向に屈折させる屈折領域12aとする。
 
【0020】
  そして更に外側に、いずれも急峻な内斜面と外斜面とを有する突条を同心円状に多重配置して、突条の急峻な外斜面によって発光源2からの光を中心軸方向に反射させる反射領域12bとする。このような屈折領域12aと反射領域12bからなるレンズパターン12は一種のフレネルレンズである。
 
【0021】
  発光源2が白色発光ダイオードである場合、そこから照射される光は照射方向に依存した色むらが生じやすい傾向がある。しかし上記のようにレンズパターン12を、円形凸面と、複数の突条とによって構成して、屈折あるいは全反射が生じる曲面を適宜調節することによって、それらの曲面による屈折光、反射光が重なり合う効果が生じて、照明光の色むらが抑えられる。レンズ部11の外面中央部に露出したレンズパターン12によって独特な風合いも得られる。また屈折領域12aを構成する円形凸面や突条は背が低く幅広いので、レンズ部11の外面にあっても、それらの間に埃が溜まりにくいという利点がある。
 
【0022】
  基本的な構成では、レンズ部11の外面中央部に屈折領域12aを形成し、レンズ部11の内面周縁部に反射領域12bを形成する。しかしその基本構成から、屈折領域12aがレンズの内面周縁部まではみ出してその分反射領域12bが狭くなるような変形、あるいはその逆の変形も可能である。
 
【0023】
  ついで
図3、
図4に従ってレンズ部11の作用を説明する。
  
図3のように、入射角を i、屈折角を r、入射光の側の媒質の絶対屈折率をNi、 屈折光の側の媒質の絶対屈折率をNrと定義すると 、その界面においてはよく知られているように次のようなスネルの法則が成り立つ。
        sin(i)/sin(r)=Nr/Ni (式1)
 
【0024】
  図4は、レンズ部11の縦断面における入射光と反射光の進行方向を矢印によって示している。
 
【0025】
  ここで破線(A)によって囲まれた部分はレンズパターン12の中心にあって、発光源2(の中心)からの入射光は中心軸上を直進して、そのままレンズ部11を通過する。
 
【0026】
  破線(B)によって囲まれた部分は屈折領域12aであって、入射光はレンズ部11の内面において中心軸方向に屈折され、更にレンズ部11の外面においても中心軸方向に屈折されてレンズ部11を通過する。レンズ部11の内面および外面での屈折は上記式(1)の関係を満たす。
 
【0027】
  破線(C)によって囲まれた部分は反射領域12bであって、入射光はレンズ部11の内面に形成された突条の内斜面で屈折され、その突条の外斜面で全反射され、更に、レンズ部11の外面で屈折されてレンズ部11を通過する。ここで突条の内斜面およびレンズ部11の外面での屈折は上記式(1)の関係を満たすが、これらの界面に対する入射角はさほど大きくなく、反射領域12bでの作用では、突条の外斜面による全反射が重要な役割を果たす。この全反射は、上記式(1)が成立できない条件で生じる。
 
【0028】
  たとえばレンズ板1を形成する透光素材の絶対屈折率を1.5と仮定すれば、空気の絶対屈折率は1であるから、上記式(1)より次の式が導出される。
        sin(r)=1.5×sin(i)(式2)
この式(2)は、sin(i)が1/1.5より大きいと成立しない。換言すると41度(臨界角)より大きい入射角iに対しては、式(1)を満たす出射角rが存在せず、入射光は全反射される。
 
【0029】
  図5は、上記のようなレンズ板1を用いた照明ランプ3の一例の外観を示している。この照明ランプ3はスポットライトであって、円筒状の遮光フード部31の奥にレンズ板1が嵌められている。その奥には、特に図示しないが、すり鉢状の反射鏡が配置され、その底部に高出力の白色発光ダイオードよりなる発光源2が配置されている。発光源2の背後には放熱装置32が取り付けられている。
 
【0030】
  上記レンズ板1では、レンズパターン12が形成されないレンズ部11の内面中央部と外面周縁部は平滑面とされている。しかしレンズパターン12が形成されていないレンズ部11の外面周縁部や内面中央部に拡散領域12cを設ければ、発光源2を白色発光ダイオードとしたときの色むらが更に抑えられる。
 
【0031】
  図6(a)、
図6(b)は、拡散領域12cをファセット加工によって形成した例である。ここではレンズ部11の外面中央部の屈折領域12aを取り巻いて、外面周縁部の全体に微小な凸面(ファセット)がタイル状に張り巡らされている。これらの凸面は凹面に置き換えても同様の効果が得られる。また拡散領域12cは、フロスト加工によっても形成でき、拡散剤を配合した被膜によっても形成できる。
 
 
【符号の説明】
【0032】
  1        照明ランプ用レンズ板
  11      レンズ部
  12      レンズパターン
  12c    拡散面
  2        発光源
  3        照明ランプ