(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準決定部は、前記走行状態を表わす複数種類のパラメータのうち個々のパラメータの値に対応付けられた前記基準比率の個別の変化量を求め、前記複数種類のパラメータにそれぞれ対応して求められた複数の前記個別の変化量を総合する計算を行って、前記基準比率の総合的な変化量を求めることを特徴とする請求項2記載の車両の駆動力制御装置。
前記複数の個別の変化量を総合する計算とは、前記複数種類のパラメータの各々に対応付けられた重み付けを行った前記複数の個別の変化量の加算であることを特徴とする請求項3記載の車両の駆動力制御装置。
前記許可範囲設定部は、前記車両の走行状態に応じて前記許容幅の幅長を変化させることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の車両の駆動力制御装置。
前記許可範囲設定部は、前記走行状態を表わす複数種類のパラメータのうち個々のパラメータの値に対応付けられた前記許容幅の個別の幅長を求め、前記複数種類のパラメータにそれぞれ対応して求められた複数の前記個別の幅長のうち、最も小さい幅長を用いて前記許可範囲を設定することを特徴とする請求項5記載の車両の駆動力制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の駆動源から複数の車輪へ動力を伝達して走行を行う車両においては、複数の車輪へ配分する駆動力の比率によって走行安定性が変化する。また、駆動源および動力伝達機構は回転速度およびトルクによってエネルギー損失に差が生じる。従って、このような車両においては、走行安定性とエネルギー効率との両方が向上するように、複数の車輪に駆動力が配分されると好ましい。
【0006】
前述した特許文献5の技術は、複数の駆動源のエネルギー効率を改善する機能と、走行安定性を向上させる機能とを、両立することを課題としている。しかしながら、特許文献5の技術では、エネルギー効率と走行安定性との両方を向上するような理想的な駆動力の配分は得られていないと考えられた。
【0007】
例えば、特許文献5の駆動力制御装置は、走行が安定していればエネルギー効率を向上する第1の配分比率で要求トルクが配分される。また、走行が不安定であれば走行安定性を向上する第2の配分比率で要求トルクが配分される(特許文献5の段落0024、
図4を参照)。しかしながら、このような制御では、第1の配分比率と第2の配分比率とが交互に切り替わるハンチングが発生する(特許文献5の
図4を参照)。ハンチングが発生すると、要求トルクの配分比率が第1の配分比率と第2の配分比率との間を遷移する時間が多くなり、エネルギー効率と走行安定性とが低下する。
【0008】
また、特許文献5の駆動力制御装置は、エネルギー効率を向上する第1の配分比率と、走行安定性を向上する第2の配分比率との中間値で、要求トルクを配分するバランス配分制御についても記載されている(特許文献5の段落0047、
図8を参照)。しかしながら、エネルギー効率は要求トルクの配分比率の変化に伴って単調に変化するものでない。従って、配分比率を上記の中間値に制御しても、エネルギー効率と走行安定性との均衡が図れるものではない。実際、要求トルクの配分比率を中間値から一方へ変化させたほうが、エネルギー効率と走行安定性との双方が向上する状況が多く生じる。
【0009】
また、本発明者らは、エネルギー効率と走行安定性とを両立させるにしても、どちらをどの程度優先させるか、走行状態に応じて調整できると好ましいと考えた。しかしながら、特許文献5の駆動力制御装置では、同じ走行状態が一定期間継続したか否かによって、エネルギー効率を優先とするか走行安定性を優先とするかを切り替えるだけであった。従って、走行状態を表わす様々なパラメータに応じて優先度を調整するような対応はできなかった。
【0010】
本発明は、複数の駆動源から複数の車輪へ動力を伝達して走行する車両において、エネルギー効率の向上と走行安定性の向上とが両立されるように駆動力を配分できる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、
複数の駆動源と、前記複数の駆動源の動力を複数又は複数組の車輪へそれぞれ伝達する複数の動力伝達機構とを備えた車両に搭載される車両の駆動力制御装置であって、
前記車両に与えられた要求駆動力を前記複数又は複数組の車輪へ配分する目標の比率を決定する比率決定部と、
前記目標の比率に従って配分された駆動力が前記複数又は複数組の車輪に発生するように前記複数の駆動源に動力の出力を指示する指示部と、を備え、
前記比率決定部は、
前記要求駆動力の配分比率の基準となる基準比率を決定する基準決定部と、
前記基準比率に所定の許容幅を加えた許可範囲を設定する許可範囲設定部と、
前記許可範囲の中から、少なくとも前記基準比率よりも走行のエネルギー損失が低くなる配分比率を選択可能な比率選択部と、
を有し、
前記比率選択部により選択された配分比率を前記目標の比率とすることを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両の駆動力制御装置において、
前記基準決定部は、前記車両の走行状態に応じて前記基準比率を変化させることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の車両の駆動力制御装置において、
前記基準決定部は、前記走行状態を表わす複数種類のパラメータのうち個々のパラメータの値に対応付けられた前記基準比率の個別の変化量を求め、前記複数種類のパラメータにそれぞれ対応して求められた複数の前記個別の変化量を総合する計算を行って、前記基準比率の総合的な変化量を求めることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の車両の駆動力制御装置において、
前記複数の個別の変化量を総合する計算とは、前記複数種類のパラメータの各々に対応付けられた重み付けを行った前記複数の個別の変化量の加算であることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記許可範囲設定部は、前記車両の走行状態に応じて前記許容幅の幅長を変化させることを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の車両の駆動力制御装置において、
前記許可範囲設定部は、前記走行状態を表わす複数種類のパラメータのうち個々のパラメータの値に対応付けられた前記許容幅の個別の幅長を求め、前記複数種類のパラメータにそれぞれ対応して求められた複数の前記個別の幅長のうち、最も小さい幅長を用いて前記許可範囲を設定することを特徴としている。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記複数の駆動源は、前輪の動力を発生する前輪駆動源と、後輪の動力を発生する後輪駆動源とを含み、
前記許可範囲設定部は、前記走行状態に応じて、前記前輪駆動源への配分比率が高くなる上限側の前記許容幅の幅長と、前記後輪駆動源への配分比率が高くなる下限側の前記許容幅の幅長とを、別々に変更可能であることを特徴としている。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記比率決定部は、
前記許可範囲に、前記複数の駆動源の少なくとも1つに制限を超過した出力を行わせる制限超過比率が含まれる場合に、前記許可範囲から前記制限超過比率を除去するフィルタ部をさらに備え、
前記比率選択部は、前記フィルタ部により前記制限超過比率が除去された前記許可範囲の中から配分比率を選択することを特徴としている。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項7記載の車両の駆動力制御装置において、
前記車両の操舵角を検出する操舵角センサと、
前記車両の車輪速を検出する車輪速センサと、
前記車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
をさらに備え、
前記許可範囲設定部は、前記操舵角センサ、前記車輪速センサ、および前記ヨーレートセンサの検出結果がアンダステア傾向を示す場合に、前記上限側の幅長を前記下限側の幅長より大きくすることを特徴としている。
【0020】
請求項10記載の発明は、
複数の駆動源から複数又は複数組の車輪へ動力を伝達して走行する車両に搭載される車両の駆動力制御装置であって、
前記車両に与えられた要求駆動力を前記複数又は複数組の車輪に配分する目標の比率を決定する比率決定部と、
前記目標の比率に従って配分された駆動力が前記複数又は複数組の車輪に発生するように前記複数の駆動源に動力の出力を指示する指示部と、を備え、
前記比率決定部は、
前記車両の走行状態に基づいて前記要求駆動力を配分する比率の許可範囲を設定する許可範囲設定部と、
走行のエネルギー損失が少なくなるように前記許可範囲の中から1つの配分比率を選択する比率選択部と、
を有し、
前記比率選択部により選択された配分比率を前記目標の比率とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、要求駆動力を配分する比率の許可範囲を設定した後、この許可範囲の中からエネルギー損失が低くなる配分比率を選択し、これを目標の比率とするので、エネルギー効率の向上と走行安定性の向上とが両立されるように要求駆動力を配分できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両を示す構成図である。
【0024】
本発明の実施形態に係る車両1は、例えば電気自動車(EV:Electric Vehicle)であり、左右の前輪2、左右の後輪3、前輪モータ11、後輪モータ12、前輪トランスミッション13、および後輪トランスミッション14を備える。また、車両1は、前輪駆動回路15、後輪駆動回路16、バッテリ19、ECU(Electric Control Unit)20、センサ群(31〜37、41〜46)を備える。これらのうち、前輪モータ11および後輪モータ12は、本発明に係る複数の駆動源(前輪駆動源、後輪駆動源)の一例に相当する。前輪トランスミッション13および後輪トランスミッション14は、本発明に係る複数の動力伝達機構の一例に相当する。左右の前輪2および左右の後輪3は、本発明に係る複数組の車輪の一例に相当する。
【0025】
本発明の実施形態に係る車両1の駆動力制御装置100は、車両1に搭載されて前輪2の駆動力と後輪3の駆動力とを制御する装置であり、上述した構成のうち、ECU20とセンサ群(31〜37、41〜46)とを含んだ部分に相当する。
【0026】
前輪駆動回路15は、ECU20の指令に応じてバッテリ19の電力を変換し、変換した電力を前輪モータ11へ出力する。前輪モータ11は、この電力に基づいて動力を発生する。前輪トランスミッション13は、前輪モータ11の動力を前輪2に伝達する。これによって、左右の前輪2に駆動力が発生する。
【0027】
同様に、後輪駆動回路16は、ECU20の指令に応じてバッテリ19の電力を変換し、変換した電力を後輪モータ12へ出力する。後輪モータ12は、この電力に基づいて動力を発生する。後輪トランスミッション14は、後輪モータ12の動力を後輪3に伝達する。これによって、左右の後輪3に駆動力が発生する。
【0028】
ECU20は、車両1に与えられる要求駆動力が、左右の前輪2の駆動力と、左右の後輪3の駆動力とに配分されるように、指令を出力する。要求駆動力は、例えば乗員の運転操作(例えばアクセル操作量を表わすアクセルセンサ35のセンサ信号)によって車両1に与えられる。ECU20は、駆動力の配分が実現されるように、前輪駆動回路15に前輪モータ目標トルクの指令を出力し、後輪駆動回路16に後輪モータ目標トルクの指令を出力する。
【0029】
センサ群は、車両の走行状態を検出するセンサとして、例えば、前後加速度センサ31と、左右加速度センサ32と、ヨーレートセンサ33と、車輪速センサ34とを含む。前後加速度センサ31は、車両1の前後方向の加速度を検出する。左右加速度センサ32は、車両1の左右方向の加速度を検出する。ヨーレートセンサ33は、車両1のヨーレートを検出する。車輪速センサ34は、左右の前輪2および左右の後輪3の各々の車輪速(回転速度)を検出する。
【0030】
また、センサ群は、乗員の運転操作を検出するセンサとして、アクセルセンサ35と、操舵角センサ36と、ブレーキセンサ37とを含む。アクセルセンサ35は、乗員のアクセル操作量を検出する。操舵角センサ36は、乗員のハンドル操作量を検出する。ブレーキセンサ37は、乗員のブレーキ操作量を検出する。
【0031】
また、センサ群は、車両1の走行で生じるエネルギー損失の補正パラメータの値を計測する複数のセンサを含む。これらのセンサには、前輪トランスミッション13の温度計41と、後輪トランスミッション14の温度計42と、前輪モータ11の温度計43と、後輪モータ12の温度計44とが含まれる。また、これらのセンサには、前輪トランスミッション13のギアポジションを検出する前輪ギアポジションセンサ45と、後輪トランスミッション14のギアポジションを検出する後輪ギアポジションセンサ46とが含まれる。
【0032】
図2は、ECUの内部構成を示す機能ブロック図である。
【0033】
ECU20は、
図2に示すように、比率決定部21、指示部22、走行状態情報入力部25、ベース損失マップ記憶部26、および損失補正情報入力部27を備える。比率決定部21は、基準決定部211、許可範囲設定部212、フィルタ部213、および比率選択部214を有する。これらの構成要素は、ECU20に備わるCPU(Central Processing Unit)が実行するソフトウェアから構成してもよいし、ハードウェアから構成してもよい。
【0034】
比率決定部21は、要求駆動力を入力し、要求駆動力を左右の前輪2と左右の後輪3とに配分する目標の比率を決定する。
【0035】
指示部22は、比率決定部21から目標の比率を入力し、要求駆動力を目標の比率で配分した駆動力を左右の前輪2と左右の後輪3とに発生させるのに必要な、前輪モータ11の目標トルクと後輪モータ12の目標トルクとを計算する。このときの計算では、各動力伝達経路の減速比を知るために、前輪トランスミッション13および後輪トランスミッション14の各ギアポジションの情報が使用される。指示部22は、計算された目標トルクが出力されるように、前輪モータ目標トルクと後輪モータ目標トルクとを前輪駆動回路15および後輪駆動回路16にそれぞれ出力する。
【0036】
基準決定部211は、要求駆動力の配分比率の基準となる基準比率を決定する。基準比率は、例えば車両の走行状態に応じて決定される。基準比率は、車両の走行状態に応じて高い走行安定性が得られる要求駆動力の配分比率である。
【0037】
許可範囲設定部212は、基準比率に所定の許容幅を加えた許可範囲を設定する。許可範囲は、要求駆動力の配分比率として選択可能な比率の範囲を示すものである。許可範囲には、車両の走行安定性を妨げない範囲で許容される配分比率の範囲が設定される。許可範囲の広さを定める上記の許容幅は、車両の走行状態に応じて変化するように設定される。許容幅は、前輪2の配分比率が高くなる上限側と、後輪3への配分比率が高くなる下限側とで、異なる大きさに設定されてもよい。
【0038】
フィルタ部213は、許可範囲に、前輪モータ11又は後輪モータ12へ上限を超える出力トルクの出力を指示する制限超過比率が含まれる場合に、フィルタリング処理によりこれを除去する。
【0039】
比率選択部214は、フィルタリング処理後の許可範囲から1つの配分比率を目標の比率として選択する。比率選択部214は、走行により生じるエネルギー損失が低くなるように配分比率の選択を行う。比率選択部214が判断の基礎とするエネルギー損失は、前輪モータ11、後輪モータ12、前輪トランスミッション13、および後輪トランスミッション14で生じるエネルギー損失の総量である。
【0040】
走行状態情報入力部25は、センサ群(31〜37、41〜46)のうち、車両の走行状態を検出する各センサのセンサ信号を入力する。走行状態情報入力部25は、センサ信号をデジタル変換してセンサ値を取得し、これらのセンサ値を基準決定部211と許可範囲設定部212へ送る。
【0041】
ベース損失マップ記憶部26は、前輪モータ11、後輪モータ12、前輪トランスミッション13、および後輪トランスミッション14の各々のベース損失マップを記憶する。ベース損失マップとは、回転トルクと回転速度とから損失を求めるためのマップデータである。前輪モータ11および後輪モータ12の各々の損失は、動作温度によって変化する。また、前輪トランスミッション13および後輪トランスミッション14の各々の損失は、動作温度とギアポジションとに応じて変化する。ベース損失マップは、これらの変化量を含まない各々の損失が示されるマップデータである。ベース損失マップに、動作温度又はギアポジションの情報に基づく補正が加えられて、実際の損失を求めることができる。比率選択部214は、ベース損失マップ記憶部26からベース損失マップを読み出すことができる。
【0042】
損失補正情報入力部27は、センサ群(31〜37、41〜46)のうち、エネルギー損失の補正パラメータの値を検出する各センサのセンサ信号を入力する。損失補正情報入力部27は、センサ信号をデジタル変換してセンサ値を取得し、これらのセンサ値を比率選択部214へ送る。また、指示部22には、ここで取得されたギアポジションの情報が送られる。
【0043】
<駆動力配分処理>
図3は、ECU20により実行される駆動力配分処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4は、
図3のステップS2の基準比率算出処理の詳細を示すフローチャートである。
図5は、
図3のステップS3の許可範囲算出処理の詳細を示すフローチャートである。
図6は、ECU20により実行される駆動力配分処理の一例を説明する図である。
【0044】
駆動力配分処理は、車両1が走行モードの際に、数ミリ秒など短い周期で繰り返し実行される。駆動力配分処理が開始されると、先ず、ECU20は、センサ群(31〜37、41〜46)の各センサ値を取得する(ステップS1)。これらのうち、例えばアクセルセンサ35のセンサ値は要求駆動力として入力される。
【0045】
次に、基準決定部211が基準比率算出処理を実行する(ステップS2)。基準比率算出処理は、車両の走行状態に応じて基準比率を決定する処理である。基準比率算出処理では、
図4に示すように、先ず基準決定部211が、取得された複数のセンサ値のうち、前後加速度と左右加速度の値に基づいて、車両1の荷重配分“Lf、Lr”を算出する(ステップS21)。ここで、Lfは左右の前輪2の荷重配分の比率、Lrは左右の後輪3の荷重配分の比率を示す。車両1の加速度によって荷重配分“Lf、Lr”は変化する。
【0046】
次に、基準決定部211は、荷重配分“Lf、Lr”に応じたベース基準比率“S0f、S0r”を算出する(ステップS22)。S0fは前輪2側のベース基準比率、S0rは後輪3側のベース基準比率を示す。ベース基準比率とは、補正前の基準比率を示し、例えば荷重配分と等しい値に設定される。ベース基準比率は、例えば勾配のない道路を直進して走行する際に、走行安定性が最も高くなる理想的な駆動力の配分比率を表わす。
【0047】
続いて、基準決定部211は、操舵角に対応した基準比率の個別の変化量v1を算出する(ステップS23)。理想的な駆動力の配分比率は、直進時と、コーナリング走行時とで変化する。変化量v1は、操舵角に応じた理想的な配分比率の変化量を意味する。基準決定部211には、予め操舵角と変化量v1との関係が示されたデータテーブルが用意され、これを用いて操舵角から変化量v1を算出する。ここでは、前輪2側の配分比率の変化量v1を示している。
【0048】
次に、基準決定部211は、道路勾配の推定処理を行う(ステップS24)。道路勾配の推定は、例えばアクセル操作量と車速の変化量との関係から推定するなど、公知技術を利用して実現できる。なお、道路勾配の推定処理は、他のECUが実行し、基準決定部211は、他のECUから道路勾配の情報を入力する構成としてもよい。
【0049】
道路勾配が推定されたら、基準決定部211は、道路勾配に対応した基準比率の個別の変化量v2を算出する(ステップS25)。変化量v2は、道路勾配に応じた理想的な配分比率の変化量を意味する。基準決定部211には、予め道路勾配と変化量v2との関係が示されたデータテーブルが用意され、これを用いて道路勾配から変化量v2を算出する。ここでは、前輪2側の配分比率の変化量v2を示している。
【0050】
ベース基準比率“S0f、S0r”と、走行状態に応じた個別の変化量v1、v2とが算出されたら、基準決定部211は、これらを用いて基準比率“Sf、Sr”を算出する(ステップS26)。具体的には、基準決定部211は、前輪2側のベース基準比率S0fに、個別の変化量v1、v2を総合する演算を行って、前輪2側の基準比率Sfを計算する。個別の変化量v1、v2を総合する演算は、予め複数の補正パラメータ(操舵角および道路勾配)のそれぞれに対応付けられた重み付け係数g1、g2を用意しておき、係数g1、g2によって重み付けを行って変化量v1、v2を加算して行ってもよい。後輪3側の基準比率Srは、例えば前輪2側の基準比率Sfとの合計が比率1になるように求められる。
【0051】
このように求められた基準比率“Sf,Sr”は、車両の荷重配分と、走行状態を表わす個々の補正パラメータ(操舵角および道路勾配)とに対応して、高い走行安定性を実現する理想的な配分比率となる。なお、
図4の例では、走行状態を表わす個々の補正パラメータとして操舵角と道路勾配とを適用した例を示したが、理想的な駆動力の配分比率に影響を与えるパラメータであれば、他のパラメータを加えて同様の補正処理を行ってもよい。
【0052】
基準比率が算出されたら、次に、ECU20では、許可範囲設定部212によって許可範囲算出処理が実行される(ステップS3)。許可範囲算出処理は、
図6(A)に示すように、基準比率Sfに許容幅Wdmin、Wuminを付加する処理である。
【0053】
許可範囲算出処理に移行すると、先ず、許可範囲設定部212は、走行状態情報入力部25から入力された各センサ値に基づいて、走行状態を表わす複数のパラメータの値を算出する(ステップS31)。複数のパラメータとしては、例えば、車速、スリップ率、前後加速度、横加速度、アンダステア度合、オーバステア度合、ブレーキ操作量などが含まれる。スリップ率は、公知のスリップ率の推定技術を利用して上記各センサ値から推定することができる。アンダステア度合、オーバステア度合は、ヨーレートセンサ33の検出結果である実ヨーレートと車速および操舵角から求められる予測ヨーレートとの差から求めることができる。スリップ率、アンダステア度合、およびオーバステア度合は、別のECUが計算して計算値を許可範囲設定部212に渡すようにしてもよい。
【0054】
ここで算出される複数のパラメータは、走行安定性の必要度に影響を与えるパラメータである。例えば、車速が高くなれば走行安定性の必要度が高くなり、車速が低くなれば走行安定性の必要度が低くなる。他のパラメータについても同様である。
【0055】
次に、許可範囲設定部212は、ステップS31で算出された複数のパラメータの各値と個別に対応した上限側許容幅および下限側許容幅の幅長を算出する(ステップS32)。上限側許容幅とは、走行安定性を妨げない範囲で、前輪2への駆動力の配分比率を高くできる許容幅を意味する。下限側許容幅とは、走行安定性を妨げない範囲で、後輪3への駆動力の配分比率を高くできる許容幅を意味する。個々のパラメータの値と、上限側許容幅および下限側許容幅との関係は、予め関係付けられてデータテーブル或いは関数の形式で許可範囲設定部212に記憶されている。これらの関係は、走行安定性の必要度が高くなれば許容幅が小さくなり、走行安定性の必要度が低くなれば許容幅が大きくなるような対応関係である。許可範囲設定部212は、上記のデータテーブル或いは関数を用いて個々のパラメータごとに上限側許容幅と下限側許容幅とを算出する。
【0056】
なお、車両1の挙動に乱れのない走行状態においては、上限側許容幅と下限側許容幅とは同じ大きさになる。しかし、アンダステア傾向時或いはオーバステア傾向時などの車両1の挙動に乱れが生じた走行状態においては、上限側許容幅と下限側許容幅とは同じ大きさにならない。
【0057】
図7は、アンダステア度合に対応づけられた許容幅の一例を示すグラフである。ここでは、一例としてアンダステア度合に対応づけられた上限側許容幅と下限側許容幅とについて説明する。アンダステア傾向が弱く現れた場合、前輪2の駆動力の比率を高めるとアンダステア傾向を助長してしまう。従って、走行安定性を妨げない範囲で、前輪2への駆動力の配分比率を高くできる許容幅は、後輪3への駆動力の配分比率を高くできる許容幅よりも小さくなる。従って、
図7に示すように、アンダステア度合に応じた上限側許容幅は下限側許容幅よりも小さく設定される。
【0058】
オーバステア度合に応じた上限側許容幅は、逆に、下限側許容幅よりも大きく設定される。
【0059】
複数のパラメータの値にそれぞれ対応した複数の上限側許容幅と複数の下限側許容幅とを算出したら、許可範囲設定部212は、これらの中から最小の上限側許容幅Wuminと、最小の下限側許容幅Wdminとを抽出する(ステップS33、S34)。そして、
図6(A)に示すように、基準比率Sfに上限側許容幅Wuminと下限側許容幅Wdminとを付加して、許可範囲“Rfd〜Rfu”を算出する(ステップS35)。
【0060】
ここで、最小の上限側許容幅Wuminと最小の下限側許容幅Wdminとを用いているのは、ステップS31で算出された複数のパラメータの全てに関して、走行安定性が妨げられないように配分比率の許容幅を求めるためである。なお、ステップS35で算出した許可範囲“Rfd〜Rfu”は前輪2側の配分比率の許可範囲を示している。
【0061】
次に、ECU20では、フィルタ部213によって、許可範囲から制限超過比率を除去するフィルタリング処理が実行される(ステップS4)。制限超過比率とは、前輪モータ11又は後輪モータ12へ上限トルクを超える出力を指示する配分比率を意味する。
図6の例では、ステップS3で算出された許可範囲“Rfu〜Rfd”のうち、上限側の一部が、前輪モータ11へ上限トルクを超える出力を指示する制限超過範囲となっている。従って、ステップS4の処理により、この部分が除去された許可範囲“Rfu’〜Rfd”が決定される。
【0062】
許可範囲“Rfu’〜Rfd”が決定されると、この許可範囲を表わす上限値Rfu’と下限値Rfdとが比率選択部214へ送られる(ステップS5)。
【0063】
次に、比率選択部214は、フロント損失マップを生成する(ステップS6)。ここでは、先ず、ベース損失マップ記憶部26に記憶された前輪モータ11と、ギアポジションに応じた前輪トランスミッション13の損失マップとに、温度補正が施される。そして、補正された両方の損失マップが合成されて、フロント損失マップが生成される。
【0064】
図8は、フロント損失マップの一例を表わすグラフを示す。このように生成されたフロント損失マップは、例えば
図8に示すように、モータ回転速度とモータトルクと損失a1〜a6との関係が示されたマップとなる。
【0065】
続いて、比率選択部214は、リア損失マップも同様に生成する(ステップS7)。
【0066】
次に、比率選択部214は、許可範囲“Rfu’〜Rfd”の複数の配分比率で前輪2と後輪3と要求駆動力をそれぞれ配分した場合の駆動力の複数の組み合わせを算出する(ステップS8)。
図6(B)の例では、許可範囲“40%〜80%”に対応して、組み合わせNo.4〜7の組み合わせE1が算出されている。ここで、駆動力の組み合わせは、許可範囲の全域に散らばるように抽出されるとよい。
【0067】
なお、駆動力の組み合わせは、許可範囲の中から等間隔に抽出された複数の比率に従って選択されてもよい。あるいは、駆動力の組み合わせは、許可範囲の中から基準比率に近い部分では密に抽出され、基準比率から遠い部分では疎に抽出された複数の比率に従って選択されてもよい。上述したように、基準比率は走行安定性が最も高くなる理想的な比率である。また、駆動力の配分比率は、一般に基準比率から離れるほど走行安定性が低くなる。一方、エネルギー損失は、例えば基準比率に近い部分に1つの極小値があり、基準比率から遠い部分にもう1つの極小値があるなど、複数の範囲に極小値が存在する場合がある。このような場合、基準比率から遠い部分にあるエネルギー損失の低い組み合わせよりも、基準比率に近い部分にあるエネルギー損失の低い組み合わせの方が、優れた駆動力の組み合わせとなる。そこで、上記のように、基準比率に近い範囲で駆動力の組み合わせを密に抽出することで、基準比率に近い範囲に、エネルギー損失の低い駆動力の組み合わせがある場合に、この組み合わせを見落とし難くすることができる。これにより、優れた駆動力の組み合わせがより確実に適用可能となる。
【0068】
また、駆動力の組み合わせは、車両の状態に応じて疎密の度合を変化させて抽出されてもよい。具体的には、走行安定性の高い状態では、許可範囲が広いため、比率選択部214は、許可範囲の全域から疎に駆動力の組み合わせを抽出する構成とする。また、走行安定性の低い状態では、許可範囲が狭いため、比率選択部214は、許可範囲の全域から密に駆動力の組み合わせを抽出する構成とする。これにより、許可範囲が広い場合に、抽出される駆動力の組み合わせが非常に多くなってしまうことが抑制され、計算の処理負荷を低減できる。さらに、許可範囲が狭い場合でも、抽出される駆動力の組み合わせが非常に少なくなってしまうことが抑制され、走行安定性とエネルギー効率とを両立するより優れた駆動力の組み合わせが適用可能となる。
【0069】
複数の組み合わせを算出したら、比率選択部214は、各組み合わせの前輪2の駆動力から前輪モータ11のトルクを求める。さらに、比率選択部214は、現在の前輪モータ11の回転速度を求める。そして、比率選択部214、これらの値とフロント損失マップとから、上記複数の組み合わせの前輪2の駆動力に対応した前輪モータ11および前輪トランスミッション13のエネルギー損失(「フロント損失」と呼ぶ)を算出する(ステップS9)。
【0070】
同様に、比率選択部214は、各組み合わせの後輪3の駆動力から後輪モータ12のトルクを求める。さらに、比率選択部214は、現在の後輪モータ12の回転速度を求める。そして、比率選択部214は、これらの値とリア損失マップとから、上記複数の組み合わせの後輪3の駆動力に対応した後輪モータ12および後輪トランスミッション14のエネルギー損失(「リア損失」と呼ぶ)を算出する(ステップS10)。
【0071】
続いて、比率選択部214は、ステップS8で算出された複数の組み合わせの各々についてフロント損失とリア損失との合計を計算する。そして、比率選択部214は、損失の合計が最小となる1つの駆動力の組み合わせを、前輪2の目標駆動力と後輪3の目標駆動力として選択する(ステップS11)。
図6(B)の例では、組み合わせNo.5の配分比率の組み合わせE11が選択されている。ここでは、前輪2と後輪3との目標駆動力は、要求駆動力を目標の比率によって配分した駆動力の組み合わせに相当するので、ステップS11の処理は、目標の比率を選択する処理に相当する。
【0072】
そして、比率決定部21による1回の駆動力配分処理が終了する。
【0073】
駆動力配分処理が終了すると、比率選択部214は、選択した1つの組み合わせの駆動力を、前輪2の目標駆動力と後輪3の目標駆動力として指示部22に送る。これは、要求駆動力とこれを配分する目標の比率の情報とを指示部22に送っているのと等価である。
【0074】
目標駆動力が指示部22に送られると、指示部22は、前輪2に目標駆動力を発生させる前輪モータ11の目標トルクと、後輪3に目標駆動力を発生させる後輪モータ12の目標トルクとを計算する。そして、指示部22は、これらの目標トルクの発生指令を前輪駆動回路15と後輪駆動回路16とにそれぞれ出力する。これにより、次の制御サイクルで、前輪モータ11と後輪モータ12とから各目標トルクが出力され、前輪2と後輪3とから各目標の駆動力が出力されることになる。
【0075】
このように出力された前輪2および後輪3の駆動力は、乗員の運転操作に応じた要求駆動力を満たし、且つ、車両1の走行安定性とエネルギー効率とを両立したものとなる。さらに、これらの駆動力は、走行安定性に余裕がある走行状態の場合には、走行安定性を損なわない範囲でエネルギー効率が優先された駆動力となる。また、これらの駆動力は、走行安定性に余裕が少ない走行状態の場合には、走行安定性が優先されつつ、走行安定性を損なわない範囲でエネルギー効率を向上した駆動力となる。
【0076】
以上のように、本実施形態の車両1の駆動力制御装置100によれば、要求駆動力を配分する比率の許可範囲を設定した後、この許可範囲の中からエネルギー損失が低くなる配分比率を目標の比率として選択する。このような処理により、走行安定性の向上とエネルギー効率の向上とが両立されるように要求駆動力を配分できる。
【0077】
また、本実施形態の車両1の駆動力制御装置100によれば、許可範囲の基準となる基準比率が走行状態に応じて変化するように計算される。これにより、走行状態に応じて走行安定性を高くする基準範囲を設定することができる。また、走行安定性に影響を及ぼす複数種類のパラメータ(操舵角と道路勾配)に対して、基準決定部211は、各々に個別に対応した変化量v1、v2を求め、これらの変化量v1、v2を総合して基準比率(Sf、Sr)を算出する。また、個別の変化量v1、v2を総合する際には、係数g1、g2により重み付けを行った総和により基準比率(Sf、Sr)を算出する。従って、複数種類のパラメータを総合的に勘案した上で、高い走行安定性が得られる基準比率を、小さい負荷で且つ正確に計算することができる。
【0078】
また、本実施形態の車両1の駆動力制御装置100によれば、許可範囲の広さを決定する上限側と下限側との許容幅が、走行状態に応じて変化する。これにより、走行安定性を優先すべき走行状態のときに、許可範囲を狭くして、走行安定性を優先した配分比率を目標比率として選択することができる。また、エネルギー効率を優先できる走行状態のときに、許可範囲を広くして、エネルギー効率を優先した配分比率を目標比率として選択することができる。また、本実施形態では、走行安定性の優先度に影響するパラメータとして、複数種類のパラメータ(車速、スリップ率、前後加速度、横加速度、アンダステア度合、オーバステア度合、ブレーキ操作量)が採用されている。そして、許可範囲設定部212は、各パラメータの値に対応付けられた個別の許容幅を求め、最小の許容幅を用いて許可範囲を算出する。従って、複数種類のパラメータの値に対応した許可範囲を、小さな負荷で計算することができる。
【0079】
また、許可範囲設定部212は、上限側許容幅と下限側許容幅とを別々に計算する。従って、アンダステア傾向時又はオーバステア傾向時など、走行安定性の余裕度が、前輪2の配分比率を高める方と、後輪3の配分比率を高める方とで異なる場合に、これらに対応して適切な許可範囲を設定することができる。
【0080】
また、本実施形態の車両1の駆動力制御装置100によれば、フィルタ部213が、前輪モータ11又は後輪モータ12に上限トルクを超える出力を要求するような制限超過比率が許可範囲に含まれる場合に、これらを許可範囲から除去する。従って、総合的なエネルギー損失を計算する際に、選択されない配分比率に関する無駄な計算を省くことができる。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、複数の駆動源として前輪モータ11と後輪モータ12とを適用した例を示した。しかし、複数の駆動源は、モータに限られず、エンジンを含んでいてもよい。すなわち、車両は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)としてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、前輪2と後輪3とで駆動力を配分する例を示した。しかし、前後左右の個々の車輪ごと、或いは、2つの後輪と、左前輪と、右前輪との3組の車輪ごとなど、駆動力を配分する車輪の組み合わせは適宜変更可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、動力伝達機構として前輪トランスミッション13と後輪トランスミッション14とを示したが、トランスミッションは無くても良い。例えば、一定の減速比の動力伝達機構が設けられていてもよい。また、例えば、複数の車輪の各々にギアリダクション方式のインホイールモータが設けられた電動車両においては、減速ギアが動力伝達機構となる。また、ダイレクトドライブ方式のインホイールモータを有する電動車両においては、モータ出力軸、車輪の回転軸、これらの軸受けなどが動力伝達機構となる。
【0084】
また、上記実施形態では、基準比率に影響する複数種類のパラメータとして、操舵角と道路勾配とを示したが、これらに限られず、他の走行状態を表わすパラメータが含まれていてもよい。また、上記実施形態では、許可範囲の許容幅に影響する複数種類のパラメータとして、車速、スリップ率、前後加速度、等々のパラメータを示したが、他の走行状態を表わすパラメータが含まれていてもよい。また、これらのうち2つのパラメータをまとめた関数値を1つのパラメータとして扱ってもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、走行のエネルギー損失として、前輪モータ11、後輪モータ12、前輪トランスミッション13、および後輪トランスミッション14の各損失を総合したものを適用した。しかし、走行のエネルギー損失は、モータの駆動回路の損失、またはバッテリの損失など、他の部位の損失を含んだものとしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、駆動力の配分比率の許可範囲を、基準比率に許容幅を加えて計算した例を示したが、許可範囲の計算の仕方は、この方法に限られない。例えば、走行状態に応じて走行安定性が高まる配分比率の範囲を、許可範囲として直接求めるようにしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、比率選択部214は、許可範囲の中からエネルギー損失が最小の配分比率(駆動力の組み合わせ)を選択した例を示した。しかし、比率選択部214は、例えば、許可範囲の中からエネルギー損失が低い方の配分比率を選択すればよい。例えば、比率選択部214は、許可範囲の中から、少なくとも他の1つの配分比率よりも、エネルギー損失が低い配分比率を選択する構成としてもよい。このような構成としても、エネルギー損失が最も高くなる配分比率の選択が抑制されて、走行安定性とエネルギー効率との両立を図ることができる。このような構成は、例えば、種別の異なる別の条件をさらに含めて配分比率を決定するような場合に有効となる。また、比率選択部214は、基準比率よりもエネルギー損失が低くなる配分比率を許可範囲の中から選択する構成としてもよい。基準比率のエネルギー損失が最低となる場合には、比率選択部214は、基準比率を選択すればよい。このような構成としても、基準比率よりエネルギー損失が低い配分比率又はエネルギー損失が最低の配分比率が選択されることになって、走行安定性とエネルギー効率との両立を図るという効果が奏される。また、1つのECUにより実現される複数の機能ブロックは、複数のECUに分けで実現してもよい。その他、本実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。