特許第6326606号(P6326606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6326606γ−グルタミルシクロトランスフェラーゼ(GGCT)の新規基質およびそれを用いたGGCT活性測定法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326606
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】γ−グルタミルシクロトランスフェラーゼ(GGCT)の新規基質およびそれを用いたGGCT活性測定法
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/54 20060101AFI20180514BHJP
   C07D 311/58 20060101ALI20180514BHJP
   C07D 265/38 20060101ALI20180514BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   C07C271/54CSP
   C07D311/58
   C07D265/38
   C12Q1/48 A
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-57967(P2014-57967)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2014-218494(P2014-218494A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-81865(P2013-81865)
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cbic.201300481/full、平成25年9月24日掲載 2.ChemBioChem,第14巻,第16号,第2110−2113頁,WILEY−VCH社 平成25年11月発行 3.第4回アジア−太平洋国際ペプチドシンポジウム 第50回ペプチド討論会 APIPS2013講演要旨集、第101頁、日本ペプチド学会 平成25年10月10日発行 4.第4回アジア−太平洋国際ペプチドシンポジウム 第50回ペプチド討論会 APIPS2013 ホテル阪急エキスポパーク(大阪府吹田市千里万博公園1−5) 平成25年11月6日開催
(73)【特許権者】
【識別番号】595125362
【氏名又は名称】株式会社ペプチド研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】飯居 宏美
(72)【発明者】
【氏名】西内 祐二
(72)【発明者】
【氏名】吉貴 達寛
(72)【発明者】
【氏名】吉矢 拓
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−047891(JP,A)
【文献】 特開平03−091496(JP,A)
【文献】 特表2012−504950(JP,A)
【文献】 Molecular Pharmaceutics,2013年 2月26日,Vol. 10, No. 4,pp. 1409-1416,(第1-18頁)
【文献】 吉矢 拓 ほか,GGCT(C7orf24)蛍光基質の開発:酵素反応を引き金としたO-to-N分子内アシル転位型反応の応用,第18回日本病態プロテアーゼ学会学術集会プログラム抄録集,2013年 8月16日,第24頁
【文献】 Current Organic Synthesis,2011年,Vol. 8, No. 4,pp. 498-520,(第1-55頁)
【文献】 Progress in Molecular Biology and Translational Science,2013年,Vol. 113,pp. 1-34,Available online 13 December 2012
【文献】 Analytical Biochemistry,2007年,Vol. 371,pp. 146-153
【文献】 BIOCHEMISTRY,1969年,Vol. 8, No. 3,pp. 1048-1055
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
はCOOHであり、
YはNHであり、
ZはO、NH、N−C1−6アルキル、S、またはCHであり、
mは1、2、3、または4であり、
は1であり、
cargo
【化2】
[式中、波線は分子の残部との結合点を示す。]
り、ただしcargoが
【化3】
である場合、ZはNHまたはN−C1−6アルキルである
の化合物またはその薬理的に許容しうる塩。
【請求項2】
下式:
【化4】
の化合物またはその薬理的に許容しうる塩。
【請求項3】
下式:
【化5】
の化合物またはその薬理的に許容しうる塩。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理的に許容しうる塩を基質として用いることを特徴とする、GGCT活性測定する方法
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理的に許容しうる塩を含む、GGCT活性を測定するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ−グルタミルシクロトランスフェラーゼ(以下、GGCT)の新規基質、およびそれを用いたGGCT活性測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
GGCTはグルタチオン(GSH)の代謝に関わっており(非特許文献1)、γ−Glu−Xaa−OHを基質として、ピログルタミン酸とアミノ酸(Xaa)とを産生する酵素である。現在では、GGCTが通常は諸臓器で低発現なのに対して、尿路上皮癌などの各種癌組織において高発現であることが知られている。また、GGCTをsiRNAでノックダウンすると、癌細胞の細胞生存率(cell viability)が低下することも報告されている(非特許文献2)。このため、GGCT阻害剤の開発が試みられている。
【0003】
そのような阻害剤の開発において、GGCTの存在および活性を直接的に観測することにより癌細胞の増殖の変化を直接的に観測することができれば、阻害剤のスクリーニングアッセイを非常に効率的に行うことができる。例えば、GGCT活性によって発色し、または蛍光を発する基質を用いることができれば、阻害剤のスクリーニングアッセイの効率化のみならず、癌イメージング研究などの分野にも応用することが期待できる。
【0004】
しかしながら、これまでにGGCTの発色/蛍光基質は開発されておらず、阻害剤のスクリーニングアッセイは間接的なものになっている。例えば、γ−Glu−Alaを基質とし、生成物であるAlaを用いた二段階の酵素反応を経てNADHをNADとし、それによる吸光度の変化を観測する非効率な間接的方法が知られている。
【0005】
また、γ−Glu−Cysを基質として用い、系内に残存したγ−Glu−CysをNDA(ナフタレン−2,3−ジカルボキシアルデヒド)にてトラップし、蛍光物質として分析する手法が報告されている(非特許文献3)。しかしながらこの手法も、以前から用いられているアッセイ手法同様に間接的なものであるため、正確性や再現性に難がある。また、アルデヒドと反応しうる夾雑物による蛍光の退色の問題がある。さらに、NDAを加えると酵素反応はストップしてしまうため、最後にNDAを加える必要があり、操作は複雑になる。したがって、簡便かつ再現性良くGGCT活性を測定しうるGGCTの発色/蛍光基質の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P. G. Borad et al. J.Biol.Chem 2008 (283) 22031.
【非特許文献2】S. Kageyama et al. PROTEOMICS - Clinical Applications 2007 (1) 192.
【非特許文献3】P. G. Borad et al. Anal. Biochem. 2012 (420)177.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような先行技術における課題を解決すべくなされたものであり、GGCTの新規発色/蛍光基質およびそれを用いたGGCT活性測定法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下式Iで示す化合物またはその薬理的に許容しうる塩がGGCTによって切断されて発色団を放出し、該発色団の発色/蛍光を測定することによって直接的にGGCT活性を測定できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち、本発明は、
[1]
式I:
【化1】

[式中、
XはH、またはCOOHであり、
YはNHであり、
ZはO、NH、N−C1−6アルキル、S、またはCHであり、
mは1、2、3、または4であり、
nは0、1、または2であり、
cargoは発色団である]
の化合物またはその薬理的に許容しうる塩;
【0010】
[2]
式Iにおいて、cargoが
【化2】
[式中、波線は分子の残部との結合点を示す。]
の構造を有する、上記[1]に記載の化合物またはその薬理的に許容しうる塩;
【0011】
[3]
nが1である、上記[1]〜[2]のいずれか1つに記載の化合物またはその薬理的に許容しうる塩;
【0012】
[4]
XがCOOHである、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の化合物またはその薬理的に許容しうる塩;
【0013】
[5]
下式:
【化3】
の化合物またはその薬理的に許容しうる塩;
【0014】
[6]
下式:
【化4】
の化合物またはその薬理的に許容しうる塩;
【0015】
[7]
上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の化合物またはその薬理的に許容しうる塩を基質として用いることを特徴とする、GGCT活性測定法;および
【0016】
[8]
下式:
【化5】
の化合物またはその薬理的に許容しうる塩を基質として用いることを特徴とする、GGCT活性測定法;
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の化合物またはその薬理的に許容しうる塩をGGCTの基質として用いることにより、GGCTの酵素活性によって該基質から発色団が放出され、該発色団の発色/蛍光を測定することによって直接的にGGCT活性を測定することができるため、簡便かつ再現性のよいGGCT活性の測定が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、GGCTによる本発明の化合物(LISA−4)からの4−メチルウンベリフェロン(MU)の放出を示す。
図2図2は、LISA−4とMUとの蛍光スペクトル比較(図2A)およびその拡大図(図2B)を示す。
図3図3は、蛍光光度計を用いた、LISA−4を基質とするGGCT酵素反応のモニターを示す。
図4図4Aは、GGCTによる本発明の化合物(LISA−101)からのレソルフィンの放出を示し、図4Bは、GGCTによる本発明の化合物(LISA−102)からのレソルフィンの放出を示す。LISA−101については、GGCTなしの場合のレソルフィン放出量も示している。
図5図5は、LISA−101およびLISA−102とレソルフィンとの蛍光スペクトル比較(図5A)およびその拡大図(図5B)を示す。
図6図6は、リコンビナントGGCTを用いた場合の、LISA−101を基質とするGGCT酵素反応の蛍光プレートリーダーによるモニターを示す。
図7図7は、細胞破砕物中のGGCTを用いた場合の、LISA−101を基質とするGGCT酵素反応の蛍光プレートリーダーによるモニターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で用いられている用語「アルキル」は、炭素数1〜6個(C1−6アルキル)、好ましくは炭素数1〜3個(C1−3アルキル)の飽和直鎖状または分岐鎖状炭化水素を指す。本発明で用いられる「アルキル」としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、tert−ヘキシル、ネオヘキシル、3−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1−エチルブチル、および2−エチルブチル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書で用いられている用語「cargo」は、GGCTによる酵素反応、および場合によってはその後の自発的な化学反応によって切断・放出される発色団であれば特に限定されるものではない。ここで「発色団」とは、発色または蛍光を発する物質であれば特に限定されるものではない。本発明で用いられるcargoは、GGCT酵素反応によって切断される前には発色もしくは蛍光を有さないかまたは発色もしくは蛍光が非常に弱く、切断された後に強い発色または蛍光を発する物質が好ましく用いられる。本発明で用いられるcargoとしては、限定されるものではないが、4−メチルウンベリフェロン、p−ニトロフェノール、レソルフィン、フルオレセイン、TokyoGreen、ロドール、7−ヒドロキシクマリン、6−ヒドロキシクマリン、およびスコポレチン等のヒドロキシ基を有する発色または蛍光物質がヒドロキシ基を介して分子の残部に結合しているものを挙げることができる。好ましいcargoは、4−メチルウンベリフェロン、p−ニトロフェノール、およびレソルフィンである。
【0021】
本明細書で用いられている用語「薬理的に許容しうる塩」は、GGCTによる酵素反応系に影響を与えない生理的に許容しうる塩を意味し、限定されるものではないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、もしくはトリフルオロ酢酸塩などの酸付加塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、もしくはアルミニウム塩等の金属塩、またはアンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、エチレンジアミン塩、トリエタノールアミン塩、もしくはトリエチルアミン塩などの塩基付加塩を指す。好ましい塩は、塩酸塩またはトリフルオロ酢酸塩である。
【0022】
本明細書中で使用する略号は、別段の定義がない限り、以下の意味を有する。また、アミノ酸は全てL−アミノ酸を意味する。
siRNA:低分子干渉RNA
Ala :アラニン
Cys :システイン
Glu :グルタミン酸
Ser :セリン
Lys :リシン
NADH :還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
NAD :酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
MU :4−メチルウンベリフェロン
Boc :tert−ブトキシカルボニル
NSu :スクシンイミド
tBu :tert−ブチル
MgSO:硫酸マグネシウム
pr :2,3−ジアミノプロピオン酸
bu :2,4−ジアミノ酪酸
Cbz :ベンジルオキシカルボニル
pNP :p−ニトロフェノール
MeOH :メタノール
HCl :塩酸
DMF :ジメチルホルムアミド
DMSO :ジメチルスルホキシド
THF :テトラヒドロフラン
CO:炭酸カリウム
DNs :2,4−ジニトロベンゼンスルホニル
Et :エチル
iPr :イソプロピル
IPTG :イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド
HPLC :高速液体クロマトグラフィー
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を説明する目的で提供されているのであって、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1
γ−Glu−Glu(MU)(LISA−3)の合成
【化6】
【0025】
氷浴上、Boc−Glu(ONSu)−OtBu(657mg)、H−Glu−OtBu(350mg)およびトリエチルアミン(0.685mL)をジメチルホルムアミド(5mL)に溶解させ、室温に戻るに任せつつ、終夜攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Glu−OtBu)−OtBuを533mg得た。残渣のうちの300mgと、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU、245mg)およびトリエチルアミン(0.18mL)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、室温にて5分間攪拌した。その後、4−メチルウンベリフェロン(114mg)を加え、さらに1時間室温にて攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Glu(MU)−OtBu)−OtBuを得た。得られた残渣をジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.01%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて粗精製した。Boc−Glu(Glu(MU)−OtBu)−OtBuを含むフラクションを凍結乾燥し、230mgの白色粉末を得た。氷浴上にて、得られた白色粉末のうちの90mgをトリフルオロ酢酸(5mL)に溶解させ、2時間攪拌した。その後、減圧濃縮し、残渣を逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm,粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。凍結乾燥後、表題化合物を58mgの白色粉末として得た。
H NMR(CFCOOD,400MHz):δ7.91(d,J=8.8Hz,1H),7.34(s,1H),7.29(d,J=8.8Hz,1H),6.63(s,1H),4.93−4.81(m,1H),4.60−4.49(m,1H),3.07−2.90(m,4H),2.69−2.49(m,6H),2.43−2.30(m,1H);13C NMR(CFCOOD,100MHz):δ178.29,177.90,176.44,174.72,169.24,160.80,155.50,155.48,128.63,121.64,121.07,114.87,112.79,55.84,54.58,33.84,32.31,28.07,27.15,19.58;HRMS(FAB):C2022NaO(M+Na)計算値:457.1223,実測値:457.1220.
【0026】
実施例2
γ−Glu−Ser(CO−MU)(LISA−4)の合成
【化7】
【0027】
Boc−Glu−OtBu(863mg)、HCl・H−Ser−OtBu(605mg)、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、421mg)を10%水含有ジメチルホルムアミド(8mL)に溶解させ、氷浴上、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、0.571mL)を滴下した。その後、室温に戻るに任せつつ、ジメチルホルムアミド溶液を終夜攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、飽和重曹水、1N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Ser−OtBu)−OtBu(1.21g)を得た。Boc−Glu(Ser−OtBu)−OtBu(1.21g)、およびカルボニルジイミダゾール(448mg)をジメチルホルムアミド(9mL)に溶解し、アルゴンガス雰囲気下、メタンスルホン酸(0.179mL)を加え、室温で1時間攪拌した。4−メチルウンベリフェロン(621mg)とメタンスルホン酸(0.202mL)を加えた後、溶液を60℃で終夜攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Ser(CO−MU)−OtBu)−OtBuを得た。得られた残渣をジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.01%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて粗精製した。Boc−Glu(Ser(CO−MU)−OtBu)−OtBuを含むフラクションを凍結乾燥し、60mgの白色粉末を得た。氷浴上にて、得られた白色粉末のうちの50mgをトリフルオロ酢酸(3mL)に溶解させ、2時間攪拌した。その後、減圧濃縮し、残渣を水に溶解し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。凍結乾燥後、表題化合物を30mgの白色粉末として得た。
H NMR(CFCOOD,400MHz):δ7.93−7.85(m,1H),7.40−7.27(m,2H),6.62(s,1H),5.17−5.07(m,1H),4.94−4.76(m,2H),4.59−4.48(m,1H),3.07−2.87(m,2H),2.70−2.47(m,5H);13C NMR(CFCOOD,100MHz):δ177.78,175.38,174.73,169.10,160.59,156.18,155.60,155.39,128.72,121.17,120.92,115.03,112.22,69.84,55.82,54.43,33.73,27.12,19.54;HRMS(FAB):C1920NaO10(M+Na)計算値:459.1016,実測値:459.1011.
【0028】
実施例3
γ−Glu−Apr(CO−pNP)(LISA−7)の合成
【化8】
氷浴上、Boc−Glu(ONSu)−OtBu(800mg,2.00mmol)、H−Apr(Cbz)−OtBu(500mg,2.10mmol)およびトリエチルアミン(1.22mL,8.78mmol)をジメチルホルムアミド(5mL)に懸濁させ、室温に戻るに任せつつ、終夜攪拌した。不溶物を濾去した後、酢酸エチルにて母液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Apr(Cbz)−OtBu)−OtBuを950mg(1.81mmol)得た。得られたBoc−Glu(Apr(Cbz)−OtBu)−OtBu(0.918g,1.75mmol)をMeOH(40mL)に溶解し、パラジウム炭素(10%パラジウム、180mg)を加えて、水素ガス雰囲気下、室温にて激しく1時間撹拌した。パラジウム触媒を濾去し、母液を減圧濃縮し、Boc−Glu(Apr−OtBu)−OtBu(633mg,1.63mmol)を得た。クロロギ酸4−ニトロフェニル(150mg,0.745mmol)とトリエチルアミン(0.312mL,2.23mmol)を、アルゴン雰囲気下、Boc−Glu(Apr−OtBu)−OtBu(290mg,0.745mmol)とトリメチルシリルクロリド(0.142mL,1.12mmol)のクロロホルム溶液(40mL)に加え、室温にて1時間撹拌した。その後、酢酸にて酸性とし、減圧濃縮した。得られた、Boc−Glu[Apr(CO−pNP)−OtBu]−OtBuをトリフルオロ酢酸(10mL)に溶解し、1時間室温にて撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、ジエチルエーテルにて沈澱化させた後、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.01%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、110mg(0.215mmol)の粉末として得られた。純度:99.4%(220nm);
H NMR(CFCOOD,400MHz)δ8.36−8.25(m,2H),7.40−7.25(m,2H),5.07−4.83(m,1H),4.46(t,1H,J=5.8Hz),4.13−3.82(m,2H),2.98−2.80(m,2H),2.61−2.40(m,2H);MS(ESI):(M+H)計算値:399.1,実測値:399.0.
【0029】
実施例4
γ−Glu−Lys(CO−MU)(LISA−10)の合成
【化9】
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC,0.516mL,2.82mmol)をBoc−Glu−OtBu(777mg,2.56mmol)、HCl・H−Lys(Cbz)−OtBu(1.00g,2.68mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,362mg,2.68mmol)のDMF(10mL)溶液に0℃にて滴下し、室温に戻るに任せつつ、終夜撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、0.3N塩酸水、飽和重曹水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、Boc−Glu(Lys(Cbz)−OtBu)−OtBuを1.47g(2.36mmol)得た。得られたBoc−Glu(Lys(Cbz)−OtBu)−OtBu(1.14g,1.83mmol)をMeOH(30mL)に溶解し、パラジウム炭素(10%パラジウム、170mg)を加えて、水素ガス雰囲気下室温にて激しく2時間撹拌した。パラジウム触媒を濾去し、母液を減圧濃縮し、Boc−Glu(Lys−OtBu)−OtBu(858mg,1.76mmol)を得た。アルゴンガス雰囲気下、炭酸ビス(トリクロロメチル)(126mg,0.424mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)を、4−メチルウンベリフェロン(225mg,1.28mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.435mL,2.43mmol)のTHF溶液(10mL)に加え、室温で20分撹拌した。その後、Boc−Glu(Lys−OtBu)−OtBu(748mg,1.53mmol)のTHF溶液(10mL)を加えて1時間撹拌した。塩化メチレンにて反応溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮した。得られた、Boc−Glu[Lys(CO−MU)−OtBu]−OtBuをトリフルオロ酢酸(20mL)に溶解し、2時間室温にて撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、蒸留水(150mL)に溶解し、クロロホルム(x3)で洗浄し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、190mg(0.321mmol)の白色粉末として得られた。純度:99.7%(220nm);
H NMR(CFCOOD,400MHz)δ7.88(s,1H),7.86(s,1H),7.31(s,1H),6.59(s,1H),4.73−4.60(m,1H),4.55−4.44(m,1H),3.60−3.30(m,2H),3.00−2.86(m,2H),2.61(s,3H),2.59−2.41(m,2H),2.19−1.48(m,4H);MS(ESI):(M+H)計算値:478.2,実測値:478.2.
【0030】
実施例5
γ−Glu−Abu(Nγ−Et−Nγ−CO−レソルフィン)(LISA−101)の合成
【化10】
Boc−Abu−OtBu・HCl(970mg,3.12mmol)、2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロリド(1.25g,4.68mmol)およびKCO(2.16g,15.6mmol)を、THF−HO(2:1,30mL)に溶解させ、室温にて3時間撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、Boc−Abu(Nγ−DNs)−OtBuを1.65g得た(DNs:2,4−ジニトロベンゼンスルホニル)。得られたBoc−Abu(Nγ−DNs)−OtBu(1.57g)、ヨウ化エチル(374μL,4.68mmol)およびKCO(647mg,4.68mmol)をジメチルホルムアミド(10mL)中、室温にて終夜撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、Boc−Abu(Nγ−DNs−Nγ−Et)−OtBuを1.49g得た。得られたBoc−Abu(Nγ−DNs−Nγ−Et)−OtBu(1.49g)をジオキサン(5mL)に溶解させ、5.7N塩酸−ジオキサン(7mL)を加えて、0℃にて1時間撹拌した。その後、酢酸エチルおよび飽和重曹水にて反応溶液を希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、H−Abu(Nγ−DNs−Nγ−Et)−OtBuを1.00g得た。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(487mg,2.54mmol)を、H−Abu(Nγ−DNs−Nγ−Et)−OtBu(1.00g,2.31mmol)、Cbz−Glu−OtBu(1.26g,2.43mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,344mg,2.54mmol)のジメチルホルムアミド溶液(7mL)に加え、室温にて終夜撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製し、Cbz−Glu[Abu(Nγ−DNs−Nγ−Et)−OtBu]−OtBu(320mg,0.426mmol)を得た。純度:98.6%(220nm);
MS(ESI):(M+H)計算値:752.3,実測値:752.3.
【0031】
得られたCbz−Glu[Abu(Nγ−DNs−Nγ−Et)−OtBu]−OtBu(320mg,0.426mmol)を、チオグリコール酸(3mL)−ジメチルホルムアミド(10mL)混液に溶解し、終夜室温にて撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製し、Cbz−Glu[Abu(Nγ−Et)−OtBu]−OtBu(65.0mg)を得た。純度:97.2%(220nm);
MS(ESI):(M+H)計算値:522.3,実測値:522.3.
【0032】
アルゴンガス雰囲気下、炭酸ビス(トリクロロメチル)(12.0mg,41.0μmol)、レソルフィン(26.1mg,122μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(22.0μL,0.126mmol)を塩化メチレン−テトラヒドロフラン(1:2)(1.5mL)中、室温にて10分撹拌し、Cbz−Glu[Abu(Nγ−Et)−OtBu]−OtBu(53.0mg,102μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(66.0μL,0.379mmol)のテトラヒドロフラン溶液(3mL)を加えて1時間撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮した。得られたCbz−Glu[Abu(Nγ−Et−Nγ−CO−レソルフィン)−OtBu]−OtBuにトリイソプロピルシラン(0.2mL)を加えた後、トリフルオロ酢酸(3.8mL)に溶解し、室温にて終夜撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、蒸留水(30mL)に溶解し、クロロホルム(x3)で洗浄し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、6.5mg(10μmol)のオレンジ色粉末として得られた。純度:99.2%(220nm);
H NMR(DMSO−d(2%DOおよび3%CFCOOD含有),400MHz)δ7.84(d,J=8.8Hz,1H),7.54(d,J=10Hz,1H),7.34(dd,J=15,2.4Hz,1H),7.21(dt,J=8.8,8.8,2.4Hz,1H),6.82(dd,J=10,2.0Hz,1H),6.30(d,J=2.0Hz,1H),4.30−4.21(m,1H),3.98−3.87(m,1H),3.59−3.19(m,4H),2.42−2.24(m,2H),2.17−1.80(m,4H),1.16(dt,J=32,6.8,6.8Hz,3H);MS(ESI):(M+H)計算値:515.2,実測値:515.2.
【0033】
実施例6
γ−Glu−Abu(Nγ−iPr−Nγ−CO−レソルフィン)(LISA−102)の合成
【化11】
Boc−Abu−OtBu・HCl(353mg,1.14mmol)をMeOH(20mL)−アセトン(10mL)に溶解し、パラジウム炭素(5%パラジウム、120mg)を加えて、水素ガス(8.5atm)雰囲気下、室温にて終夜撹拌した。その後、パラジウム触媒を濾去し、母液を減圧濃縮し、Boc−Abu(Nγ−iPr)−OtBu(592mg)を得た。得られたBoc−Abu(Nγ−iPr)−OtBu(592mg)をMeOH(1mL)に溶解し、5.7N HCl−ジオキサン(2mL)を加えて室温にて1時間撹拌した。その後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンにて中和し、N−メチル−2−ピロリドン(2mL)を加えて減圧濃縮し、H−Abu(Nγ−iPr)−OtBuのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。その溶液に、Boc−Glu(ONSu)−OtBu(661mg,1.65mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(60μL,0.35mmol)を加え、終夜室温にて撹拌した。その後、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製し、凍結乾燥の後に、Boc−Glu[Abu(Nγ−iPr)−OtBu]−OtBu(198mg,0.322mmol)を白色粉末として得た。純度:98.4%(220nm);
H NMR(DMSO−d,400MHz)δ8.25(d,1H,J=7.6Hz),7.13(d,1H,J=7.6Hz),4.28−4.18(m,1H),3.82−3.72(m,1H),3.29−3.21(m,1H),3.00−2.80(m,2H),2.20(t,2H,J=7.6Hz),2.07−1.64(m,4H),1.44−1.31(m,27H),1.19(d,6H,J=6.4Hz);MS(ESI):(M+H)計算値:502.3,実測値:502.3.
【0034】
アルゴンガス雰囲気下、炭酸ビス(トリクロロメチル)(19.0mg,64.0μmol)、レソルフィン(41.0mg,194μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(35.0μL,0.196mmol)を塩化メチレン(10mL)中、室温にて15分撹拌した。Boc−Glu[Abu(Nγ−iPr)−OtBu]−OtBu(100mg,162μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(105μL,0.588mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加えて1時間撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSOにて乾燥した後、減圧濃縮した。得られた、Boc−Glu[Abu(Nγ−iPr−Nγ−CO−レソルフィン)−OtBu]−OtBuをトリフルオロ酢酸(2mL)に溶解し、蒸留水(0.1mL)を加えて室温にて2.5時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、蒸留水(10mL)に溶解し、クロロホルム(x3)で洗浄し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、6.8mg(11μmol)のオレンジ色粉末として得られた。純度:99.3%(220nm);
H NMR(DMSO−d(3%DOおよび3%CFCOOD含有),400MHz)δ7.83(d,J=8.4Hz,1H),7.54(d,J=10Hz,1H),7.37−7.28(m,1H),7.21(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),6.82(dd,J=10,2.4Hz,1H),6.28(d,J=2.0Hz,1H),4.31−4.02(m,2H),3.97−3.84(m,1H),3.46−3.10(m,2H),2.38−2.24(m,2H),2.14−1.80(m,4H),1.30−1.09(m,6H);MS(ESI):(M+H)計算値:529.2,実測値:529.2.
【0035】
以下の実施例では、上記実施例1〜6で合成した本発明の化合物とGGCTとの反応をアッセイした。
実施例7〜12で用いたGGCT(リコンビナントGGCT)は、以下のように調製した。
GGCT(accession no.NM_024051)のオープン・リーディング・フレームをpDEST17ベクター(His−tagベクター;Thermo Fisher Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州)に挿入したプラスミドを調製し、大腸菌(BL21 DE3株)に形質転換した。コロニーをピックアップして2mLのアンピシリン100μg/mL含有LB培地で数時間培養した後、10mLのアンピシリン100μg/mL含有LB培地に植え継ぎ、一晩培養した。培養液をよく懸濁して600nmの吸光度を測定し、0.1〜0.2になるようにアンピシリン100μg/mL含有LB培地で希釈し、50mLまでかさ上げした後、2〜3時間培養した。600nmの吸光度が0.4まで上昇した後、IPTG[ナカライテスク株式会社(京都、日本)、製品番号19742−81]を0.1mMになるように添加し、さらに4〜6時間培養を続けた。培養液を遠心し、培養液上清を取り除き、大腸菌のペレットを得た後、Probond purification system(Thermo Fisher Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて精製し、大腸菌由来のリコンビナントタンパク質を調製した。
【0036】
実施例7
LISA−4を基質としたGGCT酵素反応のHPLCによる追跡アッセイ
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を追跡するために、GGCTとLISA−4を反応させ、放出される4−メチルウンベリフェロン(MU)をHPLCによって追跡した。
【0037】
酵素反応は全て室温(24℃)にて実施した。
以下の溶液1および溶液2を作製した。
溶液1:pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したLISA−4の2mM溶液
溶液2:pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したGGCT溶液(7μL、0.98mg/mL)を3.5倍希釈した溶液(計24.5μL)
次に、溶液1(131μL)を、溶液2の全量に投入し、反応を開始した(初期濃度:1.68mM)。各時点で、サンプリングした溶液(8μL)にトリフルオロ酢酸(5μL)を加え、反応を止めた。サンプルは、HPLC測定まで4℃にて保管した。
【0038】
各サンプルについて、HPLC(UV検出器)を用いてLISA−4とMUの量を解析し、MUの量をプロットした。HPLC測定は、以下の条件で行った。
装置:LC−2010CHT(株式会社島津製作所)
検出器:SPD−M10Avp(株式会社島津製作所)
カラム:YMC−Pack ODS−A(4.6x150mm、粒径5μm、孔径12nm)(株式会社ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相:A液−0.1%トリフルオロ酢酸含有水、B液−0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル
濃度勾配制御:B液10%−95%(25分)
流速:1mL/分
注入量:7μL
結果は、図1に示す。
【0039】
図1から、LISA−4はGGCTの基質となりうる化合物であり、GGCTの酵素活性によって切断され、MUを放出することが明らかになった。
【0040】
実施例8
LISA−4とMUの蛍光スペクトル比較
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を蛍光強度で追跡できるかどうかを確認するために、LISA−4とMUの蛍光スペクトルをそれぞれ測定した。
pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)でそれぞれ0.07mMのLISA−4溶液およびMU溶液を作製し、それぞれの溶液について蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトル測定は、以下の条件で行った。
装置:F−2500(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
励起波長:371nm
測定波長:300−800nm
結果は、図2に示す。
【0041】
図2から明らかなように、MUは強い蛍光を発した(蛍光極大450nm)。一方、同条件において、LISA−4は殆ど蛍光を発しなかった。特に461nmにおける蛍光を比較すると、MUはLISA−4と比べ約1200倍の蛍光を発した。したがって、461nm付近における蛍光は、MUに特徴的なシグナルであることが明らかになった。
【0042】
実施例9
LISA−4を基質としたGGCT酵素反応の蛍光光度計によるモニター
LISA−4からのMUの放出を蛍光光度計にてモニターした。
pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)で以下の溶液を作製し、すぐに用いた。
基質:LISA−4 0.07mM
酵素:GGCT 0.196mg/mL
基質溶液(140μL)を酵素溶液(10μL)に添加し、45分間室温にて蛍光を測定した。終濃度は、LISA−4 0.065mM、GGCT 0.013mg/mL(0.62μM)とした。測定は以下の条件で行った。
装置:F−2500(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
励起波長:371nm
測定波長:466nm
結果は、図3に示す。
【0043】
図3から明らかなように、GGCTを入れないLISA−4のみの条件では、殆ど蛍光の増加は見られなかった。したがって、GGCTの酵素反応によるLISA−4からのMUの放出を実際に蛍光光度計にてモニターできることが明らかになった。
【0044】
実施例10
LISA−101またはLISA−102を基質としたGGCT酵素反応のHPLCによる追跡アッセイ
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を追跡するために、GGCTとLISA−101またはLISA−102を反応させ、放出されるレソルフィンをHPLCによって追跡した。
【0045】
酵素反応は全て室温(24℃)にて実施した。
以下の溶液1および溶液2を作製した。
溶液1:pH8.0トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したLISA−101またはLISA−102の0.3mM溶液
溶液2:pH8.0トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したGGCT溶液(4μL、0.70mg/mL)を3.5倍希釈した溶液(計14μL)
次に、溶液1(40μL)を、溶液2の全量に投入し、反応を開始した(LISA−101またはLISA−102の初期濃度:0.22mM)。各時点で、サンプリングした溶液(6μL)にトリフルオロ酢酸(6μL)を加え、反応を止めた。サンプルは、HPLC測定まで4℃にて保管した。
【0046】
各サンプルについて、HPLC(UV検出器)を用いてLISA−101またはLISA−102とレソルフィンの量を解析し、各量をプロットした。HPLC測定は、以下の条件で行った。
装置:LC−2010CHT(株式会社島津製作所)
検出器:SPD−M10Avp(株式会社島津製作所)
カラム:YMC−Pack ODS−A(4.6x150mm、粒径5μm、孔径12nm)(株式会社ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相:A液−0.1%トリフルオロ酢酸含有水、B液−0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル
濃度勾配制御:B液10%−90%(25分)
流速:1mL/分
注入量:4μL
結果は、図4に示す。
【0047】
図4から、LISA−101およびLISA−102はGGCTの基質となりうる化合物であり、GGCTの酵素活性によって切断され、レソルフィンを放出することが明らかになった。
なお、pH6.5トリス塩酸緩衝液を用いた同様の実験系により、GGCTによる酵素反応によってLISA−7およびLISA−10からそれぞれp−ニトロフェノールおよび4−メチルウンベリフェロンが放出されることも確認できた。
【0048】
実施例11
LISA−101およびLISA−102とレソルフィンの蛍光スペクトル比較
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を蛍光強度で追跡できるかどうかを確認するために、LISA−101およびLISA−102とレソルフィンの蛍光スペクトルをそれぞれ測定した。
5%DMSOを含むpH8.0トリス塩酸緩衝液(100mM)でそれぞれ1μMのLISA−101およびLISA−102溶液、ならびにレソルフィン溶液を作製し、それぞれの溶液について蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトル測定は、以下の条件で行った。
装置:F−2500(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
励起波長:530nm
測定波長:400−800nm
結果は、図5に示す。
【0049】
図5から明らかなように、レソルフィンは強い蛍光を発した(蛍光極大587nm)。一方、同条件において、LISA−101およびLISA−102は殆ど蛍光を発しなかった。587nmにおける蛍光を比較すると、レソルフィンはLISA−101と比べ約110倍、LISA−102と比べ約520倍の蛍光を発した。したがって、587nm付近における蛍光は、レソルフィンに特徴的なシグナルであることが明らかになった。
【0050】
実施例12
LISA−101を基質としたGGCT酵素反応の蛍光プレートリーダーによるモニター(リコンビナントGGCT使用)
LISA−101からのレソルフィンの放出を蛍光プレートリーダーにてモニターした。
以下の溶液を作製した。
A液:50μg/mL(100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0)のリコンビナントGGCT
B液:4mMのLISA−101(100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0)を100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0で50μMに希釈したもの
A液(20μL、終濃度:5μg/mL)、B液(20μL、終濃度:5μM)、および100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0(160μL)を、96ウェルブラックプレートのウェル中で混合し、37℃に設定したプレートリーダーにてインキュベートし、5分ごとに励起波長530nm、蛍光波長590nmで蛍光を測定した。測定は以下の装置を用いて行った。
使用機器:Synergy HT(BioTek Instruments社、ウィヌースキ、バーモント州)
使用フィルター:励起530nm/25nm、蛍光590nm/35nm
結果は、図6に示す。
【0051】
図6から明らかなように、GGCTを入れないLISA−101のみの条件では、殆ど蛍光の増加は見られなかった。したがって、GGCTの酵素反応によるLISA−101からのレソルフィンの放出を実際に蛍光プレートリーダーにてモニターできることが明らかになった。
【0052】
実施例13
LISA−101を基質としたGGCT酵素反応の蛍光プレートリーダーによるモニター(細胞破砕物中のGGCT使用)
リコンビナントGGCTの代わりにGGCT強制発現細胞の破砕物中のGGCTを用いて、LISA−101からのレソルフィンの放出を蛍光プレートリーダーにてモニターした。
破砕物中のGGCTは、以下のようにして調製した。
NIH−3T3細胞にレトロウィルスベクターを用いてGGCTを強制発現させたディッシュ上の細胞(500,000個)をリン酸緩衝生理食塩水にて洗浄し、0.5%のプロテアーゼインヒビターカクテル[ナカライテスク株式会社(京都、日本)、商品コード25955−11]と0.1%のトリトンX−100を含有する100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)100μL中、スクレイパーで剥がした。その後、ソニケーションで細胞を破砕し、細胞破砕液(A)とした。
LISA−101を100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、50μMのLISA−101ストックソリューション(B)とした。
得られた細胞破砕液(A)20μL、LISA−101ストックソリューション(B)20μL、および100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)160μLを混合し、37℃に設定したプレートリーダーにてインキュベートした。5分ごとに、励起波長530nm、蛍光波長590nmで蛍光を測定した。(終濃度LISA−101:5μM、総溶液量:200μL)。測定は実施例12と同様の装置を用いて行った。
結果は、図7に示す。
【0053】
図7から明らかなように、細胞破砕物中のGGCTを用いた場合であっても、リコンビナントGGCTを用いた場合と同様に、LISA−101からのレソルフィンの放出を蛍光プレートリーダーにてモニターできることが分かった。したがって、LISA−101は、生細胞を用いた実験系にも適用可能な安定性を有していることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の化合物またはその薬理的に許容しうる塩をGGCTの基質として用いることにより、GGCTの酵素活性によって該基質から発色団が放出され、該発色団の発色/蛍光を測定することによって直接的にGGCT活性を測定することができるため、簡便かつ再現性のよいGGCT活性の測定が可能となった。該基質は、GGCT阻害剤の開発、および癌イメージングなどの分野において有用である。
図1
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図7