【実施例】
【0024】
実施例1
γ−Glu−Glu(MU)(LISA−3)の合成
【化6】
【0025】
氷浴上、Boc−Glu(ONSu)−OtBu(657mg)、H−Glu−OtBu(350mg)およびトリエチルアミン(0.685mL)をジメチルホルムアミド(5mL)に溶解させ、室温に戻るに任せつつ、終夜攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Glu−OtBu)−OtBuを533mg得た。残渣のうちの300mgと、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU、245mg)およびトリエチルアミン(0.18mL)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、室温にて5分間攪拌した。その後、4−メチルウンベリフェロン(114mg)を加え、さらに1時間室温にて攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Glu(MU)−OtBu)−OtBuを得た。得られた残渣をジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.01%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて粗精製した。Boc−Glu(Glu(MU)−OtBu)−OtBuを含むフラクションを凍結乾燥し、230mgの白色粉末を得た。氷浴上にて、得られた白色粉末のうちの90mgをトリフルオロ酢酸(5mL)に溶解させ、2時間攪拌した。その後、減圧濃縮し、残渣を逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm,粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。凍結乾燥後、表題化合物を58mgの白色粉末として得た。
1H NMR(CF
3COOD,400MHz):δ7.91(d,J=8.8Hz,1H),7.34(s,1H),7.29(d,J=8.8Hz,1H),6.63(s,1H),4.93−4.81(m,1H),4.60−4.49(m,1H),3.07−2.90(m,4H),2.69−2.49(m,6H),2.43−2.30(m,1H);
13C NMR(CF
3COOD,100MHz):δ178.29,177.90,176.44,174.72,169.24,160.80,155.50,155.48,128.63,121.64,121.07,114.87,112.79,55.84,54.58,33.84,32.31,28.07,27.15,19.58;HRMS(FAB):C
20H
22N
2NaO
9(M+Na)
+計算値:457.1223,実測値:457.1220.
【0026】
実施例2
γ−Glu−Ser(CO−MU)(LISA−4)の合成
【化7】
【0027】
Boc−Glu−OtBu(863mg)、HCl・H−Ser−OtBu(605mg)、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、421mg)を10%水含有ジメチルホルムアミド(8mL)に溶解させ、氷浴上、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、0.571mL)を滴下した。その後、室温に戻るに任せつつ、ジメチルホルムアミド溶液を終夜攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、飽和重曹水、1N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Ser−OtBu)−OtBu(1.21g)を得た。Boc−Glu(Ser−OtBu)−OtBu(1.21g)、およびカルボニルジイミダゾール(448mg)をジメチルホルムアミド(9mL)に溶解し、アルゴンガス雰囲気下、メタンスルホン酸(0.179mL)を加え、室温で1時間攪拌した。4−メチルウンベリフェロン(621mg)とメタンスルホン酸(0.202mL)を加えた後、溶液を60℃で終夜攪拌した。その後、酢酸エチルにて溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(Ser(CO−MU)−OtBu)−OtBuを得た。得られた残渣をジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.01%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて粗精製した。Boc−Glu(Ser(CO−MU)−OtBu)−OtBuを含むフラクションを凍結乾燥し、60mgの白色粉末を得た。氷浴上にて、得られた白色粉末のうちの50mgをトリフルオロ酢酸(3mL)に溶解させ、2時間攪拌した。その後、減圧濃縮し、残渣を水に溶解し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。凍結乾燥後、表題化合物を30mgの白色粉末として得た。
1H NMR(CF
3COOD,400MHz):δ7.93−7.85(m,1H),7.40−7.27(m,2H),6.62(s,1H),5.17−5.07(m,1H),4.94−4.76(m,2H),4.59−4.48(m,1H),3.07−2.87(m,2H),2.70−2.47(m,5H);
13C NMR(CF
3COOD,100MHz):δ177.78,175.38,174.73,169.10,160.59,156.18,155.60,155.39,128.72,121.17,120.92,115.03,112.22,69.84,55.82,54.43,33.73,27.12,19.54;HRMS(FAB):C
19H
20N
2NaO
10(M+Na)
+計算値:459.1016,実測値:459.1011.
【0028】
実施例3
γ−Glu−A2pr(CO−pNP)(LISA−7)の合成
【化8】
氷浴上、Boc−Glu(ONSu)−OtBu(800mg,2.00mmol)、H−A
2pr(Cbz)−OtBu(500mg,2.10mmol)およびトリエチルアミン(1.22mL,8.78mmol)をジメチルホルムアミド(5mL)に懸濁させ、室温に戻るに任せつつ、終夜攪拌した。不溶物を濾去した後、酢酸エチルにて母液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、オイル状残渣としてBoc−Glu(A
2pr(Cbz)−OtBu)−OtBuを950mg(1.81mmol)得た。得られたBoc−Glu(A
2pr(Cbz)−OtBu)−OtBu(0.918g,1.75mmol)をMeOH(40mL)に溶解し、パラジウム炭素(10%パラジウム、180mg)を加えて、水素ガス雰囲気下、室温にて激しく1時間撹拌した。パラジウム触媒を濾去し、母液を減圧濃縮し、Boc−Glu(A
2pr−OtBu)−OtBu(633mg,1.63mmol)を得た。クロロギ酸4−ニトロフェニル(150mg,0.745mmol)とトリエチルアミン(0.312mL,2.23mmol)を、アルゴン雰囲気下、Boc−Glu(A
2pr−OtBu)−OtBu(290mg,0.745mmol)とトリメチルシリルクロリド(0.142mL,1.12mmol)のクロロホルム溶液(40mL)に加え、室温にて1時間撹拌した。その後、酢酸にて酸性とし、減圧濃縮した。得られた、Boc−Glu[A
2pr(CO−pNP)−OtBu]−OtBuをトリフルオロ酢酸(10mL)に溶解し、1時間室温にて撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、ジエチルエーテルにて沈澱化させた後、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.01%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、110mg(0.215mmol)の粉末として得られた。純度:99.4%(220nm);
1H NMR(CF
3COOD,400MHz)δ8.36−8.25(m,2H),7.40−7.25(m,2H),5.07−4.83(m,1H),4.46(t,1H,J=5.8Hz),4.13−3.82(m,2H),2.98−2.80(m,2H),2.61−2.40(m,2H);MS(ESI):(M+H)
+計算値:399.1,実測値:399.0.
【0029】
実施例4
γ−Glu−Lys(CO−MU)(LISA−10)の合成
【化9】
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC,0.516mL,2.82mmol)をBoc−Glu−OtBu(777mg,2.56mmol)、HCl・H−Lys(Cbz)−OtBu(1.00g,2.68mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,362mg,2.68mmol)のDMF(10mL)溶液に0℃にて滴下し、室温に戻るに任せつつ、終夜撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、0.3N塩酸水、飽和重曹水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、Boc−Glu(Lys(Cbz)−OtBu)−OtBuを1.47g(2.36mmol)得た。得られたBoc−Glu(Lys(Cbz)−OtBu)−OtBu(1.14g,1.83mmol)をMeOH(30mL)に溶解し、パラジウム炭素(10%パラジウム、170mg)を加えて、水素ガス雰囲気下室温にて激しく2時間撹拌した。パラジウム触媒を濾去し、母液を減圧濃縮し、Boc−Glu(Lys−OtBu)−OtBu(858mg,1.76mmol)を得た。アルゴンガス雰囲気下、炭酸ビス(トリクロロメチル)(126mg,0.424mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)を、4−メチルウンベリフェロン(225mg,1.28mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.435mL,2.43mmol)のTHF溶液(10mL)に加え、室温で20分撹拌した。その後、Boc−Glu(Lys−OtBu)−OtBu(748mg,1.53mmol)のTHF溶液(10mL)を加えて1時間撹拌した。塩化メチレンにて反応溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮した。得られた、Boc−Glu[Lys(CO−MU)−OtBu]−OtBuをトリフルオロ酢酸(20mL)に溶解し、2時間室温にて撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、蒸留水(150mL)に溶解し、クロロホルム(x3)で洗浄し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、190mg(0.321mmol)の白色粉末として得られた。純度:99.7%(220nm);
1H NMR(CF
3COOD,400MHz)δ7.88(s,1H),7.86(s,1H),7.31(s,1H),6.59(s,1H),4.73−4.60(m,1H),4.55−4.44(m,1H),3.60−3.30(m,2H),3.00−2.86(m,2H),2.61(s,3H),2.59−2.41(m,2H),2.19−1.48(m,4H);MS(ESI):(M+H)
+計算値:478.2,実測値:478.2.
【0030】
実施例5
γ−Glu−A2bu(Nγ−Et−Nγ−CO−レソルフィン)(LISA−101)の合成
【化10】
Boc−A
2bu−OtBu・HCl(970mg,3.12mmol)、2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロリド(1.25g,4.68mmol)およびK
2CO
3(2.16g,15.6mmol)を、THF−H
2O(2:1,30mL)に溶解させ、室温にて3時間撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、Boc−A
2bu(N
γ−DNs)−OtBuを1.65g得た(DNs:2,4−ジニトロベンゼンスルホニル)。得られたBoc−A
2bu(N
γ−DNs)−OtBu(1.57g)、ヨウ化エチル(374μL,4.68mmol)およびK
2CO
3(647mg,4.68mmol)をジメチルホルムアミド(10mL)中、室温にて終夜撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、Boc−A
2bu(N
γ−DNs−N
γ−Et)−OtBuを1.49g得た。得られたBoc−A
2bu(N
γ−DNs−N
γ−Et)−OtBu(1.49g)をジオキサン(5mL)に溶解させ、5.7N塩酸−ジオキサン(7mL)を加えて、0℃にて1時間撹拌した。その後、酢酸エチルおよび飽和重曹水にて反応溶液を希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、H−A
2bu(N
γ−DNs−N
γ−Et)−OtBuを1.00g得た。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(487mg,2.54mmol)を、H−A
2bu(N
γ−DNs−N
γ−Et)−OtBu(1.00g,2.31mmol)、Cbz−Glu−OtBu(1.26g,2.43mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,344mg,2.54mmol)のジメチルホルムアミド溶液(7mL)に加え、室温にて終夜撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製し、Cbz−Glu[A
2bu(N
γ−DNs−N
γ−Et)−OtBu]−OtBu(320mg,0.426mmol)を得た。純度:98.6%(220nm);
MS(ESI):(M+H)
+計算値:752.3,実測値:752.3.
【0031】
得られたCbz−Glu[A
2bu(N
γ−DNs−N
γ−Et)−OtBu]−OtBu(320mg,0.426mmol)を、チオグリコール酸(3mL)−ジメチルホルムアミド(10mL)混液に溶解し、終夜室温にて撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、飽和重曹水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製し、Cbz−Glu[A
2bu(N
γ−Et)−OtBu]−OtBu(65.0mg)を得た。純度:97.2%(220nm);
MS(ESI):(M+H)
+計算値:522.3,実測値:522.3.
【0032】
アルゴンガス雰囲気下、炭酸ビス(トリクロロメチル)(12.0mg,41.0μmol)、レソルフィン(26.1mg,122μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(22.0μL,0.126mmol)を塩化メチレン−テトラヒドロフラン(1:2)(1.5mL)中、室温にて10分撹拌し、Cbz−Glu[A
2bu(N
γ−Et)−OtBu]−OtBu(53.0mg,102μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(66.0μL,0.379mmol)のテトラヒドロフラン溶液(3mL)を加えて1時間撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮した。得られたCbz−Glu[A
2bu(N
γ−Et−N
γ−CO−レソルフィン)−OtBu]−OtBuにトリイソプロピルシラン(0.2mL)を加えた後、トリフルオロ酢酸(3.8mL)に溶解し、室温にて終夜撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、蒸留水(30mL)に溶解し、クロロホルム(x3)で洗浄し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、6.5mg(10μmol)のオレンジ色粉末として得られた。純度:99.2%(220nm);
1H NMR(DMSO−d
6(2%D
2Oおよび3%CF
3COOD含有),400MHz)δ7.84(d,J=8.8Hz,1H),7.54(d,J=10Hz,1H),7.34(dd,J=15,2.4Hz,1H),7.21(dt,J=8.8,8.8,2.4Hz,1H),6.82(dd,J=10,2.0Hz,1H),6.30(d,J=2.0Hz,1H),4.30−4.21(m,1H),3.98−3.87(m,1H),3.59−3.19(m,4H),2.42−2.24(m,2H),2.17−1.80(m,4H),1.16(dt,J=32,6.8,6.8Hz,3H);MS(ESI):(M+H)
+計算値:515.2,実測値:515.2.
【0033】
実施例6
γ−Glu−A2bu(Nγ−iPr−Nγ−CO−レソルフィン)(LISA−102)の合成
【化11】
Boc−A
2bu−OtBu・HCl(353mg,1.14mmol)をMeOH(20mL)−アセトン(10mL)に溶解し、パラジウム炭素(5%パラジウム、120mg)を加えて、水素ガス(8.5atm)雰囲気下、室温にて終夜撹拌した。その後、パラジウム触媒を濾去し、母液を減圧濃縮し、Boc−A
2bu(N
γ−iPr)−OtBu(592mg)を得た。得られたBoc−A
2bu(N
γ−iPr)−OtBu(592mg)をMeOH(1mL)に溶解し、5.7N HCl−ジオキサン(2mL)を加えて室温にて1時間撹拌した。その後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンにて中和し、N−メチル−2−ピロリドン(2mL)を加えて減圧濃縮し、H−A
2bu(N
γ−iPr)−OtBuのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。その溶液に、Boc−Glu(ONSu)−OtBu(661mg,1.65mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(60μL,0.35mmol)を加え、終夜室温にて撹拌した。その後、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製し、凍結乾燥の後に、Boc−Glu[A
2bu(N
γ−iPr)−OtBu]−OtBu(198mg,0.322mmol)を白色粉末として得た。純度:98.4%(220nm);
1H NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ8.25(d,1H,J=7.6Hz),7.13(d,1H,J=7.6Hz),4.28−4.18(m,1H),3.82−3.72(m,1H),3.29−3.21(m,1H),3.00−2.80(m,2H),2.20(t,2H,J=7.6Hz),2.07−1.64(m,4H),1.44−1.31(m,27H),1.19(d,6H,J=6.4Hz);MS(ESI):(M+H)
+計算値:502.3,実測値:502.3.
【0034】
アルゴンガス雰囲気下、炭酸ビス(トリクロロメチル)(19.0mg,64.0μmol)、レソルフィン(41.0mg,194μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(35.0μL,0.196mmol)を塩化メチレン(10mL)中、室温にて15分撹拌した。Boc−Glu[A
2bu(N
γ−iPr)−OtBu]−OtBu(100mg,162μmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(105μL,0.588mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加えて1時間撹拌した。その後、酢酸エチルにて反応溶液を希釈し、0.5N塩酸水および飽和食塩水にて洗浄した。有機層をMgSO
4にて乾燥した後、減圧濃縮した。得られた、Boc−Glu[A
2bu(N
γ−iPr−N
γ−CO−レソルフィン)−OtBu]−OtBuをトリフルオロ酢酸(2mL)に溶解し、蒸留水(0.1mL)を加えて室温にて2.5時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、蒸留水(10mL)に溶解し、クロロホルム(x3)で洗浄し、逆相HPLC[YMC−Pack ODS−A(30x250mm、粒径5μm、孔径12nm)、0.1%トリフルオロ酢酸含有水−アセトニトリル系]にて精製した。目的物は凍結乾燥の後に、6.8mg(11μmol)のオレンジ色粉末として得られた。純度:99.3%(220nm);
1H NMR(DMSO−d
6(3%D
2Oおよび3%CF
3COOD含有),400MHz)δ7.83(d,J=8.4Hz,1H),7.54(d,J=10Hz,1H),7.37−7.28(m,1H),7.21(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),6.82(dd,J=10,2.4Hz,1H),6.28(d,J=2.0Hz,1H),4.31−4.02(m,2H),3.97−3.84(m,1H),3.46−3.10(m,2H),2.38−2.24(m,2H),2.14−1.80(m,4H),1.30−1.09(m,6H);MS(ESI):(M+H)
+計算値:529.2,実測値:529.2.
【0035】
以下の実施例では、上記実施例1〜6で合成した本発明の化合物とGGCTとの反応をアッセイした。
実施例7〜12で用いたGGCT(リコンビナントGGCT)は、以下のように調製した。
GGCT(accession no.NM_024051)のオープン・リーディング・フレームをpDEST17ベクター(His−tagベクター;Thermo Fisher Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州)に挿入したプラスミドを調製し、大腸菌(BL21 DE3株)に形質転換した。コロニーをピックアップして2mLのアンピシリン100μg/mL含有LB培地で数時間培養した後、10mLのアンピシリン100μg/mL含有LB培地に植え継ぎ、一晩培養した。培養液をよく懸濁して600nmの吸光度を測定し、0.1〜0.2になるようにアンピシリン100μg/mL含有LB培地で希釈し、50mLまでかさ上げした後、2〜3時間培養した。600nmの吸光度が0.4まで上昇した後、IPTG[ナカライテスク株式会社(京都、日本)、製品番号19742−81]を0.1mMになるように添加し、さらに4〜6時間培養を続けた。培養液を遠心し、培養液上清を取り除き、大腸菌のペレットを得た後、Probond purification system(Thermo Fisher Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて精製し、大腸菌由来のリコンビナントタンパク質を調製した。
【0036】
実施例7
LISA−4を基質としたGGCT酵素反応のHPLCによる追跡アッセイ
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を追跡するために、GGCTとLISA−4を反応させ、放出される4−メチルウンベリフェロン(MU)をHPLCによって追跡した。
【0037】
酵素反応は全て室温(24℃)にて実施した。
以下の溶液1および溶液2を作製した。
溶液1:pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したLISA−4の2mM溶液
溶液2:pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したGGCT溶液(7μL、0.98mg/mL)を3.5倍希釈した溶液(計24.5μL)
次に、溶液1(131μL)を、溶液2の全量に投入し、反応を開始した(初期濃度:1.68mM)。各時点で、サンプリングした溶液(8μL)にトリフルオロ酢酸(5μL)を加え、反応を止めた。サンプルは、HPLC測定まで4℃にて保管した。
【0038】
各サンプルについて、HPLC(UV検出器)を用いてLISA−4とMUの量を解析し、MUの量をプロットした。HPLC測定は、以下の条件で行った。
装置:LC−2010CHT(株式会社島津製作所)
検出器:SPD−M10Avp(株式会社島津製作所)
カラム:YMC−Pack ODS−A(4.6x150mm、粒径5μm、孔径12nm)(株式会社ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相:A液−0.1%トリフルオロ酢酸含有水、B液−0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル
濃度勾配制御:B液10%−95%(25分)
流速:1mL/分
注入量:7μL
結果は、
図1に示す。
【0039】
図1から、LISA−4はGGCTの基質となりうる化合物であり、GGCTの酵素活性によって切断され、MUを放出することが明らかになった。
【0040】
実施例8
LISA−4とMUの蛍光スペクトル比較
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を蛍光強度で追跡できるかどうかを確認するために、LISA−4とMUの蛍光スペクトルをそれぞれ測定した。
pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)でそれぞれ0.07mMのLISA−4溶液およびMU溶液を作製し、それぞれの溶液について蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトル測定は、以下の条件で行った。
装置:F−2500(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
励起波長:371nm
測定波長:300−800nm
結果は、
図2に示す。
【0041】
図2から明らかなように、MUは強い蛍光を発した(蛍光極大450nm)。一方、同条件において、LISA−4は殆ど蛍光を発しなかった。特に461nmにおける蛍光を比較すると、MUはLISA−4と比べ約1200倍の蛍光を発した。したがって、461nm付近における蛍光は、MUに特徴的なシグナルであることが明らかになった。
【0042】
実施例9
LISA−4を基質としたGGCT酵素反応の蛍光光度計によるモニター
LISA−4からのMUの放出を蛍光光度計にてモニターした。
pH6.5トリス塩酸緩衝液(100mM)で以下の溶液を作製し、すぐに用いた。
基質:LISA−4 0.07mM
酵素:GGCT 0.196mg/mL
基質溶液(140μL)を酵素溶液(10μL)に添加し、45分間室温にて蛍光を測定した。終濃度は、LISA−4 0.065mM、GGCT 0.013mg/mL(0.62μM)とした。測定は以下の条件で行った。
装置:F−2500(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
励起波長:371nm
測定波長:466nm
結果は、
図3に示す。
【0043】
図3から明らかなように、GGCTを入れないLISA−4のみの条件では、殆ど蛍光の増加は見られなかった。したがって、GGCTの酵素反応によるLISA−4からのMUの放出を実際に蛍光光度計にてモニターできることが明らかになった。
【0044】
実施例10
LISA−101またはLISA−102を基質としたGGCT酵素反応のHPLCによる追跡アッセイ
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を追跡するために、GGCTとLISA−101またはLISA−102を反応させ、放出されるレソルフィンをHPLCによって追跡した。
【0045】
酵素反応は全て室温(24℃)にて実施した。
以下の溶液1および溶液2を作製した。
溶液1:pH8.0トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したLISA−101またはLISA−102の0.3mM溶液
溶液2:pH8.0トリス塩酸緩衝液(100mM)にて作製したGGCT溶液(4μL、0.70mg/mL)を3.5倍希釈した溶液(計14μL)
次に、溶液1(40μL)を、溶液2の全量に投入し、反応を開始した(LISA−101またはLISA−102の初期濃度:0.22mM)。各時点で、サンプリングした溶液(6μL)にトリフルオロ酢酸(6μL)を加え、反応を止めた。サンプルは、HPLC測定まで4℃にて保管した。
【0046】
各サンプルについて、HPLC(UV検出器)を用いてLISA−101またはLISA−102とレソルフィンの量を解析し、各量をプロットした。HPLC測定は、以下の条件で行った。
装置:LC−2010CHT(株式会社島津製作所)
検出器:SPD−M10Avp(株式会社島津製作所)
カラム:YMC−Pack ODS−A(4.6x150mm、粒径5μm、孔径12nm)(株式会社ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相:A液−0.1%トリフルオロ酢酸含有水、B液−0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル
濃度勾配制御:B液10%−90%(25分)
流速:1mL/分
注入量:4μL
結果は、
図4に示す。
【0047】
図4から、LISA−101およびLISA−102はGGCTの基質となりうる化合物であり、GGCTの酵素活性によって切断され、レソルフィンを放出することが明らかになった。
なお、pH6.5トリス塩酸緩衝液を用いた同様の実験系により、GGCTによる酵素反応によってLISA−7およびLISA−10からそれぞれp−ニトロフェノールおよび4−メチルウンベリフェロンが放出されることも確認できた。
【0048】
実施例11
LISA−101およびLISA−102とレソルフィンの蛍光スペクトル比較
GGCTの酵素反応による本発明の化合物の切断を蛍光強度で追跡できるかどうかを確認するために、LISA−101およびLISA−102とレソルフィンの蛍光スペクトルをそれぞれ測定した。
5%DMSOを含むpH8.0トリス塩酸緩衝液(100mM)でそれぞれ1μMのLISA−101およびLISA−102溶液、ならびにレソルフィン溶液を作製し、それぞれの溶液について蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトル測定は、以下の条件で行った。
装置:F−2500(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
励起波長:530nm
測定波長:400−800nm
結果は、
図5に示す。
【0049】
図5から明らかなように、レソルフィンは強い蛍光を発した(蛍光極大587nm)。一方、同条件において、LISA−101およびLISA−102は殆ど蛍光を発しなかった。587nmにおける蛍光を比較すると、レソルフィンはLISA−101と比べ約110倍、LISA−102と比べ約520倍の蛍光を発した。したがって、587nm付近における蛍光は、レソルフィンに特徴的なシグナルであることが明らかになった。
【0050】
実施例12
LISA−101を基質としたGGCT酵素反応の蛍光プレートリーダーによるモニター(リコンビナントGGCT使用)
LISA−101からのレソルフィンの放出を蛍光プレートリーダーにてモニターした。
以下の溶液を作製した。
A液:50μg/mL(100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0)のリコンビナントGGCT
B液:4mMのLISA−101(100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0)を100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0で50μMに希釈したもの
A液(20μL、終濃度:5μg/mL)、B液(20μL、終濃度:5μM)、および100mMトリス塩酸緩衝液pH8.0(160μL)を、96ウェルブラックプレートのウェル中で混合し、37℃に設定したプレートリーダーにてインキュベートし、5分ごとに励起波長530nm、蛍光波長590nmで蛍光を測定した。測定は以下の装置を用いて行った。
使用機器:Synergy HT(BioTek Instruments社、ウィヌースキ、バーモント州)
使用フィルター:励起530nm/25nm、蛍光590nm/35nm
結果は、
図6に示す。
【0051】
図6から明らかなように、GGCTを入れないLISA−101のみの条件では、殆ど蛍光の増加は見られなかった。したがって、GGCTの酵素反応によるLISA−101からのレソルフィンの放出を実際に蛍光プレートリーダーにてモニターできることが明らかになった。
【0052】
実施例13
LISA−101を基質としたGGCT酵素反応の蛍光プレートリーダーによるモニター(細胞破砕物中のGGCT使用)
リコンビナントGGCTの代わりにGGCT強制発現細胞の破砕物中のGGCTを用いて、LISA−101からのレソルフィンの放出を蛍光プレートリーダーにてモニターした。
破砕物中のGGCTは、以下のようにして調製した。
NIH−3T3細胞にレトロウィルスベクターを用いてGGCTを強制発現させたディッシュ上の細胞(500,000個)をリン酸緩衝生理食塩水にて洗浄し、0.5%のプロテアーゼインヒビターカクテル[ナカライテスク株式会社(京都、日本)、商品コード25955−11]と0.1%のトリトンX−100を含有する100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)100μL中、スクレイパーで剥がした。その後、ソニケーションで細胞を破砕し、細胞破砕液(A)とした。
LISA−101を100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、50μMのLISA−101ストックソリューション(B)とした。
得られた細胞破砕液(A)20μL、LISA−101ストックソリューション(B)20μL、および100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)160μLを混合し、37℃に設定したプレートリーダーにてインキュベートした。5分ごとに、励起波長530nm、蛍光波長590nmで蛍光を測定した。(終濃度LISA−101:5μM、総溶液量:200μL)。測定は実施例12と同様の装置を用いて行った。
結果は、
図7に示す。
【0053】
図7から明らかなように、細胞破砕物中のGGCTを用いた場合であっても、リコンビナントGGCTを用いた場合と同様に、LISA−101からのレソルフィンの放出を蛍光プレートリーダーにてモニターできることが分かった。したがって、LISA−101は、生細胞を用いた実験系にも適用可能な安定性を有していることが示唆された。