(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記繊維強化プラスチック板をハニカムコアの上面及び下面の少なくともいずれかに貼合する工程は、前記繊維強化プラスチック板と前記ハニカムコアの間に接着用熱可塑性スーパーエンプラ樹脂を含むシートを配して積層加圧し、前記接着用熱可塑性スーパーエンプラ繊維が溶融する温度に加熱し、その後冷却する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカムサンドイッチ構造体の製造方法。
  前記接着用熱可塑性スーパーエンプラ樹脂を含むシートの軟化温度が、前記繊維強化プラスチック板に含まれる前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維の軟化温度よりも低いことを特徴とする請求項5に記載のハニカムサンドイッチ構造体の製造方法。
  前記接着用熱可塑性スーパーエンプラ樹脂を含むシートは、繊維強化プラスチック板に含まれる前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維と相溶する成分を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のハニカムサンドイッチ構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
 
【0013】
(ハニカムサンドイッチ構造体)
  本発明は、ハニカムコアと、ハニカムコアの上面及び下面の少なくともいずれかに繊維強化プラスチック板を有するハニカムサンドイッチ構造体に関する。ここで、繊維強化プラスチック板は、強化繊維シートと不織布シートを少なくとも1枚ずつ貼合した繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形したプラスチック板であり、不織布シートは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー成分を含む。さらに、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数は24以上である。本発明では、ハニカムサンドイッチ構造体の繊維強化プラスチック板を上記のような構成とすることにより、軽量であり、かつ高強度のハニカムサンドイッチ構造体を得ることに成功した。さらに、本発明のハニカムサンドイッチ構造体は、難燃性が高く、発煙性が低いという利点を有している。
 
【0014】
  本発明では、繊維強化プラスチック板は、ハニカムコアの上面及び下面の両面に設けられていることが好ましい。
図1には、ハニカムコア2の上面及び下面の両面に繊維強化プラスチック板4が設けられたハニカムサンドイッチ構造体10が示されている。また、
図2には、本発明のハニカムコア2と繊維強化プラスチック板4を貼合してハニカムサンドイッチ構造体10を形成する様子が示されている。
図1及び
図2に示されているように、本発明のハニカムサンドイッチ構造体は、ハニカムコアの上面及び下面の両面に繊維強化プラスチック板を有するものであることが好ましい。
 
【0015】
  本発明のハニカムサンドイッチ構造体は、ASTM−662に準拠した方法で測定した有炎試験における20分後の発煙濃度が、55DS以下であることが好ましく、43DS以下であることが更に好ましく、37DS以下であることが特に好ましい。このように非常に低い発煙性を有するハニカムサンドイッチ構造体を得ることができる。
 
【0016】
  繊維強化プラスチック板は、貼合手段を介してハニカムコアに積層されることが好ましい。貼合手段としては、公知の貼合手段を適宜採用することができる。例えば、繊維強化プラスチック板の上に接着層を設けてハニカムコアと繊維強化プラスチック板を接着してもよく、釘の打ち付けや、ネジによる取り付けにより貼合を行なってもよい。中でも、本発明では、接着層を設けて接着を行うことが好ましい。
 
【0017】
  本発明の接着層に用いられる接着剤としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、クロロプレン系樹脂(ハロゲン化ゴム)、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ゼラチン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、珪素系樹脂、アルキッド系樹脂、アリル系樹脂、フラン系樹脂あるいはこれらの樹脂を構成するモノマーからなる各種共重合体等が挙げられる。
 
【0018】
  中でも、ポリエステル系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、アタクチックポリプロピレン系樹脂、クロロプレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−イソブチルアクリレート共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−無水フタール酸共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ナイロン12、テレフタル酸−1,3−ブタンジオール系共重合体、ウレタン系樹脂、光硬化性アクリル系樹脂等が好ましく用いられる。かかる熱可塑性樹脂からなる熱溶融性接着剤は単独あるいは2種以上を混合して使用することも勿論可能であり、また硬化剤を併用することも可能である。
 
【0019】
  また、接着層には、例えば、熱可塑性スーパーエンプラを含む層(シート)を用いることができる。熱可塑性スーパーエンプラを含むシートを繊維強化プラスチック板とハニカムコアの間に設け、加圧・加熱処理を行うことで、繊維強化プラスチック板とハニカムコアを貼合することができる。
  接着層として用いる熱可塑性スーパーエンプラを含むシートは、不織布であってもよく、後述する繊維強化プラスチック板に用いる不織布シートと同一ものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
 
【0020】
  本発明のハニカムサンドイッチ構造体において、ハニカムコアは、その側面が露出しないように構成されていてもよい。例えば、
図3に示すように、ハニカムコア2は、繊維強化プラスチック板4に覆われるように構成させていてもよい。なお、
図3は、ハニカムコア2の様子が観察できるように、ハニカムサンドイッチ構造体10を切断し、その様子を斜視図で表したものである。
図3に示されたハニカムサンドイッチ構造体は、実際には、ハニカムコア2の全ての側面は外部から視認できない構造を有している。
 
【0021】
  また、
図3に示されるように、ハニカムサンドイッチ構造体10は、繊維強化プラスチック板4同士の貼合により形成されていてもよい。この場合、繊維強化プラスチック板4同士の貼合手段は特に制限させるものではないが、
図3に示されるように、ボルトとナットによる嵌合により、貼合されていてもよい。このように、繊維強化プラスチック板4同士を貼合することにより、ハニカムサンドイッチ構造体をより強固なものとすることが可能となる。
 
【0022】
  なお、
図4(a)には、
図3に示したハニカムサンドイッチ構造体10の断面図を示している。2枚の繊維強化プラスチック板4は、ボルト6とナット8により嵌合されており、このような貼合手段により、ハニカムサンドイッチ構造体10が形成されていてもよい。
  また、
図4(b)に示すように、複数のハニカムコア2を連結して、ハニカムサンドイッチ構造体を形成してもよい。
図4(b)では、2つのハニカムコア2の間では、繊維強化プラスチック板4がボルト6とナット8により嵌合されており、2つのハニカムコア2が繊維強化プラスチック板4の間で接触したり、移動したりしないように固定されている。
 
【0023】
  図5(a)には、中空補強部材9を有するハニカムコア2と繊維強化プラスチック板4を貼合してハニカムサンドイッチ構造体10を形成する様子が示されている。中空補強部材9は、ハニカムコア2に複数個設けられていてもよく、ハニカムコアの構造を強固にする働きをする。これにより、ハニカムサンドイッチ構造体に圧力等がかけられた場合であっても、ハニカムサンドイッチ構造体が破壊したり、潰れたりすることを防ぐことができる。
  
図5(b)の右側図面には、ハニカムコアのセル2(a)を拡大し、ハニカムコアのセル骨格を点線で表した図を示している。このように、中空補強部材9は、ハニカムコアの1つのセル2(a)に1つずつ設けられることが好ましい。
図5(b)に示されるように、ハニカムコアのセルと同様の高さを有する中空補強部材9を設けることにより、より効果的に、ハニカムサンドイッチ構造体の強度を高めることができる。
 
【0024】
  中空補強部材9は、ハニカムコア2に複数個設けられることが好ましく、中でも、ハニカムサンドイッチ構造体10の四隅に設けられることが好ましい。
図5(a)に示されるように、四隅に設けられた中空補強部材9には、ボルトを貫通させることができ、これにより、接着層等を設けずにハニカムコア2と繊維強化プラスチック板4を貼合することも可能となる。
 
【0025】
(繊維強化プラスチック板)
  本発明の繊維強化プラスチック板は、強化繊維シートと不織布シートを少なくとも1枚ずつ貼合した繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形して形成したプラスチック板である。強化繊維シートと不織布シートは1枚ずつ貼合され加熱加圧成形されてもよいし、所望の厚さとなるように積層して加熱加圧成形されてもよい。
 
【0026】
  加熱加圧工程は、熱可塑性樹脂の少なくとも一部が溶融する温度まで加熱しつつ加圧を行う工程である。加熱加圧工程では、熱プレス処理を施すことが好ましい。
  加熱加圧工程では、強化繊維シートと不織布シートを少なくとも1枚ずつ貼合した繊維強化プラスチック成形体用シートの表面温度がTg〜Tg+100℃となるように加熱することが好ましい。ここで、Tgは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す。なお、加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維が流動する温度であって強化繊維は溶融しない温度帯であることが好ましい。
 
【0027】
(繊維強化プラスチック成形体用シート)
  繊維強化プラスチック成形体用シートは、強化繊維シートと不織布シートを少なくとも1枚ずつ貼合したものである。強化繊維シートと不織布シートは1枚ずつ貼合してもよいが、所望の厚さとなるように複数枚を貼合してもよい。強化繊維シートと不織布シートを各々複数枚ずつ貼合する方法としては、強化繊維シートと不織布シートを交互に重ね合わせ、加熱加圧ロール等によって、不織布シート中の熱可塑性樹脂繊維が僅かに溶融する温度・圧力で圧着する方法が挙げられる。なお、貼合方法は、この方法に限定されるものではない。
 
【0028】
  強化繊維シートとの不織布シートを貼合して複層の繊維強化プラスチック成形体用シートとする場合、積層の順序や枚数は、特に限定されるものではないが、強化繊維シートの両面に不織布シートが貼合されていることが好ましい。強化繊維シートは繊維同士の接着力がないが、不織布シートは貼合時の加熱処理条件下におけるスーパーエンプラ繊維の部分溶融によって強化繊維シートに対する接着性を発揮する。このため、強化繊維シートの表裏両面に不織布シートを配することによって両表面に繊維のほつれ等が発生しない、ハンドリング性が良好な繊維強化プラスチック成形体用シートを形成することができる。
  強化繊維シートを複数枚重ね合わせ、その上下面に不織布シートを配することもできるが、強化繊維シートの層は薄いほうが加熱加圧成形の際に熱可塑性樹脂を短時間で強化繊維シート内に溶融浸透させることができる。このため、強化繊維シートを複数枚積層する場合は、不織布シートと交互に積層することが好ましい。なお、強化繊維シートと不織布シートの積層枚数は特に限定されない。
 
【0029】
  本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートにおいて、強化繊維シートと不織布シートの質量比は1:0.2〜1:10であることが好ましく、1:0.5〜1:5であることがより好ましく、1:0.7〜1:3であることがさらに好ましい。強化繊維シートと不織布シートの質量比を上記範囲内とすることにより、軽量であり、かつ高強度のハニカムサンドイッチ構造体を得ることができる。
 
【0030】
  繊維強化プラスチック成形体用シートのJAPAN  TAPPI  紙パルプ試験方法No.5−2に規定される透気度は、250秒以下であることが好ましく、230秒以下であることがより好ましく、200秒以下であることがさらに好ましい。この数値は、数字が小さいほど空気が通りやすい(通気性が良い)ことを表す。
  本発明で用いる繊維強化プラスチック板は、不織布シートと強化繊維シートを貼合した繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧工程で熱プレスすることにより成形することができる。本発明では、繊維強化プラスチック成形体用シートの透気度を上記範囲内とすることにより、加熱加圧工程における成形速度を高めることができ、生産効率を高めることができる。
 
【0031】
  上記の方法で繊維強化プラスチック成形体用シートを製造する場合、強化繊維シートと不織布シートを熱プレスによって接着することができる。この場合には、不織布シートに含まれる熱可塑性スーパーエンプラ繊維よりも融点の低い熱可塑性樹脂繊維をバインダーとして使用することが好ましい。バインダー成分を含む場合、熱プレス時に、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の一部を軟化・溶融させて接着する必要がないため、通気性に優れた繊維強化プラスチック成形体用シートを得ることができる。
 
【0032】
(強化繊維シート)
  本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートに使用される強化繊維シートとしては、一般的な繊維強化プラスチックに使用される連続繊維を一方向に引き揃えたシート、或いはクロス状に織った織布を使用することができる。強化繊維シートの繊維の配向方向に沿って、繊維の強度は強くなる傾向があるため、強化繊維の配向方向を調節することによって、繊維強化プラスチック板の強度を調節することができる。なお、クロス状の繊維を織った強化繊維シートでは、クロス模様の縦横方向に強度を高めることができる。
 
【0033】
 繊維強化プラスチック板を構成する強化繊維シートは、無機繊維を含む。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維や炭素繊維等を挙げることができる。なお、これらの無機繊維は、1種を使用してもよく、複数種を使用してもよい。さらに、本発明では、強化繊維シートは、このような無機繊維の他に、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維等の耐熱性に優れた有機繊維を含有していてもよい。
  強化繊維シートに使用する強化繊維として、炭素繊維等の無機繊維を使用した場合、不織布シートに含まれる熱可塑性スーパーエンプラ繊維の溶融温度で加熱加圧処理することにより曲げ強度・引張強度・弾性率が高い繊維強化プラスチック板を得ることができる。
  強化繊維シートに使用する強化繊維として、アラミド繊維等の高耐熱性・高強度の有機繊維を使用した場合は、高度な平滑性の要求される精密な研磨用の機器に適する繊維強化プラスチック板を得ることができる。アラミド等の有機繊維を強化繊維として含有する繊維強化プラスチック成形体用シートから形成される繊維強化プラスチック板は、一般的に強化繊維として無機繊維を使用した繊維強化プラスチック成形体用シートから形成される繊維強化プラスチック体よりも耐摩耗性に優れる。また擦過等によって繊維強化プラスチック体の一部が削り取られたとしても、その削り粕が無機繊維よりも柔らかいので、被研磨物を傷つけるおそれが少ない。
 
【0034】
(不織布シート)
  本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートに使用される不織布シートは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー成分を含有する不織布よりなる。熱可塑性スーパーエンプラ繊維は熱成形により溶融してマトリックス樹脂となる。
 
【0035】
<熱可塑性スーパーエンプラ繊維>
  熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、スーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)と称される熱可塑性樹脂の繊維であり、耐熱性で難燃性の熱可塑性樹脂を繊維化したものである。熱可塑性スーパーエンプラ繊維としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等を例示することができる。ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂は耐薬品性が高く、耐熱性が高いため、耐薬品性と高温時の強度に優れる繊維強化プラスチックを得ることができる。ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂を用いた場合は、他のスーパーエンプラよりも耐薬品性と高温時の強度に特に優れる繊維強化プラスチックを得ることができる。また、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂は炭素繊維やガラス繊維との密着性が優れ、また限界酸素指数が樹脂ブロックの状態で47と非常に高いため、強度と難燃性に優れる繊維強化プラスチックを得ることができる。
 
【0036】
  本発明では、熱可塑性スーパーエンプラ繊維として、ポリエーテルイミド(PEI)繊維又はポリカーボネート(PC)繊維から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが好ましい。中でも、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂を繊維化したポリエーテルイミド(PEI)繊維を用いることが特に好ましい。ポリエーテルイミド(PEI)樹脂は、溶融し成形加工された状態での限界酸素指数が40以上、またASTM  E−662に記載の方法で測定した20分燃焼時の発煙量が30ds前後と、非常に発煙量が少ないため好ましく用いられる。
  尚、通常スーパーエンプラ繊維には分類されないが、ポリカーボネート(PC)も難燃性に優れているため、本発明には含むものとする。本発明の熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、2種類以上用いることもできる。また、本発明の効果を損ねない範囲で、また、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エポキシ樹脂等の熱可塑性スーパーエンプラ繊維以外も添加することができる。
 
【0037】
  熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、繊維状態において限界酸素指数が24以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数を上記範囲とすることにより、難燃性に優れた不織布シートを得ることができる。なお、本発明において、「限界酸素指数」とは、燃焼を続けるのに必要な酸素濃度を表し、JIS  K7201に記載された方法で測定した数値をいう。すなわち、限界酸素指数が20以下は、通常の空気中で燃焼することを示す数値である。尚、上記ポリカーボネートの限界酸素指数は24〜26である。
 
【0038】
  熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度は、140℃以上であるものが好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維には、強化繊維プラスチック板を形成する際に300℃から400℃というような温度条件下で十分に流動的であることが求められる。一方で、繊維強化プラスチック成形体用シートの製造工程で強化繊維シートと不織布シートを貼合する際には、加熱処理条件下で部分的に溶融するが十分に繊維状態は維持されることが求められる。このような条件に合致するために、熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度は、140℃以上であるものが好ましい。なお、PPS樹脂繊維のようにガラス転移温度が140℃未満のスーパーエンプラ繊維であっても、樹脂の荷重たわみ温度が190℃以上となるスーパーエンプラを繊維化したものであれば使用可能である。このような熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、加熱・加圧により溶融して限界酸素指数が30以上という非常に高い難燃性を有する樹脂ブロックを形成する。
 
【0039】
  不織布シートに含まれる熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は40μm以下であることが好ましい。さらに、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は上述した無機繊維の繊維径の5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック板の強度をより高めることができる。
 
【0040】
  熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、32μm以下であることがさらに好ましい。中でも、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は、1〜30μmであることが好ましい。
 
【0041】
  本発明で用いられる繊維強化プラスチック成形体用シートでは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維が繊維形態をしていることによりシート中に空隙が存在している。
  本発明では、熱可塑性スーパーエンプラ繊維が加熱加圧成形前には、繊維形態を維持しているため、繊維強化プラスチック板を形成する前は、シート自体がしなやかでドレープ性がある。このため、繊維強化プラスチック成形体用シートを巻き取りの形態で保管・輸送することが可能であり、ハンドリング性に優れるという特徴を有する。
 
【0042】
  また、本発明で用いられる繊維強化プラスチック成形体用シートは、繊維強化プラスチック板に加工する際の加熱加圧成形時間が短時間ですみ、生産性に優れている。繊維強化プラスチック成形体用シートを短時間で加熱加圧成形するためには、使用される熱可塑性スーパーエンプラ繊維が高温下で速やかに溶融することが必要であり、そのためには、スーパーエンプラ繊維の繊維径が細いほうが好ましい。繊維径が細いほど繊維同士の接触点数が増加するため、繊維同士の接触面積が増加し、熱伝導が良好となること、及び繊維の熱容量が小さくなるため、溶融させるために必要な熱量が少なくなるためである。
 
【0043】
  熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維長は特に限定されないが、湿式、若しくは乾式不織布法で製造するため、好ましくは3mm〜30mm程度であることが好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維の分散性を良好にすることができ、また、繊維強化プラスチック成形体用シート等の破断等を防ぐことができる。なお、繊維径及び繊維長は単一であってもよく、また異なる繊維径、繊維長のものをブレンドして使用してもよい。
 
【0044】
<バインダー成分>
  本発明において、不織布シートに使用するバインダーとしては、一般的に不織布製造に使用されるアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、PVA樹脂等が使用できる。
 
【0045】
  バインダー成分は、加熱加圧成形後にマトリックスとなる熱可塑性スーパーエンプラ繊維が加熱加圧成形で溶融する際に、その樹脂と相溶する樹脂成分であることが特に好ましい。このような樹脂成分をバインダーとした場合、加熱加圧成形後、マトリックス樹脂とバインダー樹脂の間に界面が存在せず一体化するため高強度となる。さらにバインダー成分に起因するマトリックス樹脂のガラス転移温度の低下が少ないという特徴を持つ。
 
【0046】
  本発明では、バインダー成分は、繊維強化プラスチック板の全質量に対して0.1〜10質量%となるように含有されることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.4〜9質量%であることがさらに好ましく、0.5〜8質量%であることが特に好ましい。バインダー成分の含有率を上記範囲内とすることにより、製造工程中の強度を高めることができ、ハンドリング性を向上させることができる。また、バインダー成分の含有率を上記範囲とすることにより、難燃性・低発煙性を損なうこともない。なお、バインダー成分の量は多くなると表面強度・層間強度共に強くなるが、逆に加熱成形時の臭気の問題が発生しやすくなる。しかし、上記の範囲においては臭気の問題はほとんど発生せず、また繰り返しの断裁工程を経ても層間剥離などを発生しない繊維強化プラスチック成形体用シートを得ることができる。
 
【0047】
  バインダー成分は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート及びエチルアクリレートの少なくとも1種のモノマーを含有するモノマー混合物を重合させることによって得られる共重合体を含むことが好ましい。すなわち、バインダー成分は、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位、エチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有する。中でも、バインダー成分は、メチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位及びエチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有することが好ましい。
  なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を含むことを意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
 
【0048】
  バインダー成分は、熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度よりも低い融点を有するバインダー繊維を含有してもよい。バインダー繊維は、PEI繊維等と混合して水中に分散し、湿式抄紙法で抄造した場合、粒状バインダーのように抄紙ワイヤーの目から抜けて歩留が低下したり、ワイヤー側に偏在したりすることがないため好ましく用いられる。また、このようなバインダー繊維を使用することにより、層間強度を向上させることができる。
 
【0049】
  バインダー繊維としては、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂を変性することで融点を低下させたものであれば特に限定されないが、変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。変性ポリエチレンテレフタレートとしては、共重合ポリエチレンテレフタレート(CoPET)が好ましく、例えば、ウレタン変性共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエステル樹脂はポリエーテルイミド繊維と加熱溶融時に相溶するため、冷却後もポリエーテルイミド樹脂の難燃性・低発煙性といった優れた点を損ないにくいため、好ましく用いられる。
  共重合ポリエチレンテレフタレートは、融点が140℃以下のものが好ましく、120℃以下ものがより好ましい。また、特公平1−30926号公報に記載のような変性ポリエステル樹脂を使用してもよい。変性ポリエステル樹脂の具体例として、特に、ユニチカ製商品名「メルティ4000」(繊維全てが共重合ポリエチレンテレフタレートである繊維)が好ましく挙げられる。また、上記芯鞘構造のバインダー繊維としては、ユニチカ社製商品名「メルティ4080」や、クラレ社製商品名「N−720」等が好適に使用できる。
 
【0050】
  メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位、エチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体は繊維強化プラスチック板の全質量に対して0.1〜4質量%となるように含有され、バインダー繊維は繊維強化プラスチック板の全質量に対して1.5〜6質量%となるように含有されることが好ましい。共重合体とバインダー繊維の含有率を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック板の表面強度及び層間強度を高めることができる。なお、上記の範囲においては、共重合体を成分とするバインダー(液状バインダー)の配合量は、ポリエステル樹脂又は変性ポリエステル樹脂よりも少ないほうが、臭気の関係から好ましい結果が得られる。ポリエステル系バインダーはマトリックス樹脂と相溶するため、比較的添加量が多くとも臭気を発生しにくく、また、液状バインダーは繊維交点に集中して偏在しやすいため、かかる結果が得られているものと推定している。
 
【0051】
  バインダー成分として好ましい組合せとしては、アクリル系のエマルジョンと低融点熱可塑性樹脂繊維としてのチョップ状のPET繊維の組合せである。具体的には、繊維強化プラスチック板の全質量に対してアクリル系バインダー0.3〜4質量%、PET繊維1.5〜6質量%である。好ましくはアクリル系バインダー1〜3質量%、PET繊維2〜6質量%、更に好ましくはアクリル系バインダー1.5〜2.5質量%、PET繊維3〜5質量%である。
 
【0052】
  不織布シートは表層領域と表層領域に挟まれた中間領域を有することとした場合、表層領域に含有されているバインダー成分は、中間領域に含有されているバインダー成分より多いことが好ましい。特にバインダー成分のうち、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位、エチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体が表層領域に多く含有されていることが好ましい。
  ここで、不織布シートの表層領域は、不織布シートを厚さ方向(Z軸方向)に略3分割した際に、外側に位置する2つの領域である。なお、中間領域はこれらの2つの領域に挟まれた間の領域をいう。表層領域に含有されているバインダー成分は、中間領域に含有されているバインダー成分より多いことが好ましく、表層領域に含有されているバインダー成分は、中間領域に含有されているバインダー成分の1.1〜1.5倍であることがより好ましい。
 
【0053】
  このように、バインダー成分を表層領域に集中させることで、高温の金型やプレス板により加熱加圧成形される際に、バインダー成分が効果的に加熱されるため、バインダー成分が速やかに熱分解・揮発する。これにより熱成形品に残留するバインダー成分がごく僅かな量に抑えられることとなる。このため、本発明の繊維強化プラスチック板は、高い難燃性を有しており、発煙性が抑えられている。
 
【0054】
  メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、及びメチルアクリレートの少なくとも1種のモノマーを含有するモノマー混合物を重合させることによって得られる共重合体を成分とする液状バインダーは不織布シートの表層領域に集中して存在することが好ましい。また、これらの液状バインダーは、両表層領域の繊維成分同士の交点に水掻き膜状に局在することが好ましい。このように局在することにより、バインダー成分が少量であっても使用工程においても両表層領域の繊維の脱落を少なくすることができる。また、変色が少なく好適であり、不織布シートの抄造直後に平板にカットして積層し、プレスするような工程に好適に使用できる。
 
【0055】
  なお、バインダー成分のうち、共重合体を含む成分は、表層領域に集中させることが好ましいが、バインダー繊維は、繊維強化プラスチック成形体用シートの中間領域に含有させることもできる。これにより、繊維強化プラスチック成形体用シートの層間強度が高まり、加熱成形加工時のハンドリング性が更に改善される。
 
【0056】
  バインダー繊維は、PEI繊維等と共に空気中に分散させてネットに捕捉してウエブを形成する方法(乾式不織布法)で、不織布シートに含有させることができる。また、バインダー繊維は、溶媒中に分散させ、その後溶媒を除去してウエブを形成する方法(湿式不織布法)等の方法で不織布シートに含有させることもできる。
 
【0057】
  不織布シートの表層にバインダーを相対的に多く存在させる方法としては、下記方法が挙げられる。例えば、バインダー成分を溶媒に溶解した液状物、若しくはバインダー成分の乳化物(エマルジョン)を不織布シートに内添、塗布又は含浸させ、加熱乾燥するという製造方法が挙げられる。中でも、湿式不織布法又は乾式不織布法によってウエブを形成した後、バインダー成分を溶媒に溶解した液状物、若しくはバインダー成分の乳化物(エマルジョン)を、ディッピング、若しくはスプレー法等で付与し、加熱乾燥するという製造方法が好ましく用いられる。この方法によれば、加熱乾燥する際に、ウエブ内部の溶媒が両面の表層に移動し、蒸発するため、この溶媒の移動に伴ってバインダーも表層に相対的に多く集中する。
 
【0058】
  上記のように、不織布シートの表層にバインダー成分を偏在させるためには、バインダー成分の溶液、若しくはエマルジョン等、液状のバインダー成分を使用し、加熱乾燥させる製造方法を採用することができる。この場合、溶媒の移動が多いほうがバインダー成分の偏在が強まるため好ましい。
  このような方法を採用する場合、湿式不織布法でウエットウエブを形成後、バインダーの水溶液、若しくはエマルジョンをウエブにディッピング若しくはスプレー等の方法で付与し、乾燥する方法が好ましい。この場合、ウエブ水分はバインダーの水溶液、若しくはエマルジョンのバインダー液濃度や、湿式不織布製造工程におけるウエットサクション、ドライサクションによる水分の吸引力の調整で行うことが可能である。
 
【0059】
  バインダー成分を偏在させるために好ましいウエブ内の水分量は50%以上であるが、ある程度以上に水分が多いと乾燥負荷が大きくなり、製造コストがかさむため、両者を勘案して適宜ウエブ内水分量を調整することが好ましい。
 
【0060】
  上記の対策で不十分な場合、バインダー成分の添加量を減少させる方法として、不織布シートを湿式抄紙し、強度縦横比を大きくすることも好ましい。具体的には、ジェットワイヤー比の調整によってマシンの抄造方向(MD方向)とその直角方向(CD方向)の強度比(強度縦横比)を大きくすることができる。一般に、強度縦横比を大きくすると、繊維が一方向に並ぶ傾向となり、不織布の密度が高くなる傾向にある。その結果、繊維間の交点が増加するため、少量のバインダーでも十分な表面強度が得られる。このような効果が明確に得られるのは、通常、強度縦横比が1.5以上、より明確に得られるのは3.0以上、更に明確に得られるのは5.0以上である。
  一方、あまりに強度縦横比が強いと横強度が弱くなり、ハンドリング性に劣る。この点を考慮すると、好ましい強度縦横比は15以下、より好ましくは10以下である。
 
【0061】
  バインダー成分は、加熱溶融した際にPEI繊維と相溶するバインダー成分であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、このような成分を選定した場合、加熱加圧成形後にPEI樹脂の難燃性・低発煙性がほとんど損なわれないことが判明している。
 
【0062】
(繊維形状)
  本発明では、熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー繊維は、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。このように、熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー繊維のチョップドストランドを含有する不織布シートとする場合、不織布シート中で熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー繊維のチョップドストランドが均一に混合している状態であることが望ましい。
 
【0063】
  上記のような場合、不織布シートは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維及びバインダー繊維のチョップドストランドを、空気中に分散させてネットに捕捉してウエブを形成する方法(乾式不織布法)で製造される。また、熱可塑性スーパーエンプラ繊維及びバインダー繊維のチョップドストランドを溶媒中に分散させ、その後溶媒を除去してウエブを形成する方法(湿式不織布法)等の方法で製造されてもよい。
 
【0064】
(ハニカムコア)
  ハニカムコアは六角形セルの集合体をいう。ハニカムコアはその大部分が空気を含む構造となっているため、非常に軽量である。さらにハニカムコアは、その構造から軽量でありながら高い剛性を有し、主に航空機や車両等の構造材として用いられている。また、ハニカムパネルは剛性が高いことから平面度も高く維持することができる。ハニカムコアの素材としては、アルミニウムのほか、CFRP(炭素繊維強化プラスチック板)やアラミド繊維を素材としたAFRP、紙等を挙げることができる。
 
【0065】
  なお、ハニカムコアは、空間(空気)が95〜99%、コア材(六角柱を構成する材料)が1〜5%の容積比率であることが好ましい。また、筒状ハニカム構造体のハニカムの形状としては、6角形の他に、3〜12の角形、円、星型等、またはそれらの組合わせ等、補強が可能であれば特に限定されるものではない。また、各ハニカム形状の大きさは特に限定されないが、2〜30mm四方の方形状に含まれる大きさ(セルサイズ)であることが好ましい。
 
【0066】
(ハニカムサンドイッチ構造体の製造方法)
  本発明のハニカムサンドイッチ構造体の製造工程は、強化繊維シートと不織布シートを少なくとも1枚ずつ貼合した繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形し繊維強化プラスチック板を形成する工程を含む。さらに、ハニカムサンドイッチ構造体の製造工程は、繊維強化プラスチック板をハニカムコアの上面及び下面の少なくともいずれかにを貼合する工程を含む。なお、不織布シートは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー成分を含み、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数は25以上である。
 
【0067】
  繊維強化プラスチック板を形成する工程では、強化繊維シートと不織布シートを少なくとも1枚ずつ貼合した繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧する工程を含む。加熱加圧工程は、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の少なくとも一部が溶融する温度まで加熱しつつ加圧を行う工程である。具体的には、繊維強化プラスチック成形体用シートを150〜600℃で加熱し、加圧することが好ましい。なお、加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維が流動する温度であって強化繊維は溶融しない温度帯であることが好ましい。
 
【0068】
  本発明の繊維強化プラスチック板を形成する工程では、繊維強化プラスチック成形体用不織布シートを、熱可塑性スーパーエンプラ繊維よりなるマトリックス樹脂繊維の少なくとも一部が溶融する条件下(熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度以上の温度)で加圧加熱成形することが好ましい。例えば、熱プレスによる成形加工の条件としては、使用される熱可塑性樹脂によって異なるが、保持温度として150〜600℃、好ましくは200〜500℃、圧力としては5〜20MPaが好ましい。また、上記所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は3〜20℃/分が好ましく、また、所望の熱プレス温度での保持時間は1〜30分、その後、成形体を取り出す温度(200℃以下)までは圧力を維持しながら、3〜20℃/分の冷却速度とするのが好ましい。更に、生産効率はやや落ちるものの、熱プレスの保持温度からスーパーエンプラ繊維のガラス転移温度までは空冷でゆっくりと0.1〜3℃/分で冷却することも、強度向上の観点からは好ましい。また、急速加熱、急速冷却(ヒートアンドクール)成形を用いて熱プレス成形することも可能であり、その場合の昇温、冷却速度はそれぞれ30〜500℃/分である。更に、赤外線ヒーターによる場合は、温度として150〜600℃、好ましくは200〜500℃で1〜30分間加熱し、その後30〜150MPaの圧力で成形することができる。
 
【0069】
  本発明では、繊維強化プラスチック板を形成する工程の前に、さらに不織布シートを形成する工程を含むことが好ましい。不織布シートを形成する工程は、乾式不織布法又は湿式不織布法のいずれかの方法で不織布シートを形成する工程と、バインダー成分を含む溶液又はバインダー成分を含むエマルジョンを不織布シートに塗布又は含浸させる工程を含む。さらに、塗布又は含浸後には、加熱乾燥させる工程を含む。このような工程を設けることにより、不織布シートの表面繊維の飛散、毛羽立ちや脱落を抑制することができ、ハンドリング性に優れた成形加工シートを得ることができる。
 
【0070】
  繊維強化プラスチック板と、ハニカムコアの接着方法は特に限定はされないが、接着剤を用いて接着する場合は繊維強化プラスチック板の難燃性・低発煙性を損ねないような、難燃性・低発煙性の接着剤が好ましい。
 
【0071】
  難燃性・低発煙性を損ねないで接着する方法として難燃性・低発煙性の接着用熱可塑性スーパーエンプラを含むシートを繊維強化プラスチック板とハニカムコアの間に挟み、ハニカムコアが変形しない程度の圧力で抑えながら、接着用熱可塑性スーパーエンプラのシートが熱軟化する温度まで加熱し、冷却することで繊維強化プラスチック板とハニカムコアを接着する方法が好ましい。
  この場合、加熱する方法は特に限定されず、繊維強化プラスチック板と接着用熱可塑性スーパーエンプラシートとハニカムコアを積み重ねたものをホットプレスで加熱する方法、電気炉等に入れて加熱する方法、熱風乾燥機等に入れて加熱する方法等を採用することができる。
 
【0072】
  加熱方法として特に好ましい方法は、繊維強化プラスチック板と、接着用熱可塑性スーパーエンプラシートと、ハニカムコアをこの順に積層し、この積層体の側面側から熱風をあてて加熱する方法が好ましい。このような加熱方法を採用すると、接着層である熱可塑性スーパーエンプラシートが速やかに軟化するため、加熱加圧成形した繊維強化プラスチック板の加熱による変形を抑制することができる。
 
【0073】
  接着用熱可塑性スーパーエンプラシートの成分は、繊維強化プラスチック板のマトリックス樹脂成分と相溶する成分であることが好ましい。このような構成を採用すれば、繊維強化プラスチックとハニカムコアとの接着がより強固になる。この観点からは、熱可塑性スーパーエンプラシートは、繊維強化プラスチック板のマトリックス樹脂成分と同一であることも、好ましい態様のひとつである。
 
【0074】
  また、接着用熱可塑性スーパーエンプラ樹脂を含むシートの軟化温度は、繊維強化プラスチック板のマトリックス樹脂成分よりも低くてもよい。例えば、熱可塑性スーパーエンプラ樹脂を含むシートに含まれる熱可塑性スーパーエンプラシートの成分を変性又は他成分と共重合させ、融点を下げたり、溶融粘度を下げたりする方法を採用することもできる。
 
【0075】
  上述した接着用熱可塑性スーパーエンプラ樹脂を含むシートは、フィルム状であっても、或いはスーパーエンプラ繊維を湿式若しくは乾式の既知の方法でシート化した不織布であってもよい。不織布である場合においては、バインダー成分が10%以下であることが好ましく、更にはバインダー成分がスーパーエンプラであることが、難燃性の観点から好ましい。なお、この場合、繊維強化プラスチック板に使用する不織布と必ずしも同一である必要はなく、前記のとおり、繊維強化プラスチック板に使用する不織布が含有するスーパーエンプラ繊維よりも融点・溶融粘度が低いもの等も好適に使用することができる。
 
【0076】
  尚、本発明における接着用の熱可塑性スーパーエンプラシートに含まれる熱可塑性スーパーエンプラ樹脂としては上述の<マトリックス樹脂>の中で挙げられた熱可塑性スーパーエンプラ樹脂(繊維)を適宜使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で他の汎用樹脂(繊維)を添加してもよい。
 
【実施例】
【0077】
  以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0078】
(実施例1)
  表1に示した繊維径のPPS繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、繊維長13mm、限界酸素指数41)を、水中に投入した。投入した水の量は、PPS繊維に対し200倍となるとした(繊維スラリー濃度として0.5%)。このスラリーに、分散剤として花王社製:商品名「エマノーン3199」をPPS繊維100質量部に対し1質量部となるよう添加して攪拌し、繊維を水中に均一に分散させた繊維スラリーを調製した。
  次に、粒状ポリビニルアルコール(PVA)(ユニチカ社製、商品名「OV−N」)を、濃度が10%となるように水に添加し、攪拌してバインダースラリーを調製した。
  この粒状PVAのスラリーを上記繊維スラリーに投入して湿式抄紙法でウエットウエブを形成し、180℃で加熱乾燥することにより表1に示すバインダー量で目付けが120g/m
2である不織布シートを作製した。
  この不織布シートを、目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて加熱処理した。表1に記載の透気度となる、目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
【0079】
  次に、得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを6枚積層し、310℃に予熱したホットプレスに挿入して60秒加熱加圧した後、230℃に冷却して繊維強化プラスチック板を得た。
【0080】
  更に、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、ガラス転移温度220℃、繊維長13mm、限界酸素指数47)を95質量%に対し、PET芯鞘バインダー繊維(ユニチカ社製商品名「メルティ4080」)を5質量%の混合比になるように混合し、濃度0.5質量%となるように水中に投入して攪拌し、湿式抄紙法にてシート化し、150℃の温度で乾燥させることでポリエーテルイミド樹脂繊維の不織布を得た。この不織布を、上記繊維強化プラスチック板と、アルミ製ハニカムコアの間に配し、繊維強化プラスチック板でアルミ製ハニカムコア層をサンドイッチした形に積層し、アルミ製ハニカムコアがつぶれない程度に軽く加圧した状態(0.7MPa)で280℃の熱風乾燥機で約5分間加熱し、取り出して冷却することでハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0081】
(実施例2)
  実施例1と同様に作製した目付けが120g/m
2の不織布シートを、目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて、実施例1における熱プレス時間より短い時間で加熱処理することで、表1に記載の透気度となる、目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0082】
(実施例3)
  実施例1と同様にして調製したPPS繊維スラリーに、実施例1と同様のバインダーを使用して調製したバインダースラリーを投入して湿式抄紙法でウエットウエブを形成し、180℃で加熱乾燥することにより、目付けが123g/m
2である不織布シートを作製した。
  この不織布シートを、目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて、加熱加圧処理することで表1に記載の透気度となる、目付け446g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0083】
(実施例4)
  実施例1と同様に作製した目付けが120g/m
2の不織布を、目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて、実施例1における熱プレス時間より長時間加熱処理することで、表1に記載の透気度となる、目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを作製した。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0084】
(実施例5)
  PPS繊維を、表1に示した繊維径のPPS繊維(KBセーレン社製、繊維長13mm、限界酸素指数41)に変更した以外は、実施例1と同様にして、目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを作製した。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0085】
(実施例6)
  繊維径のPPS繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、限界酸素指数41)を、表2に示した繊維径のポリエーテルイミド(PEI)繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、ガラス転移温度220℃、繊維長13mm、限界酸素指数47)に変更した以外は、実施例1と同様にして目付けが120g/m
2である不織布シートを作製した。
  この不織布を、目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて加熱加圧処理することで、表2に記載の透気度となる、目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを作製した。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0086】
(実施例7)
  実施例6と同様に作製した目付けが120g/m
2の不織布シートを、目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、2820℃の熱プレスにて、実施例6における熱プレス時間より短い時間で加熱加圧処理することで、表2に記載の透気度となる、目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0087】
(実施例8)
  実施例6において、粒状PVA(ユニチカ社製、商品名「OV−N」)を、強化繊維シート(PET/coPET変性芯鞘バインダー繊維)(ユニチカ社製、商品名「メルティ4080」)に変更して不織布を形成し、使用した以外は、実施例6と同様にして実施例8の繊維強化プラスチック成形体用シートを作製した。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0088】
(実施例9)
  実施例6と同様にして調製したPEI繊維スラリーに、実施例6と同様のバインダーを使用して調製したバインダースラリーを投入して湿式抄紙法でウエットウエブを形成し、180℃で加熱乾燥することにより、表2に示すバインダー添加量で、目付けが123g/m
2である不織布シートを作製した。
  この不織布シートを、目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて、加熱加圧処理することで、表2に記載の透気度となる、目付け446g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0089】
(実施例10〜15)
  実施例1における繊維径27μmのPPS繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、繊維長13mm、限界酸素指数41)を、繊維径16μmのPPS繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、繊維長13mm、限界酸素指数41)に代えた以外は、実施例1と同様にしてPPS繊維のウエットウエブを形成し、そのウエットウエブの片面に表3に示す種類のバインダー含有液を、表3に示す全バインダー添加量となるようにスプレー法で添加し、加熱乾燥させて形成した目付け120g/m
2のPPS繊維不織布を不織布シートとした。この不織布シートを目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下に、バインダー供給面を外側としてそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて加熱加圧処理することで、表3に実施例10〜実施例15として記載されている目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0090】
(実施例16〜21)
  実施例1における繊維径27μmのPPS繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、繊維長13mm、限界酸素指数41)を繊維径15μmのPEI繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、繊維長13mm、限界酸素指数47)に代えた以外は、実施例1と同様にしてPEI繊維のウエットウエブを形成し、そのウエットウエブの片面に表4に示す種類のバインダー含有液を、表4に示す全バインダー添加量となるようにスプレー法で添加し、加熱乾燥させて形成した
  目付け120g/m
2のPEI繊維不織布を不織布シートとして使用し、この不織布シートを目付けが200g/m
2である強化繊維シート(炭素繊維クロス)(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下に、バインダー供給面を外側としてそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて加熱加圧処理することで、表4に実施例16〜実施例21として記載されている目付け440g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0091】
  尚、上記のバインダー液において、PVA水溶液は、クラレ社製商品名「PVA117」を熱水に溶解したPVA水溶液を使用した。また、スチレン−アクリルエマルジョンは、DIC社製商品名「GM−1000」を使用し、ウレタンエマルジョンはDIC社製商品名「AP−X101」を使用した。
【0092】
(実施例22)
  繊維径が9mmであり、繊維長が18mmのガラス繊維と、表5に示したポリエーテルイミド(PEI)繊維(Fiber  Innovation  Technology社製、ガラス転移温度220℃、繊維長13mm、限界酸素指数47)を、質量比がガラス繊維25に対して繊維径26μmのポリエーテルイミド(PEI)繊維75となるように計量し、水中に投入した。投入した水の量は、ガラス繊維とPEI繊維の合計質量に対し200倍となる量とした(繊維スラリー濃度として0.5%)。
  このスラリーに分散剤として花王社製:商品名「エマノーン3199」を、ガラス繊維とPEI繊維の合計100質量部に対し1質量部となるよう添加して攪拌し、繊維を水中に均一に分散させた繊維スラリーを作製した。
【0093】
  粒状ポリビニルアルコール(PVA)(ユニチカ社製、商品名「OV−N」)を、濃度が10%となるように水に添加し、攪拌してバインダースラリーを調製した。この粒状PVAのスラリーを前記繊維スラリーに投入して湿式抄紙法でウエットウエブを形成し、180℃で加熱乾燥することにより目付けが140g/m
2である不織布シートを得た。
  この不織布シートを、目付けが200g/m
2である炭素繊維クロス(NEWS−COMPANY社製  炭素繊維クロス(3K  平織り  コーティング無し))の上下にそれぞれ1枚ずつ配し、220℃の熱プレスにて、加熱加圧処理することで目付けが480g/m
2となる、実施例22の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0094】
(実施例23)
  上記実施例22における220℃の熱プレスによる加熱加圧処理の時間を、実施例22の場合よりも短縮して行って繊維強化プラスチック成形体用シートの密度を低くすることにより、実施例23の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0095】
(実施例24)
  また、実施例22における不織布に使用している粒状ポリビニルアルコール(PVA)(ユニチカ社製、商品名「OV−N」)を、PET/coPET変性芯鞘バインダー繊維(ユニチカ社製、商品名「メルティ4080」)に変更した以外は、実施例22と同様にして実施例24の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0096】
(実施例25)
  また、実施例22におけるガラス繊維を、繊維径が6μmであり、繊維長が18mmのガラス繊維に変更して、実施例22と同様にして実施例25の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0097】
(実施例26)
  実施例17において使用したものと同一配合の、幅280mmのPEI繊維シートの巻取りを2本準備し、また幅250mmの炭素繊維クロスの巻取りを1本準備し、上からPEI繊維シート、炭素繊維クロス、PEI繊維シートの順に重ねて220℃の熱カレンダーにて加熱加圧処理し、得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを3インチ紙管に巻き取った。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0098】
(実施例27〜31)
  実施例26の繊維強化プラスチック成形体用シートにおいて、PEI繊維不織布に、鞘部に変性PET(融点110℃)、芯部にPET繊維を使用した芯鞘バインダー繊維(クラレ社製商品名「N-720」)を表6に記載の添加量となるよう添加し、そのウエットウエブの片面にスチレン−アクリル樹脂エマルジョン液を、表6に示す添加量となるようにスプレー法で添加し、加熱乾燥させて形成した目付け120g/m
2のPEI繊維不織布を不織布として使用した以外は実施例26と同様に繊維強化プラスチック成形体用シートを製造した。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0099】
(実施例32)
  実施例29における繊維強化プラスチック成形体用シートにおいて、PET−変性PET芯鞘バインダー繊維を、クラレ社製商品名「N-710」(鞘部融点  130℃)に変更した以外は実施例29と同様に繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
  得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを用いて、実施例1と同様の方法にて、繊維強化プラスチック板を作製した後、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0100】
(比較例1)
  実施例1のPPS樹脂繊維の代わりにポリアミド6樹脂繊維(東レ社製、商品名「アラミンCM1021」、融点210℃、限界酸素指数20、繊維径20μm)に変更し、更に、粒状ポリビニルアルコールスラリーを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック板、更にハニカムサンドイッチ構造体を得た。
【0101】
(評価)
(強度評価)
  強度については、得られた繊維強化プラスチック板について、JIS  K7074に準拠した方法で炭素繊維クロスの繊維方向と、繊維と45度の角度をなす方向で曲げ強度を測定した。これらの繊維強化プラスチック体の強度特性は、このままこれらを使用したハニカムサンドイッチ構造体に反映されていることはいうまでもない。
【0102】
(外観評価)
  外観については、得られたハニカムサンドイッチ構造体の繊維強化プラスチック板の外観を目視により以下のように評価した。
◎:ボイド等がなく良好
○:わずかにボイドが確認できるだけである
△:ボイドの発生があるが実用上差し支えがない
×:ボイドに起因して明らかに外観が悪く、製品として使用できない
【0103】
(難燃性評価)
  得られたハニカムサンドイッチ構造体の有炎法による発煙濃度(ASTM  E−662に準拠、20分加熱後)及び限界酸素指数(ASTM  D2863)を評価した。
  上記の評価結果を表1〜6に示す。
【0104】
(繊維強化プラスチック成形体用シート巻取りの層間剥離)
  表6の実施例26〜32の繊維強化プラスチック成形体用シートの巻取りについては、下記の基準で評価を行った。
  A:層間剥離が発生しなかったもの。  
  B:若干層間強度が弱くなったが実用上差し支えがなくハンドリングできるもの。
  C:層間剥離が一部に発生し実用上やや問題を生じるが、取り扱いは可能であるもの。
  D:層間剥離が全面に発生し、ハンドリングに問題を生じるものとして評価を行った。
【0105】
(繊維強化プラスチック成形体用シート巻取り繰り出し時の繊維飛散)
  また、実施例26〜32の繊維強化プラスチック成形体用シートにつき、加熱加圧操作の際の繊維強化プラスチック成形体用シートの表面繊維の脱落・飛散及び取り扱いやすさ(ハンドリング性)を、下記の基準で評価を行った。
  A:非常に良好なもの。
  B:良好であり実用上問題なく取り扱えるもの。
  C:実用上やや問題を生じるが、製造は可能であるもの。
  D:表面繊維の脱落が非常に多く量産では明らかに問題を発生するもの。
  E:シートが破れやすくハンドリング性に劣るもの。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
  表1〜表6に示されているように、実施例で得られたハニカムサンドイッチ構造体は強度・外観共に良好であることがわかる。なお、ハニカムサンドイッチ構造体の強度はいずれの方向においても優れていることがわかる。また、実施例で得られたハニカムサンドイッチ構造体は優れた難燃性、すなわち低発煙濃度・高限界酸素指数を示した。
  一方、比較例1で得られたハニカムサンドイッチ構造体は、難燃性が低く、発煙濃度が高いものであった。