特許第6326794号(P6326794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326794
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】紙カップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 3/28 20060101AFI20180514BHJP
【FI】
   B65D3/28 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-250939(P2013-250939)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-40285(P2014-40285A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅山 浩
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−163374(JP,A)
【文献】 特開平10−129741(JP,A)
【文献】 特開2011−025991(JP,A)
【文献】 特開2001−011796(JP,A)
【文献】 特開2001−048157(JP,A)
【文献】 特開2006−027696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部貼り合わせ部を設けて筒状にした胴部材の下端に、底部材を融着させた紙カップであって、
紙基材として、表側層と中間層と裏側層の3層構成の紙で、中間層にのみ、カーボンブラックを0.02〜0.05g/m混抄した混抄紙を用い、該紙基材の内面側に熱融着性樹脂層を積層し、
前記紙基材と前記熱融着性樹脂層の間に、ポリエチレンテレフタレートフィルムに、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素からなる蒸着層が設けられ、該蒸着層の表面に、ガスバリア性被膜が設けられ、該ガスバリア性被膜が、1種以上の金属アルコキシド、あるいは、その加水分解物の少なくともいずれかと、水溶性高分子とを含む水溶液、または、水とアルコールの混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布して、加熱乾燥してなる無機酸化物蒸着フィルムが積層されており、
前記胴部貼り合せ部の内側になる前記紙基材の端面が露出しないように、保護されていることを特徴とする紙カップ。
【請求項2】
前記紙基材の端面の保護が、前記内面側の熱融着性樹脂層が紙基材より延設され、延設された熱融着性樹脂層が外側に折返されて端面を覆うことにより行われていることを特徴とする請求項1に記載の紙カップ。
【請求項3】
前記紙基材の外面側にも、外面熱融着性樹脂層を設け、前記紙基材の端面の保護が、紙基材の内面側に設けた樹脂層と、外面熱融着性樹脂層とが融着して、前記端面を覆うことにより行われていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙カップに関するものである。特に、遮光性を付与した紙カップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙カップに飲料を充填した飲料カップや、インスタントラーメンを充填したカップが市販されている。このようなカップに充填される内容物によっては、酸化劣化するものがある。この劣化を防止するには、酸素の遮断に加え、酸化劣化のきっかけとなり、更には、酸化劣化を促進する紫外線などの光の遮断が必要である。
【0003】
このような、酸素の遮断と光の遮断には、アルミニウム箔を含む構成が知られている。しかし、食品等が内容物の場合、金属系の混入物を検査する為、金属探知機による管理が行われており、上記アルミニウム箔を含む構成であると包装材料であるアルミニウム箔が検知されてしまい、正確な検査を行うことが不可能であった。
【0004】
また、使用後に焼却処理をする場合、アルミニウムが含まれていることによって焼却炉を傷めたり、有毒ガスが発生したりする等の問題点があった。外観上も、アルミニウムを使用する場合、容器の内側からみると、内層フィルムを透してアルミニウムの色が透けてしまい、容器が着色されて見えてしまう等の視覚的な問題があった。
【0005】
このため、紙カップの紙基材の内面側に、遮光層を設けた紙カップがあった。例えば、ポリオレフィン系樹脂を最外層とする紙基材に、バリアフィルム、遮光層、および遮光層を隠蔽する隠蔽層を有する積層シートを使用した紙カップで、遮光層が、着色樹脂、墨インキのパターン印刷あるいは接着剤により構成され、隠蔽層が、白色のポリオレフィン系樹脂、墨以外のインキによる印刷あるいは紙により形成された紙カップがあった(特許文献1)。
【0006】
この場合、遮光層や隠蔽層が、紙カップの胴部貼り合せ部の内側では、内容物に接触してしまう恐れがあり、食品衛生上の問題があった。また、遮光層や隠蔽層をインキでパターン状に設けるには、カップの外面に設ける絵柄印刷との見当を合わせる必要があり、困難であった。
【0007】
また、紙基材にカーボンブラックを混抄して用いることが考えられるが、遮光性を持たせるためには、紙の中にカーボンブラックを0.01から2.0g/m混ぜて混抄する必要がある。そして、カーボンブラックの混抄紙を用いると、紙カップの胴部貼り合せ部の内側では、内容物にカーボンブラックが接触してしまう恐れがあり、食品が黒ずんでしまい問題がある。
【0008】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−130044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、内容物を光から遮断することができ、且つ、食品衛生上の問題がない紙カップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、胴部貼り合わせ部を
設けて筒状にした胴部材の下端に、底部材を融着させた紙カップであって、
紙基材として、表側層と中間層と裏側層の3層構成の紙で、中間層にのみ、カーボンブラックを0.02〜0.05g/m混抄した混抄紙を用い、該紙基材の内面側に熱融着性樹脂層を積層し、
前記紙基材と前記熱融着性樹脂層の間に、ポリエチレンテレフタレートフィルムに、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素からなる蒸着層が設けられ、該蒸着層の表面に、ガスバリア性被膜が設けられ、該ガスバリア性被膜が、1種以上の金属アルコキシド、あるいは、その加水分解物の少なくともいずれかと、水溶性高分子とを含む水溶液、または、水とアルコールの混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布して、加熱乾燥してなる無機酸化物蒸着フィルムが積層されており、
前記胴部貼り合せ部の内側になる前記紙基材の端面が露出しないように、保護されていることを特徴とする紙カップである。
【0012】
削除。
【0013】
削除。
【0014】
本発明の請求項の発明は、前記紙基材の端面の保護が、前記内面側の熱融着性樹脂層が紙基材より延設され、延設された熱融着性樹脂層が外側に折返されて端面を覆うことにより行われていることを特徴とする請求項1に記載の紙カップである。
【0015】
本発明の請求項の発明は、前記紙基材の外面側にも、外面熱融着性樹脂層を設け、前記紙基材の端面の保護が、紙基材の内面側に設けた樹脂層と、外面熱融着性樹脂層とが融着して、前記端面を覆うことにより行われていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙カップである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紙カップは、内容物を光から遮断することができ、内容物の酸化を抑えることができる。また、紙の端面が内容物に触れることがないので、食品衛生上の問題がない。更に、紙基材と熱融着性樹脂層の間に無機酸化物蒸着フィルムを積層することによって、バリア性が付与され、酸素を遮断して酸化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)本発明の紙カップの第1の参考形態を模式的に縦断面で示した説明図である。(b)(a)のA−A部の横断面を模式的に示した説明図である。
図2】本発明の紙カップの第1の参考形態の紙基材を模式的に断面で示した説明図である。
図3】本発明の紙カップの第1の参考形態で胴部貼り合せ部に紙基材より延設された樹脂層を設ける方法を説明する模式図である。
図4】本発明の紙カップの第の実施形態の胴部貼り合せ部の横断面を模式的に示した説明図である。
図5】本発明の紙カップの第の実施形態に用いる無機化合物蒸着フィルムを模式的に断面で示した説明図である。
図6】本発明の紙カップの第参考形態の胴部貼り合せ部の横断面を模式的に示した説明図である。
図7】本発明の紙カップの第の実施形態の胴部貼り合せ部の横断面を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の参考形態>
以下、本発明を実施するための第1の参考形態につき説明する。
図1(a)は、本発明の紙カップの第1の参考形態を模式的に縦断面で示した説明図である。(b)は、(a)のA−A部の横断面を模式的に示した説明図である。
図2は、本発明の紙カップの第1の参考形態の紙基材を模式的に断面で示した説明図である。
図3は、本発明の紙カップの第1の参考形態で胴部貼り合せ部に紙基材より延設された樹脂層を設ける方法を説明する模式図である。
【0019】
第1の参考形態の紙カップ100は、図1(a)の縦断面図のように、胴部材101と底部材102から成形されている。胴部材101は、断面が略円錐台形状の筒状になっていて、扇状のブランクの左右両端部を重ね合わせ、融着させて胴部貼り合わせ部103を設け筒状にしている。
【0020】
底部材102は、周縁が下方に折り曲げられて、周縁折り曲げ部104が設けられている。そして、筒状にした胴部材101の下端に、周縁折り曲げ部104を外側にして挿入して、胴部材101の下端部分を内側に折返し、胴部材101で周縁折り曲げ部104を包むようにして、融着させて環状脚部105を設けている。また、胴部材101の上端は外側にカールさせて、トップカール部106が設けられている。
【0021】
胴部材101と底部材102は、紙を主体とする積層体で、紙基材110のカップの内面側になる面に熱融着性樹脂層120が、貼り合わされている。胴部貼り合わせ部103は、図1(b)の横断面図のように、内面側の熱融着性樹脂層120が紙基材110より延設され、延設された熱融着性樹脂層120が外側に折返されて紙基材110の端面を覆って、内容物に触れないように保護している。
【0022】
紙基材110は、図2のような、表側層111と中間層112と裏側層113のすくなくとも3層構成の多層紙の板紙で、中間層112にのみカーボンブラックを混抄してあるカーボンブラック混抄紙である。
【0023】
熱融着性樹脂層120は、熱可塑性樹脂であるポリエチレンやポリプロピレンからなっている。ドライラミネーションで、紙基材110に貼り合わせてもよいが、押出しラミネーションで貼り合わせることが好ましい。また、熱可塑性ポリエステルやエチレンビニルアルコール共重合体などを使用することもできる。
【0024】
胴部貼り合せ部103の紙基材110より延設された熱融着性樹脂層120を設けるには、図3のように、胴部材101用の紙基材110の原紙のおもて面に、胴部材101となる位置131に合わせて絵柄印刷を行い、この絵柄に見当を合わせて、熱融着性樹脂層120の延設される位置に貫通孔132を設ける。
【0025】
この後、紙基材110原紙の裏面に、熱融着性樹脂層120を押し出しラミネーションにより積層する。このとき、この貫通孔132も熱融着性樹脂層120で塞がれる。このように、積層して、延設する熱融着性樹脂層120を残して、胴部材101を打ち抜き、胴部材用のブランクを作成する。
【0026】
そして、延設された熱融着性樹脂層120を、折り返しておもて面側に加熱圧着させる。これにより、胴部貼り合わせ部103では、紙基材110の端面が熱融着性樹脂層120で覆われ、内容物に触れないように保護される。
【0027】
この後は、従来のカップ成形と同様に、筒状に巻かれ、底部材102と合わせて環状脚部105を形成し、トップカール部106を設けて、紙カップ100が成形される。
【0028】
以上のように、紙カップ100は、紙基材110が中間層112にカーボンブラックを混抄したカーボンブラック混抄紙を用いているので、光を遮断することができ、内容物の酸化が抑えられ、劣化が防止できる。
【0029】
また、胴部貼り合せ部103の内側になる紙基材110の端面が熱融着性樹脂層120で覆われて露出していないので、内容物に紙基材110の端面が触れることが無く、カーボンブラックが内容物に触れることが無く、食品衛生上の問題がない。
【0030】
<第の実施形態>
以下、本発明を実施するための第の実施形態につき説明する。
図4は、本発明の紙カップの第の実施形態の胴部貼り合せ部の横断面を模式的に示した説明図である。
図5は、本発明の紙カップの第の実施形態に用いる無機化合物蒸着フィルムを模式的に断面で示した説明図である。
【0031】
の実施形態の紙カップ200は、紙カップ100の図1(a)の縦断面図と同様の形状になっている。紙カップ200の縦断面図は省略する。
【0032】
胴部材201と底部材は、紙を主体とする積層体で、胴部材101や底部材102と異なり、紙基材210のカップの内面側になる面に、熱融着性樹脂層221、無機酸化物蒸着フィルム222、熱融着性樹脂層223が、順次貼り合わされている。また、紙基材210のカップの外面側になる面に、熱融着性樹脂層224が貼り合わされている。
【0033】
胴部貼り合わせ部203は、図4のように、内面側の熱融着性樹脂層221、無機酸化物蒸着フィルム222、熱融着性樹脂層223と、外面側の熱融着性樹脂層224が紙基材210より延設され、内面側の熱融着性樹脂層221と外面側の熱融着性樹脂層224とが融着している。この延設され融着している樹脂層が、外側に折返されて紙基材210の端面を覆って、内容物に触れないように保護している。
【0034】
紙基材210は、第1の参考形態の紙基材110と同様なカーボンブラック混抄紙を用いることができる。また、熱融着性樹脂層221、熱融着性樹脂層223と、熱融着性樹脂層224には、第1の参考形態の熱融着性樹脂層120と同様な熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0035】
無機酸化物蒸着フィルム222は、図5のように、蒸着基材231にポリエチレンテレフタレートやナイロンの延伸フィルムを使用し、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素からなる蒸着層232が設けられ、蒸着層232の表面に、ガスバリア性被膜233が設けられたものが好適に用いることが出来る。
【0036】
ガスバリア性被膜233は、1種以上の金属アルコキシド、あるいは、その加水分解物の少なくともいずれかと、水溶性高分子とを含む、水溶液、または、水とアルコールの混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布して、加熱乾燥した塗布膜である。
【0037】
胴部貼り合わせ部203の紙基材210より延設され融着している樹脂層を設けるには、図3と同様に、胴部材201用の紙基材210の原紙のおもて面に、胴部材201となる位置に合わせて絵柄印刷を行い、この絵柄に見当を合わせて、樹脂層の延設される位置に貫通孔を設ける。
【0038】
別途、無機酸化物蒸着フィルム222を用意し、無機酸化物蒸着フィルム222の表裏
に、それぞれ、熱融着性樹脂層221aと熱融着性樹脂層223を積層した内層フィルムを作成する。
【0039】
貫通孔が設けられた胴部材201用の紙基材210の原紙の裏面にサンドイッチラミネーションにより、押出し製膜された熱融着性樹脂層221bを介して、前述の内層フィルムの熱融着性樹脂層221aの面と積層する。続いて、おもて面に押出しラミネーションにより熱融着性樹脂層224を設ける。
【0040】
これにより、熱融着性樹脂層221bと熱融着性樹脂層221aは融着して一体となり、熱融着性樹脂層221となる。また、貫通孔においては、熱融着性樹脂層221と熱融着性樹脂層224が融着して一体となる。
【0041】
貫通孔における層構成は、紙基材層210が無く、表側から、熱融着性樹脂層224、熱融着性樹脂層221、無機酸化物蒸着フィルム222、熱融着性樹脂層223の順に積層された樹脂層になる。このように、積層して、延設する樹脂層を残して、胴部材201を打ち抜き、胴部材用のブランクを作成する。
【0042】
そして、延設された樹脂層を、折り返しておもて面側に加熱圧着させる。これにより、胴部貼り合わせ部203では、紙基材210の端面が樹脂層で覆われ、内容物に触れないように保護される。この後は、第1の参考形態の紙カップ1と同様にして、紙カップ200が成形される。
【0043】
以上のように、紙カップ200は、紙基材210が中間層にカーボンブラックを混抄したカーボンブラック混抄紙を用いているので、光を遮断することができ、内容物の酸化が抑えられ、劣化が防止できる。
【0044】
また、胴部貼り合せ部203の内側になる紙基材210の端面が樹脂層で覆われて露出していないので、内容物に紙基材210の端面が触れることが無く、カーボンブラックが内容物に触れることが無く、食品衛生上の問題がない。更には、無機酸化物蒸着フィルム222を、胴部材201および底部材に積層しているので、酸素を遮断し、内容物の酸化が防止され、内容物の酸化による劣化が防止できる。
【0045】
<第参考形態>
以下、本発明を実施するための第参考形態につき説明する。
図6は、本発明の紙カップの第参考形態の胴部貼り合せ部の横断面を模式的に示した説明図である。
【0046】
参考形態の紙カップ300は、紙カップ100の図1(a)の縦断面図と同様の形状になっている。紙カップ300の縦断面図は省略する。
【0047】
胴部材301と底部材は、紙を主体とする積層体で、胴部材101や底部材102と異なり、紙基材310のカップの内面側になる面に、熱融着性樹脂層321が貼り合わされている。また、紙基材310のカップの外面側になる面に、熱融着性樹脂層322が貼り合わされている。
【0048】
胴部貼り合わせ部303は、図6のように、内面側の熱融着性樹脂層321と、外面側の熱融着性樹脂層322が紙基材310より延設され、内面側の熱融着性樹脂層321と外面側の熱融着性樹脂層322とが融着している。そして、反対側の端部の内側に重ねられ、反対側の端部の熱融着性樹脂層321に、胴部貼り合わせ部303内側の端部の熱融着性樹脂層322が融着して、胴部材301を筒状にしている。この延設され融着してい
る樹脂層が、紙基材310の端面を覆って、内容物に触れないように保護している。
【0049】
紙基材310は、第1の参考形態の紙基材110と同様なカーボンブラック混抄紙を用いることができる。また、熱融着性樹脂層321と、熱融着性樹脂層322には、第1の参考形態の熱融着性樹脂層120と同様な熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0050】
胴部貼り合わせ部303の紙基材310より延設され融着している樹脂層を設けるには、図3と同様に、胴部材301用の紙基材310の原紙のおもて面に、胴部材301となる位置に合わせて絵柄印刷を行い、この絵柄に見当を合わせて、樹脂層の延設される位置に貫通孔を設ける。
【0051】
貫通孔が設けられた胴部材301用の紙基材310の原紙の裏面に押出しラミネーションにより、熱融着性樹脂層321を設け、続いて、おもて面に押出しラミネーションにより熱融着性樹脂層322を設ける。これにより、貫通孔においては、熱融着性樹脂層321と熱融着性樹脂層322が融着して一体となる。
【0052】
貫通孔における層構成は、紙基材層310が無く、表側から、熱融着性樹脂層321と熱融着性樹脂層322が積層された樹脂層になる。このように積層して、延設する樹脂層を残して、胴部材301を打ち抜き、胴部材用のブランクを作成する。
【0053】
そして、延設された樹脂層を伸ばしたまま、胴部貼り合わせ部303の内側になる端部を、胴部貼り合わせ部303の外側になる端部の内側に重ね合わせて、加熱圧着させ胴部貼り合わせ部303を形成する。
【0054】
これにより、胴部貼り合わせ部303では、紙基材310の端面が樹脂層で覆われ、内容物に触れないように保護される。この後は、第1の参考形態の紙カップ1と同様にして、紙カップ300が成形される。
【0055】
以上のように、紙カップ300は、紙基材310が中間層にカーボンブラックを混抄したカーボンブラック混抄紙を用いているので、光を遮断することができ、内容物の酸化が抑えられ、劣化が防止できる。
【0056】
また、胴部貼り合せ部303の内側になる紙基材310の端面が樹脂層で覆われて露出していないので、内容物に紙基材310の端面が触れることが無く、カーボンブラックが内容物に触れることが無く、食品衛生上の問題がない。
【0057】
<第の実施形態>
以下、本発明を実施するための第の実施形態につき説明する。
図7は、本発明の紙カップの第の実施形態の胴部貼り合せ部の横断面を模式的に示した説明図である。
【0058】
の実施形態の紙カップ400は、紙カップ100の図1(a)の縦断面図と同様の形状になっている。紙カップ400の縦断面図は省略する。
【0059】
胴部材401と底部材は、紙を主体とする積層体で、胴部材101や底部材102と異なり、紙基材410のカップの内面側になる面に、無機酸化物蒸着フィルム421と熱融着性樹脂層422が、順次貼り合わされている。
【0060】
胴部貼り合わせ部403は、図7のように、スカイブ・へミング法により断面保護加工され、胴部材401の端面が中に入る内容物の液体などに触れないように保護されている
【0061】
すなわち、胴部貼り合わせ部403において、胴部材401の内側に重なる端部を一定の幅で外面側を厚さがおよそ半分になるように削って、削った幅の半分を外側に折り返して、削り面どうしを重ね合わせて接着し、その重ね合わせ部分を覆うように、胴部材401の外側に重なる端部を融着させている。
【0062】
紙基材410は、第1の参考形態の紙基材110と同様なカーボンブラック混抄紙を用いることができ、熱融着性樹脂層422には、第1の参考形態の熱融着性樹脂層120と同様な熱可塑性樹脂を用いることができる。また、無機酸化物蒸着フィルム421は、第の実施形態に用いた図5の無機酸化物蒸着フィルム222と同様な蒸着フィルムを用いることができる。
【0063】
胴部材401や底部材に用いる積層体を作成するには、まず、無機酸化物蒸着フィルム421に熱融着性樹脂層422を積層する。積層は、熱融着性樹脂層422をフィルムとして、ドライラミネーションによって、無機酸化物蒸着フィルム421に貼り合わせてもよいし、押出しラミネーションによって、熱融着性樹脂層422を溶融押出しして、無機酸化物蒸着フィルム421に積層してもよい。
【0064】
この無機酸化物蒸着フィルム421と熱融着性樹脂層422を積層した内層フィルムの無機酸化物蒸着フィルム421の面を、紙基材410の裏面にドライラミネーションによって積層する。
【0065】
このように、積層された積層体を、胴部材401や底部材に用いる。胴部材401では、両端部の内側に重なる端部を一定の幅で外面側を厚さがおよそ半分になるように削って、削った幅の半分を外側に折り返して、削り面どうしを重ね合わせて接着し、スカイブ・へミング法により端面保護を行う。
【0066】
この端面保護を行った積層体を打ち抜き、胴部材用のブランクとし、このスカイブ・へミング法により端面保護を行った端部を、外側に重なる端部の内側に融着させて、筒状の胴部材401とする。この後は、第1の参考形態の紙カップ1と同様にして、紙カップ400が成形される。
【0067】
以上のように、紙カップ400は、紙基材410に中間層にカーボンブラックを混抄したカーボンブラック混抄紙を用いているので、光を遮断することができ、内容物の酸化が抑えられ、劣化が防止できる。
【0068】
また、胴部貼り合せ部403の内側になる紙基材410の端面が樹脂層で覆われて露出していないので、内容物に紙基材410の端面が触れることが無く、カーボンブラックが内容物に触れることが無く、食品衛生上の問題がない。更には、無機酸化物蒸着フィルム421を、胴部材401および底部材に積層しているので、酸素を遮断し、内容物の酸化が防止され、内容物の酸化による劣化が防止できる。
【実施例】
【0069】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0070】
<実施例1>
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化アルミを蒸着し、その表面に、ポリビニルアルコールと、テトラエトキシシランや、その加水分解物を含む水とアルコールの混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、ガスバリア性被膜を設けた無機酸化物蒸着フ
ィルムを用意した。
【0071】
この無機酸化物蒸着フィルムのガスバリア性被膜面に、アンカーコート剤を塗布して、厚さ15μmのポリエチレンを押出しラミネーションにより積層した。反対側の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面に、アンカーコート剤を塗布して、厚さ30μmのポリエチレンを押出しラミネーションにより積層し、内層フィルムを得た。尚、アンカーコート剤は、共に三井化学のA−616を用いた。
【0072】
紙基材として、表側層と中間層と裏側層の3層構成の紙で、中間層にのみ、カーボンブラックを、0.05g/m混抄した混抄紙を用意し、表側面に絵柄印刷を行い、絵柄印刷で見当を合わせて、カップになったときに胴部貼り合せ部の内側になる端部を形成するように貫通孔を設けた。
【0073】
次に、紙基材の表側面に押出しラミネーションにより、厚さ20μmのポリエチレン層を設け、更に、紙基材の裏側面にサンドイッチラミネーションにより、厚さ17μmのポリエチレン層を介して、内層フィルムの15μmのポリエチレンの面に積層し、積層体を得た。
【0074】
次に、この積層体を、絵柄印刷と見当を合わせて、扇型に打ち抜き、胴部貼り合せ部の内側になる端部に、表裏の樹脂層が融着した樹脂部が延設された胴部材を作成した。また、底部材も同様な積層体を用いて、円形の胴部材を作成した。
【0075】
この胴部材の延設された樹脂部を外側に折り返して、胴部材を筒状に巻き、胴部貼り合せ部を設け筒状にし、この筒状の胴部材の下端より、周縁部分を垂下させ折り曲げ部を設けた底部材を差し込み、折り曲げ部を包むように胴部材の下端部分を折り返し、融着させ、環状脚部を形成した。続いて、筒状の胴部材の上端部分を外側にカールさせ、トップカール部を設け、実施例1の紙カップを作成した。
【0076】
カーボンブラック混抄していないカップ原紙を用いて、内層側にアルミニウム箔を積層した積層体を用いたアルミニウムカップと、この実施例1の紙カップとの遮光性を比較した。その結果、実施例1の紙カップは、アルミニウムカップと同等の遮光性があった。尚、遮光性の比較は、JIS K7361−1の積分球による方法で、全光線透過率を測定して行った。
【0077】
また、実施例1の紙カップとアルミニウムカップのそれぞれのトップカール部にアルミニウム箔を用いた蓋材をシールし、モダンコントロール社製の酸素透過測定器を用いて、1カップ当りの酸素透過率を測定した。その結果、いずれも1カップ当りの酸素透過率が0.01cc/day未満であり、実施例1の紙カップとアルミニウムカップの酸素透過率は、同等であった。
【0078】
この実施例1の紙カップは、内容物と接する胴部貼り合せ部の内側に重なる胴部材の端部が、端面保護されているので、カーボンブラックが内容物に触れることが無く、食品衛生上の問題もない。
【0079】
参考例1>
紙基材として、表側層と中間層と裏側層の3層構成の紙で、中間層にのみ、カーボンブラックを、0.02g/m混抄した混抄紙を用意し、表側面に絵柄印刷を行い、絵柄印刷で見当を合わせて、カップになったときに胴部貼り合せ部の内側になる端部を形成するように貫通孔を設けた。
【0080】
この貫通孔を設けた紙基材の表側面に押出しラミネーションにより、厚さ20μmのポリエチレン層を設け、更に、紙基材の裏側面に押出しラミネーションにより、厚さ30μmのポリエチレン層を設け、積層体を得た。
【0081】
次に、この積層体を、絵柄印刷と見当を合わせて、扇型に打ち抜き、胴部貼り合せ部の内側になる端部に、表側面の厚さ20μmのポリエチレン層と裏側面の厚さ30μmのポリエチレン層が融着した樹脂部が延設された胴部材を作成した。また、底部材も同様な積層体を用いて、円形の胴部材を作成した。
【0082】
この胴部材を筒状に巻き、胴部材の延設された樹脂部が反対側の端部部分の内側に沿って重なるようにして、胴部貼り合せ部を設け筒状にし、この筒状の胴部材の下端より、周縁部分を垂下させ折り曲げ部を設けた底部材を差し込み、以下、実施例1と同様にして、参考の紙カップを作成した。
【0083】
実施例1で用いたアルミニウムカップと、この参考の紙カップとの遮光性を比較した。その結果、参考の紙カップも、アルミニウムカップと同等の遮光性があった。
【0084】
この参考の紙カップは、内容物と接する胴部貼り合せ部の内側に重なる胴部材の端部が、端面保護されているので、カーボンブラックが内容物に触れることが無く、食品衛生上の問題もない。
【0085】
<実施例
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化ケイ素を蒸着し、その表面に、ポリビニルアルコールと、テトラエトキシシランや、その加水分解物を含む水とアルコールの混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、ガスバリア性被膜を設けた無機酸化物蒸着フィルムを用意した。
【0086】
この無機酸化物蒸着フィルムのガスバリア性被膜面に、アンカーコート剤を塗布して、厚さ30μmのポリエチレンを押出しラミネーションにより積層し、内層フィルムを得た。尚、アンカーコート剤は、共に三井化学のA−616を用いた。
【0087】
紙基材として、表側層と中間層と裏側層の3層構成の紙で、中間層にのみ、カーボンブラックを、0.05g/m混抄した混抄紙を用意し、表側面に絵柄印刷を行った。
【0088】
次に、紙基材の裏側面にドライラミネーションにより、内層フィルムの無機酸化物蒸着フィルムの面を積層し、積層体を得た。この積層体をスカイブ・へミングの機械で加工し端面をスカイブ・へミング処理した。
次に、この積層体を、絵柄印刷と見当を合わせて、扇型に打ち抜き、胴部貼り合せ部の内側になる端部がスカイブ・へミング処理された胴部材を作成した。また、底部材も同様な積層体を用いて、円形の胴部材を作成した。
【0089】
この胴部材を筒状に巻き、胴部貼り合せ部を設け筒状にし、この筒状の胴部材の下端より、周縁部分を垂下させ折り曲げ部を設けた底部材を差し込み、以下、実施例1と同様にして、実施例の紙カップを作成した。
【0090】
実施例1で用いたアルミニウムカップと、この実施例の紙カップとの遮光性を比較した。その結果、実施例の紙カップも、アルミニウムカップと同等の遮光性があった。
【0091】
また、実施例の紙カップとアルミニウムカップのそれぞれのトップカール部にアルミニウム箔を用いた蓋材をシールし、モコン社の酸素透過測定器を用いて、1カップ当りの
酸素透過率を測定した。その結果、いずれも1カップ当りの酸素透過率が0.01cc/day未満であり、実施例の紙カップとアルミニウムカップの酸素透過率は、同等であった。
【0092】
この実施例の紙カップは、内容物と接する胴部貼り合せ部の内側に重なる胴部材の端部が、端面保護されているので、カーボンブラックが内容物に触れることが無く、食品衛生上の問題もない。
【符号の説明】
【0093】
100、200、300、400・・・紙カップ
101、201、301、401・・・胴部材
102・・・底部材
103、203、303、403・・・胴部貼り合わせ部
104・・・周縁折り曲げ部
105・・・環状脚部
106・・・トップカール部
110、210、310、401・・・紙基材
120、221、223、224、321、322、422・・・熱融着性樹脂層
111・・・表側層
112・・・中間層
113・・・裏側層
131・・・胴部材となる位置
132・・・貫通孔
222、421・・・無機酸化物蒸着フィルム
231・・・蒸着基材
232・・・蒸着層
233・・・ガスバリア性被膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7